JPH11277307A - スローアウェイチップ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 刃先の破損を防止できるとともに、切削抵抗
の小さいスローアウェイチップを提供すること。 【解決手段】 板状のスローアウェイチップ１は、その
板厚方向の両側（すくい面側）にて切削加工が可能な様
に、刃先２ａ，２ｂが形成されている。刃先２を構成す
るランド部４は、スローアウェイチップ１の板厚方向の
両すくい面に、略四角環状に形成され、ランド部４の内
側には、モールドブレーカであるチップブレーカ５が、
全周にわたり略四角環状に設けられ、チップブレーカ５
の内側には、座り部７が設けられている。前記ランド部
４は、刃先２の先端側のチャンファリング部８と中心側
のストレート部９とから構成されている。特に、ストレ
ート部９の板厚方向の表面と座り部７の板厚方向の表面
とが同一平面となる様に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、スローアウェイチ
ップに関し、例えば鋳鉄の粗加工を行うために使用され
るセラミックス製のスローアウェイチップに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来より、板状のセラミックス製のスロ
ーアウェイチップにおいては、切削時に切り粉を分断し
て切削抵抗を低減する目的で、板厚方向の表面（すくい
面側）に、凹状のチップブレーカを設けていた。

【０００３】この種のスローアウェイチップの形状とし
ては、下記の〜の３つのパターンが知られている。 図６（ａ）に示す様に、刃先側のストレート部Ｐ１と
中心側の座り部Ｐ２とが、チップブレーカＰ３を介し
て、同一平面に存在するが、刃先側を斜めにカットした
チャンファリング部を有しないもの。

【０００４】図６（ｂ）に示す様に、ストレート部Ｐ
４が、座り部Ｐ５より一段下がった位置に設けられ、ま
た、チッピング（欠損）を防止するために、チャンファ
リングＰ６が設けられたもの。 図６（ｃ）に示す様に、ストレート部がなく、チャン
ファリング部Ｐ７のみが設けられたもの。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来のスロー
アウェイチップでは、切削抵抗を抑える目的で、チップ
ブレーカを好適な位置に配置するために、ランド部の幅
（ランド幅）を小さくする必要がある。これは、切削抵
抗が大きいと、薄肉の被加工物を加工する場合には、被
加工物がたわむ恐れがあるからである。

【０００６】ところが、前記とのパターンのスロー
アウェイチップの場合には、チャンファリング部を有す
るので、ランド幅を小さくしてもチッピングの恐れがな
いが、別の問題が生じることがあった。つまり、図７に
示す様に、スローアウェイチップＱ１をホルダーＱ２に
取り付ける際には、押えＱ３で座り部Ｑ４を図の下方に
押圧するが、この場合、下方のランド部Ｑ５とホルダー
Ｑ２との間に隙間ができるので、この隙間に切り粉が入
り込み、刃先（ホルダー側の刃先）を破壊することがあ
った。

【０００７】また、前記のパターンのスローアウェイ
チップでは、ストレート部と座り部との高さが同じであ
り、前記の様な隙間が生じないので、刃先の破壊の恐れ
がなくなるものの、チャンファリング部がないため、ラ
ンド幅をあまり低減できず、よって、切削抵抗を十分に
低減できないという問題があった。

【０００８】本発明は、上記の問題点を鑑みてなされた
ものであり、刃先の破損を防止できるとともに、切削抵
抗の小さいスローアウェイチップを提供することを目的
とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の請求項１の発明は、セラミックス製のモールドブレー
カ付きスローアウェイチップであって、スローアウェイ
チップの板厚方向の両側に刃先を備えるとともに、両側
の切刃において、ランド部のストレート部と座り部との
高さが同じであり、且つランド部にチャンファリング部
を備えることを特徴とするスローアウェイチップを要旨
とする。

【００１０】ここで、モールドブレーカとは、スローア
ウェイチップを金型で成形した場合に、（切削ではな
く）成形と同時に金型により形成されるチップブレーカ
（ブレーカ溝）のことである。また、ランド部とは、モ
ールドブレーカより刃先側の部分であり、本発明の場合
は、先端側の斜めにカットされたチャンファリング部と
板状の平坦なストレート部からなる。

【００１１】本発明では、ランド部のストレート部と座
り部との高さが同じであるので、スローアウェイチップ
を、押えを用いてホルダーに取り付けた場合でも、ホル
ダー側（内側）のストレート部と、ホルダーとの間には
隙間が生じない。そのため、外側の刃先を用いて切削加
工を行なう際には、内側のストレート部とホルダーの間
に切り粉が入らないので、切り粉によって内側の刃先が
破損することがない。

【００１２】また、ホルダーと内側のストレート部との
間には隙間がないので、スローアウェイチップはしっか
りとホルダーに固定される。それにより、加工の際に、
スローアウェイチップがガタ付くことがないので、この
点からも、内側の刃先が破損することがない。

【００１３】更に、本発明では、ランド部にチャンファ
リング部を備えているので、ランド幅を狭くして、切削
抵抗を低減する上で適切な位置にモールドブレーカを確
保した場合でも、刃先のチッピング（欠損）を防止する
ことができる。即ち、本発明によれば、切削抵抗を低減
して、薄肉の被加工物にうねりを生じさせることなく、
好適に加工できるとともに、被加工物に接する側の刃先
とホルダー側の刃先に破損を生じさせることなく、好適
に切削加工を行なうことができる。

【００１４】請求項２の発明は、スローアウェイチップ
が、窒化珪素を主成分とすることを特徴とする請求項１
に記載のスローアウェイチップを要旨とする。本発明
は、スローアウェイチップの材質を例示したものであ
り、その材質が窒化珪素を主成分とするものであれば、
機械的強度や靱性に優れており、破損等の発生が少な
く、好適に切削加工を行なうことができる。

【００１５】請求項３の発明は、ランド部の幅が、０ｍ
ｍを上回り、０．５ｍｍ以下であることを特徴とする請
求項１又は２に記載のスローアウェイチップを要旨とす
る。本発明は、ランド部の幅（ランド幅）を例示したも
のであり、ランド幅が０ｍｍの場合は、精度の点でばら
つきが大きくなり且つ欠損し易くなり、上限値を上回る
と、モールドブレーカの位置が中心側にずれて、切削抵
抗の低減の効果が小さくなるので、スローアウェイチッ
プとしては、この範囲が好適である。より好ましくは、
０．１〜０．３ｍｍの範囲である。

【００１６】請求項４の発明は、ストレート部の幅が、
０ｍｍを上回り、０．４ｍｍ以下であることを特徴とす
る請求項１〜３のいずれかに記載のスローアウェイチッ
プを要旨とする。本発明は、ランド部からチャンファリ
ング部を除いたストレート部の幅を例示したものであ
り、ストレート部の幅が０ｍｍの場合は、精度の点でば
らつきが大きくなり且つ欠損し易くなり、上限値を上回
ると、モールドブレーカの位置が中心側にずれて、切削
抵抗の低減の効果が小さくなるので、スローアウェイチ
ップとしては、この範囲が好適である。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明のスローアウェイチ
ップの例（実施例）を説明する。 （実施例）（１）まず、本実施例のスローアウェイチッ
プの構造について説明する。

【００１８】図１に示す様に、本実施例のスローアウェ
イチップ１は、略正方形の板状（縦・横各１２．７ｍｍ
×厚み４．７６ｍｍ）のチップであり、その板厚方向の
両側（すくい面側）にて切削加工が可能な様に、両すく
い面側の周角縁には、刃先（稜）２ａ，２ｂ（２と総称
する）が形成されている。この刃先（切刃）２は、両す
くい面の周角縁にわたり、所定のノーズ半径Ｒを有する
ノーズ３を介して、略四角環状に形成されている。

【００１９】詳しくは、刃先２を構成するランド部４
は、スローアウェイチップ１の板厚方向の両すくい面
に、略四角環状に形成され、このランド部の幅（ランド
幅）は、全周にわたり一定（例えば０．３ｍｍ）に設定
されている。また、両すくい面側において、ランド部４
の内側には、切削抵抗を低減する目的で、モールドブレ
ーカであるチップブレーカ（ブレーカ溝）５が、全周に
わたり同じ幅（例えば２．０ｍｍ）で、略四角環状に設
けられている。

【００２０】更に、両すくい面側において、チップブレ
ーカ５の内側（中心）には、スローアウェイチップ１を
ホルダー６（図３参照）に固定するために使用される座
り部７が設けられている。この座り部７は、その表面が
平坦で、略四角形状（例えば縦・横１２．７ｍｍ）であ
る。

【００２１】このうち、前記ランド部４は、図１のＡ−
Ａ断面図である図２に拡大して示す様に、刃先２の先端
側のチャンファリング部８と中心側のストレート部９と
から構成されている。チャンファリング部８とは、チッ
ピングを防止するために設けられるもので、ここでは、
全周にわたり幅０．１ｍｍ、（ストレート部９からの）
傾斜角度２５゜となる様に、略四角環状に設定されてい
る。また、ストレート部９は、その表面が平坦であり、
全周にわたり幅０．２ｍｍとなる様に、略四角環状に設
定されている。

【００２２】特に、本実施例では、ストレート部９の板
厚方向の表面と座り部７の板厚方向の表面とが同一平面
となる様に、即ち同図の点線で示す様に、ストレート部
９と座り部７との高さが同じで、その板厚方向の寸法に
差が生じない様に設定されている。

【００２３】ｂ）本実施例のスローアウェイチップ１
は、窒化珪素を主成分とする（他に若干の焼結助剤等を
含む）窒化珪素製のチップであり、型押し（プレス）成
形品を、常法により焼結して得たものである。尚、本実
施例のスローアウェイチップ１は、金型による型押しの
際に、同時にチップブレーカ５をも形成するので、この
チップブレーカ５は、いわゆるモールドブレーカであ
る。

【００２４】ｃ）次に、本実施例のスローアウェイチッ
プ１の使用方法について説明する。例えば、鋳鉄の丸棒
（黒皮）の外径を粗切削する場合で説明する。この場合
には、図３に示す様に、ホルダー６の取付部分にスロー
アウェイチップ１を配置して、押え１１によりスローア
ウェイチップ１の座り部７をホルダー６側に押圧してク
ランプする。尚、押え１１の他端は図示しないネジにて
ホルダー６に固定する。

【００２５】特に、本実施例の場合には、実際に加工を
行なう外側の刃先２ａのストレート部９ａと座り部７と
の高さは同じであるので、クランプした際には、ホルダ
ー６側（内側）の刃先２ｂのストレート部９ｂとホルダ
ー６との間には、隙間は生じない。

【００２６】そして、図４に示す様に、ノーズ３を被加
工物（ワーク）Ｗに押し付けて、所定の切込み量ｄ及び
送り速度ｆで加工する。尚、仕上げ面Ｗｓは、ノーズ３
の先端の刃先２ａで仕上げられる。この様に、本実施例
のスローアウェイチップ１では、内側のストレート部９
ｂとホルダー６との間に隙間がないので、切削加工時
に、切れ粉が内側のストレート部９ｂとホルダー６との
間に入りこまず、よって、内側の刃先２ｂは破損するこ
とがない。しかも、前記間隙がないことにより、スロー
アウェイチップ１が切削加工中にガタ付くことがないの
で、その点からも、内側の刃先２ｂの破損を防止でき
る。

【００２７】また、本実施例のスローアウェイチップ１
では、好適な位置にチップブレーカ５を確保できるの
で、切削抵抗を低減できる。それにより、薄肉のワーク
Ｗを加工する場合でも、ワークＷがたわむことがなく、
精密な加工を行なうことができる。

【００２８】更に、ランド部４には、チャンファリング
部８を備えているので、切削加工の際にチッピングが生
じにくいという利点がある。 ｄ）次に、本実施例の効果を確認するために行った実験
例について説明する。 実験例１では、下記表１及び図５（ａ）に示す様に、
刃先形状を設定するとともに（但しチャンファリング部
Ｂの傾斜は２５゜）、実施例の試料No.１として、スト
レート部と座り部の高さを揃えたスローアウェイチップ
を、１００個作製した。また、比較例の試料No.２とし
て、ストレート部と座り部の高さに所定の差（間隙寸
法）を設定したスローアウェイチップを、１００個作製
した。

【００２９】そして、各試料に対して、下記切削条件に
て、乾式にて切削加工を行ない、この切削加工により、
内側の刃先に、クラックや欠損が発生した試料の個数を
数えた。その結果を、同じく下記表１に記す。 被削材 ；ＪＩＳ ＦＣ２００ 切削速度Ｖ；３００ ［ｍ／ｍｉｎ］ 送り速度ｆ；０．３ ［ｍｍ／ｒｅｖ］ 切込み量 ；２．０ ［ｍｍ］ 切削加工量；１０ ［ｍｍ］ 尚、切削加工量は、被削材の端部からの（軸方向の）幅
で示す。

【００３０】

【表１】

【００３１】この表１から明かな様に、本実施例のスロ
ーアウェイチップは、内側の刃先が破損しにくく好適で
ある。それに対して、比較例のスローアウェイチップ
は、内側の刃先の破損が多く好ましくない。 実験例２では、ストレート部と座り部の高さを揃えた
スローアウェイチップであって、且つ、下記表２及び前
記図５（ａ）に示す様に、刃先形状を変えたスローアウ
ェイチップを作製し（但しチャンファリング部Ｂの傾斜
は２５゜）、下記表２の送り速度ｆを変更し、下記の切
削条件にて、乾式にて切削加工を行った。

【００３２】そして、各試料に対して、切削加工をする
際の背分力を、圧電素子を用いた動力計により測定し
た。その結果を、同じく表２に記す。 被削材 ；ＪＩＳ ＦＣ２００ 切削速度Ｖ；３００ ［ｍ／ｍｉｎ］ 送り速度ｆ；表２参照［ｍｍ／ｒｅｖ］ 切込み量 ；２．０ ［ｍｍ］ 切削加工量；１０ ［ｍｍ］ 尚、切削加工量は、被削材の端部からの（軸方向の）幅
で示す。

【００３３】また、前記背分力とは、図５（ｂ）に示す
様に、切削時の切り込み方向の切削抵抗を示す分力Ｆp
であり、この分力値が大きいと工作精度が悪くなる。
尚、図５（ｂ）において、Ｒは切削抵抗の合力、Ｆvは
主分力、Ｆfは送り分力である。

【００３４】

【表２】

【００３５】尚、表２において、*は欠損発生を示して
いる。この表２から明かな様に、本実施例のスローアウ
ェイチップは、ランド幅Ａやストレート部の幅Ｃの寸法
が小さいものほど、切削加工の際に切削抵抗を示す背分
力が小さいので、好適である。

【００３６】それに対して、比較例のスローアウェイチ
ップとして、ストレート部がないもの（試料No.４，１
１）は、欠損が発生しているので好ましくない。また、
チップブレーカがないものは、切削抵抗が大きく好まし
くない。また、切削抵抗を低減するには、送り速度ｆ
（１回転当りの送り量）の値が刃先形状Ａの寸法と略同
等か又は大きいことが望ましいが、そのことが前記表２
に示されている。

【００３７】即ち、表２にて網目状の部分で示すが、実
施例のうち、前記条件を満たす（詳しくは条件よりやや
狭い）範囲内では、背分力（従って切削抵抗）が小さ
く、一層好ましいことが分かる。尚、本発明は前記実施
例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸
脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはい
うまでもない。

【００３８】（１）例えば前記実施例では、四角のチッ
プを例に挙げたが、本発明は、三角形やひし形等の他の
形状のチップにも適用できる。 （２）また、ノーズをＲ形状としたが、これに限定され
るものではなく、例えば面取形状のものにも適用でき
る。

【００３９】（３）更に、スローアウェイチップの材質
としては、窒化珪素以外に、他のセラミックをも使用で
きる。 （４）また、前記実施例では、クランプタイプ（穴な
し）を例に挙げたが、取付穴のあるピンタイプ（穴あ
り）のものにも適用できる。

【００４０】

【発明の効果】以上詳述した様に、本発明はスローアウ
ェイチップでは、ランド部のストレート部と座り部との
高さが同じであるので、ホルダー側（内側）のストレー
ト部とホルダーとの間には隙間が生じない。そのため、
切削加工を行なう際には、ストレート部とホルダーの間
に切り粉が入らないので、切り粉によって内側の刃先が
破損することがない。

【００４１】また、ホルダーと内側のストレート部の間
には隙間がないので、加工の際に、スローアウェイチッ
プがガタ付くことがない。そのため、内側の刃先が破損
することがない。更に、モールドブレーカを備えている
ので、切削抵抗が少なく、しかも、ランド部にチャンフ
ァリング部を備えているので、刃先のチッピングを防止
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施例のスローアウェイチップを示し、
（ａ）はその平面図、（ｂ）はその側面図である。

【図２】 スローアウェイチップの断面を示す図１のＡ
−Ａ断面図である。

【図３】 スローアウェイチップをホルダーに固定した
状態を示す説明図である。

【図４】 スローアウェイチップによる加工方法を示す
説明図である。

【図５】 実験方法を示し、（ａ）は刃先の寸法を示す
説明図、（ｂ）は背分力を示す説明図である。

【図６】 従来技術を示す説明図である。

【図７】 従来技術の問題点を示す説明図である。

【符号の説明】

１…スローアウェイチップ ２、２ａ、２ｂ…刃先（切刃） ４…ランド部 ５…モールドブレーカ（チップブレーカ、ブレーカ溝） ６…ホルダー ７…座り部 ８…チャンファリング部 ９、９ａ、９ｂ…ストレート部 １１…押え

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 セラミックス製のモールドブレーカ付き
   スローアウェイチップであって、 該スローアウェイチップの板厚方向の両側に刃先を備え
   るとともに、該両側の切刃において、ランド部のストレ
   ート部と座り部との高さが同じであり、且つ該ランド部
   にチャンファリング部を備えることを特徴とするスロー
   アウェイチップ。
2. 【請求項２】 前記スローアウェイチップが、窒化珪素
   を主成分とすることを特徴とする前記請求項１に記載の
   スローアウェイチップ。
3. 【請求項３】 前記ランド部の幅が、０ｍｍを上回り、
   ０．５ｍｍ以下であることを特徴とする前記請求項１又
   は２に記載のスローアウェイチップ。
4. 【請求項４】 前記ストレート部の幅が、０ｍｍを上回
   り、０．４ｍｍ以下であることを特徴とする前記請求項
   １〜３のいずれかに記載のスローアウェイチップ。