JPH1058205A - スローアウェイチップ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 仕上げ面の面粗度を小さくできるとともに、
送り速度を上げることができ、しかも容易に再使用可能
なスローアウェイチップを提供する。 【解決手段】 スローアウェイチップチップ１の長手方
向の両方の先端部分には、切削加工を行なうために同じ
形状の加工部３が各々設けてある。この加工部３の先端
には、幅方向に伸びる切刃先端部５が設けられており、
切刃先端部５の幅方向の両端には、Ｒ加工が施されたコ
ーナ部７が各々設けられている。各コーナ部７から後方
に伸びる各側面部１３には、スローアウェイチップ１の
幅を同じにする様に平行に伸びる一対のストレート部９
が設けられている。つまり、ストレート部９は、中心軸
Ｔと平行に、即ち切刃先端部５の刃先５ａと垂直になる
様に形成されている。また、各ストレート部９の後端か
らは、テーパ部１１が伸びており、側面部１３が絞られ
る形状となっている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、溝入れ加工等に使
用することができるスローアウェイチップに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来より、例えば溝入れ用のスローアウ
ェイチップとしては、例えば図６（ａ）に示す様に、加
工方向先端に切刃先端部Ｐ１を備えた柱状のものが知ら
れている。この種のスローアウェイチップには、切刃先
端部Ｐ１の幅方向の両端にＲ加工を施したコーナ部Ｐ２
を有しているものがあり、このコーナ部Ｐ２から後方に
伸びる側面Ｐ３は、切削する際の摩擦抵抗を低減する目
的でテーパ状に形成されて、スローアウェイチップの幅
が徐々に狭くなっている。

【０００３】また、図６（ｂ）に示す様に、切刃先端部
Ｐ５の左右の両コーナＰ６をＣ面取りカットし、前記と
同様に、このコーナＰ６から後方に伸びる側面Ｐ７を、
テーパ状にしたものが知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
なスローアウェイチップを用いて例えば溝入れ加工を行
なう場合には、下記〜のような問題があり、一層の
改善が求められている。 面粗度がでない 上述したスローアウェイチップは、Ｒ加工されたコーナ
部から後方に向けてテーパ状に内側に絞られる側面形状
をしているので、スローアウェイチップの側面は、被加
工物と点で接触することになり、よって、被加工物の加
工面（仕上げ面）が粗い（面粗度が大きい）という問題
があった。

【０００５】また、この面粗度は、理論的には下記式
（１）で求められるが、溝入れ加工においては、被加工
物に形成される溝の角部分の形状は、通常、角部分の応
力の集中による破損を防止する等のために指定されるの
で、また、スローアウェイチップにおいても、スローア
ウェイチップのコーナ部の破損等を防止するために、ス
ローアウェイチップのコーナ部のＲ形状にも予め制約が
ある。そのため、この制約（Ｒ＝一定）の下で、面粗度
を良くする（＝面粗度の値を下げる）ためには、式
（１）から明かな様に、送り速度ｆを低減しなければな
らない。

【０００６】面粗度＝ｆ²／８Ｒ …（１） 但し、ｆ；１回転当りの送り量（＝送り速度）［ｍｍ／
ｒｅｖ］ Ｒ；コーナ半径［ｍｍ］ ところが、送り速度ｆを下げると、加工速度が低減して
生産性が悪くなり、しかも（送り速度ｆが下がるにつれ
て）スローアウェイチップが早く摩耗するという傾向が
あるので、実際にはそれほど送り速度ｆを下げることは
できない。つまり、コーナ半径Ｒが決っており、しかも
送り速度ｆがある範囲に規定されている場合には、結果
として面粗度が出ないということになる。

【０００７】送り速度を上げられない また、前記式（１）から明かな様に、送り速度ｆを上げ
ると面粗度が大きくなり、しかも面粗度にも当然ながら
要求される値があるので、実際にはあまり送り速度ｆを
上げることができないという問題があった。

【０００８】再研磨ができない 更に、例えば前記図６（ａ）に示す様なスローアウェイ
チップでは、先端の方が広がっている形状をしているの
で、例えば先端の切刃を（先端と平行に）研磨して再使
用しようとしても、スローアウェイチップの幅（従って
形成される溝幅）が違ってしまい、実際には再使用でき
ないという問題があった。

【０００９】本発明は、前記課題を解決するためになさ
れたものであり、仕上げ面の面粗度を小さくできるとと
もに、送り速度を上げることができ、しかも容易に再使
用可能なスローアウェイチップを提供することを目的と
する。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の請求項１の発明は、加工方向先端に切刃先端部を備え
るとともに、幅方向の両側に側面部を備えたスローアウ
ェイチップにおいて、前記切刃先端部の前記幅方向の両
側に、該切刃先端部と前記側面部とをつなぐ曲線状のコ
ーナ部を各々設けるとともに、該両コーナ部から各々後
方に伸びる前記側面部にスローアウェイチップの幅を変
えないように各々ストレート部を設けたことを特徴とす
るスローアウェイチップを要旨とする。

【００１１】前記コーナ部としては、通常真円となるＲ
形状が採用されるが、それ以外の滑らかな曲面も採用す
ることができる。請求項２の発明は、前記ストレート部
の加工方向の長さが、０．０５〜０．５ｍｍの範囲であ
ることを特徴とする前記請求項１に記載のスローアウェ
イチップを要旨とする。

【００１２】請求項３の発明は、前記ストレート部の加
工方向の長さが、０．１〜０．３ｍｍの範囲であること
を特徴とする前記請求項１又は２に記載のスローアウェ
イチップを要旨とする。請求項４の発明は、前記スロー
アウェイチップは溝入れ用であることを特徴とする前記
請求項１〜３のいずれかに記載のスローアウェイチップ
を要旨とする。

【００１３】

【発明の実施の形態】請求項１の発明では、スローアウ
ェイチップの側面部にスローアウェイチップの幅を変え
ないストレート部を設けている。従って、加工の際に
は、このストレート部があるため仕上げ面に凹凸が発生
しないので、仕上げ面の面粗度が良くなる。

【００１４】また、前記式（１）から明なように、コー
ナ半径Ｒが大きければ送り速度ｆを上げても面粗度は大
きくならない。つまり、本発明では、ストレート部があ
ることにより、疑似的に大きなＲがある場合と同様に作
用するので、面粗度を上げることなく送り速度ｆを増加
させることができる。

【００１５】更に、ストレート部では、スローアウェイ
チップの幅は同じであるので、切刃先端部が摩耗した場
合には、この切刃先端部を（先端と平行に）再研磨して
削り落としても、スローアウェイチップの幅は変化しな
い。よって、スローアウェイチップを再度使用すること
が可能となる。

【００１６】請求項２の発明では、ストレート部の加工
方向の長さが、０．０５〜０．５ｍｍの範囲に設定され
ている。実際に加工する場合には、この範囲であれば、
通常の溝入れ加工等に用いると、従来と同じ様な加工条
件であっても、仕上げ面の面粗度を従来より小さくする
ことができる。

【００１７】請求項３の発明では、ストレート部の加工
方向の長さが、０．１〜０．３ｍｍの範囲に設定されて
いる。この範囲であれば、スローアウェイチップを用い
る通常のほとんどの加工において効果があるので一層好
適である。

【００１８】請求項４の発明では、上述した構成のスロ
ーアウェイチップを溝入れ用に使用すると、仕上げ面の
優れた溝加工を迅速に行なうことができるので好適であ
る。

【００１９】

【実施例】次に、本発明のスローアウェイチップの実施
例について説明する。 ａ）図２に示す様に、本実施例のスローアウェイチップ
１は、上面（図上方）から見ると中央が僅かにくびれて
いる柱状であり、その長手方向（図の矢印Ａ，Ｂ方向）
及び短手方向（幅方向＝矢印Ｃ，Ｄ方向）において対称
となっている。尚、このスローアウェイチップ１の寸法
は、長手方向長さ２０ｍｍ×幅方向長さ４．０ｍｍ×厚
さ８．５ｍｍである。

【００２０】このスローアウェイチップチップ１の長手
方向の両方の先端部分には、切削加工を行なうために同
じ形状の加工部３が各々設けてあるので、取り付け方向
を逆にすれば、どちら側においても溝入れ加工等の切削
加工が可能である。前記加工部３の先端には、前記幅方
向に伸びる切刃先端部５が設けられており、この切刃先
端部５の幅方向の両端には、半径０．４ｍｍのＲ加工が
施されたコーナ部７が各々設けられている。

【００２１】特に本実施例のスローアウェイチップ１で
は、図３（ａ）にその平面を模式的に示す様に、前記各
コーナ部７から後方（図の右方向；スローアウェイチッ
プの中央の方向）に伸びる各側面部１３に、スローアウ
ェイチップ１の幅を同じする様に平行に伸びる一対のス
トレート部９が設けられている。つまり、このストレー
ト部９は、（一点鎖線で示す）中心軸Ｔと平行に、即ち
切刃先端部５の刃先５ａと垂直になる様に形成されてい
る。尚、ストレート部９の加工方向（例えば矢印Ａ方
向）の長さは、０．３ｍｍである。

【００２２】そして、各ストレート部９の後端からは、
側面部１３を構成するテーパ部１１が伸びている。つま
り、テーパ部１１は、両側面部１３の間隔が中心軸Ｔに
向かって狭められる様に、具体的にはテーパ角が２゜と
なる様に形成されている。尚、側面部１３全体は、スト
レート部９とテーパ部１１と前記くびれた部分とから構
成されている。

【００２３】また、図３（ｂ）にその側面を模式的に示
す様に、切刃先端部５の先端面５ｂは図の下方に向かっ
て１４゜中央側に傾斜したテーパとなっている。 ｂ）上述した構造のスローアウェイチップ１は、高硬度
高靱性を有する例えばサーメットからなる。

【００２４】本実施例のスローアウェイチップ１は、そ
の形状に特徴があり特に製造方法に特徴があるわけでは
ないが、例えば下記の様な周知の製造方法により製造す
ることができる。例えば本実施例のサーメットは、原料
粉末として、所定粒径のＴｉＣＮ粉末、ＴｉＣ粉末、Ｔ
ｉＮ粉末、ＺｒＣ粉末、ＴａＣ粉末、ＷＣ粉末、Ｍｏ₂
Ｃ粉末、Ｎｉ粉末、Ｃｏ粉末を用意し、これらを所定の
配合比率で配合し、ボールミルにて湿式粉砕混合し、乾
燥した後、所定圧力でプレス成形して圧粉体とする。つ
いでこの圧粉体を、所定の条件（１４００〜１６００
℃）で焼結し、所定の形状に研磨することにより、スロ
ーアウェイチップチップ１を得る。

【００２５】ｃ）本実施例のスローアウェイチップ１を
使用する場合には、まず、例えば図４に示す様に、スロ
ーアウェイチップ１をチップホルダ２１の先端に固定す
る。具体的には、スローアウェイチップ１をチップホル
ダ２１の先端に設けられたチップ受け部２３に嵌め込
み、スローアウェイチップ１の上面１ａを板状の押え金
２５で抑えて、チップ受け部２３と押え金２５でスロー
アウェイチップ１を挟む様にし、ネジ２７で固定する。

【００２６】この状態で、図５に示す様に、回転する被
加工物２９に向けて、チップホルダ２１ごとスローアウ
ェイチップ１を矢印Ａ方向に徐々に押し出してゆき、
（回転する）被加工物２９に対する溝入れ加工を行な
う。この様に、本実施例のスローアウェイチップ１は、
Ｒ状のコーナ部７から後方に（スローアウェイチップ１
の幅を変えない様に）まっすぐに伸びるストレート部９
を備えている。

【００２７】よって、加工の際には、このストレート部
９が被加工物２９の仕上げ面２９ａの凹凸を削るので、
送り速度を下げなくても、仕上げ面２９ａの面粗度が小
さくなるという効果がある。また、送り速度を上げた場
合でも、従来よりは良好な面粗度が得られるので、送り
速度を上げて生産性を向上することができる。尚、送り
速度を上げると、同じ加工数でもスローアウェイチップ
１の摩耗が少ないので、スローアウェイチップ１の寿命
が伸びるという利点がある。

【００２８】更に、ストレート部９では、スローアウェ
イチップ１の幅は同じであるので、切刃先端部５が摩耗
した場合には、この切刃先端部５を再研磨して削り落と
して、スローアウェイチップ１を再度使用することが可
能となる。 （実験例１）次に、本実施例の効果を確認するために行
った面粗度に関する実験例について説明する。

【００２９】実験に使用するスローアウェイチップとし
て、上述した実施例と同様なストレート部を有するスロ
ーアウェイチップ（試料No.１）を用いるとともに、比
較例として、ストレート部がなくコーナ部がＲ形状のス
ローアウェイチップ（試料No.２）と、ストレート部が
なくコーナ部がＣ面取カットされたスローアウェイチッ
プ（試料No.３）を用い、下記の加工条件にて切削加工
を行った。尚、加工の際にはＷＥＴにて切削した。

【００３０】 切削する被加工物；合金鋼（ＪＩＳ ＳＣｒ４２０） 切削速度；１５０ｍ／ｍｉｎ 送り速度；０．１２ｍｍ／ｒｅｖ そして、被加工物の仕上げ面の面粗度（１０点平均粗
さ；ＲZ）を測定した。その結果を下記表１に記す。

【００３１】

【表１】

【００３２】この表１から明かな様に、同じ切削条件で
あっても、本実施例のものは、面粗度が５μｍと小さく
好適であったが、比較例のものは、いずれも面粗度が
９．８μｍ以上と大きく好ましくない。 （実験例２）次に、本実施例の効果を確認するために行
った送り速度に関する実験例について説明する。

【００３３】実験に使用するスローアウェイチップとし
て、上述した実施例と同様なストレート部を有するスロ
ーアウェイチップ（試料No.４）を用いるとともに、比
較例として、ストレート部がなくコーナ部がＲ形状のス
ローアウェイチップ（試料No.５）と、ストレート部が
なくコーナ部がＣ面取カットされたスローアウェイチッ
プ（試料No.６）を用いた。

【００３４】切削する被加工物としては、合金鋼（ＪＩ
Ｓ ＳＣｒ４２０）を採用し、ＷＥＴにて切削した。そ
して、被加工物の目的とする仕上げ面の面粗度（１０点
平均粗さ；ＲZ）とするために、切削の際の送り速度を
変更した。目的とする面粗度としては、６．０［μｍＲ
Z］とし、その面粗度が得られる送り速度を、下記表２
に記す。尚、実際に得られた面粗度も合わせて記載す
る。

【００３５】

【表２】

【００３６】この表２から明かな様に、本実施例のもの
は、送り速度を上げても目的とする面粗度を実現できる
が、比較例のものは、目的とする面粗度を実現するため
には、あまり送り速度を上げることができないことが分
かる。 （実験例３）次に、本実施例の効果を確認するために行
ったストレート部の長さに関する実験例について説明す
る。

【００３７】実験に使用するスローアウェイチップとし
て、上述した実施例と同様なストレート部を有するスロ
ーアウェイチップ（試料No.７〜１２）を用い、その長
さを変更した。尚、下記の加工条件にて切削加工を行な
い、その際、ＷＥＴにて切削した。

【００３８】切削する被加工物；合金鋼（ＪＩＳ ＳＣ
ｒ４２０） 送り速度；０．０５ｍｍ／ｒｅｖ そして、被加工物の仕上げ面の面粗度（１０点平均粗
さ；ＲZ）を測定した。その結果を下記表３に記す。

【００３９】

【表３】

【００４０】この表３から明かな様に、ストレート部の
長さが送り速度（１回転当りの送り量）より長いと、面
粗度が十分に小さいことが分かる。また、実際の数値と
して、ストレート部の長さが、０．０５〜０．５ｍｍの
範囲の場合には、面粗度が十分に小さいことが分かる。
また、ストレート部の長さが、０．１〜０．３ｍｍの場
合は、最も面粗度が良好であった。尚、ストレート部の
長さが０．３ｍｍを超えると、びびり振動により、面粗
度が逆に粗くなる傾向がある。

【００４１】尚、本発明は前記実施例になんら限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲におい
て種々の態様で実施しうることはいうまでもない。 （１）例えばコーナ部を真円のＲとするだけでなく、他
の曲線の形状を採用できる。

【００４２】（２）また、スローアウェイチップを構成
する材料として、サーメット以外に、スローアウェイチ
ップに用いられる超硬やセラミック等の各種の材料を使
用できる。 （３）更に、スローアウェイチップを他の材料でコーテ
ィングしたものも適用できる。スローアウェイチップ
が、例えば超硬合金にＰＶＤによりＴｉＮ又はＴｉＣＮ
をコーティングしたもの、例えばＳｉ₃Ｎ₄等のセラミッ
クにＣＶＤによりＡｌ₂Ｏ₃、ＴｉＮ、又はＴｉＣをコー
ティングしたもの、例えばサーメットにＰＶＤによりＴ
ｉＮをコーティングしたものを用いることができる。

【００４３】

【発明の効果】以上詳述した様に、本発明のスローアウ
ェイチップでは、スローアウェイチップの側面部にスロ
ーアウェイチップの幅を変えないようなストレート部を
設けている。

【００４４】従って、加工の際には、このストレート部
があるため仕上げ面に凹凸が発生しないので、仕上げ面
の面粗度が良くなる。また、本発明では、ストレート部
があることにより、面粗度を大きくすることなく送り速
度を上げることができる。よって、生産性が向上すると
ともに、スローアウェイチップの寿命を伸ばすことがで
きる。

【００４５】更に、ストレート部では、スローアウェイ
チップの幅は同じであるので、切刃先端部が摩耗した場
合には、この切刃先端部を再研磨して、スローアウェイ
チップを再度使用することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明のスローアウェイチップの作用を説明
するための説明図である。

【図２】 実施例のスローアウェイチップを示す斜視図
である。

【図３】 実施例のスローアウェイチップを模式的に示
し、（ａ）はその平面の一部を示す説明図、（ｂ）はそ
の側面を示す説明図である。

【図４】 実施例のスローアウェイチップを用いた加工
方法を示す説明図である。

【図５】 実施例のスローアウェイチップを用いた加工
状態を示す説明図である。

【図６】 従来技術の説明図である。

【符号の説明】

１…スローアウェイチップ ３…加工部 ５…切刃先端部 ７…コーナ部 ９…ストレート部 １１…テーパ部 １３…側面部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加工方向先端に切刃先端部を備えるとと
   もに、幅方向の両側に側面部を備えたスローアウェイチ
   ップにおいて、 前記切刃先端部の前記幅方向の両側に、該切刃先端部と
   前記側面部とをつなぐ曲線状のコーナ部を各々設けると
   ともに、該両コーナ部から各々後方に伸びる前記側面部
   にスローアウェイチップの幅を変えないように各々スト
   レート部を設けたことを特徴とするスローアウェイチッ
   プ。
2. 【請求項２】 前記ストレート部の加工方向の長さが、
   ０．０５〜０．５ｍｍの範囲であることを特徴とする前
   記請求項１に記載のスローアウェイチップ。
3. 【請求項３】 前記ストレート部の加工方向の長さが、
   ０．１〜０．３ｍｍの範囲であることを特徴とする前記
   請求項１又は２に記載のスローアウェイチップ。
4. 【請求項４】 前記スローアウェイチップは溝入れ用で
   あることを特徴とする前記請求項１〜３のいずれかに記
   載のスローアウェイチップ。