JPH0513636Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この考案は、ウオークイン機構を備えた車両用
シートに関する。

《従来の技術》 ２ドア車においては、後席への乗降を容易にす
るために、前席のシートバツクを前倒しするとシ
ートクツシヨンを支持するシートスライド装置の
ロツクが外れてシートクツシヨンがばねにより自
動的に前進するウオークイン機構が備えられてい
るものがある。またこのような車両シートは、シ
ートバツクをシートクツシヨンに対し傾動するた
めのリクライニング装置を備えているものが一般
的である。

リクライニング装置が無段階調整式すなわち歯
車が常時噛合つている方式のものは、通常はシー
トバツクをシートクツシヨン上に前倒しする構造
にはなつていないので、これを前倒しするために
は、リクライニング装置のベース前端部をシート
クツシヨン側部に支軸を介して回動可能に取り付
け、この支軸の回りにシートバツクを前倒しする
構成をとつている。またリクライニング装置が段
階調整式のものでも、このような構成をとるとシ
ートバツクを前倒しした際にシートバツク後方に
乗降のための十分なスペースが得られるので、こ
の方式を採用することがある。

第６図には、このような方式のウオークイン装
置を備えた車両用シートの一例が示されている。
シートクツシヨン１は、シートスライド装置２を
介して車体フロアに前後動可能に支持されてい
る。シートクツシヨン１の後部には、シートバツ
ク３の下部がリクライニング装置４により前後方
向に傾動可能に結合されている。リクライニング
装置４のアーム５はシートバツク３に固定され、
ベース６は、その前端部を支軸７によりシートク
ツシヨン１の側部に回動可能に取り付けられてい
る。ベース６の後端部には、シートクツシヨン１
側部に突設されたロツド状のストライカ８が嵌入
する凹部９が形成されるとともに、この凹部９と
ともにストライカ８を保持するラツチ１０がピン
１１により回動可能に設けられている。ラツチ１
０は、図示されないばねによりストライカ８側に
回動付勢されるとともに、シートバツク３側部に
設けられたノブ１２にワイヤ１３により連結され
ている。また、ベース６前端部の支軸７にはワイ
ヤ保持部材１４が固定され、この先端部にはワイ
ヤ１５の一端が連結され、その他端はシートスラ
イド装置２のロツク爪に連結されている。これら
各部材によりウオークイン機構１６が構成されて
いる。

シートスライド装置２およびリクライニング装
置４は、それぞれ独立して調整可能で着座者の体
格に適合した位置および角度に調整される。そし
てウオークイン機構１６を動作させるときは、ま
ずシートバツク３側部のノブ１２を操作してラツ
チ１０を引き、ラツチ１０をストライカ８から外
してシートバツク３を前倒しする。これにより、
シートバツク３が、ロツク状態のリクライニング
装置４とともにそのベース６前端部の支軸７の回
りに回動し、支軸７に固定されたワイヤ保持部材
１４によりワイヤ１５が引かれてシートスライド
装置２のロツクを解除し、シートクツシヨン１は
図示されないばねの力により最前位置まで前進す
る。後席への乗降が終つてシートバツク３を後倒
させると、同時にシートクツシヨン１も後進し、
ラツチ１０がストライカ８の当つて一旦戻された
後、再び逆方向に戻つてストライカ８をベース６
の溝９とともに保持し、ワイヤ１５が戻されてシ
ートスライド装置２がロツクされる。

《考案が解決しようとする課題》 上記したように、このようなウオークイン機構
１６を備えた車両用シートにおいては、リクライ
ニング装置４が独立して調整される。このため、
シートバツク３をその通常使用状態における標準
使用装置Ｐから前倒し位置Ｑまで前倒しした場合
と、標準使用位置Ｐよりも後傾したフルリクライ
ニング状態を含む後傾位置Ｒから前倒し位置Ｑま
で前倒しした場合とでは、ワイヤ保持部材１４の
回動角が異なるので、そのワイヤ１５の引き量も
異なることになる。この種のシートでは、シート
バツク３の標準使用位置Ｐからワイヤ１５を引い
たときにシートスライド装置２のロツクが解除さ
れるように設計されているので、後傾位置Ｒから
前倒し位置Ｑまで前倒しすると、標準使用位置Ｐ
から前倒し位置Ｑまで前倒しする場合に比べてワ
イヤ１５の引き量が多くなり、これを無理に行な
うとワイヤ１５の強度がもたなくなるか、関連各
部に無理な力が加わつて、最悪の場合には破損す
る恐れがある。

そこでこの考案の目的は、この種のウオークイ
ン機構において、シートスライド装置のロツク解
除を行なうワイヤの過度の引き量を吸収できるよ
うにした車両用シートを提供することにある。

《課題を解決するための手段》 この考案による車両用シートは、シートクツシ
ヨンを車体フロアに対し前後動可能に支持するシ
ートスライド装置と、シートバツクをシートクツ
シヨンに対し傾動可能に結合するリクライニング
装置と、前記リクライニング装置のベース前端部
が前記シートクツシヨン側部に支軸を介して回動
可能に結合されて前記シートバツクを前記支軸の
回りに前倒しすると前記支軸に固定されたワイヤ
保持部材によりワイヤが引かれて前記シートスラ
イド装置のロツクが解除されシートクツシヨンが
前方に移動するウオークイン機構を備えた車両用
シートであつて、前記ワイヤがその一端を前記ワ
イヤ保持部材に取り付けられ、他端を前記シート
スライド装置のロツク爪に係合するカムに取り付
けられ、前記カムが、前記ワイヤの一定量の引き
により前記ロツク爪を作動させてロツク解除を行
なう第１カム面と、前記一定量以上の引きに対し
ては前記ロツク爪の作動状態を保持する第２カム
面を有することを特徴とする。

《作用》 シートバツクをその標準使用位置から支軸の回
りに前倒しすると、規定のワイヤ引き量でカムの
第１カム面によつてロツク爪が作動してシートス
ライド装置のロツク解除が行なわれ、ウオークイ
ン機構が動作する。また、シートバツクを標準使
用位置よりも後方の後傾位置から前倒しすると、
規定の引き量でワイヤが引かれてロツク解除が行
なわれた後、さらに前倒し位置までのワイヤの引
きに対しては、カムの第２カム面がロツク爪に作
用してロツク爪のロツク解除状態が保持される。

《実施例》 第１図にはこの考案の一実施例の要部が示され
ている。シートクツシヨンフレーム２１の後部側
面には穴２２が設けられ、これにリクライニング
装置２３のベース２４の前端部に横向きに突設さ
れた支軸２５が回動可能に挿入され、支軸２５の
先端部には、ワイヤ保持部材２６の基端部が回り
止めを施されてねじ２７により固定されている。

ベース２４の後端部には、ラツチ２８がピン２
９により回動可能に取り付けられるとともに、ベ
ース２４に設けられた凹部３０の方向に引張コイ
ルばね３１により回動付勢され、この凹部３０と
ラツチ２８とによりシートクツシヨンフレーム２
１の側面に突設されたストライカ３２を狭持する
ようになつている。またベース２４の後端部に
は、図示されないリクライニング機構を介してア
ームが回動可能に結合され、このアームはシート
バツクフレームに固定され、ラツチ２８にはスト
ライカ３２との係合を解除するためのワイヤ３３
が取り付けられている。

一方、シートスライド装置３４は、そのアツパ
レール３５がシートクツシヨンフレーム２１の下
部に固定され、アツパレール３５に滑動可能に結
合されたロアレール３６が車体フロアに固定され
ている。アツパレール３５の上面には、ブラケツ
ト３７を介して操作レバー３８が回動可能に取り
付けられ、操作レバー３８には、ロツク爪３９の
中間部上部が固定されている。ロアレール３６の
下面には、複数のロツク穴４０を形成されたロツ
クプレート４１が固定され、いずれかのロツク穴
４０にロツク爪３９の下端部の爪３９ａが選択的
に係合している。この状態では、操作レバー３８
の後端部に設けられた捩りコイルばね４２によつ
て保持される。そして、アツパレール３５上面に
固定されたブラケツト３７からは、カム支持片４
３が突出して形成され、このカム支持片４３に、
カム４４がピン４５により回動可能に取り付けら
れている。カム４４は、その周面のカム面がロツ
ク爪３９の操作レバー３８よりも上の上部３９ｂ
に当接するとともに、ワイヤ保持部材２６との間
に剛性を有するワイヤ４６が掛け渡されている。
このワイヤ４６は可撓性を有していても良いが、
その場合には力が正しく伝達されるようにガイド
を設けるとよい。

次に、このウオークイン機構の動作について説
明する。いま、シートバツク側部に設けられたノ
ブを操作してワイヤ３３を介してラツチ２８をス
トライカ３２から外し、シートバツクを支軸２５
の回りに前倒しすると、支軸２５に固定されたワ
イヤ保持部材２６を介してワイヤ４６が引かれる
とともに、ワイヤ４６を介してカム４４がピン４
５の回りに回動してロツク爪３９の上部３９ｂを
押し、下部の爪３９ａがロツク穴４０から抜け出
てロツク解除され、アツパレール３５がロアレー
ル３６に対し図示されないばねの力により最前位
置まで移動する。

カム４４は、第２図に示すように、半径Ｒ１が
漸次増加してロツク爪３９を押圧してロツク解除
を行なうための第１カム面４４ａと、半径Ｒ１の
最大値を一定の半径Ｒ２としてロツク爪３９のロ
ツク解除状態を保持する第２カム面４４ｂとを有
する。各カム面４４ａ，４４ｂが形成される範囲
ａ，ｂは、それぞれほぼ90度である。カム４４
は、常態において範囲ａの第１カム面４４ａがロ
ツク爪３９の上部３９ｂに当接しており、その下
端部の爪３９ａがロツクプレート４１のロツク穴
４０に入り込んでロツク状態を保持している。こ
の状態からシートバツクが前倒しされてワイヤ４
６が引かれると、カム４４はピン４５の回りに時
計回り方向に回動する。第１カム面４４ａは、そ
の半径Ｒ１が漸次増加しているので、ロツク爪３
９の上部３９ｂは、回動する第１カム面４４ａに
押されて操作レバー３８の回りに回動し、その下
端部の爪３９ａがロツクプレート４１のロツク穴
４０から抜け出してロツクが解除される。そして
この動作は、第３図に示すように、第１カム面４
４ａの終端部がロツク爪３９の上部３９ｂに当接
するまで続けられ、続いて第２カム面４４ｂがロ
ツク爪３９の上部３９ｂに当接すると、第２カム
面４４ｂの半径Ｒ２は一定なので、カム４４は、
ロツク爪３９を押すことなくワイヤ４６に引かれ
てさらに回動する。したがつて、ワイヤ４６、ロ
ツク爪３９その他の部材に無理な力が加わること
がなく、第２カム面４４ｂの範囲ｂを適切に定め
ることにより、シートバツクのどのような後傾位
置からも前倒しができるようになる。

第４図および第５図には、上記のようなロータ
リカム４４ではなくスライドカム４７を利用した
この考案の別の実施例の要部が示されている。こ
のスライドカム４７は、ワイヤ４６の一定量の引
きによりロツク爪３９を作動させてロツク解除を
行なう斜面状の第１カム面４７ａと、これに連続
してロツク爪３９のロツク解除状態を保持する直
線状の第２カム面４７ｂとを有する。このカム４
７は、そのスライド方向に長穴４８を有し、この
長穴４８にカム支持片４９の表面に突設された２
本のガイドピン５０，５１が係合して、カム４７
を前後方向に滑動案内する。カム支持片４９は、
第１図に示すのと同様にアツパレール３５に固定
されたブラケツト３７から突出形成してもよく、
独立した部材をアツパレール３５上面に直接固定
してもよい。

シートバツクが前倒しされてワイヤ４６によつ
てカム４７が引かれると、カム４７の斜面状の第
１カム面４７ａによつてロツク爪３９が押されて
ロツク解除が行なわれる。この状態からシートバ
ツクがさらに前倒しされてワイヤ４６が引かれる
と、カム４７の直線状の第２カム面４７ｂがロツ
ク爪３９に当接するので、カム４７がワイヤ４６
にいくら引かれてもロツク爪３９を押すことがな
い。したがつて、ワイヤ４６、ロツク爪３９その
他の部材に無理な力が加わることがなく、第２カ
ム面４７ｂの長さおよび長穴４８の長さを適切に
定めることにより、シートバツクのどのような後
傾位置からの前倒しも可能になる。

《考案の効果》 以上のように、この考案による車両用シート
は、シートバツクの標準使用位置よりも後方の後
傾位置からシートバツクを前倒ししても、ワイヤ
のロツク解除を行なうための規定の引き量よりも
越えた分についてはカムがその分を吸収するの
で、ワイヤおよびその関連部材に無理な力が加わ
ることがなく、操作性の良いかつ信頼性の高いウ
オークイン機構を備えた車両用シートを実現する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案の一実施例を示す要部分解
斜視図、第２図および第３図は、同実施例におけ
る動作説明のための部分平面図、第４図および第
５図は、この考案の別の実施例における動作説明
のための部分平面図、第６図は、従来の車両用シ
ートの概略側面図である。 ２１……シートクツシヨンフレーム、２３……
リクライニング装置、２４……ベース、２５……
支軸、２６……ワイヤ保持部材、３４……シート
スライド装置、３９……ロツク爪、４４……カ
ム、４４ａ……第１カム面、４４ｂ……第２カム
面、４６……ワイヤ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シートクツシヨンを車体フロアに対し前後動可
   能に支持するシートスライド装置と、シートバツ
   クをシートクツシヨンに対し傾動可能に結合する
   リクライニング装置と、前記リクライニング装置
   のベース前端部が前記シートクツシヨン側部に支
   軸を介して回動可能に結合されて前記シートバツ
   クを前記支軸の回りに前倒しすると前記支軸に固
   定されたワイヤ保持部材によりワイヤが引かれて
   前記シートスライド装置のロツクが解除されシー
   トクツシヨンが前方に移動するウオークイン機構
   を備えた車両用シートであつて、前記ワイヤがそ
   の一端を前記ワイヤ保持部材に取り付けられ、他
   端を前記シートスライド装置のロツク爪に係合す
   るカムに取り付けられ、前記カムが、前記ワイヤ
   の一定量の引きにより前記ロツク爪を作動させて
   ロツク解除を行なう第１カム面と、前記一定量以
   上の引きに対しては前記ロツク爪の作動状態を保
   持する第２カム面を有することを特徴とする車両
   用シート。