JPH0115849Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は気筒をＶ型に配設したＶ型エンジンに
おけるブローバイガス通路構造に関する。

［従来の技術］ エンジンにおいて、燃焼室からクランク室に洩
れたブローバイガスは、通常ヘツドカバーの上部
にてオイル除去処理された後吸気系に戻され、再
び燃焼室で燃焼される。ブローバイガス処理をヘ
ツドカバーの上部にて行なう場合は、回収したオ
イルおよびヘツド上部の機器の潤滑に用いたオイ
ルが速やかにオイルパンに戻るための通路が必要
である。オイル戻し通路は、Ｖ型エンジンの場合
には、シリンダがそれぞれ左右に傾斜しているた
めに、流れてくるオイルを受けるためには必然的
に左右バンクの外側面に沿う位置に設けられなけ
ればならない（たとえば特開昭57−183510号公
報）。このオイル戻し通路は通常ブローバイガス
通路も兼ねており、ブローバイガスはクランク室
からヘツドカバー内空間に上り、オイルはヘツド
カバー内空間からクランク室内に流下する。

［考案が解決しようとする問題点］ このようなブローバイガス通路構造において
は、車両旋回時および登降坂時のようにオイルパ
ン内オイルの油面が片寄りを起した場合には、オ
イル戻し通路の下端がオイル油面より下になつて
オイル戻し通路が塞がることがある。このため、
ヘツドカバー内空間とクランク室との間に圧力差
ができ、オイル戻りが悪化する他、ブローバイガ
ス通路より吸気系にオイルが吐出するおそれが出
てくる。

また、高速運転時はクランクシヤフトのバラン
スウエイトの回転による風圧によりオイル面の片
寄りが生じ、片寄り側のヘツド側において前記と
同様の問題が発生する。

また、ブロツク側面にブローバイガス排出口を
設ける場合でも、同様の問題が発生する。

本考案は、上記のような問題を解消するため
に、Ｖ型エンジンにおいて、オイルパン内のオイ
ルの油面に片寄りが生じた場合でも該油面によつ
てブローバイガス通路が閉塞されたり、オイル吐
出が生じたりすることのないブローバイガス通路
構造を提供することを目的とする。

なお、ブローバイガス通路にはブローバイガス
とともにミスト状のオイルが流入するので、この
流入したオイルを極力外部に排出させない通路構
造が望まれる。

［問題点を解決するための手段］ この目的を達成するための、本考案のブローバ
イガス通路構造は次のものから成る。すなわち、
Ｖ型エンジンにおいて、ブローバイガス通路を、
一端がクランクケースの上方でかつ左右バンクの
中間位置においてクランク室の最上壁部に開口
し、他端が大気に直接開放または吸気系に直接接
続される通路のみから構成し、該ブローバイガス
通路の途中に、左右バンクを連結する複数の補強
用リブによつて形成されるオイルセパレータ室を
介装させたことを特徴とするブローバイガス通路
構造。

［作用］ このような構造のブローバイガス通路構造で
は、ブローバイガス通路は、ヘツドカバー内空間
と連通していないので、ヘツドカバー内空間底面
のオイル溜り部に溜まるオイルをクランクケース
内に戻すオイル戻し用通路ではなくブローバイガ
ス専用通路であり、このブローバイガス通路がク
ランクケース側面に無いので、車両旋回時、登降
坂時等にオイルパン内オイルに片寄りが生じて
も、ブローバイガス通路がオイルによつて閉塞さ
れることはない。したがつて、ブローバイガス通
路が閉塞されたような場合に生じることのある圧
力差によるオイル吐出も生じ得ない。これらによ
り安定したブローバイガス排出およびオイル消費
増加防止がはかられる。

また、ブローバイガス通路に流入したオイル
は、ブローバイガス通路の途中に設けられたオイ
ルセパレータ室によつて分離されるため、大気ま
たは吸気系へ排出されるオイル量は極めて少量に
抑えられる。

なお、このオイルセパレータ室は、左右バンク
を連結する複数の補強用リブを利用して形成され
ているので、左右バンク間の空スペースの有効利
用がはかれるとともに、複数のオイルセパレータ
室の配置が可能となる。

［実施例］ 以下に、本考案の望ましい実施例を図面を参照
して説明する。

第１図および第２図は本考案のブローバイガス
通路を装えたＶ型エンジンを示している。図中、
１はクランクケースで内部にクランク室２を有し
ている。クランクケース１には左右にシリンダブ
ロツク３，４が斜め上方にＶ字状に立上つてい
る。シリンダブロツク３，４内のシリンダボアに
はピストン５，６が摺動可能に設けられており、
それぞれコネクテイングロツド７，８を介してク
ランクシヤフト９に連結されている。１０はクラ
ンクシヤフトのバランスウエイトを示している。
シリンダブロツク３，４の上方にはシリンダヘツ
ドがその上にはヘツドカバーが取付けられるが、
これらは図示が省略されている。シリンダブロツ
ク３，４の外側面に沿う位置にはオイル戻し通路
１１，１２が設けられており、ヘツドカバー内空
間からのオイルをクランク室２に戻すようになつ
ている。クランクケース１の下側はオイルパン１
３にて覆われ、オイルパン１３内にはオイル１４
が溜められる。これらのうち左右のシリンダブロ
ツク３，４、シリンダヘツド、ヘツドカバーはそ
れぞれ左右のバンク１５，１６を構成している。

クランクケース１の上方でかつ左右のバンク１
５，１６の中間の位置にはブローバイガス通路１
７が設けられており、下端はクランク室２に開口
している。ブローバイガス通路１７の上部にはオ
イルセパレータ室１８が接続され、オイルセパレ
ータ室１８内にはブローバイガスからオイルを分
離するオイルセパレータ１９が設けられている。
ただし、オイルセパレータ室１８自体が、ブロー
バイガスの壁面との衝突によるセパレータ機能を
有するので、特別にオイルセパレータ１９を設け
なくてもよい。また、ブローバイガス通路１７
は、シリンダブロツクに凹溝を作つてそれをプレ
ートで覆つてセパレータ室１８を形成するとき
は、そのプレートに穿設した孔から成つてもよ
い。オイルセパレータ室１８の下流側にはブロー
バイガス排出口２０が形成されており、ここから
ブローバイガスはヘツドカバー内空間を介さず直
接吸気系または直接大気に開放される。吸気系に
接続される場合はヘツドカバー内空間を介さな
い。

オイルセパレータ室１８はＶ型エンジンの左右
バンク１５，１６の間の従来空きスペースになつ
ていた部分に形成される。図示例では、オイルセ
パレータ室１８は左右バンク１５，１６の補強用
リブ２１により仕切られた部分を利用して形成さ
れており、リブ２１はオイルセパレータ室１８の
構成部品となつている。第２図においては補強用
リブによつて左右バンク１５，１６の間のスペー
スが４つに仕切られ、そのうち中央の２つのスペ
ースにオイルセパレータ室１８が形成され、この
オイルセパレータ室１８のそれぞれの真中にブロ
ーバイガス通路１７が設けられた場合が示されて
いる。

つぎに上記装置における作用について説明す
る。まず、ブローバイガス通路１７またはその連
通部がヘツドカバー内空間には開口していないの
で、ヘツドカバー内室の底面のオイル溜り部に溜
まるオイルはブローバイガス通路１７を通つて流
下することはなく、ブローバイガスと戻しオイル
とは別々の通路を通つて流れる。すなわち、ブロ
ーバイガスはブローバイガス通路１７を通つて、
クランク室２からブローバイガス排出口２０また
は（ヘツドカバー内空間を介さずに）直接吸気系
に流れ、オイルはオイル戻し通路１１，１２を通
つてオイルパン１３へと流れる。したがつて互に
干渉しない。

この状態で、車両旋回時、登降坂時オイルが遠
心力を受けてまたは車両の傾きによつて片寄る
と、または高速時バランスウエイト１０の回転に
よる付勢を受けてオイルが片寄つたとき、油面が
第１図の二点鎖線Ａの位置以上に傾いた場合はオ
イル戻し通路１１，１２の何れか一方は閉塞する
が、このような場合にもブローバイガス通路１７
は閉塞されない。したがつて、ブローバイガスの
流れは安定している。また、閉塞によるガス圧力
の差を受けてオイルがブローバイガス排出口２０
から排出したり、ヘツドカバー内空間に吹き出し
たりするような現象も生じ得ない。また、ヘツド
カバー内空間の底面にも開口していないので、そ
こでのオイルの片寄りによるブローバイガス通路
１７の閉塞もない。

上記通路構造をスペース設計の観点から見て
も、従来空きスペースとなつていたＶ型エンジン
の左右バンク１５，１６間のスペースが有効に利
用されるので、エンジンの大型化を招くことはな
い。ヘツドカバー内のみにオイルセパレータ室を
設ける従来構造では、オイルセパレータ室の容積
確保によるエンジン寸法増大があることを考慮す
れば、左右バンク間の空きスペース利用はエンジ
ン寸法の減少を可能にするものである。また、ブ
ローバイガス通路１７および、または、オイルセ
パレータ室１８、を通るときにオイルミストが分
離されるので、オイルミスト分離作用が促進され
る。また、オイルセパレータ室１８の壁を補強用
リブを兼ねて一体鋳造で形成することもできるの
で、コスト低減も可能になる。

［考案の効果］ 以上説明したことから明きらかなように、本考
案のブローバイガス通路構造によるときは次の効
果が得られる。

ブローバイガス通路が左右バンク中間部にてク
ランク室の最上壁部に開口されて設けられ、か
つ、ブローバイガス専用通路とされているので、
オイルパン内およびヘツドカバー内空間の油面変
動による従来のブローバイガス通路の閉塞の問題
はなくなり、オイル消費増大の問題も除去され
る。

また、ブローバイガス通路の途中に、左右バン
クを連結する複数の補強用リブによつて形成され
るオイルセパレータ室を介装させるようにしてい
るので、左右バンクの空きスペースを有効利用す
ることができ、かつ複数のオイルセパレータ室を
配置することができる。その結果、エンジンの大
型化が解消でき、しかもブローバイガスとオイル
との分離能力を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係るブローバイガ
ス通路構造を備えたＶ型エンジンの部分断面図、
第２図は第１図のＶ型エンジンの平面図、であ
る。 １……クランクケース、２……クランク室、２
ａ……最上壁部、３，４……シリンダブロツク、
５，６……ピストン、９……クランクシヤフト、
１０……バランスウエイト、１１，１２……オイ
ル戻し通路、１３……オイルパン、１４……オイ
ル、１５，１６……左右のバンク、１７……ブロ
ーバイガス通路、１８……オイルセパレータ室、
１９……オイルセパレータ、２０……ブローバイ
ガス排出口、２１……補強用リブ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. Ｖ型エンジンにおいて、ブローバイガス通路
   を、一端がクランクケースの上方でかつ左右バン
   クの中間位置においてクランク室の最上壁部に開
   口し、他端が大気に直接開放または吸気系に直接
   接続される通路のみから構成し、該ブローバイガ
   ス通路の途中に、左右バンクを連結する複数の補
   強用リブによつて形成されるオイルセパレータ室
   を介装させたことを特徴とするブローバイガス通
   路構造。