JP7228038B2 - 密封装置 - Google Patents

Description

本発明は、密封装置に関する。

例えば玉軸受のような転がり軸受は周知であり、例えば自動車のハブに使用されている。転がり軸受の内部を密封する密封装置としては、特許文献１に記載されたものがある。この密封装置は、転がり軸受の外輪に圧入される取付環と、取付環に一体に設けられたシールリングと、内輪に装着されるスリンガを有し、シールリングに形成された複数のリップがスリンガに接触する。複数のリップは、軸受内部の潤滑剤(グリース）を密封する機能と、外部から水やダスト等の異物が軸受内部へ侵入しないように封止する機能を有する。

特開２００５－３３１００２号公報

この種の密封装置については、水（泥水または塩水を含む）の多い環境で使用される場合には、水が密封対象（例えば軸受）の内部に侵入しないように保護する機能を高めることが要求される。また、たとえ水および／またはダストが密封装置に侵入しても、すみやかに水および／またはダストを排出することができるのが望ましい。

そこで、本発明は、異物の排出性能が高く、密封対象への異物からの保護性能が高い密封装置を提供する。

本発明のある態様に係る密封装置は、相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、前記外側部材に取り付けられる円筒部分と、前記円筒部分から前記内側部材に向けて径方向内側に広がる環状部分を有する第１のシール部材と、前記内側部材に取り付けられるスリーブと、前記スリーブから径方向外側に広がるフランジを有しており、前記フランジが前記第１のシール部材の前記環状部分と対向する、第２のシール部材とを有する。前記第１のシール部材は、前記第２のシール部材の前記フランジに向けて延びる、弾性材料で形成された少なくとも１つのリップをさらに有する。前記フランジと前記第１のシール部材の前記円筒部分の間に環状の第１の間隙が設けられている。前記第２のシール部材は、前記フランジから径方向外側かつ前記第１のシール部材の前記円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップをさらに有し、前記ラビリンスリップと前記外側部材との間に第２の間隙が設けられ、前記第２の間隙は、前記第１の間隙より径方向外側にあり、前記第１の間隙に連なる。

この態様においては、第１のシール部材の環状部分と第２のシール部材のフランジの間の空間内には、フランジと円筒部分の間の第１の間隙を通じて、異物が侵入することがありうる。しかし、フランジから径方向外側かつ円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップによって第１の間隙が覆われるため、空間への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップと外側部材との間には第２の間隙が設けられるため、一旦、第１の間隙および／または空間に異物が侵入しても、異物は第２の間隙を通じて排出される。

本発明の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例の部分断面図である。 本発明の実施形態に係る密封装置の部分断面図である。 本発明の実施形態の変形例に係る密封装置の部分断面図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。 図４の向きを変更した密封装置の部分断面図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。 図６の密封装置の一部破断斜視図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。

以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。

図１は、本発明の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例である自動車用のハブ軸受を示す。但し、本発明の用途はハブ軸受には限定されず、他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、以下の説明では、ハブ軸受は、玉軸受であるが、本発明の用途は玉軸受には限定されず、他の種類の転動体を有する、ころ軸受、針軸受などの他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、自動車以外の機械に使用される転がり軸受にも本発明は適用可能である。

このハブ軸受１は、スピンドル（図示せず）が内部に挿入される孔２を有するハブ（内側部材）４と、ハブ４に取り付けられた内輪（内側部材）６と、これらの外側に配置された外輪（外側部材）８と、ハブ４と外輪８の間に１列に配置された複数の玉１０と、内輪６と外輪８の間に１列に配置された複数の玉１２と、これらの玉を定位置に保持する複数の保持器１４，１５とを有する。

外輪８が固定されている一方で、ハブ４および内輪６は、スピンドルの回転に伴って回転する。

スピンドルおよびハブ軸受１の共通の中心軸線Ａｘは、図１の上下方向に延びている。図１においては、中心軸線Ａｘに対する左側部分のみが示されている。詳細には図示しないが、図１の上側は自動車の車輪が配置される外側（アウトボード側）であり、下側は差動歯車などが配置される内側（インボード側）である。図１に示した外側、内側は、それぞれ径方向の外側、内側を意味する。

ハブ軸受１の外輪８は、ハブナックル１６に固定される。ハブ４は、外輪８よりも半径方向外側に張り出したアウトボード側フランジ１８を有する。アウトボード側フランジ１８には、ハブボルト１９によって、車輪を取り付けることができる。

外輪８のアウトボード側の端部の付近には、外輪８とハブ４との間の間隙を封止する密封装置２０が配置されており、外輪８のインボード側の端部の内側には、外輪８と内輪６との間の間隙を封止する密封装置２１が配置されている。これらの密封装置２０，２１の作用により、ハブ軸受１の内部からのグリース、すなわち潤滑剤の流出が防止されるとともに、外部からハブ軸受１の内部への異物（水（泥水または塩水を含む）およびダストを含む）の流入が防止される。図１において、矢印Ｆは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。

密封装置２０は、ハブ軸受１の回転するハブ４と固定された外輪８のアウトボード側の円筒状の端部８Ａとの間に配置され、ハブ４と外輪８との間の間隙を封止する。密封装置２１は、ハブ軸受１の回転する内輪６と固定された外輪８のインボード側の端部８Ｂとの間に配置され、内輪６と外輪８との間の間隙を封止する。

図２に示すように、密封装置２１は、ハブ軸受１の外輪８のインボード側の端部８Ｂと、ハブ軸受１の内輪６との間隙内に配置される。密封装置２１は環状であるが、図２においては、その左側部分のみが示されている。
ている。

密封装置２１は、第１のシール部材２４と第２のシール部材２６を備える複合構造を有する。

第１のシール部材２４は、外輪８に取り付けられ、回転しない固定シール部材である。第１のシール部材２４は、弾性環２８および剛性環３０を有する複合構造である。弾性環２８は、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。剛性環３０は、剛性材料、例えば金属から形成されており、弾性環２８を補強する。剛性環３０は、ほぼＬ字形の断面形状を有する。剛性環３０の一部は、弾性環２８に埋設されており、弾性環２８に密着している。

第１のシール部材２４は、円筒部分２４Ａ、環状部分２４Ｂ、ラジアルリップ２４Ｃ、およびアキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅを有する。円筒部分２４Ａは、外輪８に取り付けられる取付け部を構成する。具体的には、円筒部分２４Ａは、外輪８の端部８Ｂに締まり嵌め方式で嵌め入れられる（すなわち圧入される）。環状部分２４Ｂは、円環状であって、円筒部分２４Ａの径方向内側に配置され、円筒部分２４Ａから内輪６に向けて径方向内側に広がる。円筒部分２４Ａと環状部分２４Ｂは、剛性環３０と弾性環２８から構成されている。

ラジアルリップ２４Ｃおよびアキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅは、環状部分２４Ｂから第２のシール部材２６に向けて延び、これらのリップの先端は第２のシール部材２６に接触する。これらのリップは、弾性環２８から構成されている。

第２のシール部材２６は、スリンガーすなわち回転シール部材とも呼ぶことができる。第２のシール部材２６は、内輪６に取り付けられており、内輪６の回転時に、第２のシール部材２６は内輪６とともに回転し、外部から飛散して来る異物を跳ね飛ばす。

この実施形態では、第２のシール部材２６も、弾性環３２および剛性環３４を有する複合構造である。剛性環３４は、剛性材料、例えば金属から形成されている。

剛性環３４は、ほぼＬ字形の断面形状を有する。具体的には、円筒状のスリーブ３４Ａと、スリーブ３４Ａから径方向外側に広がる円環状のフランジ３４Ｂを備える。スリーブ３４Ａは、内輪６に取り付けられる取付け部を構成する。具体的には、スリーブ３４Ａには、内輪６の端部が締まり嵌め方式で嵌め入れられる（すなわち圧入される）。

フランジ３４Ｂは、スリーブ３４Ａの径方向外側に配置され、径方向外側に広がっており、第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂと対向する。この実施形態では、フランジ３４Ｂは平板であり、スリーブ３４Ａの軸線に対して垂直な平面内にある。

弾性環３２は、剛性環３４のフランジ３４Ｂに密着している。見方を変えると、第２のシール部材２６は、剛性材料のみから形成されたスリーブ３４Ａと、スリーブ３４Ａから径方向外側に広がっており第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂと対向するフランジ３５を有し、フランジ３５が剛性材料と弾性材料から形成されている。

フランジ３５は、剛性環３４のフランジ（フランジ３５の剛性部分）３４Ｂと、弾性環３２のフランジ部分（フランジ３５の弾性部分）３２Ａ，３２Ｂを有する。フランジ３５の弾性部分３２Ａは、剛性部分３４Ｂのスリーブ３４Ａと反対側の面（インボード側の面）の全体に密着させられており、フランジ３５の弾性部分３２Ｂは、弾性部分３２Ａからアウトボード側に延びて、剛性部分３４Ｂの外周面全体に密着させられている。

弾性環３２のフランジ部分３２Ａは、内輪６の回転速度を計測するために使用される。具体的には、弾性環３２は、磁性金属粉およびセラミックス粉を含有する樹脂材料または磁性金属粉およびセラミックス粉を含有するエラストマー材料で形成されており、磁性金属粉によって多数のＳ極とＮ極を有する。弾性環３２のフランジ部分３２Ａにおいては、円周方向に等角間隔をおいて多数のＳ極とＮ極が交互に配置されている。図示しない磁気式ロータリーエンコーダーによって、弾性環３２のフランジ部分３２Ａの回転角度を測定することができる。弾性環３２の材料は、金属粉およびセラミックス粉を含有するため、通常の樹脂材料またはエラストマー材料よりも硬度が高く、異物による損傷を受けにくい。

第１のシール部材２４のラジアルリップ（グリースリップ）２４Ｃは、環状部分２４Ｂの内側端から半径方向内側に延びる。ラジアルリップ２４Ｃは、第２のシール部材２６のスリーブ３４Ａに向けて延び、ラジアルリップ２４Ｃの先端は、スリーブ３４Ａに接触する。ラジアルリップ２４Ｃは、半径方向内側かつアウトボード側に向けて延び、主にハブ軸受１の内部からの潤滑剤の流出を阻止する役割を担う。

第１のシール部材２４のアキシャルリップ（サイドリップ）２４Ｄ，２４Ｅは、環状部分２４Ｂから側方に延びる。アキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅの先端は、半径方向外側かつインボード側に向けて延び、第２のシール部材２６のフランジ３５の剛性部分３４Ｂに接触する。アキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅは、主に外部からハブ軸受１の内部への異物の流入を阻止する役割を担う。

第１のシール部材２４が固定された外輪８に取り付けられている一方、内輪６および第２のシール部材２６は回転するので、ラジアルリップ２４Ｃおよびアキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅは第２のシール部材２６に対して摺動する。

第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａのインボード側の先端と、第２のシール部材２６のフランジ３５の間には、環状の第１の間隙３６が設けられている。第１の間隙３６を通じて、第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂと第２のシール部材２６のフランジ３５の間の空間３８内に、異物が侵入することがある。逆に、空間３８内の異物は、第１の間隙３６を通じて排出することができる。

第２のシール部材２６は、さらに２つのラビリンスリップ４０，４２を有する。

ラビリンスリップ４０は、第２のシール部材２６のフランジ３５（特に弾性部分３２Ａ，３２Ｂ）から径方向外側かつインボード側（大気側）に延びる円錐台状の環である。ラビリンスリップ４０は、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａよりもインボード側に延びており、ラビリンスリップ４０と外輪８との間に環状の第２の間隙４４が設けられる。第２の間隙４４は第１の間隙３６に連なっている。第２の間隙４４は、第１の間隙３６より径方向外側にある。つまり、ラビリンスリップ４０は、第１の間隙３６を少なくとも部分的に覆う。

ラビリンスリップ４２は、フランジ３５から第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂに向けて突出する円筒状の環である。この実施形態では、ラビリンスリップ４２は第２のシール部材２６の最外端縁に設けられている。

この実施形態においては、ラビリンスリップ４０は、フランジ３５の弾性部分３２Ａ，３２Ｂに一体に取り付けられ、ラビリンスリップ４２は、フランジ３５の弾性部分３２Ｂに一体に取り付けられている。すなわち、ラビリンスリップ４０，４２は、弾性環３２の部分である。したがって、ラビリンスリップ４０，４２は、弾性環３２と同じ材料、すなわち磁性金属粉およびセラミックス粉を含有する樹脂材料または磁性金属粉およびセラミックス粉を含有するエラストマー材料から形成されている。ラビリンスリップ４０，４２は、金属粉およびセラミックス粉を含有するので、硬い異物の衝撃への耐久性が高く、耐摩耗性が高い。

この密封装置２１において、第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂと第２のシール部材２６のフランジ３５の間の空間３８内には、フランジ３５と円筒部分２４Ａの間の第１の間隙３６を通じて、異物が侵入することがありうる。しかし、フランジ３５から径方向外側かつ円筒部分２４Ａよりも大気側に延びるラビリンスリップ４０によって第１の間隙３６が覆われるため、空間３８への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップ４０と外輪８との間には第２の間隙４４が設けられるため、一旦、第１の間隙３６および／または空間３８に異物が侵入しても、異物は第２の間隙４４を通じて排出される。特に、この実施形態では、第２のシール部材２６は内輪６とともに回転するので、遠心力によって異物は第２の間隙４４を通じて排出されやすい。

また、フランジ３５から第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂに向けて環状のラビリンスリップ４２が突出する。ラビリンスリップ４２は、第１のシール部材２４には接触しないが、第１の間隙３６から空間３８への異物の侵入経路を複雑化および延長する。したがって、空間３８への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップ４２は、径方向において、アキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅの先端に重なっている。したがって、アキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅの先端とフランジ３５の剛性部分３４Ｂの間に異物が侵入しにくい。

密封装置２１は、例えば取付け治具５０によって、外輪８と内輪６との間の間隙に装着される。図の仮想線で描写された矢印は、取付け治具５０の進行方向を示す。

取付け治具５０は、例えば鋼のような金属で形成されており、同軸の円環部５２，５４を有する。円環部５２の端面は、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの端面に接触可能であり、円環部５４の端面は、第２のシール部材２６のフランジ３５の弾性部分３２Ａに接触可能である。

取付け治具５０によって、密封装置２１の第１のシール部材２４と第２のシール部材２６は、組み合わせられた状態で、同時に外輪８と内輪６との間の間隙に装着される。仮想線の矢印で示すように、取付け治具５０をインボード側からアウトボード側に押圧することにより、取付け治具５０の円環部５２は第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａ、ひいては第１のシール部材２４全体をアウトボード側に押圧し、取付け治具５０の円環部５４は、第２のシール部材２６のフランジ３５ひいては第２のシール部材２６全体をアウトボード側に押圧する。

ラビリンスリップ４０の外径ＤＬは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの外径ＤＯより小さく、円筒部分２４Ａの内径ＤＩ以下である。取付け治具５０の円環部５２の内径は、円筒部分２４Ａの内径ＤＩ以上である。したがって、取付け治具５０を用いて、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを外輪８に取り付ける際、ラビリンスリップ４０が邪魔にならずに、容易に円筒部分２４Ａを外輪８に押し入れることが可能である。

図３は、実施形態の変形例に係る密封装置の部分断面図である。この変形例では、ラビリンスリップ４２が形成されておらず、ラビリンスリップ４０の形状が図２のラビリンスリップ４０の形状と異なる。
この変形例でも、ラビリンスリップ４０によって第１の間隙３６が覆われるため、空間３８への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップ４０と外輪８との間には第２の間隙４４が設けられるため、一旦、第１の間隙３６および／または空間３８に異物が侵入しても、異物は第２の間隙４４を通じて排出される。

ラビリンスリップ４０の外径ＤＬは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの外径ＤＯより小さく、円筒部分２４Ａの内径ＤＩ以下である。したがって、取付け治具５０を用いて、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを外輪８に取り付ける際、ラビリンスリップ４０が邪魔にならずに、容易に円筒部分２４Ａを外輪８に押し入れることが可能である。

図４は、実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。この変形例では、ラビリンスリップ４２が形成されておらず、ラビリンスリップ４０の形状および位置が図２のラビリンスリップ４０の形状および位置と異なる。

この変形例でも、ラビリンスリップ４０によって第１の間隙３６が覆われるため、空間３８への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップ４０と外輪８との間には第２の間隙４４が設けられるため、一旦、第１の間隙３６および／または空間３８に異物が侵入しても、異物は第２の間隙４４を通じて排出される。

ラビリンスリップ４０の外径ＤＬは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの外径ＤＯより小さく、円筒部分２４Ａの内径ＤＩ以下である。したがって、取付け治具５０を用いて、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを外輪８に取り付ける際、ラビリンスリップ４０が邪魔にならずに、容易に円筒部分２４Ａを外輪８に押し入れることが可能である。

この変形例では、フランジ３５の弾性部分３２Ａの内周面に環状突起６０が形成されている。環状突起６０は、スリーブ３４Ａよりも径方向内側に突出する。スリーブ３４Ａに内輪６の端部が嵌め入れられると、環状突起６０は内輪６の端部の外周面で圧縮されて、内輪６の端部とスリーブ３４Ａの間に異物が侵入することを防止または低減する。

この変形例では、フランジ３５は、剛性部分３４Ｂの外周面を覆う弾性部分３２Ｂを有しない。ラビリンスリップ４０とフランジ３５の境界部分の外周面には、周溝６２が形成されている。この変形例では、フランジ３５の弾性部分３２Ａの外周面が周溝６２の底面をなし、フランジ３５の剛性部分３４Ｂは周溝６２の隔壁をなす。

したがって、第１の間隙３６よりも大気側（つまり環状部分２４Ｂとフランジ３５の間の空間３８の外）に周溝６２が設けられる。外部から第１の間隙３６に侵入しようとして、フランジ３５の剛性部分３４Ｂの外縁で阻止された異物は、周溝６２に侵入する。周溝６２は、ラビリンスリップ４０とフランジ３５の境界部分の外周面に形成されているので、周溝６２に侵入した異物が第１の間隙３６を通じて空間３８に侵入することがフランジ３５の剛性部分３４Ｂによって抑制される。

図５は、図４の向きを変更した密封装置の部分断面図である。フランジ３５の剛性部分３４Ｂによって空間３８に侵入することが阻止された水滴ＷＤが周溝６２に侵入したことを図５は示す。フランジ３５は、円環状であるので、周溝６２に侵入した水滴ＷＤは、フランジ３５の弾性部分３２Ａの外周面をつたって仮想線で示す矢印のように落下し、この後、空間３８に侵入することがない。水滴ＷＤはダストを含みうるが、空間３８への水滴ＷＤの侵入が阻止されることにより、アキシャルリップ２４Ｄ，２４Ｅの損傷が防止または低減される。

図６は、実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。この変形例は、図４の変形例の変形である。この変形例では、ラビリンスリップ４０は、周方向に間欠的に設けられた複数の先端部を有する。

具体的には、この変形例では、図７に示すように、ラビリンスリップ４０は、環状の基部６４と、間欠的に設けられた複数の先端部６６を有する。基部６４は、第２のシール部材２６のフランジ３５（特に弾性部分３２Ａ，３２Ｂ）から径方向外側かつインボード側（大気側）に延びる円錐台状の環である。複数の先端部６６は、基部６４から径方向外側かつインボード側（大気側）に延び、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。先端部６６の内周面は基部６４の内周面に面一であり、先端部６６の外周面は基部６４の外周面に面一である。

図６に示すように、ラビリンスリップ４０の基部６４の外径ＤＮは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの内径ＤＩよりも小さい。ラビリンスリップ４０の先端部６６で画定される円の直径ＤＭは、円筒部分２４Ａの外径ＤＯよりも小さく、内径ＤＩよりも大きい。

この変形例によれば、ラビリンスリップ４０の先端部で画定される円の直径ＤＭは、第１の間隙３６の外径ＤＩよりも大きいので、第１の間隙３６を通じた環状部分２４Ｂとフランジ３５の間の空間３８への異物の侵入がさらに抑制される。

密封装置２１は、例えば取付け治具７０によって、外輪８と内輪６との間の間隙に装着される。図の仮想線で描写された矢印は、取付け治具７０の進行方向を示す。

取付け治具７０は、例えば鋼のような金属で形成されており、間欠的に形成された複数の突出部７２と１つの円環部７４を有する。突出部７２の端面は、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの端面に接触可能であり、円環部７４の端面は、第２のシール部材２６のフランジ３５の弾性部分３２Ａに接触可能である。突出部７２は周方向に互いに間隔をおいて配置されている。

取付け治具７０によって、密封装置２１の第１のシール部材２４と第２のシール部材２６は、組み合わせられた状態で、同時に外輪８と内輪６との間の間隙に装着される。仮想線の矢印で示すように、取付け治具７０をインボード側からアウトボード側に押圧することにより、取付け治具７０の突出部７２は第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａ、ひいては第１のシール部材２４全体をアウトボード側に押圧し、取付け治具７０の円環部７４は、第２のシール部材２６のフランジ３５ひいては第２のシール部材２６全体をアウトボード側に押圧する。

ラビリンスリップ４０の先端部６６で画定される円の直径ＤＭは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの内径ＤＩよりも大きい。しかし、先端部６６は、周方向に間欠的に設けられ、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを押圧する際、突出部７２は、間欠的に配置された先端部６６の間に配置されるので、先端部６６は邪魔にならない。ラビリンスリップ４０の基部６４の外径ＤＮは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの内径ＤＩよりも小さいので、基部６４も邪魔にならない。したがって、取付け治具７０を用いて、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを外輪８に取り付ける際、ラビリンスリップ４０が邪魔にならずに、容易に円筒部分２４Ａを外輪８に押し入れることが可能である。

図８は、実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。この変形例では、アキシャルリップ２４Ｅが設けられていない。この変形例では、第２のシール部材２６は、空間３８内に配置された複数の水排出突起（フィン）８０を有する。水排出突起８０は、フランジ３５から第１のシール部材２４の環状部分２４Ｂに向けて突出する。これらの水排出突起４０は、同形同大を有しており、円周方向に互いに等角間隔をおいて並べられている。

この変形例では、フランジ３５は、弾性部分３２Ｃをさらに有し、弾性部分３２Ｃは剛性部分３４Ｂのスリーブ部分３４Ａ側の面（アウトボード側の面）の一部（外周縁側）に密着させられている。複数の水排出突起８０は、フランジ部分３５の弾性部分３２Ｃに一体に取り付けられている。すなわち、水排出突起８０は、弾性環３２の部分である。

この変形例では、内輪６と外輪８の相対回転に伴って、空間３８内の水は、水排出突起８０に沿って流れて空間３８から第１の間隙３６と第２の間隙４４を通じてすみやかに排出される。このため、密封装置２１は、密封対象であるハブ軸受１への水からの保護性能が高い。密封装置２１自体についても、水（泥水または塩水を含む）の存在により加速する劣化が低減される。

図９は、実施形態の他の変形例に係る密封装置の部分断面図である。この変形例では、弾性材料で形成されたラビリンスリップ４０の代わりに、剛性材料、例えば金属から形成されたラビリンスリップ９０が設けられている。

ラビリンスリップ９０は、第２のシール部材２６のフランジ３５（特に剛性部分３４Ｂ）から径方向外側かつインボード側（大気側）に延びる円錐台状の環である。ラビリンスリップ９０は、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａよりもインボード側に延びており、ラビリンスリップ９０と外輪８との間に環状の第２の間隙４４が設けられる。第２の間隙４４は第１の間隙３６に連なっている。第２の間隙４４は、第１の間隙３６より径方向外側にある。つまり、ラビリンスリップ９０は、第１の間隙３６を少なくとも部分的に覆う。

ラビリンスリップ９０は、フランジ３５の剛性部分３４Ｂに一体に取り付けられている。すなわち、ラビリンスリップ９０は、剛性環３４の部分である。したがって、ラビリンスリップ９０は、剛性環３４と同じ材料、すなわち金属から形成されており、硬い異物の衝撃への耐久性が高く、耐摩耗性が高い。

この変形例でも、ラビリンスリップ９０によって第１の間隙３６が覆われるため、空間３８への異物の侵入が抑制される。ラビリンスリップ９０と外輪８との間には第２の間隙４４が設けられるため、一旦、第１の間隙３６および／または空間３８に異物が侵入しても、異物は第２の間隙４４を通じて排出される。

ラビリンスリップ９０の外径ＤＬは、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａの外径ＤＯより小さく、円筒部分２４Ａの内径ＤＩ以下である。したがって、取付け治具５０を用いて、第１のシール部材２４の円筒部分２４Ａを外輪８に取り付ける際、ラビリンスリップ９０が邪魔にならずに、容易に円筒部分２４Ａを外輪８に押し入れることが可能である。

他の変形例
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。

例えば、上記の実施形態においては、内側部材であるハブ４および内輪６が回転部材であり、外側部材である外輪８が静止部材である。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、互いに相対回転する複数の部材の密封に適用されうる。例えば、内側部材が静止し、外側部材が回転してもよいし、これらの部材のすべてが回転してもよい。

本発明の用途は、ハブ軸受１の密封に限定されない。例えば、自動車の差動歯車機構またはその他の動力伝達機構、自動車の駆動シャフトの軸受またはその他の支持機構、ポンプの回転軸の軸受またはその他の支持機構などにも本発明に係る密封装置または密封構造を使用することができる。

実施形態および変形例に係る密封装置２１の剛性環３０は、単一の部品であるが、剛性環３０を径方向に互いに分離した複数の剛性環に置換してもよい。

実施形態および変形例に係る密封装置２１は、少なくとも１つのアキシャルリップを有するが、アキシャルリップを設けなくてもよい。

弾性材料から形成されたラビリンスリップ４０は、金属粉および／またはセラミックス粉を含有しない樹脂材料、または金属粉および／またはセラミックス粉を含有しないエラストマー材料から形成されていてもよい。

実施形態および変形例の特徴は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。

本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。

条項１． 相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
前記外側部材に取り付けられる円筒部分と、前記円筒部分から前記内側部材に向けて径方向内側に広がる環状部分を有する第１のシール部材と、
前記内側部材に取り付けられるスリーブと、前記スリーブから径方向外側に広がるフランジを有しており、前記フランジが前記第１のシール部材の前記環状部分と対向する、第２のシール部材とを有し、
前記第１のシール部材は、前記第２のシール部材の前記フランジに向けて延びる、弾性材料で形成された少なくとも１つのリップをさらに有し、
前記フランジと前記第１のシール部材の前記円筒部分の間に環状の第１の間隙が設けられ、
前記第２のシール部材は、前記フランジから径方向外側かつ前記第１のシール部材の前記円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップをさらに有し、前記ラビリンスリップと前記外側部材との間に第２の間隙が設けられ、前記第２の間隙は、前記第１の間隙より径方向外側にあり、前記第１の間隙に連なる
ことを特徴とする密封装置。

条項２． 前記ラビリンスリップの外径は、前記第１のシール部材の前記円筒部分の内径以下である
ことを特徴とする条項１に記載の密封装置。

この条項によれば、ラビリンスリップの外径が第１のシール部材の前記円筒部分の内径以下であるので、第１のシール部材の円筒部分を外側部材に取り付ける際、容易に円筒部分を外側部材に押し入れることが可能である。

条項３． 前記ラビリンスリップは、前記フランジから延びる基部と、前記基部から延びる複数の先端部を有し、前記先端部は周方向に間欠的に設けられており、
前記ラビリンスリップの前記基部の外径は、前記第１のシール部材の前記円筒部分の内径よりも小さく、
前記ラビリンスリップの前記先端部で画定される円の直径は、前記円筒部分の内径よりも大きい
ことを特徴とする条項１に記載の密封装置。

この条項によれば、ラビリンスリップの周方向に間欠的に設けられた先端部で画定される円の直径は、第１の間隙よりも大きいので、第１の間隙を通じた環状部分とフランジの間の空間への異物の侵入がさらに抑制される。一方、ラビリンスリップの基部の外径は、第１のシール部材の前記円筒部分の内径よりも小さいので、第１のシール部材の円筒部分を外側部材に取り付ける際、容易に円筒部分を外側部材に押し入れることが可能である。

条項４． 前記ラビリンスリップと前記フランジの境界部分の外周面に、周溝が形成されている
ことを特徴とする条項１から３のいずれか１項に記載の密封装置。

この条項によれば、第１の間隙よりも大気側（つまり環状部分とフランジの間の空間の外）に周溝が設けられる。外部から第１の間隙に侵入しようとして、フランジの外縁で阻止された異物は、周溝に侵入する。周溝は、ラビリンスリップとフランジの境界部分の外周面に形成されているので、周溝に侵入した異物が第１の間隙を通じて空間に侵入することがフランジによって抑制される。

条項５． 前記フランジは、剛性材料で形成された剛性部分と、前記剛性部分の前記スリーブと反対側の面に密着させられた弾性材料で形成された弾性部分を有し、
前記ラビリンスリップは、前記弾性部分と一体に形成されている
ことを特徴とする条項１から４のいずれか１項に記載の密封装置。

条項６． 前記フランジの弾性部分は、金属粉および／またはセラミックス粉を含有する樹脂材料、または金属粉および／またはセラミックス粉を含有するエラストマー材料から形成されている
ことを特徴とする条項５に記載の密封装置。

この条項によれば、ラビリンスリップは、硬い異物の衝撃への耐久性が高く、耐摩耗性が高い。

条項７． 前記フランジは、剛性材料で形成された部分を有し、
前記ラビリンスリップは、前記剛性材料で形成された部分と一体に形成されている
ことを特徴とする条項１から４のいずれか１項に記載の密封装置。

この条項によれば、ラビリンスリップは、硬い異物の衝撃への耐久性が高く、耐摩耗性が高い。

１ ハブ軸受
６ 内輪（内側部材）
８ 外輪（外側部材）
２１ 密封装置
２４ 第１のシール部材
２６ 第２のシール部材
２８ 弾性環
３０ 剛性環
２４Ａ 円筒部分
２４Ｂ 環状部分
２４Ｃ ラジアルリップ
２４Ｄ，２４Ｅ アキシャルリップ
３２ 弾性環
３４ 剛性環
３４Ａ スリーブ
３４Ｂ フランジ（フランジ３５の剛性部分）
３５ フランジ
３２Ａ フランジ３５の弾性部分
３２Ｂ フランジ３５の弾性部分
３６ 第１の間隙
３８ 空間
４０ ラビリンスリップ
４４ 第２の間隙
５０，７０ 取付け治具
６２ 周溝
６４ 基部
６６ 先端部
９０ ラビリンスリップ

Claims (8)

1. 相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
   前記外側部材に取り付けられる円筒部分と、前記円筒部分から前記内側部材に向けて径方向内側に広がる環状部分を有する第１のシール部材と、
   前記内側部材に取り付けられるスリーブと、前記スリーブから径方向外側に広がるフランジを有しており、前記フランジが前記第１のシール部材の前記環状部分と対向する、第２のシール部材とを有し、
   前記第１のシール部材は、前記第２のシール部材の前記フランジに向けて延びる、弾性材料で形成された少なくとも１つのリップをさらに有し、
   前記フランジと前記第１のシール部材の前記円筒部分の間に環状の第１の間隙が設けられ、
   前記第２のシール部材は、前記フランジから径方向外側かつ前記第１のシール部材の前記円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップをさらに有し、前記ラビリンスリップと前記外側部材との間に第２の間隙が設けられ、前記第２の間隙は、前記第１の間隙より径方向外側にあり、前記第１の間隙に連なり、
   前記ラビリンスリップは、前記フランジから延びる基部と、前記基部から延びる複数の先端部を有し、前記先端部は周方向に間欠的に設けられており、
   前記ラビリンスリップの前記基部の外径は、前記第１のシール部材の前記円筒部分の内径よりも小さく、
   前記ラビリンスリップの前記先端部で画定される円の直径は、前記円筒部分の内径よりも大きいことを特徴とする密封装置。
2. 相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
   前記外側部材に取り付けられる円筒部分と、前記円筒部分から前記内側部材に向けて径方向内側に広がる環状部分を有する第１のシール部材と、
   前記内側部材に取り付けられるスリーブと、前記スリーブから径方向外側に広がるフランジを有しており、前記フランジが前記第１のシール部材の前記環状部分と対向する、第２のシール部材とを有し、
   前記第１のシール部材は、前記第２のシール部材の前記フランジに向けて延びる、弾性材料で形成された少なくとも１つのリップをさらに有し、
   前記フランジと前記第１のシール部材の前記円筒部分の間に環状の第１の間隙が設けられ、
   前記第２のシール部材は、前記フランジから径方向外側かつ前記第１のシール部材の前記円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップをさらに有し、前記ラビリンスリップと前記外側部材との間に第２の間隙が設けられ、前記第２の間隙は、前記第１の間隙より径方向外側にあり、前記第１の間隙に連なり、
   前記ラビリンスリップと前記フランジの境界部分の外周面に、周溝が形成されている
   ことを特徴とする密封装置。
3. 相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
   前記外側部材に取り付けられる円筒部分と、前記円筒部分から前記内側部材に向けて径方向内側に広がる環状部分を有する第１のシール部材と、
   前記内側部材に取り付けられるスリーブと、前記スリーブから径方向外側に広がるフランジを有しており、前記フランジが前記第１のシール部材の前記環状部分と対向する、第２のシール部材とを有し、
   前記第１のシール部材は、前記第２のシール部材の前記フランジに向けて延びる、弾性材料で形成された少なくとも１つのリップをさらに有し、
   前記フランジと前記第１のシール部材の前記円筒部分の間に環状の第１の間隙が設けられ、
   前記第２のシール部材は、前記フランジから径方向外側かつ前記第１のシール部材の前記円筒部分よりも大気側に延びるラビリンスリップをさらに有し、前記ラビリンスリップと前記外側部材との間に第２の間隙が設けられ、前記第２の間隙は、前記第１の間隙より径方向外側にあり、前記第１の間隙に連なり、
   前記フランジは、剛性材料で形成された剛性部分と、前記スリーブの軸線方向に沿って前記剛性部分の前記スリーブと反対側の面に密着させられた弾性材料で形成された弾性部分を有し、
   前記ラビリンスリップは、前記弾性部分と一体に形成されている
   ことを特徴とする密封装置。
4. 前記ラビリンスリップの外径は、前記第１のシール部材の前記円筒部分の内径以下である
   ことを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の密封装置。
5. 前記ラビリンスリップと前記フランジの境界部分の外周面に、周溝が形成されている
   ことを特徴とする請求項１、３または４に記載の密封装置。
6. 前記フランジは、剛性材料で形成された剛性部分と、前記スリーブの軸線方向に沿って前記剛性部分の前記スリーブと反対側の面に密着させられた弾性材料で形成された弾性部分を有し、
   前記ラビリンスリップは、前記弾性部分と一体に形成されている
   ことを特徴とする請求項１、２または４に記載の密封装置。
7. 前記フランジの弾性部分は、金属粉および／またはセラミックス粉を含有する樹脂材料、または金属粉および／またはセラミックス粉を含有するエラストマー材料から形成されている
   ことを特徴とする請求項３に記載の密封装置。
8. 前記フランジは、剛性材料で形成された部分を有し、
   前記ラビリンスリップは、前記剛性材料で形成された部分と一体に形成されている
   ことを特徴とする請求項１、２、４または５に記載の密封装置。

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