(車両のドア開閉装置の構成)
図1は、本発明のモータ制御装置で駆動される電動モータを備えるドア開閉装置14の概略を示す平面図である。図1に示すように、車両11の側部には、被駆動体としてのスライドドア12が装着されている。このスライドドア12は、車両11に固定されるガイドレール13に案内され、図中実線で示す全開位置と鎖線で示す全閉位置との間で車両前後方向に移動自在つまり開閉自在となっている。
車両11にはドア開閉装置14が設けられている。ドア開閉装置14は、スライドドア12を自動的に開閉する。このドア開閉装置14は、車両11に固定される駆動ユニット15を有する。駆動ユニット15には、駆動用のケーブル16が設けられている。ケーブル16は、ガイドレール13の両端に配置された反転プーリ17、及び反転ブーリ18に掛け渡されて、車両11の前方側と後方側とからスライドドア12に接続されている。スライドドア12は、駆動ユニット15によりケーブル16のいずれか一方側が引かれると、ケーブル16に引かれながら開方向または閉方向に移動する。
図2は、図1に示すドア開閉装置14の制御体系を示す説明図である。
図2に示すように、駆動ユニット15には電動モータ21が設けられている。この電動モータ21として、本実施形態においては、3相(U相、V相、及びW相)のブラシレスモータが用いられる。電動モータ21は、モータ制御装置41から、通電パターンに従って、3相の各相へ、それぞれ印加電圧Vu、印加電圧Vv、及び印加電圧Vwが供給されると作動する。電動モータ21は、供給される印加電圧の正負に応じて、その回転方向が正転または逆転に切り替えられる。
また、電動モータ21の回転軸21aには、回転子47(永久磁石)が固定される。この回転子47の回転軌道近傍には、回転子47の回転位置を検出する位置センサとしての3つのホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48wが、回転軸21aを中心として互いに120度の位置に設けられている。これらの3つのホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48wは、電動モータ21の回転軸21aが回転すると、それぞれ互いに120度位相のずれたパルス信号Su、パルス信号Sv、及びパルス信号Swをモータ制御装置41に対して出力する。
また、電動モータ21の回転軸21aには、駆動ギヤ24が固定される。駆動ギヤ24には大径スパーギヤ25が噛み合わされている。大径スパーギヤ25と一体に回転する小径スパーギヤ26には、出力軸27に固定される従動ギヤ28が噛み合わされている。これにより、電動モータ21の回転は所定の減速比で減速されて出力軸27に伝達される。
出力軸27には外周面に図示しない螺旋状の案内溝が形成された円筒形状のドラム31が固定されている。駆動ユニット15に案内されたケーブル16は、案内溝に沿ってドラム31に複数回巻き付けられている。電動モータ21が作動すると、ドラム31は電動モータ21に駆動されて回転し、これによりケーブル16が作動してスライドドア12は開閉動作する。つまり、電動モータ21により、図2中で反時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両後方側のケーブル16がドラム31に巻き取られて、スライドドア12はケーブル16に引かれながら開方向に移動する。反対に、電動モータ21により、図2中で時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両前方側のケーブル16がドラム31に巻き取られてスライドドア12はケーブル16に引かれながら閉方向に移動する。このように、スライドドア12は、ケーブル16、ドラム31、出力軸27等を介して電動モータ21に接続され、電動モータ21により開閉駆動されるようになっている。
ドラム31と2つの反転プーリ17、及び反転ブーリ18との間には、それぞれテンショナ32が設けられている。テンショナ32は、ドラム31とスライドドア12との間におけるケーブル16の弛みを取ってケーブル張力を一定範囲に維持する。テンショナ32は、それぞれ固定プーリ32aと可動プーリ32bとを有し、可動プーリ32bは固定プーリ32aを軸心としてばね部材32cにより回転方向に付勢されており、ケーブル16は各プーリ32a、32bの間に掛け渡されている。したがって、ケーブル16に緩みが生じると、可動プーリ32bにより付勢されてケーブル16の移動経路が増加し、これによりケーブル16の張力が維持される。
なお、駆動ユニット15は電動モータ21と出力軸27との間にクラッチ機構が設けられないクラッチレス式となっている。つまり、電動モータ21から出力軸27、つまりスライドドア12へは、常に動力伝達可能な状態とされている。
このため、後述するように電動モータ21により回生ブレーキ力を発生させる際に、電動モータ21の固定子(ステータ)と、ドラム31に接続された回転子47(マグネットロータ)との間にはエアギャップがあり機械的には直接接していないため、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させる際に生じる振動は、クラッチ機構の断続制御により生じる振動(衝撃)よりも少ない。
上記駆動ユニット15内の電動モータ21は、モータ制御装置41により駆動される。このモータ制御装置41は、スライドドア12を予め設定された目標速度で開閉移動させるように電動モータ21の作動を制御する。また、モータ制御装置41は、電動モータ21の入力端子22u、22v、及び22wを短絡させて回生ブレーキ力を発生させる。
(モータ制御装置の構成)
図3は、図2に示すモータ制御装置41、及び電動モータ21の詳細を示す回路図である。電動モータ21は、3相DCブラシレスモータである。電動モータ21は、インナーロータ型で、一対のN極およびS極を含む永久磁石(マグネット)を埋め込んで構成された回転子47(マグネットロータ)を含む。また、電動モータ21は、スター結線されたU相、V相及びW相の固定子巻線21u、21v、及び21wを含む。
また、回転子47に近接して、120度毎に、回転位置検出素子(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)が配置される。これらホールICは、回転子47の回転位置を検出する。
電動モータ21を制御するためのモータ制御装置41は、駆動回路部42、直流電源44、及び制御系回路部50を含んで構成される。
駆動回路部42は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子としての絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)42a〜42fと、トランジスタ42a〜42fの各コレクタ−エミッタ間に逆並列に接続されたフライホイールダイオード43a〜43fとを含んで構成される。ブリッジ接続された6個のトランジスタ42a〜42fの各ゲートは制御系回路部50に接続される。
また、6個のトランジスタ42a〜42fのコレクタまたはエミッタは、電動モータ21の入力端子22u、22v、及び22wを介して、スター結線された固定子巻線21u、21v、及び21wに接続される。これによって、6個のトランジスタ42a〜42fは、制御系回路部50から入力される駆動信号(ゲート信号)G1〜G6によってスイッチング動作を行い、駆動回路部42に印加される直流電源44の電源電圧を、3相(U相、V相、W相)の印加電圧Vu、Vv、Vwとして、固定子巻線U、V、Wへ供給する。
なお、駆動信号(ゲート信号)G1は、ハイ信号(H信号)の場合に、対応するトランジスタ42aがオン(ON)になり、ロー信号(L信号)の場合に、対応するトランジスタ42aがオフ(OFF)になる。駆動信号(ゲート信号)G2〜G6についても同様である。
制御系回路部50は、電動モータ21への印加電圧Vu、Vv、Vw(より正確には電圧と周波数)を可変制御するために、駆動回路部42のトランジスタ42a〜42fの各ゲートを駆動する駆動信号G1〜G6をパルス幅変調信号(PWM信号)として形成する。制御系回路部50は、トランジスタ42a〜42fを高速スイッチングすることにより、直流電源44から各固定子巻線21u、21v、及び21wへ供給する印加電圧を制御する。
制御系回路部50は、ドライバ回路51、ドア開閉情報生成部52、及び制御部53を含んで構成される。
制御部53は、回転制御部54と、回生ブレーキ制御部55とを有している。回転制御部54は、ドア開閉情報生成部52から入力される速度信号V、位置信号P、及び方向信号Dに基づいて、ドライバ回路51に対して、電動モータ21を正転駆動または逆転駆動するためのPWM指令信号(正転回転指令または逆転回転指令)を出力する。ドライバ回路51は、入力されるPWM指令信号に基づいて、トランジスタ42a〜42fを交互にスイッチングするための駆動信号G1〜G6を生成し、駆動回路部42へ出力する。これによって、駆動回路部42は、固定子巻線21u、21v、及び21wを交互に通電する供給電圧Vu、Vv、Vwの通電パターンを各固定子巻線に印加し、回転子47を、回転制御部54が指示する回転方向に回転させる。
より具体的には、制御部53には、開閉スイッチ45が接続される。操作者が開閉スイッチ45を操作し、制御部53にドアの開閉開始を指令する信号が入力されると、回転制御部54は、ドア開閉情報生成部52から入力される速度信号V、位置信号P、及び方向信号Dに応じてPWM指令信号を生成し、ドライバ回路51に対して出力する。
ドア開閉情報生成部52は、制御部53がPWM指令信号の生成に用いる速度信号V、位置信号P、及び方向信号Dを、ホールIC48u、48v、48wがそれぞれ出力するパルス信号Su、Sv、及びSwから生成する。
ドア開閉情報生成部52は、ホールIC48u、48v、48wがそれぞれ出力するパルス信号Su、Sv、及びSwが入力されると、パルス信号の発生間隔に基づいて電動モータ21の回転速度、つまりスライドドア12の移動速度Vを算出する。
また、ドア開閉情報生成部52は、パルス信号Su、Sv、及びSwの出現タイミング(出現する順番)に基づいて電動モータ21の回転方向、つまりスライドドア12の移動方向を検出し、方向信号Dを出力する。
また、ドア開閉情報生成部52は、スライドドア12が基準位置(例えば全閉位置)となったときを起点としてパルス信号の切替りをカウント(積算)することによりスライドドア12の位置を検出し、位置信号Pを出力する。なお、スライドドア12の基準位置は、例えば、全閉検出スイッチ46により検出される。この全閉検出スイッチ46は、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」にあることを検出するためのスイッチであり、例えば、ドア位置が「全閉位置」でオンになるリミットスイッチである。
(スライドドアの「途中停止」と回生ブレーキ動作)
ところで、乗員等が開閉スイッチ45を操作して、スライドドア12の開閉中にスライドドア12の停止を指示すると、制御部53は、回生ブレーキ制御部55により、電動モータ21に回生制動をかけて(回生ブレーキ力を発生させて)、その回転を停止させる。この回生制動は、駆動信号G4〜G6(または駆動信号G1〜G3)をデューティ比(Duty)100%とする信号としてドライバ回路51から出力し、駆動回路部42が、対応する下段側のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとをオンさせて固定子巻線21u、21v、及び21w、それぞれに設けられた入力端子22u、22v、及び22wを短絡することにより行なわれる。
図4は、回生ブレーキ動作について説明するための図である。また、図5は、回生ブレーキ動作とデューティ比制御について説明するための図である。
回生制動においては、より具体的には、図4(A)に示すように、ドライバ回路51から出力される駆動信号G1〜G3をロー信号(L信号)とし、駆動信号G4〜G6をハイ信号(H信号)とすることにより、上段(上アーム)のトランジスタ42aと、トランジスタ42bと、トランジスタ42cとをオフにする。また、下段(下アーム)のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとをオンにする。
この状態で、電動モータ21が回転しようとして、例えば、固定子巻線21u及び21vに+電位、固定子巻線21wに−電位が発生すると、図4(B)に示すように、電動モータ21の固定子巻線21uに電流Iuが流れ、固定子巻線21vに電流Ivが流れ、固定子巻線21wに電流Iwが流れる。これにより、電動モータ21に制動トルク(回生ブレーキ力)が発生して、電動モータ21の回転がロックされる。なお、固定子巻線21u、21v、及び21wに発生する電位の極性は、固定子巻線21u、21v、及び21wと回転子47の相対的な位置関係と、回転子47の回転方向とにより決まるものであり、いずれの位置関係にある場合においても、下段側のトランジスタ42d、42e、及び42fをオンにすることにより、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させることができる。
また、この回生ブレーキ力は、回生ブレーキ制御部55により、その大きさが制御される。この回生ブレーキ制御部55は、図5に示すように、駆動信号G4〜G6において、所定の制御周期Tに占めるハイ信号(H信号)の時間の割合、つまり、固定子巻線の入力端子の短絡時間の割合であるデューティ比を変更することで、回生ブレーキ力の大きさを制御することができる。
つまり、図5に示すように、回生ブレーキ制御部55は、所定の制御周期Tの期間において、駆動信号G4〜G6をロー信号(L信号)にする期間を設け、下段側のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとがオンするデューティ比を変化させる。つまり、回生ブレーキ制御部55は、下段側のトランジスタ42d、42e、及び42fを駆動する駆動信号G4、G5、及びG6をデューティ比に応じたパルス幅変調(PWM)信号として出力する。そして、回生ブレーキ制御部55は、PWM信号のバルス幅(デューティ比)を調整することにより、電動モータ21で発生する回生ブレーキ力を制御することができる。
例えば、前述の図4(A)は、デューティ比が100%の場合である。この図4(A)のデューティ比100%の場合は、所定の制御周期Tの全期間において駆動信号G4、G5、及びG6をハイ信号(H信号)とし、駆動信号G1、G2、及びG3をロー信号(L信号)とすることにより、デューティ比100%とする信号をドライバ回路51に出力する。このデューティ比100%の場合、駆動回路部42は、制御周期Tの全期間において、駆動信号G4、G5、及びG6に対応する下段側のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとを同時にオンさせる。これにより。回生ブレーキ制御部55は、固定子巻線21u、21v、及び21wの入力端子22u、22v、及び22wを短絡させて回生ブレーキ力を発生させる。
そして、図5(A)は、デューティ比が中(例えば、60〜70%)の場合であり、図5(B)は、デューティ比が小(例えば、20〜30%)の場合である。例えば、図5(A)において、駆動信号G4〜G6がハイ信号(H信号)となる期間で下段側のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとを同時にオンにし、固定子巻線21u、21v、及び21wの入力端子22u、22v、及び22wを短絡させる。また、駆動信号G4〜G6がロー信号(L信号)となる期間で、下段側のトランジスタ42dと、トランジスタ42eと、トランジスタ42fとを同時にオフにし、固定子巻線21u、21v、及び21wの入力端子22u、22v、及び22wを短絡から開放する。図5(B)についても同様である。
このように、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比を制御することにより、回生ブレーキ力の大きさを制御することができる。つまり、回生ブレーキ制御部55は、このデューティ比を小さくすることにより、回生ブレーキ力を低下させることができる。
上述した回生ブレーキ制御部55の動作により、本実施形態のモータ制御装置41では、途中停止機能付のパワースライドドア装置において、車両11が平坦な場所でない傾斜地などで駐車している状態でスライドドア12を途中停止させた場合に、スライドドア12が重力の作用する方向に急激に移動することを回避することができる。
つまり、スライドドア12を途中停止させた場合に、回生ブレーキ制御部55は、最初は、デューティ比100%で電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させ、電動モータ21の回転をロックすることにより、スライドドア12の移動を停止させる。
そして、所定の第1規定時間の経過後(例えば、10分経過後)に、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比を徐々に低下させて回生ブレーキ力を弱めることにより、スライドドア12を重力の作用する方向に徐々に移動させる。なお、上記第1所定時間は、車両11における消費電力を低減する省電力モードに移行するために予め設定される時間である。
このように、モータ制御装置41では、回生ブレーキ制御部55がデューティ比を徐々に低下させることにより、傾斜地などにおいて重力が作用する方向にスライドドア12を滑らかに移動させることができる。そして、モータ制御装置41は、スライドドア12の閉状態が検出された場合、例えば、スライドドア12の「全閉位置」がリミットスイッチにより検出された場合に、回生ブレーキ動作を終了させる。また、モータ制御装置41は、スライドドア12の開状態での停止が検出された場合、例えば、ドア開閉情報生成部52により電動モータ21の回転停止が検出された場合に、回生ブレーキ動作を終了させる。
(回生ブレーキ力の第1の制御例)
次に、回生ブレーキ力の具体的な制御例について説明する。
図6は、スライドドア12を途中停止させたときの回生ブレーキ力の第1の制御例を示す図である。この図6は、スライドドア12の位置及び移動速度を検出しない場合の例であり、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に回生ブレーキ動作のデューティ比Duの時間変化と、スライドドア12の移動速度であるドア速度Spの時間変化と、を並べて示したものである。
この図6に示す例において、時刻t1において、利用者が開閉スイッチ45を操作して、スライドドア12を傾斜地で途中停止させると、回生ブレーキ制御部55は、最初に、デューティ比100%で回生ブレーキを作動させる。これにより、電動モータ21の回転をロックして、スライドドア12の移動を停止させることができる。
そして、この時刻t1から所定の第1規定時間(例えば、10分)が経過する時刻t2までの間、回生ブレーキ制御部55は、電動モータ21にデューティ比100%の回生ブレーキ動作を行わせる。
その後、時刻t1から所定の第1規定時間が経過し、時刻t2後に至ると、この時刻t2以降、回生ブレーキ制御部55は、回生ブレーキ動作のデューティ比を徐々に低下させていく。つまり、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比Duを初期値100%から所定の制御周期T(図5参照)ごとに一定の割合で徐々に低下させることにより、時間の経過とともに電動モータ21の回生ブレーキ力を次第に弱めて行く。
そして、時刻t1の後の時刻t2’に至り、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとする力が、回生ブレーキ力よりも大きくなると、スライドドア12が移動を開始する。そして、時刻t2’以降、回生ブレーキ制御部55が電動モータ21の回生ブレーキ力を弱めるに従い、スライドドア12のドア速度Spが次第に増加する。
この回生ブレーキ制御部55は、デューティ比の下限閾値として「規定デューティ比Du1(デューティ閾値)」の情報を保持している。回生ブレーキ制御部55は、時刻t2以降、次第にデューティ比Duを小さくし、時刻t3において、デューティ比Duが規定デューティ比Du1(デューティ閾値)に到達した場合、この時刻t3以降、デューティ比を規定デューティ比Du1(デューティ閾値)よりも低下させないようする。つまり、この時刻t3以降、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比が規定デューティ比Du1になるように一定に維持する。
そして、時刻t3以降、スライドドア12は移動をし続け、時刻t4に至り、ドア位置が「全開位置」又は「全閉位置」に到達すると、物理的な制約によりスライドドア12の移動が停止し、ドア速度が0(ゼロ)となる。なお、時刻t3から時刻t4までのドア速度Spは、必ずしも一定速度であるとは限らず、スライドドア12を傾斜方向に移動させようとする力の大きさと、電動モータ21の回生ブレーキ力の大きさとに応じて、次第に速度が増加する場合もある。
そして、回生ブレーキ制御部55は、時刻t4の後の時刻t5まで回生ブレーキの制御を継続する。これは、回生ブレーキ制御部55がスライドドア12のドア速度Spを検出しないため、ドア速度Spが0(ゼロ)になったことを検出できず、ドア速度Spが0(ゼロ)になる時刻t4以降も時刻t5まで電動モータ21の回生ブレーキ制御を行う。
この時刻t5は、スライドドア12が「途中停止位置」から「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間に基づいて設定されるものであり、車両11の想定される傾斜角度と、スライドドア12の移動距離とに応じて設定されるものである。つまり、デューティ比を低下させる制御を開始した時刻t2から、回生ブレーキ制御を終了する時刻t5までの時間(第2規定時間)は、スライドドア12の開閉方向への想定される移動時間に基づいて、所定の余裕時間を見て設定されるものである(例えば、5分に設定)。
このように、本実施形態のモータ制御装置41では、回生ブレーキ制御部55がデューティ比を徐々に低下させて回生ブレーキ力を弱めていくため、スライドドア12を滑らかに移動させることができる。このため、モータ制御装置41では、スライドドアが急激に移動して衝撃を発生させることを回避し、ユーザに与える不安感をなくすことができる。
なお、図6に示した例では、回生ブレーキ制御部55は、時刻t1〜t2におけるデューティ比(初期デューティ比)を100%としているが、これに限定されず、初期デューティ比は所望の値(例えば、90%等)に設定できるものである(後述する図7においても同様)。
(回生ブレーキ力の第2の制御例)
また、図7は、スライドドア12を途中停止させたときの回生ブレーキ力の第2の制御例を示す図である。この図7に示す例は、スライドドア12の位置及び移動速度を検出する場合の例であり、横方向に時間tの経過を示し、縦方向にデューティ比Duの時間変化と、スライドドア12の移動速度であるドア速度Spの時間変化と、を並べて示したものである。
この図7に示す例は、回生ブレーキ制御部55が、デューティ比の下限閾値(デューティ閾値)としての「規定デューティ比Du1」と、速度閾値としての「規定速度Sp1」の情報を保持している例である。回生ブレーキ制御部55は、デューティ比Duまたはドア速度Spが、それぞれの閾値に到達した場合、それ以上、デューティ比を低下させないように制御する。
この図7に示す例では、時刻t2以降、回生ブレーキ制御部55がデューティ比を徐々に低下させると、時刻t1の後の時刻t2’に至り、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとする力が回生ブレーキ力よりも大きくなり、スライドドア12が移動を開始する。そして、時刻t2’以降、回生ブレーキ制御部55が電動モータ21の回生ブレーキ力を弱めるに従い、スライドドア12のドア速度Spが次第に増加する。
そして、時刻t2’の後の時刻t6において、ドア速度Spが「規定速度Sp1」に到達する。つまり、デューティ比Duがデューティ閾値としての「規定デューティ比Du1」に到達する前に、ドア速度Spが「規定速度Sp1」に到達する。このため、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比Duを低下させること停止し、ドア速度Spが「規定速度Sp1」を大きく超えた速度にならないように制限する。
そして、スライドドア12が移動し、時刻t6の後の時刻t7に至ると、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達して停止し、ドア速度Spが0(ゼロ)になる。回生ブレーキ制御部55は、スライドドア12の移動が停止したことを検出して、回生ブレーキの制御動作を終了する。
これにより、回生ブレーキ制御部55は、スライドドア12の移動速度を検出して、この移動速度が速くなりすぎることを防ぐことができる。また、回生ブレーキ制御部55は、スライドドア12が「全開位置」又は「全開位置」に到達したことを検出して、回生ブレーキの制御動作を終了することができる。
また、図8は、上述した回生ブレーキ制御部55における回生ブレーキの制御手順をフローチャートで示したものである。以下、図8のフローチャートを参照して、その処理の流れについて説明する。
最初に、開閉スイッチ45の操作によりスライドドア12の「途中停止」が指示される(ステップST1)。回生ブレーキ制御部55は、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させてスライドドア12を途中停止させる(ステップST2)(図6の時刻t1を参照)。このスライドドア12を途中停止させる場合、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比(Duty)100%で下段のトランジスタ(IGBT)42d、42e、及び42fをオンにし、上段のトランジスタ(IGBT)42a、42b、及び42cをオフにする。
ステップST2において電動モータ21にデューティ比100%(初期デューティ比)で回生ブレーキ力を発生させた後、回生ブレーキ制御部55は、所定の第1規定時間(車両が省電力モードへ移行するために予め設定された時間)が経過したか否かを判定する(ステップST3)。ステップST3の判定処理において、所定の第1規定時間が経過していないと判定された場合(ステップST3:No)、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比100%で電動モータ21に回生ブレーキ力を与え続ける。
なお、図6及び図7の時刻t1〜t2の間で行われる処理が、図8のステップST1〜ST3の処理に相当する。
一方、ステップST3の判定処理において、所定の第1規定時間が経過したと判定された場合(ステップST3:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)に故障が発生しているか否かを判定する(ステップST4)。この位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)の故障は、電動モータ21を駆動してスライドドア12を開閉する際に、予め検出してその故障情報を保持できるものである。
そして、ステップST4の処理において、位置センサに故障が発生していると判定された場合(ステップST4:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、位置センサ故障時の処理(ステップST5〜ステップST8側の処理)に移行する。なお、図6において、時刻t2〜t5の間に行われる処理が、ステップST5〜ステップST8の処理に相当する。
そして、ステップST5に移行すると、回生ブレーキ制御部55は、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否を判定する(ステップST5)。このステップST5における終了条件として、スライドドア12が途中停止位置から「全閉位置」又は「全閉位置」に移動するのに要すると想定される第2規定時間(予め設定される時間)を超えたか否かが判定される。このステップST5の判定に使用される第2規定時間は、例えば、図6に示す時刻t2から時刻t5の間の時間が相当する。
そして、ステップST5の処理において、終了条件が成立していると判定された場合(ステップST5:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、回生ブレーキの制御動作を終了する(ステップST14)。
一方、ステップST5の処理において、終了条件が成立していないと判定された場合(ステップST5:No)、回生ブレーキ制御部55は、現在のデューティ比(Duty)が規定デューティ比(規定Duty)に到達しているか否かを判定する(ステップST6)。例えば、図6では、時刻t3において規定デューティ比Du1に到達したと判定される。
そして、ステップST6の処理において規定デューティ比に到達していると判定された場合(ステップST6:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、ステップST5の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップST5)。
一方、ステップST6の処理において規定デューティ比に到達していないと判定された場合(ステップST6:No)、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比を低下させるタイミング(図5の制御周期Tを参照)を決めるデューティタイマ(Duty Timer)がタイムアップ(計測完了)したか否かを判定する(ステップST7)。
そして、ステップST7の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していない判定された場合(ステップST7:No)、回生ブレーキ制御部55は、ステップST5の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップST5)。
一方、ステップST7の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していると判定された場合(ステップST7:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、デューティタイマの計測値をリセットするとともに、下段のトランジスタ42d、42e、及び42fのデューティ比を所定分だけダウン(低下)させて(ステップST8)、その後にステップST5の処理に戻る。
次に、ステップST4の処理に戻り、このステップST4の処理において位置センサに故障が発生していないと判定された場合(ステップST4:No)、回生ブレーキ制御部55は、位置センサ正常時の処理(ステップST9〜ステップST13側の処理)に移行する。なお、図7の時刻t2〜t7の間に行われる処理が、ステップST9〜ステップST13の処理に相当する。
そしてステップST9に移行すると、回生ブレーキ制御部55は、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否を判定する(ステップST9)。このステップST9の終了条件の判定処理においては、スライドドア12が「全閉位置」又は「全閉位置」まで移動した場合と、スライドドア12が途中停止位置から「全閉位置」又は「全閉位置」に移動するのに要すると想定される第2規定時間(予め設定される時間)を超えた場合と、スライドドア12の移動が開始された後に電動モータ21の発電が停止した場合と、のいずれかの場合が生じた際に、終了条件が成立したと判定される。
なお、スライドドア12の「全閉位置」は、スライドドア12が完全に閉まったことを検出する全閉検出スイッチ46(例えば、リミットスイッチ)により検出することができる。また、「全開位置」は、ドア開閉情報生成部52により検出される。また、電動モータ21の発電停止は、電動モータ21のコイルに流れる電流を測定することにより検出することができる他、位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)の出力信号の変化の有無により検出することができる。
そして、ステップST9の判定処理において、終了条件が成立していると判定された場合(ステップST9:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、回生ブレーキの制御動作を終了する(ステップST14)。
一方、ステップST9の判定処理において、終了条件が成立していないと判定された場合(ステップST9:No)、回生ブレーキ制御部55は、スライドドア12の移動速度が規定速度(図7の規定速度SP1を参照)を超えているか否かを判定する(ステップST10)。
そして、ステップST10の判定処理において、スライドドア12のドア速度が規定速度を超えていると判定された場合(ステップST10:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比を低下させる制御を行うことなくステップST9の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
図7に示す例では、時刻t6において、ドア速度Spが規定速度Sp1に到達し、このときのデューティ比がデューティ比Du2になる。回生ブレーキ制御部55では、この時刻t6以降、時刻t7まで、デューティ比Duを一定のデューティ比Du2に維持する。
一方、ステップST10の判定処理において、スライドドア12のドア速度が規定速度を超えていないと判定された場合(ステップST10:No)、回生ブレーキ制御部55は、現在のデューティ比(Duty)が規定デューティ比Du1(デューティ閾値)に到達しているか否かを判定する(ステップST11)。
そして、ステップST11の判定処理において規定デューティ比Du1に到達していると判定された場合(ステップST11:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、ステップST9の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
また、ステップST11の判定処理において規定デューティ比Du1に到達していないと判定された場合(ステップST11:No)、回生ブレーキ制御部55は、デューティ比を低下させるタイミング(制御周期T)を決めるデューティタイマがタイムアップ(計測完了)したか否かを判定する(ステップST12)。
そして、ステップST12の判定処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していない判定された場合(ステップST12:No)、回生ブレーキ制御部55は、現在のデューティ比を維持して、ステップST9の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
一方、ステップST12の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していると判定された場合(ステップST12:Yes)、回生ブレーキ制御部55は、下段のトランジスタ42d、42e、及び42fのデューティ比を所定分だけダウン(低下)させて(ステップST13)、その後、ステップST9の処理に戻り、回生ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
以上説明したように、本発明のモータ制御装置41によれば、車両が傾斜地で停止したときに、スライドドア12を途中停止させると、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとするが、回生ブレーキ制御部55は、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させることにより、スライドドア12を途中停止させるとともに、途中停止後は、スライドドア12の「全閉位置」又は「全開位置」まで滑らかに移動させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態に係わるモータ制御装置41は、図3に示すように、駆動回路部42、直流電源44、ドライバ回路51、ドア開閉情報生成部52、及び制御部53を含んで構成される。
そして、上記実施形態において、本発明のモータ制御装置41は、車両11のスライドドア12の開閉を行う電動モータ21の回転を制御するとともに、開閉中のスライドドア12を途中停止させる場合に、電動モータ21の入力端子を短絡し回生ブレーキ力を発生させてスライドドア12を途中停止させる制御部53を有するモータ制御装置41であって、制御部53は、所定の制御周期Tに占める入力端子の短絡時間の割合であるデューティ比を、スライドドア12を途中停止させてから所定の第1規定時間が経過するまでは、所定の初期デューティ比に維持し、所定の第1規定時間の経過後は、所定の制御周期Tごとに、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させて回生ブレーキ力を制御する。
このような構成のモータ制御装置であれば、スライドドア12を途中停止させる場合に、電動モータ21の入力端子22u、22v、及び22wを短絡し回生ブレーキ力を発生させてスライドドア12を途中停止させる。そして、スライドドア12を途中停止させてから所定の第1規定時間が経過するまでは、所定の初期デューティ比により電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させ、この第1規定時間の経過後は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させることにより回生ブレーキ力を徐々に弱めていく。
これにより、傾斜地で停止した車両11において、途中停止したスライドドア12が重力の作用により傾斜方向に移動する際に、このスライドドア12を滑らかに移動させることができる。
また、上記実施形態において、制御部53は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる際に、デューティ比が予め定められた所定のデューティ閾値に到達した場合は、デューティ比を低下させることを停止し、以後、所定のデューティ閾値のデューティ比により回生ブレーキ力を制御する。
このような構成のモータ制御装置41であれば、デューティ比を徐々に低下させる際に、デューティ比が所定のデューティ閾値に到達した場合はデューティ比を低下させることを停止する。これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が停止位置から傾斜方向に移動する際に、スライドドア12の移動速度が速くなり過ぎることを防ぐことができる。
また、上記実施形態において、制御部53は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、所定の第2規定時間が経過した場合に、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させることを終了させる。
これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間を考慮して、回生ブレーキ制御を終了する時間を設定することができる。
また、上記実施形態において、スライドドア12の位置と移動速度を検出するドア開閉情報生成部52を備え、制御部53は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、スライドドア12の移動速度が予め定められた規定速度を超えた場合に、デューティ比を低下させることを停止する。
これにより、モータ制御装置41は、デューティ比を徐々に低下させる場合に、スライドドア12の移動速度が規定速度を超えた場合にデューティ比を低下させることを停止することができる。このため、モータ制御装置41は、スライドドア12の移動速度が速くなり過ぎることを防ぐことができる。
また、上記実施形態において、モータ制御装置41は、スライドドア12の位置と移動速度とを検出するドア開閉情報生成部52を備え、制御部53は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、所定の第2規定時間が経過した場合と、スライドドア12の全開位置を検出した場合と、スライドドア12の全閉位置を検出した場合と、のいずれかの場合が生じた際に、電動モータ21に回生ブレーキ力を発生させることを終了させる。
これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間を考慮して、回生ブレーキ制御を終了する時間(第2規定時間)を設定することができる。また、スライドドア12が「全閉位置」又は「全開位置」に到達した場合には、回生ブレーキ制御を直ちに終了することができる。
続いて、ドア開閉装置14の制御体系の他の一例について説明する。この制御体系では、上述の様な電動モータの入力端子を短絡してブレーキ力としての回生ブレーキ力を発生させるのではなく、回転子の位置に応じて駆動回路部42を一相通電制御(詳細後述)することで電動モータを一相通電しブレーキ力を発生させる。
図9は、図1に示すドア開閉装置14の制御体系の他の一例を示す説明図である。なお、図9において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図9に示す制御系回路部50aは、電動モータ21への印加電圧Vu、Vv、Vw(より正確には電圧と周波数)を可変制御するために、駆動回路部42のトランジスタ42a〜42fの各ゲートを駆動する駆動信号G1〜G6をパルス幅変調信号(PWM信号)として形成する。制御系回路部50aは、トランジスタ42a〜42fを高速スイッチングすることにより、直流電源44から各固定子巻線21u、21v、及び21wへ供給する印加電圧を制御する。
制御系回路部50aは、ドライバ回路51、ドア開閉情報生成部52、及び制御部53aを含んで構成される。
制御部53aは、回転制御部54aと、ブレーキ制御部56と、ROM(Read Only Memory)57とを有している。回転制御部54aは、ドア開閉情報生成部52から入力される速度信号V、位置信号P、及び方向信号Dに基づいて、ドライバ回路51に対して、電動モータ21を正転駆動または逆転駆動するためのPWM指令信号(正転回転指令または逆転回転指令)を出力する。ドライバ回路51は、入力されるPWM指令信号に基づいて、トランジスタ42a〜42fを交互にスイッチングするための駆動信号G1〜G6を生成し、駆動回路部42へ出力する。これによって、駆動回路部42(駆動回路)は、固定子巻線21u、21v、及び21wを交互に通電する供給電圧Vu、Vv、Vwの通電パターンを各固定子巻線に印加し、回転子47を、回転制御部54aが指示する回転方向に回転させる。
より具体的には、制御部53aには、開閉スイッチ45が接続される。操作者が開閉スイッチ45を操作し、制御部53aにドアの開閉開始を指令する信号が入力されると、回転制御部54aは、ドア開閉情報生成部52から入力される速度信号V、位置信号P、及び方向信号Dに応じてPWM指令信号を生成し、ドライバ回路51に対して出力する。
回転制御部54aによるデューティ(ドライバ回路51が出力する駆動信号の周期に対するオン期間の比率)の算出は、次のように実行される。すなわち、回転制御部54aは、スライドドア12の移動速度(速度信号Vの速度)と、予め実験或いは設計において設定されてROM57内に格納された目標速度Vcとに基づいた比例制御と積分制御とによりデューティを算出する。回転制御部54aは、駆動信号G1〜G6のデューティを、スライドドア12の移動速度Vと目標速度Vcとに基づいたPI(比例積分)演算、x=kp(V−Vc)+kiΣ(V−Vc)を算出する。つまり、回転制御部54aは、出力xをROM57内に格納された図示しないデューティ設定用の制御マップを参照することにより算出する。ここで、kpは比例ゲイン、kiは積分ゲインを示す。このPI制御によれば、スライドドア12の移動速度Vと目標速度Vcの差の累積により、移動速度Vと目標速度Vcの差が0となっても出力xは0とならないので、安定した速度制御が可能となる。
回転制御部54aは、方向信号Dが示す回転方向と同方向のPWM指令信号をドライバ回路51に対して出力する。なお、ROM57の制御マップは、目標速度Vcを、位置信号Pが示すスライドドア12の位置、及び方向信号Dが示すスライドドア12の移動方向に関連付けて記憶している。
図10は、ブレーキ動作について説明するための図である。図10は、ドア開閉装置14の制御体系の一例における各部の信号を示している。図10(A)は、図9に示したモータ制御装置41が、電動モータ21を正転駆動する場合の各部の動作タイムチャートを示す。また、図10(B)、及び図10(C)は、電動モータ21を正転駆動または逆転駆動する際の回転子位置シーケンスSnと、方向信号D(位置信号パターン)、及び電動モータ21への通電パターンとの関係を示す。
電動モータ21を正転駆動する動作において、ホールIC48u、48v、48wはそれぞれパルス信号Su、Sv、及びSwとして、図10に示すようにハイ信号(H信号)またはロー信号(L信号)を出力する。ドア開閉情報生成部52は、これらの信号から回転子47の回転方向を検出し、方向信号D(位置信号パターン)として回転制御部54aに対して出力する。例えば、回転子47が回転子位置シーケンスSnのS1の回転位置にあるとき、パルス信号Su、Sv、及びSwは、それぞれH信号、L信号、H信号となる。つまり、3つのホールICで検出するので、位置信号パターンは、H−L−H(パルス信号Su、Sv、及びSwを並列に並べた信号で示す)となり、この位置信号パターンを、便宜的に位置信号パターン「A」とする。また、回転子位置シーケンスSnがS2のとき、位置信号パターンは、H−L−Lとなり、位置信号パターンは「B」となる。
つまり、回転子位置が360°回転する回転子位置シーケンスS1〜S6に対応して、ドア開閉情報生成部52が出力する方向信号D(位置信号パターン)は「A」〜「F」となる。このように、電動モータ21の回転子47が開閉スイッチ45からの設定方向である正転方向に駆動されている場合、ドア開閉情報生成部52は、回転子位置シーケンスSnのシーケンスS1〜S6に対応して方向信号D(位置信号パターンA〜F)を回転制御部54aに対して出力する。
一方、回転制御部54aは、ドア開閉情報生成部52の方向信号Dに基づいて、電動モータ21を正転回転させるPWM指令信号をドライバ回路51に対して出力する。ドライバ回路51は、PWM指令信号に基づいて、駆動回路部42のトランジスタ42a〜42fの各ゲートを駆動するパルス幅変調信号(PWM信号)である駆動信号G1〜G6を出力する。この駆動信号G1〜G6が、図10において示される。なお、図10において、ハッチング部分はトランジスタ42a〜42fがPWM制御されてオンオフ駆動されていることを示している。
駆動回路部42は、駆動信号G1〜G6によって、トランジスタ42a〜42fをスイッチング制御し、固定子巻線21u、21v、及び21wに、図10に示すような、印加電圧Vu、Vv、Vwを印加する。これにより、電動モータ21の回転子47は、正転に回転する。本実施態様では、図10に示すように、上述した方向信号D(位置信号パターンA〜F)に対応して、印加電圧Vu、Vv、Vwの通電パターンを便宜的に通電パターンG〜Lとする。例えば、駆動回路部42は、位置信号パターンAに対応して、(0)−(−V)−(+V)の通電パターンGを出力している。
このように、ドライバ回路51は、回転制御部54aからの電動モータ21を正転駆動するためのPWM指令信号が入力されて、トランジスタ42a〜42fを駆動する駆動信号G1〜G6をパルス幅変調(PWM)信号として出力する。また、ドライバ回路51は、回転制御部54aによってPWM信号のバルス幅(デューティ)が目標速度Vpに応じて調整される。これにより、電動モータ21の印加電圧Vu、Vv、Vwは可変制御され、電動モータ21の回転軸21aの回転速度が調整される。
図10を参照して説明したように、回転子47の回転位置S1〜S6に対応してホールIC48u、48v、48wが出力するパルス信号Su、Sv、及びSwは6通りある。また、ドア開閉情報生成部52の出力信号する方向信号D、すなわち位置信号パターンは、位置信号パターンA〜Fの6通りある。これによって、ドライバ回路51が出力する駆動信号G1〜G6が6通りのパターンとなり、結果的に、各相の電機子巻線U、V、Wへの通電パターンもG〜Lの6通りとなる。このような関係を、タイムテーブルとしてまとめたものが、図10(B)、図10(C)において示される。
図10(B)は、電動モータ21の正転時に規定された回転子位置シーケンスS1〜S6と、位置信号パターンA〜F、及び通電パターンG〜Lの関係を示す。
正転時の回転子位置シーケンスSnの順序S1〜S6(S1→S2→S3→S4→S5→S6の順序を意味する)に対して、位置信号パターンの順序は、A〜F(A→B→C→D→E→Fの順序を意味する)となる。また、位置信号パターンに基づいて出力される通電パターンの順序は、G〜L(G→H→I→J→K→Lの順序を意味する)となる。
同様にして、図10(C)に示すように、逆転時の回転子位置シーケンスSnの順序S6〜S1(S6→S5→S4→S3→S2→S1の順序を意味する)に対して、位置信号パターンの順序は、F〜A(F→E→D→C→B→Aの順序を意味する)となる。また、位置信号パターンに基づいて出力される通電パターンの順序は、L〜G(L→K→J→I→H→Gの順序を意味する)となる。
以上説明したように、モータ制御装置41では、駆動回路部42のトランジスタ42a〜42fのオン期間のデューティを変化させて、かつ、各トランジスタ42a〜42fのオン期間を所定の組み合わせで重畳させて、電動モータ21を正転と逆転の両方向に回転させることができる。これにより、乗員等が開閉スイッチ45を操作して、スライドドア12の開閉を指示すると、モータ制御装置41は、自動、かつ目標速度Vpで、スライドドア12を開く(ドアOPEN)か、或いは閉じる(ドアCLOSE)ように作動する。
(スライドドアの「途中停止」とブレーキ動作)
ところで、乗員等がスライドドア12の開閉中に開閉スイッチ45を操作してスライドドア12の停止を指示すると、開閉スイッチ45は途中停止信号を出力する。制御部53aは、開閉スイッチ45から途中停止信号が入力されたら、ブレーキ制御部56により、電動モータ21を一相通電してブレーキ力を発生させ、その回転を停止させる。この一相通電は、制御部53aが、開閉スイッチ45から途中停止信号を入力されたときの位置信号パターンに対応する通電パターン(通電パターンG〜Lのうちの1つ)の出力を位置信号パターンの切り替わりに関わらず維持することにより行われる。
例えば、スライドドア12の停止が指示されたときの位置信号パターンが位置信号パターンAであるとき(図10参照)、通電パターンは通電パターンGである。ブレーキ制御部56は、ドライバ回路51が出力する駆動信号G1、G5のデューティ比を維持したまま(所定の初期デューティ比に維持したまま)、ドライバ回路51から駆動信号G1、G5を出力させる。なお、ブレーキ制御部56は、ドライバ回路51から出力する駆動信号G2〜G4、G6をロー(L信号)に維持させる。このように、ドライバ回路51から出力される駆動信号G2〜G4、G6をロー(L信号)とし、駆動信号G1、G5をPWM制御された信号とすることで、上段(上アーム)のトランジスタ42bと、トランジスタ42cと、下段(下アーム)のトランジスタ42dと、トランジスタ42fとをオフにする。また、上段(上アーム)のトランジスタ42aと下段(下アーム)のトランジスタ42eとを、オン/オフさせる。
この状態で、電動モータ21が回転しようとすると、電流が、電動モータ21の固定子巻線21uおよび固定子巻線21vの直列接続された巻線に、入力端子22uから22vの方向へと流れる。これにより、電動モータ21にブレーキ力が発生して、電動モータ21の回転がロックされる。なお、通電パターンが通電パターンG以外のパターンにある場合においても、上段側のトランジスタ42a、42b、及び42cのうちのいずれか1つのトランジスタと、下段側のトランジスタ42d、42e、及び42fのうちのいずれか1つのトランジスタをオンにすることにより、電流が次のように流れる。すなわち、電流が、固定子巻線のうち2つを直列接続した巻線に、入力端子のうちいずれか1つの端子から他の1つの端子の方向へと流れ、電動モータ21にブレーキ力を発生させることができる。
なお、図9では、固定子巻線をY結線(スター結線)としている場合を示しているが、Δ(デルタ)結線する場合(電動モータ21の入力端子22uと22vとの間に固定子巻線21u、入力端子22vと22wとの間に固定子巻線21v、入力端子22wと22uとの間に固定子巻線21wを結線する場合)であっても、次のように電流が流れ、ブレーキ力を発生することができる。すなわち、通電パターンが通電パターンGのとき、電流は、固定子巻線21uの経路と、固定子巻線21vおよび21wの直列接続された経路とのそれぞれの経路に、入力端子22uから22vの方向へと流れ、ブレーキ力を発生することができる。また、通電パターンが通電パターンG以外のパターンにある場合においても、上段側のトランジスタ42a、42b、及び42cのうちのいずれか1つのトランジスタと、下段側のトランジスタ42d、42e、及び42fのうちのいずれか1つのトランジスタをオンにすることにより、電流が次のように流れ、ブレーキ力を発生することができる。すなわち、電流が、1つの固定子巻線と固定子巻線のうち2つを直列接続した巻線とに、入力端子のうちいずれか1つの端子から他の1つの端子の方向へと流れ、ブレーキ力を発生することができる。
このように、図9に示す制御体系では、回転子の位置に応じて、駆動回路部42を一相通電制御することで、電動モータを一相通電しブレーキ力を発生させる。また、このブレーキ力は、ブレーキ制御部56により、その大きさが制御される。このブレーキ制御部56は、各駆動信号のうちPWM制御する駆動信号において、所定の制御周期Tに占めるハイ信号(H信号)の時間の割であるデューティ比を変更することで、ブレーキ力の大きさを制御することができる。つまり、ブレーキ制御部56は、このデューティ比を小さくすることにより、ブレーキ力を小さくすることができ、デューティ比を大きくすることにより、ブレーキ力を大きくすることができる。
上述したブレーキ制御部56の動作により、本実施形態のモータ制御装置41では、途中停止機能付のパワースライドドア装置において、車両11が平坦な場所でない傾斜地などで駐車している状態でスライドドア12を途中停止させた場合に、スライドドア12が重力の作用する方向に急激に移動することを回避することができる。
つまり、スライドドア12を途中停止させた場合に、ブレーキ制御部56は、最初は、途中停止させた場合のデューティ比(初期デューティ比、例えば20〜30%)のままで電動モータ21にブレーキ力を発生させ、電動モータ21の回転をロックすることにより、スライドドア12の移動を停止させる。
そして、所定の第1規定時間の経過後(例えば、10分経過後)に、ブレーキ制御部56は、デューティ比を徐々に低下させてブレーキ力を弱めることにより、スライドドア12を重力の作用する方向に徐々に移動させる。なお、上記第1所定時間は、車両11における消費電力を低減する省電力モードに移行するために予め設定される時間である。
このように、モータ制御装置41では、第1の規定時間が経過したらブレーキ制御部56がデューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させることにより、傾斜地などにおいて重力が作用する方向にスライドドア12を滑らかに移動させることができる。そして、モータ制御装置41は、スライドドア12の閉状態が検出された場合、例えば、スライドドア12の「全閉位置」がリミットスイッチにより検出された場合に、ブレーキ動作を終了させる。また、モータ制御装置41は、スライドドア12の開状態での停止が検出された場合、例えば、ドア開閉情報生成部52により電動モータ21の回転停止が検出された場合に、ブレーキ動作を終了させる。
(ブレーキ力の第1の制御例)
次に、ブレーキ力の具体的な制御例について説明する。
図11は、スライドドア12を途中停止させたときのブレーキ力の第1の制御例を示す図である。この図11は、スライドドア12の位置及び移動速度を検出しない場合の例であり、横方向に時間tの経過を示し、縦方向にデューティ比Duの時間変化と、スライドドア12の移動速度であるドア速度Spの時間変化と、を並べて示したものである。
この図11に示す例において、時刻t0において、スライドドア12を途中停止させるために利用者が開閉スイッチ45を操作すると、開閉スイッチ45は制御部53aに途中停止信号を送る。ブレーキ制御部56は、最初に、途中停止信号が発生したときの通電パターンでのデューティ比A%(初期デューティ比、例えば20〜30%)でブレーキを作動させる。これにより、電動モータ21の回転をロックして、時刻t1においてスライドドア12のドア速度Spを0とし、スライドドア12の移動を停止させることができる。
そして、この時刻t0から所定の第1規定時間(例えば、10分)が経過する時刻t2までの間、ブレーキ制御部56は、電動モータ21にデューティ比A%のブレーキ動作を行わせる。
その後、時刻t0から所定の第1規定時間が経過し、時刻t2後に至ると、この時刻t2以降、ブレーキ制御部56は、ブレーキ動作のデューティ比を徐々に低下させていく。つまり、ブレーキ制御部56は、デューティ比Duを初期値A%から所定の制御周期Tごとに一定の割合で徐々に低下させることにより、時間の経過とともに電動モータ21のブレーキ力を次第に弱めて行く。
そして、時刻t2の後の時刻t2’に至り、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとする力が、ブレーキ力よりも大きくなると、スライドドア12が移動を開始する。そして、時刻t2’以降、ブレーキ制御部56が電動モータ21のブレーキ力を弱めるに従い、スライドドア12のドア速度Spが次第に増加する。
このブレーキ制御部56は、デューティ比の下限閾値として「規定デューティ比Du1(デューティ閾値)」の情報を保持している。ブレーキ制御部56は、時刻t2以降、次第にデューティ比Duを小さくし、時刻t3において、デューティ比Duが規定デューティ比Du1(デューティ閾値)に到達した場合、この時刻t3以降、デューティ比を規定デューティ比Du1(デューティ閾値)よりも低下させないようする。つまり、この時刻t3以降、ブレーキ制御部56は、デューティ比が規定デューティ比Du1になるように一定に維持する。
そして、時刻t3以降、スライドドア12は移動をし続け、時刻t4に至り、ドア位置が「全開位置」又は「全閉位置」に到達すると、物理的な制約によりスライドドア12の移動が停止し、ドア速度が0(ゼロ)となる。なお、時刻t3から時刻t4までのドア速度Spは、必ずしも一定速度であるとは限らず、スライドドア12を傾斜方向に移動させようとする力の大きさと、電動モータ21のブレーキ力の大きさとに応じて、次第に速度が増加する場合もある。
そして、ブレーキ制御部56は、時刻t4の後の時刻t5までブレーキの制御を継続する。これは、ブレーキ制御部56がスライドドア12のドア速度Spを検出しないため、ドア速度Spが0(ゼロ)になったことを検出できず、ドア速度Spが0(ゼロ)になる時刻t4以降も時刻t5まで電動モータ21のブレーキ制御を行う。
この時刻t5は、スライドドア12が「途中停止位置」から「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間に基づいて設定されるものであり、車両11の想定される傾斜角度と、スライドドア12の移動距離とに応じて設定されるものである。つまり、デューティ比を低下させる制御を開始した時刻t2から、ブレーキ制御を終了する時刻t5までの時間(第2規定時間)は、スライドドア12の開閉方向への想定される移動時間に基づいて、所定の余裕時間を見て設定されるものである(例えば、5分に設定)。
このように、本実施形態のモータ制御装置41では、ブレーキ制御部56がデューティ比を徐々に低下させてブレーキ力を弱めていくため、スライドドア12を滑らかに移動させることができる。このため、モータ制御装置41では、スライドドアが急激に移動して衝撃を発生させることを回避し、ユーザに与える不安感をなくすことができる。
なお、図11に示した例では、ブレーキ制御部56は、時刻t0〜t2におけるデューティ比(初期デューティ比)をA%としているが、これに限定されず、初期デューティ比は所望の値に設定できるものである(後述する図12においても同様)。
(ブレーキ力の第2の制御例)
また、図12は、スライドドア12を途中停止させたときのブレーキ力の第2の制御例を示す図である。この図12に示す例は、スライドドア12の位置及び移動速度を検出する場合の例であり、横方向に時間tの経過を示し、縦方向にデューティ比Duの時間変化と、スライドドア12の移動速度であるドア速度Spの時間変化と、を並べて示したものである。
この図12に示す例は、ブレーキ制御部56が、デューティ比の下限閾値(デューティ閾値)としての「規定デューティ比Du1」と、速度閾値としての「規定速度Sp1」の情報を保持している例である。ブレーキ制御部56は、デューティ比Duまたはドア速度Spが、それぞれの閾値に到達した場合、それ以上、デューティ比を低下させないように制御する。
この図12に示す例では、時刻t2以降、ブレーキ制御部56がデューティ比を徐々に低下させると、時刻t2の後の時刻t2’に至り、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとする力がブレーキ力よりも大きくなり、スライドドア12が移動を開始する。そして、時刻t2’以降、ブレーキ制御部56が電動モータ21のブレーキ力を弱めるに従い、スライドドア12のドア速度Spが次第に増加する。
そして、時刻t2’の後の時刻t6において、ドア速度Spが「規定速度Sp1」に到達する。つまり、デューティ比Duがデューティ比の下限閾値としての「規定デューティ比Du1」に到達する前に、ドア速度Spが「規定速度Sp1」に到達する。このため、ブレーキ制御部56は、時刻t6以降ではデューティ比Duを低下させることを停止し、ドア速度Spが「規定速度Sp1」を大きく超えた速度にならないように制限する。
そして、スライドドア12が移動し、時刻t6の後の時刻t7に至ると、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達して停止し、ドア速度Spが0(ゼロ)になる。ブレーキ制御部56は、スライドドア12の移動が停止したことを検出して、ブレーキの一相通電制御動作を終了する。
これにより、ブレーキ制御部56は、スライドドア12の移動速度を検出して、この移動速度が速くなりすぎることを防ぐことができる。また、ブレーキ制御部56は、スライドドア12が「全開位置」又は「全開位置」に到達したことを検出して、ブレーキの一相通電制御動作を終了することができる。
また、図13は、ブレーキ制御部56におけるブレーキの制御手順を示すフローチャートである。なお、図13において、図8と同じ部分には同じ符号を付している。以下、図13のフローチャートを参照して、その処理の流れについて説明する。
スライドドア12が全閉または全開位置で乗員等が開閉スイッチ45を操作して、スライドドア12の開閉を指示すると、モータ制御装置41は、自動、かつ目標速度Vpで、スライドドア12を開く(ドアOPEN)か、或いは閉じる(ドアCLOSE)ように、自動開閉動作を開始する(ステップST0_1)。
回転制御部54aは、スライドドア12のドア位置が自動開閉動作開始後に「全閉位置」または「全開位置」に到達したか否かを判断する(ステップST0_2)。全閉検出スイッチ46が、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」に到達したことを検出すると、回転制御部54aは、「全閉位置」にあると判断する。また、ドア開閉情報生成部52が「全開位置」に到達したことを検出すると、回転制御部54aは、「全開位置」にあると判断する。
回転制御部54aは、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」または「全開位置」に到達したと判断すると(ステップST0_2―Yes)、ドライバ回路51に対して、電動モータ21の駆動を停止するためのPWM指令信号を出力する。電動モータ21への通電は終了し、スライドドア12の自動開閉動作が終了する(ステップST0_3)。
一方、回転制御部54aが、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」または「全開位置」に到達していないと判断すると(ステップST0_2―No)、ブレーキ制御部56は、乗員等の開閉スイッチ45の操作によるスライドドア12の途中停止信号が入力されているか否かを判断する(ステップST0_4)。
ブレーキ制御部56が、スライドドア12の途中停止信号が入力されていないと判断した場合(ステップST0_4:No)、ステップST0_2に戻り、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」または「全開位置」にあるか否かが判断される。
一方、ブレーキ制御部56が、スライドドア12の途中停止信号が入力されていると判断した場合(ステップST0_4:Yes)、ブレーキ制御部56は、デューティタイマを始動させる(ステップST0_5)。
ブレーキ制御部56は、一相通電制御を開始する。すなわち、ブレーキ制御部56は、初期デューティ比A%で下段のトランジスタ(IGBT)42d、42e、及び42fのうち1つのトランジスタと、上段のトランジスタ(IGBT)42a、42b、及び42cのうち1つのトランジスタとを、駆動信号によりPWM駆動するように、PWM指令信号をドライバ回路51に対して出力する。ドライバ回路51からは、途中停止信号入力時のセンサ信号に応じたスイッチングパターンを一定デューティで駆動信号が出力される(ステップST0_6)。これにより、ブレーキ制御部56は、電動モータ21にブレーキ力を発生させてスライドドア12を途中停止させる。
ブレーキ制御部56は、乗員等が開閉スイッチ45を操作して、スライドドア12の途中停止信号の入力が解除されているか否かを判断する(ステップST0_7)。
ブレーキ制御部56が、スライドドア12の途中停止信号が解除されていると判断した場合(ステップST0_7:Yes)、ステップST0_2に戻り、スライドドア12のドア位置が「全閉位置」または「全開位置」にあるか否かが判断される。
一方、ブレーキ制御部56が、スライドドア12の途中停止信号が解除されていないと判断した場合(ステップST0_7:No)、ブレーキ制御部56は、所定の第1規定時間(車両が省電力モードへ移行するために予め設定された時間)が経過したか否かを判定する(ステップST0_8)。ステップST0_8の判定処理において、所定の第1規定時間が経過していないと判定された場合(ステップST0_8:No)、ブレーキ制御部56は、ステップST0_6に戻って、初期デューティ比A%で電動モータ21にブレーキ力を与え続ける。なお、図11及び図12の時刻t0〜t2の間で行われる処理が、図13のステップST0_5〜ST0_8の処理に相当する。
一方、ステップST0_8の判定処理において、所定の第1規定時間が経過したと判定された場合(ステップST0_8:Yes)、ブレーキ制御部56は、位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)に故障が発生しているか否かを判定する(ステップST4)。この位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)の故障は、電動モータ21を駆動してスライドドア12を開閉する際に、予め検出してその故障情報を保持できるものである。
そして、ステップST4の処理において、位置センサに故障が発生していると判定された場合(ステップST4:Yes)、ブレーキ制御部56は、位置センサ故障時の処理(ステップST5〜ステップST8側の処理)に移行する。なお、図11において、時刻t2〜t5の間に行われる処理が、ステップST5〜ステップST8の処理に相当する。
そして、ステップST5に移行すると、ブレーキ制御部56は、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否を判定する(ステップST5)。このステップST5における終了条件として、スライドドア12が途中停止位置から「全閉位置」又は「全閉位置」に移動するのに要すると想定される第2規定時間(予め設定される時間)を超えたか否かが判定される。このステップST5の判定に使用される第2規定時間は、例えば、図11に示す時刻t2から時刻t5の間の時間が相当する。
そして、ステップST5の処理において、終了条件が成立していると判定された場合(ステップST5:Yes)、ブレーキ制御部56は、ブレーキの制御動作を終了する(ステップST14)。
一方、ステップST5の処理において、終了条件が成立していないと判定された場合(ステップST5:No)、ブレーキ制御部56は、現在のデューティ比(Duty)が規定デューティ比(規定Duty)に到達しているか否かを判定する(ステップST6)。例えば、図11では、時刻t3において規定デューティ比Du1に到達したと判定される。
そして、ステップST6の処理において規定デューティ比に到達していると判定された場合(ステップST6:Yes)、ブレーキ制御部56は、ステップST5の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップST5)。
一方、ステップST6の処理において規定デューティ比に到達していないと判定された場合(ステップST6:No)、ブレーキ制御部56は、デューティ比を低下させるタイミングを決めるデューティタイマ(Duty Timer)がタイムアップ(計測完了)したか否かを判定する(ステップST7)。
そして、ステップST7の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していない判定された場合(ステップST7:No)、ブレーキ制御部56は、ステップST5の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップST5)。
一方、ステップST7の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していると判定された場合(ステップST7:Yes)、ブレーキ制御部56は、デューティタイマの計測値をリセットするとともに、上段のトランジスタ42a、42b、及び42cのうちの1つのトランジスタと下段のトランジスタ42d、42e、及び42fのうちの1つのトランジスタとのデューティ比を所定分だけダウン(低下)させて(ステップST8)、その後にステップST5の処理に戻る。
次に、ステップST4の処理に戻り、このステップST4の処理において位置センサに故障が発生していないと判定された場合(ステップST4:No)、ブレーキ制御65は、位置センサ正常時の処理(ステップST9〜ステップST13側の処理)に移行する。なお、図12の時刻t2〜t7の間に行われる処理が、ステップST9〜ステップST13の処理に相当する。
そしてステップST9に移行すると、ブレーキ制御部56は、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否を判定する(ステップST9)。このステップST9の終了条件の判定処理においては、スライドドア12が「全閉位置」又は「全閉位置」まで移動した場合と、スライドドア12が途中停止位置から「全閉位置」又は「全閉位置」に移動するのに要すると想定される第2規定時間(予め設定される時間)を超えた場合と、スライドドア12の移動が開始された後に電動モータ21の発電が停止した場合と、のいずれかの場合が生じた際に、終了条件が成立したと判定される。
なお、スライドドア12の「全閉位置」は、スライドドア12が完全に閉まったことを検出する全閉検出スイッチ46(例えば、リミットスイッチ)により検出することができる。また、「全開位置」は、ドア開閉情報生成部52により検出される。また、電動モータ21の発電停止は、電動モータ21のコイルに流れる電流を測定することにより検出することができる他、位置センサ(ホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48w)の出力信号の変化の有無により検出することができる。
そして、ステップST9の判定処理において、終了条件が成立していると判定された場合(ステップST9:Yes)、ブレーキ制御部56は、ブレーキの制御動作を終了する(ステップST14)。
一方、ステップST9の判定処理において、終了条件が成立していないと判定された場合(ステップST9:No)、ブレーキ制御部56は、スライドドア12の移動速度が規定速度(図12の規定速度SP1を参照)を超えているか否かを判定する(ステップST10)。
そして、ステップST10の判定処理において、スライドドア12のドア速度が規定速度を超えていると判定された場合(ステップST10:Yes)、ブレーキ制御部56は、デューティ比を低下させる制御を行うことなくステップST9の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
図12に示す例では、時刻t6において、ドア速度Spが規定速度Sp1に到達し、このときのデューティ比がデューティ比Du2になる。ブレーキ制御部56では、この時刻t6以降、時刻t7まで、デューティ比Duを一定のデューティ比Du2に維持する。
一方、ステップST10の判定処理において、スライドドア12のドア速度が規定速度を超えていないと判定された場合(ステップST10:No)、ブレーキ制御部56は、現在のデューティ比(Duty)が規定デューティ比Du1(デューティ閾値)に到達しているか否かを判定する(ステップST11)。
そして、ステップST11の判定処理において規定デューティ比Du1に到達していると判定された場合(ステップST11:Yes)、ブレーキ制御部56は、ステップST9の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
また、ステップST11の判定処理において規定デューティ比Du1に到達していないと判定された場合(ステップST11:No)、ブレーキ制御部56は、デューティ比を低下させるタイミング(制御周期T)を決めるデューティタイマがタイムアップ(計測完了)したか否かを判定する(ステップST12)。
そして、ステップST12の判定処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していない判定された場合(ステップST12:No)、ブレーキ制御部56は、現在のデューティ比を維持して、ステップST9の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
一方、ステップST12の処理においてデューティタイマがタイムアップ(計測完了)していると判定された場合(ステップST12:Yes)、ブレーキ制御部56は、上段のトランジスタ42a、42b、及び42cのうちの1つのトランジスタと下段のトランジスタ42d、42e、及び42fのうちの1つのトランジスタとのデューティ比を所定分だけダウン(低下)させて(ステップST13)、その後、ステップST9の処理に戻り、ブレーキ制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
以上説明したように、本発明のモータ制御装置41によれば、車両が傾斜地で停止したときに、スライドドア12を途中停止させると、重力の作用によりスライドドア12が傾斜方向に移動しようとするが、ブレーキ制御部56は、電動モータ21にブレーキ力を発生させることにより、スライドドア12を途中停止させるとともに、途中停止後は、スライドドア12の「全閉位置」又は「全開位置」まで滑らかに移動させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態に係わるモータ制御装置41は、図3および図9に示すように、駆動回路部42、直流電源44、ドライバ回路51、ドア開閉情報生成部52、及び制御部53を含んで構成される。
そして、上記実施形態において、本発明のモータ制御装置41は、車両11のスライドドア12の開閉を行う電動モータ21の回転を制御するとともに、スライドドア12の開閉中に途中停止信号が入力されたら電動モータ21にブレーキ力を発生させる制御を行ってスライドドア12を途中停止させる制御部53または制御部53aを有するモータ制御装置41である。制御部53または制御部53aは、スライドドア12が途中停止すると、スライドドア12を途中停止させてから所定の第1規定時間が経過するまでは、電動モータ21のブレーキ力を所定のブレーキ力に維持し、所定の第1規定時間の経過後は、所定の制御周期ごとに、所定の制御周期に占める電動モータの入力端子の短絡時間の割合であるデューティ比を所定の初期デューティ比から徐々に低下させてブレーキ力を徐々に低下させる制御を行う。
このような構成のモータ制御装置であれば、スライドドア12を途中停止させる場合に、電動モータ21のブレーキ力を所定のブレーキ力に維持してスライドドア12を途中停止させる。そして、スライドドア12を途中停止させてから所定の第1規定時間が経過するまでは、所定の初期デューティ比により電動モータ21にブレーキ力を発生させ、この第1規定時間の経過後は、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させることによりブレーキ力を徐々に弱めていく。
制御部53aでは、途中停止信号が入力されたら、途中停止信号が入力されたときの回転子の位置に応じて駆動回路部42を一相通電制御することでブレーキ力を発生する。
制御部53は、途中停止信号が入力されたら、電動モータ21の入力端子を短絡し、ブレーキ力としての回生ブレーキ力を発生させる。
これにより、傾斜地で停止した車両11において、途中停止したスライドドア12が重力の作用により傾斜方向に移動する際に、このスライドドア12を滑らかに移動させることができる。
また、上記実施形態において、制御部53または制御部53aは、デューティ比を初期デューティ比(100%またはA%)から徐々に低下させる際に、デューティ比が予め定められた所定のデューティ閾値に到達した場合は、デューティ比を低下させることを停止し、以後、所定のデューティ閾値のデューティ比によりブレーキ力を制御する。
このような構成のモータ制御装置41であれば、デューティ比を徐々に低下させる際に、デューティ比が所定のデューティ閾値に到達した場合はデューティ比を低下させることを停止する。これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が停止位置から傾斜方向に移動する際に、スライドドア12の移動速度が速くなり過ぎることを防ぐことができる。
また、上記実施形態において、制御部53または制御部53aは、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、所定の第2規定時間が経過した場合に、電動モータ21にブレーキ力を発生させることを終了させる。
これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間を考慮して、ブレーキ制御(回生ブレーキ制御または一相通電制御)を終了する時間を設定することができる。
また、上記実施形態において、スライドドア12の位置と移動速度を検出するドア開閉情報生成部52を備え、制御部53または制御部53aは、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、スライドドア12の移動速度が予め定められた規定速度を超えた場合に、デューティ比を低下させることを停止する。
これにより、モータ制御装置41は、デューティ比を徐々に低下させる場合に、スライドドア12の移動速度が規定速度を超えた場合にデューティ比を低下させることを停止することができる。このため、モータ制御装置41は、スライドドア12の移動速度が速くなり過ぎることを防ぐことができる。
また、上記実施形態において、モータ制御装置41は、スライドドア12の位置と移動速度とを検出するドア開閉情報生成部52を備え、制御部53または制御部53aは、デューティ比を初期デューティ比から徐々に低下させる制御を開始した後、所定の第2規定時間が経過した場合と、スライドドア12の全開位置を検出した場合と、スライドドア12の全閉位置を検出した場合と、のいずれかの場合が生じた際に、電動モータ21にブレーキ力を発生させることを終了させる。
これにより、モータ制御装置41は、スライドドア12が「全開位置」又は「全閉位置」に到達するであろうと推定される時間を考慮して、ブレーキ制御を終了する時間(第2規定時間)を設定することができる。また、スライドドア12が「全閉位置」又は「全開位置」に到達した場合には、ブレーキ制御を直ちに終了することができる。
以上、本発明の実施形態の説明において、ブレーキ制御部の一相通電制御は上段のトランジスタおよび下段のトランジスタそれぞれ一つずつをPWM制御するとしたが、これに限らず、例えば下段のトランジスタのみをPWM制御し、上段のトランジスタをオン制御としてもよい。これにより、ブレーキ制御をより簡易なものとすることができる。
また、本発明のモータ制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。