以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
本実施形態の開閉体制御装置は、車両に設けられる開閉体(例えば、スライドドア、テールゲート)の開閉を行う電動モータの回転を制御するものであって、電動モータに対して通電を行っていない間に開閉体の移動を検出した場合には、その電動モータの各相のうち1相のみに通電する通電パターンに対応する上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とを第1の状態に制御する第1制御と、当該上段のスイッチング素子と当該下段のスイッチング素子とを第2の状態に制御する第2制御と、を交互に繰り返す通電制御を行う。これにより、開閉体の不意な急速移動を抑制することができる。なお、本実施形態では、車両に設けられる開閉体が、スライドドアである場合について説明するが、これに限定されない。
以下、本実施形態の開閉体制御装置について、詳細を説明する。
図1は、本実施形態の開閉体制御装置41を備えた車両用開閉装置10を有するワンボックスタイプの車両11を示す側面図である。図2は、本実施形態におけるスライドドア13の上面図であり、スライドドア13の装着部分の詳細を示す拡大図である。
図1及び図2に示すように、車両11は、スライドドア13、ガイドレール14、16、17及び車両用開閉装置10を備える。
図1に示すように、車両11は、ワンボックスタイプの乗用車であり、その車体12の側部には開閉体であるスライドドア13が設けられている。このスライドドア13は、車体12の側部に固定されたガイドレール(案内部材)14に案内されて、図1中に実線で示す全閉位置と一点鎖線で示す全開位置との間で開閉自在である。したがって、乗員の乗降や荷物の積み下ろしなどを行う際にはスライドドア13を所望の開度にまで開けて使用される。また、スライドドア13には、スライドドア13の開閉動作を指令するために、開閉スイッチとしてのハンドル45が設けられている。
図2に示すように、スライドドア13には車両11の後方側に突出するアーム61が固定されており、このアーム61の先端にはローラアッシー60が揺動自在に取り付けられている。このローラアッシー60は車両11の側部に固定されたガイドレール14に組み込まれており、このガイドレール14に沿って車両11の前後方向に移動自在となっている。また、ガイドレール14の車両後方端にはストッパゴム62が設けられており、ローラアッシー60はこのストッパゴム62に当接してその移動が規制されるようになっている。このような構造により、スライドドア13は実線で示す全開位置と一点鎖線で示す全閉位置との間で車両11の側面に沿って車両前後方向に移動自在つまり開閉自在となっている。スライドドア13は、ローラアッシー60がガイドレール14に案内されることにより、車両11の前後方向に移動する。
ガイドレール14は、湾曲部14a、直線部14bを備え、ガイドレール14の先端近傍および後端近傍にはそれぞれ反転プーリ18及び反転プーリ19が配置されている。 湾曲部14aは、ガイドレール14の車両前方側に形成されている。湾曲部14aは、車室内側に湾曲する形状である。スライドドア13は、ローラアッシー60が湾曲部14aに案内されることにより、車体12の側面と同一面に収まるように車体12の内側に引き込まれた状態で閉じられる。直線部14bは、湾曲部14aよりも車両後方位置に形成されている。直線部14bは、車体12の側部に対して平行な形状である。
ローラアッシー60は、図2に示す部位以外にスライドドア13の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)にも設けられている。スライドドア13の前端部の上下部分(アッパー部・ロア部)に設けられたローラアッシー60に対応して車体12の開口部の上下部位にガイドレール16及びガイドレール17が設けられている。したがって、スライドドア13は、車体12に計3カ所において支持されている。
反転プーリ18、19は、それぞれガイドレール14の両端に設けられている。
車両用開閉装置10は、スライドドア13を開閉する装置である。
車両用開閉装置10は、駆動ユニット15及びケーブル23(ケーブル23a、ケーブル23b)を備える。
駆動ユニット15は、ガイドレール14の車両前後方向の略中央部に隣接して車体12の内部に配置される。
ケーブル23a、ケーブル23bは、それぞれ車両後方側と前方側からローラアッシー60に接続される。駆動ユニット15は、ケーブル23a又はケーブル23bの一方のケーブルを引くことによりスライドドア13が開動作又は閉動作される。
スライドドア13には、当該スライドドア13を所定の開位置つまり全開位置に保持するために、開状態保持機構としての全開ロック機構70が設けられている。
全開ロック機構70は、スライドドア13に対して起立状態および傾斜状態に揺動自在に取り付けられたフックアーム71と、車両後方側に固定された棒状のストライカ72とを備えている。スライドドア13が全開位置にまで開かれると、フックアーム71の先端に設けられた係合溝にストライカ72が係合する。また、車両用開閉装置10は、スライドドア13を全閉位置にまで閉めこむドアクローザ装置90を備えてもよい。ドアクローザ装置90は、スライドドア13に設けられ、スライドドア13が全閉位置付近に到達すると車両に設けられた不図示のストライカと係合し、スライドドア13を全閉位置にまで閉めこむ。ここで、フックアーム71の先端に設けられた係合溝にストライカ72が係合することでスライドドア13が全開位置に保持される位置を全開ラッチ位置、ドアクローザ装置90が不図示のストライカと係合する位置を全閉ラッチ位置という。
図3は、本実施形態における車両用開閉装置10の制御体系における概略構成の一例を示す図である。
車両用開閉装置10は、駆動ユニット15、回転角センサ48、切替スイッチ46及び開閉体制御装置41を備える。
電動モータ21は、スライドドア13を開閉駆動する駆動源である。例えば、電動モータ21は、3相(U相、V相、及びW相)のブラシレスモータ等の正逆両方向に回転可能なモータである。電動モータ21は、開閉体制御装置41から供給される信号に基づいて、回転駆動する。すなわち、電動モータ21は、開閉体制御装置41から、通電パターンに従って、3相の各相へ、それぞれ印加電圧Vu、印加電圧Vv、及び印加電圧Vwが供給されると作動する。電動モータ21は、供給される印加電圧の正負に応じて、その回転方向が正転又は逆転に切り替えられる。
また、電動モータ21の回転軸21aには、回転子47(永久磁石)が固定される。この回転子47の回転軌道近傍には、回転子47の回転位置を検出する回転角センサ48としての3つのホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48wが、回転軸21aを中心として互いに120度の位置に設けられている。これらの3つのホールIC48u、ホールIC48v、及びホールIC48wは、電動モータ21の回転軸21aが回転すると、それぞれ互いに120度位相のずれたパルス信号Su、パルス信号Sv、及びパルス信号Swを開閉体制御装置41に対して出力する。
また、電動モータ21の回転軸21aには、駆動ギヤ24が固定される。駆動ギヤ24には大径スパーギヤ25が噛み合わされている。大径スパーギヤ25と一体に回転する小径スパーギヤ26には、出力軸27に固定される従動ギヤ28が噛み合わされている。これにより、電動モータ21の回転は所定の減速比で減速されて出力軸27に伝達される。
出力軸27には外周面に図示しない螺旋状の案内溝が形成された円筒形状のドラム31が固定されている。駆動ユニット15に案内されたケーブル23は、案内溝に沿ってドラム31に複数回巻き付けられている。電動モータ21が作動すると、ドラム31は電動モータ21に駆動されて回転し、これによりケーブル23が作動してスライドドア13は開閉動作する。つまり、電動モータ21により、図3中で反時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両後方側のケーブル23がドラム31に巻き取られて、スライドドア13はケーブル23に引かれながら開方向に移動する。反対に、電動モータ21により、図3中で時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両前方側のケーブル23がドラム31に巻き取られてスライドドア13はケーブル23に引かれながら閉方向に移動する。このように、スライドドア13は、ケーブル23、ドラム31、出力軸27等を介して電動モータ21に接続され、電動モータ21により開閉駆動されるようになっている。
ドラム31と2つの反転プーリ18、及び反転プーリ19との間には、それぞれテンショナ32が設けられている。テンショナ32は、ドラム31とスライドドア13との間におけるケーブル23の弛みを取ってケーブル張力を一定範囲に維持する。テンショナ32は、それぞれ固定プーリ32aと可動プーリ32bとを有し、可動プーリ32bは固定プーリ32aを軸心としてばね部材32cにより回転方向に付勢されており、ケーブル23は各プーリ32a、32bの間に掛け渡されている。したがって、ケーブル23に緩みが生じると、可動プーリ32bにより付勢されてケーブル23の移動経路が増加し、これによりケーブル23の張力が維持される。
なお、駆動ユニット15は電動モータ21と出力軸27との間にクラッチ機構が設けられないクラッチレス式となっている。つまり、電動モータ21から出力軸27、つまりスライドドア13へは、常に動力伝達可能な状態とされている。
上記駆動ユニット15内の電動モータ21は、スライドドア13を自動で開閉する自動開閉モードの場合には、開閉体制御装置41により通電されることで駆動される。この自動開閉モードにおいて、開閉体制御装置41は、スライドドア13を予め設定された目標速度で開閉移動させるように電動モータ21の作動を制御する。一方、電動モータ21は、スライドドア13が手動で開閉される手動開閉モードの場合、開閉体制御装置41により駆動されない。すなわち、電動モータ21には、通電されない。これにより、ユーザによるスライドドア13の手動操作が可能となる。ただし、電動モータ21が通電されない場合には、電動モータ21にトルクが加わっていないため、スライドドア13が自重により傾斜地の傾斜方向に不意に落下する場合がある。したがって、開閉体制御装置41は、手動開閉モード時において、スライドドア13の落下を検出した場合には、電動モータ21に対して断続通電する。これにより、開閉体制御装置41は、スライドドア13の落下速度を抑制するとともに、落下しているスライドドア13を振動させることで、異常が発生していることをユーザに報知することができる。なお、手動開閉モードにおける具体的な動作の説明は後述する。
スライドドア13には、その車室内側と外側とにそれぞれ開閉スイッチとしての機能を有するハンドル45が設けられている。ハンドル45は、開閉体制御装置41に接続されている。ハンドル45は、乗員等により操作されると、その操作に応じた開閉指令信号を開閉体制御装置41に出力する。すなわち、ハンドル45は、乗員等の操作者により開側に操作されると、スライドドア13の開動作を指示する指令信号を開閉体制御装置41に出力する。ハンドル45は、乗員等の操作者により閉側に操作されるとスライドドア13を閉じることを指示する指令信号を開閉体制御装置41に出力する。開閉体制御装置41は、ハンドル45から供給された開閉指令信号を取得すると、開閉指令信号に基づいて電動モータ21を正転又は逆転制御する。これにより、開閉体制御装置41は、スライドドア13を開方向又は閉方向に作動させることができる。すなわち、操作者はハンドル45を操作することにより、スライドドア13を自動で開閉動作させることができる。
切替スイッチ46は、スライドドア13の自動開閉及び手動開閉を切替えるためのスイッチである。例えば、切替スイッチ46は、車両11の運転席に設けられる。切替スイッチ46は、ユーザにより自動開閉に切り替えられると、自動開閉信号を開閉体制御装置41に出力する。これにより、開閉体制御装置41が自動開閉モードに移行し、スライドドア13の自動開閉が可能となる。一方、切替スイッチ46は、ユーザにより手動開閉に切り替えられると、手動開閉信号を開閉体制御装置41に出力する。これにより、開閉体制御装置41が手動開閉モードに移行し、スライドドア13の手動開閉が可能となる。
図4は、本実施形態における開閉体制御装置41の概略構成の一例を示す図である。 開閉体制御装置41は、インバータ回路42及び制御装置51を備える。
インバータ回路42は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子42a〜42fと、スイッチング素子42a〜42fの各コレクタ−エミッタ間に逆並列に接続されたダイオード43a〜43fとを備える。各スイッチング素子42a〜42fは、例えば、FET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。ブリッジ接続された6個のスイッチング素子42a〜42fの各ゲートは制御装置51に接続される。
スイッチング素子42a〜42fのコレクタまたはエミッタは、電動モータ21の入力端子22u、22v、及び22wを介して、例えばデルタ結線された固定子巻線21u、21v、及び21wに接続される。これによって、6個のスイッチング素子42a〜42fは、制御装置51から入力される駆動信号(ゲート信号)G1〜G6によってスイッチング動作を行い、インバータ回路42に印加される直流電源44の電源電圧を、3相(U相、V相、W相)の印加電圧Vu、Vv、Vwとして、固定子巻線U、V、Wへ供給する。
制御装置51は、ハンドル45から供給される指令信号に基づいて、電動モータ21を正転又は逆転させることを指示するPWM(pulse width modulation)信号をインバータ回路42に出力する。また、制御装置51は、電動モータ21に対して通電を行っていない間にスライドドア13の落下(移動)を検出した場合には、電動モータ21の各相のうち1相のみに通電する通電パターンに対応する上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とを第1の状態に制御する第1制御と、その上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とを第2の状態に制御する第2制御と、を交互に繰り返す駆動信号をインバータ回路42に出力する。これにより、制御装置51は、電動モータ21を断続通電させ、スライドドア13の落下速度を抑制するとともに、落下しているスライドドア13を振動させるため、異常が発生していることをユーザに報知することができる。なお、電動モータ21に対して通電を行っていない間とは、例えば、開閉体制御装置41が手動開閉モードである場合である。本実施形態では、電動モータ21に対して通電を行っていない間が、開閉体制御装置41が手動開閉モードである場合として説明する。なお、制御装置51は、自動開閉モードから手動開閉モードに移行した場合には、インバータ回路42に対するPWM信号の出力を停止することで、電動モータ21の通電を停止する。そして、制御装置51は、例えば、電動モータ21の通電を停止してから第1所定時間Tth1以内にスライドドア13の移動を検出した場合には、スライドドア13が落下していると判定し、電動モータ21の断続通電を行う。
以下に、本実施形態における制御装置51の手動開閉モードについて、説明する。図5は、本実施形態における制御装置51の手動開閉モードの概略構成を示す図である。
制御装置51は、モード切替部52、第1タイマ53、制御部54、カウンタ55、駆動制御部56及び第2タイマ57を備える。
モード切替部52は、切替スイッチ46から自動開閉信号が供給されると、自動開閉モードに移行する自動開閉モード信号を制御部54に出力する。一方、モード切替部52は、切替スイッチ46から手動開閉信号が供給されると、手動開閉モードに移行する手動開閉モード信号を制御部54に出力するとともに、第1タイマ53による第1所定時間Tth1の計時を開始させる。このように、第1タイマ53は、切替スイッチ46によりスライドドア13の自動開閉から手動開閉に切り替えられると、第1所定時間Tth1の計時を開始する。また、制御装置51は、切替スイッチ46から手動開閉信号が供給されると、インバータ回路42に供給しているPWM信号の供給を停止することで、電動モータ21に対する通電を停止する。第1所定時間Tth1は、スライドドア13の落下を判定するための閾値であり、予め設定される。なお、本実施形態では、切替スイッチ46の切り替えた場合にスライドドア13の落下を検知する一例について説明するが、これに限定されない。すなわち、切替スイッチ46を切り替えない場合でも、スライドドア13の落下を検知してもよい。例えば、ラッチ未勘合状態でモータ通電を停止した場合に、スライドドア13の落下を検知してもよい。
カウンタ55は、スライドドア13が移動することで電動モータ21が回転されると、(又はパルス信号が出現すると)、回転角センサ48から供給されるパルス信号のパルス数をカウントする。例えば、カウンタ55は、スライドドア13が所定の位置(例えば、全閉位置)となったときを基準として、パルス信号を取得する毎にカウント値Nをインクリメントする。したがって、制御装置51は、カウント値Nに基づいてスライドドア13の位置を検出する。
制御部54は、第1判定部541及び第2判定部542を備える。
第1判定部541は、モード切替部52から手動開閉モード信号が供給されると、第1タイマ53が第1所定時間Tth1を計時するまでの間にスライドドア13が移動したか否かを判定する。スライドドア13が移動したか否かは、カウント値Nが変動したか否かで判定される。例えば、モード切替部52から手動開閉モード信号が供給されたときのカウント値をN1とした場合、第1判定部541は、第1タイマ53が第1所定時間Tth1の計時を開始してから終了するまでの間にカウント値Nがカウント値N1+ΔNを超えた場合、又はカウント値Nがカウンタ値N1−ΔNを下回った場合に、スライドドア13が移動したと判定する。例えば、ΔNは、1でもよいし2以上の整数でもよい。第1判定部541は、手動開閉モード時において、スライドドア13が移動したと判定した場合に、スライドドア13が落下していることを示す落下信号を駆動制御部56に出力する。
第2判定部542は、カウント値Nが閾値Nth(第1閾値)を超えた場合に、スライドドア13が全開ラッチ位置に到達したと判定する。閾値Nthは、スライドドア13が全開ラッチ位置に到達したときのカウント値Nの値である。第2判定部542は、スライドドア13が全開ラッチ位置に到達したと判定した場合に、駆動制御部56にスライドドア13が全開ラッチ位置に到達したことを示す全開ラッチ位置信号を駆動制御部56に供給する。また、第2判定部542は、ラッチセンサ91によりドアクローザ装置90が不図示のストライカと係合したことを検知した場合に、スライドドア13が全閉ラッチ位置に到達したと判定する。第2判定部542は、スライドドア13が全閉ラッチ位置に到達したと判定した場合に、駆動制御部56にスライドドア13が全閉ラッチ位置に到達したことを示す全閉ラッチ位置信号を駆動制御部56に供給する。
駆動制御部56は、第1判定部541から落下信号が供給されると、電動モータ21の各相のうち1相のみに通電する通電パターンに対応する上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とを第1の状態に制御する第1制御と、その上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とを第2の状態に制御する第2制御とを交互に繰り返す制御信号をインバータ回路42に出力する。図6は、本実施形態における制御信号について説明する図である。図6に示すように、本実施形態では、駆動制御部56は、U相、V相及びW相のうち、U相を1相通電する通電パターンに対応する上段(上アーム)のスイッチング素子42aと、下段のスイッチング素子42eとを第1の状態及び第2の状態に制御する場合について、説明する。
図6に示すように、第1の状態とは、第1期間t1の間のスイッチング素子42aと、スイッチング素子42eとの状態を示すものであって、本実施形態では、スイッチング素子42aがオン状態であり、スイッチング素子42eが第1のDUTY比でオン状態とオフ状態とを交互に繰り返す状態である。この第1の状態では、第1期間t1の間において、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとが共にオン状態である場合に、電動モータ21に制動力が発生するため、スライドドア13の速度が減少し、スライドドア13の落下速度を抑制する。第2の状態とは、第2期間t2の間のスイッチング素子42aと、スイッチング素子42eとの状態を示すものであって、スイッチング素子42eが第2のDUTY比でオン状態とオフ状態とを交互に繰り返す状態である。本実施形態では、第2の状態は、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとがオフ状態である。すなわち、第2のDUTY比は0(ゼロ)である。この第2の状態では、第2期間t2の間において、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとが共にオン状態となる場合が存在しないため、電動モータ21に制動力が発生しない。そのため、スライドドア13の速度が抑制されず、スライドドア13の自重によりスライドドア13の落下速度が速くなる。このように、駆動制御部56は、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとを第1の状態に制御することで制動力を電動モータ21に発生させる第1制御と、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとを第2の状態にすることで所定の制動力を電動モータ21に発生させない第2制御とを周期t(第1期間t1+第2期間t2)で行うことで、落下しているスライドドア13を振動させ、異常が発生していることをユーザに報知することができる。なお、第1期間t1は、第2期間t2よりも長く設定されている。すなわち、第1制御と第2制御のうち、電動モータ21に対して制御力が大きい方(すなわち、第1制御)の制御の期間がより長くなるように設定されている。これにより、駆動制御部56は、スライドドア13の落下速度をより抑制すると同時に、落下しているスライドドア13をより大きく振動させることができる。
駆動制御部56は、電動モータ21に対して断続通電を開始すると、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時を開始させる。このように、第2タイマ57は、駆動制御部56により電動モータ21の断続通電が開始されると、第2所定時間Tth2の計時を開始する。駆動制御部56は、第2タイマ57が第2所定時間Tth2の計時を開始してから終了するまでの間に、中断条件が成立した場合には電動モータ21の断続通電を終了する。中断条件とは、スライドドア13の手動開閉を停止させる条件であり、例えば、切替スイッチ46により手動開閉モードから自動開閉モードに切り替えられた場合や、ハンドル45の操作入力時、スライドドア13の落下の停止、故障発生などである。
また、駆動制御部56は、第2タイマ57が第2所定時間Tth2の計時を開始してから終了するまでの間に、スライドドア13がラッチ位置に到達した場合には電動モータ21の断続通電を終了する。すなわち、駆動制御部56は、第2タイマ57が第2所定時間Tth2の計時を開始してから終了するまでの間に、全開ラッチ位置信号または全閉ラッチ位置信号が供給された場合には、電動モータ21の断続通電を終了する。
駆動制御部56は、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時が終了した場合には、電動モータ21の断続通電を終了する。
以下に、本実施形態における制御装置51の手動開閉モードの動作について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における制御装置51の手動開閉モードにおける動作の処理フローを説明する図である。
第1判定部541は、スライドドア13が全開ラッチ位置および全閉ラッチ位置以外の状態で、電動モータ21の通電がオフされた場合、例えば自動開閉モードから手動開閉モードに移行した場合などには、電動モータ21の通電がオフされてから第1所定時間Tth1が経過したか否かを判定する(ステップS101)。例えば、第1判定部541は、第1タイマ53による第1所定時間Tth1の計時が終了したか否かを判定する。第1判定部541は、第1タイマ53による第1所定時間Tth1の計時が終了していない場合に、カウント値Nが変動したか否かを判定することでスライドドア13が落下したか否かを判定する(ステップS102)。第1判定部541は、第1タイマ53による第1所定時間Tth1の計時が終了していない場合に、カウント値Nが変動した場合には、スライドドア13が落下したと判定し、落下信号を駆動制御部56に出力する。第1判定部541は、第1タイマ53による第1所定時間Tth1の計時が終了していない場合に、カウント値Nが変動していない場合には、スライドドア13が落下していないと判定し、ステップS101の処理を実行する。
駆動制御部56は、第1判定部541から落下信号が供給されると、電動モータ21の各相のうち1相のみに通電する通電パターンに対応する上段のスイッチング素子42aと下段のスイッチング素子42eとを第1の状態に制御する第1制御と、上段のスイッチング素子42aと下段のスイッチング素子42eとを第2の状態に制御する第2制御とを交互に繰り返す制御信号をインバータ回路42に出力する。これにより、駆動制御部56は、電動モータ21の断続通電を開始する(ステップS103)。
駆動制御部56は、電動モータ21の断続通電を開始すると第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時を開始する。そして、駆動制御部56は、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時中に、中断条件が成立したか否かを判定する(ステップS104)。駆動制御部56は、中断条件が成立した場合には、電動モータ21の断続通電を停止する(ステップS107)。
駆動制御部56は、中断条件が成立していない場合には、スライドドア13がラッチ位置に到達したか否かを判定する(ステップS105)。駆動制御部56は、スライドドア13がラッチ位置に到達した場合には、電動モータ21の断続通電を停止する(ステップS107)。駆動制御部56は、スライドドア13がラッチ位置に到達していない場合には、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時が終了したか否かを判定する(ステップS106)。駆動制御部56は、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時が終了した場合には、電動モータ21の断続通電を停止する(ステップS107)。駆動制御部56は、第2タイマ57による第2所定時間Tth2の計時が終了していない場合には、ステップS104の処理を実行する(ステップS104)。
上述したように、本実施形態における開閉体制御装置41は、電動モータ21に対して通電を行っていない間にスライドドア13の移動を検出した場合には、電動モータ21の各相のうち1相のみに通電する通電パターンに対応する上段のスイッチング素子42aと下段のスイッチング素子42eとを第1の状態に制御する第1制御と、上段のスイッチング素子42aと下段のスイッチング素子42eとを第2の状態に制御する第2制御と、を交互に繰り返す。これにより、開閉体制御装置41は、電動モータ21に所定の制動力を発生させ、スライドドア13の速度が減少させることで、スライドドア13の不意な急速移動を抑制することができる。また、開閉体制御装置41は、落下しているスライドドア13を振動させ、異常が発生していることをユーザに報知することができる。
本実施形態において、制御装置51は、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとに対して、第1のDUTY比で通電させる第1制御と、無通電の状態にする第2制御とを交互に繰り返すことでスライドドア13の不意な急速移動を抑制するが、これに限定されない。例えば、制御装置51は、第2制御を、第1のDUTY比よりも小さい第2のDUTY比(ただし、0<第2のDUTY比<第1のDUTY比)で通電させる制御としてスライドドア13の不意な急速移動を抑制してもよい。以下に、制御装置51の変形例として、第1のDUTY比よりも小さい第2のDUTY比で通電させる第2制御について説明する。
図8は、本実施形態の変形例における制御装置51Aの手動開閉モードの概略構成を示す図である。制御装置51Aは、本実施形態の開閉体制御装置41が制御装置51に替えて備え得る構成の一例であり、モード切替部52、第1タイマ53、制御部54、カウンタ55、駆動制御部56A及び第2タイマ57を備える。
駆動制御部56Aは、第1判定部541から落下信号が供給されると、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとを第1のDUTY比で通電することで第1の状態に制御する第1制御と、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとを第1のDUTY比よりも小さい第2のDUTY比で通電することで第2の状態に制御する第2制御とを交互に繰り返す制御信号をインバータ回路42に出力する。図9は、本実施形態の変形例における制御信号について説明する図である。
図9に示すように、本実施形態の変形例における第1の状態とは、第1期間t1の間のスイッチング素子42aと、スイッチング素子42eとの状態を示すものであって、本実施形態では、スイッチング素子42aがオン状態であり、スイッチング素子42eが第1のDUTY比でオン状態とオフ状態とを交互に繰り返す状態である。この第1の状態では、第1期間t1の間において、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとが共にオン状態である場合に、電動モータ21に制動力が発生するため、スライドドア13の速度が減少し、スライドドア13の落下速度を抑制する。本実施形態の変形例における第2の状態とは、第2期間t2の間のスイッチング素子42aと、スイッチング素子42eとの状態を示すものであって、スイッチング素子42eが第1のDUTY比よりも小さい第2のDUTY比でオン状態とオフ状態とを交互に繰り返す状態である。この第2の状態では、時間t2の間において、スイッチング素子42aとスイッチング素子42eとが共にオン状態である場合に、電動モータ21に制動力が発生するため、スライドドア13の速度が減少し、スライドドア13の落下速度を抑制する。これにより、本実施形態の変形例における制御装置51Aは、スライドドア13の速度を減少させ、スライドドア13の落下速度を抑制することができる。なお、スイッチング素子42aは、第1期間t1及び時間t2の間、常にオン状態である。ここで、第2のDUTY比は、第1のDUTY比よりも値が小さいため、第2制御における電動モータ21の制動力は、第1制御における電動モータ21の制御力に比べて小さい。そのため、第2制御は、第1制御に比べてスライドドア13の速度が抑制されず、スライドドア13の自重によりスライドドア13の落下速度が第1制御よりも速くなる。これにより、本実施形態の変形例における制御装置51Aは、落下しているスライドドア13を振動させ、異常が発生していることをユーザに報知することができる。すなわち、本実施形態の変形例における制御装置51Aは、スライドドア13の移動を検出した場合には、スライドドア13を停止させることなく、電動モータ21に対して制動力の強弱をつけることで、落下しているスライドドア13を振動させ、異常が発生していることをユーザに報知することができる。
また、上述した実施形態では、第2制御における電動モータ21の制動力は、第1制御における電動モータ21の制御力に比べて小さい場合について、説明したが、これに限定されない。例えば、第2制御における電動モータ21の制動力は、第1制御における電動モータ21の制御力に比べて大きくてもよい。
また、上述した実施形態と、その実施形態の変形例とは、適宜組み合わせたり、変形して利用することも可能である。
上述した実施形態における制御装置51をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。