以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
[実施の形態1]
(撮影用光学装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる撮影用光学装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図2に示す駆動用コイル23の平面図である。図4は、図2に示す駆動用磁石21が発生する磁力線を説明するための図である。図5は、図2に示す駆動用コイル23に電流が供給されることで生じる電磁力の方向を説明するための図である。
なお、以下の説明では、図1に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、図1のX1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
本形態の撮影用光学装置1は、携帯電話等の携帯機器に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、全体として略直方体状に形成されている。この撮影用光学装置1は、図1、図2に示すように、図示を省略するレンズおよび撮像素子を搭載したレンズ駆動装置2と、レンズ駆動装置2の傾きの変化を検出するためのセンサ4と、レンズ駆動装置2を支持する支持体5と、レンズ駆動装置2を揺動させる揺動駆動機構6とを備えている。なお、本形態では、上下方向は、レンズ駆動装置2が揺動していないときの撮影用光学装置1の光軸Lの方向(光軸方向)と一致するが、レンズ駆動装置2の最大揺動角度はわずか(たとえば、2°程度)であるため、レンズ駆動装置2が揺動している場合であっても、上下方向と光軸方向とはほぼ一致する。
レンズ駆動装置2には、上述のように、レンズおよび撮像素子が搭載されている。具体的には、レンズ駆動装置2の上端側にレンズが搭載され、レンズ駆動装置2の下端に撮像素子が搭載されている。また、レンズ駆動装置2には、レンズを光軸方向に駆動するためのレンズ駆動機構が搭載されている。このレンズ駆動機構は、たとえば、駆動用のコイルと駆動用の磁石とによって構成されている。
レンズ駆動装置2は、全体として略直方体状に形成されている。このレンズ駆動装置2の前後および左右の側面は、下端が開口する底付きの略四角筒状に形成されたカバー部材9に覆われている。カバー部材9は、磁性材料で形成されている。また、カバー部材9は、金属材料で形成されている。上端側に配置されるカバー部材9の底部には、円形の貫通孔9aが形成されている。また、カバー部材9の下端には、前後方向の外側および左右方向の外側に向かって広がる鍔部9bが形成されている。カバー部材9の前後および左右の側面は、光軸方向と略平行に形成されており、この側面のそれぞれには、揺動駆動機構6を構成する後述の駆動用磁石21が固定されている。
センサ4は、レンズ駆動装置2の傾きの変化を検出するためのジャイロスコープである。すなわち、センサ4は、レンズ駆動装置2の角速度を検出するための角速度センサである。このセンサ4は、レンズ駆動装置2の下側に配置されている。具体的には、センサ4の略中心を光軸Lが通過するように、センサ4がレンズ駆動装置2の下側に配置されている。センサ4には、フレキシブルプリント基板(FPC)10が接続されている。このFPC10は、レンズ駆動装置2に搭載されている撮像素子にも接続されている。FPC10は、撮影用光学装置1の下端側で引き回されて、たとえば、撮影用光学装置1の左側面から引き出されている。
また、センサ4は、上端が開口する底付きで扁平な略四角筒状に形成されたセンサカバー部材11の内部に配置されている。下端側に配置されるセンサカバー部材11の底部の中心には、後述の支点突起15bが当接する当接面11aが平面状に形成されている。また、センサカバー部材11の上端には、カバー部材9の鍔部9bに下側から当接する鍔部11bが前後方向の外側および左右方向の外側に向かって広がるように形成されている。本形態では、鍔部9bと鍔部11bとが互いに固定されている。すなわち、センサカバー部材11は、カバー部材9の下端に固定されている。
本形態では、レンズ駆動装置2とセンサ4とカバー部材9とセンサカバー部材11とが、支持体5に揺動可能に支持されている。すなわち、本形態では、レンズ駆動装置2、センサ4、カバー部材9およびセンサカバー部材11によって、支持体5に対して揺動可能な可動モジュール12が構成されている。
支持体5は、撮影用光学装置1の下面を構成するベース体15と、撮影用光学装置1の前後および左右の外周面を構成するケース体16とを備えている。ケース体16には、可動モジュール12の揺動範囲を規制するためのストッパ部材18が固定されている。また、ストッパ部材18には、可動モジュール12を揺動可能に支持する板バネ17が固定されている。
ベース体15は、略矩形状に形成されている。このベース体15の略中心には、上側に向かって突出する突出部15aが形成されている。また、突出部15aの上面には、可動モジュール12の揺動の支点となる支点突起15bが形成されている。すなわち、本形態では、可動モジュール12の下側に可動モジュール12の揺動の支点が配置されている。この支点突起15bは、たとえば、半球面状に形成されており、センサカバー部材11の当接面11aに当接している。本形態では、支点突起15bと当接面11aとによって、レンズ駆動装置2の揺動中心となる支点部19が構成されている。この支点部19は、レンズ駆動装置2の光軸Lが通過する位置に配置されている。なお、レンズ駆動装置2の光軸Lは、可動モジュール12の中心に配置されている。
ケース体16は、上端および下端が開口する略四角筒状に形成されている。ケース体16の前後および左右の側面は、光軸方向と略平行に形成されている。また、ケース体16の下端側には、ベース体15が固定されている。また、ケース体16の前後の側面および左右の側面の略中心には、揺動駆動機構6を構成する後述の駆動用コイル23の引出線を配置するための開口部16aがそれぞれの側面を貫通するように形成されている。この開口部16aは、略矩形状に形成されている。なお、本形態のケース体16は、非磁性材料で形成されている。また、ケース体16は、金属材料で形成されている。
板バネ17は、全体として略矩形状に形成されている。板バネ17の4隅はストッパ部材18に固定され、板バネ17の中心部には可動モジュール12が固定されている。すなわち、板バネ17は、ストッパ部材18に固定される固定部と、可動モジュール12を保持する保持部と、固定部と保持部とを繋ぐバネ部とを備えている。本形態では、板バネ17の中心部にセンサカバー部材11が固定されており、板バネ17は、可動モジュール12の下端側を保持している。
なお、板バネ17は、センサカバー部材11の当接面11aとベース体15の支点突起15bとを確実に当接させるための与圧が発生するように(すなわち、可動モジュール12を下方向へ付勢する付勢力が発生するように)、撓んだ状態でストッパ部材18に固定されている。また、本形態の板バネ17は、ストッパ部材18を介してケース体16に固定されている。すなわち、ケース体16の内周面に固定されたストッパ部材18に板バネ17の4隅が固定されている。
ストッパ部材18は、ケース体16の内周面に固定されている。具体的には、カバー部材9の鍔部9bの上面に当接可能な位置とセンサカバー部材11の鍔部11bの下面に当接可能な位置とのそれぞれで、2個のストッパ部材18がケース体16の内周面に固定されており、ストッパ部材18と鍔部9b、11bとによって、可動モジュール12の揺動範囲が規制されている。
揺動駆動機構6は、駆動用磁石21と、駆動用磁石21に対向配置される駆動用コイル23とを備えている。本形態の揺動駆動機構6は、4個の駆動用磁石21と4個の駆動用コイル23とを備えている。
駆動用磁石21は、略矩形の板状に形成されている。また、駆動用磁石21は、第1磁石片21aと第2磁石片21bとの2個の磁石片によって構成されている。具体的には、第1磁石片21aの下面と第2磁石片21bの上面とが当接した状態で、第1磁石片21aと第2磁石片21bとが接着固定されて駆動用磁石21が形成されている。第1磁石片21aと第2磁石片21bとは、その高さ、幅および厚さが同じになるように形成されている。
駆動用磁石21は、カバー部材9の前後の側面および左右の側面のそれぞれに1個ずつ固定されている。すなわち、駆動用磁石21は、カバー部材9の外周面に固定されており、ケース体16の内部に配置されている。また、駆動用磁石21は、レンズ駆動装置2とともに揺動する。上述のように、カバー部材9は、磁性材料で形成されており、カバー部材9は、駆動用磁石21のバックヨークの機能を果たしている。本形態のカバー部材9は、駆動用磁石21を保持する磁石保持部材である。
本形態では、カバー部材9の左右の側面に固定される駆動用磁石21は、駆動用磁石21の右面に形成される磁極と左面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。また、カバー部材9の左右の側面に固定される駆動用磁石21は、左右方向における第1磁石片21aの外側面に形成される磁極と第2磁石片21bの外側面に形成される磁極とが異なるように(すなわち、左右方向における第1磁石片21aの内側面に形成される磁極と第2磁石片21bの内側面に形成される磁極とが異なるように)着磁されている。
同様に、カバー部材9の前後の側面に固定される駆動用磁石21は、駆動用磁石21の前面に形成される磁極と後面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。また、カバー部材9の前後の側面に固定される駆動用磁石21は、前後方向における第1磁石片21aの外側面に形成される磁極と第2磁石片21bの外側面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。
たとえば、カバー部材9の右側面に固定される駆動用磁石21の第1磁石片21aの右側面はS極、左側面はN極に着磁され、この駆動用磁石21の第2磁石片21bの右側面はN極、左側面はS極に着磁されている。同様に、カバー部材9の左側面に固定される駆動用磁石21の第1磁石片21aの左側面はS極、右側面はN極に着磁され、この駆動用磁石21の第2磁石片21bの左側面はN極、右側面はS極に着磁されている。
また、たとえば、カバー部材9の後側面に固定される駆動用磁石21の第1磁石片21aの後側面はN極、前側面はS極に着磁され、この駆動用磁石21の第2磁石片21bの後側面はS極、前側面はN極に着磁されている。同様に、カバー部材9の前側面に固定される駆動用磁石21の第1磁石片21aの前側面はN極、後側面はS極に着磁され、この駆動用磁石21の第2磁石片21bの前側面はS極、後側面はN極に着磁されている。
駆動用コイル23は、導線の周りを被覆する絶縁被膜と、絶縁被膜の周りをさらに被覆する融着被膜とを備える融着線が空芯状に巻回された(すなわち、ボビン等の巻芯を備えていない)空芯コイルである。本形態の駆動用コイル23は、融着線が略矩形状に巻回されて形成されている。具体的には、駆動用コイル23は、融着線が略長方形状に巻回されて形成されている。すなわち、駆動用コイル23は、図3に示すように、互いに平行な2個の長辺部23a、23bと、長辺部23a、23bよりも短く形成されるとともに互いに平行な2個の短辺部23c、23dとから構成されている。また、駆動用コイル23は、その厚さが略一定な扁平コイルである。
駆動用コイル23は、絶縁性のフィルムを介してケース体16の前後の側面および左右の側面のそれぞれに1個ずつ固定されている。すなわち、駆動用コイル23は、ケース体16の内周面にフィルムを介して固定されている。また、駆動用コイル23は、短辺部23c、23dの長手方向と上下方向とが一致するようにケース体16に固定されている。すなわち、長辺部23a、23bの長手方向が左右方向または前後方向と一致するように駆動用コイル23がケース体16に固定されている。本形態では、上側に配置される長辺部23aは第1辺部となっており、下側に配置される長辺部23bが第2辺部となっている。
図2に示すように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とは、左右方向または前後方向に所定の隙間をあけた状態で対向配置されている。具体的には、駆動用磁石21と駆動用コイル23とは、支点部19よりも上側で対向配置されるとともに、支点部19を支点として可動モジュール12が揺動しても、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが接触しないように、所定の隙間をあけた状態で対向配置されている。なお、本形態では、駆動用コイル23に電流が供給されていないときには、図2に示すように、可動モジュール12は、支持体5に対して傾いていない中立位置にある。
上述のように、駆動用磁石21は、左右方向(または前後方向)における第1磁石片21aの外側面に形成される磁極と第2磁石片21bの外側面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。すなわち、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面には、光軸方向で重なる2極の磁極(N極とS極)が形成されている。そのため、駆動用磁石21が発生する磁力線は、たとえば、図4に示す矢印のようになる。
したがって、たとえば、光軸方向における第1磁石片21aの中心CL1よりも上側では、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、磁力線の方向が支点部19(レンズ駆動装置2の揺動中心)から略遠ざかる方向となる領域30(以下、この領域30を「第1の領域30」とする。)が形成されている。すなわち、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極(N極)の磁気中心となる中心CL1よりも上側では、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、第1の領域30が形成されている。
また、光軸方向における第2磁石片21bの中心CL2よりも上側では、第2磁石片21bの、駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、磁力線の方向が支点部19(レンズ駆動装置2の揺動中心)へ略向かう方向となる領域31(以下、この領域31を「第2の領域31」とする。)が形成されている。すなわち、第2磁石片21bの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極(S極)の磁気中心となる中心CL2よりも上側では、第2磁石片21bの、駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、第2の領域31が形成されている。
本形態では、図2、図4に示すように、光軸方向における駆動用コイル23の中心CL3が第1磁石片21aと第2磁石片21bとの当接面27よりも上側に配置されるように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが対向配置されている。すなわち、駆動用コイル23の中心CL3は、駆動用磁石21の磁気中心となる当接面27よりも光軸方向において支点部19(レンズ駆動装置2の揺動中心)から離れた位置に配置されている。
具体的には、図4に示すように、光軸方向における長辺部23aの中心CL4が第1磁石片21aの中心CL1よりも上側に配置され、かつ、光軸方向における長辺部23bの中心CL5が当接面27よりも下側に配置されるとともに第2磁石片21bの中心CL2よりも上側に配置されている。すなわち、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL1よりも長辺部23aの中心CL4が上側に配置され、かつ、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面に形成される2個の磁極の境界となる当接面27よりも長辺部23bの中心CL5が下側に配置されるとともに、第2磁石片21bの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL2よりも長辺部23bの中心CL5が上側に配置されている。
換言すると、本形態では、第1の領域30に長辺部23aが配置され、第2の領域31に長辺部23bが配置されるように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが配置されている。
そのため、図5に示すように、駆動用コイル23に電流が供給されることで長辺部23aに生じる電磁力F1の方向は、支点部19を中心とするとともに長辺部23aを通過する円の接線方向と略一致している。また、駆動用コイル23に電流が供給されることで長辺部23bに生じる電磁力F2の方向は、支点部19を中心とするとともに長辺部23bを通過する円の接線方向と略一致している。すなわち、駆動用コイル23に電流が供給されることで駆動用コイル23に生じる電磁力F1、F2の方向は、支点部19を中心として可動モジュール12を揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致している。
以上のように構成された撮影用光学装置1では、センサ4でレンズ駆動装置2の傾きの変化が検出されると(すなわち、レンズ駆動装置2の振れ(振動)が検出されると)、センサ4での検出結果に基づいて、駆動用コイル23に電流が供給され、可動モジュール12が支点部19を中心に揺動して、振れが補正される。具体的には、撮影用光学装置1では、センサ4での検出結果に基づいて手振れが検出されると、駆動用コイル23に電流が供給され、可動モジュール12が支点部19を中心に揺動(回動)して、手振れが補正される。
なお、本形態では、当接面11aと支点突起15bとからなる支点部19と、揺動駆動機構6と、板バネ17とによって、センサ4での検出結果に基づいてレンズ駆動装置2を揺動させて振れを補正する振れ補正機構が構成されている。すなわち、本形態では、支点部19と、揺動駆動機構6と、板バネ17とによって、センサ4での検出結果に基づいて、支点部19を支点にしてレンズ駆動装置2を揺動させて手振れを補正する手振れ補正機構が構成されている。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、駆動用磁石21と駆動用コイル23とは、レンズ駆動装置2の揺動中心となる支点部19よりも上側で対向配置されるとともに、駆動用磁石21の当接面27よりも駆動用コイル23の中心CL3が光軸方向において支点部19から離れた位置に配置されるように対向配置されている。具体的には、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL1よりも長辺部23aの中心CL4が上側に配置され、かつ、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面に形成される2個の磁極の境界となる当接面27よりも長辺部23bの中心CL5が下側に配置されるとともに、第2磁石片21bの、駆動用コイル23との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL2よりも長辺部23bの中心CL5が上側に配置されるように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが配置されている。
すなわち、本形態では、駆動用磁石21が発生する磁力線の方向が支点部19(レンズ駆動装置2の揺動中心)から略遠ざかる方向となる第1の領域30、および、磁力線の方向が支点部19(レンズ駆動装置2の揺動中心)へ略向かう方向となる第2の領域31に駆動用コイル23が配置されている。より具体的には、第1の領域30に長辺部23aが配置され、第2の領域31に長辺部23bが配置されている。
そのため、上述のように、駆動用コイル23に電流が供給されることで生じる電磁力F1、F2の方向は、支点部19を中心として可動モジュール12を揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致する。したがって、本形態では、駆動用磁石21が発生させる磁束を有効に利用して、揺動駆動機構6の駆動力を高めることができる。その結果、本形態では、撮影用光学装置1が小型化、薄型化する場合であっても、レンズ駆動装置2を揺動させるための十分な駆動力を得ることが可能になる。
特に本形態では、第1の領域30に長辺部23aが配置され、第2の領域31に長辺部23bが配置されているため、支点部19を中心とする可動モジュール12の揺動力を発生させる方向と略一致する方向の電磁力F1、F2を長辺部23a、23bの両者で発生させることができる。したがって、本形態では、揺動駆動機構6の駆動力を効率的に高めることができる。
また、本形態では、駆動用磁石21の当接面27よりも駆動用コイル23の中心CL3が光軸方向において支点部19から離れた位置に配置されているため、駆動用磁石21の当接面27と駆動用コイル23の中心CL3とが光軸方向において支点部19から等しい位置に配置される場合と比較して、支点部19から駆動用コイル23までの距離を長くすることができる。支点部19を中心として可動モジュール12を揺動させるためのトルクは、支点部19から駆動用コイル23までの距離に比例して大きくなるため、本形態では、このトルクを大きくすることができる。すなわち、揺動駆動機構6の駆動力を高めることができる。
さらに、本形態では、第1の領域30に長辺部23aが配置され、第2の領域31に長辺部23bが配置されているため、短辺部23c、23dが第1の領域30や第2の領域31に配置される場合と比較して、揺動駆動機構6の駆動力をより高めることができる。また、駆動用コイル23が略正方形状に巻回されて形成されている場合と比較して、本形態では、揺動駆動機構6の駆動力を高めつつ、長辺部23a、23bが対向する上下方向で撮影用光学装置1を小型化することが可能になる。さらに、揺動駆動機構6の駆動力にほとんど寄与しない短辺部23c、23dが短くなるため、駆動用コイル23の抵抗値を下げることが可能になり、駆動用コイル23での消費電力の低減することが可能になる。
なお、たとえば、駆動用磁石21の当接面27と駆動用コイル23の中心CL3とが光軸方向において一致するように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが配置され、図6に示すように、駆動用磁石21が発生する磁力線の方向が略左右方向(または略前後方向)となる領域に駆動用コイル23が配置されると、電流が供給された駆動用コイル23には、たとえば、上向きの電磁力F1、F2が発生する。すなわち、この場合には、支点部19を中心として可動モジュール12を揺動させるための揺動力を発生させる方向と電磁力F1、F2の方向とが一致しない。したがって、この場合には、駆動用磁石21が発生させる磁束を有効に利用することはできない。
(揺動駆動機構の駆動力について)
図7は、図2に示す揺動駆動機構6の駆動力を比較するシミュレーションの条件を説明するための図である。図8は、図2に示す揺動駆動機構6の駆動力を比較するシミュレーションの結果を示すグラフである。
以下、光軸方向における長辺部23aおよび長辺部23bと駆動用磁石21の当接面27との距離と、揺動駆動機構6の駆動力との関係をシミュレーション結果に基づいて説明する。
光軸方向における長辺部23aの中心CL4と当接面27との距離P1(図7参照)、および、光軸方向における長辺部23bの中心CL5と当接面27との距離P2(図7参照)を変えながら、揺動駆動機構6が発生させるトルクをシミュレーションした。なお、シミュレーションでは、図7に示す駆動用磁石21の高さH1を4.8mm、第1磁石片21aおよび第2磁石片21bの高さH2を2.4mm、長辺部23a、23bの高さH3を1.2mmとした。また、距離P1が2mm、距離P2が0.5mmであるときの支点部19と駆動用コイル23との距離Lは約7.6mmであった。
シミュレーションの結果を図8に示す。なお、図8の横軸では、中心CL4、CL5が当接面27よりも上側にある場合に距離P1、P2の値がプラスとなり、中心CL4、CL5が当接面27よりも下側にある場合に距離P1、P2の値がマイナスとなる。
図8に示すように、シミュレーションでは、距離P1が2mmで、距離P2が−0.5mmであるときに、揺動駆動機構6のトルクは最大となった。このトルクは、距離P1が1.2mmで、距離P2が−1.2mmであるときの揺動駆動機構6のトルクの約1.4倍になった。すなわち、距離P1が2mmで、距離P2が−0.5mmであるときの揺動駆動機構6のトルクは、駆動用コイル23の中心CL3と当接面27とが光軸方向で同じ位置に配置されている場合の揺動駆動機構6のトルクの約1.4倍となった。
なお、上述のシミュレーションでは、距離P1が2mmで、距離P2が−0.5mmであるときに、揺動駆動機構6のトルクは最大となったが、駆動用磁石21および駆動用コイル23等の寸法が変わると、最適な距離P1、P2も変わる。また、撮影用駆動装置1の外形寸法の制約等によって、揺動駆動機構6のトルクが最大となる最適な距離P1、P2を設定できない場合には、その制約内で設定可能な距離P1、P2を設定して、揺動駆動機構6のトルクが大きくなるようにしても良い。
[実施の形態2]
(撮影用光学装置の構成)
図9は、本発明の実施の形態2にかかる撮影用光学装置51の断面図である。図10は、図9に示す駆動用コイル73の平面図である。図11は、図9に示す駆動用コイル74の平面図である。図12は、図9に示す駆動用磁石71、72が発生する磁力線を説明するための図である。図13は、図9に示す駆動用コイル73、74に電流が供給されることで生じる電磁力の方向を説明するための図である。
なお、以下の説明では、実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化する。また、以下の説明では、実施の形態1と同様に、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
本形態の撮影用光学装置51は、実施の形態1の撮影用光学装置1と同様に、携帯電話等の携帯機器に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、全体として略直方体状に形成されている。この撮影用光学装置51は、図9に示すように、レンズ駆動装置2と、センサ4と、レンズ駆動装置2を支持する支持体55と、レンズ駆動装置2を揺動させる揺動駆動機構56とを備えている。なお、実施の形態1と同様に、本形態でも、上下方向は、レンズ駆動装置2が揺動していないときの撮影用光学装置51の光軸方向と一致する。
レンズ駆動装置2の前後および左右の側面は、上端および下端が開口する略四角筒状に形成されたカバー部材59に覆われている。カバー部材59は、磁性材料で形成されている。カバー部材59の前後および左右の側面は、光軸方向と略平行に形成されており、この側面のそれぞれには、揺動駆動機構56を構成する後述の駆動用磁石71、72が固定されている。カバー部材59の上端には、略矩形の板状に形成された上カバー部材58が取り付けられている。すなわち、カバー部材59の上端側は、上カバー部材58に覆われている。上カバー部材58の中心には、円形の貫通孔58aが形成されている。
センサ4は、レンズ駆動装置2の下側に配置されている。具体的には、光軸Lからセンサ4が外れるように、センサ4がレンズ駆動装置2の下側に配置されている。センサ4には、FPC60が接続されている。なお、レンズ駆動装置2の下面には、レンズ駆動装置2に搭載されている撮像素子等が電気的に接続されるコネクタ57がセンサ4に隣接するように配置されている。
また、センサ4の下面側は、略矩形の板状に形成された下カバー部材61に覆われている。下カバー部材61は、カバー部材59の下端に取り付けられており、カバー部材59の下端側を覆っている。
本形態では、レンズ駆動装置2とセンサ4とカバー部材59と上カバー部材58と下カバー部材61とが、支持体55に揺動可能に支持されている。すなわち、本形態では、レンズ駆動装置2、センサ4、カバー部材59、上カバー部材58および下カバー部材61によって、支持体55に対して揺動可能な可動モジュール62が構成されている。
支持体55は、撮影用光学装置51の前後および左右の外周面を構成するケース体66と、揺動駆動機構56を構成する後述の駆動用コイル73、74を保持するコイル保持部材64、65とを備えている。コイル保持部材64、65またはケース体66には、可動モジュール62を揺動可能に支持する板バネ67が固定されている。
ケース体66は、上端および下端が開口する略四角筒状に形成されている。ケース体66の前後および左右の側面は、光軸方向と略平行に形成されている。
コイル保持部材64、65は、たとえば、絶縁性の樹脂で形成されている。また、コイル保持部材64、65は、ケース体66の側面と略平行な4個の側面を有する略四角筒状に形成されている。このコイル保持部材64、65は、ケース体66の内周面に固定されている。具体的には、コイル保持部材64、65は、光軸方向で互いに重なるように、ケース体66の内周面に固定されている。また、コイル保持部材64が上側に配置され、コイル保持部材65が下側に配置されている。
コイル保持部材64の4個の側面のそれぞれには、後述の駆動用コイル73が配置される配置孔64aが形成されている。配置孔64aは、コイル保持部材64の側面を貫通するように形成されている。また、コイル保持部材65の4個の側面のそれぞれには、後述の駆動用コイル74が配置される配置孔65aが形成されている。配置孔65aは、コイル保持部材65の側面を貫通するように形成されている。
板バネ67は、全体として略矩形状に形成されている。板バネ67の外周側は、支持体55に固定され、板バネ67の中心部には可動モジュール62が固定されている。すなわち、板バネ67は、支持体55に固定される固定部と、可動モジュール62を保持する保持部と、固定部と保持部とを繋ぐバネ部とを備えている。
本形態では、板バネ67の中心部に、光軸方向におけるカバー部材59の略中心位置が固定されている。具体的には、光軸方向におけるカバー部材59の略中心位置に固定されたスペーサ68を介して、板バネ67の中心部に、光軸方向におけるカバー部材59の略中心位置が固定されており、板バネ67は、光軸方向における可動モジュール62の中間位置に配置されている。本形態では、板バネ67の略中心位置が可動モジュール62の揺動中心69となっている。この揺動中心69は、レンズ駆動装置2の光軸Lが通過する位置に配置されている。なお、レンズ駆動装置2の光軸Lは、可動モジュール62の中心に配置されている。
揺動駆動機構56は、光軸方向において、揺動中心69よりも上側に配置される駆動用磁石71と、光軸方向において、揺動中心69よりも上側に配置されるとともに駆動用磁石71に対向配置される駆動用コイル73と、光軸方向において、揺動中心69よりも下側に配置される駆動用磁石72と、光軸方向において、揺動中心69よりも下側に配置されるとともに駆動用磁石72に対向配置される駆動用コイル74とを備えている。本形態の揺動駆動機構56は、4個の駆動用磁石71と、4個の駆動用磁石72と、4個の駆動用コイル73と、4個の駆動用コイル74とを備えている。
駆動用磁石71は、厚さが一定の略矩形の板状に形成されている。また、駆動用磁石71は、第1磁石片71aと第2磁石片71bとの2個の磁石片によって構成されている。具体的には、第1磁石片71aの下面と第2磁石片71bの上面とが当接した状態で、第1磁石片71aと第2磁石片71bとが接着固定されて駆動用磁石71が形成されている。第1磁石片71aと第2磁石片71bとは、その高さ、幅および厚さが同じになるように形成されている。
駆動用磁石72は、駆動用磁石71と同様に形成されている。すなわち、駆動用磁石72は、厚さが一定の略矩形の板状に形成されている。また、駆動用磁石72は、第1磁石片72aと第2磁石片72bとの2個の磁石片によって構成されている。具体的には、第1磁石片72aの上面と第2磁石片72bの下面とが当接した状態で、第1磁石片72aと第2磁石片72bとが接着固定されて駆動用磁石72が形成されている。第1磁石片72aと第2磁石片72bとは、その高さ、幅および厚さが同じになるように形成されている。
駆動用磁石71、72は、カバー部材59の前後の側面および左右の側面のそれぞれに1個ずつ固定されている。具体的には、板バネ67よりも上側におけるカバー部材59の前後の側面および左右の側面のそれぞれに駆動用磁石71が1個ずつ固定され、板バネ67よりも下側におけるカバー部材59の前後の側面および左右の側面のそれぞれに駆動用磁石72が1個ずつ固定されている。すなわち、駆動用磁石71、72は、レンズ駆動装置2とともに揺動する。上述のように、カバー部材59は、磁性材料で形成されており、カバー部材59は、駆動用磁石71、72のバックヨークの機能を果たしている。本形態のカバー部材59は、駆動用磁石71、72を保持する磁石保持部材である。なお、駆動用磁石71、72は、略矩形の枠状に形成されたスペーサ68によって、光軸方向において位置決めされた状態で、カバー部材59の側面に固定されている。
本形態では、カバー部材59の左右の側面に固定される駆動用磁石71、72は、駆動用磁石71、72の右面に形成される磁極と左面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。また、カバー部材59の左右の側面に固定される駆動用磁石71、72は、左右方向における第1磁石片71a、72aの外側面に形成される磁極と第2磁石片71b、72bの外側面に形成される磁極とが異なるように(すなわち、左右方向における第1磁石片71a、72aの内側面に形成される磁極と第2磁石片71b、72bの内側面に形成される磁極とが異なるように)着磁されている。
同様に、カバー部材59の前後の側面に固定される駆動用磁石71、72は、駆動用磁石71、72の前面に形成される磁極と後面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。また、カバー部材59の前後の側面に固定される駆動用磁石71、72は、前後方向における第1磁石片71a、72aの外側面に形成される磁極と第2磁石片71b、72bの外側面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。
たとえば、カバー部材59の右側面に固定される駆動用磁石71の第1磁石片71aの右側面はS極、左側面はN極に着磁され、この駆動用磁石71の第2磁石片71bの右側面はN極、左側面はS極に着磁されている。同様に、カバー部材59の左側面に固定される駆動用磁石71の第1磁石片71aの左側面はS極、右側面はN極に着磁され、この駆動用磁石71の第2磁石片71bの左側面はN極、右側面はS極に着磁されている。
また、たとえば、カバー部材59の後側面に固定される駆動用磁石71の第1磁石片71aの後側面はN極、前側面はS極に着磁され、この駆動用磁石71の第2磁石片71bの後側面はS極、前側面はN極に着磁されている。同様に、カバー部材59の前側面に固定される駆動用磁石71の第1磁石片71aの前側面はN極、後側面はS極に着磁され、この駆動用磁石71の第2磁石片71bの前側面はS極、後側面はN極に着磁されている。
また、たとえば、カバー部材59の右側面に固定される駆動用磁石72の第1磁石片72aの右側面はS極、左側面はN極に着磁され、この駆動用磁石72の第2磁石片72bの右側面はN極、左側面はS極に着磁されている。同様に、カバー部材59の左側面に固定される駆動用磁石72の第1磁石片72aの左側面はS極、右側面はN極に着磁され、この駆動用磁石72の第2磁石片72bの左側面はN極、右側面はS極に着磁されている。
また、たとえば、カバー部材59の後側面に固定される駆動用磁石72の第1磁石片72aの後側面はN極、前側面はS極に着磁され、この駆動用磁石72の第2磁石片72bの後側面はS極、前側面はN極に着磁されている。同様に、カバー部材59の前側面に固定される駆動用磁石72の第1磁石片72aの前側面はN極、後側面はS極に着磁され、この駆動用磁石72の第2磁石片72bの前側面はS極、後側面はN極に着磁されている。
駆動用コイル73、74は、駆動用コイル23と同様の空芯コイルである。すなわち、駆動用コイル73、74は、その厚さが略一定な扁平コイルである。また、駆動用コイル73、74は、略長方形状に巻回されて形成されている。すなわち、駆動用コイル73は、図10に示すように、互いに平行な2個の長辺部73a、73bと、長辺部73a、73bよりも短く形成されるとともに互いに平行な2個の短辺部73c、73dとから構成されている。また、駆動用コイル74は、図11に示すように、互いに平行な2個の長辺部74a、74bと、長辺部74a、74bよりも短く形成されるとともに互いに平行な2個の短辺部74c、74dとから構成されている。
駆動用コイル73は、コイル保持部材64の前後の側面および左右の側面のそれぞれに1個ずつ固定されている。また、駆動用コイル74は、コイル保持部材65の前後の側面および左右の側面のそれぞれに1個ずつ固定されている。また、駆動用コイル73は、短辺部73c、73dの長手方向と上下方向とが一致するようにコイル保持部材64に固定され、駆動用コイル74は、短辺部74c、74dの長手方向と上下方向とが一致するようにコイル保持部材65に固定されている。すなわち、長辺部73a、73bの長手方向が左右方向または前後方向と一致するように駆動用コイル73がコイル保持部材64に固定され、長辺部74a、74bの長手方向が左右方向または前後方向と一致するように駆動用コイル74がコイル保持部材65に固定されている。
本形態の駆動用コイル73では、上側に配置される長辺部73aが第1辺部となっており、下側に配置される長辺部73bが第2辺部となっている。また、本形態の駆動用コイル74では、下側に配置される長辺部74aが第1辺部となっており、上側に配置される長辺部74bが第2辺部となっている。
図9に示すように、駆動用磁石71と駆動用コイル73とは、前後方向または左右方向で所定の隙間をあけた状態で対向配置されている。具体的には、駆動用磁石71と駆動用コイル73とは、揺動中心69よりも上側で対向配置されるとともに、揺動中心69を中心にして可動モジュール62が揺動しても、駆動用磁石71と駆動用コイル73とが接触しないように所定の隙間をあけた状態で対向配置されている。また、駆動用磁石72と駆動用コイル74とは、揺動中心69よりも下側で対向配置されるとともに、揺動中心69を中心にして可動モジュール62が揺動しても、駆動用磁石72と駆動用コイル74とが接触しないように所定の隙間をあけた状態で対向配置されている。
本形態では、駆動用コイル73、74に電流が供給されていないときには、図9に示すように、可動モジュール62は、支持体55に対して傾いていない中立位置にある(すなわち、レンズ駆動装置2は、支持体55に対して傾いていない中立位置にある)。
なお、本形態では、図9に示すように、可動モジュール62が中立位置にあるときに、コイル保持部材64の左右の側面に固定される駆動用コイル73の左右方向の内側面は、上方向に向かうにしたがって左右方向の外側へ緩やかに広がるように傾斜している。同様に、可動モジュール62が中立位置にあるときに、コイル保持部材64の前後の側面に固定される駆動用コイル73の前後方向の内側面は、上方向に向かうにしたがって前後方向の外側へ緩やかに広がるように傾斜している。
また、図9に示すように、可動モジュール62が中立位置にあるときに、コイル保持部材65の左右の側面に固定される駆動用コイル74の左右方向の内側面は、下方向に向かうにしたがって左右方向の外側へ緩やかに広がるように傾斜している。同様に、可動モジュール62が中立位置にあるときに、コイル保持部材65の前後の側面に固定される駆動用コイル74の前後方向の内側面は、下方向に向かうにしたがって前後方向の外側へ緩やかに広がるように傾斜している。
上述のように、駆動用磁石71、72は、左右方向(または前後方向)における第1磁石片71a、72aの外側面に形成される磁極と第2磁石片71b、72bの外側面に形成される磁極とが異なるように着磁されている。すなわち、駆動用磁石71の、駆動用コイル73との対向面には、光軸方向で重なる2極の磁極(N極とS極)が形成され、駆動用磁石72の、駆動用コイル74との対向面には、光軸方向で重なる2極の磁極(N極とS極)が形成されている。そのため、駆動用磁石71、72が発生する磁力線は、たとえば、図12に示す矢印のようになる。
したがって、たとえば、光軸方向における第1磁石片71aの中心CL11よりも上側では、第1磁石片71aの、駆動用コイル73との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、磁力線の方向が揺動中心69から略遠ざかる方向となる領域80(以下、この領域80を「第1の領域80」とする。)が形成されている。すなわち、第1磁石片71aの、駆動用コイル73との対向面に形成される磁極(N極)の磁気中心となる中心CL11よりも上側では、第1磁石片71aの、駆動用コイル73との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、第1の領域80が形成されている。
また、たとえば、光軸方向における第1磁石片72aの中心CL21よりも下側では、第1磁石片72aの、駆動用コイル74との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、磁力線の方向が揺動中心69から略遠ざかる方向となる領域85(以下、この領域85を「第1の領域85」とする。)が形成されている。すなわち、第1磁石片72aの、駆動用コイル74との対向面に形成される磁極(N極)の磁気中心となる中心CL21よりも下側では、第1磁石片72aの、駆動用コイル74との対向面の前後方向(または左右方向)の外方に、第1の領域85が形成されている。
本形態では、図9、図12に示すように、光軸方向における駆動用コイル73の中心CL13が第1磁石片71aと第2磁石片71bとの当接面77よりも上側に配置されるように、駆動用磁石71と駆動用コイル73とが対向配置されている。すなわち、駆動用コイル73の中心CL13は、駆動用磁石71の磁気中心となる当接面77よりも光軸方向において揺動中心69から離れた位置に配置されている。
具体的には、図12に示すように、光軸方向における長辺部73aの中心CL14が第1磁石片71aの中心CL11よりも上側に配置されている。すなわち、第1磁石片71aの、駆動用コイル73との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL11よりも長辺部73aの中心CL14が上側に配置されている。換言すると、本形態では、第1の領域80に長辺部73aが配置されている。なお、光軸方向における長辺部73bの中心CL15は、第2磁石片71bの中心CL12よりも下側に配置されている。すなわち、第2磁石片71bの、駆動用コイル73との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL12よりも、長辺部73bの中心CL15は下側に配置されている。
また、本形態では、図9、図12に示すように、光軸方向における駆動用コイル74の中心CL23が第1磁石片72aと第2磁石片72bとの当接面78よりも下側に配置されるように、駆動用磁石72と駆動用コイル74とが対向配置されている。すなわち、駆動用コイル74の中心CL23は、駆動用磁石72の磁気中心となる当接面78よりも光軸方向において揺動中心69から離れた位置に配置されている。
具体的には、図12に示すように、光軸方向における長辺部74aの中心CL24が第1磁石片72aの中心CL21よりも下側に配置されている。すなわち、第1磁石片721aの、駆動用コイル74との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL21よりも長辺部74aの中心CL24が下側に配置されている。換言すると、本形態では、第1の領域85に長辺部74aが配置されている。なお、光軸方向における長辺部74bの中心CL25は、第2磁石片72bの中心CL22よりも上側に配置されている。すなわち、第2磁石片72bの、駆動用コイル74との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL22よりも、長辺部74bの中心CL25は上側に配置されている。
上述のように、本形態では、第1の領域80に長辺部73aが配置され、第1の領域85に長辺部74aが配置されている。そのため、図13に示すように、駆動用コイル73に電流が供給されることで長辺部73aに生じる電磁力F11の方向は、揺動中心69を中心とするとともに長辺部73aを通過する円の接線方向と略一致している。また、駆動用コイル74に電流が供給されることで長辺部74aに生じる電磁力F21の方向は、揺動中心69を中心とするとともに長辺部74aを通過する円の接線方向と略一致している。すなわち、駆動用コイル73、74に電流が供給されることで駆動用コイル73、74に生じる電磁力F11、F21の方向は、揺動中心69を中心として可動モジュール62を揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致している。
以上のように構成された撮影用光学装置51では、センサ4でレンズ駆動装置2の傾きの変化が検出されると(すなわち、レンズ駆動装置2の振れ(振動)が検出されると)、センサ4での検出結果に基づいて、駆動用コイル73、74に電流が供給され、可動モジュール62が揺動中心69を中心に揺動して、振れが補正される。なお、本形態では、揺動駆動機構56と、板バネ67とによって、センサ4での検出結果に基づいてレンズ駆動装置2を揺動させて振れ(手振れ)を補正する振れ補正機構(手振れ補正機構)が構成されている。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、駆動用磁石71と駆動用コイル73とは、揺動中心69よりも上側で対向配置されるとともに、第1磁石片71aの、駆動用コイル73との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL11よりも長辺部73aの中心CL14が上側に配置されている。また、駆動用磁石72と駆動用コイル74とは、揺動中心69よりも下側で対向配置されるとともに、第1磁石片72aの、駆動用コイル74との対向面に形成される磁極の磁気中心となる中心CL21よりも長辺部74aの中心CL24が下側に配置されている。
すなわち、本形態では、駆動用磁石71が発生する磁力線の方向が揺動中心69から略遠ざかる方向となる第1の領域80に長辺部73aが配置され、駆動用磁石72が発生する磁力線の方向が揺動中心69から略遠ざかる方向となる第1の領域85に長辺部74aが配置されている。そのため、上述のように、駆動用コイル73、74に電流が供給されることで生じる電磁力F11、F21の方向は、揺動中心69を中心として可動モジュール62を揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致する。したがって、本形態では、駆動用磁石71、72が発生させる磁束を有効に利用して、揺動駆動機構56の駆動力を高めることができる。その結果、本形態では、撮影用光学装置51が小型化、薄型化する場合であっても、レンズ駆動装置2を揺動させるための十分な駆動力を得ることが可能になる。
特に本形態では、第1の領域80に長辺部73aが配置され、第1の領域85に長辺部74aが配置されているため、揺動中心69を中心とする可動モジュール62の揺動力を発生させる方向と略一致する方向の電磁力F11、F21を長辺部73a、74aの両者で発生させることができる。したがって、本形態では、揺動駆動機構56の駆動力を効率的に高めることができる。
本形態では、駆動用磁石71の当接面77よりも駆動用コイル73の中心CL13が光軸方向において揺動中心69から離れた位置に配置されている。そのため、当接面77と駆動用コイル73の中心CL13とが光軸方向において揺動中心69から等しい位置に配置される場合と比較して、揺動中心69から駆動用コイル73までの距離を長くすることができる。同様に、駆動用磁石72の当接面78よりも駆動用コイル74の中心CL23が光軸方向において揺動中心69から離れた位置に配置されているため、当接面78と駆動用コイル74の中心CL23とが光軸方向において揺動中心69から等しい位置に配置される場合と比較して、揺動中心69から駆動用コイル74までの距離を長くすることができる。したがって、可動モジュール62を揺動させるためのトルクを大きくすることができ、揺動駆動機構56の駆動力を高めることができる。
本形態では、第1の領域80に長辺部73aが配置され、第1の領域85に長辺部74aが配置されている。そのため、短辺部73c、73d、74c、74dが第1の領域80、85に配置される場合と比較して、揺動駆動機構56の駆動力をより高めることができる。また、駆動用コイル73、74が略正方形状に巻回されて形成されている場合と比較して、本形態では、揺動駆動機構56の駆動力を高めつつ、上下方向で撮影用光学装置51を小型化することが可能になる。さらに、揺動駆動機構56の駆動力にほとんど寄与しない短辺部73c、73d、74c、74dが短くなるため、駆動用コイル73、74の抵抗値を下げることが可能になり、駆動用コイル73、74での消費電力の低減することが可能になる。
[他の実施の形態]
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した実施の形態1では、駆動用磁石21がカバー部材9に取り付けられ、駆動用コイル23がケース体16に取り付けられている。この他にもたとえば、駆動用磁石21がケース体16に取り付けられ、駆動用コイル23がカバー部材9に取り付けられても良い。この場合には、駆動用コイル23の中心CL3は、駆動用磁石21の当接面27よりも下側に配置される。すなわち、駆動用磁石21の磁気中心よりも駆動用コイル23の中心CL3が光軸方向において支点部19に近い位置に配置される。
具体的には、長辺部23aの中心CL4が第1磁石片21aの中心CL1よりも下側に配置されるとともに当接面27よりも上側に配置され、かつ、長辺部23bの中心CL5が第2磁石片21bの中心CL2よりも下側に配置される。すなわち、この場合には、第1磁石片21aの中心CL1よりも下側において、第1磁石片21aの、駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の内方に形成される領域であって、磁力線の方向が支点部19から略遠ざかる方向となる領域に、長辺部23aが配置される。また、第2磁石片21bの中心CL2よりも下側において、第2磁石片21bの駆動用コイル23との対向面の前後方向(または左右方向)の内方に形成される領域であって、磁力線の方向が支点部19に略近づく方向となる領域に、長辺部23bが配置される。
同様に、上述した実施の形態2では、駆動用磁石71、72がカバー部材59に取り付けられ、駆動用コイル73、74がコイル保持部材64、65に取り付けられているが、駆動用磁石71、72がケース体66に取り付けられ、駆動用コイル73、74がカバー部材59に取り付けられても良い。
上述した形態では、駆動用磁石21、71、72は、第1磁石片21a、71a、72aと第2磁石片21b、71b、72bとの2個の磁石片によって構成されている。この他にもたとえば、駆動用磁石21、71、72は、1個の磁石片によって構成されても良い。この場合には、駆動用磁石21、71、72の両面のそれぞれにおいて、光軸方向で重なる2極の磁極が形成されるように、1個の磁石片が着磁される。
上述した実施の形態1では、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面には、光軸方向で重なる2極の磁極が形成されている。この他にもたとえば、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面に1極のみの磁極が形成されても良いし、3極以上の磁極が形成されても良い。なお、駆動用磁石21の、駆動用コイル23との対向面に1極のみの磁極が形成される場合には、駆動用コイル23の長辺部23aまたは長辺部23bのいずれか一方のみが、駆動用磁石21の発生する磁力線の方向が支点部19から略遠ざかる方向となる領域または磁力線の方向が支点部19に略近づく方向となる領域に配置される。
同様に、上述した実施の形態2では、駆動用磁石71、72の、駆動用コイル73、74との対向面には、光軸方向で重なる2極の磁極が形成されているが、駆動用磁石71、72の、駆動用コイル73、74との対向面に1極のみの磁極が形成されても良いし、3極以上の磁極が形成されても良い。
上述した実施の形態1では、ベース体15に支点突起15bが形成され、センサカバー部材11に支点突起15bが当接する当接面11aが形成されている。この他にもたとえば、センサカバー部材11に支点突起が形成され、この支点突起が当接する当接面がベース体15に形成されても良い。また、ベース体15に支点突起15bが形成され、センサカバー部材11に支点突起15bが係合する凹部が形成されても良いし、センサカバー部材11に支点突起が形成され、この支点突起が係合する凹部がベース体15に形成されても良い。
上述した実施の形態1では、撮影用光学装置1は、可動モジュール12の下側に可動モジュール12の揺動中心となる支点部19を備えているが、撮影用光学装置1は、支点部19を備えていなくても良い。この場合には、光軸L上であって、かつ、板バネ17よりも下側の所定の点が可動モジュール12の揺動中心となる。また、上述した実施の形態1では、支点部19は、光軸Lが通過する位置に配置されているが、支点部19は、光軸Lからずれた位置に配置されても良い。
上述した形態では、レンズ駆動装置2の下側にセンサ4が配置されている。すなわち、光軸方向において、レンズ駆動装置2とセンサ4とが重なるように、レンズ駆動装置2とセンサ4とが配置されている。この他にもたとえば、光軸方向において、レンズ駆動装置2とセンサ4とが重ならないように、レンズ駆動装置2とセンサ4とが配置されても良い。
上述した形態では、駆動用コイル23、73、74は、空芯コイルであるが、駆動用コイル23、73、74は、ボビン付きのコイルであっても良い。
上述した形態では、撮影用光学装置1、51は、携帯電話等の携帯機器に搭載されている。この他にもたとえば、自動車の運転状況を記録するドライブレコーダに、撮影用光学装置1、51が搭載されても良い。この場合には、走行時の自動車の振動等に起因して、センサ4でレンズ駆動装置2の傾きの変化が検出されると(すなわち、レンズ駆動装置2の振れ(振動)が検出されると)、センサ4での検出結果に基づいて、駆動用コイル23に電流が供給され、可動モジュール12が支点部19を中心に揺動して、振れが補正される。あるいは、センサ4でレンズ駆動装置2の傾きの変化が検出されると、センサ4での検出結果に基づいて、駆動用コイル73、74に電流が供給され、可動モジュール62が回動中心69を中心に揺動して、振れが補正される。また、撮影用光学装置1、51は、監視カメラ等のその他の装置に搭載されても良い。
ここで、たとえば、図14に示すように、レンズ駆動装置2の光軸方向が水平になる状態で、撮影用光学装置1が使用される場合、可動モジュール12は、重力によって下方向へ傾く。可動モジュール12の重心が支点部19から遠いと、鉛直方向に対して光軸Lが傾いたときの支点部19を中心とする可動モジュール12の回転モーメントが大きくなり、傾き量も増える。
上述した実施の形態1では、センサカバー部材11の当接面11aとベース体15の支点突起15bとを確実に当接させるための与圧が発生するように、板バネ17が撓んだ状態でケース体16に固定されているため、撮影用光学装置1では、かかる傾きを抑制することは可能である。また、上述した実施の形態1では、上下方向における駆動用コイル23の中心CL3が第1磁石片21aと第2磁石片21bとの当接面27よりも上側に配置されるように、駆動用磁石21と駆動用コイル23とが対向配置されており、重量の大きな駆動用磁石21が支点部19に近づくように配置されている。そのため、可動モジュール12自体の重心を支点部19に近づけることができ、これにより光軸Lが水平となったときの可動モジュール12の回転モーメントを小さくし、可動モジュール12の傾き量を抑制することが可能である。
しかしながら、可動モジュール12の重量が大きくなると、板バネ17のバネ力を大きくしなければならず、板バネ17が厚く、大きくなるおそれがある。そこで、図14に示すように、可動モジュール12の重心が支点部19に近づくように、可動モジュール12に錘40を固定しても良い。すなわち、可動モジュール12における支点部19の近傍あるいは支点部19よりも下側(図14の左側)に錘40を固定しても良い。たとえば、センサカバー部材11の底部には、図2に示すように、当接面11aを囲むように、かつ、下方向へ窪むように円環状の凹部11cが形成されているため、この凹部11cに錘40を配置しても良い。なお、可動モジュール12の重心と支点部19との間で、錘40を可動モジュール12に固定しても良い。また、センサカバー部材11の重量を重くしてセンサカバー部材11に錘40の機能を持たせても良い。
このようにすると、板バネ17を薄型化、小型化しつつ、レンズ駆動装置2の光軸Lが鉛直方向に対して傾いたときの可動モジュール12の傾き量を小さくすることができる。また、撮影用光学装置1の姿勢差による可動モジュール12の傾き量のばらつきを考慮して板バネ17を設計する必要が軽減されるため、板バネ17の設計の自由度が増す。なお、カバー部材11の凹部11cに錘40が配置される場合には、錘40は、円環状の凹部11cの形状に合った円環状に形成されていることが好ましい。錘40が円環状に形成されている場合には、可動モジュール12がいかなる方向に傾いたとしても可動モジュール12の回転モーメントを小さくして傾き量を小さくすることができる。