以下に、本発明の実施の形態による駆動装置の一例について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による駆動装置の一例である振れ補正装置についてその構成をブロック図である。
図示の振れ補正装置100は、デジタルカメラなどの撮像装置に備えられ、光学系を介して撮像面に結像する像の振れを補正する。振れ補正装置100は、比較部110、演算部120、駆動部130、補正部140、および検出部150を有している。そして、演算部120および駆動部130は制御部160を構成する。比較部110は、後述する可動部142の目標位置と検出位置との差分を出力する。演算部120はゲイン演算部120gおよび関数演算部120fを備えている。ゲイン演算部120gは比較部110の出力である差分に基づいてゲインを求める。関数演算部120fは可動部142の検出位置に基づいてコイルに通電する電流の比を求める。そして、演算部120はコイルに通電する電流の値を出力する。
駆動部130はピッチ駆動部130pおよびヨー駆動部130yを有している。ピッチ駆動部130pはピッチ方向の駆動を行うための第1および第2コイル駆動回路を備えている。ヨー駆動部130yはヨー方向の駆動を行うための第3および第4コイル駆動回路を備えている。そして、駆動部130は演算部120の出力に基づいてコイルに通電を行う。
補正部140はピッチ補正部140pおよびヨー補正部140yを有している。ピッチ補正部140pはピッチ方向の駆動を行う第1駆動部180pおよび第2駆動部181pを備えている。ヨー補正部140yはヨー方向の駆動を行う第3駆動部180yおよび第4駆動部181yを備えている。補正部140に備えられた各駆動部はコイルおよびマグネットを備えている。そして、コイルの長手方向が平行な第1駆動部および第2駆動部によって振れ補正動作が行われる。検出部150は、ピッチ検出部150pおよびヨー検出部150yを備えており、可動部142の位置を検出する。
図2は、図1に示す振れ補正装置の構造の第1の例を示す図である。そして、図2(a)は正面図であり、図2(b)は断面図である。
振れ補正装置100は電気基板部171を備えており、当該電気基板部171には前述の比較部110、演算部120、および駆動部130が搭載されている。そして、電気基板部171は配線(図示せず)によって第1コイル146p、第2コイル148p、第3コイル146y、第4コイル148y、ピッチ検出部150p、およびヨー検出部150yと接続される。
光学素子141は、レンズであって、可動部142が可動範囲の中心に位置する場合に光学素子の光軸Oaに関して移動して、結像する像を結像面で移動させる。手振れなどの外部の振れを検出した場合には、当該振れに応じて光学素子141を移動させて結像する像の振れを低減する。なお、レンズではなくCCDやCMOSなどの撮像素子を光学素子141として可動部142で保持するようにしてもよい。
可動部(可動部材)142は略筒形状であって、その中心に光学素子141が保持される。そして、可動部142は固定部143に対して移動可能である。可動部142に備えられた転動ボール144aに当接する側には、光軸Oaに直交する平面形状のボール受部142aが3か所に形成されている。可動部142の外周において、ばね掛け部142bが、例えば、4か所に形成されている。
固定部143は略筒形状であり、固定部143に備えられた転動ボール144aに当接する側には、光軸Oaに直交する平面形状のボール受部143aが3か所に形成されている。固定部143の内部において、ばね掛け部143bが、例えば、4か所に形成されている。固定部143の内部には、環状に規制部材143cが形成されている。可動部142の位置が大きく変化すると、可動部142が規制部材143cに到達して可動部142の位置が規制される。規制部材143cに到達して可動部142が規制された際の可動部142の位置を第1の位置とする。また、反対側の規制部材143cに到達して可動部142が規制される際の位置を第2の位置とする。そして、第1の位置から第2の位置までを可動部142の可動範囲とする。
支持部(支持部材)144は、固定部143に対して可動部142を移動可能に支持する。そして、支持部144はボール受部142a、ボール受部143a、および転動ボール144aを備えている。転動ボール144aはセラミックなどの球体であり、ボール受部142aおよびボール受部143aに当接するように3か所に配置されている。転動ボール144aがボール受部142aおよび143aの間で狭持されつつ転動すると、可動部142は固定部143に対して光軸Oa方向に移動しない。そして、可動部142は光軸Oaと直交する面内を移動することが可能となる。
付勢部145は、固定部143と可動部142とを支持部144に当接する方向に付勢する。そして、付勢部145はばね掛け部142b、ばね掛け部143b、および引っ張りばね145aを有している。引っ張りばね145aはステンレスなどの材料で形成され、ばね掛け部142bおよびばね掛け部143bに掛かるように、例えば、4本配置されている。引っ張りばね145aによって可動部142が移動した場合には、可動部142を可動範囲の中心に戻すように可動部142の移動方向と反対方向に反力が発生する。これによって、可動部142が移動した場合には、可動部142の位置に応じて引っ張りばね145aによる反力が大きくなる。
なお、引っ張りばね145aの代わりに可動部142と固定部143との間で吸着力を生じる磁力によるものなど可動部142と固定部143とが支持部144に当接する方向に付勢力を発生するものであれば、他の手段を用いるようにしてもよい。また、転動ボールと引っ張りばねの材料、そして、引っ張りばねの数については上述の例には限定されない。
図3は図1に示す補正部に備えられたコイルおよびマグネットを説明するための図である。そして、図3(a)は正面図であり、図3(b)は断面図である。
第1コイル146pは、固定部143に保持された略楕円筒形状のコイルである。第1コイル146pは光軸Oa方向から見た場合に楕円状に巻回された導線からなる巻き線コイルである。そして、第1コイル146pの楕円筒の厚み方向の面146paは、後述する第1マグネット147pに対向している。ここでは、第1コイル146pの中心を第1コイルの中心146pbとする。
第1マグネット147pは、第1コイル146pに対向して可動部142に保持される。第1マグネット147pは、第1コイル146pとの対向面147paの法線方向がその着磁方向であって、着磁境界面147pbが第1コイル146pの長手方向と平行である。第1マグネット147pは、着磁境界面147pbにおいて分割された着磁方向の異なる第1極147pnおよび第2極147psを備えている。ここでは、光軸Oaから遠い方の極を第1極147pnとし、近い方の極を第2極147psとする。また、第1マグネット147pの光学素子141から最も離れた面を参照番号147pcで示す。
第2コイル148pは、固定部143に保持された略楕円筒形状のコイルである。第2コイル148pは、光軸Oa方向から見た場合に楕円状に巻回された導線からなる巻き線コイルである。そして、第2コイル148pは第1コイル146pとその長手方向が平行となっている。さらに、光軸Oa方向から見た場合に、第1コイル146pと第2コイル148pとの間に光学素子141が配置されている。第2コイル148pの楕円筒の厚み方向の面148paは、第2マグネット149pに対向している。ここでは、第2コイル148pの中心を第2コイルの中心148pbとする。
なお、第2マグネット149pの形状およびその配置について、第1マグネット147pと同様であるので、説明を省略する。
第1マグネット147pおよび第2マグネット149pは、光学素子141に関して光軸Oa方向に重なって配置される。これによって、振れ補正装置の厚みが増加することが防止される。また、第1コイル146p、第1マグネット147p、第2コイル148p、および第2マグネット149pは可動部142が移動しても干渉しない位置に配置されている。さらに、第1コイル146p、第1マグネット147p、第2コイル148p、および第2マグネット149pは振れ補正装置の半径ができる限り小さくなるように光学素子141に近い位置に配置されている。
上述のように、可動部142が可動範囲の中心に位置する場合には、第1コイルの中心146pbは第1マグネットの着磁境界面147pbよりも、光学素子141の中心Oに対して所定のずれ量分だけ外側にずれて配置される。さらに、第2コイルの中心148pbは第2マグネットの着磁境界面149pbよりも、光学素子の中心Oに対して所定のずれ量分だけ外側にずれて配置される。
ピッチ検出素子151pは、磁気によって位置を検出するホールセンサである。ピッチ検出素子151pはホルダなどによって固定部143に固定される。そして、ピッチ検出素子151pは、対向するマグネットの位置の変化を電気信号として出力する。ピッチ検出素子151pの検出出力は電気基板部171に送られる。
ヨー補正部140yおよびヨー検出部150yはそれぞれピッチ補正部140pおよびピッチ検出部150pに対して光軸Oaと直交する面において直交して配置されている。なお、配置方向以外の構成およびその動作についてはピッチ補正部140pおよびピッチ検出部150pと同様であるので、ここでは構成の説明を省略する。
図4は、図2に示す支持部および付勢部の配置を説明するための図である。
図4においては、固定部143、第1マグネット147p、第2マグネット149p、支持部144、および付勢部145のみが示されている。支持部144において光軸Oaから最も離れた点を点Aとし、付勢部145において光軸Oaから最も離れた点を点Bとする。光学素子141の中心点Oを中心として点Aを通る円、点Bを通る円、および第1マグネットの面147pcと第2マグネットの面149pcに接する円の半径をそれぞれDa、Db、およびDcとする。この場合、Da<Dc、Db<Dcが成り立つように構成される。
これによって、光軸Oa方向から見た場合に、転動ボール144aおよび引っ張りばね145aは第1マグネット147pおよび第2マグネット149pの外周部よりも光軸Oaの近くに配置される。第1マグネット147pおよび第2マグネット149pは光学素子141に近い位置に配置されているので、振れ補正装置100の径方向の大きさを小さく抑えることができる。
図5は、図1に示す振れ補正装置の構造の第2の例を示す図である。そして、図5(a)は正面図であり、図5(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図5に示す構成であってもよい。なお、図5において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図5に示す例では、可動部142にコイルが保持されており、固定部143にマグネットが保持されている。なお、このような構成はムービングコイル方式と呼ばれる。
図6は、図1に示す振れ補正装置の構造の第3の例を示す図である。そして、図6(a)は正面図であり、図6(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図6に示す構成であってもよい。なお、図6において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図6に示す例では、可動部142が可動範囲の中心に位置する場合に、第1マグネットの着磁境界面147pbは第1コイルの中心146pbよりも、光学素子141の中心Oに対して所定のずれ量分だけ外側にずれて配置される。さらに、第2マグネットの着磁境界面149pbは第2コイルの中心148pbよりも、光学素子の中心Oに対して所定のずれ量分だけ外側にずれて配置されるようにしてもよい。
図7は、図1に示す振れ補正装置の構造の第4の例を示す図である。そして、図7(a)は正面図であり、図7(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図7に示す構成であってもよい。なお、図7において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図7に示す例では、光軸Oa方向から見た場合に、一方のコイルは対向するマグネットよりも手前に配置される。さらに、他方のコイルを対向するマグネットよりも奥に配置するようにしてもよい。
図8は、図1に示す振れ補正装置の構造の第5の例を示す図である。そして、図8(a)は正面図であり、図8(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図8に示す構成であってもよい。なお、図8において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図8に示す例では、第1コイル146pは固定部143又は可動部142のいずれか一方に保持され、第2コイル148pは他方に保持される。
図9は、図1に示す振れ補正装置の構造の第6の例を示す図である。そして、図9(a)は正面図であり、図9(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図9に示す構成であってもよい。なお、図9において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図9に示す例では、ボール受部142aおよび143aはすり鉢状であり、コイル、マグネット、および検出素子を傾けて配置する。そして、可動部141は球面上を移動する。
図10は、図1に示す振れ補正装置の構造の第7の例を示す図である。そして、図10(a)は正面図であり、図10(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図10に示す構成であってもよい。なお、図10において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図10に示す例では、ピッチ方向に駆動するため、第2コイル148pの円弧部は厚み方向に屈曲している。そして、第2コイル148pはコイル中心148pbの近傍において第1コイル146pと、光軸Oaと直交する略同一平面上に配置される。
図11は、図1に示す振れ補正装置の構造の第8の例を示す図である。そして、図11(a)は正面図であり、図11(b)は断面図である。
振れ補正装置は、図11に示す構成であってもよい。なお、図11において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図11に示す例では、ピッチ方向に駆動するため、第2コイル148pはマグネット147pの第1コイル146pに対向する面146paの背面147peと対向するように配置される。
図12は、図1に示す補正部の動作を説明するための図である。そして、図12(a)は可動部が可動範囲の中心に位置する場合の断面図である。また、図12(b)は第1マグネットの着磁境界面が第1コイルのコイル線束部の光学素子から遠い側に到達する直前の位置にある場合の断面図である。さらに、図12(c)は第1マグネットの着磁境界面が第1コイルのコイル線束部の光学素子141から遠い側に到達した位置にある場合の断面図である。
図12においては、第1マグネット147pおよび第2マグネット149pの第1コイル146pおよび第2コイル148pに対するずれ量をともに”d”とされている。そして、規制部材143cによって可動部142の移動が規制される影響が除かれている。
図12(a)を参照すると、ここでは、図2において動作に関連する部品のみが示されており、可動部142は可動範囲の中心に位置している。第1コイル146pおよび第2コイル148pに対して、力の移動方向の成分が同一の向きになるように、互いに逆向き方向+J1および+J2に電流を通電する。この結果、電磁作用によって第1マグネット147pおよび第2マグネット149pにそれぞれ力F1aおよびF2aが発生する。ここで、力F1aの移動方向の成分をF1ah、移動方向に直交する方向の成分をF1avとする。また、力F2aの移動方向の成分をF2ah、移動方向に直交する方向の成分をF2avとする。
この場合、成分F1ahと成分F2ahとの合力が可動部142の推力となり、成分F1avと成分F2avとが可動部142を移動方向に直交する方向に動かす面外力である。図12(a)においては、第1マグネット147pおよび第2マグネット149pともに推力が生じている。
図12(b)を参照すると、ここでは、図2において動作に関連する部品のみが示されている。可動部142が移動して、第1マグネットの着磁境界面147pbが第1コイルのコイル線束部146pdの光学素子141から遠い側に到達する直前の位置にある。
ここで、第2マグネット149pが第2コイルのコイル線束部148pdを乗り越え、第2コイル148pと第2マグネット149pとの間のローレンツ力の向きが反転する。このため、ローレンツ力の移動方向の成分が同一の向きになるように、第1コイル146pには+J1方向に、第2コイル148pには図12(a)と反対の−J2方向に電流を通電する。これによって、力F1bおよびF2bが発生する。成分F1bhおよび成分F2bhの合力が可動部142の推力となり、成分F1bvおよび成分F2bvが可動部142を移動方向に直交する方向に動かす面外力である。
図12(b)においては、第2マグネット149pはコイル線束部146pdの片側から外れており推力が小さくなるものの、第1マグネット147pにおいて推力が発生しており、可動部142は移動する。
図12(c)を参照すると、ここでは、図2において動作に関連する部品のみが示されている。可動部142が移動して、第1マグネットの着磁境界面147pbが第1コイルのコイル線束部146pdの光学素子141から遠い側に到達した位置にある。ここで、引っ張りばね145aは省略されているが、引っ張りばね145aによって発生するばね反力の大きさと方向がK1およびK2で示されている。
+J1および−J2方向にそれぞれ電流を通電すると、力F1cおよびF2cが発生する。成分F1chおよび成分F2chの合力が可動部142の推力となり、成分F1cvおよび成分F2cvが可動部142を移動方向に直交する方向に動かす面外力である。
図12(c)においては、第1マグネット147pでは、着磁境界面147pbがコイル線束部146pdに到達しているので推力より面外力が大きくなって、推力が小さくなる。第2マグネット149pはコイル線束部148pdの片側から外れており、推力は小さくなる。図12(c)に示す位置では、推力が可動部142を付勢する引っ張りばね145aの反力K1およびK2の和と釣り合う。これによって、可動部142は移動できなくなる。つまり、図12(c)に示す位置は可動部142が移動できる上限の位置を示すことになる。
このように、規制部材143cによる影響を取り除くと、可動部142は図12(c)に示す位置まで移動することができる。ところが、一般的には、ばね反力のばらつきなどを見込んで余裕を持たせた範囲を可動範囲とする。よって、図示の例では、図12(b)の位置において規制部材143cと接触する構成として、図12(b)の位置までを可動範囲とする。但し、規制部材143cをさらに光学素子141の中心Oから遠ざけて配置して、推力が発生する範囲内であればさらに可動部142が移動可能な構成とするようにしてもよい。
なお、可動部142が、図12で説明した移動方向と反対方向に移動する場合には、前述の電流の向きおよび力の向きが反転することになる。
図13は、図1に示す補正部のコイルとマグネットとのずれ量の設定限界値について説明するための図である。
図13に示す例では、コイルとマグネットとのずれ量を限界値Pとして、規制部材143cによって可動部142の移動が停止する影響が取り除かれている。なお、ここでは、図2において動作に関連する部品のみが示され、可動部142が可動範囲の中心に位置する。
限界値Pは、第1コイル146pに+J1方向に電流を通電して、第1マグネットの第1極147pnに発生する移動方向の力Fnhと第2極147psに発生する移動方向の力Fshとがつり合うように設定される。これによって、第1コイル146pと第1マグネット147pとの間に発生するローレンツ力は、面外力FnvおよびFsvのみとなって、推力は発生しない。第2コイル148pと第2マグネット149pとの間に発生するローレンツ力も同様に推力が発生しない。このため、可動部142を移動させる推力は発生せず、可動部142は移動しない。一方、ずれ量が限界値P未満であれば、ローレンツ力の移動方向の成分が発生する。このため、可動部142を移動させることが可能になる。
このように、ずれ量が限界値P未満であれば推力が発生するので、図5に示すずれ量dは限界値P未満とする必要がある。つまり、ずれ量dは限界値P未満までであれば推力が発生するので、可動部142を動かすことができる。言い替えると、第1コイル146pに通電した際、第1極147psによって発生する着磁境界面147pbと直交する方向の力と第2極147psによって発生する着磁境界面147pbと直交する方向の力が釣り合うずれ量を限界値Pとする。この場合、ずれ量が限界値P未満であるので、可動範囲の中心から可動部142を移動させることが可能となる。
図14は、図1に示す振れ補正装置による振れ補正制御の一例を説明するためのフローチャートである。
振れ補正制御を開始すると、制御部160は可動部142が到達すべき位置である目標位置を更新する(ステップS1)。そして、制御部160は検出部150による検出結果に基づいて、可動部142が移動した位置である検出位置を更新する(ステップS2)。続いて、制御部160は比較部110によって目標位置と検出位置との差分を算出する(ステップS3)。
次に、制御部160はゲイン演算部120gによって差分に基づいて係数kを決定する(ステップS4)。なお、当該係数kが大きい程、可動部142を移動させる力が大きくなる。
図15は、図1に示すゲイン演算部で決定される係数の一例を示す図である。
図15において、横軸は可動部142の検出位置を示し、縦軸は係数kを示す。目標位置と検出位置との差分が0の場合には、検出位置が0となる位置においては、引っ張りばね145aによるばね反力が0となる。この場合には、ゲイン演算部120gは係数k=0と決定する。これによって、推力が生じることなく、可動部142は0の位置に留まることになる。
可動部142が位置X1に移動した場合には、ゲイン演算部120gは係数k=K1と決定する。これによって、引っ張りばね145aによるばね反力に抗する推力が発生して、可動部142は位置X1に留まる。可動部142が位置X2に移動した場合には、ゲイン演算部120gは係数k=K2と決定する。これによって、位置X1に可動部142が移動した場合と反対方向に作用するばね反力に抗する推力が発生して、可動部142は位置X2に留まる。
このように、係数kは可動部142の検出位置に応じて変化し、可動部142が大きく移動すると、引っ張りばね145aによる反力が大きくなる。このため、係数kが大きくなる。このようにして、目標位置と検出位置の差分が0の場合、ゲイン演算部120gは可動部142の検出位置に応じて係数kを決定する。
続いて、目標位置と検出位置との差分が0でない場合について説明する。検出位置がX1、目標位置が+αである場合には、ゲイン演算部120gが可動部142の検出位置に基づいて係数kを決定したとすると、係数k=K1となる。この場合には、可動部142を位置X1に留める推力が発生する。
ここで、検出位置を目標位置である+αと一致するように可動部142を移動するためには、係数k=K3として推力を増加させて大きなばね反力に抗する必要がある。よって、差分が+αである場合には、ゲイン演算部120gは、図15において差分+αの曲線で示すように、差分0の場合の係数kに不足する推力に応じた所定の値を加算して係数kを決定する。
一方、目標位置が+βである場合には、ゲイン演算部120gは係数k=K4となるように推力を増加させる。よって、係数kは、図15において差分+βの曲線で示すように、差分0の場合の係数kに不足する推力に応じた所定の値を加算した値となる。
さらに、目標位置が検出位置よりも小さい場合には、係数kは、図15において差分−γの曲線で示すように、差分0の場合の係数kから過剰な推力に応じた所定の値を減算した値となる。
このように、係数kは、検出位置および目標位置と検出位置との差分に応じて変化する値である。なお、図示の補正制御では、係数kを目標位置に応じた一定の値としたが、可動部142の検出位置に応じて変化するようにしてもよい。
再び図14を参照して、制御部160は関数演算部120fによってコイルに通電する電流を算出する(ステップS5)。関数演算部120fには、可動部142の検出位置の関数である第1の関数a(x)および第2の関数b(x)が記憶されている。そして、関数演算部120fは検出部150による検出結果に基づいて、可動部142の検出位置と第1の関数a(x)によって定まる第1の分配値(第1の制御値)d1を決定する。さらに、関数演算部120fは検出部150による検出結果に基づいて、可動部142の検出位置と第2の関数b(x)によって定まる第2の分配値(第2の制御値)d2を決定する。
ここで、xは可動部142の検出位置を示し、第1および第2の分配値d1およびd2はそれぞれ第1コイル146pおよび第2コイル148pに通電する電流の比率を示す。そして、関数演算部120fは第1の分配値d1および第2の分配値d2をゲイン演算部120gに出力する。
図16は、図1に示す制御部で行われる可動部の駆動制御を説明するための図である。そして、図16(a)は第1の関数および第2の関数の一例を示す図であり、図16(b)はマグネットのコイルの配置を示す図である。また、図16(c)は単位電流当たりの推力である推力定数を示す図であり、図16(d)は可動部に生じる推力の一例を示す図である。
いま、図16(b)に示すように、マグネットの着磁境界面と直交する方向の長さをw、マグネットのコイルに対するずれ量をdとする。この場合には、後述するようにして、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はそれぞれ次の式(1)および式(2)で表される。
a(x)=sin[{2π(x+d)}/2w] (1)
b(x)=sin[{2π(x−d)}/2w] (2)
第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はともに三角関数であり、両者の間にぞれぞれの関数を二乗した和が一定となる関係が成立する。つまり、第1の関数および第2の関数は三角関数であるので、ステッピングモーターのマイクロステップ駆動と同様に、可動部142を滑らかに駆動するため上記の関係が成立する。さらに、第1の関数および第2の関数の位相がそれぞれずれ量dずれているので、可動部142がd移動した位置において第1の関数および第2の関数ともに最大値となる。この結果、コイルに通電する電流が最大となる。
この位置では、光軸から見た場合において、図16(b)に示すx=dのようにマグネットの着磁境界面とコイルの中心とが重なる。このマグネットとコイルとの位置関係は、図16(c)に示すように、単位電流当たりの推力である推力定数が最大となる位置関係であって、最も高効率で推力を発生させることができる。従って、第1の関数および第2の関数の位相をそれぞれずれ量dずらすことによって、一組のコイルとマグネットには最も高効率な位置で最大の推力が発生する。
このように、コイルとマグネットのずれ量分位相をずらした三角関数を第1の関数および第2の関数とすることによって、図16(d)に示すように滑らかでかつ高効率な推力を発生させることができる。なお、図示の例では、第1および第2の関数を三角関数としたが、可動部の可動範囲の中心近傍において大小関係が変化する2つの関数で、振れ補正装置100の動作に適用できる関数であれば他の関数でもよい。
ゲイン演算部120gは、第1の分配値d1に係数kを乗算した第1乗算値k・d1を第1コイル146pに通電する電流とする。さらに、ゲイン演算部120gは第2の分配値d2に係数kを乗算した第2乗算値k・d2を第2コイル148pに通電する電流とする。
続いて、制御部160はステップS5で求めた電流を、駆動部130の各コイル駆動回路によって補正部140の各コイルに通電する(ステップS6)。これによって、制御部160は、第1の分配値d1および係数kに基づいて第1駆動部180pを制御する。さらに、制御部160は、第2の分配値d2および係数kに基づいて第2駆動部181pを制御する。そして、コイルに通電した電流に応じてコイルとマグネットとによってローレンツ力が発生して、可動部142が移動する(ステップS7)。
次に、制御部160は、可動部142の動作を停止するか否かを判定する(ステップS8)。可動部142を停止しないと判定すると(ステップS8において、NO)、制御部160はステップS1の処理に戻って、目標位置と可動部142の検出位置との差分がなくなるまで制御を継続する。一方、可動部142を停止すると判定すると(ステップS8において、YES)、制御部160は振れ補正制御を終了する。
このようにして、可動部142の位置の関数である第1の関数a(x)と可動部142の位置(検出位置)に基づいて第1の分配値d1を決定する。さらに、可動部142の位置の関数である第2の関数b(x)と可動部142の位置(検出位置)に基づいて第2の分配値d2を決定する。そして、第1の分配値d1、第2の分配値d2、および可動部142の位置に応じて変化する係数kに基づいてコイルに通電する電流を制御する。
図17は、本発明の第1の実施形態による振れ補正装置の効果を説明するための図である。そして、図17(a)は可動部が可動範囲の中心に位置する場合の断面図である。また、図17(b)は第1マグネットの着磁境界面が第1コイルのコイル線束部の光学素子から遠い側に到達する直前の位置にある場合の断面図である。
図17(a)においては、図2において動作に関連する部品のみが示されており、可動部142は可動範囲の中心に位置している。そして、この際の光学素子141の光軸をOaとする。図17(b)においても、図2において動作に関連する部品のみが示されている。そして、ここでは、可動部142が第1マグネットの着磁境界面147pbが第1コイルのコイル線束部146pdの光学素子141から遠い側に到達する直前の位置にある。そして、この際の光学素子141の光軸をOc1とし、反対側の端に到達した場合の光学素子141の光軸をOc2とする。
可動部142の可動量は、可動部142が前述の可動範囲の間を移動する移動距離Stに相当する。着磁教会面147pdから光軸Oaまでの距離はR1であり、この距離R1が大きいと振れ補正装置100の径方向の寸法が大きくなる。
図18は、ピッチ方向の駆動にコイルとマグネットを一つずつ用いる従来の振れ補正装置を説明するための図である。そして、図18(a)は可動部が可動範囲の中心に位置する場合の断面図である。また、図18(b)は第1マグネットの着磁境界面が第1コイルのコイル線束部の光学素子から遠い側に到達する直前の位置にある場合の断面図である。
図18(a)において、光学素子101の光軸をOdとし、図18(b)において、光学素子101の光軸をOe1とする。そして、反対側の端に到達した場合の光学素子101の光軸をOe2とする。コイルとマグネットを一つずつ使用する場合、可動範囲を起動距離Stと等しくするためには、第1コイル106pの短手方向の寸法Lcを大きくする必要がある。さらに、光軸方向から見た場合に、第1コイル106pと第1マグネット107pとが可動範囲において重なっている面積を維持するためには、第1マグネット107pの短手方向の寸法Lmも大きくする必要がある。その結果、可動量は移動距離Stであるものの、可動部が端に到達した場合の面107pdから光軸Odまでの距離は距離R1より大きい距離R2となる。
よって、図17に示す振れ補正装置は、図18に示す振れ補正装置に比べて、可動量を維持した状態で径方向の寸法を小型化することができる。
図19は、ステッピングモーターの構成についてその一例を示す正面図である。
図示のステッピングモーター190は、可動部であるローター192と固定部であるステーター193を有している。ステーター193にはコイル197が配置され、ローター192にはマグネット196が配置される。ローター192は、軸受け(図示せず)などを介してステーター193に保持されている。
図20は、図19に示すステッピングモーターの動作を説明するための図である。そして、図20(a)はローター回転角と駆動負荷との関係を示す図であり、図20(b)はローター回転角と係数との関係を示す図である。また、図20(c)はローター回転角と電流との関係を示す図である。
ローター192が回転する際の摩擦などによる駆動負荷は、図20(a)に示すようにほぼ一定となる。この場合、ローター192を滑らかに駆動するマイクロステップ駆動においては、位相のずれた正弦波に、図20(b)に示す一定値である係数kを乗算して、図20(c)に示す電流をコイルに通電する。このようにして、電流を通電すると、駆動負荷が図20(a)に示すようにほぼ一定であるので、ローター192を駆動することが可能となる。
図21は、図1に示す振れ補正装置において可動部の移動に応じた駆動負荷、係数、および電流を説明するための図である。そして、図21(a)は可動部の位置と駆動負荷との関係を示す図であり、図21(b)は可動部の位置と係数との関係を示す図である。また、図21(c)は可動部の位置と電流との関係を示す図である。
前述のように、可動部142は引っ張りばね145aによって付勢されており、その位置の変化に伴って、可動部142はばね反力を受ける。このため、可動部142の位置の変化が大きくなるとばね反力も大きくなって、結果的に駆動負荷が大きくなる。つまり、可動部142の位置に応じて駆動負荷が変化する。
図16(a)に関連して説明したように、滑らかに可動部142を駆動するために正弦波を入力すると、図16(d)に示すように、推力は滑らかで一定値に近い値となる。但し、ステッピングモーターでは正弦波全域を用いるが、本実施形態では正弦波の一部領域のみを用いる。
図21(a)に示すように駆動負荷が変化するので、当該駆動負荷に応じて変化する係数を乗算して調整すれば、可動部142を駆動することが可能になる。図21(b)に示す係数kで補正した後の電流が図21(c)に示されている。ここでは、駆動負荷に応じて変化する係数を乗算した関数に基づいて電流を通電制御する。これによって、図21(a)に示す駆動負荷に応じた推力を発生することができる。
このように、本発明の第1の実施形態では、可動部の可動量を大きくした際においても、振れ補正装置の径の増加を抑制することができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態による振れ補正装置の一例について説明する。なお、第2の実施形態による振れ補正装置の構成は図1に示す振れ補正装置と一部を除いて同様である。
図22は、本発明の第2の実施形態による振れ補正装置の構造の一例を示す図である。そして、図22(a)は正面図であり、図22(b)は断面図である。なお、図22において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
第2の実施形態による振れ補正装置は、図1に示す振れ補正装置100において、ピッチ検出部(ピッチ検出素子)151pおよびヨー検出部(ヨー検出素子)151yが備えられていない。つまり、検出部150有していない。このように、第2の実施形態による振れ補正装置においては、検出部150が備えられておらず、目標位置と検出位置との差分を算出しない。つまり、ここでは、図15に関連して説明した係数kに関して差分+の場合の制御および差分−の場合の制御が行われない。よって、第2の実施形態においては、振れ補正装置の応答性を考慮して、目標位置を時間に応じて順次変化させて、当該目標位置に応じた電流をコイルに通電する。
このように、目標位置に応じてコイルに通電する電流を制御するようにしたので、目標位置に対する追従性は低下するものの、検出部150および当該検出部150と基板171とを繋ぐ配線が不要となる。このため、第2の実施形態においては、振れ補正装置が省スペースとなって、その構造および制御を単純化することができる。
なお、第2の実施形態における振れ補正装置は、検出部150を備えない点を除いて図5〜11で説明した構造であってもよい。
このように、本発明の第2の実施形態では、検出部が備えられていないので、可動部の可動量を大きくした際においても、振れ補正装置の径の増加を抑制することができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態による振れ補正装置の一例について説明する。なお、第3の実施形態による振れ補正装置の構成は図1および図2に示す振れ補正装置と同様である。
図23は、本発明の第3の実施形態による振れ補正装置による補正制御を説明するための図である。そして、図23(a)は可動部の移動量と電流との関係を示す図であり、図23(b)は可動部の移動量と推力との関係を示す図である。
図23(a)において、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)は、可動部142が可動範囲の中心近傍に位置する場合においては、それぞれ次の式(3)および式(4)で表される。
a(x)=−Vx+W (3)
b(x)=+Vx+W (4)
また、可動部142が可動範囲において第1駆動部180p側の端近傍に位置する場合には、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はそれぞれ次の式(5)および式(6)で表される。
a(x)=2W (5)
b(x)=0 (6)
さらに、可動部142が可動範囲において第2駆動部181p側の端近傍に位置する場合には、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はそれぞれ次の式(7)および式(8)で表される。
a(x)=0 (7)
b(x)=2W (8)
但し、VおよびWはそれぞれ設計によって定まる設計値である。
式(3)〜式(8)によって、第1の関数a(x)と第2の関数b(x)の間には、その和が一定値(2W)となる関係が成立する。このように、和が一定値であって、可動範囲の端近傍において一方の関数が0となり、可動範囲の中心近傍で変化する2つの関数を第1の関数および第2の関数とする。
上記の第1の関数および第2の関数を用いると、図23(b)に示すように、可動部142が可動範囲の中心近傍に位置する場合においてその推力が低下する。一方、可動範囲の中心近傍においては、引っ張りばね145aによるばね反力が小さいので、推力が小さい場合であっても可動部1042を駆動することができる。さらに、第1の関数と第2の関数との和が一定であるので、第1コイル146pと第2コイル148pに通電される電流の総和を一定にすることができる。
加えて、可動範囲の端近傍で一方の関数が0となるので、図12(c)で説明したように推力に対して面外力が大きくなる場合には、コイルに通電する電流通電を0にすることによって面外力の発生を抑えることができる。なお、ここでは、第1の関数および第2の関数を折れ線の単純な関数としたが、和が一定で可動範囲の中心近傍で大小関係が変化する二つの関数であれば、同様にして適用することができる。また、第3の実施形態による振れ補正装置の構成は、図5〜11で説明した構成であってもよい。さらには、第3の実施形態による振れ補正装置は第2の実施形態と同様にオープン制御であってもよい。
このように、本発明の第3の実施形態では、可動部の可動量を大きくした際においても、振れ補正装置の径の増加を抑制することができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態による振れ補正装置の一例について説明する。なお、第4の実施形態による振れ補正装置の構成は図1に示す振れ補正装置と同様である。
図24は、本発明の第4の実施形態による振れ補正装置の構造の一例を示す図である。そして、図24(a)は正面図であり、図24(b)は断面図である。なお、図24において、図2に示す振れ補正装置と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
図24において、第2コイル148pは、固定部143に保持されており、光軸Oa方向から見た場合に楕円状に巻回された導線からなる巻き線コイルである。第2のコイル148pは第1コイル146pとその長手方向が平行となるように配置され、かつマグネット147pと第2コイル148pの間に第1コイル1146pが位置するように配置される。楕円筒の厚み方向の面148paは、マグネットの面147paに対向している。つまり、第1コイル146pと第2コイル148pとがマグネット147pの同一面に対向している。
図25は、本発明の第4の実施形態による振れ補正装置で行われる可動部の制御を説明するための図である。そして、図25(a)は第1の関数および第2の関数の一例を示す図であり、図25(b)はマグネットのコイルの配置を示す図である。また、図25(c)は単位電流当たりの推力である推力定数を示す図であり、図25(d)は可動部に生じる推力の一例を示す図である。
いま、図25(b)に示すように、マグネットの着磁境界面と直交する方向の長さをw、マグネットのコイルに対するずれ量をdとする。この場合には、後述するようにして、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はそれぞれ次の式(9)および式(10)で表される。
a(x)=sin[{2π(x+d)}/2w] (9)
b(x)=m×sin[{2π(x−d)}/2w] (10)
ここで、mは1より大きい係数であり、第2コイル148pとマグネット147pとの間の距離によって定まる。このように、第1の関数a(x)と第2の関数b(x)との間に一定の関係が成立しない。
第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はともに三角関数であるので、ステッピングモーターのマイクロステップ駆動と同様に、可動部142を滑らかに駆動するため一定の関係が成立しない。さらに、第1の関数および第2の関数の位相がそれぞれずれ量dずれているので、可動部142がd移動した位置において第1の関数および第2の関数ともに最大値となる。この結果、コイルに通電する電流が最大となる。
この位置では、光軸から見た場合において、図25(b)に示すx=dのようにマグネットの着磁境界面とコイルの中心とが重なる。このマグネットとコイルとの位置関係は、図25(c)に示すように、単位電流当たりの推力である推力定数が最大となる位置関係であって、最も高効率で推力を発生させることができる。従って、第1の関数および第2の関数の位相をそれぞれずれ量dずらすことによって、一組のコイルとマグネットには最も高効率な位置で最大の推力が発生する。
加えて、第2コイル148pとマグネット147pとの間の距離が第1コイル146pとマグネット147pの間の距離よりも大きいので、第2コイル148pに作用する磁力が低減して、推力定数が図25(c)に示すように小さくなる。そこで、第2の関数b(x)の振幅を第1の関数a(x)の振幅よりも大きくして、第1コイルおよび第2コイルが同等の推力を出すことができるように通電を行う。
このように、コイルとマグネットのずれ量分位相をずらすとともに振幅が異なる三角関数を第1の関数および第2の関数とする。これによって、図25(d)に示すように滑らかでかつ高効率な推力を発生させることができる。
なお、図示の例では、第1および第2の関数を三角関数としたが、可動部の可動範囲の中心近傍において大小関係が変化する2つの関数で、振れ補正装置100の動作に適用できる関数であれば他の関数でもよい。また、ここでは、第2の関数の振幅を第1の関数の振幅のm倍としたが、第2コイル148pの推力の不足分を補う範囲であれば適宜変更することができる。
第4の実施形態においては、可動部142にコイルが保持され、固定部143にマグネットが保持されるムービングコイル方式を用いるようにしもよい。また、第4の実施形態による振れ補正装置の構成は、図5〜11で説明した構成であってもよい。さらには、第4の実施形態による振れ補正装置は第2の実施形態と同様にオープン制御であってもよい。
このようにして、本発明の第4の実施形態では、可動部の可動量を大きくした際においても、振れ補正装置の径の増加を抑制することができる。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態による振れ補正装置の一例について説明する。なお、第2の実施形態による振れ補正装置の構成は図1に示す振れ補正装置と同様である。
図26は、本発明の第4の実施形態による振れ補正装置の構造の一例を示す図である。そして、図26(a)は可動部が可動範囲において第1コイル側の端に達した際の一例の断面図であり、図26(b)は可動部が可動範囲において第1コイル側の端に達した際の他の例の断面図である。
図26(a)においては、可動部が可動範囲において第1コイル側の端に達した状態が示されている。図示の例では、形状が単純化された可動部862、固定部863、支持部864、転動ボール864a、引っ張りばね865、第1コイル866p、マグネット867p、および第2コイル868pが示されている。
可動部862が端に到達した状態においては、可動部862と固定部863とを付勢するように配置された引っ張りばね865の伸び量は大きくなって、ばね反力が大きい。ばね反力の移動方向の成分は、コイルとマグネットとによって発生する推力と逆向きである。このため、可動部862を目標位置へ到達させるためには、コイルとマグネットとによって発生する推力を増加させる必要がある。
推力を増加させるため、コイルに通電する電流を増加させると、面外力も増加する。可動部862が端に到達した状態では、電流の増加、そして、コイルの中心とマグネットの着磁境界面とが遠いことに起因して、第1コイル866pおよび第2コイル868pの各々によって大きな面外力N1およびN2が発生する。ここで、第1コイル866pおよび第2コイル868pに発生する面外力N1およびN2は同一の向きである。
加えて、振れ補正装置の径を小さくするため、転動ボール864を光軸Oaの近くに配置する。第1コイル866pおよび第2コイル868pにおいて同一の向きに推力が発生するように電流を通電すると、面外力N1およびN2によって転動ボール864を回転中心とする大きなモーメントM1が可動部862に発生する。その結果、モーメントM1によって、支持部864において可動部862又は固定部863と転動ボール864aとが当接しない。つまり、両者が離れてしまい、可動部側又は固定部側の接触力Tが0になってしまう。この場合には、転動ボール864aが浮いて可動部862の光軸方向の位置がずれてしまうというボール浮きが発生する恐れがある。上述のように、図示の構成では面外力によりボール浮きが発生し易い。
図26(b)には、可動部1242が可動範囲において第1コイル1246p側の端に達した状態が示されている。ここでは、形状が単純化された可動部1262、固定部1263、支持部1264、転動ボール1264a、引っ張りばね1265、第1コイル1266p、マグネット1267p、および第2コイル1268pが示されている。
図26(b)においては、図26(a)と比較すると、第2コイル1268pへの通電を0にしている点が異なっている。コイルの中心とマグネットの着磁境界面とが遠いことに起因して、第2コイル1268pによって発生する力においては、推力の割合が小さく、面外力の割合が大きい。このため、第2コイル1268pへの通電を0にすることによって、推力の低下を抑えつつ面外力を大きく低減することができる。その結果、回転モーメントが低減してボール浮きを抑制することができる。
第2コイル1268pへの通電を0にすることによって、推力が低減して可動部1242が動かなくなった場合には、第1コイル1266pへ通電する電流を増加することによって推力を補う。これによって、可動部1242を駆動することができる。この際、第1コイル1266pへ通電する電流を増加しても、第1コイル1266pおよび第2コイル1268pの双方に通電する場合よりも面外力の和は小さくなる。つまり、コイルの中心とマグネットの着磁境界面とが近いことによって、第1コイル1266pによって発生する力においては推力の割合が大きく、面外力の割合が小さいため、面外力の和は小さくなる。
このように、支持部1264において、可動部1262側又は固定部1263側の接触力Tが常に正になるように、第1コイル1266pおよび第2コイル1268pに通電する電流を設定する。
上述の説明と異なるボール浮き対策として、例えば、引っ張りばねおよび転動ボールを光学素子の中心Oから遠ざけて配置する構成がある。当該構成においては、振れ補正装置の径が増加してしまう。よって、ボール浮きが発生し易い構成の場合には、振れ補正装置の径方向の拡大を抑制するため、上述のボール浮き対策を行うことが望ましい。
図27は、本発明の第5の実施形態による振れ補正装置で行われる可動部の制御を説明するための図である。そして、図27(a)は第1の関数および第2の関数の一例を示す図であり、図27(b)はマグネットのコイルの配置を示す図である。また、図27(c)は単位電流当たりの推力である推力定数を示す図であり、図27(d)は可動部に生じる推力の一例を示す図である。
いま、図27(b)に示すように、マグネットの着磁境界面と直交する方向の長さをw、マグネットのコイルに対するずれ量をdとする。この場合には、後述するようにして、第1の関数a(x)および第2の関数b(x)はそれぞれ次の式(11)および式(12)で表される。
a(x)=g×sin[{2π(x+d)}/2w] (11)
b(x)=h×sin[{2π(x−d)}/2w] (12)
ここで、gは可動部1242が第2コイル1248p側の端近傍に位置する場合に0となって、他の範囲に位置する場合に1となる係数である。また、hは可動部1242が第1コイル1246p側の端近傍に位置する場合に0となって、他の範囲に位置する場合に1となる係数である。よって、第1の関数a(x)と第2の関数b(x)との間に一定の関係が成立しない。
前述のように、可動部1242が第1コイル1246p側の端近傍に位置する場合には、係数gは1となり、係数hは0となる。この場合には、第1コイル1246pに電流を通電し、第2コイル1248pには電流を通電しない。よって、前述のようにボール浮きの発生を抑制することができる。
一方、可動部1242が第2コイル1248側の端近傍に位置する場合には、係数gは0となり、係数hは1となる。この場合には、第1コイル1246pには電流を通電せず、第2コイル1248pには電流を通電する。よって、同様にボール浮きの発生を抑制することができる。
なお、係数gおよびhは、ボール浮きが発生しない範囲であればよく、各端近傍において0でない1未満の係数としてもよく、その他の範囲で1ではない1より大きい係数としてもよい。
なお、図示の例では、第1および第2の関数を三角関数としたが、可動部の可動範囲の中心近傍において大小関係が変化する2つの関数で、振れ補正装置100の動作に適用できる関数であれば他の関数でもよい。また、第5の実施形態による振れ補正装置の構成は、図5〜11で説明した構成であってもよい。さらには、第5の実施形態による振れ補正装置は第2の実施形態と同様にオープン制御であってもよい。
このようにして、本発明の第5の実施形態では、可動部の可動量を大きくした際においても、振れ補正装置の径の増加を抑制することができる。さらに、可動部に作用するモーメントを抑えて、ボール浮きの発生を抑制することができる。
上述の説明から明らかなように、図1に示す例では、駆動部130および補正部140が駆動手段として機能し、制御部160および比較部110が制御手段として機能する。
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を駆動装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、当該制御プログラムを駆動装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給する。そして、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。