次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に従う、車両およびその駐車支援システムの全体的な構成を示す図である。
車両Vは、操舵輪(ステアリングホイール)1、ステアリングシャフト2、ステアリングシャフト2を回転駆動する電動モータを有するステアリングアクチュエータ3、ステアリングシャフト2の回転角度(操舵角)を検出する舵角センサ4、および電子制御ユニット(ECUと呼ぶ)5を備える。ECU5は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである。
ECU5には、ブレーキを作動させるブレーキアクチュエータ9、自動変速機のシフトレバーを変更するシフトアクチュエータ10が接続されている。また、自動変速機のシフトレバー位置を検出するシフト位置センサ6が設けられており、該センサの検出信号はECU5に供給される。左右の後輪の近傍には、左車輪速を検出する左車輪速センサ7および右車輪速を検出する右車輪速センサ8が設けられており、これらの車輪が所定角度回転するたびに1つのパルス(以下、車輪速パルスと呼ぶ)を出力する。ECU5は、受け取った車輪速パルスに基づいて、それぞれの車輪の回転距離を検出すると共に、車輪の回転方向(前進または後退)を検出することができる。
さらに、車両Vの前部中央および後部中央には、それぞれ、車両の前方および後方の画像を取得するカメラ11Fおよび11Rが設けられている。車両の前方の左右には、車両の前方右側の領域に存在する物体までの距離を計測可能なソナー13Rおよび車両の前方左側の領域に存在する物体までの距離を計測可能な13Lが設けられている。カメラ11F、11Rとソナー13R、13Lからの信号は、ECU5に供給される。
車両Vには、運転者が視認可能なように表示装置15が設けられており、ECU5は、カメラ11F,11Rによって取得された画像を表示装置15上に表示することができる。また、ECU5は、表示装置15上の表示を介して乗員に報知を行うことができる。さらに、表示装置15の表示画面は、タッチパネルを構成しており、乗員からの入力データをECU5に供給することができる。車両Vには、スピーカ16が設けられており、ECU5は、スピーカ16を介して乗員に音または音声による報知を行うことができる。
ECU5は、上記のセンサ、カメラおよびソナーから供給される信号に基づいて、車両の周囲の状況を認識し、操舵アクチュエータ3を介して操舵輪1の制御を行うと共に、シフトアクチュエータ10を介した車両の前進および後退の切り換え制御およびブレーキアクチュエータ9を介した車両の停止制御を行う。ECU5は、これらの制御を介して、車両を自動操舵によって所望の駐車スペースに駐車させる自動駐車支援制御を実現する。
図2は、自動駐車支援制御を行うECU5の機能ブロック図を示す。各ブロックの機能は、ECU5のCPUにより実現されることができる。
幅検出部31は、ソナー13R,13Lからの信号に基づいて、駐車スペースの幅および該駐車スペースに面している道路の幅を検出する。ここで図3を参照すると、駐車スペースPに向けて車両Vが道路R上を走行している様子が示されている。領域101Lは、ソナー13Lの探知領域を示し、領域101Rはソナー13Rの探知領域を示す。
ソナー13Lにより、車両Vの左側に存在する物体、図の例では他の車両までの距離DLが計測され、ソナー13Rより、車両Vの右側に存在する物体、図の例では壁までの距離DRが計測される。ECU5は、これらの計測距離DLおよびDRをソナー13Lおよび13Rから受け取り、車両Vの車幅をWvを用いて、DL+DR+Wvを計算することにより、道路の幅RoadWを検出することができる。
また、空きの駐車スペースを検出することにより、駐車スペースPの幅PslotLを検出することができる。空きの駐車スペースは、任意の適切な手法で検出されることができる。たとえば、ソナー13Lにより計測される距離は、車両が駐車スペースPに隣接する他の車両の前を通過するときには所定値以下となり、駐車スペースPの前を通過するときには所定値以上となる。したがって、ソナー13Lの計測距離が所定値以上である間の車両Vの移動距離(これは、周知のごとく、車輪速センサ7、8の検出値から算出されることができる)を算出し、これを、駐車スペースPの幅PslotLとして用いることができる。
代替的に、カメラ11Fによって撮像された画像に基づいて空きの駐車スペースを検出するようにしてもよい。任意の適切な手法を用いることができ、たとえば、駐車スペースPの両側に隣接する車両を画像処理によって認識し、両車両の間の距離を算出することにより、駐車スペースPの幅PslotLを算出することができる。また、駐車スペースが図3に示すように白線で区切られている場合には、白線を検出し、白線間の領域に他の車両等が検出されなければ、空きの駐車スペースと判断し、該白線間の距離を駐車スペースPの幅PslotLとすることができる。なお、画像処理は、撮像された画像に基づいて変換された俯瞰画像に対して行うようにしてもよい。
こうして検出された駐車スペースPに対し、図4(a)に示すような座標系が設定される。この実施例では、駐車スペースPの道路Rに接する部分(入口)の中央を原点Oとし、該入口に対して垂直方向にy軸を取り、該入口に沿ってx軸を取る。x軸に対する傾きは、θで表される。θは、時計方向において負の値を取り、反時計方向において正の値を取る。また、図4(b)の黒丸で示すように、車両Vの位置は、後輪の中点(車軸上にある)の位置によって表される(代替的に、たとえば車両の重心点の位置を用いてもよい)。駐車スペースPが検出されたことに応じて、車両Vの位置は、車輪速センサ7および8からの車輪速パルスに従って追跡され、(Px,Py)というように、図4(a)の座標系に基づくxおよびy座標値で表されると共に、車両の向きが、x軸に対する車軸の傾きθによって表される。
図2に戻り、駐車可否判断部33は、検出された駐車スペースPの幅PSlotL、および検出された道路Rの幅RoadWに基づいて、ECU5のメモリに予め記憶されている駐車経路テーブル41を参照し、該テーブルから、駐車スペースPに駐車可能な駐車経路の候補を抽出する。
ここで、駐車経路テーブル41について説明する。この実施形態では、駐車経路は、1回の切り返しのみで駐車スペースに駐車する経路と、複数の切り返しで駐車スペースに駐車する経路とを含んでおり、後者はさらに、2種類に分類される。
図5は、駐車スペースPに対して車両先頭部を旋回させて停止し、1回の切り返しのみで駐車スペースPに駐車する経路を実線で示しており、これを、駐車モード0と呼ぶ。この駐車経路は、右方向へ旋回しながら前進する経路121と、左方向に旋回しながら後退する経路123とからなる。したがって、該駐車経路は、右方向への転舵を開始する位置である転舵開始点(x0,y0)、該右方向への転舵を終了する位置である転舵完了点(x1,y1)、経路121に示すように右方向に旋回しつつ前進するときの旋回円の中心点(cx1,cy1)、該旋回の半径Rr0、前進から後退に切り返す位置である第1の切り返し点(x2,y2)、経路123に示すように左方向に旋回しつつ後退するときの旋回円の中心点(cx2,cy2)、および該旋回の半径Rrによって定義される。
これらの点の座標値および半径値は、駐車スペースPの幅および道路Rの幅に基づいて予め決められることができる。したがって、図の下の表に示すように、駐車経路テーブル41には、駐車モード0について、駐車スペースの幅および道路の幅の組み合わせ毎に(該テーブルに設定された駐車スペースの幅はTblPslotで表され、道路の幅はTblRoadWで表される)、これらの点の座標値および半径値が、それぞれシミュレーション等によって予め決定されて記憶されている。なお、当該表に示されるように、駐車スペースの幅および道路の幅が同じ場合でも、駐車するための経路は1つとは限らず、可能な複数の駐車経路が規定されうる。これらの座標値および半径値は、図4(a)の座標系に従っており、この点は、以下同様である。
図6は、駐車スペースに対して車両先頭部を旋回させて停止し、3回の切り返しで駐車スペースPに駐車する経路を実線で示しており、これを、駐車モード1と呼ぶ。この駐車経路は、右方向へ旋回しながら前進する経路131と、左方向に旋回しながら後退する経路133と、右方向に旋回しながら前進する経路135と、左方向に旋回しながら後退する経路137とからなる。したがって、該駐車経路は、右方向への転舵を開始する位置である転舵開始点(x0,y0)、該右方向への転舵を終了する位置である転舵完了点(x1,y1)、経路131に示すように右方向に旋回しつつ前進するときの旋回円の中心点(cx1,cy1)、該旋回円の半径Rr0、前進から後退に切り返す位置である第1の切り返し点(x2,y2)、経路133に示すように左方向に旋回しつつ後退するときの旋回円の中心点(cx2,cy2)、該旋回円の半径Rr、後退から前進に切り返す位置である第2の切り返し点(x3,y3)、経路135に示すように右方向に旋回しつつ前進するときの旋回円の中心点(cx3,cy3)、該旋回円の半径Rr、前進から後退に切り返す位置である第3の切り返し点(x4,y4)、経路137に示すように左方向に旋回しつつ後退するときの旋回円の中心点(cx4,cy4)、該旋回円の半径Rrによって定義される。
これらの点の座標値および半径値は、駐車スペースの幅および道路の幅に基づいて予め決められることができる。したがって、図の下の表に示すように、駐車経路テーブル41には、駐車モード1について、駐車スペースの幅および道路の幅の組み合わせ毎に、これらの点の座標値および半径値が、それぞれシミュレーション等によって予め決定されて記憶されている。
図7は、駐車スペースの入口に対して略平行な状態で車両を停止させ、2回の切り返しで駐車スペースPに駐車する経路を実線で示しており、これを、駐車モード2と呼ぶ。この駐車経路は、左方向に旋回しながら後退する経路141と、右方向に旋回しながら前進する経路143と、左方向に旋回しながら後退する経路145とからなる。したがって、該駐車経路は、左方向への転舵を開始する位置である転舵開始点(x0,y0)、該左方向への転舵を終了する位置である転舵完了点(x1,y1)、経路141に示すように左方向に旋回しつつ後退するときの旋回円の中心点(cx1,cy1)、該旋回円の半径Rr、後退から前進に切り返す位置である第1の切り返し点(x2,y2)、経路143に示すように右方向に旋回しつつ前進するときの旋回円の中心点(cx2,cy2)、該旋回円の半径Rr、前進から後退に切り返す位置である第2の切り返し点(x3,y3)、経路145に示すように左方向に旋回しつつ後退するときの旋回円の中心点(cx3,cy3)、該旋回円の半径Rrによって定義される。
これらの点の座標値および半径値は、駐車スペースの幅および道路の幅に基づいて予め決められることができる。したがって、図の下の表に示すように、駐車経路テーブル41には、駐車モード2について、駐車スペースの幅および道路の幅の組み合わせ毎に、これらの点の座標値および半径値が、それぞれシミュレーション等によって予め決定されて記憶されている。
図2に戻り、駐車可否判断部33は、上記のような駐車テーブル41を参照し、幅検出部31によって検出された駐車スペースの幅PSlotLおよび道路の幅RoadWと、該テーブル41の各駐車経路に規定された駐車スペースの幅TblPslotおよび道路の幅TblRoadWとを比較し、該比較結果に基づいて、検出された駐車スペースの幅PSlotLおよび道路の幅RoadWに適合した駐車経路を、候補として抽出する。候補が抽出されたならば駐車可能と判断し、候補が抽出されなければ駐車不可能と判断する。
駐車可能と判断されたならば、駐車経路選択決定部35は、車両Vが駐車のために停止した初期位置(Px0,Py0)に最も適した駐車経路を、これらの候補の中から選択する。
具体的に言えば、一実施形態では、車両Vの初期位置のy座標値Py0に最も近い転舵開始点のy座標値y0を有する駐車経路を選択する。これにより、車両の駐車経路への誘導を、より的確かつ容易に実現することができる。
また、一実施形態では、少なくとも駐車モード0および1について、車両Vの初期位置のx座標値Px0が、転舵完了点のx座標値x1よりも進行方向上手前にある駐車経路を選択する。この根拠について説明すると、図5〜図6を参照して上記説明した転舵開始点(x0,y0)および転舵完了点(x1,y1)の間の経路は、第1の切り返し点(x2,y2)に向かって車両を誘導するための余裕経路として設定されている。たとえば、車両Vのx座標値Px0が、転舵開始点のx座標値x0よりも小さい場合には(Px0<x0)、車両Vを、前進幅寄せ制御(後述される)によって転舵開始点のx座標値x0に誘導し、その後の(cx1,cy1)を中心とした半径Rr0の旋回円に沿った旋回制御によって、車両Vを徐々に転舵して第1の切り返し点に誘導することができる。車両Vのx座標値Px0が、転舵開始点のx座標値x0と転舵完了点のx座標値x1との間にあるときでも(x0≦Px0<x1)、(cx1,cy1)を中心とした半径Rr0の旋回円に沿った旋回制御により、車両Vを、上記よりも速く転舵させることで、第1の切り返し点に誘導することができる。いずれの場合も、旋回制御を開始するときのy方向における車両Vの駐車経路に対する“ずれ”は、該旋回制御において修正されることができる。
このように、転舵完了点のx座標値x1は、車両Vが、y方向において、駐車経路から所定距離(これは、その駐車経路の道路幅に応じて予め決められる)だけ離れた状態で旋回制御を開始しても、第1の切り返し点に車両Vを誘導可能な上限のx座標値を示すよう設定されている。したがって、この実施形態では、少なくとも駐車モード0および1については、車両Vの初期位置のx座標値Px0が転舵完了点のx座標値x1を超えていないことを条件に、駐車経路を選択する。こうすることにより、車両の進行方向を維持したまま、第1の切り返し点に車両を誘導することができる。
他方、駐車モード2について、図7の転舵開始点(x0,y0)および転舵完了点(x1,y1)の間の経路が、第1の切り返し点(x2,y2)に向かって車両を誘導するための余裕経路として設定されている点は、駐車モード0および1と同様である。転舵完了点のx座標値x1は、車両Vが、y方向において、駐車経路から所定距離(これは、その駐車経路の道路幅に応じて予め決められる)だけ離れた状態で旋回制御を開始しても、第1の切り返し点に車両Vを誘導可能な下限のx座標値を示すよう、設定されている。
しかしながら、駐車モード0および1の駐車経路が、車両の前進から開始するのに対し(経路121および131を参照)、駐車モード2の駐車経路は、車両の後退から開始する(経路141を参照)。そのため、駐車モード2の場合、車両Vの初期位置のx座標値Px0が、転舵完了点のx座標値x1の手前にあるときには(Px0<x1)、駐車モード0および1と同様に、前進幅寄せ制御を行うことによって、転舵開始点のx座標値x0に車両を誘導することができる。Px0が転舵開始点のx座標値x0と転舵完了点のx座標値x1の間にあるときには(x1≦Px0<x0)、駐車モード0および1と同様に、旋回制御によって車両を第1の切り返し点に誘導することができる。Px0がx0以上のときには(Px0≧x0)、後退幅寄せ制御(後述される)を行うことによって、車両を転舵開始点のx座標値x0に誘導することができる。すなわち、駐車モード2の場合には、Px0がx1より小さい場合のみならず大きい場合でも、駐車経路に車両を誘導することができるので、駐車モード2について抽出された駐車経路の候補については、上記のPx0とx1の比較処理に基づく経路選択を行わなくてもよい。
駐車経路選択決定部35は、こうして選択された駐車経路が、道路R上のどの領域を使用するかについての表示を乗員に対して行う。具体的には、駐車モード0または1についての駐車経路が選択された場合、駐車経路選択決定部35は、前方カメラ11Fによって撮像された車両前方の画像に、選択された駐車経路が通過する道路領域を重畳表示して、表示装置15上に表示する。乗員は、該表示を視認することにより、駐車する際に車両が通過する経路上に障害物が存在するかどうかについて確認することができる。
図8は、このような表示の一例を示し、車両Vのカメラ11Fによって撮像された画像上に、領域151が重畳表示されている。該領域151が、駐車経路が通過する道路領域を示す。
駐車モード0の場合には、図5に示すように、車両前方の道路Rにおいて、車両の初期位置(Px0,Py0)から、第1の切り返し点(x2,y2)までの領域を使用する。また、車両が第1の切り返し点に達したとき、車両の先頭は、x座標値x2に、車両の車軸方向の長さ(より正確には、車両の位置として用いられる一対の後輪の中点から車両の前端部までの長さ)を加算した所まで達する。したがって、領域151の距離方向の境界151dは、第1の切り返し点のx座標値x2に車両の車軸方向の長さを加算した値に対応するよう算出され、領域151の左右の境界151hは、該駐車経路について規定された道路幅TblRoadWに対応するよう算出される。駐車モード1についても、上記駐車モード0と同様に、第1の切り返し点(x2,y2)までの領域が領域151として重畳表示される。
さらに、駐車経路選択決定部35は、「領域内に障害物はありますか?」という文字表示と共に、乗員が選択することのできる2つの選択ボタン155,157を重畳表示する。○印で表されるOKボタン155は、乗員が、領域151に障害物が存在しない場合に選択するよう設けられており、該OKボタン155が選択されたことに応じて、駐車経路選択決定部35は、該選択されて表示された駐車経路を、自動操舵に用いる駐車経路として決定する。×印で表されるNGボタン157は、乗員が、たとえば領域151に障害物が存在する場合に選択するよう設けられており、該NGボタン157が選択されたことに応じて、駐車経路選択決定部35は、該選択されて表示された駐車経路を用いた自動操舵の実行を中止する。
駐車モード2についての駐車経路が選択された場合も、駐車経路選択決定部35は図8のような表示を行うが、この場合には、後方カメラ11Rによって撮像された車両後方の画像に、選択された駐車経路が通過する道路領域を重畳表示して、表示装置15上に表示する。ここで、領域151の距離方向の境界151dは、第1の切り返し点のx座標値x2(図7参照)に対応するよう算出され(より正確には、車両の位置(一対の後輪の中点)から車両の後端部までの距離を加算してもよい)、領域151の左右の境界151hは、道路幅TblRoadWに対応するよう算出される。文字表示と2つの選択ボタンが重畳表示される点は、上記と同様である。
なお、駐車経路の選択および決定は、駐車モード0、1および2の優先順位に従って行われるのが好ましい。少なくとも、駐車モード0の駐車経路を、他の駐車モード1および2よりも優先して調べるのが好ましい。駐車モード0の駐車経路は、最も単純な経路であるので、低負荷かつ効率的に車両を誘導することができるからである。
図2に戻り、駐車制御部37は、駐車経路選択決定部35によって決定された駐車経路を目標駐車経路とし、車両Vを該目標経路に沿って誘導するよう車両の操舵輪(ステアリング)1を、ステアリングアクチュエータ3を介して制御する。
このように、各駐車モードについて、駐車スペースの幅および道路幅に適した駐車経路が予め駐車経路テーブル41に記憶されるので、目標となる駐車経路をリアルタイムに算出する必要はない。結果として、自動操舵を行う際の演算負荷を低減することができると共に、リアルタイム演算に必要なレーダ等を必要としないので、コスト増を抑制することができる。
また、駐車に際して切り返しを必要とするような駐車スペースについても、自動操舵によって駐車させることができる。すなわち、駐車スペースPに面している道路Rの幅に余裕がある場合には、駐車モード0の駐車経路に従って駐車させることができ、1回の切り返しのみで駐車が可能である。他方、該道路Rの幅に余裕が比較的少ない場合でも、切り返しを複数回行う駐車モード1または2に従って駐車させることができる。また、駐車スペースPに対して車両Vが行きすぎてしまった場合でも、駐車モード2に従って駐車させることができる。
次に、図9〜図21を参照して、図2に示す自動通車支援制御を行うECU5のCPUによって実行されるプロセスを具体的に説明する。
図9は、自動駐車支援プロセスのメインフローを示す。この実施例では、車両に設けられた自動駐車開始用の所定のスイッチが乗員によって選択されたことに応じて、該プロセスは開始する。
ステップS1において、運転者に対し、駐車スペースの方に車両を寄せながら、低速で(好ましくは、時速10キロメートル以下)で前進するよう、音声および(または)表示を介して通知する。ここで、駐車したい方向へウィンカーを出すことを音声および(または)表示を介して促してもよい。
運転者が上記のような車両の走行を行っている間、ステップS2において、前述したように、ソナー13Rおよび13Lによって計測した距離信号に基づいて、空いている駐車スペースPを検出すると共に、該駐車スペースPの幅PSlotLおよび道路Rの幅RoadWの検出を試みる。ステップS3において、これらの幅データが取得されたどうかを判断し、得られなければステップS1に戻る。これらの幅データが取得されたならば、ステップS4に進む。
ステップS4において、駐車可否判断プロセス(図10)を実行し、検出された駐車スペースPの幅PslotLおよび道路Rの幅RoadWに基づいて駐車経路テーブル41を参照し、駐車経路の候補を抽出し、駐車可能かどうかの判断を行う。ステップS5において、該判断の結果が駐車可能ならば、ステップS6に進み、駐車可能でなければ、ステップS1に戻る。ステップS1に戻ることにより、次の空き駐車スペースについて駐車可否判断を行うことができる。
ステップS6において、音声および(または)表示を介し、運転者に、車両を停止するよう指示する。ステップS7において、車両が停止したかどうかを判断する。停止しなければステップS6に戻る。車両が停止したならば、該停止位置は、初期位置(Px0,Py0)としてメモリに記憶される。ステップS8において駐車経路選択決定プロセス(図11,図12)を実行し、駐車経路候補の中から、車両の停止位置(Px0,Py0)に基づいて駐車経路を選択すると共に、乗員からの入力に基づいて該選択された駐車経路を目標駐車経路として用いるかどうかを決定する。
ステップS9において、駐車制御プロセス(図13〜図14)を実行し、目標駐車経路に従って車両の自動操舵を行い、車両を駐車スペースに駐車させる。
図10は、図9のステップS4で実行される駐車可否判断プロセスを示す。ステップS101において、nParkは駐車モードを表しており、前述したように、値0、1および2のいずれかを取る。ステップS101は、各駐車モードについて、ステップS102〜S106の処理が繰り返されることを示している。
ステップS102において、図9のステップS2で検出された駐車スペースPの幅PslotLと、駐車経路テーブル41の各駐車経路について規定された駐車スペースの幅TblPslotとを比較し、TblPslot≦PslotL<TblPslot+0.1を満たす駐車経路を、候補として抽出する。ここで、単位はメートル(m)であり、0.1メートルは、余裕度として設定された値の一例を示す。
ステップS103において、ステップS2で検出された道路の幅RoadWと、ステップS102において候補として抽出された駐車経路の道路の幅TblRoadWとを比較し、RoadW≧TblRoadWを満たす駐車経路を、ステップS102で抽出された駐車経路候補の中からさらに抽出する。TblRoadWは、その駐車経路に必要な最低限の道路幅を示している。道路が狭いほど駐車が困難になるので、検出された道路幅RoadW以下の道路幅を前提とした駐車経路を選択する。これにより、確実に駐車可能な経路を選択することができる。
こうして、たとえば、検出された駐車スペースの幅が2.5mであり、検出された道路の幅が4.6mであれば、2.5m以上かつ2.6mより小さい駐車スペース幅を持ち、かつ、4.6m以下の道路幅を持つ駐車経路が、最終的に候補として抽出される。なお、ステップS102とS103の順番は、入れ替えてもよい。
ステップS104において、ステップS102およびS103の結果、最終的に候補として抽出されたものがあるかどうかを判断する。各駐車モード(nPark)をエントリとして有する配列データPOK[]が予め設定されており、駐車モード0について候補があれば、ステップS105において、POK[0]に値1が設定される。駐車モードnPark=0について候補がなければ、ステップS106において、POK[0]にゼロが設定される。他の駐車モードについても同様である。
ステップS107において、配列データPOK[]のすべてのエントリの値を合計する。いずれかのエントリに値1が設定されていれば、すなわちいずれかの駐車モードについて候補が存在していれば、該合計した値はゼロより大きくなるはずである。この場合、候補として抽出された駐車経路を用いて駐車することができるので、ステップS108において駐車可能と判断する。該合計した値がゼロであれば、どの駐車モードについても候補が抽出されなかったことを示すので、ステップS109において駐車不可能と判断する。候補として抽出された1または複数の駐車経路は、ECU5のメモリに記憶され、後続の処理で使用される。
図11および図12は、図9のステップS8で実行される、駐車経路選択決定プロセスのフローを示す。
ステップS121は、図10のステップS101と同様であり、各駐車モードのそれぞれについて、ステップS122〜S126を繰り返すことを示す。
ステップS122において、配列データPOK[nPark]について、1が設定されているかどうかを判断する。1が設定されていなければ、nParkによって示される当該駐車モードについては候補となる駐車経路が抽出されていないことを示すので、ステップS131に進む。1が設定されていれば、当該駐車モードについては候補となる駐車経路が抽出されていることを示すので、ステップS123に進む。ステップS123およびS124は、前述した、駐車経路を選択する条件を規定したステップである。
ステップS123において、上記の候補として抽出された駐車経路から、図9のステップS6,S7で車両が停止したときの位置(Px0,Py0)のy座標値Py0の絶対値と、駐車経路の転舵開始点のy座標値y0とを加算した値が最小となる駐車経路を選択する。ここで、y0は、図5〜図7に示すように、負の値を取る。Py0の絶対値は、自車両の駐車スペースPの入口からの距離を表している。したがって、y方向において自車両に最も近い転舵開始点を有する駐車経路が選択されることとなる。こうして、車両を一番誘導しやすい駐車経路を選択することができる。
ステップS124において、車両の停止位置のx座標値Px0と、ステップS123で選択された駐車経路の転舵完了点のx座標値x1とを比較し、前者が、後者よりも小さいかどうかを判断する。Px0<x1が成立すること、および、駐車モード(nPark)が2であることの少なくとも一方が成立するかどうかを調べる。駐車モード0および1については、前述したように、車両の後方に位置する転舵完了点を有する駐車経路を選択しても、該駐車経路に車両を誘導することが困難なためである。したがって、駐車モード0および1については、Px0<x1が成立する場合に、ステップS124の判断をYesとする。こうして、車両の進行方向上に転舵完了点が存在する駐車経路が選択されるので、車両の進行方向を維持したまま、該駐車経路に車両を誘導することができる。
他方、駐車モード2については、前述したように、車両の後方に位置する転舵完了点を有する駐車経路を選択しても、駐車経路に車両を誘導することができる。したがって、nPark=2であれば、Px0<x1がたとえ成立しなくても(ここで、Px0とx1の比較処理自体を行わなくてもよい)、ステップS124の判断をYesとする。
ステップS124の判断がYesならば、ステップS125において、配列データPOK[nPark]に値1を設定する。ステップS124の判断がNoならば、ステップS126において、配列データPOK[nPark]にゼロを設定する。この時、ステップS123およびS124を満たすとして選択された駐車経路は、ECU5のメモリに記憶される。こうして、各駐車モードについて、車両から最も近い転舵開始点を有する駐車経路が選択されると共に、少なくとも駐車モード0および1については、車両の進行方向上に転舵完了点を有する駐車経路が選択されることとなる。
なお、ステップS124とS123の順番を入れ替え、ステップS124の条件を満たす駐車経路のうち、ステップS123の条件を満たす駐車経路を選択してもよい。または、ステップS123で選択した駐車経路について、ステップS124の条件が満たされなければ、|Py0|+y0が次に最小となる駐車経路を選択し、該選択した経路について、ステップS124の条件が満たされるかどうかを判断してもよい。こうして、ステップS124の条件を満たす駐車経路が見つかるまで、|Py0|+y0の昇順に、駐車経路を選択するようにしてもよい。
ステップS131(図12)に進み、配列データの駐車モード0のエントリPOK[0]の値が1かどうかを判断する。1であれば、駐車モード0の駐車経路が選択されていることを示すので、ステップS132に進み、PMODEにゼロを設定する。ステップS133において、図8に示されるような表示を表示装置15上に行う。すなわち、前述したように、該選択された駐車経路が使用する道路領域151の大きさを、該選択された駐車経路の第1の切り返し点のx座標x2および道路幅TblRoadWに基づいて算出し、カメラ11Fにより取得された車両前方の撮像画像に、該道路領域151と、該道路領域151上の障害物の確認を促す文字と、OKおよびNGを示す選択ボタン155,157とを重畳表示する。乗員は、この表示を介して、道路領域151に障害物が存在しないかどうかを確認し、存在しなければOKボタン155を選択し、そうでなければNGボタン157を選択する。
ステップS134において、乗員によってOKボタン155が選択されたかどうかを判断する。OKボタン155が選択されたならば、ステップS135において、その駐車経路を目標駐車経路として決定する。
ステップS131の判断がNoであれば、駐車モード0の駐車経路が選択されていないことを示すので、ステップS136に進む。また、ステップS134においてNGボタン157が選択されたならば、該選択された駐車経路にたとえば障害物が存在して、該駐車経路を用いることができないことを示すので、ステップS136に進む。
ステップS136において、配列データの駐車モード1のエントリPOK[1]の値が1かどうかを判断する。1であれば、駐車モード1の駐車経路が選択されていることを示すので、ステップS137に進み、PMODEに1を設定する。ステップS138に進み、ステップS133と同様に、該選択された駐車経路が使用する道路領域151の大きさを、該選択された駐車経路の第1の切り返し点のx座標x2および道路幅TblRoadWに基づいて算出し、カメラ11Fにより取得された車両前方の撮像画像に、該道路領域151と、該道路領域151上の障害物の確認を促す文字と、OKおよびNGを示す選択ボタン155,157とを重畳表示する。乗員は、この表示を介して、道路領域151に障害物が存在しないかどうかを確認し、存在しなければOKボタン155を選択し、そうでなければNGボタン157を選択する。
ステップS139において、乗員によってOKボタン155が選択されたかどうかを判断する。OKボタン155が選択されたならば、ステップS135において、その駐車経路を目標駐車経路として決定する。NGボタン157が選択されたならば、ステップS143において、駐車不可能であることを音声および(または)表示を介して乗員に報知し、自動駐車支援プロセスを中止する。
ステップS136の判断がNoであれば、駐車モード0および1については、選択された駐車経路が存在しないことを示す。ステップS140に進み、配列データの駐車モード2のエントリPOK[2]の値が1かどうかを判断する。1であれば、駐車モード2の駐車経路が選択されていることを示すので、ステップS141に進み、PMODEに2を設定する。ステップS138において、該選択された駐車経路が使用する道路領域151の大きさを、たとえば該選択された駐車経路の第1の切り返し点のx座標x2および道路幅TblRoadWに基づいて算出し、カメラ11Rにより取得された車両後方の撮像画像に、該道路領域151と、該道路領域151上の障害物の確認を促す文字と、OKおよびNGを示す選択ボタン155,157とを重畳表示する。乗員は、この表示を介して、道路領域151に障害物が存在しないかどうかを確認し、存在しなければOKボタン155を選択し、そうでなければNGボタン157を選択する。ステップS139以下の処理は、上で述べた通りである。
ステップS140の判断がNoであれば、駐車モード0,1,2のいずれにおいても、選択された駐車経路が存在しないことを示すので、ステップS143において、自動駐車支援プロセスを中止する。
なお、駐車モード0は、駐車モード1および2に比べて、使用する道路領域の幅が比較的広い。何らかの障害物の存在によって、駐車モード0の駐車経路を用いることはできないが、駐車モード1または2の駐車経路を用いることはできる、という場合が生じうる。したがって、この実施例では、駐車モード0の駐車経路を目標駐車経路として決定できなかった場合(ステップS134がNoの場合)には、駐車モード1または2の駐車経路の決定を試みている。この実施例では、駐車モード1および2は、使用する道路領域の幅がほぼ同じであるので、ステップS139の判断がNoの場合には、そのままステップS143に進むようにしているが、代替的に、ステップS139の判断がNoの場合にステップS140に進んでもよい。
図13および図14は、図9のステップS9で実行される駐車制御プロセスのフローを示す。このプロセスでは、駐車経路選択決定プロセスで決定された目標駐車経路に車両を載せて該経路に沿って誘導するよう、車両を自動操舵する。
ステップS151において、PMODEの値が2であるかどうかを調べる。PMODEの値が2であれば、目標駐車経路の駐車モードが駐車モード2であることを示し、ステップS152に進む。PMODEの値が0または1であれば、目標駐車経路の駐車モードが駐車モード0または1であることを示し、ステップS153に進む。
ステップS152について説明すると、前述したように、駐車モード2の場合、車両の初期位置のx座標値Px0の位置に応じて、車両を目標駐車経路に載せるための誘導が異なる。すなわち、該誘導には3パターンがあり、第1のパターンは、Px0が、転舵完了点のx座標値x1より手前にある場合(すなわちPx0<x1)であり、車両を前進させることによって転舵開始点に誘導させる。第2のパターンは、Px0が、転舵完了点のx座標値x1と転舵開始点のx座標値x0との間にある場合(すなわちx1≦Px0<x0)であり、車両を後退させつつ左に旋回させる旋回制御によって、車両を第1の切り返し点に誘導させる。第3のパターンは、Px0が、転舵開始点のx座標値以上の場合(すなわちPx0≧x0)であり、車両を後退させることによって転舵開始点に誘導させる。第1および第3のパターンの場合、車両が転舵開始点に誘導された後は、第2のパターンのように旋回制御によって車両を第1の切り返し点に誘導させる。
第1のパターンは、車両の目標駐車経路への誘導を前進から開始し、第2および第3のパターンは、車両の目標駐車経路への誘導を後退から開始する。この前進と後退の区別を、ステップS152において行っている。すなわち、Px0<x1であれば、車両の目標駐車経路への誘導を前進から開始するため、ステップS153に進む。Px0≧x1であれば、車両の目標駐車経路への誘導を後退から開始するため、ステップS165に進む。
ステップS153において、車両を、目標駐車経路について規定された転舵開始点に向けて誘導するため、y=y0のラインに車両を幅寄せする前進幅寄せ制御を行う。これについては、後述される。駐車モード2の上記第1のパターンの場合も、この前進幅寄せ制御は実施される。
ステップS154において、PMODEの値が2であるかどうかを調べる。前述したように、PMODEの値が2であれば、目標駐車経路が駐車モード2であることを示し、PMODEの値が0または1であれば、目方駐車経路が駐車モード0または1であることを示す。
後者の場合(ステップS154の判断がNo)、ステップS155に進み、車両の現在位置のx座標値Pxと、目標駐車経路の転舵開始点のx座標値x0とを比較し、x方向において車両が転舵開始点に到達しているか否かを判断する。ステップS155の判断がNoであれば、ステップS153に戻り、前進幅寄せ制御を継続する。こうして、y=y0に車両が幅寄せしている間に転舵開始点のx座標値x0に到達したならば、ステップS156に進む。なお、前述したように、車両の初期位置のx座標値Px0がx0とx1の間にある場合には、車両が転舵開始点に既に到達していることを示すので、ステップS155の判断はYesとなり、ステップS156に進む。ステップS156の前進右旋回制御を開始するときの、y方向における車両の目標駐車経路に対する“ずれ”は、車両を第1の切り返し点に誘導するまでの間に修正されることができる。
ステップS156およびS157は、駐車モード0または1の目標駐車経路について実行される。ステップS156では、旋回半径Rr0(m)で、右方向に旋回しつつ前進する前進右旋回制御を実行する。この制御により、駐車モード0では、経路121(図5)に沿って車両は誘導され、駐車モード1では、経路131(図6)に沿って車両は誘導される。
ステップS157において、車両の現在位置(Px,Py)と、目標駐車経路の第1の切り返し点(x2,y2)とを比較し、車両が第1の切り返し点に到達したかどうかを判断する。到達していなければ、ステップS156に戻り、前進右旋回制御を継続する。到達したならば、ステップS158に進み、ブレーキアクチュエータ9に、車両の停止要求を発行する。ブレーキアクチュエータ9によってブレーキが駆動され、車両は停止する。代替的に、ステップS158において、運転者に車両を停止するよう、音声および(または)表示を介して通知するようにしてもよく、この点は、以下も同様である。
車両が停止したならば、ステップS160に進み、旋回半径Rr(m)で、左方向に旋回しつつ後退する後退左旋回制御を開始する。ステップS161において、シフト位置センサ6によって検出されたシフト位置がR(後退)かどうかを判断し、そうでなければ、ステップS162において、シフトアクチュエータ10に、シフト位置をRにする要求を発行する。これにより、シフトアクチュエータ10によってシフト位置はRに変更される。シフト位置がRと判断されたならば、ステップS171(図14)に進む。代替的に、ステップS162において、シフト位置をRに変更するよう、運転者に音声および(または)表示を介して通知するようにしてもよく、この点は、以下も同様である。
他方、ステップS154の判断がYesであるとき、すなわち駐車モード2の場合には、ステップS159に進む。上で述べたように、前進幅寄せ制御によって車両の現在位置のx座標値Pxが、転舵開始点のx座標値x0と転舵完了点のx座標値x1の間(後退開始位置と呼ばれる)に入ったときには、旋回制御に切り換える必要が生じる。そのため、ステップS159において、該Pxが、x0とx1の間(後退開始位置)に入ったかどうかを判断する。この判断がNoならば、ステップS153に戻り、前進幅寄せ制御を継続する。この判断がYesならば、車両を停止すると共に(S158)、転舵を開始して後退左旋回制御を実行し(S160〜S162)、車両を第1の切り返し点に誘導する。ステップS160の後退左旋回制御を開始するときの、y方向における車両の目標駐車経路に対する“ずれ”は、車両を第1の切り返し点に誘導するまでの間に修正されることができる。
ステップS152に戻り、該ステップS152の判断がNoの場合には、前述したように、ステップS165に進む。ステップS165において、シフト位置センサ6によって検出されたシフト位置がR(後退)かどうかを判断し、そうでなければ、ステップS166において、シフトアクチュエータ10に、シフト位置をRにする要求を発行する。これにより、シフトアクチュエータ10によってシフト位置はRに変更される。シフト位置がRと判断されたならば、ステップS167に進み、y=y0のラインへの後退幅寄せ制御を実行する。これについては、後述される。ステップS168において、車両のx座標値Pxと、転舵開始点のx座標値x0とを比較し、x方向において車両が転舵開始点に到達しているか否かを判断する。ステップS168の判断がNoであれば、ステップS167に戻り、車両の後退幅寄せ制御を継続する。ステップS168の判断がYesであれば、ステップS160に進み、前述した後退左旋回制御を実行する。なお、上記第2のパターンについて述べたように、車両の初期位置のx座標値Px0がx0とx1の間にある場合には、転舵開始点に既に到達しているので、ステップS168の判断がYesとなり、ステップS160の後退左旋回制御に速やかに進む。この場合も、ステップS160の後退左旋回制御を開始するときの、y方向における車両の目標駐車経路に対する“ずれ”は、車両を第1の切り返し点に誘導するまでの間の後退左旋回制御において修正されることができる。
ステップS171(図14)に進み、PMODEがゼロより大きいかどうかを判断する。ゼロより大きければ、PMODEは、駐車モード1または2を表している。その場合、切り返しが複数回行われるので、ステップS172〜S185が実行される。
ステップS172では、引き続き、旋回半径Rrで左方向に旋回しつつ後退する後退左旋回制御を実行する。この制御により、駐車モード1では、経路133(図6)に沿って車両は誘導され、駐車モード2では、経路141(図7)に沿って車両は誘導される。
ステップS173において、目標駐車経路が駐車モード1の場合には、車両の現在位置(Px,Py)と、該経路の第2の切り返し点(x3,y3)とを比較し、車両が該第2の切り返し点に到達したかどうかを判断する。目標駐車経路が駐車モード2の場合には、車両の現在位置(Px,Py)と、該経路の第1の切り返し点(x2,y2)とを比較し、車両が該第1の切り返し点に到達したかどうかを判断する。いずれの場合も、到達していなければステップS172に戻り、後退左旋回制御を継続する。到達したならば、ステップS174に進み、ブレーキアクチュエータ9を駆動することによって車両を停止する。
ステップS181において、旋回半径Rr(m)で、右方向に旋回しつつ前進する前進右旋回制御を開始する。ステップS182において、シフト位置センサ6によって検出されたシフト位置がD(前進)かどうかを判断し、そうでなければ、ステップS183において、シフトアクチュエータ10を駆動してシフト位置をDにし、ステップS181に戻る。ステップS182においてシフト位置がDと判断されたならば、ステップS184に進む。
ステップS184において、目標駐車が駐車モード1の場合には、車両の現在位置(Px,Py)と、該経路の第3の切り返し点(x4,y4)とを比較し、車両が該第3の切り返し点に到達したかどうかを判断する。目標駐車が駐車モード2の場合には、車両の現在位置(Px,Py)と、該経路の第2の切り返し点(x3,y3)とを比較し、車両が該第2の切り返し点に到達したかどうかを判断する。いずれの場合も、到達していなければステップS181に戻り、前進右旋回制御を継続する。これにより、駐車モード1では、車両は経路135(図6)に沿って誘導され、駐車モード2では、車両は経路143に沿って誘導される。到達したならば、ステップS185に進み、ブレーキアクチュエータ9を駆動することによって車両を停止する。
車両が停止したならば、ステップS191に進む。また、ステップS171において、PMODEがゼロより大きくなければ、すなわち駐車モードがゼロの場合には、ステップS191に進む。すなわち、ステップS191〜S196の処理は、目標駐車がどの駐車モードであっても実行される。
ステップS191において、旋回半径Rr(m)で、左方向に旋回しつつ後退する後退左旋回制御を開始する。ステップS192において、シフト位置センサ6によって検出されたシフト位置がR(後退)かどうかを判断し、そうでなければ、ステップS193において、シフトアクチュエータ10を駆動してシフト位置をRにする。
シフト位置がRと判断されたならば、ステップS194において、車両の傾きθが、(−90+所定値)より小さいかどうかを判断する。所定値は、たとえば5度である。車両が、駐車スペースPに後退するにつれて、車両の傾き(前述したように、車軸のx軸に対する傾き)θは、−90度に近づく。したがって、この判断がNoの場合には、駐車スペースPへの後退が不足していると判断し、ステップS191に戻って後退左旋回制御を継続する。これより、駐車モード0では、車両は経路123(図5)に沿って誘導され、駐車モード1では、車両は経路137(図6)に沿って誘導され、駐車モード2では、車両は経路145に沿って誘導される。
ステップS194の判断がYesならば、ステップS195において、y軸(すなわち、x=0のライン)に沿って車両を駐車させるため、後退幅寄せ制御を実行する。これについては後述される。ステップS196において、車両の現在位置(Px,Py)と、所定の完了点とを比較し、車両が該完了点に到達したかどうかを判断する。完了点は、原点Oから所定の距離に位置する、y軸上の正の値を有する点である。完了点は、最終的な駐車位置を示すものであり、予め決まっている。完了点に到達していなければ、ステップS195に戻り、後退幅寄せ制御を継続する。完了点に到達したならば、当該プロセスを抜ける。
図15は、図13のステップS153で実行される前進幅寄せ制御のプロセスを示す。ステップS201において、後輪の車輪速センサ7および8からの車輪速パルスに基づいて、車両の現在位置(Px,Py)および車両の傾きθを算出する。
初期位置として、前述したように停止位置(Px0,Py0)を用い、該停止位置における車両の傾きをθ0とする。該停止した位置から、時間Δt経過後の車両の位置(Px,Py)および傾きθは、以下のように算出することができる。すなわち、時間Δtにおける傾きの変化量dθ(度)は、式(1)により算出される。ここで、dLRおよびdLLは、それぞれ、右後輪の移動距離および左後輪の移動距離を示し、右の車輪速センサ8および左の車輪速センサ7の車輪速パルスから得られる右車輪速および左車輪速に時間Δtを乗算することにより得られる。また、LBは、後輪のトレッドサイズ(右後輪と左後輪の間の長さ(m))を示す。
したがって、傾きθは、式(2)により算出されることができる。
θ=θ0+dθ (2)
傾きθを用いることにより、x座標の変化量dxおよびy座標の変化量dyは、それぞれ、式(3)および(4)により算出される。
dx=0.5×(dLR+dLL)・cosθ (3)
dy=0.5×(dLR+dLL)・sinθ (4)
よって、Δt経過後における車両の位置(Px,Py)は、式(5)および(6)により算出される。
Px=Px0+dx (5)
Py=Py0+dy (6)
次に、ステップS202において、ステップS201で算出された車両の現在位置および傾きθに基づいて、目標駐車経路として決定された駐車経路の転舵開始点のy座標値y0のラインに車両Vを幅寄せするための目標操舵角TAを算出する。
ここで、図16を参照すると、点線で表されているy=y0の直線ラインを目標として、位置A1〜A3へと車両Vを幅寄せする様子が示されている。車両の位置(Px,Py)は、黒丸で示されている。車両の目標軌跡(y=y0の直線)に対する目標軌跡に対する距離および角度をゼロにするように、以下の式(7)に従って目標操舵角TAを決定する。
TA(度)=−A×(Py−y0)−B×θ(度) (7)
ここで、AおよびBは所定の正の値を取る係数である。目標操舵角TAは、時計方向への操舵の時に負の値を取り、反時計方向への操舵の時に正の値を取る。
一例として、A=400およびB=30とし、図16の位置A1における距離(Py−y0)の値が−1.0mおよび傾きθが2.0度とすると、目標操舵角TAは340度となり、左方向に操舵される。位置A2における距離(Py−y0)の値が−0.7mおよび傾きθが6.0度とすると、目標操舵角は100度となり、距離が短縮されたことに応じて操舵角も小さくされる。位置A3における距離(Py−y0)の値が−0.3mおよび傾きθが10度とすると、目標操舵角は−180度となり、右方向への操舵が行われて、車両の左方向への傾きを戻すように作用する。このように、距離に関する係数Aの項と角度に関する係数Bの項とを用いて操舵角を補正するよう目標操舵角TAは決定される。
図15に戻り、操舵角の最大値Smaxおよび最小値―Smaxは決まっているので(たとえば、Smax=520度)、ステップS203〜S206において、リミット処理をする。具体的には、ステップS203において、算出された目標操舵角TAが最大値Smaxより大きければ、ステップS204において、該最大値を目標操舵角TAに設定し、ステップS207に進む。ステップS205において、算出された目標操舵角が最小値―Smaxより小さければ、ステップS206において、該最小値を目標操舵角TAに設定し、ステップS207に進む。ステップS203およびS205の両方の判断がNoであれば、算出された目標操舵角TAをリミット処理することなく、ステップS207に進む。
ステップS207において、舵角センサ4(図1)によって検出された現在の操舵角が、目標操舵角TAに一致するように、ステアリングアクチュエータ3を介してステアリング1を操舵する。
図13のステップS167で実行される後退幅寄せ制御では、上記説明した前進幅寄せ制御と、目標となるラインが同じであるが(y=y0)、車両の目標軌跡に対する角度の補正の符号が逆になる。したがって、式(8)に従って目標操舵角TAが算出される。係数AおよびBは、式(7)と同じでよい。図15のプロセスは、ステップS202において、目標操舵角TAが式(8)に従って算出されることを除き、同様に適用されることができる。
TA(度)=−A×(Py−y0)+B×θ(度) (8)
図17は、図14のステップS195で実行される、後退幅寄せ制御プロセスのフローを示す。図15と異なるのは、ステップS212であり、他のステップは同じであるので説明を省略する。
後退幅寄せ制御では、y軸(x=0の直線ライン)であり、図15の前進幅寄せ制御と、目標となるラインが異なる。したがって、目標操舵角TAは、以下の式(9)に従って算出される。係数AおよびBは、式(7)と同じでよい。
TA(度)=−A×Px+B×(θ+90)(度) (9)
図18は、図13のステップS156および図14のステップS181で実行される前進右旋回制御のプロセスを示す。ここでは、ステップS156で実行される場合を例に説明する。
ステップS221において、ステップS201について前述したように、後輪の車輪速センサ7および8からの車輪速パルスに基づいて、車両の現在位置(Px,Py)および車両の傾きθを算出する。
ステップS222において、ステップS221で算出された車両の現在位置(Px,Py)および傾きθに基づいて、目標駐車経路として決定された駐車経路の点(cx1,cy1)を中心に旋回半径Rr0で右方向に車両Vを旋回させるための目標操舵角TAを算出する。
ここで、図19を参照すると、車両Vが、点(cx1,cx2)の半径Rr0の旋回円301に誘導される様子が示されている。車両Vの位置(Px,Py)は、旋回円301から、半径方向にdRの距離だけ離れている。また、車両の位置(Px,Py)と円の中心(cx1,cx2)とを結ぶ線に垂直な旋回円301の接線303のx軸に対する角度をθ’で表す。車両の傾きθとθ’との差を、dθで表す。距離dRおよび角度差dθがゼロとなるように、以下の式(10)に従って目標操舵角TAを決定する。 ここで、DおよびEは所定の正の値を取る係数である。
TA=−D・dR−E・dθ−TA0 (10)
目標操舵角TAは、時計方向への操舵の時に負の値を取り、反時計方向への操舵の時に正の値を取る。また、TA0は、半径Rr0での旋回走行を維持するために必要な基本転舵角である。したがって、式(10)は、該半径Rr0の旋回円301から逸れた場合に、dRおよびdθの項で補正するようになっている。ここで、dR、dθ、およびTA0は、それぞれ以下のように表される。
ここで、LWBは、車両のホイールベース(前輪軸と後輪軸との距離)を示し、LBは、前述したようにトレッドサイズを示す。Cは、車両Vの外輪転舵角TWに対する操舵輪の操舵角TPの比(TP/TW)に設定される係数であり、予め設定される(たとえば、16.2)。外輪転舵角TWは、車両を旋回させるときに外側の軌跡をたどる方の前輪の転舵角である。内輪転舵角(旋回時に内側の軌跡をたどる方の前輪転舵角)と操舵輪操舵角TPとの関係は線形ではないので、内輪転舵角ではなく外輪転舵角TWが用いられている。
図18に戻り、ステップS223〜S227の処理は、図15のステップS203〜S207の処理と同じであるので、説明を省略する。
ステップS181において図18のプロセスを実行する際には、旋回半径と旋回円の中心点の座標を変更すればよい。すなわち、駐車モード1の駐車経路についてステップS181を実行するときには、旋回半径がRrであり、旋回円の中心点の座標が(cx3,cy3)である。したがって、上記の各式において、Rr0をRrに置き換え、cx1およびcy1をcx3およびcy3に置き換えればよい。また、駐車モード2の駐車経路についてステップS181を実行するときには、旋回半径がRrであり、旋回円の中心点の座標が(cx2,cy2)である。したがって、上記の各式において、Rr0をRrに置き換え、cx1およびcy1をcx2およびcy2に置き換えればよい。
図20は、図13および図14のステップS160、S172、S191で実行される、後退左旋回制御プロセスのフローを示す。図18と異なるのは、ステップS232であり、他のステップは同じであるので説明を省略する。ここでは、駐車モード0および1の駐車経路について、ステップS160で実行される後退左旋回制御を例に説明する。
図21は、図19と類似しており、車両Vが、半径Rrかつ中心点(cx2,cy2)の旋回円401に、後退しながら誘導される様子が示されている。車両Vの位置(Px,Py)は、旋回円401から、半径方向にdRの距離だけ離れている。また、車両の位置(Px,Py)と円の中心(cx2,cy2)とを結ぶ線に垂直な旋回円401の接線403のx軸に対する角度をθ’で表す。車両の傾きθとθ’との差をdθとする。距離dRおよび角度差dθがゼロとなるように、式(15)に従って目標操舵角TAを決定することができる。係数DおよびEは、式(10)と同じでよい。
TA=D・dR+E・dθ+TA0 (15)
上記の式(11)〜(14)は同様に適用されることができ、この場合、cx1およびcy1は、cx2およびcy2に置き換えられ、Rr0はRrに置き換えられる。
駐車モード2の駐車経路について、ステップS160で実行される後退左旋回制御では、旋回円の中心を(cx1,cy1)とすればよい。ステップS172で実行される後退左旋回制御では、駐車モード1の経路については、中心点として(cx2,cy2)が用いられ、駐車モード2の経路については、中心点として(cx1,cy1)が用いられる。ステップS191で実行される後退左旋回制御では、駐車モード0の経路については、中心点として(cx2,cy2)が用いられ、駐車モード1の経路については、中心点として(cx4,cy4)が用いられ、駐車モード2の経路については、中心点として(cx3,cy3)が用いられる。
上記の実施形態では、車両の左側にある駐車スペースに後退しながら駐車する形態について説明したが、本願発明は、車両の右側にある駐車スペースに後退しながら駐車する形態についても同様に適用可能である。また、縦列駐車についても、本願発明は同様に適用されることができる。これらの場合、駐車経路テーブル41には、これらの駐車形態用の駐車経路が、駐車スペースの幅および道路の幅に応じてそれぞれ規定される。
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。