以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の気相反応方法と装置を同時に説明する。
本発明の気相反応方法は、反応場を600℃以上で、かつ実質的に一定の温度に保ったままで、粉状あるいは粒子状被反応物を、気体が通過可能な把持体と一緒に、前記反応場に間欠的に装填し、前記反応場に実質的に一定の流速で気体を導入することによって気相反応させることを特徴とする気相反応方法である。
図1は本発明の気相反応方法と装置の一例を示す一部断面図であり、図2は図1を上部から見た模式図である。図1、図2における態様は、反応管7の内側の反応場を600℃以上の温度に実質的に一定に加熱する円管状ヒータ5からなっており、図1の上部から図示しない装填治具を用いて、粉状あるいは粒子状被反応物10を気体が通過可能な把持体8の上に載せて、反応場Aに装填する。この時、把持体8の位置決めをする位置決め体7−1があると反応場の一定箇所に被反応物を固定することができて好ましい。
ここで、粉状あるいは粒子状被反応物は、微視的に見たときに、ナノメートルオーダーの微粒子あるいはこれらの集合体、あるいはこれら粒子が何らかの担持体に保持された状態、ミクロンオーダー、ミリオーダーでの粉状物や粒子状物であったりするが、これらが、熱により分解し、ナノオーダーでの微粒子状になるものであっても良い。すなわち、単体では飛散してしまい把持体により位置が決められるようなものである。したがって、把持体は、これら粉状あるいは粒子状物を載せるあるいは内部に保持できるような把持体であれば特にその形状等は問わない。しかしながら、本発明で使用する把持体は、気体が実質的に通過可能で、それに保持させた粉状あるいは粒子状被反応物とは気体接触可能ならしめるものとする。したがって、粉状あるいは粒子状被反応物の大きさにもよるが、多孔質セラミックなどもその選択肢となる。
その後、図1の下部から図示しない気体流量制御装置を用いて実質的に一定の流速で気体26を導入し気相反応させる。反応場を600℃以上で、かつ実質的に一定の温度に保ったままで、粉状あるいは粒子状反応物10を前記反応場に装填するので、従来、被反応物を予め反応場に固定し、その後昇温し、気体と反応させ、その後降温して、反応生成物を取り出すという一連の作業があったが、反応管の昇温時間と降温時間を短縮でき、非常に生産性が増す。また、反応管を外周部から加熱し、反応場の温度を昇温させ、一定にする装置では、昇温させる時間、実質的に一定温度にする時間、その後の降温させる時間の再現性を得るのが難しく、それらに起因する反応温度系のムラが原因して不特定なプロセス条件となり、特に中空状ナノファイバーを生成させるプロセス、さらにカーボンナノチューブを合成するプロセスなどでは、再現良く目標のカーボンナノチューブが得られなかったが、本発明の方法では、予め実質的に一定に保たれた領域に粉状あるいは粒子状被反応物を装填するので、被反応物の昇温、一定温度保持、降温が一定になりやすく品質の再現性が非常に良好である。
ここで実質的に一定の温度とは、本発明の気相反応が安定に進行する範囲の温度であれば良いが、一般的にはプラスマイナス5℃程度以内であれば実質的に一定の温度と考えてよい。
さらに反応場の温度の上限としては、反応装置の耐熱温度以下であればよく、例えば反応管が石英の場合は1500℃以下、炭素またはハステロイ系のものの場合は2500℃以下で実施することが可能である。
参考までに、反応場の温度昇温から一定温度にした後、降温させたときの一例の温度時間特性を図3に示す。本例では、目標温度を800℃に設定し、800℃±3℃になっているのを一定温度と定義した。図中点線部分の間が一定温度にした区間である。なお、時間後半点線部でヒータを切った。また、本発明の反応場を目標の温度にした後、約3時間の温度時間特性の一例を図4に示す。この特性の中で、点線部で試料の装填を行った。センサは中心部に下から立てておき、試料は、この中心部に穴の空いたものを使用してテストした。本発明の場合は、装填時に若干の温度の乱れがあるもののすぐに温度は目標の制御温度に戻り、装填位置さえ正確に行えば、実質的に装填してからの保持時間を制御することで、被反応物には再現性の良い昇温特性を与えることが可能となる。
また、別な方法で、反応管内を一定の温度にしておき、粉状あるいは粒子状被反応物を連続的に装填しようと粉状あるいは粒子状反応物を反応管内で浮遊させ、いわゆる気相流動法として、扱う場合を例に挙げて説明する。例えば、本発明の場合のような縦型反応管炉を使用する場合、中央部の反応場の温度を目標の温度に制御するため、図1の円管中央部にセンサー30を置き、これによりヒータの温度を制御するが、この場合の一例の管内縦方向の温度分布を図5に示す。中心位置を0位置として、上方向をプラス、下方向をマイナスとしたとし、点線部がヒータのある領域である。このように円管の放熱現象との関連で反応場Aは実質的に一定の温度に制御されるが、反応場Aから遠ざかるに従って温度が降下する。これは、センサー点数とヒータの分割点数を増加させることで、実質的に一定の範囲を大きくすることは可能であるが、ガス導入口部や、粉状あるいは粒子状反応物の入り口部付近は、少なからず温度の低下を免れなくていた。したがって、図5に示すような温度分布が、縦型反応炉では汎用されている。この場合、気相反応させる気体としての炭素含有化合物が、反応管内の温度分布にしたがって、目標としない分解物の生成が発生し、気相反応する時点での炭素含有化合物の状態が一定でないなどの原因で、生成されたサンプルは目標とする生成物にならない場合があった。例えば、中空状ナノファイバーで高品質なカーボンナノチューブを製造する場合を例にとると、径の細い、層数の少ないカーボンナノチューブを製造しようとしているにもかかわらず、径の大きいカーボンナノファイバーと言われるものや、径の大きい多層カーボンナノチューブと言われるもので、高弾性、高導電性、高電子放出能、ナノカプセル性という点で良好でないものしかできなかった。また、その他の原因として、浮遊する粉状あるいは粒子状被反応物と目標とする炭素含有化合物が気相で接触する場所によって、雰囲気温度が異なるため、反応時の温度が十分に制御できないなどの原因も考えられる。図5の特性のような、ヒータ制御部センサーを一点とする外周部ヒータ制御の場合では、反応管の上部と中央部では温度差が600℃もある特性となっていて、このような実質的に反応場を反応管全体とする系では、実質的な反応場温度を一定にすることは困難である。しかしながら、本発明の場合は、実質的に目標の一定温度になっている部分に被反応物を装填するのでこれらの諸問題は解決し、反応時の温度や、反応させる気体の状態制御が厳密に行えることになる。
本発明の気相反応方法は、600℃以上の高温下で粉状あるいは粒子状被反応物を気相反応させた後、反応物を前記把持体と一緒に反応場から間欠的に取り出すことを特徴とする気相反応方法である。順次間欠的に反応場に粉状あるいは粒子状反応物を装填して反応させれば良いが、その次に装填された被反応物と接触させるために導入される気体と、その前の工程で生成された反応物とが反応し、それによって導入した炭素含有化合物が改質して、分解等が発生し、それら分解ガスが、次の間欠的に導入された粉状あるいは粒子状被反応物と反応することがあり、目標としない炭素含有化合物ガスにより反応された反応物は、例えば、中空状ナノファイバーを製造するプロセスで、高品質なカーボンナノチューブを製造する場合には、品質の良好でないカーボンナノチューブを生成する原因となる場合があるので、反応後、反応生成物を、順次間欠的に取り出すのが好ましい。
また、本発明に係る気相反応方法において、前記気体が通過可能な把持体が、950℃以上の耐熱性のある金属酸化物繊維であることが好ましいものである。前記気体を通す把持体は、気体を通過させ、かつ粉状あるいは粒子状被反応物および反応生成物を把持できていれば良いが、実質的に接触させる気体の流速を一定にする意味で、フィルター的効果を発揮する、繊維状のもので、把持体として形状がつくられたものであると非常に好ましい。繊維状、耐熱性のある金属酸化物繊維不織布や金属酸化物繊維ウール状のものが好ましく用いられる。
導入する気体は、実質的に流速をコントロールするために、例えば、(株)エステック製”SECシリーズ”などのマスフローコントローラによって、流量を実質的に一定に制御することで、反応場での流速を実質的に一定にすることが通常行われているが、この場合は、反応管へ導入する導入ガス管の経路や形状、排出されるガス管の経路や形状によって、また、導入するガス量が、反応管の大きさに比して非常に大きい場合には、反応場での流速は非常に大きなバラツキを余儀なくされていた。例として、反応管の内径が135mmの円管内に、マスフローコントローラによって流量50L/分の流量に制御されたArを1インチの円管配管で反応管下部の中央部から導入し、反応管上部の中央部から1インチの円管配管で排出したテストをした結果、中央部の線速は、約0.830m/秒であったのに対し、135mm反応管の外縁部、内側へ20mmの部分での線速は、約0.018m/秒であった。これに対し、金属酸化物繊維不織布を用いて上記テストを行い金属酸化物繊維不織布の直上で測定した結果、中央部の流速が約0.17m/秒に対し、同様外縁部から20mmの部分で約0.057m/秒であった。さらに、配管系統を工夫して、下部入り口部の配管を1インチ配管で円周方向から1ポートで導入し、上部出口部の配管を円周方向に4ポートで排出するようにしてできるだけ、均等に反応部の流速を一定にするようにした。この配管系統に変え上記同様に50L/分の流量に制御されたArを流した。その結果、中央部の線速は、約0.059m/秒であったのに対し、135mm反応管の外縁部、内側へ20mmの部分で4点測定したところ、流速の最も速い場所で約0.14m/秒、最も低い場所で0.030m/秒であった。これに対し、金属酸化物繊維不織布を用いて上記テストを行い金属酸化物繊維不織布の直上で測定した結果、中央部の流速が約0.058m/秒に対し、同様外縁部から約20mmの部分で円周方向に4点測定したが、すべて約0.058m/秒であった。したがって、本発明で金属酸化物繊維不織布や金属酸化物ウールを用いと、より厳密に流速を制御した形で気体を被反応物と接触させることが可能となるので好ましい。
本発明での反応は600℃以上の反応場であるため、把持体は600℃以上の耐熱性があれば良いが、反応場での反応による反応熱を考慮して、950℃以上の耐熱性のあるものがより好ましい。耐熱性の公称値が950℃の耐熱不織布を厚さ6mmで反応管外径より20mm大きい形に形取り、これを押し込んで反応管と接する部分を折り曲げるような形にして保持させ、800℃の目標反応温度でカーボンナノチューブ合成を行ったところ、若干形状が変形したが、何とか反応場に被反応物を保持した状態で合成を終了することができた。したがって、少なくとも950℃以上の耐熱性のある素材が良好と判断できる。金属酸化物繊維としては、950℃以上の耐熱性のある耐熱繊維であることが好ましく、その耐熱性があれば何でも良いが、特に、SiO2 あるいはAl2 O3 の繊維が安価で入手しやすく工業的に好ましい。ニチアス(株)製の“ファインフレックス”、(株)ニチビ製のアルミナ長繊維フェルト、三菱化学産資(株)製の“マフテック”、イソライト工業(株)社製“イソウール”等が好適に利用される。
ここで、前記金属酸化物繊維に、950℃以上の耐熱性のある補強材を装着することが好ましい。被反応物を把持する金属酸化物繊維に補強材を装着することにより、金属酸化物繊維のたわみを防止できるからである。金属酸化物繊維のみで被反応物を把持した場合、被反応物及び金属酸化物繊維の重みにより、たわみが発生する。このとき、被反応物が金属酸化物繊維上の最大たわみ部分である中央部に向かって移動し、反応場領域内で被反応物のかさが不均一となり、圧損のバラツキが大きくなる可能性がある。その結果、ガス流速のバラツキが増加し、不均一な反応物が生成される懸念がある。したがって、補強材を装着することにより、金属酸化物繊維のたわみを防止することが好ましい。
さらに、補強材を反応管内面に抗して反力を与えるように金属酸化物繊維に装着すれば、反応管内での金属酸化物繊維の位置保持力が増すために、ガスの流れ等の外力による金属酸化物繊維の位置変動を防止できる。金属酸化物繊維が位置変動を起こすと、金属酸化物繊維と反応管内面との間で予期せぬガスの抜け道が発生し、反応領域でガス流速分布が不均一になったり、適正な温度分布から外れたりして、所定の量及び品質の反応物が得られない可能性がある。したがって、補強材を装着して、金属酸化物繊維の位置変動を防止することが好ましい。
なお、補強材に使用する材料としては、600℃以上の耐熱性があれば良いが、反応場での反応による反応熱を考慮して、950℃以上の耐熱性のあるものがより好ましい。
また、補強材として再結晶温度が950℃以上の金属材料を用いても良い。再結晶温度が950℃以上であれば、600℃以上の反応場の温度に対して反応熱による温度上昇を考慮しても再結晶が起こりにくいので、材料特性の変化による強度劣化を起こしにくい。さらに、反応管内面に抗する金属材料の弾性反力を利用して位置保持力を高めた場合、この反力を長期間にわたって保持できる。その結果、金属酸化物繊維の装填状態をより安定化させることができる。好適に用いられる材料の例として、タングステン、モリブデン、及びこれらを成分に含む合金があり、特に、Ce−Mo(セリウム−モリブデン)合金は再結晶温度が高く、脆性劣化等を引き起こしにくく、高温下でも弾性特性を長期間にわたって保持できる。また、反応ガスを流したときに、触媒作用しにくいことが発明者らの実験から判っており、被反応物を把持する把持材として適している。市販されているものとして、例えば、日本タングステン(株)社製のM958がある。
さらに、補強材の別の態様として、耐熱温度が950℃以上の多孔板を装着するのも良い。多孔板を金属酸化物繊維の支持材として装着することにより、多孔板の剛性により金属酸化物繊維のたわみが防止できる。そして、この多孔板の孔径、孔ピッチ、多孔板の厚み、多孔板材質を、ガス種、ガス流量等の使用条件に合わせて適正化することにより、金属酸化物繊維上の被反応物の設置される領域において、流速のバラツキを抑制して、均一な反応物を生成できる。また、多孔板の材質としては、600℃以上の反応場の温度に対して反応熱による温度上昇を考慮して、耐熱温度が950℃以上のものを用いるのが良い。例として、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素等の耐熱セラミックス、石英等がある。
上記のいずれの形態においても、金属酸化物繊維等の把持体を反応場に装填した状態で、前記把持体の周縁部で気体の通過を略封止するシール部を形成することが好ましい。これは、該周縁部でガスの抜け道が生じた場合、把持体上の被反応物に接触するガスが減少するために反応物の生成量も少なくなったり、被反応物に接触するガス流速のバラツキの増大により不均一な品質の反応物が生成されたりするためである。
そして、このシール部で把持体を押圧することにより形成することが好ましい。把持体と反応管部との間の接触部における隙間で、把持体を押圧することにより、該隙間が把持体の圧縮等により解消され、気体の通過を略封止するシール部を形成することができるからである。
また、本発明に係る気相反応方法は、粉状あるいは粒子状被反応物が、ゼオライトに担持された金属であることが好ましいものである。本発明においてゼオライトは、分子サイズの細孔径を有する結晶性無機酸化物からなるものである。ここで分子サイズは、世の中に存在する分子のサイズの範囲内であり、一般的には、0.2nmから2nm程度の範囲ものである。さらに具体的には、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のようなものである。
結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートとしては、特に種類は制限されないが、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2),1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質などが挙げられる。また、本発明におけるゼオライトは、本文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている新規な構造を有するゼオライトも含む。好ましい構造は、入手が容易なFAU型、MFI型、MOR型、BEA型、LTL型、LTA型であるが、これに限定されない。
目標とする生成物がカーボンナノチューブの場合には特に、現在判っている最も微細孔を持つ結晶といわれており、これに金属を担持させ、高分散させることで、効率良く微粒子状の触媒を、効率良く反応する気体と接触させることを可能とする。
さらに、前記ゼオライトが、USY型ゼオライト、MFI型ゼオライト、MFI型メタロシリケートから選ばれる少なくとも一つであることが好ましいものである。構造骨格内にケイ素以外のヘテロ元素を、ケイ素/ヘテロ原子モル比で25以上となるように含むアルミノシリケートゼオライト、メタロシリケートゼオライト、またはメタロアルミノシリケートが好んで用いられる。ヘテロ原子がアルミニウムであるゼオライトはアルミノシリケートであり、ケイ素/アルミニウムモル比が25以上ということは、ハイシリカゼオライトに属する。このようなシリカアルミナ比をとることができれば、その結晶構造は特に限定されないが、例えば、MFI型、MOR型、FAU型、CIT−5型が好んで用いられる。特に、高耐熱性FAU型ゼオライトであるUSY型ゼオライトが、好んで用いられる。
また、アルミニウムやシリコン以外のヘテロ元素を含むゼオライトは、メタロシリケートと言われる。ヘテロ元素の種類は特に限定されないが、例えば、ホウ素、ガリウム、鉄、コバルト、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、亜鉛が好んで用いられる。メタロシリケートゼオライトは、種類は特に限定されないが、耐熱性が高いほうが好ましい。反応温度以上の温度に対し耐熱性を有することが好ましく、特に800℃以上の耐熱性を有するものが好ましい。ゼオライトが800℃の耐熱性を有するとは、窒素または乾燥空気の雰囲気中で800℃で30分間焼成した時、その焼成前後において室温で粉末X線回折(XRD)を行った時、そのゼオライトのピーク位置、ピーク高さ比が共に同様のピークを有していることを意味する。好ましくは、800℃で加熱後、粉末X線回折を行った時、焼成前のゼオライトと同様のピークを有するだけでなく、実質的構造変化がないものがよい。メタロシリケートの結晶構造は特に限定されないが、MFI型はメタロシリケート構造が安定で好んで用いられる。
金属触媒微粒子をゼオライト担体表面に析出させる方法として、コバルトシリケート、鉄シリケートなどのメタロシリケートを合成し、これを高温で焼成し、骨格中のコバルト、鉄をゼオライト表面に析出させ、微粒子化する方法を用いることもできる。本方法を用いることで、数十nm以上の大きさを持つ金属粒子の生成を抑制できるため、6層以上の多層カーボンナノチューブや、外径が50nm以上のナノファイバーの生成を抑制することができる。本方法として、コバルトシリケート、鉄シリケートなど、1種類のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトだけでなく、鉄、コバルト、チタンなど、2種類以上のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトも好んで用いられる。
本発明において、ゼオライト担体は、構造骨格内にシリコン以外のヘテロ元素を、ケイ素/ヘテロ原子モル比で25以上となるように含むことが重要である。ヘテロ原子がアルミニウムや3価の元素である場合、ケイ素/ヘテロ原子比が25より小さいと、骨格中の電荷バランスを補償するイオン交換点が多くなり、耐熱性が低い。その結果、中空状ナノファイバーの合成温度が低く、生成する中空状ナノファイバーのグラファイト化度が低くなり好ましくない。ケイ素/ヘテロ原子比が高い(100以上)ゼオライトは、それだけ耐熱性が高くなり、中空状ナノファイバーの合成温度を上げることができ好ましい。また、ケイ素/ヘテロ原子比が低い(25以上100以下)ゼオライトでは、骨格中のヘテロ原子がゼオライト外表面金属に及ぼす影響が大きく、中空状ナノファイバー合成において、触媒反応を制御しやすい点で好ましい。また、ヘテロ元素が4価の元素である場合、ケイ素/ヘテロ原子比が25より小さいメタロシリケートの合成は極めて困難であり、かつ、安定性が低いため、ケイ素/ヘテロ原子比が25以上が好ましい。ヘテロ原子は骨格にあることが好ましいが、焼成中などに骨格外へ抜け出ていても構わない。たとえ抜け出ていても、金属との相互作用の点では十分に効果を奏するものと考えられる。
ゼオライト骨格中のSi/ヘテロ原子の原子比は、29Si MAS NMRで測定することができる。また、骨格から抜け出たヘテロ原子も含めて測定する場合には、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)で測定することができる。
上述のコバルトの電子状態を作り出すために、担体であるゼオライトの種類が重要である。チタンのような遷移金属を構造骨格に持ったゼオライトは、特にこのような状態を作り出しやすい。その理由は、遷移金属はd軌道に電子を有しており、その電子がゼオライト上の金属種に電子を与えているものと推定できる。
実質的にアルミニウムなどの3価の成分を含まないゼオライトを後処理により製造する方法としては、予めアルミニウムなどを含んだ結晶性アルミノシリケートを製造し、キールの方法(ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー、71巻、4155頁、(1967年))又はスキールらの方法(第6回国際ゼオライト学会予稿集、87ページ(1984年))で、脱アルミニウムしてハイシリカゼオライトにして、耐熱性を向上させる方法もある。しかし、通常は、このままでは、焼成中にゼオライトは構造変化を起こす。それは、アルミニウムが抜けたところが構造欠陥となるためである。この構造欠陥が焼成中に構造変化を起こす原因となる。
さらに、前記ゼオライトが、チタノシリケート、コバルトシリケート、ボロシリケートおよび鉄シリケートから選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましいものである。すなわち、構造骨格内にアルミニウムを含むアルミノシリケート、アルミニウムやケイ素以外のヘテロ元素を含むメタロシリケート、およびアルミニウムとヘテロ原子の両方を含むメタロアルミノシリケートを使用することができる。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、触媒となる金属と支持体との親和性が、高品質のカーボンナノチューブを作る上で、またカーボンナノチューブの層数や太さを制御する上で重要な因子になっていることを知見した。特に、チタノシリケート、コバルトシリケート、およびボロシリケートから選ばれる少なくとも一つを担体に用いることで、細い中空状ナノファイバーを製造しやすくなることを見出した。
上記のようなゼオライトの結晶の大きさは特に制限はない。一般には数10nmから数10μmである。結晶が小さい方が外表面積が大きいので、カーボンナノチューブの収量を多くすることができて好ましい。しかし、余り小さくても凝集がはげしく、実質的な外表面積が減少するので、大きさとしては0.1〜10μmの結晶であることが好ましい。
また、ゼオライトに担持された金属がバナジウム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウムから選ばれる少なくとも一つの金属を含むことが好ましいものである。上述した耐熱性ゼオライトまたはメタロシリケートゼオライトに金属が担持された触媒組成物の形態で使用される。金属の種類は、特に限定されないが、3〜12族の金属、特に好ましくは、5〜11族が好ましく用いられる。中でも、V,Mo,Fe,Co,Ni,Pd,Pt,Rh等が特に好ましく用いられる。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、反応中の状態を調べる手段がないので、広く金属を含む化合物または金属種という意味で解釈してよい。
金属は1種類だけを担持させても、2種類以上を担持させてもよいが、好ましくは、2種類以上を担持させるようにした方がよい。2種類の金属を担持させる場合は、Co,Ni,Pd,Pt,Rhと他の金属の組み合わせが特に好ましい。CoとFe,Ni,V,Mo,Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
ゼオライトに対する金属の担持方法は、特に限定されない。例えば、担持したい金属の塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール溶液)または水溶液中に、ゼオライトを含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、窒素、水素、希ガスまたはその混合ガスまたは真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、ゼオライトに金属を担持させることができる(含浸法)。
ゼオライトのような多孔性物質に金属を担持させるには、金属塩の水溶液量をなるべく少なくし、ゼオライトの細孔内に水溶液を吸着させ、余分な水溶液はろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法が最も好ましい。その理由は、ゼオライトの細孔径は均一であり、平衡吸着法で金属を担持させると比較的担持された金属の径が均一になり、生成した中空状ナノファイバーの径が均一になるためである。また、金属はゼオライト細孔入り口付近に存在し、高温下でも凝集しにくくなるので、特に耐熱性ゼオライトを用いた場合には、平衡吸着法は有効な金属の担持法である。
または、金属塩の水溶液にゼオライトを含浸し、含浸法または平衡吸着法で金属塩を担持させ、乾燥させ、窒素、水素、希ガスまたはその混合ガスまたは真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、耐熱性ゼオライトの結晶表面に金属を担持させることもできる。勿論、金属塩を担持した後、空気中で焼成して金属酸化物にした後、水素を使用して還元することにより、ゼオライトに金属を担持させることもできる。
または、コバルトシリケート、鉄シリケートなどのメタロシリケートを合成し、これを高温で焼成し、骨格中のコバルト、鉄をゼオライト表面に析出させ、微粒子化する方法を用いることもできる。本方法を用いることで、数十nm以上の大きさを持つ金属粒子の生成を抑制できるため、6層以上の多層カーボンナノチューブや、外径が50nm以上のナノファイバーの生成を抑制することができる。本方法として、コバルトシリケート、鉄シリケートなど、1種類のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトだけでなく、鉄、コバルト、チタンなど、2種類以上のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトも好んで用いられる。
金属担持量は、多いほどカーボンナノチューブの収量が上がるが、多すぎると金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。金属担持量が少ないと、担持される金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な金属担持量は、ゼオライトの細孔容量や外表面積、担持方法によって異なる。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。
また、本発明に係る気相反応方法は、前記反応場の平均温度を650℃以上950℃以下とし、かつ反応場全域に対し50℃以内の範囲内に制御することが好ましいものである。ここで、平均温度とは、反応場とする面内を均等に5分割以上し、その分割部で各1点の温度を測定しその平均値とする。構造が対称性のあるものであれば、対称となるユニットで分割すれば良い。本発明の実施例のように円管状であれば、半径で5点をとって測定すれば良い。本例では、中心点および中心から円管外周円に半径等間隔4点を採用し5点を測定してその平均値を採用した。上記、ゼオライトの特性やそれに担持された金属の特性からして、効率よく中空状ナノファイバーを生成するためには、反応場の温度を平均温度として650℃以上であることが好ましい。650℃よりも低い温度であると、生成された中空状ナノファイバーの品質が良くないものとなる。具体的には、50nm以上の径の太い、6層以上の多層カーボンナノチューブや、カーボンナノファイバーが多く存在する。こうしたものは、その品質として弾性率があまり大きくなかったり、導電性が大きくなかったり、電子放出能が高くなかったりする。また、950℃を超えると、カーボンナノチューブの生成量が極端に少なくなる。さらに、反応場の温度範囲を50℃以内に押さえることが好ましい。我々の実験結果によると、50℃以内の範囲内であれば、目標とする品質のバラツキや、透過型電子顕微鏡による観察において、その差異が認められなかった。
また、本発明に係る気相反応方法は、前記気体が炭素含有化合物を含むことが好ましいものである。さらに、炭素含有化合物が炭化水素または一酸化炭素、−OH基を含む炭化水素化合物であるが好ましいものである。
本発明において、ゼオライトまたはメタロシリケートゼオライト等のゼオライトに金属を担持させた触媒に接触させる炭素含有化合物は、特に限定されないが、好ましくは炭化水素または一酸化炭素を使うとよい。
炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンまたはこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、またはこれらの混合物等を使用することができる。炭化水素には、また酸素を含むもの、例えばメタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールのごときアルコール類、アセトンのごときケトン類、およびホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドのごときアルデヒド類、トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのごときカルボン酸類、酢酸エチルなどのエステル類またはこれらの混合物であってもよい。これらの中でも、特に非芳香族の炭化水素は、質の良い中空状ナノファイバーを得ることができるため、最も好ましい炭素源である。
また、前記気体が、炭素含有化合物と希ガスあるいは窒素ガスあるいは水素を含むことが好ましいものである。すなわち、炭素含有化合物以外に希釈ガスも好ましく用いられる。希釈ガスとしては、特に限定されないが、酸素ガス以外のものが好ましく使用される。酸素は爆発の可能性があるので通常使用しないが、爆発範囲外であればかまわない。窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等が好ましく使用される。これらのガスは、炭素含有化合物ガスの濃度のコントロールやキャリヤガスとして効果がある。水素は、特に触媒金属の活性化に効果があるので好ましい。Arの如き分子量が大きいガスはアニーリング効果が大きく、アニーリングを目的とする場合には好ましい。キャリアガス中の炭素含有化合物の蒸気の濃度が高くなると、収量は向上するが太いカーボンナノチューブができる傾向がある。そこで、炭化水素濃度は、2vol%以下が好んで用いられる。また、蒸気の濃度が低くなると、細いカーボンナノチューブができるが、収量が低くなる傾向がある。そこで、0.1vol%以上が好んで用いられる。より好ましい炭化水素濃度は、0.2vol%以上1.5vol%以下である。最も好ましい炭化水素濃度は、0.5vol%以上1vol%以下である。
キャリアーガスの使用、不使用にかかわらず、減圧条件下での中空状ナノファイバーの合成も好んで行われる。減圧下での合成のメリットは、キャリアーガスによる炭化水素原料のアニーリングが抑えられること、生成した中空状ナノファイバー表面への不純物の付着が低減されることが上げられる。減圧下で中空状ナノファイバーを合成する場合の炭化水素分圧は、1.01×102(0.76Torr)以上2.02×103Pa(15.2Torr)以下が好んで用いられる。より好ましい炭化水素分圧は、2.02×102Pa(1.52Torr)以上1.52×103(11.4Torr)以下である。最も好ましい炭化水素分圧は、5.05×102(3.8Torr)以上1.01×103(7.6Torr)以下である。
反応ガスと触媒の接触時間に関し、接触時間が長すぎると、目的量の中空状ナノファイバーを得るのに長時間を要する。このような観点から固体触媒重量(担体込み)/原料ガス流量(キャリアガス込み)が8.0×10−3(g−触媒・分/ml)以下、より好ましくは1.0×10−3(g−触媒・分/ml)以下である。一方、接触時間が短すぎると、炭化水素原料が有効に利用されずに排気される。そこで、固体触媒重量(担体込み)/原料ガス流量(キャリアガス込み)が1.0×10−5(g−触媒・分/ml)以上が好んで用いられる。
また、本発明に係る気相反応方法は、気相反応後の生成物が中空状ナノファイバーであることを特徴とする気相反応方法である。生成された炭素を主成分とする中空状ナノファイバーは、中空状であれば特に制限はない。ナノファイバーが中空状であることは、透過型電子顕微鏡で確認することができる。
さらに、前記中空状ナノファイバーの外径が0.4nm以上50nm以下、内径が0.3nm以上15nm以下であることが好ましい。すなわち、本発明から得られる中空状ナノファイバーは、外径が0.4nm以上50nm以下、内径が0.3nm以上15nm以下の極細の中空状ナノファイバーにすることができる。ここでの観察は、20万倍以上の倍率で透過型電子顕微鏡で見たときに中空状ナノファイバーが存在し、その電子顕微鏡の視野の中に存在する中空状ファイバーの径が上記径の範囲内であるものが25%以上あれば上記のものができていると言って差し支えない。10視野分の写真を撮りそれを解析することにより求めるとより好ましい。特に、中空状ナノファイバーの壁を欠陥の少ないグラファイト層で形成することができる。このように欠陥の少ないグラファイト層からなることは、高分解能透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
さらに、前記中空状ナノファイバーがカーボンナノチューブであることが好ましいものである。すなわち、上記のような極細の中空状ナノファイバーは、一般的にカーボンナノチューブと定義される。多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブは、ともに炭素を主成分とする中空状ナノファイバーに含まれる。
さらに、前記中空状ナノファイバーの主成分が1から5層のカーボンナノチューブであることが好ましいものである。すなわち、本発明の方法によると、1層から5層のカーボンナノチューブが得られやすく、バンドル状(束状)で得られることが多い。1層から5層カーボンナノチューブを選択的に合成する場合、ゼオライト担体にはUSY型ゼオライトやチタノシリケートが好んで用いられる。
また、本発明は、中空状ナノファイバーの主成分が2層から5層カーボンナノチューブである中空状ナノファイバーを効率よく製造できる。本発明の方法によると、2層から5層、特に2層カーボンナノチューブが得られやすく、バンドル状(束状)で得られることが多い。2層から5層カーボンナノチューブを選択的に合成する場合、ゼオライト担体にはチタノシリケート、コバルトシリケートが好んで用いられる。
本発明の気相反応方法では、触媒調製法のコントロールによりカーボンナノチューブのコントロールが可能である。本発明から得られる一つの2層カーボンナノチューブは、平均の内径が約2nmより大きいのが特徴である。一般に内径が大きい2層カーボンナノチューブは比較的ゆがみが多く、太さが均一にならない場合が多いが、本発明の方法で生成された2層〜5層カーボンナノチューブは、太さが均一であり、しかも触媒金属粒子を多く含まないという特徴を有している。
本発明の方法では、2〜5層カーボンナノチューブとしては比較的内径が太い、5〜15nmの内径の2層〜5層カーボンナノチューブを選択的に得ることが出来る。カーボンナノチューブの中空部分には、金属を始めとした様々な物質を取り込めることが知られているが、内径が太い2層〜5層カーボンナノチューブでは、その内容積の大きさから、将来的に取り込める物質の種類が増えるだけでなく、分子ふるい効果を付与できる可能性がある。
さらに、反応条件、触媒前処理条件を選べば、今まで得られたことがない、内径が1nm以下の2層〜5層カーボンナノチューブが得られる。これは1nm以下のゼオライト特有の微細孔に金属触媒が入れ子状に担持されているためであり、ゼオライトを担体に使うことにより始めて得られるものである。ゼオライトの細孔入口径に近い0.4〜1.0nm、特に0.6〜0.9nmの内径を有する2〜5層のカーボンナノチューブが得られる。単層カーボンナノチューブ中にフラーレンを導入した後、加熱して得られるナノチューブは2層であるが、短い2層部分しか得られない(約10nm:Chemical Physics Letters, 337(2001) 48-54 )。
本発明で合成される2層カーボンナノチューブは、内径が1nm以下であり、長さは15nm以上のものができる。長さは好ましくは20nm以上であり、特に好ましくは30nm以上である。本発明の方法では、更に今までに見られたことのない内径が1nm以下の細い2層カーボンナノチューブのバンドルができる。
本発明によれば、2層カーボンナノチューブを選択的に合成することもできる。なお、純度100%の2層カーボンナノチューブを得ることは困難であり、それを同定することも困難であるため、ここで言う2層カーボンナノチューブとは20万倍以上の倍率で透過型電子顕微鏡で見たときに2層カーボンナノチューブがその電子顕微鏡の視野の中に25%以上あれば2層カーボンナノチューブと言って差し支えない。担体には、チタノシリケートゼオライト、コバルトシリケートゼオライト、ボロシリケートゼオライトから選ばれる少なくとも一つを用い、コバルト原料には、コバルトの酢酸塩、硝酸塩、および錯体から選ばれる少なくとも一つを用い、700℃以上の反応条件で炭化水素ガスと接触させることで、2層カーボンナノチューブを選択的に合成することができる。
また、本発明に係る気相反応方法は、前記中空状ナノファイバー含有組成物が、共鳴ラマン散乱測定法により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときに、G/D比が1.5以上であり、かつ20以下である2層カーボンナノチューブを含む組成物であることが好ましいものである。すなわち、本発明にある中空状ナノファイバー含有組成物は共鳴ラマン散乱測定により、150〜350cm−1の領域にピークが観察されることを特徴としている。共鳴ラマン散乱測定により、150〜350cm−1の領域にピークが観察されるとは、RBM(Radial Breathing Mode)が観察されることを言う。RBMとは、細いカーボンナノチューブの伸縮振動に起因するピークであり、直径0.7〜1.6nmのカーボンナノチューブが存在することを示唆している。このように細いカーボンナノチューブが存在することで、樹脂添加剤に用いたときには高いナノ添加効果が発現し、フィールドエミッションディスプレイに用いたときには、高い電界放出能を発現することができる。
また、本発明は次の要件を満たす中空状ナノファイバー含有組成物に関するものである。
(1)共鳴ラマン散乱測定により、1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が1.5以上であり、かつ20以下であること。
(2)高分解能電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観察されること。
共鳴ラマン散乱では、100〜350 cm−1付近のピークがRBM(Radial Breathing Mode)、1560〜1600 cm−1付近の構造がG-bandであり、その他に不純物のアモルファスや中空状ナノファイバーの欠陥に起因するものとして、1310〜1350 cm−1付近のD-bandと呼ばれるピークが観測される。ラマン強度はグラファイトの1000倍程度に達し、共鳴効果が支配的である。中空状ナノファイバーは、キラリティー、直径により、それぞれ異なった電子構造を取る。その中で、励起光が中空状ナノファイバーのEgと一致する場合に共鳴が起こり、ラマンスペクトルが発現する。そのため、励起光波長を変えていくと、次々とスペクトルは変化する。中空状ナノファイバーのG-bandは共鳴効果により強調されるため、試料の純度によって強度が大きく変化する。一方、1330cm−1付近のブロードなD-bandは不純物による寄与が大きく、これは共鳴効果により強い強調を受けないため、G-bandとD-bandの強度比を取ることにより、中空状ナノファイバー試料の純度を見積ることが可能となる。本発明の方法を用いることで、純度の高い中空状ナノファイバーを製造することができ、その結果、G/D比は1.5以上となる。また、中空状ナノファイバーを用途展開する上で、ポリマーに混ぜたり溶媒に分散させる必要が生じる。そのときに、中空状ナノファイバー表面に構造欠陥に起因するダングリングボンドが少ないと、分散性が低下するといった問題が生じる。そこで、構造欠陥が適度に存在する中空状ナノファイバーが好ましく、G/D比は20以下が好ましい。本発明において、前出の製造方法を用いることで、G/D比が1.5以上であり、かつ20以下である中空状ナノファイバーを製造することが可能である。
また、本発明にある中空状ナノファイバー含有組成物は高分解能電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観察されることを特徴とする。これに関する説明は先述の通りである。
さらに、上記に記載のような高品質のカーボンナノチューブを得るには、反応場の流速が非常に重要であることを確認している。
一例として、下記する。反応管の内管直径が32mmのものを用いて、反応管中央部に石英ウールを詰めて、ゼオライト担持触媒を上に載せて、アセチレンをキャリアガスとしてのアルゴンと混合して、キャリアガス中アセチレン量0.8vol%として、流量を60ml/分、600ml/分、1200ml/分の流量を変化させてカーボンナノチューブを合成した。この時の反応場における流速は線速度として、それぞれ約75mm/分、750mm/分、1500mm/分である。この時得られたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡での繊維の形状を示す写真を、それぞれ、図19、図20、図21に示す。この写真からも判るように、速度が増す程、直線性が良いことが判る。さらにこれらサンプルを共鳴ラマン散乱測定法にて分析した。この結果、スペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときに、G/D比が、それぞれ、約1.1、2.1、4.0であった。これは、G/D比が高い、すなわちグラファイト化度には、反応場の被反応物と接する気体の流速が大きく関与していることを示唆する。したがって、品質の高いカーボンナノチューブを均一に製造するには、流速を実質的に一定に保つことは非常に重要である。
また、本発明に係る気相反応装置は、反応管を外部から加熱する手段と、反応場を実質的に一定の温度に保持する制御手段と、反応場に粉状あるいは粒子状被反応物および気体が通過可能な把持体を装填する手段と、取り出す手段とを具備し、さらに反応場を密閉する手段と、反応場に気体を導入する手段と、実質的に流速を一定にする手段と、間欠的に反応を繰り返す手段とを有することを特徴とする気相反応装置である。
本発明の装置を図面に示す実施態様に基づいて説明する。図6は本発明装置の一例を示す断面図である。内側反応管7の内側の反応場を実質的に一定に加熱する、外部円管状ヒータ5が外側反応管6の外周部に設けられている。外部ヒータ5としては、電気抵抗式ヒータ、電磁加熱式ヒータ、赤外線等を利用した光学式ヒータなどが用いられるが、反応場が実質的に一定の温度に可能ならしめるものであればどのようなものであっても良い。例えば、カンタル線を用いた電気抵抗加熱式ヒータである、アドバンテック東洋(株)製の管状炉や、アサヒ理化製作所などのセラミック電気管状炉など市販されて簡易に入手できるものが好ましく用いられる。図6に示す温度制御用センサー30によって温度を制御する。センサー30は必要に応じて、多点にして、これに応じて、ヒータを分割するなどして、均等加熱領域を大きくする工夫が好ましく用いられる。センサー30はより厳密に反応場の温度を測定するため反応管内部に設置しても良い。温度コントローラは市販されているPID制御器、例えばチノー(株)製の”デジタルプログラム調節計・設定器”などで十分安定した制御が可能である。
さらに、反応場に粉状あるいは粒子状被反応物および気体が通過可能な把持体を装填するための装填治具9を有する。この装填治具9は、反応場まで装填するための搬送手段29と連結されており、反応場に効率良く被反応物および気体が通過可能な把持体を装填することが可能となる。粉状あるいは粒子状被反応物10を気体が通過可能な把持体8の上に載せて、反応場Aに装填する。この時、把持体8の位置決めをする位置決め体7−1があると反応場の一定箇所に被反応物を固定することができて好ましい。
さらに反応管を密閉する手段を具備する。これは、600℃以上の高温下において炭化水素系気体が酸素と接すると爆発の危険性があるため、反応気体を外部に漏らさないと同時に外部から酸素を導入させないためのものである。ゴム製のパッキン材を用いその部分を冷却するなどしてシールすると好ましい。図中上部バルブ12および下部バルブ13がこれにあたる。さらに配管40により被反応物に接触させる気体を導入し、配管41より反応後の気体を排出する。反応場に導入する反応ガス26は、バルブ16およびバルブ18とその間に単位時間あたりの流量制御が可能なマスフローコントローラ17を配置させ、厳密に流量を制御して反応管に導入する。流量制御可能なマスフローコントローラ17は、導入する気体の流量を制御できるものであればどのようなものでも良いが、体積式流量制御方式のものや、面積式流量制御方式のもの、ピエゾアクチュエータバルブ、サーマルアクチュエータバルブ、ソレノイドアクチュエータバルブなど種々の流量制御方式のものが市販されているので利用することができる。(株)エステック製のマスフローコントローラー”SECシリーズ”や、コフロック製のマスフローコントローラー”MODEL3440”、”MODEL3400”などが好適に用いられる。こうして実質的に単位時間あたりに導入する気体の流量をコントロールする。また、その他の希ガスや窒素ガス27を導入するバルブ19およびバルブ21とその間に単位時間あたりの流量制御可能なマスフローコントローラ20を配置させ、厳密に流量を制御して反応管に導入する。その他、反応管内の気体を置換するためにバルブ22を用いて置換用ガス28を導入することが可能になっている。
さらに、反応時間に連動して、各バルブを操作して、バルブ12およびバルブ13を開けることにより、反応管を解放して、被反応物を装填するという間欠的に反応を繰り返す手段を有する。一連の間欠的動作を下記に工程説明として説明する。予め、外部ヒータ5の温度をセンサ30を用いて、反応場が目標の温度になるように加熱する。センサ30の温度が時間的に安定したのを確認した後、バルブ12を開け、装填治具9およびこれの搬送手段29を用いて、反応場Aの規定位置に被反応物10およびこの把持体8を装填する。その後、バルブ12およびバルブ13を用いて反応管を密閉する。その後希ガス28を用いてバルブ22とバルブ23を解放することにより希ガス28で反応管内をガス置換する。例えばArを用いて、反応管内に酸素が残らないように置換したりする。被反応物を加熱する時間保持させた後、バルブ22、バルブ23を閉じる。その後、バルブ16および18とマスフローコントローラ17によって流量制御された反応ガス26とバルブ19および21とマスフローコントローラ20によって流量制御された希ガス27を配管状で合流させて、配管40により導入する。さらにバルブ23を解放して反応後の気体を外部へ放出させる。目標の反応時間、この操作を行い、その後、バルブ16、18、19、21を閉じる。その後、希ガス28を用いてバルブ22とバルブ23を解放することにより希ガス28で反応管内をガス置換する。置換後バルブ22および23を閉じる。その後、バルブ12およびバルブ13を解放して、被反応物10およびこの把持体8を取り出す。
これら一連の工程操作を順次繰り返すことにより、間欠的に反応を繰り返すことが可能となる。これらを制御する手段を有する。
さらに、図7に反応管と、反応管に装填する粉状あるいは粒子状被反応物10および気体が通過可能な把持体8を予め準備しておく投入前室2と、反応生成物を間欠的に回収し保管する回収室3との三室を基本的に有する装置の一例を示す。こうすることで、投入する被反応物10とこの把持体8を予め準備ができ、効率が良い。さらに反応後、反応物を回収する回収室3を有するので反応後の生成物をストックでき効率が良い。
さらに、図7の投入室2にバルブ11を設けて密閉手段とし、バルブ33を用いて希ガス等34を配管42から導入し、配管45およびバルブ46により投入室2を予めガス置換することで、さらに効率良く反応室への被反応物の装填が可能となり好ましい。さらに、回収室3についてもバルブ14を設けて密閉手段とし、バルブ35を用いて希ガス等36を配管43から導入し、配管47およびバルブ48により回収室3を予めガス置換することで、さらに効率良く反応物の回収が可能となり好ましい。さらに、回収室を2段にしてバルブ14を介して回収室4を設けることにより、回収室3をバッファー機能として、数工程分の反応物をストックできる回収室4が可能となるのでさらに好ましい。この場合も、バルブ37を用いて希ガス等38を配管44から導入し、配管49およびバルブ50により回収室4を予めガス置換することで、さらに効率良く回収室への反応物の回収が可能となり好ましい。
さらに、配管51により、バルブ24を経由して、真空ポンプ25に接続し、反応室1を減圧可能にすると、減圧下での気相反応プロセスが可能となり好ましい。真空ポンプ25の選定は、気相反応プロセスで反応中の圧力に応じた選定をすれば、何でも良いが、炭化水素系ガスを使用するため、オイルレスタイプのドライポンプが好ましく採用される。さらに、配管54よりバルブ52を介して希ガスまたは窒素53を流しながら排気すると、圧縮時に炭化水素系ガスや副産物として発生する水素ガスの希釈ができ、余裕をもって爆発限界以下に制御でき、爆発対策としても好ましい。
さらに、常圧中プロセスであっても、反応後のガスを効率良く排気する意味で、配管41よりバルブ51を開けて本ポンプ25より排気すると、1回の気相反応プロセスのタイムサイクルを短縮でき好ましい形態となる。
真空ポンプ25を使用する場合に、希ガスまたは窒素53を流しながら排気することが好ましいが、真空ポンプ25を使用しない場合も、配管55を経由して、希ガスまたは窒素57を常に流している配管56に接続して、バルブ23を操作して排出することが、前記同様、余裕をもって爆発限界以下に制御でき、爆発対策として好ましい。
さらにこの時、反応管1の内部に残ったガスを排出するために、配管40を通じて、バルブ22を操作して希ガスまたは窒素28を流しながら行なうとさらに好ましい。
また、反応ガス26および希ガスまたは窒素ガス27のように2種類以上の気体を導入する場合、図7に示すように、少なくとも配管40の配管方向に導入するのではなく、その直角方向から導入することで、混合が均一化でき好ましい。さらに好ましくは、スタティックミキサーのような混合器58を配置し、ここで混合を均一化する工夫をすると好ましい。混合を均一化する手段として、スタティックミキサーの他、ガスフィルターを設けても良い。
また、炭素含有化合物が炭化水素または−OH基を含む炭化水素であり、液体である場合に、図8に示すような気化装置を具備するとさらに好ましい。容器61の中に、バルブ62を開けて、例えばエタノールのような−OH基を含む炭化水素化合物の液体60を入れておき、バルブ62を閉じて密閉し、容器外部から円管状ヒータ63−1およびプレートヒータ63−2より加熱し、液体60が気化するように、センサ64で制御しながら加熱する。そうすると気化により69部分の圧力が上昇する。配管65を経て、圧力リリーフ弁67を開き、例えば圧力計68を監視ながら配管65内圧力を一定の圧力に保つ。本気体を使用し、気相反応する場合は、バルブ66を解放し、バルブ18へ接続すれば、本気化装置を使用した気相反応装置となり、好ましく気相反応が行える装置が実現する。この他気化する手段として、(株)エステック社製のダイレクトインジェクション「VC」を用いた気化システムや、(株)リンテック社製の気化器「VU」シリーズを用いた気化システム等も好ましく適用できる。
また、本発明における反応管は、円柱状体であり、反応場Aまでの上部の内径と、反応部Aの下部の内径を異なる大きさにして、上部内径を下部内径より相対的に小さくしておくことで、反応場Aに導入するまで反応時の保持が確実にでき、好ましい。詳しくは、特に気体が通過可能な把持体を保持する部分、例えば図1における位置決め部7−1などに、導入後固定した後、図2におけるように気体が通過可能な把持体8の切欠き部分8−1、8−2の部分が位置決め部7−1などに合致するように回転させ、単純に重力を利用して下部へ落下させる場合に、反応管に接触しないで、把持体8を落下させることができ好ましい。さらに、把持体8が金属酸化物繊維不織布などの場合は、外径を予め上部内径より大きく、下部内径よりも小さくしておけば、把持体8を装填したときに把持体外縁部が折れ曲がり、上部反応管内径部とパッキン的に作用し、把持体8の把持力を作用させることができるので、反応場Aでの位置固定ができて好ましい。
また、把持体8および被反応物10を装填する方法が、装填治具9を反応場Aまで移動する搬送手段29が、直動ストロークにより装填する機構であり、かつ、反応後、把持体8および反応物を、前記直動ストロークにより、装填治具を相対的に直径の大きい下部反応管部まで移動させ、落下させる機構とすることで、単純な機構で装填と取り出しができることになり、600℃以上の高温下に、装填および取り出し機構を短い時間でさらすことになり、機構の耐熱性の面で非常に好ましい。したがって、高温下での機構部品の焼き付き等も発生し難く、安定した装填と取り出しが可能となる。
ここで、粉状あるいは粒子状被反応物の把持体のより好ましい態様について説明する。気体通過可能、かつ、950℃以上の耐熱性を有する金属酸化物繊維を含む粉状あるいは粒子状被反応物の把持体であって、該金属酸化物繊維に再結晶温度が950℃以上の金属材料を含む補強材が装着されることが好ましい。図33、図34に金属酸化物繊維からなる把持体に金属補強材を装填した一例の側面および上面から見た断面模式図を示し、図35にこの把持体を反応管に装填した状態の一例を示す。図33、34を用いて構造を説明する。把持体100は2枚の金属酸化物繊維101、102と金属補強材103から構成される。粉状あるいは粒子状の被反応物104は金属酸化物繊維の表面に設置される。金属補強材103は線材から構成され、反応場を支持する反応領域支持部105と周縁部に配された弾性把持部106A〜Dからなる。反応領域支持部105は反応領域で金属酸化物繊維101、102のたわみを防止する。そして、図35に示すように弾性把持部106A〜Dは、反応管107に装填された時に反応管内面108に抗するように弾性変形し、その結果、この弾性力により金属酸化物繊維の位置保持性が向上し、安定して被反応物を装填できる。なお、金属酸化物繊維101、102は600℃以上の高温反応場に対して反応熱を考慮して、耐熱温度が950℃以上である材料とするのが良い。また、金属補強材103として再結晶温度が950℃以上の材料を適用するのが良い。再結晶温度が950℃以上であれば、600℃以上の高温下で反応熱による温度上昇を考慮しても再結晶が起こりにくいので結晶の変化による強度劣化を起こしにくい。さらに、金属材料を用いることにより弾性把持部106A〜Dで経時的に安定した弾性力を維持することができる。
特に好適に用いられる金属材料としては、タングステン、モリブデン、及び、これらの合金材料であるが、特に、Ce−Mo(セリウム−モリブデン)合金が再結晶温度が高く、高温下でも安定した弾性力を維持できる。
なお、この一例では、補強材を反応領域支持部と弾性把持部から構成したが、被反応物および金属酸化物繊維の形状、装填形態等に合わせて、たわみ防止、位置保持力強化が図れるように構成を最適化すれば良い。
また、粉状あるいは粒子状被反応物の把持体の別の態様の断面模式図を図36に示す。図36に示すように把持体110は金属酸化物繊維111、多孔板112、押さえ部材113から構成される。粉状あるいは粒子状被反応物114は金属酸化物繊維111の上に設置される。多孔板112は反応領域における金属酸化物繊維を下側から支持して、金属酸化物繊維のたわみを防止して、被反応物の装填状態を安定化させる。また、多孔板112の孔径、孔ピッチ、多孔板の厚み等をガスの流速等の反応条件に合わせて適正化することにより、金属酸化物繊維上の被反応物でガスの流速のバラツキを抑えることが可能である。反応条件にもよるが、概ね適正な孔径は0.5mm〜50mm、好ましくは1〜30mmの範囲であり、適正な孔ピッチは孔径の1.5〜10倍、好ましくは1.5〜5倍であり、適正な多孔板の厚みは0.1mm〜50mm、好ましくは0.5〜10mmの範囲である。
また、金属酸化物繊維111の下面周縁部が反応管内の部材と密着することによりシール部115が形成される。このシール部115は押さえ部材113の重力により金属酸化物繊維が圧縮されて形成されるものであり、ガスの通過を略封止する。さらに、下方よりガスが導入された場合、把持体110の圧損の影響による力を下方から受けても、把持体110の重力がその力より大きければ、把持体は上方に浮くことないので、シール部115でシール性を維持できる。その結果、下方より導入されたガスは殆ど多孔板112及び金属酸化物繊維111を通過して、被反応物114に均一に接触することができる。
そして、反応部の温度が600℃以上の場合にも適用できるように反応場の反応熱を考慮して、構成部材111〜113はすべて耐熱温度が950℃以上であるのが良い。例として、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素等の耐熱セラミックス、石英等がある。
なお、この一例では、多孔板以外の構成部材として押さえ部材を用いたが、金属酸化物繊維および多孔板の形状、装填形態等に合わせて、適宜、必要な構成部材を準備すれば良い。
また、反応場に紛状あるいは粒子状の被反応物を装填する手段として、上記説明したように異なる径の反応管内で直動ストローク機構を用いて小径部に装填し、被反応物を保持し、大径部に押し出して排出する機構以外に、該被反応物を装填する機構が前記把持体の下側を支持して搬送する支持搬送手段を含むものであり、かつ、前記反応管内で前記把持体の下側を保持する保持部を有する構成が好ましく適用される。図37にこの構成を有する装置の把持体装填部を正面から見た断面模式図を示す。
図37に示すように、把持体120を下側から支持しながら反応管内を昇降する支持搬送手段121を有し、一方、反応管122の内部では保持部123を有する。反応管122の上下側はそれぞれ上部バルブ124と下部バルブ125を介して、装填準備室126と支持手段格納室127に連結されている。また、支持搬送手段121は、支持部128と、軸部129と、図示しない駆動部から構成される。支持部128は反応部まで挿入されるので、反応部の温度を考慮して、耐熱温度が1000℃以上の材質が好ましい。また、駆動部は、エアーシリンダー等の空圧的手段、モーター等の電磁的手段等、昇降し、位置制御できるものであればいかなるものを用いても良い。
次に被反応物の反応場への装填動作について説明する。装填時は上部バルブ124、下部バルブ125を開け、駆動部を駆動し、支持部128を上昇させ、装填準備室126にある被反応物130を把持した把持体120を下側から支持する。その後、支持部128を下降させ、把持体の下面周縁部を保持部123に接触させる。その後、支持部128を支持手段格納室に退避させるとともに、上部バルブ124、下部バルブ125を閉じる。一方、把持体120の下面周縁部が保持部123に接触することにより、ガスの通過を略封止するシール部が形成される。その結果、下方より導入されたガスが把持体を通過し、把持体上側表面の被反応物130に均一に接触することができる。反応が終了すれば、再度、上部バルブ124、下部バルブ125を開けて、支持部128を上昇させて把持体120を装填準備室126に退避させる。
この方法によれば、反応部の温度を下げることなく、バッチ連続的に処理できるので、非常に効率よく反応物を生成できる。そして、反応管内では保持部を利用して、下側から把持体を支持できるので、把持体が傾く等の位置変動を極力抑制できるので、極めて安定的に被反応物を装填・排出できる。
上記で説明した保持部123で、把持体を押圧する手段を具備すれば、より確実に気体の通過を封止できるシール部を構成できる。把持体を押圧することにより、把持体自身や把持体を構成する金属酸化物繊維等を圧縮し、保持部123に密着させることができるためである。把持体を押圧する手段をしては、把持体自身の自重を利用する他に、把持体とは別の押圧用部材を把持体に載せるように構成しても良い。
また、装填治具部分は、直接高温になった把持体8あるいは反応物と接することになるので、耐熱性が1000℃以上ある素材が好ましく用いられる。1000℃より低い温度のものであると、反応温度が1000℃に達することがあるので、変形などが伴い好ましくない。例えば、石英、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック系素材が好ましく用いられる。図9に一例の装填治具の断面図を示す。装填治具9には上部に把持部9−1を有する構造となし、その形に合わせた断熱材70を介して、把持治具71および72を介して、搬送手段29に接続する構造とすると、搬送手段に熱が伝わり難いため好ましい。断熱材70としては、1000℃に耐えられる断熱材であれば、何でも良いが、シリカやアルミナ繊維を含有する断熱材が好ましく用いられる。形状保持のためボード状になったものも好ましく用いられる。例えば、ニチアス(株)製”ファインフレックスボート”などが好ましく用いられる。
本発明での気相反応方法や装置は、中空状ナノファイバー、特にカーボンナノチューブの合成に特に好ましく用いられる。さらに、直径の小さい、直線性の良い、グラファイト化度の高い単層や2層などの層数の少ないカーボンナノチューブの合成に特に好適である。
以下、本発明の実施例について一例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は、次の方法に従って測定したものである。
(1)中空状ナノファイバーおよびカーボンナノチューブの観察
得られた反応物を日本電子データム(株)の走査電子顕微鏡”JSM−6301NF”で観察した。電子銃の加速電圧は5kV、ワークディスタンスは15mmの条件にて測定を行った。
さらに、日立製の高分解能透過型電子顕微鏡、”H−7100形”を用いて高分解のTEMを測定した。この時の加速電圧は125kVにて測定した。
(2)熱分析(TG法)
島津製作所の熱分析装置DTG−50で窒素50ml/分の気流中で、5℃/分の昇温速度で900℃まで加熱する。その結果DTA曲線の発熱ピークを見て判断する。
(3)ラマン分光法
測定装置は、ホリバ・ジョバンイボン製の”inf−300型”を用いて測定した。測定波長として、532nm、633nmの波長を用いた。
[実施例1]
本発明を実施する装置の一例を示す。図7に示す実施様態とほぼ同様な装置で、装置の大きさ、材質、機能部品等の説明を下記する。
(1)合成装置
反応室を構成する反応管は、石英製で、上部石英管は、内径が135mmで外径が145mmの肉厚5mm、長さが400mmのものを内管として、外管としての石英管を、内径が155mmで外径が165mmの肉厚5mm、長さが800mmのものを使用し、下部反応管部は直径が20mm大きい形とした。内管の石英管と外周石英管のつなぎ目部分、は外管の中央部で融着させ、内管と外管の間には、完全に気体が通らないようにした。ヒータはセラミックヒータを使用し、反応外周管と5mmの隙間をもって外周を覆う様に設置した。ヒータ部の長さが600mmとして、反応管中央部の反応場Aへ被反応物を装填したときの、その上面部と、ヒータ中央部を一致させ、さらにヒータ制御用センサ30の位置もこの位置に一致させた。ヒータ外周部は、すべて耐熱断熱材で覆う構造とした。上部バルブと下部バルブとの連絡口としてのフランジ部とはOリングを介して接続し、フランジ部へは、冷却水を流す様にした。
上部バルブと連絡口としてのフランジ部もOリングを介して閉じる構造とし、完全に密閉できる構造とした。
下部連絡口のフランジ部から、1インチ配管を使用して、1つのポートから被反応物に接触させる気体を導入できる導入ポートとした。反応管の直径方向から気体が入るようにした。これは、反応場での気体の流速に分布を持たせないために一度、流入気体を反応管の内壁部に衝突させ、できるだけ、均一の流速が得られる配慮をした。
また、上部連絡口のフランジ部から、反応場での流速をできるだけ一定にする工夫として、出口ポートを1インチ配管として、4つのポートを準備し、反応管の直径方向から排出できるようにした。配管抵抗をできるだけ同じにするため、図中配管41部へまでの4つのポートからの配管長さを同じとした。
試料投入室として、外部からの気体が入らないようにふたができる構造の投入室を、また、試料回収室として、第1の回収室と第2の回収室を設け、1回の気相反応毎に一旦、第1の回収室に入れ、その後5分経てから、第2の回収室に移動できる様に工夫した。
その他の導入するガスの系統、排出するガスの系統は、すべて図7に示すような配管として、配管径としては、1/4インチ配管を利用した。
ガスの流量制御装置としては、反応ガス系には、コフロック製アセチレンガス用”MODEL3200”最大流量200ml/分のものを、希ガス系には、コフロック製アルゴンガス用”MODEL3250”の最大流量25L/分のものを使用した。
気体が通過可能は把持体としては、シリカ、アルミナ系繊維の不織布、ニチアス(株)製の”ファインフレックスブランケットT/#5120”の密度130kg/m3のものを利用して、外径155mm、厚さ12.5mmの大きさにカットして把持体とした。この上に被反応物を載せる構造とした。なお、この”ファインフレックスブランケット”は、化学組成として、アルミナが47%、シリカが53%の成分のものである。
試料投入室には、前記把持体と被反応物を載せた試料が、反応管の内部に要領よく装填される様に、厳密に位置決めができる構造とした。位置決め機構の斜視図を図12に示す。
装填治具は、図9に示すような形態として、石英製で製作し、断熱材として、ニチアス(株)製の”ファインフレックス1300ハードボード”を利用して形作り、直動搬送用のシャフトに連結させた。前記試料に対して、装填治具を上部から押しつけて、反応管内部に装填する機構とした。装填治具の試料と接する部分の外径は、130mmとして、反応管内径よりも5mm小さくしてクリアランスを設けた。こうすることにより、把持体の外径155mmの外縁部10mmが上部に折れ曲がり、この部分が潰されてこのクリアランス部に入る。この潰された部分が、反応管内壁に力を与えて保持力ができ、上部反応管の目標位置で反応中保持できることになる。
上部から押しつけ反応管内部へ移載する手段としては、図中29にあたる搬送手段としてのシャフトからなり、図示しないが、このシャフトをガイドで支え、エアーシリンダーによって上下可能とする構造とした。
装填位置は、反応管外部に設置した機械的ストッパーを用いて、厳密に反応場での目標装填位置で停止可能とする構造とした。
第2の回収室の大きさは、これら反応後の把持体および反応物が約50バッチ分ストックできる大きさとして、高さ1200mm、一辺400mmの正方形の容器が入る大きさとした。
反応管の内部の気体を排出する機能を有する真空ポンプとして、アルバック機工製スクロール型ドライ真空ポンプDVS−631を用いた。
(2)被反応物
〔結晶性チタノシリケート〕
エヌイーケムキャット社から購入したチタノシリケート粉末(Si/Ti 比=50)のX線回折(XRD)を測定したところ、MFI型の構造を有するTS−1であることがわかった。
〔耐熱性ゼオライトへの金属塩の担持〕
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)10gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)6gとをメタノール(ナカライテスク社製)700mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液に上記TS−1の粉末100gを加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でメタノールを除去することにより、TS−1の結晶表面に金属塩を担持した触媒を得た。
〔試料の作成〕
シリカ、アルミナ系繊維の不織布、ニチアス(株)製の”ファインフレックスブランケットT/#5120”の密度130kg/m3のものを利用して、外径155mm、厚さ12.5mmの大きさにカットしたものを10枚用意した。1枚の把持体の上に前記調整された金属塩を担持した触媒を均一に厚さ3mmにふりかける様にして載せた。載せる位置は、把持体中央部に135mmの直径の円になるようにした。これを10枚分作成した。
(3)反応場の温度設定
反応場の温度条件を800℃とするための装置上のヒータの設定温度を求めた。設定温度955℃としたとき、反応場の温度として800℃±3℃となる相関を得た。この時の反応場、特に金属酸化物繊維不織布の把持体を装填した時のその上部面の直径方向の温度特性を図10に示す。この時の中央部の昇温特性を図11に示す。この時のセンサーは、坂口伝熱(株)製のK型熱電対を用い、装置下部のフランジ部のポートから導入し、センサー先端部を前記金属酸化物不織布に突き刺し、上部面にセンサー部を出す様にして直径方向に9点測定した。
(4)カーボンナノチューブの合成
A工程:ヒータの設定温度を955℃に設定し、反応場の温度が800℃±3℃になるように、90分間待ち、昇温から反応場の温度安定化時間をとった。
B工程:試料投入室の所定位置に(2)で作成したものをセットし、投入室のふたを閉じた。
C工程:試料投入室、反応室、第1回収室、第2回収室を、アルゴンにより置換した。アルゴン置換について、反応室は、アルゴンを5L/分の流量で制御し、3分間流し続けることで置換した。試料投入室および第1回収室、第2回収室はアルゴンを5L/分の流量に制御して入れ加圧状態にして、98Pa(10mmaq)の陽圧を保持するようにアルゴン流入バルブと流出バルブを制御した。
D工程:上部バルブ12を解放し、上部から装填治具が搬送手段29によって下降し、試料を押さえつけた後、反応管所定位置へ装填した。
E工程:装填治具を搬送手段29によって上昇させ、上部バルブを閉じ反応管を密閉状態にした。
F工程:アルゴンを10L/分の流量で流しながら、8分間保持させ、触媒を加熱した。この時排出用のバルブ23は解放して、配管56にアルゴン57を1L/分の流量で流しながら排出できる様にした。
G工程:アルゴンを10L/分に加えて、アセチレンを80ml/分の流量で混合して、30分間流し、気相反応させた。
H工程:アセチレンのバルブを閉じ、アルゴンのみにして2分間、10L/分の流量で反応後のガスをアルゴンで排出させるようにした。
この時、真空ポンプ25を駆動して残ったガスを迅速に排出させた。なお、この時は、排出用のバルブ23は閉じた。
I工程:反応管にアルゴンを流し、大気圧まで圧力を上げた後、上部バルブ12と下部バルブ13を解放し、装填治具(取り出し治具)を搬送手段より下降させ、反応場の位置の下20mmまでストロークさせ、反応管下部の内径155mmの部分まで下降させ、反応物となった試料を落下させ、第1回収室に収納した。
J工程:装填治具を搬送手段により上昇させ、試料投入室まで待機させた。
K工程:上部バルブ12と下部バルブ13を閉じた。
(L工程):試料が、第1回収室に収納されてから、5分後に第1回収室と第2回収室のバルブを開けて、第2回収室に収納した。なお、この動作、K工程後、他の動作に関係なく行うものとした。
M工程:試料投入室に大気を導入して、内部のアルゴンを排出しさせた。
以下B工程〜M工程を連続で行った。なお、以下の操作では、C工程における反応室のアルゴン置換は省略した。本実施例では、本サイクルを10回行った。
その後:第2回収室を大気を導入して、内部のアルゴンを排出させた後、第2回収室のふたを開け、内部の収納箱を取り出し、反応後のサンプルを取り出した。
(5)10サイクル分の合成時間
以上10サイクル分の作業を終了した。サンプルを取り出すことができるまでの時間は、ヒータの加熱など装置立ち上げ時間90分、1サイクルが約40分で、合計490分で、約8時間10分の所要時間であった。
(6)反応物の精製
金属酸化物繊維不織布から黒色になった反応生成物を掻き落とし、ゼオライトおよび担持された金属を除去するために、大気雰囲気で400℃(昇温時間40分)に加熱した。400℃で60分間保持した後、室温まで冷却した(降温時間約120分)。さらに、このカーボンナノチューブを含有する組成物を濃度5.0mol/リットル(pH3以下)のフッ化水素酸に浸漬し、室温に保持しながら5時間攪拌した。その後、ろ紙(Toyo Roshi Kaisha、Filter Paper 2号 125mm)を用いてろ過し固液分離した。ろ紙上の固形物を、精製水を用いて洗浄後、さらに、この固形物を濃度3.0mol/リットル(pH3以下)の塩酸水溶液に浸漬し、室温に保持しながら、1時間攪拌した。その後、ろ紙(Toyo Roshi Kaisha、Filter Paper 2号 125mm)を用いてろ過し固液分離した。60℃にセットした乾燥機にて乾燥し固形物を回収した。カーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、6gあった。
(7)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、内径約4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成していた。繊維状物質の割合はほぼ100%であった。その中で2層ナノチューブとそれ以外の繊維状物質の割合は、2層ナノチューブが約40%であった。この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図22に示す。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図23に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は4.6であった。
[比較例1]
(1)合成装置
本比較例で使用した装置の概略は図6に示す装置のうち、反応管とその反応場に関する部分のみを交換した様な装置で行った。この部分のみを拡大して図13に示す。反応室を構成する反応管75は、石英製で、内径が135mmで外径が145mmの肉厚5mm、長さが800mmのものを用いた。反応管中央部に5mmの立方体石英片78を4カ所、円周方向均等に融着した。この部分に、反応場用の台として、直径132mmで厚さ5mmの円盤状のもので、9mm直径の穴を多数空けたアルミナ系セラミック79を準備し、突起状に融着された石英片4カ所78を足場として設置した。このアルミナ系セラミック板の概略図を図14に示す。そのアルミナ系セラミック板の上に石英ウール80を適当に敷き詰め、反応管上部から見て隙間が見えない様にした。この時の石英ウール部の厚さ(高さ)は、10mmであった。粉状あるいは粒子状被反応物81を載せる場所をつくった。ヒータ76はセラミックヒータを使用し、反応外周管と15mmの隙間をもって外周を覆う様に設置した。ヒータ部の長さが600mmとして、反応管中央部の反応場Aへ被反応物を装填したときの、その上面部と、ヒータ中央部を一致させ、さらにヒータ制御用センサ77の位置もこの位置に一致させた。ヒータ外周部は、すべて耐熱断熱材で覆う構造とした。上部バルブと下部バルブとの連絡口としてのフランジ部とはOリングを介して接続し、フランジ部へは、冷却水を流す様にした。
上部バルブと連絡口としてのフランジ部もOリングを介して閉じる構造とし、完全に密閉できる構造とした。
下部連絡口のフランジ部から、1インチ配管を使用して、1つのポートから被反応物に接触させる気体を導入できる導入ポートとした。反応管の直径方向から気体が入るようにした。これは、反応場での気体の流速に分布を持たせないために一度、流入気体を反応管の内壁部に衝突させ、できるだけ、均一の流速が得られる配慮をした。
また、上部連絡口のフランジ部から、反応場での流速をできるだけ一定にする工夫として、出口ポートを1インチ配管として、4つのポートを準備し、反応管の直径方向から排出できるようにした。配管抵抗をできるだけ同じにするため、図中配管41部へまでの4つのポートからの配管長さを同じとした。
導入するガスの系統、排出するガスの系統は、すべて図6に示すような配管として、配管径としては、1/4インチ配管を利用した。
ガスの流量制御装置としては、反応ガス系には、コフロック製アセチレンガス用”MODEL3200”最大流量200ml/分のものを、希ガス系には、コフロック製アルゴンガス用”MODEL3250”の最大流量25L/分のものを使用した。
(2)被反応物
〔結晶性チタノシリケート〕
エヌイーケムキャット社から購入したチタノシリケート粉末(Si/Ti 比=50)のX線回折(XRD)を測定したところ、MFI型の構造を有するTS−1であることがわかった。
〔耐熱性ゼオライトへの金属塩の担持〕
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)10gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)6gとをメタノール(ナカライテスク社製)700mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液に上記TS−1の粉末100gを加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でメタノールを除去することにより、TS−1の結晶表面に金属塩を担持した触媒を得た。
〔被反応物の投入〕
図6に示す上部のバルブを開け、上から網状のふるいにかけて前記TS−1の結晶表面に金属塩を担持した触媒を振りかけ、石英ウールが見えにくくなるまでできるだけ均等にふりかけ入れた。その量は10gであった。
(3)反応場の温度設定
反応場の温度条件を800℃とするための装置上のヒータの設定温度を求めた。設定温度982℃としたとき、反応場の温度として800℃±3℃となる相関を得た。この時の反応場、特に金属酸化物繊維不織布の把持体を装填した時のその上部面の直径方向の温度特性を図15に示す。この時の中央部の昇温特性を図16に示す。この時のセンサーは、坂口伝熱(株)製のK型熱電対を用い、装置下部のフランジ部のポートから導入し、センサー先端部を前記金属酸化物不織布に突き刺し、上部面にセンサー部を出す様にして直径方向に9点測定した。
(4)カーボンナノチューブの合成
A工程:反応室の上部バルブと下部バルブを閉め、アルゴンにより置換した。アルゴンを10L/分の流量で制御し、5分間流し続けることで置換した。この時排出用のバルブ23は解放して、配管56にアルゴン57を1L/分の流量で流しながら排出できる様にした。
B工程:アルゴンの流量を1L/分の流量に変更し、ヒータの設定温度を982℃に設定し、反応場の温度が800℃±3℃になるように、90分間待ち、昇温から反応場の温度安定化時間をとった。
C工程:アルゴンを10L/分の流量に変更し導入するのに加えて、アセチレンを80ml/分の流量で混合して、30分間流し、気相反応させた。
D工程:アセチレンのバルブを閉じ、アルゴンのみにして10分間、10L/分の流量で反応後のガスをアルゴンで排出させる様にした。
E工程:ヒータの電源を切り、温度を下降させた。ヒータおよび反応管の温度が、約50℃に下降するまで待った。この時間は、約7.5時間を要した。
F工程:円管状ヒータを反応管から外し、その後、反応管を上部バルブ、下部バルブから取り外し、その後、反応管を逆さにして、反応物を取り出した。
A〜F工程までに要した時間は、約10時間であった。
(5)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、0.6gあった。
実施例1の所要時間が約8時間10分に対して、比較例1では、所要時間が約10時間も要したのにも関わらず、炭素系黒色物の収量は、6gに対して0.6gと1/10であった。
(6)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、内径約4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成していた。繊維状物質の割合はほぼ100%であった。その中で2層ナノチューブとそれ以外の繊維状物質の割合は、2層ナノチューブが約40%であった。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図24に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は4.23であった。
[実施例2]
実施例1と同様な装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。
(1)合成装置
実施例1と全く同様の装置を用いた。
(2)被反応物
実施例1と全く同様な方法で作成した。
(3)反応場の温度設定
実施例1と全く同様な方法で実施した。
(4)カーボンナノチューブの合成
A工程〜E工程までは、実施例1と全く同様に行った。
F工程:真空ポンプで反応室内を排気し、8分間排気し続けた。この間、触媒は、反応場で加熱したことになる。8分後の時点での反応管内の圧力は96Paであった。
G工程:アセチレンを80ml/分の流量で30分間流し、気相反応させた。この間も連続して真空ポンプにより排気した状態とした。
H工程:アセチレンのバルブを閉じ、残ったガスを迅速に排出させる様、約1分間真空ポンプを駆動させた状態とした。この時は、排出用のバルブ23は閉じた。
I工程:反応管にアルゴンを流し、大気圧まで圧力を上げた後、上部バルブ12と下部バルブ13を解放し、装填治具(取り出し治具)を搬送手段より下降させ、反応場の位置の下20mmまでストロークさせ、反応管下部の内径155mmの部分まで下降させ、反応物となった試料を落下させ、第1回収室に収納した。
J工程:装填治具を搬送手段により上昇させ、試料投入室まで待機させた。
K工程:上部バルブ12と下部バルブ13を閉じた。
(L工程):試料が、第1回収室に収納されてから、5分後に第1回収室と第2回収室のバルブを開けて、第2回収室に収納した。なお、この動作、K工程後、他の動作に関係なく行うものとした。
M工程:試料投入室に大気を導入して、内部のアルゴンを排出しさせた。
以下B工程〜M工程を連続で行った。なお、以下の操作では、C工程における反応室のアルゴン置換は省略した。本実施例では、本サイクルを10回行った。
その後:第2回収室を大気を導入して、内部のアルゴンを排出させた後、第2回収室のふたを開け、内部の収納箱を取り出し、反応後のサンプルを取り出した。
(5)10サイクル分の合成時間
以上10サイクル分の作業を終了した。サンプルを取り出すことができるまでの時間は、ヒータの加熱など装置立ち上げ時間90分、1サイクルが約40分で、合計490分で、約8時間10分の所要時間であった。
(6)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、5.6gあった。
(7)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、内径約4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成していた。繊維状物質の割合はほぼ100%であった。その中で2層ナノチューブとそれ以外の繊維状物質の割合は、2層ナノチューブが約40%であった。この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図25に示す。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図26に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は5.07であった。
[実施例3]
実施例1と同様な装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。
(1)合成装置
実施例1と同様の装置を用いた。これに、図8に示す気化装置を追加した。容器の大きさは、内管直径160mm、高さ240mmの容器で、円周上にラバーヒータを全面を覆うようにセットし、下部にはプレートヒータを設置した。いずれも電気抵抗式のヒータである。また、反応管までの配管は、配管にヒータを巻き付け、配管を50℃に保つ様にした。
また、ガスの流量制御装置としては、反応ガス系には、コフロック製面積式流量計”RK1250−25”最大流量200ml/分のものを使用した。
(2)被反応物
(Co+Fe)/USY(シリカアルミナ比390)
〔USY型ゼオライトへの金属塩の担持〕
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)6.4gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)8.8gとをエタノール(ナカライテスク社製)70mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液に、USY型ゼオライト(東ソー製HSZ-390HUA、シリカ/アルミナ比390)を100g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でエタノールを除去して、USY型ゼオライト粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
〔試料の作成〕
シリカ、アルミナ系繊維の不織布、ニチアス(株)製の”ファインフレックスブランケットT/#5120”の密度130kg/m3のものを利用して、外径155mm、厚さ12.5mmの大きさにカットしたものを10枚用意した。1枚の把持体の上に前記調整された金属塩を担持した触媒を均一に厚さ3mmにふりかける様にして載せた。載せる位置は、把持体中央部に135mmの直径の円になるようにした。これを10枚分作成した。
(3)反応場の温度設定
実施例1と全く同様な方法で実施した。
(4)カーボンナノチューブの合成
A工程:ヒータの設定温度を955℃に設定し、反応場の温度が800℃±3℃になるように、90分間待ち、昇温から反応場の温度安定化時間をとった。
B工程:図8に示す気化装置の容器に400mlの液体エタノールを入れ、エタノールが蒸気化する様に、ヒータの設定温度を90℃にした。その後、容器上部の圧力が上昇し、リリーフ弁を0.1Paになるように設定し、配管65へ送り込むエタノール蒸気の圧力を0.1Paとした。ヒータの温度設定はコントローラにより絶えず90℃になるように制御した。
C工程:試料投入室の所定位置に(2)で作成したものをセットし、投入室のふたを閉じた。
D工程:試料投入室、反応室、第1回収室、第2回収室を、アルゴンにより置換した。アルゴン置換について、反応室は、アルゴンを5L/分の流量で制御し、3分間流し続けることで置換した。試料投入室および第1回収室、第2回収室はアルゴンを5L/分の入れ加圧状態にして、98Pa(10mmaq)の陽圧を保持するようにアルゴン流入バルブと流出バルブを制御した。
E工程:上部バルブ12を解放し、上部から装填治具が搬送手段29によって下降し、試料を押さえつけた後、反応管所定位置へ装填した。
F工程:装填治具を搬送手段29によって上昇させ、上部バルブを閉じ反応管を密閉状態にした。
G工程:アルゴンを10L/分の流量で流しながら、8分間保持させ、触媒を加熱した。この時排出用のバルブ23は解放して、配管56にアルゴン57を1L/分の流量で流しながら排出できる様にした。
H工程:アルゴンを10L/分に加えて、気化されたエタノールを80ml/分の流量で混合して、30分間流し、気相反応させた。
I工程:エタノールのバルブを閉じ、アルゴンのみにして2分間、10L/分の流量で反応後のガスをアルゴンで排出させるようにした。
この時、真空ポンプ25を駆動して残ったガスを迅速に排出させた。なお、この時は、排出用のバルブ23は閉じた。
J工程:反応管にアルゴンを流し、大気圧まで圧力を上げた後、上部バルブ12と下部バルブ13を解放し、装填治具(取り出し治具)を搬送手段より下降させ、反応場の位置の下20mmまでストロークさせ、反応管下部の内径155mmの部分まで下降させ、反応物となった試料を落下させ、第1回収室に収納した。
K工程:装填治具を搬送手段により上昇させ、試料投入室まで待機させた。
L工程:上部バルブ12と下部バルブ13を閉じた。
(M工程):試料が、第1回収室に収納されてから、5分後に第1回収室と第2回収室のバルブを開けて、第2回収室に収納した。なお、この動作、L工程後、他の動作に関係なく行うものとした。
N工程:試料投入室に大気を導入して、内部のアルゴンを排出しさせた。
以下C工程〜N工程を連続で行った。なお、以下の操作では、D工程における反応室のアルゴン置換は省略した。本実施例では、本サイクルを10回行った。
その後:第2回収室を大気を導入して、内部のアルゴンを排出させた後、第2回収室のふたを開け、内部の収納箱を取り出し、反応後のサンプルを取り出した。
(5)10サイクル分の合成時間
以上10サイクル分の作業を終了した。サンプルを取り出すことができるまでの時間は、ヒータの加熱など装置立ち上げ時間90分、1サイクルが約40分で、合計490分で、約8時間10分の所要時間であった。
(6)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、5.8gあった。
(7)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。更に、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。直径20nm以上のナノファイバーは全く観察されなかった。この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図27に示す。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図28に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は15.4であった。
[実施例4]
実施例3と同様な装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。
(1)合成装置
実施例3と全く同様の装置を用いた。
(2)被反応物
実施例3と全く同様な方法で作成した。
(3)反応場の温度設定
実施例1と全く同様な方法で実施した。
(4)カーボンナノチューブの合成
A工程〜F工程までは、実施例3と全く同様に行った。
G工程:真空ポンプで反応室内を排気し、8分間排気し続けた。この間、触媒は、反応場で加熱したことになる。8分後の時点での反応管内の圧力は4000Paであった。
H工程:気化したエタノールを80ml/分の流量で30分間流し、気相反応させた。この間も連続して真空ポンプにより排気した状態とした。
I工程:気化したエタノールのバルブを閉じ、残ったガスを迅速に排出させる様、約1分間真空ポンプを駆動させた状態とした。この時は、排出用のバルブ23は閉じた。
J工程:反応管にアルゴンを流し、大気圧まで圧力を上げた後、上部バルブ12と下部バルブ13を解放し、装填治具(取り出し治具)を搬送手段より下降させ、反応場の位置の下20mmまでストロークさせ、反応管下部の内径155mmの部分まで下降させ、反応物となった試料を落下させ、第1回収室に収納した。
K工程:装填治具を搬送手段により上昇させ、試料投入室まで待機させた。
L工程:上部バルブ12と下部バルブ13を閉じた。
(M工程):試料が、第1回収室に収納されてから、5分後に第1回収室と第2回収室のバルブを開けて、第2回収室に収納した。なお、この動作、L工程後、他の動作に関係なく行うものとした。
N工程:試料投入室に大気を導入して、内部のアルゴンを排出しさせた。
以下C工程〜N工程を連続で行った。なお、以下の操作では、D工程における反応室のアルゴン置換は省略した。本実施例では、本サイクルを10回行った。
その後:第2回収室を大気を導入して、内部のアルゴンを排出させた後、第2回収室のふたを開け、内部の収納箱を取り出し、反応後のサンプルを取り出した。
(5)10サイクル分の合成時間
以上10サイクル分の作業を終了した。サンプルを取り出すことができるまでの時間は、ヒータの加熱など装置立ち上げ時間90分、1サイクルが約40分で、合計490分で、約8時間10分の所要時間であった。
(6)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、5.7gあった。
(7)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。更に、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。直径20nm以上のナノファイバーは全く観察されなかった。この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図29に示す。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図30に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は27.6であった。
[実施例5]
(1)合成装置
被反応物の把持体以外は実施例1と全く同様の装置を用いた。被反応物の把持体は図33、34に示したものと同じ構成とした。線径が0.5mmの日本タングステン(株)社製Ce−Mo合金製ワイヤー(M958)を2枚の金属酸化物繊維の間に挟んだ。ワイヤーはφ120の環状形状からなる反応領域支持部とこれに連結された4箇所の円弧形状の弾性把持部からなるように加工したものである。2枚の金属酸化物繊維はイソライト工業(株)社製の外径160mm、厚み2.5mmのアルミナ、シリカを主成分とする耐熱温度1260℃のセラミックス断熱材(イソウール エースペーパー1260)を用いた。
(2)被反応物
被反応物を載せる把持体として、上記(1)で説明したものを用いること以外は、実施例1と全く同様な方法で被反応物を載せて試料を作成した。
(3)反応場の温度設定
実施例1と全く同様な方法で実施した。
(4)カーボンナノチューブの合成
実施例1と全く同様に行った。10サイクルの合成中の間、反応管内を時々観察して、把持体の位置が全くずれず、また、中央部で全く撓まないことを確認した。また、金属酸化物繊維の間に挟んだワイヤーに特に付着生成物は見られず、該ワイヤーが触媒作用していないことを確認した。
(5)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、6.8gあった。実施例1よりもさらに多くのカーボンナノチューブが生成できた。
(6)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、内径4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成していた。繊維状物質の割合はほぼ100%であった。その中で2層ナノチューブとそれ以外の繊維状物質の割合は、2層ナノチューブが約40%であった。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図23に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は4.8であった。
[実施例6]
(1)合成装置
被反応物の把持体以外は実施例1と全く同様の装置を用いた。被反応物の把持体は純度99.5%のアルミナ製多孔板を2枚の金属酸化物繊維の間に挟んだ。2枚の金属酸化物繊維は実施例5で用いたものと全く同じである。アルミナ製多孔板は耐熱温度が1900℃で、外径130mm、厚み1mmで、全面にφ2mm、ピッチ4mmの孔が加工されたものである。
(2)被反応物
被反応物を載せる把持体として、上記(1)で説明したものを用いること以外は、実施例1と全く同様な方法で被反応物を載せて試料を作成した。
(3)反応場の温度設定
実施例1と全く同様な方法で実施した。
(4)カーボンナノチューブの合成
実施例1と全く同様に行った。10サイクルの合成中の間、反応管内を時々観察して、把持体が中央部で全く撓まないことを確認した。
(5)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収されたカーボンナノチューブを含む炭素系黒色物の量は、6.5gあった。実施例1よりもさらに多くのカーボンナノチューブが生成できた。
(6)反応物の分析
生成された反応物の一部の形状を高分解能透過型電子顕微鏡で測定したところ、内径4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成していた。繊維状物質の割合はほぼ100%であった。その中で2層ナノチューブとそれ以外の繊維状物質の割合は、2層ナノチューブが約40%であった。
また、この時の一部のサンプルについて、共鳴ラマン散乱測定法により得られたスペクトル結果を図23に示す。1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大ピーク強度をDとしたときのG/D比は4.6であった。
さらに、多孔板の孔配置の影響による生成物のムラの有無を評価するために、1組の把持体上に付着した2層ナノチューブを任意の10箇所でサンプル採取し、上記と同様に分析を行った。10箇所すべてのサンプルで、内径4nmの2層カーボンナノチューブが多く生成し、繊維状物質の割合はほぼ100%であり、その中で2層ナノチューブが約40%であり、サンプル間で大きな差はなかった。また、G/D比に関しても4.3〜4.8の範囲となり、サンプル間で大きな差はなかった。したがって、多孔板の孔配置の影響による生成物のムラは殆ど無かった。
[比較例2]
(1)合成装置
比較例1と全く同様な装置で実施した。反応場用の台として、直径132mmで厚さ5mmの円盤状のもので、10mm直径の穴を多数空けたアルミナ系セラミックを準備し、突起状に融着された石英片4カ所を足場として設置した。このアルミナ系セラミック板の概略図を図14に示す。そのアルミナ系セラミック板の上に石英ウールを適当に敷き詰め、比較例1では、反応管上部から見て隙間が見えない様にし、この時の石英ウール部の厚さ(高さ)は、10mmであったが、比較例2では、うっすら底が見える程度に石英ウールをそっと敷き詰め、その厚さは2mm程度でかろうじて、粉状あるいは粒子状被反応物を載せられる様にした。その他は、比較例1と全く同様な装置とした。
(2)被反応物
比較例1と全く同様に作成した。
〔被反応物の投入〕
図6に示す上部のバルブを開け、上から網状のふるいにかけて前記TS−1の結晶表面に金属塩を担持した触媒を振りかけ、石英ウールが見えにくくなるまでできるだけ均等にふりかけ入れた。その量は10gであった。
(3)反応場の温度設定
比較例1と全く同様な方法で設定した。
(4)カーボンナノチューブの合成
比較例1と全く同様な方法で設定した。
(5)反応物の分析
生成された反応物を上から見ると、外縁部と、図14に示す通過穴部は黒い色をしていたが、その他の部分は白から灰色系の色をしていた。黒色部分を分析すると一部多層に一部ナノファイバーに一部2層が見えた。白から灰色系の部分を分析すると直径が50nm以上のナノファイバーは観察されたが、単層や2層ナノチューブは観察されなかった。
この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図31に示す。
(6)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収された黒色系炭素組成物は0.4gあった。
[比較例3]
(1)合成装置
比較例1と同様な装置で実施した。但し、反応場の位置を変更した。反応管中央部より150mm上部に5mmの立方体石英片を4カ所、円周方向均等に融着した。この部分に、反応場用の台として、直径132mmで厚さ5mmの円盤状のもので、10mm直径の穴を多数空けたアルミナ系セラミックを準備し、突起状に融着された石英片4カ所を足場として設置した。そのアルミナ系セラミック板の上に石英ウールを適当に敷き詰め、反応管上部から見て隙間が見えない様にし、この時の石英ウール部の厚さ(高さ)は、10mmであった。その他は、比較例1および2と全く同様な装置とした。
(2)被反応物
比較例1と全く同様に作成した。
〔被反応物の投入〕
比較例1と同様に10gの被反応物を投入した。
(3)反応場の温度設定
比較例1と全く同様な方法で設定した。この時の反応管中央部の上下方向の温度分布を測定し、その結果を図17に示す。また、この時の中央部より150mm上方での面内温度分布を測定し、その結果を図18に示す。
(4)カーボンナノチューブの合成
比較例1と全く同様な方法で設定した。
(5)反応物の分析
生成された反応物を上から見ると、全体的に黒に少しばかり灰色系の色が混ざった様な反応物であった。反応管に近い外縁部は濃い黒色であった。一部は多層カーボンナノチューブが、一部は径の太いナノファイバーが、一部は2層カーボンナノチューブが見えた。
白から灰色系の部分を分析すると直径が50nm以上のナノファイバーが観察されたのみであった。この時の透過型電子顕微鏡の写真を何枚か取り、観察したが、その1枚を図32に示す。
(6)反応物の精製
実施例1と全く同様な方法で黒色反応物の精製を行い、回収された黒色系炭素組成物は0.7gあった。