JP5017740B2 - ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクル性に優れ、かつ耐熱性・機械的特性・成形性に優れた熱可逆架橋性ポリオレフィン系樹脂発泡体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポリオレフィン系架橋発泡体は耐熱性、軽量性、断熱性、遮音性に優れていることや各種の加工法による成形が容易であることから自動車内装用緩衝材、建築用途などにおける断熱材、粘着テープやパッキンなどの包装用材料、などの種々の産業資材分野で広く利用されている。
【0003】
このポリオレフィン系樹脂発泡体は無架橋発泡体と架橋発泡体とに大別される。
【0004】
無架橋発泡体は主として押出発泡法により製造される。その押出発泡用の原料樹脂には、均質な気泡を有する発泡体を得るために高い溶融強度やひずみ硬化性が必要とされるが、通常の直鎖状ポリマーではこれらが不足することが多いため、分岐鎖構造や部分的な架橋構造を導入することが多い。この目的のため、いわゆる高溶融張力ポリプロピレンや分岐構造を持つ低密度ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体、もしくは超高分子量成分を含むポリエチレンやポリプロピレンなどが原料樹脂の一部または全部に用いられることが多い。ポリオレフィン系無架橋発泡体は架橋構造を実質的に持たないために、再融解成形が容易であるのでリサイクル性が高い。しかし、結晶融解温度以上では発泡体形状が保てず、発泡体の加熱成形加工性が低いという欠点がある。
【0005】
一方、架橋発泡体はポリオレフィン樹脂組成物に発泡剤を加えてシート状に成形した後、架橋構造を導入し、発泡剤を熱分解させて発泡させて製造される。この架橋発泡体に架橋構造を導入する方法としては、放射線や電子線の照射による方法、有機過酸化物などの熱分解型架橋剤の配合による方法、アルコキシシリル基を導入しそれを縮合反応させる方法などがある。かかる手法によればいずれの架橋も共有結合に基づくため、熱的に安定である。このため一般に架橋発泡体は無架橋発泡体より耐熱性・強度など物性に優れ、加熱成形加工性が高い。しかしながら、従来の架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体は、樹脂の分解温度近辺に加熱しない限り溶融流動性を示さないため、実質的に再溶融成形が困難であり、リサイクル性に劣るという欠点がある。
【0006】
たとえば、ポリオレフィン系発泡体はインパネ、ドア、天井などの自動車内装材に緩衝材として用いられているが、必要とされる成形性、耐熱性などを満たすため、ポリプロピレンまたはポリエチレン系樹脂組成物には電子線照射などにより架橋構造が導入されている。この架橋構造は、発泡体の成形加工時や使用時においては有用であるが、使用済みの自動車内装材あるいは成形加工時の回収物を溶融させる際の溶融流動性を損なうため、リサイクルが困難であるという問題がある。
【0007】
また、従来の架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体においてもゲル分率を低く制御しゲル分率を約15〜20%以下になるようにすると再融解・押出しが可能となる場合もあるが、このような発泡体は架橋発泡体としての耐熱性や成形性が不足する場合が多く、表面が粗くなりやすく、また混練時とりわけ無架橋樹脂との混練においてゲル成分が分散不良を起こし、成形体にした場合、欠陥・欠点となりやすいという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、架橋発泡体並の成形加工性、強度、耐熱性などの諸物性をもち、無架橋発泡体並のリサイクル性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
[1]流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であって熱可逆架橋性を示すポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)と、熱可逆架橋性を持たずゲル分率が0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)とからなり、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)をなす樹脂が、実質的にポリプロピレン骨格からなるポリオレフィン系樹脂であり、
かつその混合比率(A)/(B)が20/80〜70/30である樹脂組成物を成形および発泡させてなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。
【0010】
[2]ポリオレフィン系樹脂(B)のうちの一部または全部(5〜100%)が、分岐鎖構造を持つポリエチレン系樹脂であることを特徴とする[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【0011】
[3]自動車内装材用の発泡体であって、かつ、発泡体のゲル分率が15〜70%、発泡倍率が5〜50倍であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【0012】
[4]流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であって熱可逆架橋性を示すポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)と、熱可逆架橋性を持たずゲル分率が0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)とからなり、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)をなす樹脂が、実質的にポリプロピレン骨格からなるポリオレフィン系樹脂であり、
かつその混合比率(A)/(B)が20/80〜70/30である樹脂組成物を、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)の流動開始温度Tc(℃)以上の温度に設定された押出機内で、無機または有機の発泡剤と共存させ、次いで、[前記流動開始温度Tc−20](℃)以上の温度に設定された押出し口金から溶融押出と同時に発泡させることによりポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の発泡体は、ポリオレフィン系樹脂組成物を成形及び発泡させてなるものであって、そのポリオレフィン系樹脂組成物として、流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であって熱可逆架橋性を示すポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)と、ゲル分率が0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)とからなり、かつその混合比率(A)/(B)が重量比で5/95〜100/0、好ましくは20/80〜70/30である樹脂組成物を用いるものである。
【0022】
ここで流動開始温度Tc(℃)は、JIS K7210(B法)に準拠し、荷重21.18Nにて、測定温度だけを変えて室温から5℃刻みで昇温して測定したメルトインデックス(MI)の値が初めて0.1以上になる温度であり、上記ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)の流動開始温度Tcは、ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)の結晶融点以上にあって170〜250℃、好ましくは200〜250℃であるものである。その流動開始温度Tcが低過ぎる場合は、その発泡体の耐熱性が無架橋発泡体とあまり変わらず、熱可逆性樹脂を用いる意義がない。逆に高過ぎる場合は、ポリオレフィン樹脂としては発泡前の押出機内部温度が高くなりすぎるため、樹脂成分の劣化・分解がおこるという不都合があり、発泡体用としては不適当である。
【0023】
さらに上記ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)は、熱可逆架橋性を示すものであり、ここで熱可逆架橋性とは、昇温過程においてある温度以上で実質的に架橋が解離し、かつ降温過程においてある温度以下で実質的に架橋が形成されることを意味する。
【0024】
このポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)(以下、熱可逆架橋性樹脂(組成物)(A)という)は、流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であること、かつ、熱可逆架橋性を示すという要件を満足すれば、ポリオレフィン系樹脂のみで構成されてもよいし、また、ポリオレフィン系樹脂に添加剤が配合された樹脂組成物であってもよい。
【0025】
ここで、熱可逆架橋性樹脂成分(A)を構成するポリオレフィン系樹脂は、この樹脂を構成する全モノマーの主成分(例えば50mol%以上)はオレフィンモノマーであれば特に限定されるものでなく、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン1、ヘキセン−1などの炭素数2〜12のα―オレフィン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのジエンなどが例示され、これらのうちの2種類以上のモノマーを含んでいてもよい。同様に「実質的にポリプロピレン骨格からなる樹脂」および「実質的にポリエチレン骨格からなる樹脂」とは、該樹脂を構成するモノマーの主成分(例えば50mol%以上)がそれぞれプロピレン及びエチレンであることを示す。
【0026】
この熱可逆架橋性樹脂成分(A)としては、たとえば、特開平6−57062号公報や同7−94029号公報に記載されているような不飽和カルボン酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂と分子内に少なくとも2つ以上の水酸基を有する多価アルコール化合物および有機カルボン酸の金属塩などの反応促進剤からなる樹脂組成物や、特開平11−106578号公報に開示されているようなカルボン酸無水物変性オレフィン系樹脂と2つ以上の水酸基を含有する化合物からなる樹脂組成物などが挙げられる。
【0027】
これらのカルボン酸無水物変性オレフィン系樹脂としては、基本的には、α−オレフィンとエチレン性カルボン酸無水物との共重合体と、α−オレフィン系樹脂のエチレン性カルボン酸無水物によるグラフト体がある。共重合体・グラフト体いずれも熱可逆架橋性を示す限り問題なく使用でき、前者ではエチレンと、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、特にはマレイン酸無水物、との2元または多元共重合体が好ましく、後者ではエチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂に、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、特にはマレイン酸無水物、をグラフトしたものが好ましい。
【0028】
また、2つ以上の水酸基を含有する化合物としては、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロオクタンジオール、1,5−シクロオクタンジオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、4,4'−イソプロピリデン−ジシクロヘキサノール、α,α'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1,4−ジイソプロピルシクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0029】
この場合、熱可逆架橋性樹脂成分(A)における前記カルボン酸無水物変性オレフィン系樹脂と前記水酸基含有化合物との組成比は、カルボン酸無水物基数に対する水酸基数の比が0.1〜10となることが好ましく、さらに0.2〜5となることが好ましい。
【0030】
さらに、熱可逆架橋性樹脂成分(A)は、その溶融特性が下記(1)、(2)及び(3)式を同時に満たすことが望ましい。
【0031】
MI(200℃)≦0.5 …(1)
MI(290℃)>300 …(2)
MI(230℃)/MI(260℃)≦0.1 …(3)
ここで、MI(200℃)、MI(230℃)、MI(260℃)、MI(290℃)は、それぞれ、測定温度を200℃、230℃、260℃、290℃とする以外はJIS K7210(B法)に準拠して、荷重21.18Nで測定されるメルトインデックスの値である。なお、式(1)〜(3)において流動しない場合はMI=0とする。
【0032】
熱可逆架橋性樹脂成分(A)の架橋の程度は、例えば前記カルボン酸無水物変性オレフィン系樹脂と前記水酸基含有化合物との組成比やカルボン酸無水物残基の分率を制御することにより制御できる。熱可逆架橋性樹脂成分(A)のゲル分率は好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上である。
【0033】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体を得るための樹脂組成物は、その発泡加工温度における粘度特性等の樹脂特性が所望の発泡加工に適したものとなるように、熱可逆架橋性樹脂成分(A)を上記のように特定することを要するが、さらに、ゲル分率0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)を特定割合で配合することが好ましい。
【0034】
その混合比率(A)/(B)は重量比で5/95〜100/0、好ましくは20/80〜70/30であり、ポリオレフィン系樹脂(B)の配合は、発泡加工温度における樹脂特性を制御し、所望特性の発泡体を製造するために効果的である。
【0035】
一般の架橋発泡体並の成形加工性、強度などの諸物性を得るための本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率は、5〜70%、好ましくは15〜70%である。また、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体を自動車内装材用とする場合は、発泡体のゲル分率が15〜70%、好ましくは30〜60%であり、発泡倍率が5〜50倍、好ましくは10〜30倍である。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂(B)としては、該樹脂を構成する全モノマーの主成分(例えば50mol%以上)がオレフィンモノマーであれば特に限定されるものでなく、たとえば、低密度ポリエチレン(直鎖または分岐)、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物(SEPS)、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体水添物およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはたとえば電子線照射や過酸化物などの架橋方法によりゲル分率15%以下、好ましくは10%以下に架橋されていてもよい。
【0037】
さらに、ポリオレフィン系樹脂(B)は、通常の直鎖状ポリオレフィンに比べ溶融張力が高くひずみ硬化性の大きな樹脂、たとえば高溶融張力ポリプロピレンや分岐構造を持つ低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などのほか、分子量1000万以上の超高分子量成分を含むポリエチレンもしくはポリプロピレン、あるいはアクリル酸などにより変性されたポリテトラフルオロエチレンなどの熱可塑性樹脂用の改質剤を添加した直鎖または分岐ポリオレフィンを、一部または全部として(例えば5〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%)含むことが好ましい。
【0038】
また、ポリオレフィン系樹脂(B)は、下記(4)式を満たすポリプロピレン系樹脂、または下記(5)式を満たすポリエチレン系樹脂を一部または全部として(例えば5〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%)含むことが好ましい。
【0039】
log(MT230)>−0.56・log(MI230)+0.74 …(4)
ここで、MT230及びMI230はそれぞれ230℃で測定した溶融張力(cN)及び230℃でのメルトインデックスの値を示す。
【0040】
log(MT190)>−0.50・log(MI190)+0.95 …(5)
ここで、MT190及びMI190はそれぞれ190℃で測定した溶融張力(cN)及び190℃でのメルトインデックスの値を示す。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂(B)には、発泡に適した架橋密度および架橋分布を持ちかつ所望の発泡体物性を付与するため、熱可逆架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物(A)と相溶性のよい成分と相溶性の悪い成分の各片方または両方を持つよう設計してもよい。
【0042】
たとえば、熱可逆架橋性樹脂成分(A)がポリプロピレン系樹脂組成物である場合、ポリオレフィン系樹脂(B)としては、熱可逆架橋性樹脂成分(A)と相溶性のよいポリプロピレン系成分としてはホモポリプロピレン、ランダムエチレンプロピレン共重合体、ブロックランダムエチレンプロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、好ましくは分岐構造あるいは超高分子量成分をもつポリプロピレン系樹脂、を例示することができ、熱可逆架橋性樹脂成分(A)と相溶しないポリエチレン系成分としては低密度ポリエチレン(直鎖または分岐)、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、SEBS、SEPSなどを例示できる。
【0043】
熱可逆架橋性樹脂成分(A)がポリプロピレン系樹脂組成物である場合は、熱可逆架橋性樹脂成分(A)中のポリプロピレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂(B)としてのポリプロピレン系樹脂との重量組成比が1/9〜8/2であることが好ましく、より好ましく2/8〜7/3である。さらに、良好な耐熱性と柔軟性をもつ発泡体であるためには、熱可逆架橋性樹脂成分(A)と相溶性の悪い成分をポリオレフィン系樹脂(B)として配合することが好ましく、熱可逆架橋性樹脂成分(A)と相溶しない成分の割合は、ポリオレフィン系樹脂(B)の総重量に対し5〜60%が好ましく、より好ましくは10〜50%である。
【0044】
熱可逆架橋性樹脂成分(A)の溶融粘度は、流動開始温度Tcにより大きく変化するため、熱可逆架橋性樹脂成分(A)とポリオレフィン系樹脂(B)とを発泡成形前に混練する際の混練温度は、両者の結晶融点以上でかつ両者の粘度が大きく異ならないような温度とすることが好ましい。
【0045】
その混練温度については、測定温度をその混練温度に設定してJIS K7210(B法)に準拠し、荷重21.18Nで測定されるメルトインデックス(MI)の値を、熱可逆架橋性樹脂成分(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)のそれぞれについて、MI(A)、MI(B)とすると、
0.01<MI(A)/MI(B)<100
を満たすことが好ましく、さらに、
0.1<MI(A)/MI(B)<10
を満足する温度がより好ましい。
【0046】
さらに、ポリオレフィン系樹脂(B)として、熱可逆架橋性樹脂成分(A)と相溶性のよい成分(Ba)と、相溶しない成分(Bb)との両方を含む場合には、その混練温度は、熱可逆架橋性樹脂成分(A)、相溶成分(Ba)及び非相溶成分(Bb)のいずれの結晶融点以上であり、かつそれら成分(A)、(Ba)、(Bb)の粘度が大きく異ならないような温度とすることが好ましい。
【0047】
その混練温度については、測定温度をその混練温度に設定してJIS K7210(B法)に準拠して測定されるメルトインデックス(MI)の値を、熱可逆架橋性樹脂成分(A)、相溶成分(Ba)のそれぞれについて、MI(A)、MI(Ba)とすると、
0.1<MI(A)/MI(Ba)<10
を満たすことが好ましく、さらに、
0.2<MI(A)/MI(Ba)<5
を満足する温度がより好ましい。
【0048】
ポリオレフィンのような結晶性ポリマーは、一般に融点以上に加熱して発泡成形を行うが、温度上昇に伴う溶融粘度の低下を緩やかにし、かつ発泡適性のあるひずみ硬化性を付与して発泡加工に適した樹脂特性とするために長鎖分岐構造や架橋構造を導入される。溶融粘度が低すぎると発泡時にガス抜けを起こしやすく、また溶融粘度が高すぎると高発泡倍率の発泡体を得ることができず、さらに溶融粘度が高すぎると押出機からの押出しが困難であったり、押出成形物の表面が荒れるなどの不具合が生じる。本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体のための樹脂組成物は、その発泡成形温度における樹脂特性が所望の発泡加工に適したものとなるよう、熱可逆架橋性樹脂成分(A)とポリオレフィン系樹脂(B)とを前記したように設定される。
【0049】
本発明における熱可逆架橋を有するポリオレフィン発泡体は、以下のような方法で製造することができる。
【0050】
すなわち、熱可逆架橋性樹脂成分(A)とポリオレフィン系樹脂(B)とを混合してなる樹脂組成物を押出機内で気体と共存させて押出発泡させる方法、あるいは、上記樹脂組成物に熱分解型発泡剤を添加し、押出機によりシート状に成形した後、熱可逆架橋性樹脂成分(A)の流動開始温度Tc以下かつ発泡剤の分解温度以上に加熱発泡させる方法のいずれの方法でも製造できる。ただし、発泡時に必要な溶融粘度などの樹脂特性あるいはゲル分率は両者で異なっており、これらを熱可逆架橋性樹脂成分(A)のゲル分率や、ポリオレフィン系樹脂(B)との混合比率により調整することによりそれぞれの手法における公知の条件を使用することができる。
【0051】
さらに本発明の発泡体は、以下の手法による押出発泡成形によって製造することにより、発泡体としてのゲル分率を好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜70%とすることができ、耐熱性や加熱成形性などの物性を向上することが可能である。
【0052】
すなわち、押出口金からの樹脂吐出温度を熱可逆架橋性樹脂成分(A)の流動開始温度(Tc)以上、好ましくは熱可逆架橋性樹脂成分(A)のMIが0.1〜10、好ましくは0.2〜8となる温度に設定し、しかもこの温度での樹脂特性が発泡に適したものであるように調整する。この場合ポリオレフィン系樹脂(B)は、通常の直鎖状ポリオレフィンに比べ溶融張力が高くひずみ硬化性の大きな樹脂、たとえば高溶融張力ポリプロピレンや分岐構造を持つ低密度ポリエチレン・エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などのほか、分子量1000万以上の超高分子量成分を含むポリエチレンもしくはポリプロピレンなどを5〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは50〜100重量%含むことにより、樹脂組成物全体の樹脂特性を発泡に適したものであるよう調整できる。発泡に適した樹脂溶融特性は、発泡倍率や発泡体シート厚みなどにより、たとえばポリプロピレン系樹脂組成物の場合は特許2521388号公報や特開平7−252318号公報などに記載の条件を満たすよう選択することができる。
【0053】
また、気泡の発生状態を調節する目的で、たとえばタルク、酸化ケイ素などの無機質微粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの有機質微粉末、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのような加熱により分解しガスを発生する微粉末など気泡核剤を、必要に応じて添加してもよい。このことにより良好な発泡体を得ることができる。この発泡体は、樹脂の結晶融点以上でもTc以下では実質的に架橋構造を有しているため、上記の方法によりゲル分率を制御することによりTc以下では通常の熱不可逆な架橋構造を持つ発泡体並の耐熱性・成形加工性を有するよう設計されうる。一方、無架橋ポリオレフィン発泡体は樹脂の結晶融点以上では気泡構造を保つことができない。
【0054】
本発明による熱可逆架橋性発泡体は流動開始温度(Tc)以上に加熱することにより、架橋が解離し溶融流動するため、再成形すなわちリサイクルが可能となる。
【0055】
また、(A)の熱可逆架橋性を損なわない範囲で前記(A)、(B)成分以外の成分を含有していてもよく、具体的には、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分や通常用いられる各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、着色剤、さらに充填剤等を添加することができる。
【0056】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらによって制限されるものではない。
本発明における測定法、評価基準は次の通りである。
[メルトインデックスMI]
測定温度を変える以外は、JIS K7210(B法)に準拠し、荷重21.18Nにて測定した。
[流動開始温度Tc(℃)]
JIS K7210(B法)に準拠し、測定温度だけを変えて室温から5℃刻みで昇温して測定したメルトインデックス(MI)が初めて0.1以上になる温度と定義する。
[溶融張力MT(cN)]
JIS K7210に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。東洋精機製メルトテンションテスターを用いて、ポリオレフィンを所定の温度(ポリプロピレン系:230℃、ポリエチレン系:190℃)に加熱し、溶融樹脂を押出速度15mm/分で吐出しストランドとし、このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力とした。
[ゲル分率]
サンプルを厚み1mm以下に細断し、0.2g精秤する。サンプルが発泡体以外である場合はミクロトームにて厚み100μm以下の薄片とする。このものを130℃のテトラリン中に浸積し、攪拌しながら3時間加熱し溶解部分を溶解せしめ、不溶部分を取り出し洗浄してテトラリンを除去後、純水で洗浄し、120℃の熱風乾燥機にて水分を除去して室温になるまで自然冷却する。このものの重量(W1)gを測定し、次式によりゲル分率を求める。
【0057】
ゲル分率=[(0.2−W1)/0.2)]×100(%)
[最大絞り比]
発泡体シートの両面を遠赤外線ヒーターで加熱し、直径D=50mmのメス型真空成形用円筒型で成形可能な最大深さHmmを求め、次式により最大絞り比を求める。
【0058】
最大絞り比=H/D
また、最大絞り比での成形物外観が許容できるものを良好、できないものを不良として評価した。
[ストランド外観]
熱可逆架橋性樹脂ペレットまたは発泡体をプレス、粉砕したものの290℃のメルトインデックス測定時のストランド外観を目視観察し、ストランドがほぼ直線状であり表面が平滑であるものを良好、ストランド自体が蛇行すると共に表面に著しい凹凸が認められるものを不良として評価した。
【0059】
以下の実施例で用いた(A)成分の熱可逆架橋性ポリオレフィン樹脂組成物は以下の(A-1)〜(A-3)である。
【0060】
(A-1) マレイン酸無水物グラフト変性ポリプロピレン樹脂(マレイン酸無水物単位の含有量2.3重量%、数平均分子量12000、変性ポリプロピレン樹脂1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均個数2.8個)99.0重量%と1,3,5−シクロヘキサントリオール1.0重量%とを用いた(カルボン酸無水物基数に対する水酸基数の比1)の混合物を、2軸押出機を用いて250℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0061】
(A-2) マレイン酸無水物グラフト変性ポリプロピレン樹脂(マレイン酸無水物単位の含有量9.5重量%、数平均分子量4000、変性ポリプロピレン樹脂1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均個数3.9個、三洋化成工業社製「ユーメックス1010」)94.6重量%と、2,5−ヘキサンジオール5.4重量%とを用い(カルボン酸無水物基数に対する水酸基数の比1)の混合物を、2軸押出機を用いて250℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0062】
(A-3) マレイン酸無水物グラフト変性ポリエチレン樹脂(マレイン酸無水物単位の含有量2.0重量%、数平均分子量9500、変性ポリエチレン樹脂1分子当たりのカルボン酸無水物基の平均個数1.9個)98.2重量%と1,3,5−シクロヘキサントリオール1.8重量%とを用いた(カルボン酸無水物基数に対する水酸基数の比2)の混合物を、2軸押出機を用いて250℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0063】
(A-1)〜(A-3)の200℃、230℃、260℃、290℃のメルトインデックスおよび290℃でのメルトインデックス測定時のストランド外観を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
本発明の実施例で用いた(B)成分のポリオレフィン系樹脂は以下の(B-1)〜(B-5)である。
【0066】
(B-1) モンテル社製高溶融張力ポリプロピレンHMS−PP PF−814(230℃でのメルトフローレート3g/10分,溶融張力19cN)
(B-2) モンテル社製高溶融張力ポリプロピレンHMS−PP PF−814 60重量%と東ソー社製低密度ポリエチレン310(190℃でのメルトフローレート3.6g/10分、密度0.922g/cm3)40重量%の混合物
(B-3) モンテル社製高溶融張力ポリプロピレンHMS−PP PF−814 70重量%と東ソー社製直鎖状低密度ポリエチレンM55(190℃でのメルトフローレート8.0 g/10分、密度0.920g/cm3)30重量%の混合物
(B-4) 東ソー社製低密度ポリエチレン226(190℃でのメルトフローレート2.0 g/10分、溶融張力8cN、密度0.924g/cm3)80重量%と東ソー社製直鎖状低密度ポリエチレンFS240(190℃でのメルトフローレート2.0 g/10分、密度0.919g/cm3)20重量%の混合物
(B-5) モンテル社製高溶融張力ポリプロピレンHMS−PP PF−814 60重量%と旭化成工業社製SEBS「タフテック1062」(230℃でのメルトフローレート17g/10分、スチレン含量17.5wt%)40重量%の混合物
(実施例1)
(A-1)50重量%、(B-1)50重量%の混合物に対し酸化防止剤“Irganox"1010 0.1重量%を加え、シリンダーバレル温度240℃に設定した30mmφ2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化した。このペレットに発泡剤としてのブタン及び気泡調整剤(クエン酸モノナトリウム塩)を添加、30mmφ2軸押出機に供給し、溶融混練したのち、240℃に設定したTダイより押出・発泡させ、発泡体を得た。得られた発泡体は良好な発泡体外観を有し、最大絞り比での成形物外観も良好であった。さらに発泡体をプレス・粉砕してペレットとして、290℃で再押出ししたストランドの外観でもって再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0067】
(実施例2)
(A-2)60重量%、(B-2)40重量%の混合物を用い、Tダイの設定温度を220℃としたほかは実施例1と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体は良好な発泡体外観を有し、最大絞り比での成形物外観も良好であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0068】
(実施例3)
(A-1)40重量%、(B-3)60重量%の混合物を用いたほかは実施例1と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体は良好な発泡体外観を有し、最大絞り比での成形物外観も良好であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0069】
(実施例4)
(A-3)60重量%、(B-4)40重量%の混合物を用いたほかは実施例1と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体は良好な発泡体外観を有し、最大絞り比での成形物外観も良好であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0070】
(実施例5)
(A-3)50重量%、(B-5)50重量%の混合物を用いたほかは実施例1と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体は良好な発泡体外観を有し、最大絞り比での成形物外観も良好であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0071】
(比較例1)
(A-1)成分の代わりにチッソ製ポリプロピレンK1011(230℃でのメルトフローレート0.9g/10分)を用いる他は実施例1と同様にして押出し、発泡体を得た。得られた発泡体の外観は良好であったが、最大絞り比での成形物外観は不良であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0072】
(比較例2)
(A-3)成分の代わりに東ソー社製高密度ポリエチレン6000(190℃でのメルトフローレート0.15g/10分)を用いる他は実施例4と同様にして押出し、発泡体を得た。得られた発泡体の外観は良好であったが、最大絞り比での成形物外観が不良であった。さらに実施例1と同様に発泡体の再押出し性を評価し、その結果を表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示す結果から、本発明の発泡体はその最大絞り比が0.5以上と大きく、しかもその最大絞り比での成形体は外観が良好であることから、少なくとも、従来の架橋発泡体と同等の良好な加熱成形加工性をもつことがわかる。これは流動開始温度以下では、熱可逆架橋が実質的に従来の架橋発泡体と同等の働きを持つことによるものであると考えられる。さらに本発明の発泡体は流動開始温度(Tc)以上に加熱することにより、無架橋発泡体と同等のリサイクル性をも併せ持つことができる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によると、少なくとも、従来の架橋発泡体と同等の成形加工性、強度、耐熱性などの諸物性をもち、かつ、無架橋発泡体と同様に良好なリサイクル性を有する、優れたポリオレフィン発泡体を提供できる。
Claims (4)
- 流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であって熱可逆架橋性を示すポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)と、熱可逆架橋性を持たずゲル分率が0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)とからなり、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)をなす樹脂が、実質的にポリプロピレン骨格からなるポリオレフィン系樹脂であり、
かつその混合比率(A)/(B)が20/80〜70/30である樹脂組成物を成形および発泡させてなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。 - ポリオレフィン系樹脂(B)のうちの一部または全部(5〜100%)が、分岐鎖構造を持つポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
- 自動車内装材用の発泡体であって、かつ、発泡体のゲル分率が15〜70%、発泡倍率が5〜50倍であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
- 流動開始温度Tc(℃)が170〜250℃であって熱可逆架橋性を示すポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)と、熱可逆架橋性を持たずゲル分率が0〜15%のポリオレフィン系樹脂(B)とからなり、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)をなす樹脂が、実質的にポリプロピレン骨格からなるポリオレフィン系樹脂であり、
かつその混合比率(A)/(B)が20/80〜70/30である樹脂組成物を、
ポリオレフィン系樹脂(組成物)(A)の流動開始温度Tc(℃)以上の温度に設定された押出機内で、無機または有機の発泡剤と共存させ、次いで、[前記流動開始温度Tc−20](℃)以上の温度に設定された押出し口金から溶融押出と同時に発泡させることによりポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
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