JP4900996B2 - 油脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、SUS(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸;以下同様)で表されるトリグリセリドとUSU(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸;以下同様)で表されるトリグリセリドをそれぞれ特定量含有する油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
炭素数16の飽和脂肪酸をP、炭素数18の飽和脂肪酸をS、炭素数18で1つの不飽和結合を有する脂肪酸をOで表すと、対称型トリグリセリドPOPとその逆対称型のOPO、同様にSOSとOSO、POPとOSO、POSとOSOは、それぞれモル比1:1の割合で分子間化合物(molecular compound)を形成すること、またこの分子間化合物は、テンパリング操作なしで、2鎖長構造で安定なβ型という独特の結晶構造が得られることが知られている。分子間化合物の構造に関して、日本食品科学工学会誌、第45巻、第10号、579−588(1998)では、対称型トリグリセリドは分子中に飽和鎖とシス型オレフィン基を含む不飽和鎖との立体障害が存在するが、逆対称型トリグリセリドと隣り合い、分子間で互いに別の分子とペアを組むことにより、 単独分子中では解消し得なかった飽和鎖と不飽和鎖間の立体障害を解消し、結晶全体としての格子エネルギーを減少させるものと推定している。
【0003】
分子間化合物の加工油脂への利用に関して、特開平4−135453号公報では、グリセリン骨格の2位に炭素数16〜22の飽和脂肪酸を、1,3位に炭素数16〜18で一つの不飽和結合を有する脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリドが、カカオ脂と特異な結晶構造を形成し、融点はカカオ脂とほぼ同等であるにもかかわらず、 耐圧力変形性はカカオ脂よりも著しく小さいという特異な物理的性質を付与し、チョコレートの品質を向上させると述べている。このような性質を利用して、従来の方法では作り得なかった新しい物性を有する製品の開発が期待される。
【0004】
さらに、上記の公報では、グリセリン骨格の2位に不飽和脂肪酸を、1,3位に飽和脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリド、及びその逆対称型トリグリセリドを単に混合することにより分子間化合物が形成されることが示されている。
【0005】
グリセリン骨格の2位に不飽和脂肪酸を、1,3位に飽和脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリドは、例えばハードバターの原料となる植物性油脂に多く含まれており、容易に入手することができる。
【0006】
これに対し、グリセリン骨格の2位に飽和脂肪酸を、1,3位に不飽和脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリドは、入手が困難であり、その製造方法に関する特許出願としては、特開平5−76283号公報や特表平8−509620号公報がある。前者は、グリセリドの1及び3位においてのみ活性な位置特異的である酵素リパーゼの転位触媒としての存在下で、菜種油又は大豆油の加水分解により得られる遊離脂肪酸類又はそれらのアルキルエステル類と、実質的に2−パルミチルグリセリドからなるグリセリドをエステル交換させた後、脂肪酸、 ジグリセリドを除去する方法である。後者は、グリセリドの1及び3位においてのみ活性な位置特異的である酵素リパーゼの転位触媒としての存在下で、3飽和トリグリセリドと炭素数18以上の不飽和脂肪酸をエステル交換させ、脂肪酸、ジグリセリドを除去した後、さらに、1,3位にパルミチン及び/又はステアリン酸以外の酸を多く含み、かつ炭素鎖16以上の飽和脂肪酸の総量の40重量%以上が2位にない油ブレンドと混合し、1,3−特異酵素を使用して酵素処理することによって、3飽和トリグリセリドのレベルを下げる方法である。両者とも、1,3位に不飽和脂肪酸を結合した混酸型トリグリセリドを得るために、グリセリドの1及び3位においてのみ活性な位置特異的である酵素リパーゼを用いて、2位に飽和脂肪酸を有するトリグリセリドと不飽和脂肪酸をエステル交換させており、反応後、蒸留して脂肪酸を除去するという工程が必要であり、工程が複雑で、かつコストがかかる点に問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、融点が高いにもかかわらず、可塑性が大きくなるという特性とテンパリング操作なしで安定なβ型結晶が得られるという特性とを併せ有し、分子蒸留といった手間のかかる工程がなく、簡便に製造することが可能な油脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、検討の結果、SUSで表されるトリグリセリドとUSUで表されるトリグリセリドとをそれぞれ特定割合で含有し、結晶化させることにより分子間化合物を形成させる油脂組成物によって、上記目的が達成し得ることを知見した。
【0009】
すなわち、本発明は、SUSで表されるトリグリセリドを20重量%以上、USUで表されるトリグリセリドを20重量%以上それぞれ含有し、かつ該SUSで表されるトリグリセリドと該USUで表されるトリグリセリドの重量比が1:0.5〜1.3である油脂組成物の製造方法において、SUSで表されるトリグリセリドを含有する油脂と、USUで表されるトリグリセリドを含有する油脂とを混合し、硬部油と軟部油に分別して硬部油として上記油脂組成物を得ることを特徴とする油脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の油脂組成物の製造方法の実施の形態について説明する。尚、以下、本発明の油脂組成物の製造方法により得られる油脂組成物を、本発明の油脂組成物という。
【0011】
本発明の油脂組成物は、上記のように、SUSで表されるトリグリセリド(以下、単にSUSという)を20重量%以上、USUで表されるトリグリセリド(以下、単にUSUという)を20重量%以上それぞれ含有し、かつ該SUSと該USUの重量比が1:0.5〜1.3であることを特徴とする。
【0012】
本発明の油脂組成物は、SUSを20重量%以上、好ましくは25〜50重量%、さらに好ましくは30〜50重量%含有する。SUSが20重量%よりも少ないと、結晶化させたときの分子間化合物の形成量が少なくなるため好ましくない。
【0013】
また、本発明の油脂組成物は、USUを20重量%以上、好ましくは25〜50重量%、さらに好ましくは30〜50重量%含有する。USUが20重量%よりも少ないと、結晶化させたときの分子間化合物の形成量が少なくなるため好ましくない。
【0014】
そして、本発明の油脂組成物は、SUSとUSUの重量比が1:0.5〜1.3、好ましくは1:0.7〜1.2、さらに好ましくは1:0.9〜1.1である。SUSとUSUの重量比が1:0.5〜1.3の範囲外であると、効率良く分子間化合物を形成しないので好ましくない。
【0015】
さらに、本発明の油脂組成物はSSUを好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下含有し、SUUを好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは12重量%以下、UUUを25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下含有する。なお、ここにおいて、上記と同様に、Sは飽和脂肪酸、Uは不飽和脂肪酸を示し、以下においても同様である。
【0016】
本発明の油脂組成物は、上記のような組成であるため、油脂組成物を結晶化させることによりSUS1分子とその逆対称型のUSU1分子が分子間化合物(molecular compound)を形成する。そして分子間化合物を形成していることは2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定をしたときに、2鎖長構造であり、かつ安定なβ型を示すことにより確認することができる。上記分子間化合物の油脂組成物中の形成量は現在のところ測定することはできない。よって、本発明では、分子間化合物の形成量とは、分子間化合物形成量の予測しうる最大値を計算により求めたものとする。計算方法は以下の通りである。
【0017】
分子間化合物形成量(重量%)=(油脂組成物中の、SUSの重量%とUSU重量%のうち、より少ないほうの重量%)×2
【0018】
上記の計算方法により求めた本発明の油脂組成物の分子間化合物の形成量は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上である。
【0019】
また、本発明の油脂組成物は、食パン、菓子パン、デニッシュ、パイ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリー製品に練り込み用、折込み用、フィリング用、サンド用、トッピング用、スプレッド用、スプレー用、コーティング用、フライ用として使用することができる。
【0020】
このような本発明の油脂組成物は、次のような方法で得ることができる。
まず、SUSを含有する油脂(以下、油脂Aという)と、USUを含有する油脂(以下、油脂Bという)を混合する。そして、これを硬部油と軟部油に分別し、得られた硬部油が本発明の油脂組成物である。
【0021】
上記の油脂Aの主成分であるSUSのSは飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上の飽和脂肪酸を示す。具体的には、パルミチン酸、 ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。Uは不飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上のモノエン酸及び/又はジエン酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコセン酸、エルシン酸等)、 さらに好ましくは炭素鎖16〜18のモノエン酸(パルミトレイン酸、オレイン酸)を示す。
【0022】
SUSは、2位にU、1,3位にSを結合した対称型トリグリセリドである。本発明では、このSUSの1位と3位に同一の飽和脂肪酸が結合している必要はない。
【0023】
そして、油脂AのSUSの含有量は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上である。
【0024】
油脂Aの具体的な例としては、例えば、シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂、コクム脂、パーム油から選ばれた1種又は2種以上、ならびにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は2種以上を挙げることができる。
【0025】
次に、油脂Bについて説明する。油脂BはUSUを含有する。油脂Bにおいても、Sは飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上の飽和脂肪酸を示す。Uは不飽和脂肪酸を示し、好ましくは炭素鎖16以上のモノエン酸及び/又はジエン酸、 さらに好ましくは炭素鎖16〜18のモノエン酸を示す。
【0026】
USUは、2位にS、1位と3位にUを結合した対称型トリグリセリドである。本発明ではこのUSUの1位と3位に同一の不飽和脂肪酸が結合している必要はない。
【0027】
そして、油脂BのUSUの含有量は好ましくは4重量%以上、さらに好ましくは8重量%以上、最も好ましくは12重量%以上である。
【0028】
また、油脂Bは、SUUやU3で表されるトリグリセリド(以下、SUU、U3とそれぞれいう)を含有していてもよい。SUUは、1位にS、2位と3位にUを結合した非対称型トリグリセリドである。
【0029】
油脂BのSUUの含有量とU3の含有量の合計量は、好ましくは84重量%以下、さらに好ましくは82重量%以下、最も好ましくは重量80重量%以下である。
【0030】
さらに油脂Bは、少量のS3及び/又はS2Uで表されるトリグリセリド(以下、S3、S2Uとそれぞれいう)を含んでもよい。ここでいうS2Uとは、1,2位にS、3位にUを結合した非対称型トリグリセリド及び1,3位にS、2位にUを結合した対称型トリグリセリド両方を含むものとする。
【0031】
油脂BのS3の含有量とS2Uの含有量の合計量は、好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは8重量%以下である。
【0032】
油脂Bの具体的な例としては、ラード、牛脂、乳脂等、もしくはその分別軟部油が挙げられる。また、パーム油、パーム軟部油、シア脂軟部油、サル脂軟部油をランダムエステル交換した油脂、もしくはその分別軟部油が挙げられる。さらに、パーム油、パーム軟部油、パーム硬部油、シア脂軟部油、サル脂軟部油、ラード、 ラード硬部油、 牛脂、牛脂硬部油等と、ハイオレイックひまわり油、大豆油、菜種油等の液状油とを、ランダムエステル交換した油脂、もしくはその分別軟部油や、大豆油、 菜種油、 コーン油、パーム油、パーム硬部油、ラード、 牛脂等の極度硬化油と、ハイオレイックひまわり油、大豆油、菜種油等の液状油とを、ランダムエステル交換した油脂、もしくはその分別軟部油が挙げられる。
【0033】
本発明では上記油脂Aと油脂Bの混合割合は特に制限はないが、好ましくは重量比で、油脂A:油脂B=10〜30:90〜70の割合で混合するのがよく、さらに好ましくは油脂Aと油脂Bの混合油中のSUSのモル数とUSUのモル数の比率が、1:1となるようにするのがよい。
【0034】
このように油脂Aと油脂Bを混合した後、硬部油と軟部油に分別する。
分別方法は、特に制限はなく、溶剤を用いても用いなくても、またいかなる温度で分別してもよいが、得られる硬部油における非対称型トリグリセリドSUU及びU3の割合が小さく、軟部油における対称型トリグリセリドUSUの割合が小さい条件で分別するのがよい。具体的には、 溶剤を用いる場合には、好ましくはアセトン及び/又はヘキサンを用いて、重量比率で油脂: 溶剤=1: 5、分別温度はアセトンを用いるときは10〜−5℃、ヘキサンを用いるときは0〜−20℃で分別するのがよく、さらに好ましくは油脂: 溶剤=1: 1〜3、分別温度はアセトンを用いるとき5〜−3℃、ヘキサンを用いるときは−5〜−13℃で分別するのがよい。
【0035】
溶剤を用いない場合には、分別温度を好ましくは30〜10℃、さらに好ましくは25〜15℃で分別するのがよい。
【0036】
本発明において、溶剤を用いないで分別するよりは、溶剤を用いて分別するのがよい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。また、「部」はすべて重量基準である。
【0038】
〔実施例1〕
油脂Aとしてマンゴー脂分別硬部油、 油脂Bとして下記のエステル交換油の分別軟部油を用いた。
【0039】
・エステル交換油の軟部油の調製
大豆極度硬化油20部とハイオレイックサフラワー油80部を混合し、対油1.5部のリパーゼQLC(名糖産業(株) 製)を添加して65℃で16h撹拌し、ランダムエステル交換反応を行い、エステル交換油を得た。得られたエステル交換油とアセトンを重量比率で1:2の割合で混合し、0℃で分別して分別軟部油を得た。
【0040】
上記油脂A13部と上記油脂B87部を混合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して硬部油と軟部油を得た。得られた分別硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
【0041】
油脂A〜Dのトリグリセリド組成を表1に示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリグリセリド組成を表5に示す。
【0042】
得られた油脂Dについて、60℃から1分間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子間化合物を形成していることが分かった。
【0043】
また、油脂Dは、計算によると最大で、SUSとUSUからなる分子間化合物を67重量%形成していた。
【0044】
〔実施例2〕
油脂Aとしてサル脂分別硬部油、 油脂Bとして下記のエステル交換油の分別軟部油を用いた。
【0045】
・エステル交換油の軟部油の調製
大豆極度硬化油25部とハイオレイックサフラワー油75部を混合し、対油1.5部のリパーゼQLC(名糖産業(株) 製)を添加して65℃で16h撹拌し、ランダムエステル交換反応を行い、エステル交換油を得た。得られたエステル交換油とアセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、5℃で分別して分別軟部油を得た。
【0046】
上記油脂A14部と上記油脂B86部を混合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して得た分別硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
【0047】
油脂A〜Dのトリグリセリド組成を表2に示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリグリセリド組成を表5に示す。
【0048】
得られた油脂Dについて、60℃から1分間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子間化合物を形成していることが分かった。
【0049】
また、油脂Dは、計算によると最大で、SUSとUSUからなる分子間化合物を61重量%形成していた。
【0050】
〔実施例3〕
油脂Aとしてパーム中部油、 油脂Bとしてパーム軟部油のランダムエステル交換油とアセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、5℃で分別して得た分別軟部油を用いた。
【0051】
上記油脂A18部と上記油脂B82部を混合した油脂Cを原料油とし、油脂Cとアセトンを重量比率で1:3の割合で混合し、−3℃で分別して得た分別硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
【0052】
油脂A〜Dのトリグリセリド組成を表3に示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリグリセリド組成を表5に示す。
【0053】
得られた油脂Dについて、60℃から1分間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造で、かつ安定なβ型であることも確認され、分子間化合物を形成していることが分かった。
【0054】
また、油脂Dは、計算によると最大で、SUSとUSUからなる分子間化合物を60重量%形成していた。
【0055】
〔比較例1〕
油脂Aとしてマンゴー脂分別硬部油、 油脂Bとしてサル脂分別軟部油を用いた。
【0056】
上記油脂A39部と上記油脂B61部を混合した油脂Cを原料油とし、実施例1と同様の方法で分別して得た分別硬部油を精製し、これを油脂Dとした。
【0057】
油脂A〜Dのトリグリセリド組成を表4に示す。また、油脂AのSUS及び油脂BのUSUのトリグリセリド組成を表5に示す。
【0058】
得られた油脂Dについて、60℃から1分間に40℃の割合で0℃まで急冷、0℃で30分間保持した後、20℃で1週間保持する、という条件で冷却、結晶化し、2θ:0〜25°の範囲でX線回折測定を実施したところ、トリグリセリドのパッキング状態が2鎖長構造となっておらず、かつ準安定形のβ’型で、分子間化合物を形成していないことが分かった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物は、分子間化合物を形成する油脂組成物であり、そのため融点が高いにもかかわらず、可塑性が大きくなるという特性とテンパリング操作なしで安定なβ型結晶が得られるという特性とを併せ有するものである。
【0065】
また、本発明の油脂組成物は、分子蒸留といった手間のかかる工程がなく、簡便に製造することが可能である。
Claims (3)
- SUS(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)で表されるトリグリセリドを20重量%以上、USU(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)で表されるトリグリセリドを20重量%以上それぞれ含有し、かつ該SUSで表されるトリグリセリドと該USUで表されるトリグリセリドの重量比が1:0.5〜1.3である油脂組成物の製造方法において、SUSで表されるトリグリセリドを含有する油脂と、USUで表されるトリグリセリドを含有する油脂(ただしラードを除く)とを混合し、硬部油と軟部油に分別して硬部油として上記油脂組成物を得ることを特徴とする油脂組成物の製造方法。
- 上記SUSで表されるトリグリセリドを含有する油脂が、SUSで表されるトリグリセリドを40重量%以上含有する請求項1記載の油脂組成物の製造方法。
- 上記USUで表されるトリグリセリドを含有する油脂が、USUで表されるトリグリセリドを4重量%以上含有する請求項1又は2記載の油脂組成物の製造方法。
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