JP5479700B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents
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Description
まず、本発明で使用する油脂配合物について述べる。
本発明で使用する油脂配合物は、構成脂肪酸組成において、炭素数16未満の脂肪酸を実質的に含有せず、S(炭素数16以上の飽和脂肪酸)の含有量が55〜85質量%、好ましくは60〜80質量%、U(炭素数16以上の不飽和脂肪酸)の含有量が15〜45質量%、好ましくは20〜40質量%である。
本発明において、構成脂肪酸組成において、炭素数16未満の脂肪酸を15質量%以上含有すると、良好な可塑性を有する可塑性油脂組成物が得られず、特に耐熱保型性が低下してしまう。
但し、以下の説明においては、
M:炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
SUS:1、3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
UUU:Uが3分子結合しているトリグリセリド
である。
本発明の可塑性油脂組成物は、少なくとも本発明のハードストックを使用したものであり、好ましくは油相に使用する油脂が本発明のハードストックと液状油からなるものである。
上記その他の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固形の油脂、並びに各種動植物油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂からなる群から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。上記その他の油脂の使用量は、本発明のハードストックと上記液状油との合計100質量部に対し、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0〜10質量部であるが、適正な飽和脂肪酸含量(25〜35質量%)とするためには使用しないことが特に好ましい。
(2)S2Uの含有量が15〜40質量%
(3)SUS/S2Uの質量比が0.1〜0.4
(4)SU2の含有量が10〜35質量%
(5)UUUの含有量が40〜70質量%
以下、上記条件(1)〜(5)について詳しく述べる。
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中のトリグリセリド組成におけるSSSの含有量は好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。SSSの含有量が0.3質量%未満であると、結晶化速度が低下することから、得られる可塑性油脂組成物が適度な硬さを持たないおそれがあることに加え、特に、耐熱保型性が低下してしまうおそれがある。また、5質量%超であると、得られる可塑性油脂組成物の口溶けが極端に悪化してしまう。
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中のトリグリセリド組成におけるS2Uの含有量は好ましくは15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。S2Uが15質量%未満であると、良好な可塑性が得られないおそれがある。また、40質量%超では良好な可塑性が得られにくく、また、耐熱保型性やクリーミング性が悪化するおそれがある。
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中のトリグリセリド組成におけるSUS/S2Uの質量比は好ましくは0.1〜0.4、より好ましくは0.2〜0.4である。SUS/S2Uの質量比が0.1未満のものは、口溶けが悪くなる場合があり、また、0.4超である場合、保存時にザラが発生するおそれがある。
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中のトリグリセリド組成におけるSU2の含有量は好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%である。10質量%未満であると、良好な可塑性、スプレッド性、クリーミング性(特にスプレッド性、クリーミング性)が得られないおそれがあり、35質量%超の場合、良好な可塑性が得られにくく、また、耐熱保型性やクリーミング性が悪化するおそれがある。
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中のトリグリセリド組成におけるUUUの含有量は40〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。本発明の可塑性油脂組成物において、UUUの含有量が40質量%未満であると、口溶けが悪くなりやすく、また、70質量%超であると、口溶けは良好であるが、クリーミング性や耐熱保型性が極端に悪化しやすい。
前述のように、近年、飽和脂肪酸については適正量の摂取が望まれており、そのため、可塑性油脂組成物においても、飽和脂肪酸含量が25〜35質量%(すなわち不飽和脂肪酸含量が65〜75質量%)と少ない含有量であっても、良好な可塑性を有するものも要求されている。
本発明のハードストックは、液状油に添加して、飽和脂肪酸含量を上記含量に調整した場合であっても、良好な可塑性を有することに加え、良好なクリーミング性、吸水性、耐熱保型性を有し、また、口溶けも良好である可塑性油脂組成物とすることができる。
前述のように、近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
ここで、液状油は実質的にトランス脂肪酸を含有しないため、本発明のハードストックを実質的にトランス脂肪酸を含有しないハードストックとし、必要に応じ使用するその他の油脂として、部分水素添加油脂を使用しないことにより、トランス脂肪酸を含まずとも適切なコンステンシーを有する可塑性油脂組成物を製造することができる。
得られた本発明の可塑性油脂組成物は、マーガリンタイプでもショートニングタイプでもどちらでもよく、また、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
<ハードストックの製造>
10Lのステンレス製容器に大豆極度硬化油3.4kgとハイオレイックヒマワリ油1.6kgを混合し油脂配合物とした。この油脂配合物の構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。この油脂配合物を、温度110℃、20torrでパドル式攪拌機を用いて200rpmで撹拌し、水分50ppmに調整した。油脂配合物の温度を90℃に調整した後、ソジウムメチラートを10g添加し、200rpmで20分撹拌し、ランダムエステル交換反応を行った後、1kgの熱水で5回水洗し触媒を除去し、エステル交換油を得た。次に、得られたエステル交換油を温度75℃に調整後、45℃まで30hかけて冷却後、濾過、10kgfで圧搾して結晶部を分別除去して得られたエステル交換軟部油を、本発明のハードストックAとした。
得られたハードストックAの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUUの含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
上記で得られたハードストックAとキャノーラ油を表2に記載の混合比で混合した配合油脂85質量%、フレーバー0.2%、乳化剤0.1%からなる油相を70℃に加温溶解した。一方、水道水13.2%、食塩1.0%、脱脂粉乳0.5%からなる水相を70℃に加温溶解し、前記油相に混合、乳化後、急冷可塑化し、油中水型乳化型の本発明の可塑性油脂組成物であるマーガリンAを得た。
得られたマーガリンAの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンAは5℃で1週間調温した後、下記の方法で可塑性、耐熱保型性、クリーミング性、口どけを評価した。また、さらに20℃、3ヶ月保管後、下記の方法で外観を評価した。結果については表4に記載した。
マーガリンを2cm角に切り出し、15℃に1時間放置後、可塑性について下記評価基準に従って4段階で評価を行なった。
・評価基準
◎ 良好な可塑性を示した
○ 硬いものの可塑性を示した
△ 硬すぎて可塑性を示さなかった
× 軟らかすぎて可塑性を示さなかった
マーガリンを2cm角に切り出し、15℃から1℃毎に各1時間保管後の状態を観察し、外観が変化しない上限温度を測定した。
マーガリン300gを卓上ミキサーでビーターを使用し、高速でクリーミングした。クリーミング開始から3分後の比重を測定し、クリーミング性について下記評価基準に従って4段階で評価を行なった。
・評価基準
◎ 3分後の比重が0.40未満
○ 3分後の比重が0.40以上0.50未満
△ 3分後の比重が0.50以上0.60未満
× 3分後の比重が0.60以上
マーガリンを口にふくんだときの溶け易さを、15人のパネラーにて官能試験した。口溶け性が良好なもの、口溶け性が不良なもの、及びどちらともいえないもの、3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が25点以上を◎、20〜24点を○、15〜19点を△、14点以下を×とした。
外観について、下記の評価基準により4段階で評価した。
・評価基準
◎:表面につやがあり、なめらかな外観である。
○:表面にややつやがないが、なめらかな外観である。
△:表面のつやがほとんど見られず、ややざらのある外観である。
×:ざらが見られる。
油脂配合物を、大豆極度硬化油3.4kgとキャノーラ油1.6kgの混合物に変更した以外は実施例1と同様にしてハードストックBを得た。なお、この油脂配合物の構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。
得られたハードストックBの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
得られたマーガリンBの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンBは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
油脂配合物を、ハイエルシン菜種極度硬化油3.4kgとキャノーラ油1.6kgの混合物に変更した以外は実施例1と同様にしてハードストックCを得た。この油脂配合物の構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。
得られたハードストックCの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
得られたマーガリンCの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンCは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
油脂配合物を、ハイエルシン菜種極度硬化油3.4kgとハイオレイックヒマワリ油1.6kgの混合物に変更した以外は実施例1と同様にしてハードストックDを得た。この油脂配合物の構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。
得られたハードストックDの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
得られたマーガリンDの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンDは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
油脂配合物を、パーム極度硬化油3.4kgとハイオレイックひまわり油1.6kgの混合物に変更した以外は実施例1と同様にしてハードストックEを得た。この油脂配合物の構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。
得られたハードストックEの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
得られたマーガリンEの油脂の構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンEは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
実施例1と同様にして得たエステル交換油(分別操作を行なっていないもの)をハードストックFとした。このハードストックの構成脂肪酸組成におけるSの含量は70%、Uの含量は30%であり、炭素数16未満の脂肪酸の含量は1質量%未満であった。
得られたハードストックFの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量については表1に記載した。
得られたマーガリンFの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンFは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
サル脂の分別硬部油(融点36℃)をそのままハードストックGとした。
得られたハードストックGの、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2+UUU含量、トランス脂肪酸含量については表1に記載した。
得られたマーガリンGの油脂の、構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量、Sに占める炭素数18以上のSの割合、Sに占める炭素数22以上のSの割合、M/Uの質量比、トリグリセリド組成におけるSSS含量、S2U含量、SUS/S2Uの質量比、SU2含量、UUU含量、トランス脂肪酸含量については表3に記載した。
得られたマーガリンGは実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
なかでも、Sに占める炭素数18以上のSの割合が75質量%以上であるハードストックを使用して得られた実施例1〜4の可塑性油脂組成物は、耐熱保型性が特に優れていることがわかる。また、M/Uの質量比が0.8〜1であるハードストックを使用して得られた実施例1、4の可塑性油脂組成物は、クリーミング性や口溶けに特に優れていることがわかる。また、炭素数22以上のS/Sが35〜50質量%の範囲内である実施例3、4の可塑性油脂組成物は、耐熱保型性が特に良好であることがわかる。
Claims (6)
- ハイエルシン菜種極度硬化油及びハイオレイックひまわり油を使用し、構成脂肪酸組成において、炭素数16未満の脂肪酸を実質的に含有せず且つSの含有量が55〜85質量%でUの含有量が15〜45質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換して得られたエステル交換油脂の分別軟部油からなることを特徴とするハードストックを使用した可塑性油脂組成物であって、全飽和脂肪酸に占める炭素数22以上のSの割合が、10〜60質量%であることを特徴とする可塑性油脂組成物
(但し、
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸、
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
である)。 - 前記ハードストックの構成脂肪酸組成において、Sに占める炭素数18以上のSの割合が75質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の可塑性油脂組成物。
- 前記ハードストックの構成脂肪酸組成において、M/Uの質量比が0.6〜1であることを特徴とする請求項1又は2記載の可塑性油脂組成物
(但し、
M:炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸
である)。 - 前記ハードストックが、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
- 油相中のトリグリセリドの組成が下記の条件(1)〜(5)を全て満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物;
(1)SSSの含有量が0.3〜5質量%
(2)S2Uの含有量が15〜40質量%
(3)SUS/S2Uの質量比が0.1〜0.4
(4)SU2の含有量が10〜35質量%
(5)UUUの含有量が40〜70質量%
(但し、
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド、
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド、
SUS:1、3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド、
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド、
UUU:Uが3分子結合しているトリグリセリド
である)。 - 構成脂肪酸組成において、トランス脂肪酸の割合が2質量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物。
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