JP4822384B2 - 新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物、ポジ型レジスト用感エネルギー線剤及びこれを用いたポジ型レジスト組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物(以下、単に「化合物」とも称する)、ポジ型レジスト用感エネルギー線剤(以下、単に「感エネルギー線剤」とも称する)及びこれを用いたポジ型レジスト組成物(以下、単に「レジスト組成物」とも称する)に関し、詳しくは、ポジ型レジスト用の感エネルギー線剤として有用な新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物、この化合物からなるポジ型レジスト用感エネルギー線剤、及び、これを用いたポジ型レジスト組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
キノンジアジド基を有する化合物とアルカリ可溶性樹脂とを含有する組成物は、500nm以下の波長の光照射によりキノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じ、アルカリ不溶性の状態からアルカリ可溶性になることを利用して、ポジ型レジストとして用いられている。
【0003】
このポジ型レジストは、ネガ型レジストに比べて解像力が著しく優れているという特長を有し、ICやLSIなどの集積回路の製作に利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、集積回路については高集積化に伴う微細化が進んでおり、サブミクロンのパターン形成が要求されるようになってきている。その結果として、ポジ型レジストについてもより優れた解像度(γ値)が求められている。
【0005】
しかしながら、キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性樹脂とを含有するレジスト組成物において、従来からある材料の組み合わせでより高いγ値を実現しようとしても、得られるγ値の向上効果には限界があった。
【0006】
また、γ値を向上させるには、例えば、キノンジアジド化合物の量を増やすことが考えられるが、キノンジアジド化合物の量を増量すると、感度の低下やスカムの増加といった重大な欠点につながってしまい、従来の技術によるγ値の向上には制限があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、ポジ型レジスト用の感エネルギー線剤として用いた場合に従来になくγ値を向上することができる新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物、かかる化合物からなり、優れたγ値向上効果を有するポジ型レジスト用感エネルギー線剤、及び、これを用いたことにより良好にγ値が向上したポジ型レジスト組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、下記一般式(1)、
(式中、R1〜R16は、夫々水素原子または炭素原子数1〜12の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R17〜R20は、夫々水素原子またはキノンジアジドスルホン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくともいずれか1つはキノンジアジドスルホン基である)で表されることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のポジ型レジスト用感エネルギー線剤は、上記本発明の新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなることを特徴とするものであり、更に、本発明のポジ型レジスト組成物は、かかるポジ型レジスト用感エネルギー線剤を含有することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について詳細に説明する。
前記一般式(1)で表される本発明の新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、下記式(2)、
(式中、R1〜R16は、前記一般式(1)中と同義である)で表されるフェノール化合物から誘導できる。
【0011】
上記式(2)で示されるフェノール化合物は、アセトニルアセトンとフェノール類とを酸触媒の存在下にて反応させることにより製造できることが知られている。
【0012】
反応に使用するフェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−オクチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−ドデシルフェノール、3−ドデシルフェノールなどが挙げられる。
【0013】
これらのフェノール類は単独で反応に用いてもよいし、2種以上を混合して反応に用いてもよいが、反応の制御がしやすいことから、好適には単独で用いる。
【0014】
前記式(2)で示されるフェノール化合物の水酸基の一部または全てをキノンジアジドスルホン酸エステル化して、前記式(1)で示される本発明の化合物に誘導する際には、公知の方法を採用することができ、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化物である1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−スルホニルクロリドなどやベンゾキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化物と、前記式(2)のフェノール化合物とを、炭酸ナトリウムやトリエチルアミンなどの弱アルカリの存在下で縮合させることにより、前記式(1)で示される新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物を得ることができる。
【0015】
このキノンジアジドスルホン酸エステル化は、前記式(2)のフェノール化合物の全ての水酸基に対して行われなくてもよく、好ましいエステル化率は20〜100%である。この反応による生成物は一定の分布を示すため、エステル化率を低めに設定して反応を行った場合にはエステル化されていない未反応の分子が含有されている場合があるが、必要であれば、クロマトグラフィー等公知の手法によりこれを除去して純粋な本発明の化合物とすることができるし、また、本発明の化合物の用途によっては、未反応の化合物が残留していても差し支えなければそのまま使用することもできる。
【0016】
尚、本発明の化合物をポジ型レジストの感エネルギー線剤として使用する場合は、例えば、30モル%未満であれば未反応のフェノール化合物が含有されていても差し支えない。
【0017】
本発明のポジ型レジスト用感エネルギー線剤は、上記のキノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなるものであり、これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
また、本発明のポジ型レジスト組成物は、かかる本発明のポジ型レジスト用感エネルギー線剤を必須の成分として含有するものである。
【0019】
本発明のポジ型レジスト組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で所望により他の感エネルギー線剤、例えば、他の多価フェノール化合物のキノンジアジドスルホン酸エステル等を加えてもよい。
【0020】
他の多価フェノール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、フロログリシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4’,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、2’,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、3,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4’,5−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,5,5’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,3’,4−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,5’−ペンタヒドロキシベンゾフェノンなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,3’,4,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどのヘキサヒドロベンゾフェノン類、オキシフラバン類、没食子酸アルキルエステル等を例示することができる。
【0021】
その他、特開平8−295716号公報に記載のp−(低級アルキルあるいはハロ)−2,6ビス(ヒドロキシメチル)フェノールとヒドロキシまたはハロゲン置換二価フェノールとを縮合させて得られる三核ノボラックフェノールも例示することができる。
【0022】
本発明のポジ型レジスト組成物は、前記式(1)で表されるキノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなる本発明の感エネルギー線剤、または更にその他の感エネルギー線剤に加えて、通常ポジ型レジストに使用することができることが公知である成分を通常の使用量の範囲で使用することができ、例えば、アルカリ可溶性樹脂を含有することができる。
【0023】
本発明のポジ型レジスト組成物に使用可能なアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂が好適に挙げられる。ノボラック樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとを付加縮合させることにより得られるものである。
【0024】
ノボラック樹脂製造に用いられるフェノール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、トリメチルフェノール、プロピルフェノール、メチルブチルフェノール、ブチルフェノール、ジヒドロキシベンゼン、ナフトールなどを挙げることができる。これらのフェノール類は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明のポジ型レジスト組成物の調製は、本発明のキノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなる感エネルギー線剤(または更にその他の感エネルギー線剤)と、アルカリ可溶性樹脂とを溶剤に混合溶解することにより行うことができる。
【0026】
ここで用いることのできる溶剤としては、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発して均一で平滑な塗膜を与えるものであればどのようなものでもよい。このような溶剤としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセルソルブアセテート、エチルセロソルブ、メチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、キシレン、乳酸エチル、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。例えば、エチルセロソルブアセテートを溶剤とした場合、その量はレジスト全体の50〜80重量部程度であれば差し支えない。
【0027】
以上のようにして得られるレジスト組成物には、さらに、必要に応じて付加物として少量の樹脂や染料などを添加してもよい。
【0028】
本発明のポジ型レジスト組成物において、本発明のキノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなる感エネルギー線剤(または更にその他の感エネルギー線剤)とアルカリ可溶性樹脂との割合は、特に限定されず、従来のポジ型レジスト組成物における感エネルギー線剤とアルカリ可溶性樹脂との割合と同様の範囲であればよいが、概ね、アルカリ可溶性樹脂:感エネルギー線剤=10〜40の範囲であれば差し支えない。
【0029】
本発明のポジ型レジスト組成物は、従来のポジ型レジスト組成物と同様に用いることができ、レジストのパターニングに用いるエネルギー線としても従来同様のものを使用することができ、特に限定されないが、好ましくは、水銀のg線、水銀のi線、KrFレーザー、ArFレーザー、電子線などを挙げることができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例における部とは、全て重量基準である。
【0031】
まず、各実施例の感エネルギー線剤として、前記一般式(1)において、R1〜R16が以下に示す式(I)〜(VII)により、また、R17〜R20が以下に示す(A)〜(C)により、夫々定められるキノンジアジドスルホン酸エステル化合物(I−a)〜(VII−f)(表1参照)を、下記手順に従って夫々合成した。
【0032】
〔実施例1〕
500mlの四つ口フラスコに、フェノール188.22g(2mol)、アセトニルアセトン28.5g(0.25mol)、及び36%塩酸88.7gを仕込み、25〜35℃で4時間攪拌した。反応終了後、メチルエチルケトン300gで抽出し、水300gでメチルエチルケトン層を3回洗浄し、溶媒を濃縮した。次に、減圧蒸留し、過剰なフェノールを除去した。生成物にメタノールを加えて粉末を析出させ、これを乾燥して、2,2’,5,5’−テトラ(−ヒドロキシフェニル)ヘキサン(化合物(I)、表1参照)を82g(収率72%)得た。
【0033】
500mlの四つ口フラスコに、得られた2,2’,5,5’−テトラ(−ヒドロキシフェニル)ヘキサン(化合物I)11.4g(0.025mol)、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド28.5g(0.1mol)、及びジオキサン250gを仕込んだ後、攪拌して完全に溶解させた。次に、フラスコを水浴に浸し、トリエチルアミン11.1g(0.11mol)を滴下した。反応温度は20〜25℃に保った。反応後、濾過により生成した固体を除去し、濾液にイオン交換水1000mlを加え、生成した固体を濾過、洗浄、乾燥することにより目的物とするナフトキノンスルホン酸エステル(化合物(I−a)、表1参照)を得た。
【0034】
化合物(I−a)の同定はIRと元素分析により行った。IRにおいて、スルホン酸エステルの吸収が1380cm-1に確認された。また元素分析は(計算値C:60.77% H:3.35% N:8.10% O:18.50% S:9.27%、実測値C:60.85% H:3.42% N:8.19% S:9.22%)であった。
【0035】
〔実施例2〕
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドの使用量を14.3g(0.05mol)に変更した他は実施例1と同様の方法で、フェノール性水酸基のうち50%をナフトキノンスルホン酸エステル化し、化合物(I−b)(表1参照)を得た。
【0036】
同定はIRと元素分析により行った。IRにおいて、スルホン酸エステルの吸収が1380cm-1に、また、フェノール性水酸基が3300cm-1に確認された。また元素分析は(計算値 C:65.35% H:4.17% N:6.10% O:17.41% S:6.98%、実測値 C:65.41% H:3.44% N:8.20% S:6.90%)であった。
【0037】
[実施例4、10、16、22、28、34、40、参考例1〜35]
使用するナフトキノンジアジドスルホン酸ハロゲン化物を種々変更した他は、実施例1および実施例2に従って、化合物(I−c)〜(VII−f)(表1参照)を合成した。
【0038】
(上記式(I)〜(VII)中、Dは、水素原子または下記式(A)〜(C)、
のいずれかにより表されるキノンジアジドスルホン基であり、一分子中で同一であっても異なっていてもよい)
【0039】
【表1】
【0040】
上記実施例で合成したナフトキノンスルホン酸エステルからなる感エネルギー線剤を用いて、下記の表2及び表3に従って配合し、調合したレジストを0.1μmのフィルターで濾過することによりポジ型レジスト組成物を調製した。
【0041】
これを常法によって洗浄したシリコンウエハーにスピンコーターを使用して0.9μm厚に塗工した。このシリコンウエハーを100℃で60秒ベークしたあと、このレジスト膜がついたウエハーを、水銀のi線(波長365nm)を用いた実験用の縮小投影露光機を使用して、露光量を段階的に変化させてパターニング露光した。これを現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.6%、2−ジエチルアミノエタノール6%を含む水溶液)で現像することにより、ポジ型のパターンを得た。
【0042】
各々のレジスト組成物から得られたパターンにつき、露光量に対する規格化膜厚(残膜厚/初期膜厚)をプロットし、その傾きθを求め、tanθをγ値とした。結果を下記の表2及び表3に併せて示す。
【0043】
〔比較例1〕
2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルに1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを4モル反応させて感エネルギー線剤(X)を合成した。
【0044】
〔比較例2〕
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン1モルに1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリドを3モル反応させて感エネルギー線剤(Y)を合成した。
比較例1及び2の感エネルギー線剤を用いて、実施例と同様にしてレジスト液を調製し、比較としてγ値を測定した。この結果を実施例とともに表3に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
(*)ノボラック樹脂:メタクレゾール/パラクレゾール=7/3、クレゾール/ホルマリン=1/0.8のモル比で、シュウ酸触媒を用いて還流下で反応させることにより得られた、重量平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)98000のノボラック樹脂
【0047】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、ポジ型レジスト用の感エネルギー線剤として用いた場合に従来になくγ値を向上することができる新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物を提供することができ、この化合物をポジ型レジスト用感エネルギー線剤として用いることにより良好にγ値が向上したポジ型レジスト組成物が実現できる。
Claims (3)
- 請求項1記載の新規キノンジアジドスルホン酸エステル化合物からなることを特徴とするポジ型レジスト用感エネルギー線剤。
- 請求項2記載のポジ型レジスト用感エネルギー線剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
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