JP4798678B2 - アクリル樹脂フィルムおよびこれを用いた積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐溶剤性、透明性、表面硬度および意匠性に優れたアクリル樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムを含有するアクリル樹脂からなるアクリル樹脂フィルムは、透明性、耐候性、柔軟性、加工性における優れた特長を生かし、各種樹脂成形品、木工製品および金属成形品の表面に積層し、車輌内装、家具、ドア材、窓枠、巾木、浴室内装等の建材用途等の表皮材、マーキングフィルム、高輝度反射材被覆用フィルムとして使用されている。
【0003】
また、アクリル樹脂フィルムに印刷を施し、これを各種基材に積層させることによって基材表面の意匠性を高めることができ、この用途は塗装代替技術として基材表面の加飾に広く用いられている。
【0004】
従来、このように基材表面に積層して使用するアクリル樹脂フィルムとしては、特開昭63−77963号公報に、特定のゴム含有重合体を含むアクリル樹脂をフィルムの構成成分とした透明性、耐候性に優れたアクリル樹脂フィルムが開示されている。また、上記塗装代替の用途に好適な良好な表面硬度、深み感のある透明性および良好な印刷性を有するアクリル樹脂フィルムが特開平8−323934号公報および特開平10−279766号公報等に記載されている。
【0005】
一方、近年、基材の表面に積層して使用するアクリル樹脂フィルムの使用分野は多岐にわたり、基材の表面保護として耐溶剤性が必要な用途が増えている。
【0006】
このような耐溶剤性が特に重要な用途あるいはアクリル樹脂フィルムの使用方法としては、例えば車輌内装水平部品に積層される場合の芳香剤等に含まれるアルコール成分に対する耐性、高輝度反射材被覆用フィルムとして使用する際にフィルム表面に施されるシルク印刷のインクに含まれるケトン類、アルコール類、および芳香族炭化水素に対する耐性、あるいは各種建材や高輝度反射材に光触媒機能を表面に付与する際に光触媒層形成のためにフィルム表面上に塗布する処理液中の含まれるケトン類、アルコール類および芳香族炭化水素等に対する耐性等が挙げられる。
【0007】
上記用途あるいはアクリル樹脂フィルムの使用方法における溶剤に対する耐性とは、溶剤との接触によるフィルムの外観変化が少ないことが重要であり、特に溶剤との接触によるフィルム表面の変色、クラック発生、溶解等が少ないことが重要である。
【0008】
従来、基材保護に使用するアクリル樹脂フィルムとして提案されている、上記特開昭63−77963号公報、特開平8−323934号公報および特開平10−279766号公報等には、アクリル樹脂フィルムの耐溶剤性に関しては記載がなく、またそれぞれの公報の実施例に記載されたアクリル樹脂フィルムは耐溶剤性、とりわけアルコール類と接触した際の白色変色が大きく、このように溶剤接触によって外観変化の大きいアクリル樹脂フィルムは、基材保護用フィルムとしての用途に制約が生じるものであった。
【0009】
一方、アクリル樹脂の耐溶剤性を向上させる方法として、特開平7−149994号公報には特定の構造を有するアクリル樹脂系熱可塑性樹脂組成物を用いる方法は開示されている。また、特開平11−60876号公報には特定の弾性共重合体をアクリル樹脂フィルムの構成成分とすることで良好な耐溶剤性のフィルムが得られることが記載されている。さらに、特開2001−59048号公報には、シアン化ビニル系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるグラフト層を含む弾性共重合体をアクリル樹脂フィルムの構成成分とした耐溶剤性が良好で、アルコール類との接触の際にも白化等の変色やクラック発生等の外観変化の少ないアクリル樹脂フィルムが開示されている。
【0010】
しかしながら、特開平7−149994号公報の方法では、射出成形品等の比較的厚みの大きい成形品の溶剤と接触した際のクラック発生を抑制する場合に効果があるものの、この樹脂組成物を例えば200μm以下の薄いフィルム状物として用いた場合は、十分な耐溶剤性が得られず、アクリル樹脂フィルムとしての使用に制限があった。
【0011】
また、特開平11−60876号公報記載の方法は、トルエン等の良溶剤に対するフィルムの溶解性を改良することで、溶剤と接触した際のアクリル樹脂フィルムの機械特性を改良することに関して記載があるものの、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類と接触した際の白化の抑制に関しては全く記載がなく、さらに実施例の方法で製造したアクリル樹脂フィルムはアルコール類と接触させることによって著しい白化が発生し、このようにアルコール類の接触によって外観変化を示すアクリル樹脂フィルムは、用途に制限が生じてしまう。
【0012】
一方、特開2001−59048号公報記載のシアン化ビニル系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるグラフト層を含む弾性共重合体をアクリル樹脂フィルムの構成成分に用いたアクリル樹脂フィルムは、トルエン等の良溶剤に対するフィルムの溶解性を改良するとともに、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類と接触した際の白化やクラック等の外観変化を抑制することができるものの、この方法ではアクリル樹脂フィルムを構成するゴム含有重合体のグラフト層中にシアン化ビニル単量体を含む単量体混合物の重合体を含有するため、アクリル樹脂フィルムに黄着色が見られ、特に100〜200μmの厚みのフィルム状物に成形した場合の黄着色が大きく、高度な透明性および色相制御が必要となる用途には使用することが困難であった。
【0013】
すなわち、従来はエタノール、イソプロパノール等のアルコール類と接触した際の白化やクラック等の外観変化を抑制し、かつ黄着色の少ない優れた透明性を有するアクリル樹脂フィルムは見出されておらず、これを満足する技術の開発が強く望まれていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた耐溶剤性と透明性を有するアクリル樹脂フィルムを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(A)、(B)および(C)を含むアクリル樹脂フィルムおよびこれを用いた積層体にある。
【0016】
熱可塑性重合体(A)
メタクリル酸アルキルエステル単位50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0〜50質量%およびこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種の単位0〜49質量%とからなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下である熱可塑性重合体。
【0017】
ゴム含有重合体(B)
重合体(B−1)およびゴム重合体(B−2)からなる弾性重合体((B−1)+(B−2))を含むゴム含有重合体(B)であって、
最内層がメタクリル酸アルキルエステルまたはアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃以上25℃未満である重合体(B−1)、
中間層がアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃未満であるゴム重合体(B−2)、
最外層がメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする最外層重合体(B−3)、
からなる3層構造を有する質量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にあるゴム含有重合体。
【0018】
ゴム含有重合体(C)
内層である1層または2層以上の構造を有する共重合体(C−1)に、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを重合体の主構成成分とする1層または2層以上の構造を有する硬質重合体(C−2)がグラフトしてなる、2層以上の多層構造を有する質量平均粒子径が0.2μm未満の範囲にあるゴム含有重合体であって、前記共重合体(C−1)を得るに際してアクリル酸アルキルエステルが35〜100質量%使用されたゴム含有重合体。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル樹脂フィルムを構成する熱可塑性重合体(A)は、メタクリル酸アルキルエステル単位50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0〜50質量%とおよびこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種の単位0〜49質量%からなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下である重合体である。
【0020】
熱可塑性重合体(A)の還元粘度が0.1L/g以下であることが、フィルム原料樹脂の溶融時に適度の伸びが生じ、製膜性が良好となるので好ましい。また、熱可塑性重合体(A)の還元粘度が0.05L/g以上であることが好ましい。0.05L/gより高いとフィルムが脆く無くなるため、フィルム製膜時および印刷時にフィルム切れを起こし難くなる。
【0021】
熱可塑性重合体(A)を製造する際に用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、このうちメタクリル酸メチルの使用が最も好ましい。メタクリル酸アルキルエステル単位は、熱可塑性重合体(I)中に50〜100質量%含有される。好ましくは50〜99.9質量%である。
【0022】
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が使用できる。アクリル酸アルキルエステル単位は0〜50質量%の範囲、好ましくは0.1〜40質量%の範囲含有される。また共重合可能な他のビニル単量体としては、スチレン、αメチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、メタクリル酸、イタコン酸等の酸基含有ビニル化合物、N−シクロメキシルマレイミド、 N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等の公知の単量体が使用できる。これら共重合可能な他のビニル単量体単位は、0〜49質量%の範囲で含有される。
【0023】
熱可塑性重合体(A)の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。なお、粘度を本発明で限定する範囲とするため、連鎖移動剤を使用する必要がある。連鎖移動剤としては公知のものが使用できるが、好ましくはメルカプタン類である。連鎖移動剤の量は、単量体の種類および組成により適宜決める必要がある。
【0024】
本発明のアクリル樹脂フィルムを構成するゴム含有重合体(B)は、最内層がメタクリル酸アルキルエステルまたはアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃以上25℃未満である重合体(B−1)であり、中間層がアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃未満であるゴム重合体(B−2)であり、重合体(B−1)とゴム重合体(B−2)からなる弾性共重合体((B−1)+(B−2))に、最外層としてメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする最外層重合体(B−3)をグラフトした3層構造を有する平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にある重合体である。
【0025】
ここで用いられるアクリル酸アルキルエステルとしては、公知のものが使用できるが、それらのうちではアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が好ましい。
【0026】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、公知のものが使用できるがメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等が好ましい。
【0027】
弾性共重合体を得るに際しては、公知の他の共重合性のビニル単量体を共重合させることができる。ここで用いるビニル単量体としては、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましい。さらに、本発明においては、共重合性の架橋性単量体を使用する。用いる架橋性単量体としては、特に限定する必要はないが、好ましくはエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらを単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0028】
なお、共重合性の架橋性単量体を使用することで、これを含むアクリル樹脂フィルムの耐溶剤性が向上するので好ましい。
【0029】
ゴム含有重合体(B)中の重合体(B−1)は得られるフィルムの耐溶剤性を高めるために必要である。
【0030】
なお、弾性共重合体((B−1)+(B−2))中、重合体(B−1)は20〜60質量%、ゴム重合体(B−2)は80〜40質量%の範囲で含有されることが、耐溶剤性とフィルム成形性の観点から好ましい。
【0031】
重合体(B−1)は弾性共重合体((B−1)+(B−2))中30質量%以上存在することがさらに好ましい。ゴム重合体(B−2)は弾性共重合体((B−1)+(B−2))中、さらに好ましくは50質量%以上存在することでフィルム成形性が良好となる。
【0032】
最内層重合体(B−1)のガラス転移温度は0℃以上25℃未満であることが必要である。0℃未満ではフィルムの耐溶剤性が劣り、25℃を超えた範囲ではフィルム成形性が劣るために共に工業的利用価値が低い。フィルムの耐溶剤性と成形性の両方を考慮すると最内層重合体(B−1)の好ましいガラス転移温度は15℃以上25℃未満の範囲である。
【0033】
ゴム含有重合体(B)は、上記弾性共重合体((B−1)+(B−2))の外層に最外層重合体(B−3)を有し、最外層重合体(B−3)は、弾性共重合体((B−1)+(B−2))に単量体をグラフト重合させることによって製造することができる。グラフト重合に使用する単量体としては、メタクリル酸アルキルエステル50質量%以上が使用され、メタクリル酸アルキルエステルの具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。さらに、共重合可能なビニル系単量体50質量%以下が使用され、これらは特に限定されるものではないが、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレンなどが挙げられる。 ゴム含有重合体(B)中の最外層重合体(B−3)の含有量は、弾性共重合体((B−1)+(B−2))100質量部に対し、10〜400質量部、好ましくは20〜200質量部である。最外層重合体(B−3)の含有量が弾性共重合体((B−1)+(B−2))100質量部に対し10質量部以上であると、弾性共重合体の凝集が起こり難くなり、透明性が良好となるため好ましい。
【0034】
本発明に用いられるゴム含有重合体(B)は、質量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲でなければならない。質量平均粒子径が0.2μm未満の場合は溶剤と接触した際のフィルムの機械特性が低下するとともに、アクリル樹脂フィルムを製造する際にフィルム切れ等が発生するといった製膜性の不良生じる。一方、質量平均粒子径が0.4μmを越えると、得られるフィルムの透明性が不良となる。
【0035】
フィルムの耐溶剤性、透明性および製膜性を考慮すると好ましいゴム含有重合体の質量平均粒子径は0.25〜0.35μmである。
【0036】
ゴム含有重合体(C)は、内層であるアクリル酸アルキルエステルを主成分とする1層または2層以上の構造を有する共重合体(C−1)に、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを重合体の主構成成分とする1層または2層以上の構造を有する硬質重合体(C−2)がグラフトしてなる、2層以上の多層構造を有する質量平均粒子径が0.2μm未満の範囲にあるゴム含有重合体である。
【0037】
弾性共重合体(C−1)を得るに際しては、アクリル酸アルキルエステルとして、公知のものが用いられ、そのうちアクリル酸ブチル、アクリル酸―2―エチルヘキシル等が好ましい。
【0038】
アクリル酸アルキルエステルは35〜100質量%の範囲で使用される。35質量%以上の使用でフィルムの製膜性と耐溶剤性が良好となる。さらに好ましい使用範囲は50質量%以上である。
【0039】
また、共重合体(C−1)を得るに際しては、65質量%以下の範囲で共重合可能な他のビニル単量体を共重合させることができる。ここで用いるビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましく、これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0040】
さらに架橋性単量体を使用する。用いる架橋性単量体としては特に限定する必要は無いが、好ましくは、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ブタンジオール、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらは単独または組み合わせて用いることができる。
【0041】
架橋性単量体は単量体混合物100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用される。これを含むアクリル樹脂フィルムの耐溶剤性の点で0.3質量部以上使用することが好ましい。10質量部以上の使用は特に問題ないが、添加量に対する効果は小さいので10質量部以下の使用量が好ましい。
【0042】
共重合体(C−1)は1層または2層以上の構造とすることができる。2層以上の構造とする場合、共重合体(C−1)の全体としてのアクリル酸アルキルエステルの含有量が35質量%以上であれば良い。
【0043】
ハード芯構造にする場合は、1層目のアクリル酸アルキルエステルの含有量を35質量%以下とすることもできる。例えば、塗装代替用途に用いることは記載されていないが特開平7−149994号公報にあるような粒子径が0.2μm以下のハード芯構造の多層構造重合体を用いることができる。
【0044】
外層として、共重合体(C−1)にグラフトする硬質重合体(C−2)の構成成分としては、メタクリル酸アルキルエステル50質量%以上が使用され、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2―エチルヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル等が挙げられる。さらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種50質量%以下が使用され、特に限定されないが具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられ、これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使うことができる。
【0045】
グラフトした硬質重合体(C−2)の含有量は、共重合体(C−1)100質量部に対し10〜400質量部、好ましくは20〜200質量部であり、少なくとも1段以上でグラフト重合することにより調製することができる。
【0046】
グラフトした硬質重合体(C−2)が共重合体(C−1)100質量部に対し10質量部未満であると、共重合体の凝集による透明性の悪化が起こることがある。
【0047】
本発明に用いられるゴム含有重合体(C)の質量平均粒子径は0.2μm未満でなければならない。好ましくは0.05〜0.18μmである。なお、ゴム含有重合体(C)は、通常の乳化重合で得られる。質量平均粒子径が0.2μm未満、好ましくは0.18μm以下で透明性、耐溶剤性がともに良好となる。これを含むアクリル樹脂フィルムの製膜性の観点から0.05μm以上の質量平均粒子径であることが好ましい。
【0048】
本発明のゴム含有重合体(B)および(C)は、公知の乳化重合で得られる。重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは、60〜95℃である。
【0049】
重合開始剤は公知のものが使用でき、その添加方法は水相、単量体相いずれか片方、または、双方に添加する方法を用いることができる。特に好ましい開始剤の例としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中でレドックス系開始剤がさらに好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0050】
乳化剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が使用できるが、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン酸石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ヂオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0051】
乳化重合法によって得られたポリマーラテックスを酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等公知の方法により処理することで、ポリマーラテックスからゴム含有重合体を回収することができる。酸凝固法としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用することができ、塩凝固法としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用することができる。凝固回収した重合体をさらに洗浄、脱水、乾燥処理することで粉状あるいは顆粒状の重合体を得ることができる。
【0052】
なお、ゴム含有重合体(B)とゴム含有重合体(C)はそれぞれ上記方法により粉状あるいは顆粒状の重合体として調製した後使用する方法と、乳化重合法にて製造したゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)のポリマーラテックスを混合した後、この混合ラテックスから上記の方法でゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の混合物を粉状あるいは顆粒状として回収する方法がある。
【0053】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、上述の熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)を必須成分としたアクリル樹脂フィルムである。熱可塑性重合体(A)を含まず、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)のみを必須成分とした場合は、フィルムの製膜性が大きく低下し、膜厚の均一なフィルムを製造することができない。また、ゴム含有重合体(B)を含まず熱可塑性重合体(A)およびゴム含有重合体(C)のみを必須成分とした場合は、フィルムの透明性は良好でかつアルコール類と接触した際の変色等の外観変化が少ないものの、溶剤と接触した後のフィルムの機械特性の低下が大きく、このように物性変化の大きいアクリル樹脂フィルムは、用途が制限されるため工業的利用価値が低い。また、ゴム含有重合体(C)を含まず熱可塑性重合体(A)およびゴム含有重合体(B)のみを必須成分とした場合は、フィルムの透明性、特に75μm未満の厚みとした際のフィルムの曇価が大きく、またアルコール類と接触した際の白化等の外観変化が発生し、このように外観変化の大きいアクリル樹脂フィルムは、用途が制限されるため工業的利用価値が低い。すなわち、優れた透明性とアルコール類と接触した際の外観変化および溶剤と接触した後の物性変化の少ないアクリル樹脂フィルムは、熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)を必須成分とすることで達成することができる。
【0054】
なお、本発明の類似技術として、特開昭62−285942号公報および特開昭62−275147号公報等に平均粒子径の異なる二種のゴム成分を特定の比率で含有する耐衝撃性メタクリル樹脂組成物が開示されている。しかしながら該公報にはアクリル樹脂フィルムとしての使用、アクリル樹脂フィルムの耐溶剤性を向上させるための具体的方法に関しては全く記載されておらず、また、実施例の方法で製造したアクリル樹脂組成物を用いて製造したアクリル樹脂フィルムは、曇価が大きく、またアルコール類と接触した際の白化が発生し、透明性および耐溶剤性の優れたアクリル樹脂フィルムは、該公報記載の技術では決して得られないものである。すなわち、透明性および耐溶剤性の優れたアクリル樹脂フィルムは、本発明によって初めて達成されるものである。
【0055】
本発明のアクリル樹脂フィルムを構成する熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の含有量は特に限定されるものではない。熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計100質量%中、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計が5〜40質量%であることが好ましい。ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計が5質量%未満の場合は、これを含むアクリル樹脂フィルムの製膜性が低下する傾向を示し、巻状態でのフィルムの製造が困難になる傾向を示す。一方、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計が40質量%を超えた範囲では、これを含むアクリル樹脂フィルムの溶剤に接触した後の機械特性が低下しやすい傾向を示す。アクリル樹脂フィルムの製膜性と溶剤に接触した後の機械特性の両方を考慮すると、より好ましいゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計の含有量は、熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計100質量%中、10〜35質量%、さらに好ましくは20〜33質量%である。
【0056】
また、本発明のアクリル樹脂フィルムを構成するゴム含有重合体(B)とゴム含有重合体(C)の質量比(B/C)は、特に限定されるものではないが、好ましくは10/90〜40/60である。質量比(B/C)が10/90未満、すなわちゴム含有重合体(B)とゴム含有重合体(C)の合計含有量100質量%中のゴム含有重合体(B)の含有量が10質量%未満の場合は、これを含むアクリル樹脂フィルムの溶剤に接触した後の機械特性が低下しやすい傾向を示し、一方、質量比(B/C)が40/60を超えた範囲、すなわちゴム含有重合体(B)とゴム含有重合体(C)の合計含有量100質量%中のゴム含有重合体(B)の含有量が40質量%を超えた場合は、フィルムの透明性の低下と、アルコール類と接触した際の白化等の外観変化が発生し易くなる傾向を示す。アクリル樹脂フィルムの溶剤に接触した後の機械特性、フィルムの透明性の低下およびアルコール類と接触した際の白化等の外観変化のすべてを考慮すると、より好ましい質量比(B/C)の範囲は10/90〜30/70、さらに好ましくは15/85〜28/72である。
【0057】
また、上記アクリル樹脂フィルムを構成する熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の含有量とともに、ゴム含有重合体(B)中の弾性共重合体(B−1)とゴム含有重合体(C)中の共重合体(C−1)の合計の含有量が、アクリル樹脂フィルムの製膜性と溶剤に接触した後の機械特性に対して重要であり、好ましいゴム含有重合体(B)中の弾性共重合体(B−1)とゴム含有重合体(C)中の共重合体(C−1)の合計の含有量は、熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の合計100質量%中4〜30質量%であり、4質量%未満の場合は、これを含むアクリル樹脂フィルムの製膜性が低下する傾向を示し、30質量%を超えた範囲では、これを含むアクリル樹脂フィルムの溶剤に接触した後の機械特性が低下しやすい傾向を示す。アクリル樹脂フィルムの製膜性と溶剤に接触した後の機械特性の両方を考慮すると、より好ましい弾性共重合体(B−1)と共重合体(C−1)の合計の含有量は、10〜25質量%であり、さらに好ましくは15〜20質量%である。
【0058】
本発明のアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて下記に示す熱可塑性重合体(D)を含むことができる。
【0059】
熱可塑性重合体(D)
メタクリル酸メチル単位50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種の単位0〜50質量%とからなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.2L/gを超える熱可塑性重合体。
【0060】
熱可塑性重合体(D)を使用することによって、フィルム製膜性が向上するため、特に高いレベルの厚み精度や製膜速度が必要となる場合に効果を示す。
【0061】
熱可塑性重合体(D)の還元粘度が0.2L/gを超えた範囲であると、厚み精度の良好なフィルムとなる。使用される熱可塑性重合体(D)の還元粘度は、通常0.2L/gを超えて2L/g以下、好ましくは、1.2L/g以下である。
【0062】
本発明に用いられる熱可塑性重合体(D)において、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等を使用することができる。重合は乳化重合法によるのが好ましく、公知の乳化重合法によって製造した重合体ラテックスを各種凝固剤により分離回収あるいはスプレードライにより固形分を分離回収し重合体粉末を得ることによって製造される。
【0063】
本発明において、必要に応じて用いる熱可塑性重合体(D)の含有量は、(A)+(B)+(C)=100質量部に対して、0.1〜10質量部である。0.1質量部未満では熱可塑性重合体(D)使用による製膜性向上効果が発現しにくく、一方、10質量部を超えた範囲では樹脂組成物の粘度が高くなり、フィルム製膜性および透明性がやや低下する傾向を示す。
【0064】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、艶消剤、紫外線吸収剤等を含むことができる。特に基材の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300より小さな紫外線吸収剤を使用すると、射出成形金型内で真空成形または圧空成形を施す際に揮発し、金型汚れを発生させることがある。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン234、旭電化工業社のアデカスタブLA−31、後者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン1577等が挙げられる。
【0065】
上記配合剤の添加方法としては、本発明のアクリル樹脂フィルムを製膜するための製膜機に熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)、ゴム含有重合体(C)および必要に応じて用いる熱可塑性重合体(D)とともに供給する方法と予め熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)、ゴム含有重合体(C)および必要に応じて用いる熱可塑性重合体(D)に配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法がある。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
【0066】
本発明のアクリル樹脂フィルムの熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)は80℃以上であることが好ましい。熱変形温度が80℃以上であると、アクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体の加熱時後の表面荒れが発生し難くなるとともに、耐溶剤性が向上する傾向を示す。また、熱変形温度が80℃以上の場合、例えばアクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体のアクリル樹脂フィルム面に汚れ防止を目的とした光触媒層形成のための処理液、表面硬化液あるいは帯電防止、結露防止等のための処理液を塗布した後の乾燥処理においてフィルムの収縮に伴う反り、湾曲等の変形を抑制することができ、このように各種処理液の塗布と乾燥を伴うアクリル樹脂フィルム表面の改質が必要な用途において優れた工程通過性を達成することができ、工業的利用価値は高い。
【0067】
本発明のアクリル樹脂フィルムの熱変形温度は、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の使用量によっても変わるが、主にフィルムを構成する熱可塑性重合体(A)の熱変形温度により決まる。熱可塑性重合体(A)の熱変形温度については、熱可塑性重合体(A)の単量体組成を公知の方法で調整することによって調節できる。種々の条件によって異なるが、例えば、共重合成分としてメタクリル酸メチルを使用する場合、アクリル樹脂フィルムの熱変形温度を80℃以上とする場合においては熱可塑性重合体(A)中のメタクリル酸メチル含量を88質量%以上とし、熱変形温度を95℃以上とする場合においては熱可塑性重合体(A)中のメタクリル酸メチル含量を95質量%以上とすることにより調節できる。熱変形温度を100℃以上とする場合においては、熱可塑性重合体(A)中に、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド類を共重合させる必要がある。もちろん、熱変形温度を80℃以上および100℃以上とする場合においても、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド類を共重合させメタクリル酸メチル含量を減らすことも可能である。
【0068】
本発明で用いられるアクリル樹脂フィルムの製造法としては、溶融流延法や、Tダイ法、インフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法等の公知の方法が挙げられるが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0069】
なお、 Tダイ法にてアクリル樹脂フィルムを製造する場合、熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)、ゴム含有重合体(C)および必要に応じて用いる熱可塑性重合体(D)、各種配合剤をそれぞれ計量混合した混合物を直接用いる方法と予め熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)、ゴム含有重合体(C)および必要に応じて用いる熱可塑性重合体(D)、配合剤からなる混合物を単軸押出機、二軸押出機等の各種混練機にて溶融混練して製造したペレット状の樹脂組成物を製膜用の原料として使用する方法がある。
【0070】
本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものでは無いが好ましくは300μm以下である。300μm以下であると、適度な剛性となるためラミネート性、二次加工性等が容易となる。さらに製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。さらに好ましくは15μm〜200μmさらに好ましくは40μm〜200μmである。
【0071】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、各種樹脂成形品、木工製品および金属成形品等の基材の表面に積層することで、アクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体を製造することができる。
【0072】
なお、本発明のアクリル樹脂フィルムには、各種基材に意匠性を付与するために、必要に応じて適当な印刷法により印刷を施し使用することできる。この場合、アクリル樹脂フィルムに片側印刷処理を施したものを用いることが好ましく、成形時には印刷面を基材樹脂との接着面に配することが印刷面の保護や高級感の付与の点から好ましい。また、基材の色調を生かし、透明な塗装の代替として用いる場合には、透明のまま使用することができる。特に、このように基材の色調を生かす用途には、アクリル樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエステルフィルムに比べ、透明性、深み感や高級感の点で優れている。
【0073】
さらに、必要に応じてフィルムへのエンボス加工等の艶消処理や着色加工したものを用いることができる。
【0074】
本発明のアクリル樹脂フィルムを塗装代替として使用する用途の場合、塗装では十分な厚みの塗膜を作るためには、十数回の重ね塗りが必要であり、コストがかかり、生産性が極端に悪くなるのに対して、本発明によるアクリル樹脂フィルム積層成形品であれば、アクリル樹脂フィルム自体が塗膜となるため、容易に非常に厚い塗膜を形成することができ、工業的に有利である。
【0075】
本発明に用いられるアクリル積層成形品を構成する基材となる樹脂は、アクリル樹脂フィルムと溶融接着可能なものであることが必要であり、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂が挙げられるが、接着性の点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂あるいはこれらの樹脂を主成分とする樹脂が好ましく、さらに好ましくはABS樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂を用いることができる。ただし、ポリオレフィン樹脂等の熱融着しない基材樹脂でも接着性の層を用いることでアクリル樹脂フィルムと基材を成形時に接着させることは可能である。
【0076】
本発明のアクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体の製造方法として、2次元形状の積層体に成形する場合は、熱融着できる基材に対しては熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。また、熱融着しない基材に対しては接着剤を介して貼り合わせることは可能である。
【0077】
一方、3次元形状の積層体に成形する場合は、予め形状加工したアクリル樹脂フィルムを射出成形用金型に挿入するインサート成形法や金型内で真空成形後射出成形を行うインモールド成形法等の公知の成形方法を用いることができる。これらは生産性の観点から積層体を製造する成形法として特に好ましい。
【0078】
インモールド成形法は、アクリル樹脂フィルムを加熱した後、真空引き機能を持つ型内で真空成形を行う。該方法であると、フィルムの成形と射出成形を一工程で行えるため、作業性、経済性の点から好ましい。加熱温度としてはアクリル樹脂フィルムが軟化する温度以上であることが望ましい。これはフィルムの熱的性質、あるいは成形品の形状に左右されるが、通常70℃以上である。また、あまり温度が高いと表面外観が悪化したり、離型性が悪くなる。これもフィルムの熱的性質、あるいは成形品の形状に左右されるが、通常170℃以下であることが好ましい。
【0079】
このように、真空成形によりフィルムに三次元形状を付与する場合、金型コーナー部の白化やコーナー部への追従性が重要であり本発明の塗装代替用アクリル樹脂フィルムの特性を最大限に生かせる加工法である。アクリル樹脂フィルムは高温時の伸度に富んでおり、非常に有利である。
【0080】
インモールド成形法はこのように真空成形で三次元形状を付与した後、射出成形によりアクリル樹脂フィルムと基材樹脂を溶融一体化させることで表層にアクリル樹脂フィルム層を有するアクリル積層成形品を得ることができる。
【0081】
本発明のアクリル樹脂フィルムあるいはアクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体は、必要に応じて各種機能付与のための表面処理をアクリル樹脂フィルム表面に施すことができる。機能付与のための表面処理としては、シルク印刷、インクジェットプリント等の印刷処理、金属調付与あるいは反射防止のための金属蒸着、スパッタリング、湿式メッキ処理、表面硬度向上のための表面硬化処理、汚れ防止のための撥水化処理あるいは光触媒層形成処理、塵付着防止あるいは電磁波カットを目的とした帯電防止処理等が挙げられ、このうち本発明のアクリル樹脂フィルムの特徴である優れた耐溶剤性を生かす表面処理としては、有機溶剤を含む表面処理剤をアクリル樹脂フィルムに塗布する工程と乾燥工程を含む表面処理であり、さらにアルコール類を含む表面処理剤をアクリル樹脂フィルムに塗布する工程と乾燥工程を含む表面処理を施しても白化等の変色を伴うことなく、目的とした表面処理を行うことができる。
【0082】
本発明のアクリル樹脂フィルムを表面を有する積層体の工業的利用分野としては特に限定されるののではないが、例えばコンソールボックス、シフトレバーボックス等の自動車内装部品、二輪車のカウリング等の車輌外装部品や、家電製品、家具、建材等の従来塗装を施していた部材に利用できる。上記分野においては、部材の使用環境下で最表面にあるアクリル樹脂フィルム表面に付着、接触する各種溶剤、例えば芳香剤液、整髪料等に含まれるエタノール、イソプロパノール等のアルコール類等に対しても優れた耐溶剤性を示し、上記溶剤との接触によっても白化等の変色を抑制することができる。
【0083】
また、本発明のアクリル樹脂フィルムを表面を有する積層体の別の工業的利用分野として、道路標識、表示板あるいは視認性を目的とした安全器具に使用される高輝度反射材がある。高輝度反射材の種類としては、アルミニウム蒸着を施したガラスビーズを基材に埋め込んだカプセル型反射材、プリズム加工した樹脂シートを反射体として使用したプリズム型反射材等があり、いずれのタイプにおいても本発明のアクリル樹脂フィルムは反射材の表面に積層して使用する保護フィルムとして用いることができる。本発明のアクリル樹脂フィルムを表面に有する高輝度反射材は、使用中に接触する溶剤に対する耐溶剤性が良好であるだけではなく、例えば反射材のアクリル樹脂フィルム表面に汚れ防止を目的とした光触媒層を形成させる処理を施す際に使用する芳香族炭化水素および/またはアルコール類を含む処理液の塗布、さらに塗布後に実施する乾燥によっても白化等の変色、クラック発生および湾曲等の変形が発生しないため工業的利用価値が極めて高い。
【0084】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。
【0085】
なお、参考例、実施例および比較例中の「部」は「質量部」を「%」は「質量%」をそれぞれ表す。また、参考例中の略号は以下のとおりである。
【0086】
メチルメタクリレート MMA
メチルアクリレート MA
ブチルアクリレート BA
スチレン St
アリルメタクリレート AMA
1.3-ブチレングリコールジメタクリレート 1.3BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド tBH
t−ヘキシルハイドロパーオキサイド tHH
n−オクチルメルカプタン nOM
また、参考例で調製した熱可塑性重合体(A)、ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の性状評価および実施例、参考例で作製したアクリル樹脂フィルムおよびこれを含む積層体の諸物性は以下の試験法により実施した。
【0087】
1)熱可塑性重合体(A)および熱可塑性重合体(D)の還元粘度
重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定した。
【0088】
2)ゴム含有重合体(B)およびゴム含有重合体(C)の質量平均粒子径
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(B)またはゴム含有重合体(C)のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定しもとめた。
【0089】
3)重合体(B−1)のガラス転移温度
DSC(セイコー電子工業株式会社製 DSC200)を用いて、得られたゴム含有重合体(B)の粉体を使用して測定を行い、重合体(B−1)成分のガラス転移温度をもとめた。
【0090】
4)フィルムの全光線透過率および曇価
JIS K6714に従って評価した。
【0091】
5)フィルムの表面光沢
フィルムの表面光沢はグロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製 GM−26D型)を用い、60゜での表面光沢を測定した。
【0092】
6)積層体の鉛筆硬度
JIS K5400に従って評価した。
【0093】
7)フィルムの製膜性
Tダイ法にて厚み50μのフィルムを製膜し、5時間以上フィルムが切れずに製膜可能であったものを○、5時間で数回のフィルム切断が発生したものを△、フィルムの切断のため、サンプルが得られなかったものを×とした。
【0094】
8)フィルム組成物の熱変形温度
フィルム組成物ペレットを、射出成形にてASTM D648にもとづく熱変形温度測定試片に成形し、80℃で24時間アニール後、低荷重(0.45MPa)でASTM D648に従って測定した。
【0095】
9)積層体の耐アルコール性試験
積層体のアクリル樹脂フィルム表面側にエタノール(試薬1級)を膨潤させた10mm×10mmのネル布三枚を置き、さらに30ccガラス瓶を上記ネル布を覆うように被せ、3時間室温にて放置した。次いで、ガラス瓶、ネル布を取り除き、室温にて1時間積層体を放置した後の積層体アクリル樹脂フィルム表面の外観を目視評価し、下記の指標にて耐アルコール性を判定した。
【0096】
○:変化無し、△:僅かに白化が見られる、×:白化が見られる
10)アクリル樹脂フィルムの溶剤接触試験
幅15mm、長さ120mm、厚み50μmの形状にアクリル樹脂フィルムを10枚調製し、これを垂直に垂らした状態になるように冶具に固定した後、下端に質量10gの錘を吊した。次いでアクリル樹脂フィルムの下端から50mmの位置にトルエンを塗布し、各フィルムが破断するまでの時間を測定した。10枚の破断するまでの時間の最小値および最大値を除いた8枚の破断するまでの時間の平均値から下記指標によりアクリル樹脂フィルムの溶剤接触後の機械特性を判定した。
【0097】
○ :平均破断までの時間>60秒
△ :60秒≧平均破断までの時間≧30秒
×:30秒>平均破断までの時間
(参考例1)ゴム含有重合体(B)の製造
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水244部を入れ80℃に昇温し、下記に示す(イ)を添加した後、撹拌を行いながら下記に示す原料(ロ)(重合体(B−1))の混合物の1/15を仕込み15分保持した。その後残りの(ロ)を水に対する単量体混合物の増加率8%/時間で連続的に添加した。その後1時間保持して重合体(B−1)の重合を行った。
【0098】
続いてラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加えた後、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら下記に示す原料(ハ)(ゴム重合体(B−2))を水に対する単量体混合物の増加率4%/時間で連続的に添加した。その後2時間保持してゴム重合体(B−2)の重合を行い、弾性体重合体のポリマーラテックスを得た。
【0099】
得られた弾性体重合体ラテックスに引き続いて、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加えた後、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら下記に示す原料(ニ)(最外層重合体(B−3))を水に対する単量体混合物の増加率10%/時間で連続的に添加した。その後1時間保持して最外層重合体(B−3)の重合を行い、ゴム含有重合体(B)のポリマーラテックスを得た。得られたゴム含有重合体(B)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
【0100】
ゴム含有重合体(B)のポリマーラテックスをラテックスの2倍量の酢酸カルシウムの水溶液(ゴム含有重合体(B)に対する酢酸カルシウム量が3部になる濃度)を用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥してゴム含有重合体(B)を得た。
【0101】
また、得られたゴム含有重合体(B)のDSC測定より、重合体(B−1)成分のガラス転移温度は24℃であった。
【0102】
(イ)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.6部
硫酸第一鉄 0.00012部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部
(ロ)
MMA 22.0部
BA 15.0部
St 3.0部
AMA 0.4部
1.3BD 0.14部
tBH 0.18部
モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%と
ジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%の
水酸化ナトリウムの混合物の部分中和物 1.0部
(ハ)
BA 50.0部
St 10.0部
AMA 0.4部
1.3BD 0.14部
tHH 0.2部
モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%と
ジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%の
水酸化ナトリウムの混合物の部分中和物 1.0部
(ニ)
MMA 57.0部
MA 3.0部
nOM 0.3部
tBH 0.06部
(参考例2)ゴム含有重合体(C)の製造
反応容器に下記に示す(イ’)を仕込み、攪拌を行いながら窒素雰囲気下80℃で200分間にわたって原料(ロ’)を連続的に添加し、その後さらに120分間重合を行い、弾性体重合体(C−1)のポリマーラテックスを得た。
【0103】
得られた共重合体(C−1)ラテックスに、下記に示す(ハ’)を添加し、攪拌を行いながら窒素雰囲気下80℃で、下記に示す原料(ニ’)を100分間にわたって連続的に添加し、その後さらに80℃で60分間保持して重合を行い、ゴム含有重合体(C)のポリマーラテックスを得た。得られたゴム含有重合体(C)の質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0104】
ゴム含有重合体(C)ラテックスをラテックスの2倍量の酢酸カルシウムの水溶液(ゴム含有重合体(C)に対する酢酸カルシウム量が3部になる濃度)を用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥してゴム含有重合体(C)を得た。
【0105】
(イ’)
脱イオン水 310部
モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%と
ジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%の
水酸化ナトリウムの混合物の部分中和物 0.5部
炭酸ナトリウム 0.1部
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部
硫酸第一鉄 0.00024部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00072部
(ロ’)
BA 81.0部
St 19.0部
AMA 1.0部
tBH 0.25部
モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%と
ジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%の
水酸化ナトリウムの混合物の部分中和物 1.1部
(ハ’)
脱イオン水 10部
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.15部
(ニ’)
MMA 57.0部
MA 3.0部
nOM 0.2部
tBH 0.1部
(参考例3)熱可塑性重合体(D)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤オレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BuA10部、NOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いてMMA48部、BuA2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、滴下終了後2時間保持を行い、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析した後脱水、水洗、乾燥し、粉体状で熱可塑性重合体(D)を回収した。得られた熱可塑性重合体(D)の還元粘度ηsp/cは0.38L/gであった。
【0106】
(実施例1〜4および比較例1〜5)アクリル樹脂フィルム(F−1〜4およびG−1〜5)の製造およびこれらを表面に有する積層体の製造
熱可塑性重合体(A)であるMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1、還元粘度0.06L/g)、参考例1〜3で製造したゴム含有重合体(B)、ゴム含有重合体(C)および熱可塑性重合体(D)を表1に示す配合量で計量し調製した混合物に、さらに配合剤として旭電化(株)製「アデカスタブP」0.4部、旭電化(株)製「アデカスタブAO−60」0.1部、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製「チヌビン1577」1.0部および三菱レイヨン(株)製「メタブレンL1000」0.8部を添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。
【0107】
得られたペレットを使用して測定した熱変形温度の結果を表1に示す。
【0108】
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度70℃で50μm厚みのフィルムを製膜した。製膜性評価結果を表1に示す。
【0109】
また、得られた各アクリル樹脂フィルムの全光線透過率、曇価、表面光沢および溶剤接触試験の各測定結果を表1に示す。
【0110】
次に得られたアクリル樹脂フィルムにグラビア印刷を施し、木目柄を有する印刷フィルムを製造した。次に、この印刷フィルムを140℃で1分間加熱した後、真空引き機能を持つ金型で真空成形を行った。成形加工したフィルムを射出成形用金型に配した状態で、ABS樹脂(三菱レイヨン(株)製「ダイヤペットABS3001」)を印刷面側に射出成形し、ABS樹脂成形品表面に印刷したアクリル樹脂フィルムが積層した積層体を得た。
【0111】
得られた積層体を用いて実施した鉛筆硬度測定結果および耐アルコール性試験結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
【0113】
1)実施例1〜4のアクリル樹脂フィルム(F−1〜4)は、いずれも良好な製膜性、透明性、表面光沢と良好な溶剤に接触した後の機械特性の保持性および良好な耐アルコール性を示す。特に実施例1および2のアクリル樹脂フィルム(F−1および2)の溶剤に接触した後の機械特性の保持性と耐アルコール性のバランスは従来知られているアクリル樹脂フィルムにはない高いレベルであり、このように耐溶剤性に優れたアクリル樹脂フィルムの工業的利用価値は高い。
【0114】
2)比較例4および5のアクリル樹脂フィルムは、いずれも製膜性が不良であり、50μm厚みの膜厚が均一なフィルムを得ることができず、フィルムおよびこれを用いた積層体の評価が不能であった。
【0115】
3)比較例1および3のゴム含有重合体(C)を含有しないアクリル樹脂フィルム(G−1および3)は、いずれも製膜性、表面光沢および溶剤に接触した後の機械特性の保持性は良好なものの、耐アルコール性が不良であり、これを表面に使用した積層体がアルコールと接触した場合に白化等の変色が発生し、このように外観変化が生じるアクリル樹脂フィルム積層体は、使用できる用途が限られるため、工業的利用価値が低い。
【0116】
また、比較例1および3のゴム含有重合体(C)を含有しないアクリル樹脂フィルム(G−1および3)は、いずれも50μmでの曇価が高く、高いレベルの意匠性、とりわけ積層体表面に深み感のある透明性が必要となる用途に使用することができない。
【0117】
4) 比較例2のゴム含有重合体(B)を含有しないアクリル樹脂フィルム(G−2)は、製膜性、透明性、表面光沢および耐アルコール性は良好なものの、溶剤に接触した後の機械特性が著しく低下し、例えば印刷、表面処理等溶剤を含む処理液と接触した場合、フィルムの強度が低下し、取り扱い性を損なうといった不都合が生じ、このように耐溶剤性に劣るアクリル樹脂フィルムは、使用できる用途が限られるため工業的利用価値が低い。
【0118】
【発明の効果】
本発明は以上説明した通りであり、次のように特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
【0119】
1)本発明のアクリル樹脂フィルムは製膜性、透明性、表面光沢、表面硬度、および耐溶剤性に優れる。
【0120】
2)特に溶剤に接触した後の機械特性の保持性とこれを表面に有する積層体の耐アルコール性のバランスは、従来知られているアクリル樹脂フィルムでは得られない非常に高いレベルであり、各種工業材料とりわけ積層用フィルム材料としての利用価値は極めて高い。
Claims (7)
- 下記(A)、(B)および(C)を含むアクリル樹脂フィルム。
熱可塑性重合体(A)
メタクリル酸アルキルエステル単位50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル単位0〜50質量%およびこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種の単位0〜49質量%とからなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下である熱可塑性重合体。
ゴム含有重合体(B)
重合体(B−1)およびゴム重合体(B−2)からなる弾性重合体((B−1)+(B−2))を含むゴム含有重合体(B)であって、最内層がメタクリル酸アルキルエステルまたはアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃以上25℃未満である重合体(B−1)、中間層がアクリル酸アルキルエステルを主成分とするガラス転移点温度が0℃未満であるゴム重合体(B−2)、最外層がメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする最外層重合体(B−3)、からなる3層構造を有する質量平均粒子径が0.2〜0.4μmの範囲にあるゴム含有重合体。
ゴム含有重合体(C)
内層である1層または2層以上の構造を有する共重合体(C−1)に、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを重合体の主構成成分とする1層または2層以上の構造を有する硬質重合体(C−2)がグラフトしてなる、2層以上の多層構造を有する質量平均粒子径が0.2μm未満の範囲にあるゴム含有重合体であって、前記共重合体(C−1)を得るに際してアクリル酸アルキルエステルが35〜100質量%使用されたゴム含有重合体。 - 下記熱可塑性重合体(D)をさらに含む請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
熱可塑性重合体(D)
メタクリル酸メチル50〜100質量%およびこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%からなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.2L/gを超える熱可塑性重合体。 - 成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%に対し、成分(B)と成分(C)の合計が5〜40質量%である請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
- 成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%に対し、弾性共重合体(B−1)と共重合体(C−1)の合計が4〜30質量%である請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
- 成分(B)と成分(C)の質量比(B/C)が、10/90〜40/60である請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
- 熱変形温度(ASTM D648に基づく測定)が80℃以上である、請求項1記載のアクリル樹脂フィルム。
- 請求項1記載のアクリル樹脂フィルムを表面に有する積層体。
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