JP4031951B2 - 塗装代替用積層フィルムまたはシート、その製造方法、および、この塗装代替用積層フィルムまたはシートを含む積層体 - Google Patents

塗装代替用積層フィルムまたはシート、その製造方法、および、この塗装代替用積層フィルムまたはシートを含む積層体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材の表面加飾に用いられる塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法、塗装代替用積層フィルムまたはシート、および、この塗装代替用積層フィルムまたはシートを含む積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
低コストで成形品に意匠性を付与する表面加飾の方法として、インモールド成形法がある。この方法においては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルムまたはシートの表面に印刷などの加飾層を形成し、これを真空成形法等によって所望の形状に成形した後、または、成形せずに射出成形金型内に配置し、基材となる樹脂を射出成形する。この方法により、加飾層が形成された樹脂フィルムまたはシートと基材とを生産性よく一体化したり、印刷のみを転写したりすることができる。
【0003】
このようなインモールド成形法において好適に使用できるアクリル樹脂フィルムが、特開平9−263614号公報に開示されている。このアクリル樹脂フィルムは、直径80μm以上の異物が1個/m2以下、厚み300μm以下の印刷性に優れたものであり、例えば、所定の単量体混合物を所定の方法により重合して得られる熱可塑性重合体およびゴム含有重合体を所定量含有してなるアクリル系組成物を用いて製造される。このアクリル樹脂フィルムに印刷を施した場合、異物による表面の凸部(以下、フィッシュアイという。)に起因する印刷抜けが抑制され、優れた印刷性が実現できる。
【0004】
また、特開平8−323934号公報には、表面硬度に優れた、塗装の代わりに用いることができるアクリル樹脂フィルムが開示されている。
【0005】
ところで、近年、印刷などの加飾層を形成したアクリル樹脂フィルムの表面を艶消し状態として、高級感や深み感といった意匠性を付加することが求められてきている。このような要求は、艶消しアクリル樹脂フィルムを用いることによって実現できる。
【0006】
例えば、特開平10−237261号公報には、所定の単量体混合物を所定の方法により重合して得られる熱可塑性重合体および所定の粒径に制御されたゴム含有重合体を所定量含有してなり、表面光沢が10〜100%である、厚み300μm以下のアクリル積層成形品用艶消しアクリルフィルム、さらには、艶消し剤として、無機粒子、有機架橋粒子、水酸基含有直鎖状重合体を添加した艶消しアクリルフィルムが開示されている。この艶消しアクリルフィルムは、表面硬度に優れ、高級感、深み感に優れる表面艶消し外観で、しかも、艶戻りが抑制されたものであり、塗装代替用途に好適に用いることができる。
【0007】
しかしながら、特開平10−237261号公報には、艶消しアクリル樹脂フィルムに印刷を施した際の印刷抜け性に関して詳細には記載されていない。そこで、本発明者らは、特開平10−237261号公報に記載の艶消しアクリル樹脂フィルムを製造し、印刷試験を行ったところ、印刷面の1m2当たり10個を超える印刷抜けが発生する場合があった。この艶消しアクリル樹脂フィルムは、艶消し性は良好なものの、印刷性が不十分の場合がある。
【0008】
このように、従来から知られている60°表面光沢度が100%以下であるアクリル樹脂フィルムに印刷を施したとき、フィッシュアイなどが原因で生じる印刷抜けなどの外観欠陥の個数が10個/m2を超える場合がある。このようなフィルムに木目調の印刷を施した場合、印刷抜けがあたかも虫食いの穴に見えるために著しい外観の低下を招くことはあまりない。しかし、メタリック調の印刷を施した場合は明らかな欠陥に見えるため、意匠性、加飾性の低下を招き、外観を損なうことがある。このため、このような印刷抜けが多数発生した艶消しアクリル樹脂フィルムは工業的利用価値が低い。また、印刷抜けの部分は製品として使用できないので、歩留まりが低下することがあるという問題もある。
【0009】
現在、塗装代替用途に用いることができる、良好な艶消し外観を有する艶消しアクリル樹脂フィルムを最表層に有し、かつ、印刷抜けなどがない良好な外観の加飾層を有する積層フィルムまたはシート、および、これを基材に積層した積層体の開発が強く望まれている。
【0010】
また近年、塗装の代替に用いる金属調フィルムまたはシートとして種々のものが提案されている。これらのフィルムまたはシートを熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木材、紙、金属などの基材に積層することによって、金属調外観の成形品を得ることができる。
【0011】
例えば、特開平11−207887号公報には、真珠顔料およびフッ化ビニリデン系樹脂、または、真珠顔料およびフッ化ビニリデン系樹脂とメタクリル酸エステル系樹脂とを含有する表面層を有する、金属調の色合いを有するフッ化ビニリデン系樹脂フィルムが開示されている。
【0012】
特開平11−245261号公報には、アクリルフィルム上に少なくとも絵柄層を有する印刷層が形成されたアクリル印刷インサートフィルムを用いて射出成形することにより、印刷アクリル樹脂フィルムを表層に有するアクリルフィルムインサート成形品、例えば、金属調のホイールキャップやバンパーの製造方法が開示されている。
【0013】
特開2000−33675号公報には、金属薄膜層等の装飾層を有する着色アクリル系樹脂シート上に、無色透明アクリル系樹脂シートを積層してなる化粧シートが開示されている。
【0014】
特開2000−86853号公報には、無着色のアクリル系樹脂フィルムと、金属粉が添加された、着色されたアクリル系樹脂フィルムまたは着色されたオレフィン系樹脂フィルムとからなる積層フィルムが開示されている。
【0015】
特開2000−84972号公報には、少なくとも基体シートと金属色層とから構成され、150℃の環境温度下において幅10mmの成形同時絵付シートの試験片を一対のチャックで挟みチャック対向端縁間距離10mmで固定し、試験片の一端を10mm/分の一定速度で荷重をかけて20mmまで伸ばした状態で、日本工業規格(JIS)Z8741における60°反射の表面光沢度が75%以上である成形同時絵付シートが開示されている。
【0016】
これらの公報では、いずれもアクリル樹脂からなる層またはアクリル樹脂を含む層を表面に有する金属調フィルムまたはシートが開示されている。しかしながら、これらのアクリル樹脂層の60°表面光沢度は通常60%以上であり、得られる金属調フィルムまたはシートを積層した積層体は、高光沢度であるため、外観にテカリ感があって高級感に欠ける場合がある。
【0017】
このように、現在、塗装代替用途に用いることができる、高級感、落ち着き感を有する外観の金属調の加飾用フィルムまたはシート、および、これを基材に積層した積層体の開発が強く望まれている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、良好な艶消し外観を有する艶消しアクリル樹脂フィルムを最表層に有し、高級感、深み感、落ち着き感があり、しかも、印刷抜けの発生が抑制された加飾層を有する、外観特性が良好な塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法、この製造方法により得られる塗装代替用積層フィルムまたはシート、および、これを基材に積層した積層体を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記のような問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の加飾層を形成した熱可塑性樹脂フィルムまたはシートと特定の表面光沢度を有するアクリル樹脂フィルムとを構成成分とした積層フィルムまたはシートが、塗装代替用途に用いることができる良好な外観と意匠性とを示すことを見出し、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明の上記目的は以下の本発明により解決できる。
【0021】
(1)アクリル樹脂フィルム(I)と加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)とを有する塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に、外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、この加飾層(II)の上に、保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層することを特徴とする60゜表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
【0022】
(2)アクリル樹脂フィルム(I)と加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)とを有する塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に、外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、この加飾層(II)の上に、着色層(IV)を形成し、この着色層(IV)の上に、保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層することを特徴とする60゜表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
【0023】
(3)前記(1)または(2)の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法により得られることを特徴とする塗装代替用積層フィルムまたはシート。
【0024】
(4)前記(3)の塗装代替用積層フィルムまたはシートが、アクリル樹脂フィルム(I)が最表層となるように、基材に積層されていることを特徴とする積層体。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の60゜表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、この加飾層(II)の上に保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層するものである。加飾層(II)とアクリル樹脂フィルム(I)との間、または、加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)との間には、着色層(IV)を形成してもよい。
【0026】
アクリル樹脂フィルム(I)としては、後述するアクリル樹脂組成物(A)、アクリル樹脂(B)またはアクリル樹脂組成物(C)のいずれかを含有するものであることが好ましい。
【0027】
ここで、60゜表面光沢度とは、入射角60°の入射光に対して等しい角度(反射角60°)での反射光、すなわち鏡面反射光の、基準面(屈折率1.567のガラスの平面)における同じ条件での反射光に対する百分率のことをいう。
【0028】
また、本発明の加飾層(II)の外観欠陥とは、加飾層(II)が印刷層の場合は、印刷される面の突起やへこみの部分に印刷層が転写されないために生じる印刷抜けのことをいい、加飾層(II)が金属層の場合は、印刷される面の突起やへこみの部分には金属層が密着した状態で積層されないので、局所的に斑があるように見えるところのことをいう。
【0029】
本発明により得られる塗装代替用積層フィルムまたはシートは、60゜表面光沢度が30%以下であるので、外観にテカリ感がなく、高級感、深み感、落ち着き感がある。また、加飾層(II)の外観欠陥を1m2当たり10個以下とし、印刷抜けの発生を抑制しているので、歩留まりの低下を招くこともなく、意匠性や外観を損なうこともない。本発明の積層フィルムまたはシートは、外観特性が良好で塗装代替用途に好適に用いることができ、印刷抜け等の外観欠陥が少ないので工業的利用価値が著しく高い。
【0030】
また、加飾層(II)を金属調の印刷層または金属層とすると、本発明の塗装代替用積層フィルムまたはシートは、削り出しした金属表面のように見えるようになり、高級感、落ち着き感を有する外観の金属調フィルムまたはシートが得られる。積層フィルムまたはシート、あるいは、これを含む積層体を金属調にするために加飾層(II)として金属調の印刷層や金属層を用いた場合、60°表面光沢度はさらに重要になる。表面光沢度が低いほど、積層フィルムまたはシート、あるいは、これを含む積層体の外観は、削り出しした金属表面のように見える傾向がある。したがって、プラスチックでありながら、あたかも本物の金属のように見えるために著しく工業的利用価値が高まる。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明で用いるアクリル樹脂フィルム(I)としては、公知のものを用いることができるが、下記のようなアクリル樹脂組成物(A)、アクリル樹脂(B)またはアクリル樹脂組成物(C)のいずれかを含有するものを用いることが好ましい。
【0033】
アクリル樹脂組成物(A)
まず最初に、アクリル樹脂組成物(A)について説明する。アクリル樹脂組成物(A)は、下記のゴム含有重合体(A−1)5.5〜99.9質量%と、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする熱可塑性重合体(A−2)0.1〜94.5質量%とからなる。
【0034】
ゴム含有重合体(A−1)は、内層であるアクリル酸アルキルエステルを主成分とする1層または2層以上の構造を有する弾性共重合体(a-1)の存在下に、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする1層または2層以上の構造を有する硬質重合体(a-2)をグラフト重合してなるゴム含有重合体であり、2層以上の多層構造を有する。
【0035】
内層である弾性共重合体(a-1)は、アクリル酸アルキルエステルモノマーと架橋性単量体とを共重合して得られるものである。
【0036】
用いるアクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されず、公知のものを用いることができるが、中でもアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等を用いることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
弾性共重合体(a-1)中のアクリル酸アルキルエステルの含有量(使用量)は、フィルムの成形性が良好なので35質量%以上、好ましくは50質量%以上であり、また、99.9質量%以下である。
【0038】
弾性共重合体(a-1)には、さらに架橋性単量体を使用する。用いる架橋性単量体としては特に限定されないが、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ブタンジオール、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等を用いることが好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
弾性共重合体(a-1)中の架橋性単量体の含有量(使用量)は、0.1質量%以上であり、また、10質量%以下である。
【0040】
また、弾性共重合体(a-1)を得るに際しては、さらにこれらと共重合可能な他のビニル単量体を共重合させてもよい。用いる共重合可能な他のビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等が好ましく、これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなビニル単量体の含有量(使用量)は64.9質量%以下である。
【0041】
弾性共重合体(a-1)は1層または2層以上の構造とすることができる。2層以上の構造とする場合、弾性共重合体(a-1)の全体としてのアクリル酸アルキルエステルの含有量、架橋性単量体の含有量が上記の範囲であればよい。また、ハード芯構造にする場合は、1層目(最内層)のアクリル酸アルキルエステルの含有量を35質量%以下とすることもできる。
【0042】
外層として上記のような弾性共重合体(a-1)にグラフトさせる硬質重合体(a-2)は、メタクリル酸アルキルエステルモノマーを重合、あるいは、共重合して得られるものである。
【0043】
用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されないが、中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル等を用いることが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
硬質重合体(a-2)中のメタクリル酸アルキルエステルの含有量(使用量)は、50質量%以上である。
【0045】
硬質重合体(a-2)には、さらにこれらと共重合可能な他のビニル単量体を使用してもよい。用いる共重合可能な他のビニル単量体としては特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を用いることが好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなビニル単量体の含有量(使用量)は、50質量%以下である。
【0046】
硬質重合体(a-2)は1層または2層以上の構造とすることができる。2層以上の構造とする場合、硬質重合体(a-2)の全体としてのメタクリル酸アルキルエステルの含有量が上記の範囲であればよい。
【0047】
グラフトさせる硬質重合体(a-2)の使用量は、弾性共重合体(a-1)100質量部に対して10質量部以上、好ましくは20質量部以上であり、また、弾性共重合体(a-1)100質量部に対して400質量部以下、好ましくは200質量部以下である。グラフトさせる硬質重合体(a-2)は、少なくとも1段以上で重合することができる。
【0048】
本発明に用いるゴム含有重合体(A−1)の粒子径は、0.01μm以上、特に0.08μm以上であることが好ましく、また、0.5μm以下、特に0.3μm以下であることが好ましい。なお、製膜性の点から0.08μm以上の粒子径であることが好ましい。
【0049】
本発明で用いるゴム含有重合体(A−1)は、公知の乳化重合法で製造することができる。なお、ゴム含有重合体(A−1)は2層以上の多層構造を有するが、内層となるモノマーから順に添加して重合させ、重合が完結した後、次の層となるモノマーを添加して重合させればよい。
【0050】
重合温度は、用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、通常、40℃以上、特に60℃以上が好ましく、また、120℃以下、特に95℃以下が好ましい。
【0051】
重合開始剤は、公知のものが使用でき、その添加方法は、水相、単量体相いずれか片方、または、双方に添加すればよい。
【0052】
乳化剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が使用できるが、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等が挙げられる。乳化剤の添加量は、重合条件に応じて適宜決めればよい。
【0053】
乳化重合法によって得られたポリマーラテックスは、好ましくは目開きが100μm以下のフィルターで濾過した後、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等の公知の凝固法により凝固させる。酸凝固法としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用することができ、塩凝固法としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用することができる。凝固された重合体をさらに洗浄、脱水、乾燥して、本発明で用いるゴム含有重合体(A−1)が得られる。
【0054】
アクリル樹脂組成物(A)に含まれる熱可塑性重合体(A−2)は、メタクリル酸アルキルエステルモノマーを重合、あるいは、共重合して得られるものであり、公知のものを用いることができるが、製膜性の点から、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%と、アクリル酸アルキルエステル0.1〜50質量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体0〜49.9質量%とからなり、還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下である重合体であることが好ましい。
【0055】
用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されず、公知のものを用いることができるが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
熱可塑性重合体(A−2)中のメタクリル酸アルキルエステルの含有量(使用量)は、50質量%以上であり、また、99.9質量%以下である。
【0057】
熱可塑性重合体(A−2)には、さらにアクリル酸アルキルエステルを使用する。用いるアクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等を用いることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
熱可塑性重合体(A−2)中のアクリル酸アルキルエステルの含有量(使用量)は、0.1質量%以上であり、また、50質量%以下である。
【0059】
また、熱可塑性重合体(A−2)を得るに際しては、さらにこれらと共重合可能な他のビニル単量体を共重合させてもよい。用いる共重合可能な他のビニル単量体としては、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が好ましく、これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなビニル単量体の含有量(使用量)は49.9質量%以下である。
【0060】
熱可塑性重合体(A−2)の還元粘度は、フィルム原料樹脂の溶融時に適度の伸びが生じ、製膜性が良好となるので、0.1L/g以下である。また、熱可塑性重合体(A−2)の還元粘度は、フィルムが脆くなくなるためにフィルム製膜時および印刷時にフィルム切れを起こしにくくなるので、0.05L/g以上である。
【0061】
熱可塑性重合体(A−2)の製造方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で重合できる。また、重合時に連鎖移動剤、その他の重合助剤などを使用してもよい。連鎖移動剤は各種のものが使用できるが、中でもメルカプタン類が好ましい。
【0062】
アクリル樹脂組成物(A)は、上記のようなゴム含有重合体(A−1)と熱可塑性重合体(A−2)とからなる。ゴム含有重合体(A−1)の含有量は、5.5質量%以上であり、99.9質量%以下である。
【0063】
アクリル樹脂(B)
次に、アクリル樹脂(B)について説明する。アクリル樹脂(B)は、下記の最内層重合体(B−a)の層と架橋弾性重合体(B−b)の層と最外層重合体(B−c)の層とを基本構造として順次有し、架橋弾性重合体(B−b)の層と最外層重合体(B−c)の層との間に下記の中間層(B−d)を少なくとも一層有するものであり、4層以上の多層構造を有する。
【0064】
最内層重合体(B−a)の層は、80〜100質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよび/または炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−a1)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−a2)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−a3)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られる。
【0065】
最内層重合体(B−a)に用いる炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−a1)としては特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等を用いることが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)の低いものを用いることが好ましい。また、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−a1)としては特に限定されないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等を用いることが好ましい。これらのアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(B−a1)の含有量(使用量)は、80質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0067】
また、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、その後多段階に統一して用いること、つまり、最内層重合体(B−a)、架橋弾性重合体(B−b)、最外層重合体(B−c)、中間層(B−d)に同じものを用いることが好ましいが、最終目的によっては2種以上の単量体を混合したり、他種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0068】
共重合可能な二重結合を有する単量体(B−a2)としては特に限定されないが、アクリル酸高級アルキルエステル、アクリル酸低級アルコキシエステル、アクリル酸シアノエチルエステル、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体を用いることが好ましい。その他に、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。これらの共重合可能な二重結合を有する単量体は1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
これらの共重合可能な二重結合を有する単量体の含有量(使用量)は、0質量%以上であり、また、20質量%以下である。
【0070】
多官能性単量体(B−a3)としては特に限定されないが、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール等のジメタクリル酸アルキレングリコールエステルを用いることが好ましく、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンやジアクリル酸アルキレングリコールエステル等も使用できる。これらの多官能性単量体は1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
これらの多官能性単量体は、それが含まれる層自体を橋架けするのに有効に働き、他層との層間の結合には作用しない。多官能性単量体(B−a3)は全く使用されなくてもグラフト交叉剤が存在する限りかなり安定な多層構造体を与えるが、熱間強度等が厳しく要求される場合などその添加目的に応じて任意に用いられる。これらの多官能性単量体の含有量(使用量)は、10質量%以下である。
【0072】
グラフト交叉剤としては、共重合性のα、β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステルが挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはフマル酸のアリルエステル、特にメタクリル酸アリルが優れた効果を有し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。
【0073】
このようなグラフト交叉剤は、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。一方、アリル基、メタリル基またはクロチル基の実質上かなりの部分は次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与えるものである。
【0074】
グラフト交叉剤の使用量は極めて重要で、十分なグラフト結合の有効量が得られるので、上記成分(B−a1)〜(B−a3)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上である。また、グラフト交叉剤の使用量は、2段目に重合形成される架橋弾性重合体(B−b)との反応量が大きくなりすぎず、2層弾性体構造からなる2層架橋ゴム弾性体の弾性が十分に得られるので、上記成分(B−a1)〜(B−a3)の合計量100質量部に対して5質量部以下、好ましくは2質量部以下である。
【0075】
本発明のアクリル樹脂(B)中の最内層重合体(B−a)の含有量は、5質量%以上であり、また、35質量%以下、好ましくは15質量%以下である。また、最内層重合体(B−a)の含有量は、架橋弾性重合体(B−b)の含有量より低いことが好ましい。
【0076】
架橋弾性重合体(B−b)の層は、80〜100質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−b1)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−b2)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−b3)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られる。アクリル樹脂(B)を構成する架橋弾性重合体(B−b)は、この多層構造重合体にゴム弾性を与える主要な成分である。
【0077】
架橋弾性重合体(B−b)に用いる(B−b1)〜(B−b3)成分およびグラフト交叉剤は、それぞれ、前述した最内層重合体(B−a)に用いる(B−a1)〜(B−a3)成分およびグラフト交叉剤と同様のものが用いられる。なお、(B−b1)成分は、(B−a1)成分のうち炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと同様のものである。また、(B−b2)成分には、メタクリル酸アルキルエステル、例えば、(B−a1)成分のうち炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが含まれる。
【0078】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−b1)の含有量(使用量)は、80質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0079】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−b2)の含有量(使用量)は、0質量%以上であり、また、20質量%以下である。
【0080】
多官能性単量体(B−b3)の含有量(使用量)は、10質量%以下である。
【0081】
グラフト交叉剤の使用量は、上記成分(B−b1)〜(B−b3)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上であり、また、上記成分(B−b1)〜(B−b3)の合計量100質量部に対して5質量部以下である。
【0082】
本発明のアクリル樹脂(B)中の架橋弾性重合体(B−b)の含有量は、10質量%以上であり、また、45質量%以下である。また、架橋弾性重合体(B−b)の含有量は、前記最内層重合体(B−a)の含有量より高いことが好ましい。
【0083】
最外層重合体(B−c)の層は、51〜100質量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−c1)、および、0〜49質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−c2)を含む単量体組成物を重合して得られる。アクリル樹脂(B)を構成する最外層重合体(B−c)は、アクリル樹脂に製膜性、成形性を分配するのに関与するものである。
【0084】
最外層重合体(B−c)に用いる(B−c1)成分および(B−c2)成分は、それぞれ、前述した最内層重合体(B−a)に用いる(B−a1)成分および(B−a2)成分と同様のものが用いられる。なお、(B−c1)成分は、(B−a1)成分のうち炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルと同様のものである。また、(B−c2)成分には、アクリル酸アルキルエステル、例えば、(B−a1)成分のうち炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが含まれる。
【0085】
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−c1)成分の含有量(使用量)は、51質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0086】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−c2)の含有量(使用量)は、0質量%以上であり、また、49質量%以下である。
【0087】
本発明のアクリル樹脂(B)中の最外層重合体(B−c)の含有量は、10質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、また、80質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
【0088】
上記のような架橋弾性重合体(B−b)層と最外層重合体(B−c)層との間に設けられる中間層(B−d)は、10〜90質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−d1)、90〜10質量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−d2)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する単量体(B−d3)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−d4)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られるものである。そして、アクリル酸アルキルエステル(B−d1)の含有量は、架橋弾性重合体(B−b)の層から最外層重合体(B−c)の層に向かって単調減少している。つまり、中間層(B−d)中のアクリル酸アルキルエステルの含有率(質量%)が、架橋弾性重合体(B−b)の層中のアクリル酸アルキルエステルの含有率と最外層重合体(B−c)の層中のアクリル酸アルキルエステルの含有率との間にある。なお、このモノマー比は、中間層全体の比率である。このような中間層(B−d)は、少なくとも一層配設されている。
【0089】
中間層(B−d)に用いる(B−d1)〜(B−d4)成分およびグラフト交叉剤は、それぞれ、前述した最内層重合体(B−a)に用いる(B−a1)〜(B−a3)成分およびグラフト交叉剤と同様のものが用いられる。なお、(B−d1)成分は(B−a1)成分の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルと同様のもの、(B−d2)成分は(B−a1)成分の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルと同様のもの、(B−d3)成分は(B−a2)成分と同様のもの、(B−d4)成分は(B−a3)成分と同様のものである。
【0090】
中間層(B−d)に使用されるグラフト交叉剤は、各重合体層を密に結合させ、優れた諸性質を得るのに必須である。
【0091】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−d1)の含有量(使用量)は、10質量%以上であり、また、90質量%以下である。
【0092】
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−d2)の含有量(使用量)は、10質量%以上であり、また、90質量%以下である。
【0093】
共重合可能な二重結合を有する単量体(B−d3)の含有量(使用量)は、0質量%以上であり、また、20質量%以下である。
【0094】
多官能性単量体(B−d4)の含有量(使用量)は、10質量%以下である。
【0095】
グラフト交叉剤の使用量は、上記成分(B−d1)〜(B−d4)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上であり、また、上記成分(B−d1)〜(B−d4)の合計量100質量部に対して5質量部以下である。
【0096】
本発明のアクリル樹脂(B)中の中間層(B−d)の含有量は、中間層としての機能が十分に得られるので5質量%以上であり、また、最終重合体のバランスがよいので35質量%以下である。
【0097】
本発明のアクリル樹脂(B)は、上記のような(B−a),(B−b),(B−c)および(B−d)の重合体層から構成される多層構造重合体である。
【0098】
本発明のアクリル樹脂(B)の製造方法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法であるが、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、最外層重合体(B−c)の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合等によっても行うことができる。
【0099】
重合は公知の方法にしたがって行えばよい。
【0100】
乳化重合法によって得られたポリマーラテックスは、好ましくは目開きが100μm以下のフィルターで濾過した後、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等の公知の凝固法により凝固させる。酸凝固法としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用することができ、塩凝固法としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用することができる。凝固された重合体をさらに洗浄、脱水、乾燥して、本発明で用いるアクリル樹脂(B)が得られる。
【0101】
アクリル樹脂組成物(C)
次に、アクリル樹脂組成物(C)について説明する。アクリル樹脂組成物(C)は、前述のようなアクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して0.1〜40質量部の艶消し剤を含むものである。アクリル樹脂フィルム(I)として艶消し剤を含むアクリル樹脂組成物(C)を用いることにより、2次成形加工の際の熱によるアクリル樹脂フィルムの艶戻りを軽減できるので好ましい。
【0102】
艶消し剤としては有機系、無機系に関わらず公知のものを用いることができるが、艶消し性、製膜性、成形性の点から、水酸基を有する重合体(D)を用いることが好ましい。下記のような水酸基を有する重合体(D)を用いると、フィルムの伸度等の物性をほとんど悪化させないので、事前にフィルムの真空成形等が必要なインモールド成形等でもフィルム切れなどが起こらず、良好に使用できる。
【0103】
水酸基を有する重合体(D)とは、具体的には、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよび/またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル1〜80質量%、メタクリル酸アルキルエステル10〜99質量%、アクリル酸アルキルエステル0〜79質量%、および、共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも一種0〜50質量%を含むモノマー類を重合して得られる重合体である。
【0104】
水酸基を有する重合体に用いられるアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよび/またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては特に限定されず、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられるが、中でもメタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよび/またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの使用量は、より十分な艶消し効果が得られる点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、また、粒子の分散性が良好となり、フィルムの製膜性が良好となる点から、80質量%以下、好ましくは50質量%以下である。
【0106】
一方で、車輌内装用途においては、芳香剤、整髪料等が内装部品に付着する可能性があるので、内装部材には耐薬品性が求められるのが一般的である。これらの薬品類にたいする耐性をフィルムに発現させるためには、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの使用量は5〜25質量%が好ましい。艶消し性と耐薬品性の両立の観点からは10〜20質量%の使用が好ましい。
【0107】
メタクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の低級メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
メタクリル酸アルキルエステルの使用量は、10質量%以上、好ましくは30質量%以上であり、また、99質量%以下、好ましくは90質量%以下である。アクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の低級アクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
アクリル酸アルキルエステルの使用量は、79質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下であり、また、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0110】
一方で、耐薬品性の観点からは、水酸基を含有する重合体(D)のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが更に好ましい。この場合のアクリル酸アルキルエステルの使用量は0質量%を超えて5質量%以下の範囲で用いることが必要であり、好ましくは0質量%を超えて2質量%以下の範囲で用いる。
【0111】
共重合可能な他のビニル単量体としては特に限定されないが、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体等が好ましい。これらは1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
共重合可能な他のビニル単量体の使用量は、50質量%以下である。
【0113】
水酸基を有する重合体(D)の固有粘度は、艶消し発現性、外観の点から、0.05L/g以上に調節することが好ましく、0.06L/g以上に調節することがさらに好ましく、また、0.3L/g以下に調節することが好ましく、0.15L/g以下に調節することがさらに好ましい。
【0114】
また、分子量の調節のために、メルカプタン等の重合調節剤を用いることが好ましい。メルカプタンとしてはn−オクチルメルカプタン,n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等が使用されるが、特にこれらのものに限定されず、公知のものが使用できる。
【0115】
艶消し剤である水酸基を有する重合体(D)の配合量は、十分な艶消し効果が発現し、良好な艶消し性が得られるのでアクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは2質量部以上であり、また、40質量部以下である。
【0116】
本発明の水酸基を有する重合体(D)の製造方法は特に限定されないが、懸濁重合や乳化重合による方法が好ましい。重合は公知の方法にしたがって行えばよい。
【0117】
懸濁重合の開始剤としては、通常の懸濁重合に使用されるものが用いられ、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。
【0118】
懸濁安定剤としては、通常用いられる公知のものが用いられ、例えば、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子、および、これらと界面活性剤との組み合わせを挙げることができる。
【0119】
懸濁重合は、通常、懸濁安定剤の存在下にモノマー類を重合開始剤とともに水性懸濁して行われる。それ以外にもモノマーに可溶な重合物をモノマーに溶かし込んで使用して行うこともできる。
【0120】
特に水酸基を含有する重合体(D)を用いる場合、艶消し性の点から、リン系化合物をアクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して0.01質量部以上の割合で配合することが好ましく、0.1質量部以上の割合で配合することがさらに好ましい。また、経済的な点から、リン系化合物の配合量はアクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して3質量部以下が好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
【0121】
リン系化合物としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(アルキルまたはノニルフェニルホスファイト)、アルキルホスファイト、アルキルアリールホスファイト、アリールホスファイト、ノニルフェニルホスファイト、アルキルノニルフェニルホスファイト等の公知のホスファイト系化合物や、トリアルキルホスフェート、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ジアルキルホスフェート及びその金属塩、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート及びその金属塩、アルキルホスフェート及びその金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート及びその金属塩等の公知のホスフェート系化合物や、ジアルキルアルキルホスホネート、アルキルアルキルホスホネート及びその金属塩等のホスホネート系化合物が挙げられる。中でも、艶消し発現性の観点からホスファイト系化合物が好ましい。さらには、艶消し発現性の観点から、ホスファイト系化合物の中でもホスファイト基周辺にバルキーな置換基がないものがより好ましい。
【0122】
アクリル樹脂フィルム( I 本発明のアクリル樹脂フィルム(I)は、その60°表面光沢度が30%以下のものである。表面光沢度の値は重要であり、50%以下であれば積層フィルムまたはシートに高級感、落ち着き感が十分発現する。アクリル樹脂フィルム(I)の60°表面光沢度は、30%以下である。ただし、後述するように30%以上のフィルムでも加工の際に、エンボスロール等を用いることで60°表面光沢度が30%以下の積層フィルムまたはシートとすることができる。
【0123】
一般的に、アクリル樹脂フィルムは熱、圧力などにより表面凹凸が消失しやすい状態になるため、アクリル樹脂フィルム(I)を積層フィルムまたはシート、さらにはこれを含む積層体へ2次加工した場合、艶もどりを生じることが多い。したがって、積層フィルムまたはシート、あるいは、これを含む積層体に加工した場合にあたかも本物の金属のように見えるためには、アクリル樹脂フィルム(I)の段階で60°表面光沢度が20%以下、特に10%以下であることが好ましい。
【0124】
さらに、120℃で48時間加熱した時に、一方のフィルム面の60°表面光沢度が30%以下となるアクリル樹脂フィルムが特に好ましい。加熱後の表面光沢度は20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。このようなアクリル樹脂フィルムを含む積層フィルムまたはシートを用いてインサート成形やインモールド成形を行うと成形後の艶消し性が良好となるので、工業的利用価値が著しく高まる。このようなアクリル樹脂フィルムは、例えば、水酸基を含有する重合体(D)を添加することにより得られる。
【0125】
さらに、同程度の表面光沢度を有するフィルムの中で比較すると、アクリル樹脂フィルムの熱変形温度が高いほどインサート成形やインモールド成形する際の艶戻り性が軽減する。したがって、インサート成形やインモールド成形する際の艶戻り性の観点からは、アクリル樹脂の熱変形温度は高い方が好ましい。後述の鏡面ロールからの剥離性、ゴムロールまたはシボ入りロールへの追従性、成形時の艶戻り性の観点から、熱変形温度は85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、また、105℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0126】
また、アクリル樹脂フィルム(I)として60°表面光沢度が30%超であるフィルムを用い、積層フィルムまたはシートを作成することもできる。例えば、エンボスロールを介した熱ラミネーション法により加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)との積層フィルムにアクリル樹脂フィルム(I)を積層することで、アクリル樹脂フィルム(I)面が艶消し状態となった積層フィルムまたはシートを得ることができる。しかしながら、この方法により得られる積層フィルムまたはシートを用いてインモールド成形等の2次加工を行うと、60°表面光沢度が30%以下であるアクリル樹脂フィルム(I)を積層した積層フィルムまたはシートを用いる場合と比較して艶戻りしやすい傾向があり、最終の積層体の表面艶消し状態が良好にならない場合がある。
【0127】
このようなアクリル樹脂フィルム(I)としては、前述のようなアクリル樹脂組成物(A)、アクリル樹脂(B)またはアクリル樹脂組成物(C)を含有することが好ましい。
【0128】
また、アクリル樹脂フィルム(I)として、アクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)、またはアクリル樹脂組成物(C)に加えて下記の熱可塑性重合体(E)を含むものを用いることも好ましい。熱可塑性重合体(E)を用いることにより、フィルム製膜性が向上し、特に高いレベルの厚み精度や製膜速度が必要となる場合に優れた効果を示す。
【0129】
熱可塑性重合体(E)は、メタクリル酸メチル50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とを含むモノマー類を重合して得られるもので、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.2L/gを超える熱可塑性重合体である。
【0130】
メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等を使用することができる。これらのビニル単量体は1種類を用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
熱可塑性重合体(E)中のメタクリル酸メチルの含有量(使用量)は、50質量%以上である。
【0132】
熱可塑性重合体(E)の還元粘度は、厚み精度の良好なフィルムとなるので、0.2L/g超とする。また、熱可塑性重合体(E)の還元粘度の上限は、通常、2L/g以下であり、1.2L/g以下であることが好ましい。
【0133】
熱可塑性重合体(E)の製造方法としては乳化重合による方法が好ましい。熱可塑性重合体(E)は、公知の乳化重合法によって製造した重合体ラテックスを各種凝固剤により分離回収し、あるいは、スプレードライにより固形分を分離回収して重合体粉末を得ることにより製造される。
【0134】
本発明において、必要に応じて用いる熱可塑性重合体(E)の使用量は、製膜性向上効果が十分に得られるので、アクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましい。また、熱可塑性重合体(E)の使用量は、樹脂組成物の粘度が適度となり、良好なフィルム製膜性が得られるので、アクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。
【0135】
本発明のアクリル樹脂フィルム(I)には、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、光拡散材等を含有させてもよい。
【0136】
特に基材の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。用いる紫外線吸収剤の分子量は、射出成形金型内で真空成形または圧空成形を施す際にほとんど揮発せず、金型汚れがあまり発生しないので、300以上、特に400以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが好ましい。前者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン234、旭電化工業社のアデカスタブLA−31等が挙げられ、後者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン1577等が挙げられる。
【0137】
アクリル樹脂フィルム(I)に成形するためのアクリル樹脂中のクロロホルムに不溶なゲル含有率は、実質的にゴム含有重合体のアクリル樹脂中の含有量が適度なもの(好ましくは5質量%以上)となり、フィルムが脆くなくなり、製膜性が良好となるので5質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましく、また、製膜時に適度なメルトテンションが得られ、製膜性が良好となるので75質量%以下、特に60質量%以下であることが好ましい。
【0138】
本発明で用いるアクリル樹脂フィルム(I)は、Tダイ法、インフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法など種々の方法によりフィルムを製造することができる。これらの中でも、フィルムの厚み精度、生産性の点からTダイ法が好ましい。
【0139】
また、艶消し材を使用しない場合、つまり、アクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)を含有する場合、アクリル樹脂フィルム(I)の製造方法としては、アクリル樹脂をTダイ法等の溶融押出法によりフィルム形状にした後、鏡面ロールで冷却する際に鏡面ロールとゴムロールまたはシボ入りロールとで挟持する方法、特に、鏡面ロールとゴムロールとで挟持する方法が好ましい。鏡面ロールとゴムロールとで挟持する方法は、鏡面ロールとシボ入りロールとで挟持する方法と比較して、膜厚50μm 程度の比較的薄いフィルムの製造が可能となる。
【0140】
また、カレンダー法において、最後にフィルムが挟まれる2本の鏡面ロールの片側をゴムロールまたはシボ入りロールに代えて製膜することもできる。
【0141】
鏡面ロールとしては公知のものを用いることができるが、クロムメッキ加工を施した表面粗度が0.5S以下のロールが好ましい。
【0142】
ゴムロールとしては公知のものを用いることができるが、耐熱性の点からシリコーンゴムが好ましい。また、良好な艶消し性を得るためには、砂入りのシリコーンゴムが好ましい。アクリル樹脂フィルムでは用途によって好まれる艶消し外観が異なるため、シリコーンゴムに添加される砂の粒度、量は用途に応じて適宜決めればよいが、例えば、平均粒度40μmの砂がシリコーンゴム100質量部に対して50質量部添加されているシリコーン製ゴムロールを用いることができる。
【0143】
また、ゴムロールの代わりにシボ入りロールを用いることもできる。シボ入りロールとしては公知のものを用いることができる。
【0144】
アクリル樹脂フィルム(I)の厚みは特に限定されないが、積層フィルムまたはシートを塗装代替フィルムまたはシートとして用いるためには、50μm以上であることが好ましく、また、300μm以下であることが好ましい。アクリル樹脂フィルム(I)の厚みが50μm以上であると、成形品外観として十分な深みが得られる。また、特に複雑な形状に成形する場合、延伸によって十分な厚みが得られる。一方、アクリル樹脂フィルム(I)の厚みが300μm以下であると、適度な剛性となるためラミネート性、二次加工性等が良好となる。また、単位面積あたりの重量の点で、経済的に有利である。さらには、製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。
【0145】
成形品に塗装によって十分な厚みの塗膜を作るためには、十数回の重ね塗りが必要になることがあり、この場合、コストがかかり、生産性がよくない。それに対して、本発明の積層成形品であれば、アクリル樹脂フィルム自体が塗膜となるため、容易に非常に厚い塗膜を形成することができ、工業的に有利である。
【0146】
加飾層( II
加飾層(II)は、後述する熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)上に形成される。
【0147】
本発明の加飾層(II)は、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)上に形成したときに、外観欠陥の個数が10個/m2以下のものである。このことは意匠性、加飾性の点から必要であり、外観欠陥の個数が10個/m2以下であれば、積層フィルムまたはシート、あるいは、これを含む積層品の外観が良好となる。外観欠陥の個数は、5個/m2以下、特に1個/m2以下であることが好ましい。
【0148】
加飾層(II)としては、公知のものが使用できるが、印刷層または金属層、特に金属調の印刷層または金属層が好ましい。
【0149】
印刷層は、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法などの公知の印刷法で形成することができる。木目などの任意の絵柄を形成することができるが、例えば、アルミニウムペーストをビヒクルに混入して調整したインキを用いると金属調の印刷絵柄を形成できる。
【0150】
金属層は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、真鍮、ステンレス等の金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、湿式メッキ法等の方法で形成できる。あるいは、金属箔状のものを接着剤層を介して、あるいは、熱融着等により積層して用いることもできる。
【0151】
加飾層(II)の膜厚は必要に応じて適宜決めればよいが、通常、0.5〜30μm程度とする。
【0152】
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート( III
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)としては特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、印刷性、積層フィルムまたはシートの二次成形性を考慮すると、アクリル樹脂、ABS樹脂、PVC樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0153】
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)には、他に、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、着色剤、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0154】
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)は公知の方法で製造することができるが、表面平滑性が良好となるので、ポリッシングロールを介した溶融押出し法や、カレンダー法等が好ましい。なお、印刷抜け等の外観欠陥の原因となるフィッシュアイを低減するため、溶融押出し時に200メッシュ以上のスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押し出すことが好ましい。
【0155】
用いる熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)は、その上に加飾層(II)を形成した際の印刷抜け等の外観欠陥が低減できるので、表面平滑性が良好であることが好ましい。
【0156】
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の膜厚は必要に応じて適宜決めればよいが、通常、20〜500μm程度とする。
【0157】
塗装代替用積層フィルムまたはシート本発明の60゜表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートは、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、次いで、この加飾層(II)の上に保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層する。加飾層(II)を熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)上に形成することによって、外観欠陥などが少ない良好な外観の加飾層を有する塗装代替用積層フィルムまたはシートが得られる。加飾層(II)をアクリル樹脂フィルム(I)上に形成すると、アクリル樹脂フィルム(I)に含まれるフィッシュアイにより印刷抜けが発生したり、金属層が十分に密着しないなどの問題が生じることがある。
【0158】
熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)と加飾層(II)とからなる積層フィルムまたはシートにアクリル樹脂フィルム(I)をラミネートするのは、熱ラミネーション、ドライラミネーション等の公知の方法により行うことができる。中でも、アクリル樹脂フィルム(I)の艶戻りの点から、エンボスロールを介してラミネートすることが好ましい。
【0159】
また、押出しラミネーションにより、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)と加飾層(II)とからなる積層フィルムまたはシート上にアクリル樹脂フィルム(I)を直接積層することもできる。この場合も、エンボスロールを介することが好ましい。
【0160】
また、本発明の塗装代替用積層フィルムまたはシートでは、アクリル樹脂フィルム(I)と加飾層(II)との間に着色層(IV)を形成してもよい。特に加飾層(II)として金属調の印刷層や金属層を用いた場合、着色層(IV)を設けることにより、シルバーメタリック、ゴールドメタリック、ブルーメタリック等の種々の色相を有するメタリック外観とすることができるので好ましい。
【0161】
あるいは、最終的に得られる塗装代替用積層フィルムまたはシートの加飾性の観点から、着色層(IV)は加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)との間に形成することもできる。
【0162】
着色層(IV)は、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法等により形成することができる。また、アクリル樹脂に代表される透明材料に染料や顔料を添加した透明着色フィルムを着色層(IV)とすることもできる。透明着色フィルムは、接着剤層を介して、あるいは、熱融着等により積層することができる。
【0163】
着色層(IV)の膜厚は必要に応じて適宜決めればよいが、通常、1〜100μm程度とする。
【0164】
なお、着色層(IV)の上にアクリル樹脂フィルム(I)を積層する方法は、前述の加飾層(II)の上にアクリル樹脂フィルム(I)を積層する方法と同様のものである。
【0165】
アクリル樹脂フィルム(I)を塗装代替用積層フィルムまたはシート、あるいは、これを含む積層体に加工したときの表面光沢度は、30%以下である
【0166】
塗装代替用積層フィルムまたはシートを含む積層体
本発明の積層体は、上記のような本発明の塗装代替用積層フィルムまたはシートを、アクリル樹脂フィルム(I)が最表層となるように、基材に積層したものである。つまり、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)と基材とが接着されているものである。
【0167】
本発明の積層体の基材となる樹脂は、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)と溶融接着可能なものであれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PVC樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、あるいは、これらを主成分とする樹脂が挙げられる。基材となる樹脂は、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)と同じ材質を用いることが好ましい。
【0168】
また、熱融着しない基材樹脂でも、接着剤を用いることで塗装代替用積層フィルムまたはシートと基材とを成形時に接着させることができる。
【0169】
本発明の積層体は、2次元形状の積層体に成形する場合、熱融着できる基材に対しては熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。また、熱融着しない基材に対しては接着剤を介して貼り合わせればよい。
【0170】
3次元形状の積層体に成形する場合は、インサート成形法やインモールド成形法等の公知の成形方法を用いることができる。これらの中でも、生産性の点から、インモールド成形法が好ましい。
【0171】
インモールド成形法は、塗装代替用積層フィルムまたはシートを加熱した後、真空引き機能を持つ型内で真空成形を行う。この方法では、積層フィルムまたはシートの成形と射出成形とを一工程で行えるため、作業性、経済性の点から好ましい。
【0172】
加熱温度は、積層フィルムまたはシートが軟化する温度以上であることが好ましく、積層フィルムまたはシートの熱的性質や積層体の形状により異なるが、通常、70℃以上であることが好ましい。また、あまりに温度が高すぎると艶戻りが発生し、艶消し性が損なわれることがある。加熱温度は、積層フィルムまたはシートの熱的性質や積層体の形状により異なるが、通常、190℃以下であることが好ましい。
【0173】
インモールド成形法は、このように真空成形で三次元形状を付与した後、射出成形により積層フィルムまたはシートと基材樹脂とを溶融一体化させることで表層にアクリル樹脂フィルム(I)層を有する積層体を得ることができる。
【0174】
また、本発明では、真空成形時にアクリル樹脂フィルム(I)が接する金型にはエンボス加工処理されていることが好ましい。この場合、エンボス加工処理していない場合と比較して、インモールド成形時の艶戻りが軽減する。
【0175】
本発明の積層体の工業的利用価値(用途)としては特に限定されるものではないが、コンソールボックス、シフトレバーボックス等の自動車内装部品、ドアミラー、ホイールカバー、二輪車のカウリング等の車輌外装部品や、家電製品、家具、建材等の従来艶消し塗装を施していた部材にも利用できる。
【0176】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは「質量部」を表わす。また、実施例中の略号は以下の通りである。
【0177】
メチルメタクリレート MMA、
メチルアクリレート MA、
ブチルアクリレート BA、
スチレン St、
ヒドロキシエチルメタクリレート HEMA、
アリルメタクリレート AMA、
1,3-ブチレングリコールジメタクリレート 1,3BD、
t−ブチルハイドロパーオキサイド tBH、
t−ヘキシルハイドロパーオキサイド tHH、
ラウリルパーオキサイド LPO、
n−オクチルメルカプタン nOM。
【0178】
また、得られた重合体、アクリル樹脂フィルム、積層フィルム、積層体の諸物性については、以下のように測定、評価した。
【0179】
1)熱可塑性重合体(A−2)、熱可塑性重合体(E)の還元粘度、水酸基を有する重合体(D)の固有粘度
固有粘度、還元粘度の測定は、サン電子工業製 AVL−2C 自動粘度計を使用し、溶媒にクロロホルムを用いて25℃で測定した。還元粘度は、クロロホルム100mlにサンプル0.1gを溶解したものを用いて測定した。
【0180】
2)ゴム含有重合体(A−1)、アクリル樹脂(B)の粒子径
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(A−1)またはアクリル樹脂(B)のポリマーラテックスの最終粒子径は、大塚電子(株)製 光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定した。
【0181】
3)60°表面光沢度
60°表面光沢度は、グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製 GM−26D型)を用い、測定した。なお、アクリル樹脂フィルムは冷却用の鏡面ロールと接しない面、積層フィルムおよび積層体はアクリル樹脂フィルム面の60°表面光沢度を測定した。
【0182】
4)アクリル樹脂組成物の熱変形温度
熱変形温度は、アクリル樹脂フィルム状物に成形する前のペレットを射出成形にてASTM D648に基づく熱変形温度測定試片に成形し、80℃で24時間アニールした後、低荷重(0.45MPa)でASTM D648にしたがって測定した。
【0183】
5)アクリル樹脂組成物のゲル含有率
アクリル樹脂フィルム状物に成形する前のペレットを1質量%クロロホルム溶液に調製し、25℃にて一昼夜放置した後、16000r.p.m.で90分間遠心分離を施して上澄み液を除き、乾燥後の不溶分の質量%をゲル含有率とした。
【0184】
6)印刷抜け個数
得られた積層フィルム10m2について目視検査を行って加飾層(II)の印刷抜け個数を計測し、1m2当たりに換算して印刷抜け個数を求めた。
【0185】
7)金属調外観の評価
積層体の外観評価(削り出しのアルミ材との比較)は、目視で行い、以下のように評価した。
【0186】
◎:テカリ感がなく、アルミ材の外観に極めて似ている、
○:ややテカリ感があるが、アルミ材の外観に似ている、
△:かなりテカリ感あるが、かろうじてアルミ材の外観に見える、
×:テカリ感があり、アルミ材の外観に見えない。
【0187】
8)耐薬品性
積層成形品(積層体)表面に内径38mm、高さ15mmのポリエチレン製円筒を置き、圧着器で試験片に強く密着させ、その開口部に自動車用芳香剤(株)ダイヤケミカル製グレイスメイトポピー柑橘系を5ml注入した。そして、開口部にガラス板で蓋をした後、55℃に保持した恒温槽に入れて4時間放置した。その後、圧着器を取り外し、試験片を水洗した後風乾し、試験部の表面の白化状態を観察し、以下のように評価した。
【0188】
◎:白化は見られない、
○:ごくわずか白化が認められる、
×:強い白化が見られる。
【0189】
9)水酸基を有する重合体(D)のガラス転移温度
FOXの式に従ってガラス転移温度を求めた。
【0190】
10)アクリル樹脂フィルム成形時の艶戻り性評価
Tダイ法による製膜時に鏡面ロールに接していた面がポリカーボネート板に接するように、エポキシ系接着剤を用いてアクリル樹脂フィルム(I)を貼り合わせた。この積層板を120℃の雰囲気下で48時間放置した後、積層板表面の60°表面光沢度を測定し、艶戻り性を評価した。
【0191】
<実施例1>
〔ゴム含有重合体(A−1)の製造〕
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水244部を入れて80℃に昇温し、下記に示す(イ)を添加した後、撹拌を行いながら下記に示す原料(ロ)(弾性共重合体(a-1)の一部)の混合物の1/15を仕込み、15分間保持した。その後、残りの(ロ)を水に対する単量体混合物の増加率8%/時間で連続的に添加した。その後、1時間保持して重合体(a-1)の一部の重合を行った。
【0192】
続いてラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加えた後、15分間保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら下記に示す原料(ハ)(弾性共重合体(a-1)の一部)を水に対する単量体混合物の増加率4%/時間で連続的に添加した。その後、2時間保持してゴム重合体(a-1)の一部の重合を行い、2層構造を有する弾性共重合体(a-1)のラテックスを得た。
【0193】
引き続いて得られた弾性共重合体(a-1)ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加えた後、15分間保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら下記に示す原料(ニ)(硬質重合体(a-2))を水に対する単量体混合物の増加率10%/時間で連続的に添加した。その後、1時間保持して硬質重合体(a-2)の重合を行い、ゴム含有重合体(A−1)ラテックスを得た。得られたゴム含有重合体(A−1)の粒子径は0.28μmであった。
【0194】
ゴム含有重合体(A−1)ラテックスを目開き50μmのフィルターで濾過した後、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後、乾燥してゴム含有重合体(A−1)を得た。
【0195】
(イ)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.6部、
硫酸第一鉄 0.00012部、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部。
【0196】
Figure 0004031951
【0197】
Figure 0004031951
【0198】
(ニ)
MMA 57.0部、
MA 3.0部、
nOM 0.3部、
tBH 0.06部。
【0199】
〔水酸基を有する重合体(D)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器に次の混合物を仕込んだ。
【0200】
Figure 0004031951
【0201】
容器内を十分に窒素ガスで置換した後、上記の混合物を撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合を進めた。2時間後に90℃に昇温し、さらに45分間保持して重合を完了し、得られた重合体ビーズを脱水、乾燥して水酸基を有する重合体(D)を得た。重合体(D)の固有粘度は0.069L/g、ガラス転移温度は77℃であった。
【0202】
〔熱可塑性重合体(E)の製造〕
反応容器に窒素バブリングしたイオン交換水200部を仕込み、乳化剤オレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BA10部、nOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。引き続いてMMA48部、BA2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、滴下終了後2時間保持し、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析した後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状で重合体を回収した。得られた共重合体(熱可塑性重合体(E))の還元粘度ηsp/cは0.38L/gであった。
【0203】
〔アクリル樹脂フィルム(I)の製造〕
上記のようにして得られたゴム含有重合体(A−1)23質量%、熱可塑性重合体(A−2)であるMMA/MA共重合体(MMA/MA=99/1、還元粘度0.06L/g)77質量%からなるアクリル樹脂組成物(A)100部、水酸基を有する重合体(D)10部、熱可塑性重合体(E)1部、紫外線吸収剤であるチヌビン1577(チバガイギー社製)1部、ホスファイト系抗酸化剤であるPEP8F(旭電化(株)製)0.6部をヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、40mmφのスクリュー型2軸押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200℃〜260℃、ダイ温度250℃で溶融混練し、ペレット化してアクリル樹脂フィルム(I)用組成物を得た。
【0204】
得られたペレットを80℃で一昼夜乾燥した。そして、300mmTダイを取り付けた、400メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃の条件下でTダイを介して溶融押出しした樹脂を、75℃に温調した冷却用の鏡面ロール(クロムメッキ加工した表面粗度が0.2Sのロール)を用いて、厚さ100μmのアクリル樹脂フィルム(I)を製膜した。
【0205】
〔積層フィルム、積層体の製造〕
熱可塑性樹脂フィルム(III)としてABS樹脂(三菱レイヨン製、ダイヤペットABS SW7)を用い、300mmTダイを取り付けた、400メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度180℃〜220℃、Tダイ温度230℃の条件下でTダイを介して溶融押出しした樹脂を、75℃に温調した3本のポリッシングロールを介して125μm厚みのフィルムに製膜した。
【0206】
次に、この熱可塑性樹脂フィルム(III)に加飾層(II)として銀色インキにてグラビア印刷を施し、最後にエンボスロールを介して、艶消しアクリル樹脂フィルム(I)の冷却用の鏡面ロールと接していた面が加飾層(II)面と接するように、艶消しアクリル樹脂フィルム(I)を加飾層(II)上に熱ラミネーションして積層フィルムを得た。
【0207】
得られた積層フィルムを140℃で1分間加熱した後、真空引き機能を持つ金型で真空成形を行った。そして、成形加工した積層フィルムを金型に配した状態で、基材となるABS樹脂(三菱レイヨン製、ダイヤペットABSバルクサムTM20)を熱可塑性樹脂フィルム(III)側に射出成形し、積層体を得た。
【0208】
<実施例2>
アクリル樹脂組成物(A)100部の代わりに下記のようにして製造したアクリル樹脂(B)100部を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0209】
〔アクリル樹脂(B)の製造〕
冷却器付き重合容器内にイオン交換水250部、スルホコハク酸のエステルソーダ塩2部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.05部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌した後、メタクリル酸メチル1.6部、アクリル酸n−ブチル8部、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール0.4部、メタクリル酸アリル0.1部およびクメンハイドロパーオキサイド0.04部からなる混合物を仕込んだ。70℃に昇温後、60分間反応を継続させ、最内層重合体(B−a)の重合を完結させた。
【0210】
続いて架橋弾性重合体(B−b)を形成するメタクリル酸メチル1.5部、アクリル酸ブチル22.5部、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール1.0部、メタクリル酸アリル0.25部およびクメンハイドロパーオキサイド0.05部からなる混合物を60分間で添加し、重合して2層架橋ゴム弾性体を得た。
【0211】
続いて中間層(B−d)としてメタクリル酸メチル5部、アクリル酸ブチル5部およびメタクリル酸アリル0.1部からなる混合物を反応させた。
【0212】
最後に最外層重合体(B−c)としてメタクリル酸メチル52.25部およびアクリル酸ブチル2.75部からなる混合物を反応させて重合を完了し、多層構造重合体が得られた。多層構造重合体の粒子径は0.12μmであった。
【0213】
得られた重合体ラテックスを目開き75μmのフィルターで濾過した後、重合体100質量部に対して5質量部の酢酸カルシウムを用いて塩析し、洗浄後、乾燥してアクリル樹脂(B)を得た。
【0214】
<実施例3>
アクリル樹脂フィルム(I)製膜の際に、Tダイを介して溶融押出しした樹脂を75℃に温調した冷却用の鏡面ロール(クロムメッキ加工した表面粗度が0.2Sのロール)と平均粒度40μmの砂を50部含有したシリコーンゴムロールとで挟み込んで厚さ125μmのアクリル樹脂フィルム(I)を製膜した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0215】
<実施例4>
アクリル樹脂組成物(A)100部の代わりに実施例2で製造したアクリル樹脂(B)100部を用いた以外は実施例3と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0216】
<実施例5>
ゴム含有重合体(A−1)23質量%、熱可塑性重合体(A−2)77質量%からなるアクリル樹脂組成物(A)100部、熱可塑性重合体(E)1部、チヌビン1577(チバガイギー社製)1部、PEP8F(旭電化(株)製)0.6部をヘンシェルミキサーを用いて混合した以外は実施例3と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0217】
<実施例6>
アクリル樹脂組成物(A)100部の代わりに実施例2で製造したアクリル樹脂(B)100部を用いた以外は実施例5と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0218】
<実施例7>
加飾層(II)を形成した後に、着色層(IV)として青色のグラビア印刷層を設け、その上にアクリル樹脂フィルム(I)を積層した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0219】
<実施例8>
水酸基を有する重合体(D)の代わりに、下記のようにして製造した水酸基を有する重合体(D)−1を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0220】
〔水酸基を有する重合体(D)−1の製造〕
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器に次の混合物を仕込んだ。
【0221】
Figure 0004031951
【0222】
容器内を十分に窒素ガスで置換した後、上記の混合物を撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合を進めた。2時間後に90℃に昇温し、さらに45分間保持して重合を完了し、得られた重合体ビーズを脱水、乾燥して水酸基を有する重合体(D)−1を得た。重合体(D)−1の固有粘度は0.076L/g、ガラス転移温度は93℃であった。
【0223】
<実施例9>
水酸基を有する重合体(D)の代わりに、下記のようにして製造した水酸基を有する重合体(D)−2を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0224】
〔水酸基を有する重合体(D)−2の製造〕
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器に次の混合物を仕込んだ。
【0225】
Figure 0004031951
【0226】
容器内を十分に窒素ガスで置換した後、上記の混合物を撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合を進めた。2時間後に90℃に昇温し、さらに45分間保持して重合を完了し、得られた重合体ビーズを脱水、乾燥して水酸基を有する重合体(D)−2を得た。重合体(D)−2の固有粘度は0.09L/g、ガラス転移温度は98℃であった。
【0227】
<比較例1>
加飾層(II)を熱可塑性樹脂フィルム(III)に形成する代わりに、艶消しアクリル樹脂フィルム(I)上に形成した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0228】
<比較例2>
砂入りシリコーンゴムロールを用いずに鏡面ロールのみを用いてアクリル樹脂フィルム(I)を製膜した以外は実施例6と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0229】
<比較例3>
熱可塑性樹脂フィルム(III)を製膜する際に、400メッシュのスクリーンメッシュを用いず、さらに3本のポリッシングロールを介する代わりに1本の冷却ロールを介して製膜した以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体を製造した。
【0230】
実施例1〜9、比較例1〜3のアクリル樹脂組成物のゲル含有率、熱変形温度アクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体の60°表面光沢度、印刷抜け個数、金属調外観、耐薬品性、艶戻り性の評価を表1に示す。
【0231】
【表1】
Figure 0004031951
【0232】
本発明のアクリル樹脂フィルム(I)、積層フィルム、積層体の60°表面光沢度は比較例2のものと比べて低く、その結果、本発明の積層体の金属調外観は非常に優れている。また、本発明の積層フィルムの印刷抜けは比較例1、3のものと比べて少ないので、歩留まりが高く、工業的価値が高い。
【0233】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な艶消し外観を有する艶消しアクリル樹脂フィルムを最表層に有し、高級感、深み感、落ち着き感があり、しかも、印刷抜けの発生が抑制された加飾層を有する、外観特性が良好な塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法、この製造方法により得られる塗装代替用積層フィルムまたはシート、および、これを基材に積層した積層体を提供することができる。

Claims (8)

  1. アクリル樹脂フィルム(I)と加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)とを有する塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に、外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、この加飾層(II)の上に、保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層することを特徴とする60°表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
  2. アクリル樹脂フィルム(I)と加飾層(II)と熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)とを有する塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(III)の上に、外観欠陥が1m2当たり10個以下である加飾層(II)を形成し、この加飾層(II)の上に、着色層(IV)を形成し、この着色層(IV)の上に、保護層としてアクリル樹脂フィルム(I)を積層することを特徴とする60゜表面光沢度が30%以下である塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
  3. 前記アクリル樹脂フィルム(I)が、以下に示すアクリル樹脂組成物(A)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
    アクリル樹脂組成物(A)下記のゴム含有重合体(A−1)5.5〜99.9質量%と、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする熱可塑性重合体(A−2)0.1〜94.5質量%とからなるアクリル樹脂組成物。
    ゴム含有重合体(A−1)内層であるアクリル酸アルキルエステルを主成分とする1層または2層以上の構造を有する弾性共重合体(a−1)の存在下に、外層であるメタクリル酸アルキルエステルを主成分とする1層または2層以上の構造を有する硬質重合体(a−2)をグラフト重合してなるゴム含有重合体。
  4. 前記アクリル樹脂フィルム(I)が、以下に示すアクリル樹脂(B)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
    アクリル樹脂(B)80〜100質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよび/または炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−a1)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−a2)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−a3)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られる最内層重合体(B−a)の層と、80〜100質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−b1)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−b2)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−b3)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られる架橋弾性重合体(B−b)の層と、51〜100質量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−c1)、および、0〜49質量%の共重合可能な二重結合を有する他の単量体(B−c2)を含む単量体組成物を重合して得られる最外層重合体(B−c)の層とを基本構造として順次有し、前記架橋弾性重合体(B−b)の層と前記最外層重合体(B−c)の層との間に、10〜90質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(B−d1)、90〜10質量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(B−d2)、0〜20質量%の共重合可能な二重結合を有する単量体(B−d3)、0〜10質量%の多官能性単量体(B−d4)、および、これらの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤を含む単量体組成物を重合して得られる中間層(B−d)を少なくとも一層有し、前記中間層(B−d)中のアクリル酸アルキルエステルの含有率(質量%)が、前記架橋弾性重合体(B−b)の層中のアクリル酸アルキルエステルの含有率と前記最外層重合体(B−c)の層中のアクリル酸アルキルエステルの含有率との間にあるアクリル樹脂。
  5. 前記アクリル樹脂フィルム(I)が、前記アクリル樹脂組成物(A)および/またはアクリル樹脂(B)100質量部に対して0.1〜40質量部の艶消し剤を含むアクリル樹脂組成物(C)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
  6. 前記加飾層(II)が金属調の印刷層または金属層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートの製造方法により得られることを特徴とする塗装代替用積層フィルムまたはシート。
  8. 請求項7に記載の塗装代替用積層フィルムまたはシートが、アクリル樹脂フィルム(I)が最表層となるように、基材に積層されていることを特徴とする積層体。
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