JP4681492B2 - 鋼板熱間プレス方法及びプレス成形品 - Google Patents

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本発明は、自動車部品の構造部材等、強度が必要とされる部材を、鋼板を熱間でプレス成形して製造する方法及びその方法によって成形されたプレス成形品に関する。
近年、環境保護と地球温暖化を防止するため、化石燃料の消費を抑制する動きが強まっており、移動手段である自動車においても車体の軽量化による低燃費化が強く求められている。自動車車体の軽量化を達成するためには、従来に比べ高い機械強度を有する材料を使用することが必要となるが、高強度を有する鋼板は形状凍結性の低下によって、成形加工後の形状が劣化する傾向にあり、また成形性も軟鋼板より劣るため複雑な形状を有する部品の成形は困難である。これらの問題を解決する方法のひとつとして、鋼板を800℃以上の高温に加熱し、プレスによる成形加工を行った後、冷却するいわゆる熱間プレス(ホットスタンプ)による成形方法が有望である。
熱間プレスは、組織がオーステナイト相になる温度(オーステナイト温度域という。)に加熱され、強度が低下して成形性が向上した鋼板をプレス成形し、プレス金型によって鋼板からの抜熱とプレス成形を同時に行うものである。これにより、熱間でのプレス成形後、急冷して成形品の組織をオーステナイトからマルテンサイトに変態させ、いわゆる焼入により高強度化が達成される。即ち、熱間プレスの金型は通常の冷間プレスで要求される成形機能のみならず、鋼板の組織制御、即ち材質作り込みの機能も要求されており、熱間プレスの成形技術は成形性確保と焼入性確保の両面から種々検討されている(例えば、特許文献1〜5)。
特許文献1には、鋼板を加熱し、冷却速度を鋼板組成の焼入臨界速度以上としてマルテンサイト組織にすることが示されており、特許文献2には装置内で熱間成形及び焼入れする方法が提案されている。しかし、これらにはプレス成形の開始温度及び停止温度は示されていない。特許文献3にはプレス直前の鋼板を850℃以上にすることが示されているが、プレス前後での鋼板の冷却速度、プレス成形の停止温度については記載がない。また、特許文献4には金型のクリアランスを制御すること、加熱温度を800〜1000℃とすること、プレス成形開始温度を900℃以上とすることは記載されているものの、プレス前後での鋼板の冷却速度、プレス成形の停止温度については記載がない。
特許文献5には変態誘起塑性現象を利用するため、鋼板を臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却し、成形温度範囲を(Ms点−80℃)以上(Ms点+120℃)以下とする熱間プレス技術が提案されている。しかし、特許文献5に記載された方法では、実施例に示されているように、引張試験では伸びが増加するかもしれないが、複雑形状となる部品のプレスでは、硬いマルテンサイト組織を含んで成形することになり、成形性を損なうことが懸念される。
また、特許文献6、非特許文献1には、成形性を向上させるための温間加工が開示されているが、これらは金型等を加熱して加工するものであり、また、例えば特許文献7に記載されているように、潤滑剤の効果の確保、表面性状の劣化防止のため、加工前に鋼板をオーステナイト組織まで加熱することはない。そのため、鋼板の組織がオーステナイト相となるような高温から焼入れする熱間プレスとは異なり、部材を高強度化することができない。
以上のように、上記の何れの従来技術にも、加熱後の鋼板を成形する温度と熱間プレスでの成形方法による成形性の差異については十分に言及されているとはいえない。
特開2000−38640号公報 特開2001−353548号公報 特許第3389562号公報 特開2002−282951号公報 特開2004−337923号公報 特開2005−34899号公報 特開平5−50150号公報 日本塑性加工学会編、「わかりやすいプレス加工」、初版、2000年5月23日発行、p.83〜p.92
本発明は、ブランク押さえを要する絞り変形や張り出し変形にも適用可能な、鋼板を熱間プレスする技術及び熱間プレスによって製造された高強度のプレス成形品の提供を目的とするものである。
本発明者らは、中炭素薄鋼板の熱間プレス成形性に及ぼす成形温度、冷却速度の影響について検討を行い、加熱、冷却、プレス成形、更に冷却する際の、プレス成形開始温度、停止温度及びプレス成形時間を制御し、より低温で、かつ成形が終了するまでマルテンサイト変態させることなく、プレス成形を行うことにより、優れたプレス成形性を確保できるという知見を得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C≧0.15%を含有する鋼板を850℃以上に加熱後、10℃/s以上の冷却速度で冷却しながら、プレス成形開始温度Tp[℃]を600℃以下とし、プレス成形終了温度を前記鋼板のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]以上としてプレス成形し、その後300℃以下まで10℃/s以上の冷却速度で冷却し、ビッカース硬さHvが400以上のプレス成形品を得ることを特徴とする鋼板熱間プレス方法。
(2)プレス成形時間tp[s]を20s以内としてプレス成形することを特徴とする上記(1)に記載の鋼板熱間プレス方法。
(3)前記プレス成形開始温度Tp[℃]、前記鋼板のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]及び前記プレス成形時間tp[s]が、tp≦(Tp−Ms)/100を満足することを特徴とする上記(2)に記載の鋼板熱間プレス方法。
(4)プレス成形前の加熱した前記鋼板を気体及び液体の何れか一方又は双方を冷媒として冷却することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
(5)プレス成形前の加熱した前記鋼板をプレス装置の金型で冷却することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
(6)ブランク押さえにより前記鋼板を拘束しながら、絞り変形、張り出し変形の一方又は双方を含むプレス成形を行うことを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
(7)プレス成形後の成形品を、気体及び液体の何れか一方又は双方を冷媒として冷却することを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
(8)プレス成形後の成形品をプレス装置の金型で冷却することを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
(9)上記(1)〜(8)の何れか1項に記載の方法で熱間プレスされたプレス成形品であることを特徴とするプレス成形品。
本発明により、自動車部品の構造部材に代表されるような高強度部材の製造において、従来の熱間プレス法に比して、絞り変形や張り出し変形を必要とする複雑形状の成形品を製造することが可能になり、高強度のプレス成形品が得られ、工業的に価値の大きなものである。
本発明者らは、鋼板、特に中炭素薄鋼板を素材としてブランク押さえを要する絞り変形や張り出し変形での熱間プレス成形を行う際、加熱炉から鋼板を抽出してプレス成形するまでの時間及び冷却方法を種々変えて試験を行った。その結果、加熱炉から鋼板を抽出した後、短時間でプレス成形するよりも、金型と接触させた状態で暫く時間をおいてプレス成形を行うと、成形高さが向上することを見出した。このプレス成形前の保持時間は、プレス成形時の鋼板の温度に影響を与えるため、プレス成形時の鋼板温度を従来よりも低くすると成形高さが向上するという結論が得られた。
一方、加熱炉から鋼板を抽出した後、冷却速度が所定速度(後述する10℃/s)よりも遅い場合、例えばプレス成形前後に空冷すると、十分な焼入れ性が確保できないことから、成形性と共に焼入れ性を確保するためには、冷却速度を適正に制御する必要があることがわかった。更に、プレス成形を終了する前にマルテンサイト変態が生じると、成形性が著しく劣化するという知見を得た。
本発明は以上の検討によって得られた知見に基づくものであり、最大の特徴は、オーステナイト温度域まで加熱した鋼板に対して、冷却速度を制御しながら、プレス成形を行うようにし、プレス成形の開始時における鋼板の温度を600℃以下(且つ、Ms点以上、以下同様である)とし、プレス成形の終了時における鋼板の温度をMs点以上とすることである。
即ち、本発明は、通常の熱間プレス温度よりも低温で鋼板のプレス成形を開始する点で従来の熱間プレス成形と相違し、プレス成形中に歪み誘起マルテンサイト変態を生じさせることなくプレス成形を終了させる点で、成形温度を(Ms点+120℃)〜(Ms点−80℃)の範囲とする熱間プレス成形とは相違する。また、鋼板の加熱温度をオーステナイト温度域として、加速冷却しながらプレス成形と焼入れを同時に行い、高強度成形品を得るという点において、従来の温間成形とは相違する。
本発明で規定したように、600℃以下の温度域でプレス成形を開始し、Ms点以上の温度でプレス成形を終了させることで、成形品の側壁部分などに生じ易い破断を防止することができる。この破断は、絞り変形や張り出し変形などでブランク押さえを要する場合、即ち、プレス成形時にフランジ部の材料流入が抑制されるような成形で生じ易く、本発明は特にこのような変形での破断防止に効果を発揮する。
高温域に比して600℃以下の範囲でプレス成形を開始することで破断が抑制される理由は明確ではないが、熱間プレスにおける破断は、鋼板温度が不均一で、局所的に高温になり、強度が低下した部位で生じると考えられることから、600℃以下の温度域では鋼板の強度が増しており、温度がやや不均一であっても、成形性の不均一性が顕著ではなくなるためであると推察される。
また、Ms点以上の温度でプレス成形を終了させるのは、歪み誘起マルテンサイト変態を生じることなくプレス成形を終了させるためである。これは、プレス成形時にマルテンサイト変態が生じると、角筒絞り成形に代表されるような、フランジ部の材料流入が抑制されるプレス成形では、マルテンサイトを起点として破断が生じ易くなるためである。
次に、重要な条件は、加熱した鋼板及びプレス成形後の成形品を冷却する際の冷却速度である。加熱炉から抽出した鋼板を、プレス成形を行う直前まで10℃/s以上の冷却速度で冷却し、鋼板の温度がプレス成形中及びプレス成形後の温度から300℃以下に到達するまでの冷却速度も10℃/s以上とすることが必要である。ただし、鋼板の温度がAr温度超の領域では冷却速度の影響は顕著ではないため、鋼板のAr温度以下から300℃以下に到達するまでの冷却速度を10℃/s以上とすることが好ましい。この冷却速度が10℃/s未満であると、冷却中にオーステナイトからフェライトへの変態が起こり、十分に焼入れ強度が確保できない。プレス成形後の冷却停止温度は、マルテンサイト変態を完了させるために300℃以下とし、室温まで冷却しても良い。冷却速度の上限は規定しないが、後述する金型による抜熱と冷媒の噴射を組み合わせても、500℃/sより速くすることは困難である。
また、プレス成形時間tp[s]は、20s以内とすることが好ましい。これは、10℃/s以上の冷却速度で冷却しながら、鋼板の温度が600℃以下の状態でプレス成形を開始し、マルテンサイト変態を生じさせることなく、Ms点以上の温度でプレス成形を終了するための好ましい上限である。製造コストの観点から、プレス成形時間の上限は、5秒以下とすることが好ましい。プレス成形の下限時間は、特に規定しないが、0.05秒未満では鋼板の少なくとも一部が破断するおそれがあるため、0.05秒以上とすることが好ましく、安定してプレス成形するためには0.1秒以上とすることが更に好ましい。
また、プレス成形時間tp[s]は、プレス成形開始温度Tp[℃]、鋼板のマルテンサイト変態温度Ms[℃]との関係が、tp≦(Tp−Ms)/100を満足することが好ましい。これは、冷却速度を速くした際に、プレス成形中の歪み誘起マルテンサイト変態を防止するための好ましい条件であり、これにより、良好な成形性を確保して、高強度の成形品を得ることができる。
冷却速度を10℃/s以上とする場合において、例えば、板厚が1〜2mmの薄鋼板の場合、特に700℃以上の高温域では空冷しても良いが、700℃未満の温度域では、水冷、ミスト冷却、空気による強制冷却など、液体、気体の一方又は双方を冷媒として用いて冷却することが好ましい。
通常、熱間プレスは金型による抜熱によって焼入れを達成することから、プレス成形後、プレス下死点でポンチを停止させ、鋼板温度の冷却速度を高める方法が用いられている。本発明では、プレス成形前の鋼板の冷却速度を10℃/s以上とすることが必要であるため、プレス成形後の金型による抜熱のみならず、プレス成形前にも金型で鋼板の抜熱を行うことが好ましい。
プレスの金型による抜熱とは、プレス装置の金型を構成するダイス、ポンチ、ポンチ押さえ、ブランク押さえなどを鋼板の表面に接触させて、鋼板の温度を低下させる方法である。鋼板は、下金型の上に放置して冷却しても良いが、更に上金型で挟むように接触させて冷却することが好ましい。
これは、下金型をダイス、上金型をポンチ、ポンチ押さえ、ブランク押さえとする場合、鋼板をダイス上に設置し、プレス途上で、上金型、すなわちポンチ、ポンチ押さえ、ブランク押さえの何れか1つ以上、又は全てが素材鋼板の表面に接触した時点で停止させることで容易に達成される。プレス装置によっては、ポンチ、ポンチ押さえ、ブランク押さえが下金型、ダイスが上金型になるものもある。
プレス成形後の冷却は、プレス下死点でポンチを停止させ、鋼板の温度が300℃以下に到達するまで放置(下死点保持)すれば、10℃/s以上の冷却速度で冷却することができる。プレス成形後は、ポンチを退避させる。ここで、冷媒噴出機構を設けたポンチによって、液体、気体の一方又は双方を冷媒として用いて、鋼板を冷却することが好ましい。
プレス成形前後の冷却速度を高めるための冷媒は、気体、液体の一方又は双方を用いれば良い。この場合、冷却は、プレス装置とは別に冷却装置を設け、鋼板の表面に冷媒を噴射しても良く、冷却槽中に鋼板を浸漬しても良い。また、プレス装置の金型内に流路を設け、冷媒である水やガスなどを流し、鋼板表面の冷却と金型の冷却も同時に行うと、抜熱の効果が著しく向上する。
ここで、冷媒のうち、気体としては空気が代表的なものであり、ファンにより空気を吹き付ければ良く、また加熱炉の雰囲気と同様に窒素やアルゴンなどのガスを用いても良い。冷媒のうち、液体としては水が代表的なものであり、油などの有機溶液を用いても良い。更に空気と水を混合させて霧状に吹き付けるなど、気体と液体の混合物を冷媒として用いても良い。
本発明の対象とする鋼板は、炭素を質量%で0.15%以上を含有するものとする。炭素が0.15%未満では冷却速度を高くしないと焼きが入り難くなり、焼入れ後の鋼板強度を確保できず、ビッカース硬さHvで400以上とならないことがある。炭素の質量%の上限は、成形品の衝撃変形時の強度確保のため、0.8%以下であることが好ましい。
なお、炭素(C)以外の鋼組成は、質量%でSiが2%以下、Mnが3%以下、PとSが0.02%以下の範囲で含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなることが好ましい。また、熱間プレス用鋼板としての焼入れ性をより安定に確保するために、添加されるCrやMoは2%以下、Bは0.005%以下を含有しても良い。更には、Ti、Nb、Vをそれぞれ選択的に0.2%以下添加しても良い。
また、本発明の鋼板は板厚が1〜2mmの冷延鋼板とすることが好ましいが、加熱時のスケール生成防止及びプレス成形後の耐食性の観点から、亜鉛やアルミニウムなどのめっきが施されためっき鋼板でも良く、更にはこのめっき層が鉄と合金化したものでも良い。
このような鋼板を加熱する際、本発明ではその鋼板温度を850℃以上とする。これは850℃未満では加熱時間が短い場合、十分に金属組織がオーステナイト相に変態しておらず、焼入れ時に十分な強度が得られないためである。ここで、加熱時の鋼板温度を850℃未満として長時間加熱を行うことも可能であるが、この場合には、スケール生成を助長してしまうため、好ましくない。なお、鋼板温度が850℃以上であれば本発明では加熱時間は特に規定しない。しかし、長時間の加熱はスケール生成を助長することから通常、加熱炉内での保持時間を5分以内とすることが好ましい。なお、スケール生成を低減させる目的で加熱炉の雰囲気として窒素やアルゴンなどのガスを用いれば、加熱炉内での保持時間を長くすることも可能であるが、生産性を考慮すると120分を上限とすることが好ましい。また、鋼板の加熱は加熱炉で行えば良いが、通電加熱、誘導加熱で行っても良い。
自動車の軽量化を達成するためには、従来に比べ高い機械強度を有する材料を使用することが必要であり、そのためには、成形品のビッカース硬さがHv400以上であることが好ましい。ビッカース硬さは、成形品側壁部の鋼板を切断し、樹脂埋め込み、研磨して、板厚方向1/4位置の断面を、JIS Z 2244に準拠して測定すれば良く、3点以上測定し、単純平均値を求める方法が好ましい。
実施例により本発明をさらに説明する。質量%で、C:0.22%、Si:0.2%、Mn:1.4%、Cr:0.2%、Mo:0.1%、Ti:0.05%、B:0.002%の化学成分を有する鋼を鋳造し、1150℃〜1250℃の温度に再加熱後、熱延し、酸洗、冷間圧延を行い、焼鈍し、さらに圧下率0.8%の調質圧延を施して1.5mm厚の冷延鋼板を製造した。この鋼板のMs点は、フォーマスター試験機を用い、冷却中の試験片の熱膨張変化を測定して求めた結果、400℃であった。
この鋼板をブランクサイズ150mm角に切断したものを熱間プレスに供した。このプレス成形は、ブランク押さえを用いた、80mm×80mmの角頭ポンチを下金型とする角筒成形であり、ポンチ押さえもポンチ底に対面する位置に配した。プレス成形高さは35mmとした。なお、ポンチ肩及びダイス肩は10R、ポンチコーナーは15Rである。
また、ブランク押さえ力は2トンとした。成形速度(プレス成形の際の鋼板の移動速度)は20〜150mm/sとしたが、プレス成形前後での鋼板の冷却を金型抜熱で行う時には、適宜プレス成形の途中で一時停止させた。即ち、プレス成形前の金型抜熱では、ポンチとブランク押さえ上の鋼板にダイスとポンチ押さえが接触した時点で(プレス成形の直前)、またプレス成形後の金型抜熱では、プレス下死点で(プレス成形の直後)、所定の時間停止させた。ここで、所定の時間とは、プレス成形開始温度およびプレス成形終了温度が、上述した温度(プレス成形開始温度が600℃以下の温度であり、プレス成形終了温度がMp点以上の温度)に到達するまでの時間である。
加熱炉により鋼板を900℃で3分加熱した後抽出し、プレス上死点位置で鋼板をポンチとブランク押さえ上にセットし、表1に示すように冷却方法を種々組み合わせ、プレス成形前後の冷却速度とプレス成形温度を変えた成形を行った。冷却停止温度が15℃であるNo.2は、プレス成形後の冷却において、15℃の水を冷媒として金型から噴射したもの(金型抜熱及び水噴射)であり、冷却停止温度が5℃であるNo.7は、水温を5℃として水を噴射し、冷却したものである。No.10、11及び14は、プレス成形前に空冷した例であるが、プレス成形開始温度の低下とともに冷却速度も小さくなっている。
この冷却速度と成形温度は、予め、表1のそれぞれの冷却方法による冷却曲線を作成して算出した。この冷却曲線を基に、加熱炉から鋼板を抽出後、プレス成形までの冷却時間を調整し、プレス成形開始温度を制御した。なお、冷却曲線は、鋼板に熱電対を取り付け、表1のそれぞれの条件で冷却し、プレス成形を行わずに、温度の時間変化として測定した。
このようにして得られた成形品の外観を目視してプレス破断の有無を判断し、また成形品側壁部の鋼板を切断し、樹脂埋め込み、研磨して、断面硬さを荷重10kgf(98.07N)にてビッカース硬さ計でJIS Z 2244に準拠し、測定した。結果を表1に併記した。
Figure 0004681492
No.1〜10は、プレス成形前後の冷却方法を金型抜熱、水噴射、ミスト(水と空気の混合物)による冷却とし、冷却速度を10℃/s以上、プレス成形開始温度を600℃以下、プレス成形終了温度をMs点以上に制御し、本発明の範囲内の条件で熱間プレスを行ったものであり、外観上割れなく、また鋼板(成形品)のビッカース硬さHvが400以上という高強度が達成されている。
これに対しNo.11〜17は、本発明の範囲外で熱間プレスを行った比較例である。即ち、No.11〜13は、プレス成形開始温度が600℃超であるために成形品に割れが生じていた。従来の熱間プレスにおける通常の条件であるNo.11では、割れが生じることから、本発明によれば、従来の熱間プレスでは割れが発生するような厳しい条件でも成形が可能であることが証明された。No.12、13は、プレス成形前に金型抜熱やミスト噴射で冷却速度を10℃/s以上に高めたにも拘らず、プレス成形開始温度が高いためにやはり割れが生じている。
一方、No.14、15は、プレス成形開始温度は本発明要件を満たしているものの、プレス成形前又はプレス成形後の冷却速度が10℃/s未満のため十分な強度が得られていない(ビッカース硬さHvが400よりも低くなっている)。即ち、No.14は、プレス成形前に放冷(空冷)によってプレス成形開始温度を下げているために、プレス成形前の冷却速度が10℃/sよりも低く、硬度が著しく低下し、No.15は、プレス成形後に放冷(空冷)したために、プレス成形後の冷却速度が10℃/sよりも低く、やはり硬度が低下している。
No.16及びNo.17は、プレス成形前後の冷却速度が10℃/s以上であるが、プレス成形終了温度がMs点(本実施例の場合では、400℃)よりも低いため、マルテンサイト組織が生成して変形能が低下し、割れが発生した。

Claims (9)

  1. 質量%で、C≧0.15%を含有する鋼板を850℃以上に加熱後、10℃/s以上の冷却速度で冷却しながら、プレス成形開始温度Tp[℃]を600℃以下とし、プレス成形終了温度を前記鋼板のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]以上としてプレス成形し、その後300℃以下まで10℃/s以上の冷却速度で冷却し、ビッカース硬さHvが400以上のプレス成形品を得ることを特徴とする鋼板熱間プレス方法。
  2. プレス成形時間tp[s]を20s以内としてプレス成形することを特徴とする請求項1に記載の鋼板熱間プレス方法。
  3. 前記プレス成形開始温度Tp[℃]、前記鋼板のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]及び前記プレス成形時間tp[s]が、tp≦(Tp−Ms)/100を満足することを特徴とする請求項2に記載の鋼板熱間プレス方法。
  4. プレス成形前の加熱した前記鋼板を気体及び液体の何れか一方又は双方を冷媒として冷却することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
  5. プレス成形前の加熱した前記鋼板をプレス装置の金型で冷却することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
  6. ブランク押さえにより前記鋼板を拘束しながら、絞り変形、張り出し変形の一方又は双方を含むプレス成形を行うことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
  7. プレス成形後の成形品を、気体及び液体の何れか一方又は双方を冷媒として冷却することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
  8. プレス成形後の成形品をプレス装置の金型で冷却することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の鋼板熱間プレス方法。
  9. 請求項1から8の何れか1項に記載の方法で熱間プレスされたプレス成形品であることを特徴とするプレス成形品。
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