JP6056826B2 - 熱間プレス成形品の製造方法 - Google Patents

熱間プレス成形品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6056826B2
JP6056826B2 JP2014200146A JP2014200146A JP6056826B2 JP 6056826 B2 JP6056826 B2 JP 6056826B2 JP 2014200146 A JP2014200146 A JP 2014200146A JP 2014200146 A JP2014200146 A JP 2014200146A JP 6056826 B2 JP6056826 B2 JP 6056826B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
press
cooling
treated steel
hot press
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014200146A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016068118A (ja
Inventor
達也 中垣内
達也 中垣内
裕一 時田
裕一 時田
簑手 徹
徹 簑手
玉井 良清
良清 玉井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2014200146A priority Critical patent/JP6056826B2/ja
Publication of JP2016068118A publication Critical patent/JP2016068118A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6056826B2 publication Critical patent/JP6056826B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、熱間プレス成形品およびその製造方法に関し、特に予め加熱された表面処理鋼板をプレス加工する際に、形状付与と同時に焼入れて所定強度を得る熱間プレス成形品の製造方法および熱間プレス成形品に関するものである。
近年、地球環境の保全の観点から、自動車排ガス規制が強化されている。このような状況下、自動車の燃費向上が重要な課題となっており、自動車部品の高強度化・薄肉化が要求されている。しかし、鋼板の高強度化に伴ってそのプレス加工性が低下するため、鋼板を所望の部品形状に加工することが困難になる場合が多くなっている。
このような問題を解決するものとして、高温に加熱した素材鋼板を、金型を用いて所望の形状に熱間プレス成形しつつ金型内で抜熱して焼入れし、熱間プレス成形後の部品を高強度化する技術が知られている。
例えば特許文献1には900℃前後のオーステナイト単相域まで加熱したブランク板(鋼板)に熱間プレスを施して所定形状の部品を製造するに際し、熱間プレス成形と同時に金型内で焼入れを行うことで、部品の高強度化を図る技術が提案されている。
しかし、特許文献1で提案された技術では、プレス前に鋼板を900℃前後の高温に加熱する際、鋼板表面に酸化スケール(鉄酸化物)が生成し、その酸化スケールが熱間プレス成形時に剥離して金型を損傷させたり、熱間プレス成形後の部材表面を損傷させるという問題がある。また、部材表面に残った酸化スケールは、外観不良や塗装密着性の低下の原因にもなる。このため、通常は酸洗やショットブラストなどの処理を行って部材表面の酸化スケールを除去するが、これらの処理は生産性の低下を招く。更に、自動車の足回り部材や車体構造部材などには優れた耐食性も必要とされるが、特許文献1で提案された技術では素材鋼板にめっき層などの防錆皮膜が設けられていないため、熱間プレス成形部材の耐食性が不十分となる。
上記の理由により、熱間プレス成形前の加熱時にスケールの生成を抑制するとともに、熱間プレス成形後の部材の耐食性を向上させることが可能な熱間プレス成形技術が要望されている。このような要望に対し、表面にめっき層などの皮膜を設けた表面処理鋼板や、表面処理鋼板を用いた熱間プレス成形方法が提案されている。例えば特許文献2には、ZnまたはZnベース合金で被覆された鋼板を、700〜1200℃に加熱した後、熱間プレス成形することにより、表面にZn-Feベース化合物またはZn-Fe-Alベース化合物を備えた熱間プレス成形部材とする技術が提案されている。また、特許文献2には、ZnまたはZnベース合金で被覆された鋼板を用いることにより、熱間プレス成形前の加熱時に問題となる鋼板表面の酸化を抑制することが可能となり、しかも耐食性に優れた熱間プレス成形部材が得られると記載されている。
英国特許第1490535号公報 特許第3663145号公報
特許文献2で提案されているようにZn-Feめっき鋼板を用いて熱間プレス成形を行った場合、金型にめっきが付着し、プレス枚数の増加に伴い金型に付着しためっきが堆積するため、部分的な焼入れ性の低下や、クリアランスの減少による鋼板の破断が生じるようになる。それを回避するためには定期的に金型に付着しためっきを除去する必要があり、そのメンテナンスによるコスト増加が問題となる。
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、Zn-Feめっき鋼板に熱間プレス成形を施して熱間プレス成形部材を製造するに際し、金型へのめっき付着を抑制できる熱間プレス成形品の製造方法および熱間プレス成形品を提供することを目的としている。
本発明者らは、Zn-Feめっき鋼板を用いて熱間プレス成形する際に問題となる金型へのめっき付着を抑制する手段について検討した。
その結果、熱間プレス成形開始時の鋼板の温度(成形開始温度)を低くすることによりめっき付着が抑制できることを明らかにした。しかし、空冷やガス冷却により成形開始温度を低くした場合、冷却に時間を要し生産性が低下したり、冷却時にフェライトやベイナイトなどの相が生成し、プレス後に十分な成形品強度の確保ができなくなることが問題となる。
上記のような問題に対し本発明者らはプレス成形前に金型で鋼板を挟んで冷却した後、プレス成形を開始することを検討した。その結果、金型で鋼板を挟んで550℃以下まで鋼板の温度を低下させた後にプレス成形を開始することで、生産性の低下や焼入れ性の低下を招くことなく、金型へのめっき付着が抑制されることが明らかとなった。
本発明は、上記した知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下の構成を備えたものである。
(1)本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法は、Zn-Fe系のめっき層が素地鋼板の表面に形成された表面処理鋼板に熱間プレス成形を施して熱間プレス成形品を製造する熱間プレス成形品の製造方法であって、
前記表面処理鋼板をAc3変態点以上1000℃以下の温度域に加熱した後、前記表面処理鋼板をプレス成形する前にその成形部位を金型で挟んで100℃/s以上の冷却速度でめっき層の凝固点以下400℃以上の範囲の温度まで前記表面処理鋼板を冷却する冷却工程と、冷却後の前記表面処理鋼板をプレス成形するプレス成形工程と、前記表面処理鋼板を金型で挟んだまま保持して前記表面処理鋼板を焼入れる焼入れ工程とを備え
前記冷却工程はダイとブランクホルダで前記表面処理鋼板を挟み、前記ダイの移動を停止又は移動速度を前記プレス成形工程の移動速度よりも遅くして行うことを特徴とするものである。
)また、上記()に記載のものにおいて、前記めっき層中のFe含有量が5〜80質量%であることを特徴とするものである。
本発明においては、Zn-Feめっき層が素地鋼板の表面に形成された表面処理鋼板に熱間プレス成形を施して熱間プレス成形品を製造するに際して、前記表面処理鋼板をAc3変態点以上1000℃以下の温度域に加熱した後、前記表面処理鋼板をプレス成形する前にその成形部位を金型で挟んで100℃/s以上の冷却速度でめっき層の凝固点以下400℃以上の範囲の温度まで前記表面処理鋼板を冷却する冷却工程と、冷却後の前記表面処理鋼板をプレス成形するプレス成形工程と、前記表面処理鋼板を金型で挟んだまま保持して前記表面処理鋼板を焼入れる焼入れ工程とを備えたことにより、生産性の低下や焼入れ性の低下を招くことなく、金型へのめっき付着が抑制できるという効果が得られる。
本発明の一実施の形態に係る熱間プレス成形品の製造方法の説明図である。 金属組織と温度、冷却時間との関係を示す模式図である(その1)。 金属組織と温度、冷却時間との関係を示す模式図である(その2)。 本発明の一実施の形態における金型冷却の種々の態様を説明する図である。 本発明の一実施の形態における成形方法の説明図である。 実施例でプレス成形するプレス成形品の説明図である。 実施例で使用した金型の一部を説明する図である。 実施例において検証する口開き量の説明図である。
本発明の一実施の形態に係る熱間プレス成形品の製造方法は、Zn-Feめっき層が素地鋼板の表面に形成された表面処理鋼板1に熱間プレス成形を施して熱間プレス成形品を製造する熱間プレス成形品の製造方法であって、図1に示すように、Ac3変態点以上で1000℃以下の温度域に加熱した表面処理鋼板1を、ダイ3とブランクホルダ5で挟んで100℃/s以上の冷却速度でめっき層の凝固点以下400℃以上の範囲の温度まで表面処理鋼板1を冷却する冷却工程(S1)と、冷却後の表面処理鋼板1をダイ3とブランクホルダ5及びパンチ7によってプレス成形を行うプレス成形工程(S2)と、表面処理鋼板1を金型で挟んだまま保持して表面処理鋼板1を焼入れる焼入れ工程(S3)とを備えたものである。
以下、熱間プレス成形部材の素材、冷却工程(S1)、プレス成形工程(S2)、焼入れ工程(S3)について詳細に説明する。
<熱間プレス成形部材の素材>
熱間プレス成形部材の素材としては、素地鋼板の表面にZn-Feめっき層が設けられたものを用いる。鋼板表面にZn-Feめっき層を設けることにより、熱間プレス成形後の部材の耐食性を確保することができる。
素地鋼板表面にZn-Feめっき層を形成する方法は特に限定されず、溶融めっき、電気めっきなどいずれの方法でもよい。めっきの付着量は、片面あたり10g/m2以上90g/m2以下とすることが好ましい。
Zn-Feめっき層中のFe含有量については特に限定するものではないが、5質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。めっき層中のFe含有量が5質量%以上であれば、Zn-Feめっき特有の優れた機能を発揮する。一方、80質量%以上になると耐食性、塗装密着性、溶接性等が劣化しやすくなる。
表面処理鋼板1は、Ac3変態点以上で1000℃以下の温度域に加熱している。表面処理鋼板1の加熱温度がAc3変態点未満であると、加熱時に適切な量のオーステナイトが得られず、プレス成形時にフェライトが存在することで、熱間プレス成形後にプレス成形品が十分な強度を得ることや良好な形状凍結性を確保することが困難となる。一方、表面処理鋼板1の加熱温度が1000℃を越えると、めっき層の蒸発や表層部での酸化物の過度な生成により、耐酸化性や熱間プレス成形部材の耐食性が低下する。したがって、加熱温度はAc3変態点以上1000℃以下とする。より好ましくはAc3変態点+30℃以上950℃以下である。表面処理鋼板1の加熱方法は特に限定されず、電気炉や誘導加熱炉、直接通電加熱炉による加熱等、いずれの方法であってもよい。
<冷却工程>
冷却工程(S1)は、加熱した表面処理鋼板1を金型で挟んで100℃/s以上の冷却速度でめっき層の凝固点以下400℃以上の範囲の温度まで表面処理鋼板1を冷却する工程である。
冷却速度を100℃/s以上としたのは、コストアップすることなく、マルテンサイト単相組織となり高強度化を可能とするためである。
この点をさらに詳細に説明する。
図2は金属組織と温度、冷却時間との関係を示す模式図である。図2(a)は成形開始温度が高い場合を示しており、成形開始後、金型への抜熱によって急冷され、マルテンサイト単相組織となる。プレス成形加工時の組織がオーステナイトであり、加工後にマルテンサイト変態することにより、加工時に入った応力が緩和され形状精度の低下が起こりにくい。
他方、図2(b)に示すように、成形開始温度が低い場合には、プレス成形開始前にフェライトやベイナイトが生成し、プレス成形後の部材強度が低下する。プレス成形加工時の組織がフェライトやベイナイトを含むと、加工後のマルテンサイト変態が減少して、加工時に入った応力が緩和されず、形状精度が低下するわけである。
本発明では、プレス成形開始温度を下げているため、図2(b)の形態となるが、それをプレス開始前に急冷が可能な冷却工程を採用することで、図3の破線の曲線で示すように、成形開始温度を低くしながらも、マルテンサイト単相組織とすることができる。
冷却工程で凝固点以下まで冷却するとしているのは、凝固点超では熱間プレス成形時に金型へめっきが付着するからである。また、冷却温度の下限値を400℃としたのは、この温度を超えて冷却した場合にはプレス成形前に表面処理鋼板1が過度に冷却されてプレス成形後の形状凍結性が低下するからである。
プレス成形前の金型での表面処理鋼板1の冷却方法は特に限定されないが、ブランクホルダ5を活用した冷却は表面温度を制御するのが容易である点から好ましい。ブランクホルダ5を活用した冷却方法の例を図4に示す。
図4(a)はブランクホルダ5の待機位置をパンチ7上面よりも上側に設定し、ダイ3とブランクホルダ5で表面処理鋼板1を挟んだ後、パンチ7に接触するまでのスライドの移動時に冷却を行う。このとき、スライドの移動速度により表面処理鋼板1の冷却時間は制御可能となる。プレス成形を開始してからは、生産性や表面処理鋼板1の温度低下に伴うプレス成形性の低下などを防ぐためにスライドの移動速度は速い方が好ましく、必要に応じてプレス成形前とプレス成形中のスライドの移動速度を変えることが望ましい。ただし、プレス機によっては上記のようなスライドの移動速度を自由に変えることが困難な場合もあり、プレス成形前の移動速度に対してプレス成形中のスライドの移動速度が同じかそれ以下となっても、スライドの移動時に金型による冷却効果が得られるため、本発明の効果を損なうものではない。また、プレス成形前の金型での冷却を停止してプレス成形を開始するプレス成形開始温度は、通常、プレス成形前の冷却時間で制御されるが、金型の表面に熱電対などの測温素子を設置し、表面処理鋼板1の温度を直接測定して鋼板の表面温度を制御することも可能である。さらに、連続プレス時において金型の温度上昇を抑え冷却速度のばらつきを低減するために、ダイ3やブランクホルダ5内に水冷配管を設けて金型の冷却を行ったり、ダイ3やブランクホルダ5の表面に熱伝導率の高い材質のものを用いることも可能である。
また、図4(b)のようにダイ3とブランクホルダ5で表面処理鋼板1を挟んだ後、スライドを一定時間停止し表面処理鋼板1を冷却した後、成形を行うことも可能である。
さらに、図4(c)のようにブランクホルダ5の待機位置をパンチ7上面よりも上側に設定し、ダイ3とブランクホルダ5で表面処理鋼板1を挟んで一定時間停止した後、スライドを移動させ、成形を行ってもよい。この場合は、停止時間と表面処理鋼板1とパンチ7が接触するまでのスライドの移動時間がプレス成形前の表面処理鋼板1の冷却時間となる。
また、図4(d)はパッド9を活用した例となるが、非加工部については早く冷却を開始することが好ましく、パッド9を活用してプレス成形前に非加工部分にパッド9を当接させて冷却を開始してもよい。
なお、図4(d)は、図4(a)に対してパッド9を活用した例となっているが、図4(b)および図4(c)の例についても同様にパッド9を活用することができる。
なお、使用するプレス機については特に限定されないが、図4(a)でスライドの移動速度を変化させる場合や、図4(b)および図4(c)のようにスライドを一旦停止させるような制御を行う場合はサーボプレス機の使用が必要となる。
<プレス成形工程>
プレス成形工程(S2)は、表面処理鋼板1を製品形状にプレス成形する工程である。
プレス成形方法については特に限定されない。図5(a)に示したように、ダイ3とブランクホルダ5で表面処理鋼板1を挟んだまま成形を行うドロー成形、あるいは図5(b)に示したように、一旦ブランクホルダ5を下げるか、または、ブランクホルダを使用せずに成形を行うフォーム成形などが可能である。
<焼入れ工程>
焼入れ工程は、表面処理鋼板1を金型で挟んだまま保持して表面処理鋼板1を焼入れる工程である。プレス成形後に金型により表面処理鋼板1を焼入れるためには、プレス成形後に下死点においてスライドを停止することが好ましい。停止時間は金型による抜熱量により異なるが3秒以上とすることが好ましい。
なお、金型内に所定時間保持して素地鋼板を焼入れ組織とするには、例えば、質量%で、C:0.15%以上0.50%以下、Si:0.05%以上2.00%以下、Mn:0.50%以上3.00%以下、P:0.10%以下、S:0.050%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する熱延鋼板や冷延鋼板を用いることができる。各成分の限定理由を以下に説明する。ここで、成分の含有量を示す「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
《C:0.15%以上0.50%以下》
Cは鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形部材の高強度化のためにはその量を0.15%以上とすることが好ましい。一方、C量が0.50%を超えると、熱間プレス成形部材の溶接性や素材(素地鋼板)のブランキング性が著しく低下する。したがって、C含有量は0.15%以上0.50%以下とすることが好ましく、0.20%以上0.40%以下とすることがより好ましい。
《Si:0.05%以上2.00%以下》
SiはCと同様に鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス成形部材の高強度化のためにはその量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si量が2.00%を超えると、素地鋼板を製造する際、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大する。したがって、Si含有量は0.05%以上2.00%以下とすることが好ましく、0.10%以上1.50%以下とすることがより好ましい。
《Mn:0.50%以上3.00%》
Mnは鋼の焼入れ性を高める元素であり、熱間プレス成形後の冷却過程で素地鋼板のフェライト変態を抑制して焼き入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、MnはAc3変態点を低下させる作用を有するため、熱間プレス成形前の表面処理鋼板1の加熱温度を低温下するのに有効な元素である。このような効果の発現のためには、Mn含有量を0.50%以上とすることが好ましい。一方、Mn量が3.00%を超えると、Mnが偏析して素地鋼板および熱間プレス成形部材の特性の均一性が低下する。したがってMn含有量は0.50%以上3.00%以下とすることが好ましく、0.75%以上2.50%以下とすることがより好ましい。
《P:0.10%以下》
P含有量が0.10%を超えると、Pが粒界に偏析して素地鋼板および熱間プレス成形部材の低温靭性が低下する。したがって、P含有量は0.10%以下とすることが好ましく、0.01%以下とすることがより好ましい。
《S:0.050%以下》
SはMnと結合して粗大な硫化物を形成し、鋼の延性低下を招く元素である。そのため、S含有量は極力低減することが好ましいが、0.050%までは許容できる。したがって、S含有量は0.050%以下とすることが好ましく、0.010%以下とすることがより好ましい。
《Al:0.10%以下》
Al含有量が0.10%を超えると酸化物系介在物の増加を招き、鋼の延性が低下する。したがって、Al含有量は0.10%以下とすることが好ましく、0.07%以下とすることがより好ましい。但し、Alは脱酸材としての作用を有し、鋼の清浄度向上の観点からは、その含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
《N:0.010%以下》
N含有量が0.010%を超えると、素地鋼板中にAlN等の窒化物が形成され、熱間プレス成形時の成形性の低下を招く。したがって、N含有量は0.010%以下とすることが好ましく、0.005%以下とすることがより好ましい。
以上が本発明における素地鋼板の好ましい基本成分であるが、該素地鋼板は必要に応じて更に以下の元素を含有してもよい。
Cr:0.01%以上0.50%以下、V:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、Ni:0.01以上0.50%以下のうちの少なくとも1種以上。
Cr、V、Mo、Niはいずれも鋼の焼き入れ性を向上させるのに有効な元素である。この効果は、いずれの元素の場合も含有量を0.01%以上とすることにより得られる。しかし、Cr、V、Mo、Niはいずれも含有量が0.50%を超えると上記効果は飽和し、コストアップの要因となる。したがって、Cr、V、Mo、Niのいずれか1種以上を含有する場合には、それぞれ含有量を0.01%以上0.50%以下とすることが好ましく、0.10%以上0.40%以下とすることがより好ましい。
Ti:0.01%以上0.20%以下
Tiは鋼の強化に有効である。Tiによる強度上昇効果は、その含有量を0.01%以上とすることで得られ、本発明で規定した範囲内であれば、鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、含有量が0.20%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。従って、Tiを含有する場合には0.01%以上0.20%以下とすることが好ましく、0.01%以上0.05%以下とすることがより好ましい。
Nb:0.01%以上0.10%以下
Nbも鋼の強化に有効である。Nbによる強度上昇効果は、その含有量を0.01%以上とすることで得られ、本発明で規定した範囲内であれば、鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、含有量が0.10%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。従って、Nbを含有する場合には0.01%以上0.10%以下とすることが好ましく、0.01%以上0.05%以下とすることがより好ましい。
B:0.0002%以上0.0050%以下
Bは鋼の焼入れ性を高める元素であり、熱間プレス成形後に素地鋼板が冷却される際、オーステナイト粒界からのフェライトの生成を抑制して焼入れ組織を得るのに有効な元素である。その効果はB含有量を0.0002%以上で得られるが、0.0050%を超えるとその効果は飽和し、コストアップの要因となる。したがって、Bを含有する場合には、その含有量を0.0002%以上0.0050%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0005%以上0.0030%以下である。
Sb:0.003%以上0.030%以下
Sbは熱間プレス成形前に鋼板を加熱してから熱間プレス成形の一連の処理によって鋼板を冷却するまでの間に、素地鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためには、Sb含有量を0.003%以上とすることが好ましい。しかし、Sb含有量が0.030%を超えると素地鋼板製造時に圧延荷重の増大を招き、生産性の低下が懸念される。したがって、Sbを含有する場合には、その含有量を0.003%以上0.030%以下とすることが好ましく、0.005%以上0.010%以下とすることがより好ましい。
なお、上記成分以外の成分(残部)はFeおよび不可避的不純物である。
本発明において熱間プレス成形部材の素材として用いる表面処理鋼板1は、その製造条件に特段の制限はない。素地鋼板の製造条件は特に限定されず、例えば所定の成分組成を有する熱延鋼板(酸洗鋼板)や熱延鋼板に冷間圧延を施すことにより得られる冷延鋼板や冷間圧延後に焼鈍処理を行った鋼板を素地鋼板としても良い。
素地鋼板の表面に、Zn-Feめっき層を形成して表面処理鋼板1とする際の条件も、特に限定されない。
例えば、素地鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインに通板して焼鈍処理を施した後、440℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴に浸漬することにより、溶融Znめっき層を形成した後、合金化炉で460℃以上600℃以下の温度域に加熱し、該温度域に5s以上60s以下滞留させる合金化処理を施すことによりZn-Feめっき層を形成することができる。溶融Znめっき層の付着量は、ガスワイピング法等により所望の付着量(例えば、片面あたり10g/m2以上90g/m2以下)に調整すればよい。なお、めっき層中のFe含有量は、合金化炉での加熱温度や該加熱温度での滞留時間を上記の範囲内で適宜調整することにより、所望のFe含有量(例えば5質量%以上80質量%以下)とすることができる。
本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法の効果を確認する実験を行ったので、以下これについて説明する。
表1に示す成分を有する鋼を溶製して鋳片として、該鋳片を1200℃に加熱し、870℃の仕上げ圧延終了温度で熱間圧延を施した後、600℃で巻き取り、熱延鋼板とした。
次いで、該熱延鋼板を酸洗後50%の圧下率で冷間圧延し、板厚1.6mmの冷延鋼板とした。表1に記載のAc3変態点は、以下の(1)式より算出した(William C.Leslie著、幸田成康監訳、熊井浩、野田龍彦訳、「レスリー鉄鋼材料学」、丸善株式会社、1985年、p.273参照)。
Ac3(℃)=910-203√[C]+44.7×[Si]-30×[Mn]+700×[P]+400×[Al] ・・・(1)
なお、(1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[Al]は、各元素(C、Si、Mn、P、Al)の含有%(質量%)である。
以上のようにして得られた冷延鋼板を素地鋼板とし、素地鋼板の表面に、Zn-Feめっき層を形成して表面処理鋼板1とした。Zn-Feめっき層は、以下の条件で形成した。
<Zn-Feめっき層>
冷延鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインに通板し、10℃/sの昇温速度で800℃以上900℃以下の温度域まで加熱し、該温度域に10s以上120s以下滞留させた後、15℃/sの冷却速度で460℃以上500℃以下の温度域まで冷却し、450℃の亜鉛めっき浴に浸漬することにより、Znめっき層を形成した。Znめっき層の付着量は、ガスワイピング法により所定の付着量に調整した。ガスワイピング法により所定の付着量に調整した後、直ちに合金化炉で500〜550℃に加熱して5〜60s保持することにより、Zn-Feめっき層を形成した。めっき層中のFe含有量は、合金化炉での加熱温度や該加熱温度での滞留時間を上記の範囲内で変更することにより、所定の含有量とした。
以上のようにして得られた表面処理鋼板1から、200mm×400mmのブランク板を打抜き、該ブランク板を大気雰囲気の電気炉により加熱したのち、ブランク板を金型(材料:SKD61)に設置し、その後に金型による冷却およびプレス成形を行った。そして、金型内で焼入れた後、離型することにより、図6に示すハット形状のプレス成形部材を製造した。金型の形状は、パンチ肩R:6mm、ダイ肩R:6mmの金型を用い、パンチ-ダイのクリアランス:1.6mmとした。また、金型へのめっき付着量を評価するために、図7に示すように、取り外しできる脱着部11を備えたパンチ7を用いた。プレス成形前の金型内の冷却はダイ3とブランクホルダ5との接触で行った。プレス成形は、98kNのしわ押さえ力をかけたまま成形するドロー成形と、ブランクホルダ5を下げてしわ押さえ無しで成形するフォーム成形にて行った。
めっき層の種類、加熱条件、プレス前冷却条件、プレス条件、金型へのめっき付着量、プレス後サンプルの状態を表2に示す。
プレス前に♯800のエメリー研磨紙で金型を研磨し金型への付着物を完全に除去した後、各条件で連続10枚のプレス成形を行い、パンチ7の脱着部11の試験前後の重量変化により金型へのめっき付着量を評価した。
また、得られたハット形状のプレス成形部材の縦壁部からサンプルを採取し、マイクロビッカース硬度計にて、その断面の板厚中央部の硬度をJIS82244に従って測定した。
さらに、得られたプレス成形部材の形状精度について図8に示すハット部材の離型後の成形品幅Wと金型形状での成形品幅Wの差(W−W)を口開き量として評価した。その結果も併せて表2に示してある。
発明例1〜8において、めっき層の種類(Zn-Feめっき層)、冷却方法(金型冷却)、冷却速度(発明範囲:100℃/s以上)、および成形開始温度(発明範囲:400℃〜凝固点温度)は、すべて本発明の範囲内にある。プレス成形時、金型へのめっき付着は認められなかった。また、プレス後のサンプルの、口開き量は0mmであった。これにより、本発明範囲内のプレス成形方法では、めっきの金型への付着が発生せず、かつ良好な焼入れ性および形状凍結性が得られることが実証された。
比較例1、2において、めっき層の種類(Zn-Feめっき層)は本発明と同じであるが、冷却方法がガス冷却であるため、冷却速度が本発明範囲内(100℃/s以上)とならず、急速冷却することができない。
そのため、比較例1では鋼板の成形開始温度が発明範囲外(凝固点温度超)であり、金型へのめっき付着が発生する。
比較例2では、冷却時間を長時間としたため、鋼板の成形開始温度は本発明範囲内の520℃であるが、口開き量が2mmと形状凍結性の低下が生じている。これは、ガス冷却である程度まで緩冷却しプレスした後での焼入れとなったため、プレス後におけるサンプルの硬度が低下しており、マルテンサイト単相組織とならず、プレス成形前にフェライトやベイナイトが生成し、プレス成形時の応力を充分に緩和できなかったことが原因である。
比較例3、4は、めっき層の種類(Zn-Feめっき層)、冷却方法(金型冷却)、冷却速度(発明範囲:100℃/s以上)は本発明範囲内であるが、プレス成形開始温度が本発明範囲外のものである。比較例3はプレス成形開始温度が発明範囲より高い670℃であり、比較例4のプレス成形開始温度は400℃未満の360℃である。
比較例3をみると、金型へのめっき付着が発生している。一方、本発明例1〜8では発生していないことから、鋼板の成形開始温度が発明範囲内(めっき層の凝固点以下)であることで、金型へのめっき付着を抑制できることが実証された。
また、比較例4をみると、口開き量が9mmである。これにより、冷却時間が長すぎて、鋼板の成形開始温度が400℃未満となった場合には、鋼板の強度が上昇するため、形状凍結性の低下が起こることがわかる。
1 表面処理鋼板
3 ダイ
5 ブランクホルダ
7 パンチ
9 パッド
11 脱着部

Claims (2)

  1. Zn-Fe系のめっき層が素地鋼板の表面に形成された表面処理鋼板に熱間プレス成形を施して熱間プレス成形品を製造する熱間プレス成形品の製造方法であって、
    前記表面処理鋼板をAc3変態点以上1000℃以下の温度域に加熱した後、前記表面処理鋼板をプレス成形する前にその成形部位を金型で挟んで100℃/s以上の冷却速度でめっき層の凝固点以下400℃以上の範囲の温度まで前記表面処理鋼板を冷却する冷却工程と、冷却後の前記表面処理鋼板をプレス成形するプレス成形工程と、前記表面処理鋼板を金型で挟んだまま保持して前記表面処理鋼板を焼入れる焼入れ工程とを備え
    前記冷却工程はダイとブランクホルダで前記表面処理鋼板を挟み、前記ダイの移動を停止又は移動速度を前記プレス成形工程の移動速度よりも遅くして行うことを特徴とする熱間プレス成形品の製造方法。
  2. 前記めっき層中のFe含有量が5〜80質量%であることを特徴とする請求項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
JP2014200146A 2014-09-30 2014-09-30 熱間プレス成形品の製造方法 Active JP6056826B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014200146A JP6056826B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 熱間プレス成形品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014200146A JP6056826B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 熱間プレス成形品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016068118A JP2016068118A (ja) 2016-05-09
JP6056826B2 true JP6056826B2 (ja) 2017-01-11

Family

ID=55865525

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014200146A Active JP6056826B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 熱間プレス成形品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6056826B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110180933B (zh) * 2019-06-06 2020-05-22 杭州联大五金机械有限公司 一种多工位自动化冲床

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4681492B2 (ja) * 2006-04-07 2011-05-11 新日本製鐵株式会社 鋼板熱間プレス方法及びプレス成形品
WO2012085248A2 (de) * 2010-12-24 2012-06-28 Voestalpine Stahl Gmbh Verfahren zum umformen und härten von beschichteten stahlblechen
JP6006587B2 (ja) * 2011-09-01 2016-10-12 株式会社神戸製鋼所 熱間プレス成形品およびその製造方法
JP5825447B2 (ja) * 2013-08-29 2015-12-02 Jfeスチール株式会社 熱間プレス成形部材の製造方法
JP5825413B1 (ja) * 2014-04-23 2015-12-02 Jfeスチール株式会社 熱間プレス成形品の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016068118A (ja) 2016-05-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5825413B1 (ja) 熱間プレス成形品の製造方法
CN107127238B (zh) 一种锌系镀覆钢板或钢带的热冲压成型方法
JP5825447B2 (ja) 熱間プレス成形部材の製造方法
KR101892661B1 (ko) 핫 스탬핑용 강판, 핫 스탬핑 방법 및 핫 스탬핑된 부품
WO2020108594A1 (zh) 一种冷弯性能优良的锌系镀覆热成型钢板或钢带及其制造方法
JP5387720B2 (ja) 熱間プレス成形された鋼板部材および熱間プレス鋼板部材用鋼板ならびにそれらの製造方法
TWI481730B (zh) 鋼板
JP6719486B2 (ja) 耐剥離性に優れたhpf成形部材及びその製造方法
US10384254B2 (en) Method of manufacturing hot-pressed member
JP2013545890A (ja) 鋼ブランクの熱間成形方法及び熱間成形部品
JP6152836B2 (ja) 熱間プレス成形品の製造方法
JP6668323B2 (ja) 溶融亜鉛系コーティングを有する高強度高成形性帯鋼
JP2011195958A (ja) 熱間プレス加工用鋼材ならびに熱間プレス鋼材および熱間プレス鋼材の製造方法
JP5070947B2 (ja) 焼入れ鋼板部材および焼入れ用鋼板とそれらの製造方法
WO2017029773A1 (ja) 熱間プレス部材の製造方法および熱間プレス部材
KR101719446B1 (ko) 프레스 성형품 및 그 제조 방법
JP6303580B2 (ja) 熱処理用鋼板およびその製造方法
JP2013185240A (ja) 高張力冷延鋼板および高張力めっき鋼板ならびにそれらの製造方法
JP4299377B2 (ja) 成形後強度上昇熱処理性能を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6056826B2 (ja) 熱間プレス成形品の製造方法
CN115958059A (zh) 一种锌基合金镀层热冲压成形钢的制备方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160824

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160830

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160928

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161121

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6056826

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250