JP4669121B2 - 架橋重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体中の特定構造の繰り返し単位を、架橋剤にて反応させて得られる架橋重合体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
[吸水性樹脂の技術的背景]
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ等の衛生用品、その他、各種分野に使用されている。
【0003】
[吸水性樹脂に関する先行技術]
このような用途に使用されている吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物(特開昭55−84304号、米国特許4,625,001号)、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物(特開昭46−43995号)、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体(特開昭51−125468号)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物(特開昭52−14689号)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物(欧州特許0068189号)、カチオン性モノマーの架橋重合体(米国特許4,906,717号)、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物(米国特許4,389,513号)等が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの吸水性樹脂は、実質的に分解性を有しないため、使用後の廃棄が問題である。現状では、これらの吸水性樹脂は、廃棄時には、焼却処理する方法と埋め立てする方法が行われているが、焼却炉で処理する方法では、焼却時に発生する熱による炉材の損傷のほかに、地球の温暖化や酸性雨の原因となることが指摘されている。また、埋め立て処理する方法では、プラスチックは、容積が嵩張り腐らないため、埋め立て後の地盤が安定しない等の問題がある上、埋め立てに適した用地の確保が困難となってきたことが大きな問題となっている。すなわち、これらの樹脂は分解性に乏しく、水中や土壌中では、実質的に半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると、非常に厄介で重大な問題である。
【0005】
例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用途に代表される使い捨て用途で使用する樹脂の場合は、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。また、農・園芸用保水材として架橋ポリアクリル酸樹脂を使用した場合、土壌中でCa2+等の多価イオンとコンプレックスを形成し、不溶性の層を形成することが報告されている(松本ら、高分子、42巻、8月号、1993年)。
【0006】
このような層は、そのもの自体の毒性は低いとはいわれているが、自然界には本来的に全く存在してこなかったものであり、それら樹脂の土中への蓄積による生態系への長期間に亘る影響は不明であり、今後、安全性を慎重にかつ充分に確認した後に使用することが望まれる。
【0007】
非イオン性の樹脂の場合には、コンプレックスは形成しないが、非分解性であるので、土壌中へ蓄積する虞があり、同様に、樹脂の土中への蓄積による生態系への長期間に亘る影響は不明であり、今後、安全性を慎重にかつ充分に確認した後に使用することが望まれる。
【0008】
さらに、これらの重合系の樹脂は、単量体原料として、哺乳類動物の肌や粘膜に対して毒性の高いものを使用しており、重合後の製品からこれらを除去するために、多くの検討がなされてきた。通常、重合後の製品から、未反応重合体を除去することは困難であり、特に、工業的規模の製造においては、より困難となることが予想される。
【0009】
[生分解性を有する吸水性樹脂の技術的背景]
近年、「地球にやさしい素材」として生分解性ポリマーが注目されており、これを吸水性樹脂として使用することも提案されている。
【0010】
このような用途に使用されている生分解性を有する吸水性樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシド架橋体(特開平6−157795号等)、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体(米国特許4,650,716号)、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体、ポリアミノ酸架橋体等が知られている。これらの中で、ポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体は、吸水量が小さく、通常、生理用品、紙おむつ、使い捨て雑巾、ペーパータオル等の高い吸水能が要求される製品の素材として使用する場合には適切でない。また、これらの化合物は、特殊な菌によらなければ生分解することができないので、一般的な条件では、生分解は極端に遅かったり、又は、全く分解しなかったりする。これら化合物は、分子量が大きくなると、さらに極端に分解性が低下する。
【0011】
また、カルボキシメチルセルロース架橋体、アルギン酸架橋体、デンプン架橋体等の糖類架橋体は、その分子内に強固な水素結合を多く含むために、分子間、ポリマー間の相互作用が強く、そのため分子鎖が広く開くことができず、その結果、吸水能は高くない。
【0012】
[ポリアミノ酸系吸水性樹脂の技術的背景]
ポリアミノ酸を架橋して得られる樹脂は、生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされてきているので、哺乳類動物に対してもやさしい素材である。
【0013】
このような樹脂の製造方法の具体例としては、例えば、ポリ−γ−グルタミン酸にγ線を照射して高吸水能を有する樹脂を製造する方法が挙げられる(国岡ら、高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年))。
【0014】
しかしながら、工業的な観点からは、この技術に用いる60Co照射設備は、放射能の遮断を行うためには大がかりな設備が必要であり、その管理にも充分な配慮が必要であるため現実的ではない。また、出発物質であるポリグルタミン酸が高価であることも問題点である。
【0015】
このような樹脂の製造方法の他の具体例としては、例えば、酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法が挙げられる[Akamatsuら、米国特許第3,948,863号(特公昭52−41309号)、岩月ら、特開平5−279416号]等を挙げることができる。
【0016】
このような樹脂の製造方法のさらに他の具体例としては、例えば、架橋アミノ酸樹脂を吸水性ポリマーに用いる方法が挙げられる(Sikesら、特表平6−506244号;米国特許第5,247,068及び同第5,284,936号、鈴木ら、特開平7−309943号、原田ら、特開平8−59820号)。しかしながら、これらのポリマーは、吸水性ポリマーとして十分な性能を有するものではなかった。
【0017】
一方、これらの架橋ポリアミノ酸を、ポリアスパラギン酸やアスパラギン酸を架橋剤と熱により反応させて製造する方法が、特表平6−506244号及び特表平8−504219号に開示されている。
【0018】
また、酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸を混合し、加熱して架橋することにより吸水性ポリマーを得る方法が、特開平8−59820号に開示されている。
【0019】
しかしながら、これらの方法は、固体状態で架橋反応を行なうことを特徴とするので、架橋反応が均一となりにくいため吸水能等の物性が充分でなかったり、また、架橋反応の反応温度が高温を必要とするため、分解が著しく、色相が黄変したり褐色化したりするという問題があった。
【0020】
一方、特開平7−224163号において、ポリコハク酸イミドをジアミンにより架橋し、残りのイミド環をアルカリで加水分解して塩水吸水能の高い吸水性樹脂を得る方法が開示されている。同様に、無水ポリ酸性アミノ酸のポリアミンによる部分架橋物をアルカリ金属化合物で加水分解する方法を、特開平7−309943号に開示されている。
【0021】
これらの方法は、ポリコハク酸イミドを均一に、効率良く架橋し、かつ架橋度の制御が容易であるため、高い収率で高い吸水能を有する吸水性ポリマーを得ることができ、工業的に適した製造方法である点で極めて有意義である。
【0022】
しかしながら、ポリコハク酸イミドをジアミンで架橋するには、ポリコハク酸イミドを非プロトン性極性溶媒に溶解するため、有機溶媒を取り扱う設備や、有機溶媒の回収が必要であり、さらなる改良が望まれていた。
【0023】
また、本発明者らは、特開平11−060729号及び特願平11−242011号において、ポリアミノ酸とポリエポキシ化合物、ポリオール、ポリチオール、ポリイソシアナート、ポリアジリジン、多価金属等の架橋剤を反応させる架橋ポリアミノ酸の製造方法について開示した。
【0024】
これらの方法は、ポリコハク酸イミドを溶解させるための非プロトン性極性溶媒を必要とせず、かつ均一な架橋を行なうことができるという特徴がある。
【0025】
また、特開平10−298282号には、2〜40質量%の濃度の水溶性ポリアミノ酸水溶液中で、ポリグリシジル化合物又はエピハロヒドリン変性アミノ化合物で架橋するポリアミノ酸系吸水性樹脂の製造方法が開示されている。
【0026】
しかしながら、この公報に記載された製造方法では、反応サイトの数が少なく、かつ、高濃度の反応ができないため架橋反応速度が遅く、反応に長時間を要するため副反応のポリマー主鎖の切断、架橋剤のエポキシ基の開裂が起るため、収率が低く、得られたポリマーの性能(吸水能)が非常に低かった。また副反応以外にも、この公報にも記載されているように、ポリマーの極性が高いため、ポリマー濃度が高くなるとポリマー同士の絡まりが多く存在したり、ポリマー鎖の収縮が起こるため、架橋反応がうまく進行しないことが理由として挙げられる。
【0027】
すなわち、この製造方法では、架橋反応が効率的に進まないため、反応に要する時間が長く、ポリアスパラギン酸が加水分解を受け、主鎖が切断したりして、得られる吸水性樹脂の物性が充分でなかったり、水可溶分が多量に発生したり、収率が低いという、多くの問題点を含んでいた。特に、吸水能が低いために、紙おむつ等の衛生用品等には使用が困難であった。
【0028】
また、この製造方法では、架橋反応をうまく進行するためには、高分子量のポリアスパラギン酸を必要とする。そのため、その前駆体であるポリコハク酸イミドをジシクロヘキシルカルボジイミド等により処理することが必要となる等、工程数も増加し、取り扱いの操作も煩雑であった。
【0029】
また、特開平10−330478号では、ポリアミノ酸の水性溶液と、ジグリシジル化合物又はジアジリジン化合物を接触させ、凍結乾燥等により水を除き、熱処理する架橋ポリアミノ酸の製造方法が開示されている。しかしながら、凍結乾燥には、莫大なエネルギーを要したり、特殊な設備を必要としたり、設備上、工業的に不経済であるという問題があった。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した各従来技術の課題を解決する為になされたものである。
【0031】
すなわち、本発明が解決しようとする課題の一つは、生産性が高く、生分解性を有する架橋重合体を提供し、並びにそれを安価に製造することができる方法を提供することにある。
【0032】
また、本発明が解決しようとする課題の一つは、架橋重合体の性能、特に保水力や吸水量などの吸水性樹脂としての性能をさらに改善することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基を含むペンダント基を繰返し単位中に有するポリアスパラギン酸誘導体などの特定構造の重合体を、多価エポキシ化合物にて架橋することにより、吸水性樹脂として高い性能を示す架橋重合体が効率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
すなわち本発明は、重合体中の下記一般式(1a)で表される繰り返し単位、及び/又は、下記一般式(1b)で表される繰り返し単位を、多価エポキシ化合物にて架橋反応させた架橋重合体である。
【0035】
【化3】
【0036】
[式(1a)(1b)中、Rは、カルボキシル基を有するアルキレン、アラルキレン、フェニレン又はナフチレン基からなるペンダント基であり、Xは、NH、N(R')(R'はアルキル基、アリール基又はアラルキル基)、O又はSであり、nは1又は2である。]
【0037】
さらに本発明は、重合体中の前記一般式(1a)で表される繰り返し単位、及び/又は、前記一般式(1b)で表される繰り返し単位を、多価エポキシ化合物にて架橋反応させることを特徴とする架橋重合体の製造方法である。
【0038】
なお、本発明において「カルボキシル基」とは、塩を形成した状態の場合も含む意味とする。
【0039】
【発明の実施の形態】
(1)架橋重合体の構造
本発明の架橋重合体は、例えば、前記一般式(1a)(1b)で表される繰り返し単位を有する酸性ポリアミノ酸誘導体等の分子間を、架橋剤である多価エポキシ化合物により橋かけ結合させる手法等により得られるものである。
【0040】
すなわち、本発明の架橋重合体の分子構造は、特定の酸性ポリアミノ酸誘導体等で構成されたポリマー基本骨格、及び、多価エポキシ化合物で構成された架橋部分からなる。以下、これらを2つに分けて説明する。
【0041】
(1−1)架橋重合体のポリマー基本骨格
本発明の架橋重合体のポリマー基本骨格は、一般式(1a)(1b)で表されるように、酸性ポリアミノ酸のうちのポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸からなる。本発明では、結合の様式に関わらず、ポリマー中のアスパラギン酸からなる単量体部分を「ポリアスパラギン酸残基」、ポリマー中のグルタミン酸からなる単量体部分を「ポリグルタミン酸残基」、両者を併せて「酸性ポリアミノ酸残基」と呼ぶ。
【0042】
これらは、他のアミノ酸を繰り返し単位として含んでいても構わない。他のアミノ酸成分の具体例としては、例えば、20種類のタンパク質構成アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。また、重合体は、アミノ酸以外の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0043】
共重合体の繰り返し単位の例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等の脱水縮合物が挙げられる。
【0044】
また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物、多価金属等の脱水縮合物、付加物、置換体が挙げられる。
【0045】
共重合体である場合は、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフト・コポリマーであっても構わない。これらの中で、重合度が高くなり、生分解性にも優れる点から、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸を基本骨格とした場合が好ましく、さらに工業的生産に適したポリアスパラギン酸のホモポリマーが特に好ましい。
【0046】
ポリマー基本骨格がポリアスパラギン酸の場合は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。ポリグルタミン酸の場合は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、γ結合である場合がある。
【0047】
すなわち、ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単量体のアミノ基等と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。ポリグルタミン酸及びその共重合体の場合は、グルタミン酸もしくは共重合体単量体のアミノ基等と、グルタミン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基と結合した場合がγ結合である。このポリアスパラギン酸の場合のα結合とβ結合、ポリグルタミン酸の場合のα結合とγ結合の結合様式は特に限定されない。
【0048】
(1−2)重合体の側鎖構造
本発明に用いる重合体は、少なくとも、ポリアミノ酸残基のカルボキシル基がさらに誘導された前記一般式(1a)で表される繰り返し単位、及び/又は、前記一般式(1b)で表される繰り返し単位を持つ。すなわち、この重合体の側鎖は、ポリマー主鎖である酸性ポリアミノ酸のカルボキシ基が誘導されて、特定のペンダント基(R)を持つ構造をとる。
【0049】
一般式(1a)(1b)の繰り返し単位の数は、一般には、ポリマー基本骨格における重合体の分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、40〜100%が好ましく、60〜100%がより好ましく、80〜100%が特に好ましい。
【0050】
一般式(1a)(1b)において、その側鎖構造は、ポリマー主鎖と結合するXと、特定の官能基を有するペンダント基(R)とからなる。ペンダント基(R)は、カルボキシル基を有する基である。Xは、−NH−、−N(R')−、−O−、−S−から選ばれる結合である。ここでR'は、例えば、炭素数1乃至16の分岐していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基である。
【0051】
側鎖基は、ポリマー主鎖のアミド結合に対して、アスパラギン酸残基の場合は、α位に置換されていても、β位に置換されていても構わず、グルタミン酸残基の場合は、α位に置換されていても、γ位に置換されていても構わない。
【0052】
一般式(1a)(1b)において、ペンダント基(R)は、上述したようにカルボキシル基を有するが、それ以外の部分は主に炭素と水素から成る。本発明では、それ以外の部分を便宜的に炭化水素基と呼ぶ。この炭化水素基は、アルキレン、アラルキレン、フェニレン、又はナフチレン基である。これらは直鎖であっても分岐構造であっても、環状構造であっても構わない。
【0053】
この炭化水素基は、その炭素原子の一部をO、N、S、P、B、Si等を含む置換基にて置換されていても構わない。すなわち、環構造の場合は、炭素原子の一部をO、N、S、P、B、Si等で置換されていてもよく、また、O、N、S、P、B、Si等が導入された、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ウレア基、チオエステル基、チオカルボニル基、スルホン基、スルホニル基、スルホンアミド基、二級アミノ基、三級アミノ基、アミド基、ホスホン基、ホスホンアミド基等の置換基にて置換されていても構わない。
【0054】
また、炭化水素基に対するカルボキシル基の置換位置も特に限定されない。炭化水素基の具体的な例を以下に挙げる。なお、以下の例は、便宜的に、ペンダント基の炭化水素基の部分を例示したものである。実際のペンダント基は、これらの炭化水素基の水素が特定官能基(カルボキシル基)で置換された構造を有する。
【0055】
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ツジャニル基、カラニル基、ボルナニル基、ノルボルナニル基、ピナニル基、デカリニル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクタテトラエニル基、フルベニル基等のシクロポリエニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等のアラルキル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチルオキシエチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘプチルオキシエチル基、オクチルオキシエチル基、デシルオキシエチル基、ウンデシルオキシエチル基、ドデシルオキシエチル基、トリデシルオキシエチル基、テトラデシルオキシエチル基、ペンタデシルオキシエチル基、ヘキサデシルオキシエチル基、ヘプチルデシルオキシエチル基、オクチルデシルオキシエチル基等のアルコキシアルキル基、フェノキシエチル基等のアリールオキシアルキル基、ベンジルオキシエチル基、トリルオキシエチル基等のアラルキルオキシアルキル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、プロピルチオエチル基、ブチルチオエチル基、ペンチルチオエチル基、ヘキシルチオエチル基、ヘプチルチオエチル基、オクチルチオエチル基、ノニルチオエチル基、デシルチオエチル基、ウンデシルチオエチル基、ドデシルチオエチル基、トリデシルチオエチル基、テトラデシルチオエチル基、ペンタデシルチオエチル基、ヘキサデシルチオエチル基、ヘプチルデシルチオエチル基、オクチルデシルチオエチル基等のアルキルチオアルキル基、フェニルチオエチル基、トリルチオエチル基等のアリールチオアルキル基、ベンジルチオエチル基等のアラルキルチオアルキル基、メチルオキシカルボニルエチル基、エチルオキシカルボニルエチル基、プロピルオキシカルボニルエチル基、ブチルオキシカルボニルエチル基、ペンチルオキシカルボニルエチル基、ヘキシルオキシカルボニルエチル基、ヘプチルオキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルエチル基、ノニルオキシカルボニルエチル基、デシルオキシカルボニルエチル基、ウンデシルオキシカルボニルエチル基、ドデシルオキシカルボニルエチル基、トリデシルオキシカルボニルエチル基、テトラデシルオキシカルボニルエチル基、ペンタデシルオキシカルボニルエチル基、ヘキサデシルオキシカルボニルエチル基、ヘプチルデシルオキシカルボニルエチル基、オクチルデシルオキシカルボニルエチル基等のアルキルオキシカルボニルアルキル基、メチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、プロピルカルボニルオキシエチル基、ブチルカルボニルオキシエチル基、ペンチルカルボニルオキシエチル基、ヘキシルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシエチル基、オクチルカルボニルオキシエチル基、ノニルカルボニルオキシエチル基、デシルカルボニルオキシエチル基、ウンデシルカルボニルオキシエチル基、ドデシルカルボニルオキシエチル基、トリデシルカルボニルオキシエチル基、テトラデシルカルボニルオキシエチル基、ペンタデシルカルボニルオキシエチル基、ヘキサデシルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルデシルカルボニルオキシエチル基、オクチルデシルカルボニルオキシエチル基等のアルキルカルボニルオキシアルキルオキシ基、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、インダニル基、ナフチル基、1,4−ジヒドロナフチル基、テトラリニル基、ビナフチル基、アズレニル基、ビフェニレニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテンニル基、アセアントレニル基、トリフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ルビセニル、コロネル基、オパレニル基等のアリール基、オキセタニル基、チエタニル基、アゼチジン基、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキソラニル基、チオフェニル基、チオラニル基、ピロール基、ピロリン基、ピロリジン基、ピラゾール基、ピラゾリン基、ピラゾリジン基、イミダゾール基、イミダゾリン基、イミダゾリジン基、トリアゾール基、テトラゾール基、イソオキサゾール基、オキサゾール基、フラザン基、イソチアゾール基、チアゾール基、ピラニル基、オキサニル基、ジオキサニル基、チアニル基、ジチアニル基、ピリジニル基、ピペリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピペラジニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、オキサジニル基、モルホリニル基、チアジニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドール基、インドリン基、イソインドール基、イソインドリン基、インドリジン基、インダゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾチアゾリン基、プリン基、クロメン基、クロマン基、イソクロメン基、イシクロマン基、キノリン基、イソキノリン基、キノリジン基、シンノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、フタラジン基、ナフチリジン基、プテリジン基、ジベンゾフラン基、カルバゾール基、キサンテン基、ジベンゾチオピラン基、アクリジン基、チアントレン基、フェナジン、フェノキサジン基、フェノキサジン基、フェノチアジン基、フェナントリジン基、フェナントロリン、ベンゾシンノリン基、キヌクリジン基等の複素環、ベンゾキノン基、トロポロン基、ベンゾフェノン基、ベンジジン基、ナフトキノン、フェナントレンキノン基、アントロン基、アントラキノン基、ベンゾアントロン基、ピロン基、ピラゾロン基、ヒダントイン基、バルビツル酸基、フタリド基、クマリン基、イソクマリン基、クロモン基、フラボン基、キサンチン基、尿酸基、トロポン基等の環式基等が挙げられる。
【0056】
ペンダント基(R)が有するカルボキシル基の対イオンとしては、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等が挙げられる。
【0057】
これらの中で、高い親水性を発現するためには、対イオンの分子量は小さい方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、刺激性が低い方が良く、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウムが好ましい。
【0058】
重合体の繰返し単位は、前記一般式(1a)(1b)で表されるように、カルボキシル基を有するペンダント基(R)を含むものであるが、さらに、ペンダント基(R)を含まない単純酸性ポリアスパラギン酸や、単純酸性ポリグルタミン酸の繰返し単位を分子内に含んでいても構わない。また、カルボキシル基の代わりに、他の親水性の置換基を有するペンダント基を含む繰り返し単位を分子内に含んでいても構わない。他の親水性の置換基としては、例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基等の酸性基、四級アンモニオ基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。また、それ以外にも、酸性アミノ酸残基として、ホルミル基、カルボン酸アルキルアミド基、カルボン酸ジアルキルアミド基、チオカルボン酸基が挙げられる。
【0059】
(1−3)架橋重合体の架橋構造
本発明の架橋重合体の架橋構造は、重合体の前記一般式(1a)(1b)中のRが有するカルボキシル基と、多価エポキシ化合物が有する2以上のエポキシ基とが架橋反応して生成する。
【0060】
カルボキシル基とエポキシ基が反応すると、エステル基によって共有結合した構造が得られる。すなわち、エポキシ基は、カルボキシル基によって攻撃を受けた側はエステルとなり他方の炭素は水酸基を有することになる。エポキシ基のどちら側にエステル基が生成するかは特定されず、通常、両方が混在したものとなる。すなわち、重合体のカルボキシ基以外の部分をR、多価エポキシ化合物のエポキシ基以外の部分をR'とすると、以下のように表わされる。
【0061】
【化4】
ここで、多価エポキシ化合物(架橋剤)が有する2以上のエポキシ基が反応して重合体と結合することにより、架橋構造が生成する。ただし、本発明の架橋重合体は、多価エポキシ化合物の1つのエポキシ基のみが反応してペンダント構造となった部分を含んでいても構わない。また、多価エポキシ化合物が3官能以上であり、かつ未反応部分を含んでいても構わない。本発明の架橋重合体中の架橋部分及びペンダント部分の構造において、エポキシ基が反応した部分あるいはエポキシ基以外の構造については、次に述べる『(2)架橋重合体の製造方法』の欄中の架橋剤の項において説明する。
【0062】
(2)架橋重合体の製造方法
本発明の架橋重合体の製造方法は、重合体中の前記一般式(1a)で表される繰り返し単位、及び/又は、前記一般式(1b)で表される繰り返し単位を、多価エポキシ化合物にて架橋反応させることを特徴とする方法である。特にその架橋反応は、水中にて行うことが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法に使用する一般式(1a)(1b)の繰返し単位を有する重合体は、代表的には、酸性ポリアスパラギン酸誘導体である。このポリアスパラギン酸誘導体の製造方法は特に限定されないが、工業的生産に適したポリコハク酸イミドを誘導体化したものを用いることが好ましい。そこで、以下の説明においては、ポリコハク酸イミドの製造方法、酸性ポリアミノ酸誘導体の製造方法、重合体の架橋方法、という3つの項に分けて、工程順に記述する。
【0064】
(2−1)ポリコハク酸イミドの製造方法
ポリコハク酸イミドの製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、J.Amer.Chem.Soc,80,3361(1958年)に、アスパラギン酸を原料として200℃で数時間加熱縮合させる方法が開示されている。また、特公昭48−20638号には、85%燐酸を触媒としてロータリーエバポレーターを用いて薄膜状で反応を行うことにより、高分子量のポリこはく酸イミドを得る方法が開示されている。また、米国特許第5,057,597号には、工業的にポリこはく酸イミドを得る方法として、流動床によりポリアスパラギン酸を加熱縮合させる方法が開示されている。
【0065】
その他、P.Neriらの方法(Journal of MedicinalChemistry、1973年16巻8号)、米国特許5,142,062号、特開平7−216084号、特開平8−231710号、米国特許4,363,797号、特公昭52−8873号、特開平7−1966796号、特開平8−176297号、特開平9−143265号等に記載されている方法を採用することができる。
【0066】
さらに高分子量のポリコハク酸イミドが必要な場合には、上記各方法等で得られたポリコハク酸イミドを、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤で処理することもできる。
【0067】
ポリコハク酸イミド製造の原料としては、アスパラギン酸の他に、アスパラギン、アスパラギン酸エステル、アスパラギン酸ジエステル、マレアミド、マレイミド、マレイン酸とアンモニア、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アミド、フマル酸とアンモニア、フマル酸アンモニウム塩等を使用することができる。これらの原料は、単独で又は二種類以上の混合物として使用することができる。
【0068】
ポリコハク酸イミドとしては、アミノ酸等の共重合可能な2官能以上の単量体由来の繰り返し単位を主鎖に含む重合体であってもよい。
【0069】
アミノ酸の具体例としては、例えば、以下の▲1▼〜▲4▼に示す20種類のアミノ酸を挙げることができる。
▲1▼ 非極性すなわち疎水性のR基をもつアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン
▲2▼ 極性だが電荷のないアミノ酸:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン
▲3▼ 正電荷をもつR基を有するアミノ酸:リジン、ヒスチジン、アルギニン
▲4▼ 負電荷をもつR基を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸。
【0070】
アミノ酸の他の具体例としては、例えば、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等が挙げられる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0071】
また、その他の共重合可能な2官能以上の単量体の例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等が挙げられる。また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物、多価金属等が挙げられる。
【0072】
ポリコハク酸イミドが共重合体である場合は、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフト共重合体であっても構わない。
【0073】
(2−2)酸性ポリアミノ酸誘導体の製造方法
本発明において、架橋反応に用いる酸性ポリアミノ酸誘導体は、前記一般式(1a)(1b)の繰返し単位を有する重合体、すなわち酸性ポリアミノ酸等にペンダント基が導入された構造の重合体である。したがって、酸性ポリアミノ酸誘導体の製造方法においては、重合体へのペンダント基の導入が主要な工程の一つとなる。
【0074】
ただし、酸性ポリアミノ酸誘導体の製造方法は、特に限定されない。例えば、前記『(2−1)ポリコハク酸イミドの製造方法』の欄で説明したポリコハク酸イミドをアミノカルボン酸等で開環する方法、あらかじめ製造した酸性ポリアミノ酸にアミノカルボン酸等を導入する方法等が挙げられる。
【0075】
これらの中では、ポリコハク酸イミドをアミノカルボン酸等で開環する方法が工業的には好ましい。これ以外の方法では、ペンダント基に含まれるカルボキシル基を保護しないと反応を阻害するので、カルボキシル基の保護、脱保護の工程が必要となり、工程数が増えるので好ましくない。
【0076】
(2−2−1)ペンダント基導入反応
重合体にペンダント基を導入する為の方法は特に限定されないが、例えば、ポリコハク酸イミドに、少なくとも1個のカルボキシル基を有する、アミン、アルコール及びチオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させる方法、酸性ポリアミノ酸に、上記化合物を脱水縮合反応させる方法、酸性ポリアミノ酸エステルに、上記化合物をエステル/アミド交換反応させる方法などが挙げられる。なお、使用するポリコハク酸イミドの分子量は特に限定されないが高い方がよく、1万〜100万が好ましく、3万〜20万がより好ましく、5万〜10万が特に好ましい。
【0077】
ペンダント基導入反応に使用する反応試剤は、カルボキシル基を含んでいても、カルボキシル基となりうる置換基(前駆体)を含んだものであっても構わない。本発明では、便宜上、カルボキシル基となりうる置換基を前駆体と呼ぶ。
【0078】
反応試剤の代表例としては、少なくとも1個のカルボキシル基又はその前駆体を持つアミン、チオール、アルコール等が挙げられる。その基本骨格は、一般式(1a)(1b)中のRに相当する。また、ペンダント基導入反応は、1段階でペンダント基(R)を導入してもよいし、一旦ある置換基を導入し、次いでその置換基に別の置換基を反応させてペンダント基(R)とする多段階方式であっても構わない。
【0079】
以下に、ペンダント基を導入する方法の具体例を列挙して説明する。
【0080】
(2−2−2)ポリコハク酸イミドとカルボキシル基を含むアミン等を反応させる方法
ポリコハク酸イミドとカルボキシル基を含むアミン等を反応させる場合、使用する溶媒は特に限定されず、ポリコハク酸イミドもしくはポリコハク酸イミド誘導体を溶解できるもの、もしくはペンダント基となりうる反応試剤を溶解できるものであればよく、化学反応に用いられる一般的な溶媒はいずれも使用できる。
【0081】
特に、酸性基を含む反応試薬は極性が高いので、極性溶媒を用いることが好ましい。極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン等が好ましく、特に水が好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0082】
ポリコハク酸イミドへのペンダント基導入反応時のポリコハク酸イミドの濃度は、特に限定されないが、0.1〜50質量%が好ましく、特に1〜40質量%が好ましい。ペンダント基導入反応は、必要により触媒を用いてもよい。触媒としては、一般的に、塩基触媒が用いられる。
【0083】
塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンモニア等の無機系塩基試剤;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等のアミン;等の有機系塩基試剤が挙げられる。
【0084】
ペンダント基導入反応における反応温度は、特に限定されないが、0〜120℃が好ましく、特に10〜60℃が好ましい。
【0085】
(2−2−3)酸性ポリアミノ酸又はその誘導体とカルボキシル基を有するアミン等を脱水縮合反応させる方法
酸性ポリアミノ酸にペンダント基を導入する方法としては、反応試剤と酸性ポリアミノ酸を脱水縮合する方法が一般的である。
【0086】
しかし、酸性基を有するペンダント基を導入する場合は、脱水縮合の反応条件によっては、酸性基そのものがアミン等と反応してしまう場合がある。この場合、側鎖基の伸長が起こるが、その結果、親水性基の割合が少なくなる。したがって、場合によっては酸性基を保護する方法を取る必要がある。
【0087】
脱水縮合を行う場合は、生成する水を溶媒との共沸によって除く方法、脱水剤としてモレキュラシーブを加えておく方法、脱水縮合剤を用いて反応させる方法、酵素を用いる方法のいずれの方法をとっても構わない。
【0088】
脱水縮合剤の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等のカルボジイミド、1−アシルイミダゾリド、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、トリフェニルホスフィン/四塩化炭素、トリフェニルホスフィン/ブロモトリクロロメタン、フェニルホスホン酸ビス(2−ニトロフェニルエステル)、シアノホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスホロアジド等の含リン化合物、2−フルオロ−1−エチルピリジウム・テトラフルオロボレート、トリフェニルホスフィン/ビス(ベンゾチアゾール)ジスルフィド、トリブチルホスフィン/ビス(ベンゾチアゾール)ジスルフィド等の酸化還元縮合剤などが挙げられる。
【0089】
脱水縮合時の反応温度は、20〜250℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。
【0090】
また、酸性ポリアミノ酸をエステル化、アミド化、又は、チオエステル化した酸性ポリアミノ酸の誘導体を、脱水縮合反応させる方法を用いても構わない。このエステル化等には、従来より知られる有機化学上の通常の反応条件を用いることができる。例えば、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基と、エステル、アミド又はチオエステルを形成する為の試薬を反応させてもよいし、あらかじめ酸性ポリアミノ酸を誘導体として反応性を高めてから、エステル、アミド又はチオエステルを形成する為の試薬と反応させてもよい。
【0091】
より具体的には、例えば、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、アルコール、アミン、チオール等で脱水縮合反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、酸無水物、酸ハロゲン化物、酸アジド等にして活性化して、アルコール、アミン、チオール等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、活性化したアルコール(例えば、アルコールのハロゲン化物、エステル、スルホン酸エステル、硫酸エステル)、活性化したアミン(例えば、アミンのケイ素誘導体)と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、エポキシ化合物、イソシアナート化合物、アジリジン化合物、アルキル金属等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を塩として、ハロゲン化物等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を活性なエステル基として、エステル交換、アミド交換によって反応させる方法等がある。
【0092】
(2−2−4)酸性ポリアミノ酸エステルとカルボキシル基を有するアミン等をエステル/アミド交換反応させる方法
酸性ポリアミノ酸エステルを反応させる方法としては、特に限定されないが、有機溶媒中で酸性ポリアミノ酸エステルと反応試剤を反応させる方法が一般的である。用いるエステルは、メチル、エチル等の分子が小さいアルコール成分、クロロメチル、ジクロロメチル等の電子吸引基を含むアルコール成分、N−ヒドロキシコハク酸イミド等のアルコールでエステル化したものが挙げられる。
【0093】
場合によっては、酸触媒、塩基触媒等の触媒を用いても構わない。また、反応系が不均一になる場合、もしくは用いる原料が不溶性の場合、相間移動触媒を用いても構わない。また、この方法においても、エステル/アミド交換反応の反応条件によっては、酸性基そのものがアミン等と反応して、(2−2−3)の方法の場合と同様に、側鎖基の伸長が起こり、親水性基の割合が少なくなる場合がある。
【0094】
(2−2−5)前駆体を用いる方法
ペンダント基導入反応においては、カルボキシル基の前駆体を有するペンダント基を上記の各方法に従い導入した後、さらにその前駆体をカルボキシル基にすることができる。前駆体を含むペンダント基を導入した後の反応生成物は、系外に取り出しても、必要により、そのまま連続的にカルボキシル基への置換反応、カチオン化反応を行ってもよい。ここで、系外に反応生成物を取り出す場合は、場合によっては反応生成物を乾燥して用いても構わない。
【0095】
以上説明した各方法(2−2−2)乃至(2−2−5)のうち、温和な条件にて効率よく反応できる方法が好ましく、特に、ポリコハク酸イミドとカルボキシル基を含むアミン等を反応させる方法、前駆体を含むペンダント基を導入し、さらに前駆体をカルボキシル基へ誘導化する方法が好ましい。
【0096】
(2−2−6)ペンダント基導入後の処理
ペンダント基導入反応、前駆体の特定の官能基への変換反応の終了後の処理は特に限定されず、化合物製造にて用いられる一般的な手法を使用することができる。例えば、反応終了後の反応液から生成重合体を単離する方法は、実質的に、反応生成物を所望の純度で単離できる方法であればよく、従来より知られる何れの方法によってもよい。一般的には、濃縮、再結晶、再沈澱等の単離操作を採用できる。
【0097】
例えば、反応終了後、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液に、過剰の貧溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール)を加え、析出した反応生成物を、デカンテーション、濾過又は吸引濾過等により単離し、沈殿物を溶解しない貧溶媒で充分に洗浄し、乾燥する方法が挙げられる。また、その他の例として、反応終了後、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液を、前記と同じ過剰の貧溶媒に加え、析出した反応生成物の沈殿物を、前記と同様にして単離し、洗浄し、乾燥する方法が挙げられる。
【0098】
樹脂の乾燥温度は、特に限定されないが、一般的には、20〜150℃が好ましく、特に40〜100℃が好ましい。樹脂の乾燥方法も特に限定されず、熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等、各種の手法により乾燥できる。
【0099】
また、酸性ポリアミノ酸誘導体のカルボキシル基は、アルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩を形成しており、反応液はアルカリ性であるが、必要に応じて、塩酸、硫酸等の鉱酸、酢酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸を加えることにより、pHを調節することができる。
【0100】
また、イオン交換樹脂を用いて酸性ポリアミノ酸誘導体の塩として単離することもできる。但し、酸性ポリアミノ酸誘導体は、酸性側において加水分解し易いので、単離する場合はアルカリ性側において行う方が好ましい。
【0101】
(2−3)酸性ポリアミノ酸誘導体の架橋方法
架橋重合体を得る為の架橋反応におけるポリマー濃度は特に限定されない。ただし効率的に架橋反応を行う為には、高濃度において反応を行う方が好ましい。ここで、ポリマー濃度とは、架橋反応に用いる全試剤の合計質量(水や溶剤を含む)に対する、酸性ポリアミノ酸誘導体の質量をいう。
【0102】
好適なポリマー濃度は、酸性ポリアミノ酸誘導体の種類によって変わるが、一般的には、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、40〜60質量%が特に好ましい。これら範囲の上限値は、ポリマーが溶解せず、攪拌が困難なばかりか、均一な架橋反応ができず、結果として水可溶成分が多くなり、収率、吸水能ともに低下する等の問題を防ぐ点で意義が有る。一方、下限値は、反応速度が遅いため、ポリマー主鎖の切断等の副反応が起こり、結果として水可溶成分が多くなり、収率、吸水能ともに低下する等の問題を防ぐ点で意義が有る。
【0103】
ポリマーの溶解度は、その分子量、対イオン、中和度に関係する。一般に、高分子量のポリマーは溶解度が小さく、低分子量のポリマーは溶解度が大きい。また、対イオンは一価のイオンであり、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の比較的小さいイオンは溶解度が大きい。また、中和度は、フリーのカルボン酸より、塩を形成した方が溶解度が大きくなる。本発明では、溶解度より低い濃度で架橋反応を行うことが好ましい。例えば、重量平均分子量6万の酸性ポリアミノ酸誘導体の場合、ポリマーの濃度は40〜60質量%が好ましい。
【0104】
架橋反応において、反応温度、pH、架橋剤(本発明では多価エポキシ化合物)の量等は重要である。これらの組み合わせによって、好ましい反応条件は異なる。
【0105】
例えば、本発明においては架橋反応を酸性側にて行うが、ポリマーと架橋剤のエポキシ基との架橋反応は、高温かつ低いpHの条件で速くなる。しかし、高温かつ低いpHの条件では、酸性ポリアミノ酸の主鎖の加水分解反応と、架橋剤のエポキシ基の加水分解反応も速くなってしまう。すなわち、高温かつ低いpHの条件では、架橋反応と副反応(酸性ポリアミノ酸主鎖の加水分解反応、架橋剤のエポキシ基の開裂反応)が同じように促進されるのである。
【0106】
したがって、本発明において架橋反応は、副反応が起こり難い温和な条件にて行うか、あるいは架橋反応を短時間にて進行可能な条件を採用しかつ副反応を抑えるか、何れかの手法をとることが好ましい。後者の場合、一般的に架橋剤を多く使用することが、架橋反応に有効である。
【0107】
先に述べた通り、架橋反応は水中にて行なうことが好ましいが、この場合、水溶液のpHによって、架橋反応に関与するカルボキシル基の量が決まる。水溶液のpHは3〜7が好ましく、4〜6がより好ましく、4.5〜5.5が特に好ましい。
【0108】
架橋反応は、ポリマー中のカルボキシル基と架橋剤の濃度に大きく依存する。ポリマーの濃度が低過ぎる場合、上述の好ましいpH範囲(pH3〜7)であっても反応に関与するカルボキシル基の数が少なく、架橋反応時間も長くなり、加水分解反応も進行するので架橋反応に不利である。ポリマーの濃度が高い場合は、上述の好ましいpH範囲(pH3〜7)において、反応に関与するカルボキシル基の数が少なくても、濃度が高いので架橋反応時間が短くなり、加水分解反応も進行しないので架橋反応に有利である。
【0109】
また、架橋反応を行なう際の水溶液のpHが低過ぎると、ポリアスパラギン酸等の主鎖が切断し、架橋剤量が多く必要になり不経済であり、得られる吸水性樹脂の吸水量も低くなる傾向にある。逆に、pHが高過ぎると、ポリマーのカルボキシル基と架橋剤のエポキシ基の反応性が低くなり、架橋反応が実質的に進行しなくなる傾向にある。
【0110】
ポリマーのカルボキシル基は、通常は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩として中和されていることが好ましい。例えば、ポリアスパラギン酸等のカルボキシル基の中和度を変えることにより、反応液のpHを変えることができる。また、架橋反応後に、酸あるいはアルカリを加え、架橋重合体の使用目的に適したpHに調整することができる。例えば、紙おむつ等の衛生用品では、pHが6〜8であることが好ましい。
【0111】
架橋反応を行なう際の温度は、10〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、40〜60℃が特に好ましい。これら反応温度の範囲の上限値は、主鎖が切断され、架橋剤が多量に必要であったり、得られる吸水性樹脂の性能が低いという問題を防ぐ等の点で意義が有る。また、下限値は、ポリマーと架橋剤の反応が遅くなり、工業的に不経済になるという問題を防ぐ等の点で意義が有る。そして、上記好適な範囲内において、比較的高い反応温度では、架橋剤量が多い場合、架橋反応時間が短くなり、ポリマー鎖の切断等の副反応を抑えることができるので好ましい。一方、上記好適な範囲内において、比較的低い温度では、副反応の進行が遅いので架橋剤が少なくても架橋反応が進行し、架橋剤量を多くすることで架橋反応時間を短くすることができる。どちらかを選択するかについては、反応装置等を考慮した架橋反応時間の設定等によって、適宜選択すればよい。
【0112】
本発明に用いる多価エポキシ化合物は、架橋剤として作用する。その具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル等の(C2−C6)アルカンポリオール及びポリ(アルキレングリコール)のポリグリシジルエーテル;ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、エリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;1,2,3,4−ジエポキシブタン、1,2,4,5−ジエポキシペンタン、1,2,5,6−ジエポキシヘキサン、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,4−及び1,3−ジビニルベンゼンエポキシド等の(C4−C8)ジエポキシアルカン及びジエポキシアルアルカン;4,4'−イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びヒドロキノンジグリシジルエーテル等の(C6−C15)ポリフェノールポリグリシジルエーテル;等が挙げられる。
【0113】
架橋剤の使用量は、ポリマーの官能基を100モルとした場合、好ましくは0.1〜30モル、より好ましくは1〜15モル、特に好ましくは3〜8モルである。上記各範囲の上限値は、経済性と、架橋度が高くなりすぎて吸水量が低くなったり、未反応の架橋剤が残存したりすること等を防止する点で意義が有る。一方、下限値は、十分に架橋することができず、架橋反応時間が長くなったり、吸水量が低くなったり、水可溶成分が多くなったり、収率が低下したりすること等を防止する点で意義が有る。
【0114】
架橋反応時間は、反応温度、反応濃度、架橋剤の使用量により異なる。これら反応条件によって調整可能であるが、通常は、1分〜20時間である。さらに反応装置にもよるが、5分〜10時間が好ましく、5分〜5時間がより好ましく、5分〜1時間が特に好ましい。
【0115】
(2−4)架橋重合体の後処理
本発明の架橋重合体の架橋反応後の後処理については、特に限定されない。例えば、中和、塩交換、乾燥、精製、造粒、表面架橋処理等の処理を、必要に応じて行えばよい。以下、特に中和、塩交換、乾燥の処理について説明する。
【0116】
架橋重合体の中和処理は、必要に応じて行えばよい。この中和処理により、架橋重合体の分子内に存在するカルボキシル基を塩又はフリーのカルボン酸にすることができる。すなわち、酸を用いることでポリマー中のカルボン酸塩をフリーのカルボン酸に変えることができ、逆に、アルカリを用いることでポリマー中のフリーのカルボン酸をカルボン酸塩に変えることができる。
【0117】
この中和度は特に限定されないが、一般的には架橋重合体の分子内の全カルボキシル基の総数を基準として、塩を形成するカルボキシル基の割合は、0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましい。
【0118】
酸の具体例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ベンゼンホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。
【0119】
アルカリの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等の有機カルボン酸アルカリ金属塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン等が挙げられる。
【0120】
中和処理により、架橋重合体の分子内に存在するカルボキシル基を塩とした場合、必要に応じて、その塩を他の種類の塩に交換することもできる。
【0121】
この塩交換に使用される試剤の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げることができる。より具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等を例示することができる。
【0122】
これらの中では、その分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位質量当たりの吸水量が小さくなるので、その分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、皮膚刺激性等が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0123】
架橋重合体の乾燥処理の方法は特に制限されない。例えば熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等の公知の手法を挙げることができる。乾燥温度は、一般的には、20〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
【0124】
この乾燥処理を施した架橋重合体に対して、さらに精製処理、造粒処理、表面架橋処理等を施しでもよい。
【0125】
(3)架橋重合体の吸水能
本発明の架橋重合体の吸水能は特に限定されるものではないが、紙おむつ等の衛生用品等に使用する場合、高性能であることが要求される。
【0126】
例えば、ティーバッグ法により測定した1時間での生理食塩水に対する吸水量が、ポリマー質量に対して28〜200倍であることが好ましく、30〜150倍であることがより好ましく、実用的には40〜100倍であることが特に好ましい。また、ティーバッグ法により測定した1時間での蒸留水に対する吸水量が、ポリマー質量に対して200〜1500倍であることが好ましく、300〜1000倍であることがより好ましく、400〜1000倍であることが特に好ましい。吸水量を評価する為のティーバッグ法については、後述の実施例で説明する。
【0127】
また、架橋重合体中に水可溶分が含まれると、吸水量の低下やべたつき等を生じるため、水可溶分は含まれない方が好ましい。すなわち、水可溶分はポリマー質量に対して0〜18質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。
【0128】
架橋重合体の保水能については、遠心脱水法により測定した生理食塩水に対する保水量が、ポリマー質量に対して10〜50倍であることが好ましく、15〜50倍であることがより好ましい。また、遠心脱水法により測定した生理食塩水に対する保水率は、50〜100%であることが好ましく、60〜100%であることがより好ましく、70〜100%であることが特に好ましい。遠心脱水法による保水量と保水率の測定方法については、後述の実施例で説明する。
【0129】
(4)架橋重合体の形状
架橋重合体の形状の具体例としては、不定形破砕状、球状、粒状、顆粒状、造粒状、リン片状、塊状、パール状、微粉末状、繊維状、棒状、フィルム状、シート状等、種々の形状を挙げることができ、用途に応じて好ましい形状を選択できる。また、繊維状基材、多孔質体、発泡体、造粒物等であってもよい。
【0130】
(5)架橋重合体の粒度
架橋重合体の粒度(平均粒子直径)は、特に限定されず、用途に応じて好ましい粒度を選択できる。例えば、紙オムツに用いる場合は、速い吸収速度とゲル・ブロッキングが起こらないことが望まれるので、その平均粒子径は100〜1000μmが好ましく、150〜600μmがより好ましい。また例えば、止水材等の樹脂への練り混みに用いる場合は、その平均粒子径は1〜10μmが好ましく、農園芸用の保水材に用いる場合は、土との分散性を考慮して、100μm〜5mmが好ましい。
【0131】
(6)架橋重合体の使用の形態
架橋重合体の使用の形態は、特に限定されるものではなく、単独でも、他の素材と組み合わせて使用してもよい。
【0132】
例えば、他の樹脂と組合せて用いる場合、熱可塑性樹脂に混練りして射出成形等により成形する方法、構成樹脂のモノマーと架橋重合体及び必要により開始剤を混合後、光又は熱等で重合する方法、樹脂と架橋重合体を溶剤に分散させ、キャストし、溶剤を除去する方法、プレポリマーと架橋重合体を混合後、架橋する方法、樹脂と架橋重合体を混合後、架橋する方法等がある。
【0133】
架橋重合体の成形品としては、特に限定されるものではなく、固形物、シート、フィルム、繊維、不織布、発泡体、ゴム等として使用できる。また、その成形方法も特に限定されるものではない。
【0134】
架橋重合体を他の素材との組み合わせた複合体として用いる場合、その複合体の構造は特に限定されないが、例えば、パルプ層、不織布等にはさみ、サンドイッチ構造にする方法、樹脂シート、フィルムを支持体として多層構造とする方法、樹脂シートにキャストし、二層構造とする方法等により複合体を得ることができる。例えば、架橋重合体をシート状に成形加工すれば、吸水性シート(吸水性フィルムも包含する)が得られる。
【0135】
また架橋重合体は、必要により、1種以上の他の吸水性樹脂と混合して用いてもよい。また必要により、食塩、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物、キレート剤等の有機化合物を添加しても構わない。さらに酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、消臭剤、顔料等を混合しても構わない。
【0136】
架橋重合体は、ゲル状としても、固形物としても使用できる。例えば、農園芸用保水材、切り花延命剤、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤等に使用する場合はゲルとして用い、紙おむつ用吸収体等は固形状として用いる。
【0137】
(7)架橋重合体の用途
架橋重合体の用途は特に限定されず、従来の吸水性樹脂が使用できる用途のいずれにも使用できる。
【0138】
例えば、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、電子機器、光ファイバー等のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤、湿度調整材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0139】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。以下において「部」とは「質量部」を意味する。
【0140】
▲1▼ 重量平均分子量の測定
ポリアスパラギン酸(塩)等の重量平均分子量(Mw)は、ポリエチレンオキサイドを標準とし、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置 :Shodex GPC SYSTEM−11
検出器:Shodex RI SE−61
カラム:Shodex OHpak SB−804
溶媒 :0.1M−KCl水溶液
濃度 :0.1%
注入量:100μl
流速 :1.0ml/min。
【0141】
▲2▼ 吸水量の測定
吸水量の測定は、蒸留水、生理食塩水を対象としてティーバッグ法を用いて行った。すなわち、蒸留水の場合には、乾燥吸水性樹脂約0.05部、生理食塩水の場合には、乾燥吸水性樹脂約0.1部を、不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、20℃における過剰量の蒸留水又は生理食塩水中に浸漬して、該樹脂を1時間膨潤させた後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行い、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量を測定した。同様な操作をティーバッグのみで行った場合をブランクとして、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性樹脂の質量を減じた値を、吸水性樹脂の質量で除して、この値を吸水量(g/樹脂1g)とした。なお、生理食塩水は、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液である。
【0142】
▲3▼ 保水量、保水率の測定
保水量の測定は、生理食塩水を対象として遠心分離器を用いて評価した。すなわち、乾燥吸水性樹脂約0.1部を、不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、20℃における過剰量の生理食塩水が入った遠心脱水器用遠心管に中に浸漬して、該樹脂を1時間膨潤させた後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行い、さらに表面に付着した液を十分量のティッシュペーパーに吸わせ、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量を測定した。同様な操作をティーバッグのみで行った場合をブランクとして、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性樹脂の質量を減じた値を、吸水性樹脂の質量で除して、この値を吸水量(g/樹脂1g)とした。さらに、この液を含む樹脂をティーバッグごと、底にガラスビーズを入れた遠心脱水管に入れ、4000rpmにて10分間遠心脱水器にて遠心分離した。遠心分離後、ティーバッグを引き上げて表面に付着した液を十分量のティッシュペーパーに吸わせ、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量を測定した。同様にブランクについても測定を行ない、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性樹脂の質量を減じた値を、吸水性樹脂の質量で除して、この値を保水量(g/樹脂1g)とした。
【0143】
また保持率については、この測定結果から、保持率(%)=(保水量/吸水量)×100 の式にて算出した。
【0144】
▲4▼ 生分解性の測定
生分解性は、コンポスト法により測定した。コンポスト法は、ASTM D−5338.92の応用であるISO CD 14855に準じて行った。すなわち、まず試験サンプルに含まれる炭素量を元素分析により測定し、次に、15部の試験サンプルを800部のイノキュラムに加え、58℃において40日間生分解を行い、生成した二酸化炭素の量を測定して、試験サンプルに含まれる炭素量を二酸化炭素に換算した量に対する発生二酸化炭素量を生分解率(%)として表した。ここで、生分解性し易いサンプルの中には、イノキュラム中の炭素分までも分解促進するものもあり、この場合100%を超える値となるものもある。
【0145】
[製造例1]
L−アスパラギン酸150部と85%リン酸75部を混合し、ロータリーエバポレーターを用いて20mmHg、200℃で4時間反応させた。反応混合物をジメチルホルムアミド(DMF)1000部に溶解し、水5000部に排出した。得られた沈殿を濾別し洗液が中性になるまで水洗し、60℃で乾燥することにより、Mw9.6万のポリコハク酸イミド108部を得た。
【0146】
[製造例2]
L−アスパラギン酸の反応温度及び時間を、220℃、10時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてMw14.6万のポリコハク酸イミド108部を得た。
【0147】
次に、得られたポリコハク酸イミド100部を、水230部に分散させ、これを20質量%水酸化ナトリウム水溶液206部をpH12以下に保ちつつ滴下して、イミド環を加水分解で開環させることにより、ポリアスパラギン酸水溶液を得た。このポリアスパラギン酸水溶液を、2N塩酸を用いてpH8.7に調整し、メタノール4000部に排出し、沈殿物を濾過し、60℃において乾燥することにより、Mw10.5万のポリアスパラギン酸ナトリウム154部を得た。
【0148】
[実施例1]
製造例1で得たポリコハク酸イミド10部を、水23部に分散させた。この分散液に、β−アラニン9.18部を25質量%水酸化ナトリウム水溶液16.48部に溶解した溶液を滴下し、50℃にて6時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン400部に排出し、上澄み液をデカンテーションにて除いた。この反応物にメタノール200部を入れて固体化させ、吸引濾過して集め、メタノール100部で洗浄し、60℃にて乾燥して重合体17.53部を得た。
【0149】
この重合体10部を蒸留水10部に溶解し、2N塩酸を用いてpH5.0に調整した。さらに、エチレングリコールジグリシジルエーテル2.62部を加えてよく混合した。40℃で9時間反応を行なったところ、反応液はゲル化した。このゲルをミキサーにより細断し、メタノール400部に排出し、沈殿物をメタノール50部で洗浄し、60℃において乾燥することにより、架橋重合体19.98部が得られた。
【0150】
この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して401倍、生理食塩水に対して50倍と高く、さらに保水量は17.7倍、保水率は74%と高かった。また、生分解性は109%であった。
【0151】
[実施例2]
25質量%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、25質量%水酸化カリウム水溶液23.08部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体18.89部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して389倍、生理食塩水に対して46倍と高く、さらに保水量は17.5倍、保水率は73%と高かった。また、生分解性は105%であった。
【0152】
[実施例3]
β−アラニンの代わりに、グリシン7.73部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体18.89部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して415倍、生理食塩水に対して50倍と高く、さらに保水量は17.9倍、保水率は78%と高かった。また、生分解性は106%であった。
【0153】
[実施例4]
β−アラニンの代わりに、4−アミノブタン酸10.63部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体21.70部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して390倍、生理食塩水に対して57倍と高く、さらに保水量は17.2倍、保水率は75%と高かった。また、生分解性は108%であった。
【0154】
[実施例5]
β−アラニンの代わりに、6−アミノカプロン酸13.51部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体24.58部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して390倍、生理食塩水に対して57倍と高く、さらに保水量は17.2倍、保水率は75%と高かった。また、生分解性は108%であった。
【0155】
[実施例6]
β−アラニンの代わりに、6−アミノカプロン酸8.11部を用い、これを25質量%水酸化ナトリウム水溶液9.89部に溶解した溶液を滴下し、50℃にて6時間させて、反応後30℃に冷却し、さらに25質量%水酸化ナトリウム水溶液6.59部をpH11以下で滴下して反応させたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体19.31部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して450倍、生理食塩水に対して54倍と高く、さらに保水量は17.8倍、保水率は78%と高かった。また、生分解性は106%であった。
【0156】
[実施例7]
実施例1で得たポリコハク酸イミドとβ−アラニンの反応物13.00部と、製造例2で得たポリアスパラギン酸ナトリウム6.00部を用い、かつエチレングリコールジグリシジルエーテルの量を2.50部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして架橋重合体19.93部を得た。この架橋重合体の吸水量は、蒸留水に対して548倍、生理食塩水に対して55倍と高く、さらに保水量は20.5倍、保水率は76%と高かった。また、生分解性は100%であった。
【0157】
[比較例1]
製造例1で得たポリコハク酸イミド30部を、DMF120部に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド1.5部を加え、0〜5℃において1時間反応させた後、室温(25℃)において24時間反応させた。反応後、水500部中に排出し、さらに200部の水により3回洗浄し、60℃において乾燥し、Mw20.4万のポリコハク酸イミドを得た。このポリコハク酸イミドを、製造例1と同様にして加水分解して、Mw18.0万のポリアスパラギン酸ナトリウム40部を得た。次いで、このポリアスパラギン酸ナトリウム30部を蒸留水150部に溶解し、イオン交換樹脂を通すことで酸型に変換した。
【0158】
このポリアスパラギン酸30部を蒸留水80部に溶解し、炭酸ナトリウム10.4部を用いて中和した。この水溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル1.72部を加え、40℃において8時間反応させたところ、反応液はゲル化した。このときのポリマー濃度は29.5質量%であった。得られたゲルを実施例1と同様に処理したところ、架橋重合体32部が得られた。
【0159】
この架橋重合体の生分解性は105%と高かった。しかし、その吸水量は、蒸留水に対して125倍、生理食塩水に対して27倍と非常に低かった。また、保水量は8.2倍、保水率は28%と低かった。
【0160】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、生産性が高く、生分解性を有する架橋重合体を提供でき、並びにそれを安価に製造することができる方法を提供できる。また、架橋重合体の性能、特に保水力や吸水量などの吸水性樹脂としての性能をさらに改善することができる。
Claims (10)
- 一般式(1a)及び(1b)中のnが、1である請求項1記載の重合体。
- 一般式(1a)及び(1b)中のXが、NHである請求項1又は2記載の重合体。
- ポリマー基本骨格における重合体の分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、一般式(1a),(1b)で表される繰り返し単位の数が40〜100%である請求項1〜3の何れか一項記載の重合体。
- ティーバッグ法により測定した生理食塩水に対する1時間後の吸水量が、乾燥架橋重合体の質量の30〜150倍である請求項1〜4の何れか一項記載の架橋重合体。
- ティーバッグ法により測定した蒸留水に対する1時間後の吸水量が、乾燥架橋重合体の質量の200〜1500倍である請求項1〜5の何れか一項記載の架橋重合体。
- 架橋反応が、水中にて行われる請求項7記載の架橋重合体の製造方法。
- 架橋反応が行われる水溶液のpHが、3〜7である請求項7又は8記載の架橋重合体の製造方法。
- 架橋反応が行われる水溶液の温度が、10〜100℃である請求項7〜9の何れか一項記載の架橋重合体の製造方法。
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