JP4171100B2 - 架橋ポリコハク酸イミドの製造方法及び架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(生)分解性及び高吸水能を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法、及び、その架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の前駆体として有用な架橋ポリコハク酸イミドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
[吸水性樹脂の技術的背景]
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培、植生シート、種子テープ、流体播種、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、光ファイバー等の電子機器のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪等の幅広い分野に使用されている。
【0003】
また、その薬品徐放性を利用して、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤等の用途にも期待されている。さらにその親水性を利用して湿度調整材、電荷保持性を利用して帯電防止剤等への使用も期待される。
【0004】
[吸水性樹脂に関する先行技術]
このような用途に使用されている吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物(特開昭55−84304号、米国特許4625001号)、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物(特開昭46−43995号)、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体(特開昭51−125468号)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物(特開昭52−14689号)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物(欧州特許0068189号)、カチオン性モノマーの架橋重合体(米国特許4906717号)、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物(米国特許4389513号)などが知られている。
【0005】
ところが、これらの吸水性樹脂は分解性を有しないため、使用後の廃棄が問題である。
【0006】
現状としては、これらの吸水性樹脂は、廃棄時には焼却処理する方法と埋め立てする方法が行われているが、焼却炉で処理する方法では、焼却時に発生する熱による炉材の損傷のほかに、地球の温暖化や酸性雨の原因となることが指摘されている。また、吸水性樹脂を用いた紙おむつ等の廃棄物は水分を多量に含むために燃えにくく、焼却炉の温度を下げるため、800℃以下にて生成し易いダイオキシン発生の原因となることが疑われている。
【0007】
一方、埋め立て処理する方法では、プラスチックは容積がかさばる、腐らないため地盤が安定しない等の問題があるうえ、埋め立てに適した場所がなくなってきたことが大きな問題となっている。
【0008】
すなわち、これらの樹脂は分解性に乏しく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。例えば紙おむつ、生理用品等の衛生材料に代表される使い捨て用途の樹脂の場合、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。また農・園芸用保水材として架橋ポリアクリル酸樹脂を使用した場合、土壌中でCa2+等の多価イオンとコンプレックスを形成し、不溶性の層を形成すると報告されている(松本ら、高分子、42巻、8月号、1993年)。このような層はそのもの自体の毒性は低いと言われているが、自然界には全くないものであり、長期に渡るそれら樹脂の土中への蓄積による生態系への影響は不明であり、十分に調べる必要があり、その使用には慎重な態度が望まれる。同様に非イオン性の樹脂の場合、コンプレックスは形成しないが、非分解性のため土壌中へ蓄積する恐れがあり、その自然界への影響は疑わしい。
【0009】
さらにこれらの重合系の樹脂は、人間の肌等に対して毒性の強いモノマーを使用しており、重合後の製品からこれを除去するために多くの検討がなされているが、完全に除くことは困難である。特に工業的規模での製造ではより困難となることが予想される。
【0010】
[生分解性を有する吸水性樹脂の技術的背景]
一方、近年、「地球にやさしい素材」として生分解性ポリマーが注目されており、これを吸水性樹脂として使用することも提案されている。
【0011】
このような用途に使用されている生分解性を有する吸水性樹脂としては、例えばポリエチレンオキシド架橋体(特開平6−157795号等)、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体(米国特許4650716号)、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体、ポリアミノ酸架橋体などが知られている。この中でポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体は吸水量が小さく、特に生理用品、紙おむつ、使い捨て雑巾、ペーパータオルなどの高い吸水能が要求される製品の素材として使用する場合、適切でない。
【0012】
また、これらの化合物は特殊な菌のみしか生分解することができないので、一般的な条件では生分解は遅かったり、もしくは全く分解しなかったりする。さらに分子量が大きくなると極端に分解性が低下する。
【0013】
また、カルボキシメチルセルロース架橋体、アルギン酸架橋体、デンプン架橋体等の糖類架橋体は、その分子内に強固な水素結合を多く含むために、分子間、ポリマー間の相互作用が強く、そのため分子鎖が広く開くことができず、吸水能は高くない。
【0014】
[ポリアミノ酸系吸水性樹脂の技術的背景]
一方、ポリアミノ酸を架橋して得られる樹脂は生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても酵素作用により消化吸収され、しかも生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされているので、人に対してもやさしい素材である。
【0015】
このような樹脂の記載例として、ポリ−γ−グルタミン酸にγ線を照射して高吸水能を有する樹脂を製造する方法が報告されている(国岡ら、高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年))。しかし、工業的な観点からは、この技術に用いる60Co照射設備は、放射能の遮断を行うためには大がかりな設備が必要であり、その管理にも十分な配慮が必要であるため現実的ではない。また出発物質であるポリグルタミン酸が高価であることも問題点である。
【0016】
また、酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法が報告されている[Akamatsuら、米国特許第3948863号(特公昭52−41309号対応)、岩月ら、特開平5−279416号]。さらに架橋アミノ酸樹脂を吸水性ポリマーに用いる報告がされている(Sikesら、特表平6−506244号;米国特許 第5247068及び同第5284936号、鈴木ら、特開平7−309943号、原田ら、特開平8−59820号)。
【0017】
しかしいずれの報告の場合も、これらの樹脂は吸水性や塩水吸水性が十分でなく、実用的ではなかった。
【0018】
[本発明者らの技術的思想の背景]
本発明者らは、特開平7−224163号に記載されているように、ポリコハク酸イミドを架橋剤と反応させ、残りのイミド環を加水分解することにより、塩水吸水能の高い架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する技術について開示した。
【0019】
また、本発明者らは、特開平9−169840号に記載されているように、ポリコハク酸イミドを架橋した後、水混和性有機溶剤と水との均一な混合溶媒中で残りのイミド環を加水分解し、これにより塩水吸水能の高い架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する技術について開示した。
【0020】
これらの公報中において、本発明者らは、架橋剤として用いる多価アミンの中で、リジン、オルニチン等が好ましいと記載した。これは、残存する未反応の架橋剤、分解物の安全性の点を考慮したものである。しかし、これら公報中に具体的に記載された塩基性アミノ酸は比較的反応性に乏しく、また、それらのエステルを使用すると反応性が向上するが、エステル自身のコストが高いことが問題であった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、上記のような従来の問題点を解決し、安全性、反応性に優れかつ安価な架橋剤を用いて、架橋ポリコハク酸イミドを高い生産性で製造できる方法を提供することにあり、また、この架橋ポリコハク酸イミドを用いて生分解性を有しかつ優れた吸水能を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を高い生産性で製造できる方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、架橋剤として、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸をそのカルボン酸塩として用いることで、効率よく、ポリコハク酸イミドと架橋反応できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
すなわち、本発明は、ポリコハク酸イミドと塩基性アミノ酸のカルボン酸塩とを反応させることを特徴とする架橋ポリコハク酸イミドの製造方法であり、かつこの架橋反応後に、残りのイミド環を加水分解することを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法である。
【0024】
本発明に従い得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、廃棄後に生分解することで地球環境にやさしいので、紙オムツ用、農・園芸用等に使用される、吸水能に優れた高吸水性樹脂として非常に有用である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0026】
[1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の構造
本発明において製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、その構造上から、大きく分けると、主鎖基本骨格部分、側鎖部分、架橋部分からなる。以下、これらを3つに分けて説明する。
【0027】
[1−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の構造
本発明において製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位は、アスパラギン酸残基単独で構成されてもよいし、アスパラギン酸とアスパラギン酸以外のアミノ酸との共重合体であっても構わない。なお本発明では、結合の様式に関わらず、ポリマー中のアスパラギン酸からなる繰り返し単位部分を「ポリアスパラギン酸残基」と呼ぶ。
【0028】
アスパラギン酸以外のアミノ酸の具体例としては、例えば、アスパラギン酸を除く19種類の必須アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0029】
共重合体である場合は、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフトであっても構わない。
【0030】
ポリアスパラギン酸残基から成る繰り返し単位の数は、特に限定されないが、分子を構成する繰り返し単位の総数に対して、1〜99.8%が好ましく、10〜99.8%がより好ましい。
【0031】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位としては、高い吸水能を有するという点から、アスパラギン酸残基単独、又は、グルタミン酸若しくはリジンとの共重合体から構成されることが好ましく、工業的生産の点から、前記繰り返し単位がアスパラギン酸残基単独からなることが特に好ましい。
【0032】
ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。すなわち、ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単位のアミノ基等と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。このポリアスパラギン酸の場合のα結合とβ結合は、通常、混在して存在する。本発明では、その結合様式は特に限定されない。
【0033】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖基及び架橋基は、基本的にポリアスパラギン酸のカルボキシル基が置換されたカルボン酸誘導体である。その詳細を以下に説明する。
【0034】
[1−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖は、架橋ポリコハク酸イミドのイミド環を加水分解により開環した構造を有し、この加水分解により生成したカルボキシル基を含む。また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、他の置換基を有する側鎖を含んでいてもよい。他の置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基等を一個以上含むペンダント基が挙げられる。また、ペンダント基は、特定の置換基を持たないアルキル基、アラルキル基、アリール基であってもよい。これらのペンダント基は、ポリアスパラギン酸残基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合等で繋がっている。
【0035】
加水分解により生成したカルボキシル基は、フリーの状態でも塩を形成していてもよい。塩を形成するイオンの具体例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン;アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンイオン等のアミンイオン等を挙げることができる。
【0036】
これらの中では、イオンの原子量又は分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、その原子量又は分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、皮膚等への刺激性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0037】
[1−3] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂中の架橋部分の分子構造は、塩基性アミノ酸の2つのアミノ基と主鎖のポリアスパラギン酸とが脱水縮合した構造をとり、アミド結合により主鎖のポリアスパラギン酸を架橋している。ただし、この架橋部分は、塩基性アミノ酸以外の架橋剤を併用して構成しても構わない。
【0038】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分は、ポリマー主鎖基本骨格との「結合部分」と、それらを橋架けする「連結部分」に分けて理解することができる。以下、それらについて説明する。
【0039】
[1−3−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の結合部分
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の結合部分は、アミド結合である。ただし、他の架橋剤を併用することもでき、この場合、例えばアミド結合、エステル結合、チオエステル結合から成る構造を含むことができる。これらは単独でもよいし、複数の構造が混在していても構わない。
【0040】
[1−3−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の連結部分
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の連結部分は特に限定されず、他の架橋剤を併用する場合においても、その構造は特に限定されない。連結部分の具体例を、以下に挙げる。
【0041】
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−(CH2)5−、−(CH2)6−、−(CH2)7−、−(CH2)8−、−(CH2)9−、−(CH2)10−、−(CH2)11−、−(CH2)12−、−(CH2)13−、−(CH2)14−、−(CH2)15−、−(CH2)16−、−(CH2)17−、−(CH2)18−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−(CH2CH2O)3CH2CH2−、−(CH2CH2O)4CH2CH2−、−(CH2CH2O)5CH2CH2−、−(CH2CH2O)6CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)2CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)3CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)4CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)5CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)6CH2CH2CH2−、
【0042】
【化3】
【0043】
【化4】
これらの連結部分は、無置換のものでも、置換基により置換したものでもよい。この置換基としては、炭素原子数1から18の分岐していてもよいアルキル基、炭素原子数3から8のシクロアルキル基、アラルキル基、置換していてもよいフェニル基、置換していてもよいナフチル基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルコキシ基、アラルキルオキシ基、フェニルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いジアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基並びにホスホン酸基及びこれらの塩、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル等のアラルキル基、フェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ビフェニル等のフェニル基、ナフチル、メチルナフチル等のナフチル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプチルデシルオキシ、オクチルデシルオキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、ベンジルオキシ、トリルオキシ等のアラルキルオキシ基、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプチルデシルチオ、オクチルデシルチオ等のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ、トリルチオ等のアラルキルチオ基、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ、ドデシルアミノ、トリデシルアミノ、テトラデシルアミノ、ペンタデシルアミノ、ヘキサデシルアミノ、ヘプチルデシルアミノ、オクチルデシルアミノ等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ、ジウンデシルアミノ、ジドデシルアミノ、ジトリデシルアミノ、ジテトラデシルアミノ、ジペンタデシルアミノ、ジヘキサデシルアミノ、ジヘプチルデシルアミノ、ジオクチルデシルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルプロピルアミノ等のジアルキルアミノ基、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、トリヘプチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、トリノニルアンモニウム、トリデシルアンモニウム、トリウンデシルアンモニウム、トリドデシルアンモニウム、トリテトラデシルアンモニウム、トリペンタデシルアンモニウム、トリヘキサデシルアンモニウム、トリヘプチルデシルアンモニウム、トリオクチルデシルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルベンジルアンモニウム、メチルジベンジルアンモニウム等のトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、又は、スルホン酸基、又はホスホン酸基及びこれらの塩、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、トリデシルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ペンタデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル、ヘプタデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等のアルキルオキシカルボニル基、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ノニルカルボニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ウンデシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、トリデシルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、ペンタデシルカルボニルオキシ、ヘキサデシルカルボニルオキシ、ヘプタデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等のアルキルカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0045】
これらの中から分子量が大きいものを選択すると、架橋部分の分子量が大きくなり、相対的に繰り返し単位当たりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、分子量が小さいものを選択する方が好ましい。また、一般的に製造法が簡単なものを選択することも好ましい。例えば、無置換のもの、又は、置換基(例えば、メチル、エチル、メトキシ、メチルオキシカルボニル及び/又はメチルカルボニルオキシ基;並びに/又は水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基及び又はこれらの塩等)により置換されたものが好ましい。
【0046】
さらに、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を保水材の用途に使用する場合は、樹脂分子内に極性基が存在することが好ましいので、架橋部分は、無置換の状態で極性基を含むもの、又は、極性基を含む置換基(例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基並びに/又はこれらの塩)により置換されたものが特に好ましい。
【0047】
ここで、架橋部分の量は特に限定されないが、架橋部分を有する繰り返し単位の数は、重合体全体の繰り返し単位の総数を基準として、0.1〜20%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。
【0048】
[2] ポリコハク酸イミドの製造方法
本発明に使用する架橋前のポリコハク酸イミドは、その製造方法について特に限定されない。その具体例として、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Amer.Chem.Soc.)80巻・3361頁〜(1958年)等に記載の方法を挙げることができる。
【0049】
使用するポリコハク酸イミドの分子量は、特に限定されないが、分子量が高い方が保水材としての能力が高くなる。一般的に、3万以上、好ましくは5万以上、より好ましくは9万以上である。
【0050】
また、ポリコハク酸イミドは、線状構造であっても、分岐状構造を有するものであってもよい。
【0051】
[3] ポリコハク酸イミドを架橋する方法
本発明では、ポリコハク酸イミドを塩基性アミノ酸のカルボン酸塩にて架橋する。以下に、本発明の特徴の一つである架橋剤と、その他の反応条件について説明する。
【0052】
[3−1] 架橋反応で使用する架橋剤の種類
本発明において使用する架橋剤は、安全性、反応性、コスト等の点から、塩基性アミノ酸のカルボン酸塩を用いる。特に、リジンの塩及び/又はオルニチンの塩を用いることが好ましい。
【0053】
塩基性アミノ酸としては、特に限定されないが、一般的には、下記一般式(2)にて表わされる。
【0054】
【化5】
(式中、Rはアルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基を表わす。)
ここでRはアルキレン、アラルキレン、又はアリーレンであるが、これらは直鎖であっても分岐構造であっても、環状構造であっても構わない。また、これらは、その炭素原子の一部をO、N、S、P、B、Si等を含む置換基にて置換されていても構わない。すなわち、O、N、S、P、B、Si等が導入された、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ウレア基、チオエステル基、チオカルボニル基、スルホン基、スルホニル基、スルホンアミド基、二級アミノ基、三級アミノ基、アミド基、ホスホン基、ホスホンアミド基等の置換基にて置換されていても構わない。また、Rに対してアミノ基の置換位置も特に限定されない。さらに、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基、アリールオキシアルキレン基、アラルキルオキシアルキレン基、アルキルチオアルキル基、ポリチオアルキレン基、アリールチオアルキレン基、アラルキルチオアルキレン基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニオ基、アルキルオキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基等の置換基を含んでいても構わない。Rの具体例を以下に挙げる。
【0055】
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−(CH2)5−、−(CH2)6−、−(CH2)7−、−(CH2)8−、−(CH2)9−、−(CH2)10−、−(CH2)11−、−(CH2)12−、−(CH2)13−、−(CH2)14−、−(CH2)15−、−(CH2)16−、−(CH2)17−、−(CH2)18−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−(CH2CH2O)3CH2CH2−、−(CH2CH2O)4CH2CH2−、−(CH2CH2O)5CH2CH2−、−(CH2CH2O)6CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)2CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)3CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)4CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)5CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)6CH2CH2CH2−、
【0056】
【化6】
本発明においては、架橋剤としての塩基性アミノ酸は、カルボン酸塩の形で使用される。塩基性アミノ酸をそのまま用いると、下記一般式(3)に表わされるように、α位のアミノ基とカルボキシル基が両性イオン構造を取り、α位のアミノ基の反応性が低下し、架橋剤としての反応速度が非常に遅くなる。
【0057】
【化7】
(式中、Rはアルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基を表わす。)
反応速度を速くするためには、下記一般式(4)に表わすような、塩基性アミノ酸のエステル、チオエステル、アミド等の誘導体として用いるか、もしくは、下記一般式(1)に表わすような、塩基性アミノ酸のカルボン酸塩として反応に用いる必要がある。ここで、塩基性アミノ酸のカルボキシル基を誘導体化又は塩とすることにより、α位のアミノ基の反応性が向上し、架橋剤として有効に作用するようになる。
【0058】
【化8】
[式中、Rはアルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基を表わし、R’はアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表わし、Mは−NH−、−N(R”)−(R”は、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表わす。)、−S−、又は、−O−を表わす。]
【0059】
【化9】
(式中、Rは、アルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基を表わし、Xは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムを表わす。)
本発明においては、コスト等の面で特に優れている一般式(1)に表わすような、塩基性アミノ酸のカルボン酸塩を架橋剤として用いることを特徴とする。
【0060】
本発明に用いる塩基性アミノ酸のカルボン酸塩を形成するイオンは特に限定されない。そのイオンの具体例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン;アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウムイオン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミンイオン;等を挙げることができる。
【0061】
これらの中では、イオンの原子量又は分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、その原子量又は分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、皮膚等への刺激性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0062】
また、架橋剤として、リジン自体、オルニチン等の塩基性アミノ酸自体を併用することもできるし、塩以外の各種誘導体を併用することもできる。さらには、リジン、オルニチン以外の他の各種架橋剤(例えばポリアミンなどが好ましい)を併用することもできる。
【0063】
そのような他の架橋剤としては、ポリコハク酸イミドのイミド環と反応する多官能性化合物であれば、特に限定されない。例えば、ポリアミン、ポリチオール等の多官能性化合物を挙げることができる。その具体例としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、1−アミノ−2,2−ビス(アミノメチル)ブタン、テトラアミノメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、ノルボルネンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン、塩基性アミノ酸もしくはそれらのエステル類、シスタミン等のモノアミノ化合物の分子1個又はそれ以上が1個又はそれ以上のジスルフィド結合により結合した化合物及びその誘導体等のポリアミン、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ペンタエリスリチオール等の脂肪族ポリチオール、シクロヘキサンジチオール等の脂環式ポリチオール、キシリレンジチオール、ベンゼンジチオール、トルエンジチオール等の芳香族ポリチオール、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)ポリチオール等のエステル類が挙げられる。
【0064】
他の架橋剤中では、臭気が小さく、ポリコハク酸イミドのイミド環との反応性が高い、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シスタミンが好ましい。
【0065】
架橋剤の量は、特に制限されず、架橋剤の官能数や分子量によって決まる架橋度や、その使用用途の種類によって適宜決定すればよい。ここで、架橋度とは、架橋間の距離又は構成単量体単位の数、もしくはポリマー主鎖に対する架橋部分の割合の度合いを表すものと定義する。
【0066】
一般的には、架橋剤の量が多すぎると、架橋度が高くなりすぎ、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂とした際の吸水能が低下する。逆に、架橋剤の量が少なすぎると、架橋度が低くなり、その樹脂が水溶性となり、吸水能を示さなくなる。したがって、架橋剤の量は、適当な架橋度を実現し得るように適宜決定すればよい。架橋剤の量は、一般的には、ポリコハク酸イミドの単量体単位の総数に対して、0.1〜30%が好ましく、特に1〜20%が好ましい。
【0067】
[3−2] ポリコハク酸イミドを架橋剤と反応させる架橋反応条件
ポリコハク酸イミドを架橋し、架橋ポリコハク酸イミドを製造する方法においては、例えば、ポリコハク酸イミドを溶解できる有機溶媒である良溶媒中にて、ポリコハク酸イミドと架橋剤とを反応させる。
【0068】
ここで使用する「良溶媒」なる語の概念は、ポリコハク酸イミドを実質的に完全に溶解できる有機溶媒を包含する。本発明において使用する良溶媒は、特に限定されない。良溶媒の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。これらの中では、ポリコハク酸イミドの溶解性が高い、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0069】
また、架橋反応を遅くする目的又は反応系全体をゲル化させないで分散状態にて反応を進行させる目的で、ポリコハク酸イミドを溶解しない、もしくはわずかしか溶解しない貧溶媒を加えても構わない。ここで使用する「貧溶媒」なる語の概念は、ポリコハク酸イミドを実質的に完全には溶解できない有機溶媒及び水を包含する。本発明においては、この貧溶媒を分散剤として好適に使用できる。
【0070】
本発明において使用する貧溶媒は、特に限定されず、化学反応一般に使用される溶媒であって、ポリコハク酸イミドの溶解性が低い溶媒はいずれであっても使用できる。貧溶媒と良溶媒を併用する場合は、良溶媒と貧溶媒の混和性は限定されず、混和性、不混和性のどちらでも使用できる。また、ポリコハク酸イミドの良溶媒が架橋剤を溶解しない場合は、使用する架橋剤を実質的に溶解できるような貧溶媒を用いることが好ましい。
【0071】
貧溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルグリコソルブ、エチルグリコソルブ等のグリコソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、デカリン、ジフェニルエーテル、アニソール、クレゾール等がある。これらの中では、アミノ酸のカルボン酸の塩が溶解できる、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0072】
なお、これら貧溶媒は、ポリコハク酸イミドを分散させる目的以外にも、例えば、架橋反応を遅くする目的等にも用いることができる。
【0073】
良溶媒と貧溶媒を併用する場合、その混合比は特に限定されない。貧溶媒を適度に多くすれば貧溶媒の効果が発現し、ポリコハク酸イミドが分散状態となり、ゲル化を防止できる。一方、貧溶媒を適度に少なくすれば、良溶媒の効果が発現し、ポリコハク酸イミドの分散状態が均一となる。また、通常、貧溶媒を適度に少なくすれば、溶媒回収のコストが低減し、経済的に有利である。
【0074】
ここで架橋剤として用いる塩基性アミノ酸のカルボン酸塩は、塩構造のためこれらのポリコハク酸イミドの良溶媒に対して溶解しない場合がある。この場合、塩をそのままポリコハク酸イミドの溶液に加えても、塩が溶解し易い水等に溶解又は懸濁させた液をポリコハク酸イミドの溶液に加えてもよい。反応は架橋剤が反応系に用いる溶媒に完全に溶解した状態でも、溶解しないで分散した状態でも、実質的に架橋反応が進行すれば構わない。一般的には、混合溶媒としたときには、使用する架橋剤を実質的に溶解できるような良溶媒又は貧溶媒を用いることが好ましい。
【0075】
架橋反応においては、必要に応じ触媒を使用してもよい。触媒としては、一般的には、塩基触媒が用いられる。
【0076】
塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンモニア等の無機系塩基試剤;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等のアミン等の有機系塩基試剤が挙げられる。
【0077】
架橋反応における反応温度は、特に限定されず、架橋剤の反応性や、ポリコハク酸イミドの分散状態を考慮して、適宜決定すればよい。一般的には、0〜200℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。
【0078】
架橋反応が進行する時点のポリコハク酸イミドを含む溶液又は分散液における、ポリコハク酸イミドの濃度は特に限定されないが、一般的には、0.1〜50重量%が好ましく、特に1〜40重量%が好ましい。
【0079】
分散状態において反応させる場合、ポリコハク酸イミドの粒度は、小さい方が反応し易いので好ましい。ここで乾燥状態におけるポリコハク酸イミドの粒度(平均粒子直径)を基準にすると、その粒度は、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。このように、ポリコハク酸イミドの粒子が適度に小さければ、内部まで架橋反応が進行し易くなり、後に加水分解を行った場合、未架橋の水溶性部分が少なく、収率低下や性能低下を防止できる。
【0080】
架橋反応において分散剤を用いない場合は、ポリコハク酸イミドと架橋剤との反応が進行していくにつれて、反応生成物はゲル化していく。このとき、反応系全体がゲル化する前に処理しても、完全にゲル化させて処理しても構わない。ゲル化の程度は、ポリマー濃度、架橋剤量、架橋度、貧溶媒の存在率等の反応条件によって異なる。ポリマー濃度が高い場合、架橋剤量が多い場合、架橋度が高い場合、貧溶媒の存在比が低い場合等の条件では、得られるゲルは硬いものとなり、逆の場合、ゲルは柔らかくなる。この場合、生成するゲルは、加水分解して得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用用途に応じて選択される。例えば、高ゲル強度の樹脂を得るためには、架橋度を高めればいい。
【0081】
すなわち、架橋反応後の反応生成物である架橋ポリコハク酸イミドは、有機溶媒を含んで膨潤したゲルとなり、このゲルを湿式粉砕して用いる方が好ましい。この場合、架橋反応後のゲルを取り出して、湿式粉砕装置に装入してもよいし、あるいは、架橋反応自体を湿式粉砕装置の中で行い、装置中でゲル化させてもよい。架橋ポリコハク酸イミドのゲルの湿式粉砕は、ゲルが硬いときのみならず、ゲルが柔らかいときにも有効であり、短時間にて処理が可能となる。
【0082】
このような湿式粉砕を、非分散状態のポリコハク酸イミドを架橋させて得た架橋ポリコハク酸イミドのゲルに対して適用した場合、湿式粉砕後のゲル粉砕物は、次に、イミド環の加水分解反応に供される。この加水分解反応工程は、通常、水を必須成分として用いる。したがって、水及び/又は水混和性有機溶媒中で湿式粉砕を行った場合は、ゲル粉砕物を分離することなく、そのままの状態で、次の加水分解工程を行ってもよい。
【0083】
また、予め粉砕される被処理物に、加水分解反応のための塩(有機塩及び/又は無機塩)を溶解や混合により共存させておき、粉砕後、粉砕物をそのまま、次の加水分解工程に処すこともできる。さらに粉砕と同時に、加水分解反応のためのアルカリ水溶液を添加し、粉砕と加水分解反応を同時に行うこともできる。
【0084】
また、この粉砕により固体を含む有機溶媒のスラリーを得て、この固体を有機溶媒から分離する場合は、有機溶媒回収等を考慮して分離することもできる。好ましい分離法としては、濾過、デカンテーション、遠心分離等の一般的な化学的分離法が挙げられる。得られた固体は、乾燥してから次の加水分解工程を行ってもよく、ウェット・ケーキのまま次の加水分解工程を行ってもよい。すなわち、有機溶媒を加水分解工程前に除去してもよく、これを除去することなくそのまま加水分解工程を行ってもよい。また、不均一な架橋反応を抑制する目的で、湿式粉砕により、積極的に、さらに均一なポリコハク酸イミドの分散状態を発現する方法を採用することもできる。
[4] 架橋ポリコハク酸イミドの用途
架橋ポリコハク酸イミドの残りのイミド環をアルカリ加水分解すれば、良好な架橋ポリアスパラギン酸系樹脂が得られる。すなわち、この架橋ポリコハク酸イミドは、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造するための中間体として非常に有用である。なお、この架橋ポリコハク酸イミドの分子構造は、先に説明した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子構造のアルカリ加水分解前の状態に対応している。
【0085】
ただし、この架橋ポリコハク酸イミドの用途は、その中間体の用途に限定されない。架橋ポリコハク酸イミド自体を樹脂材料として、種々の用途に使用可能である。また、後に述べる「架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態」の欄で説明するものと同様の使用形態を採り得る。その使用時の形状も、後に述べる「架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状」の欄で説明するものと同様の形状にすることができる。
[5] 架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の加水分解
架橋ポリコハク酸イミドの残りのイミド環の加水分解は特願平9−68185号に記載の方法にて容易に実施できる。すなわち、水と水混和性有機溶媒混合液中、無機もしくは有機塩の水溶液中、或いは40乃至100℃の温水中にて加水分解を行う方法であり、これらの複数を組み合わせて使用しても構わない。
【0086】
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の加水分解において、水中ではゲル化が著しくなり、攪拌が困難となったり、有機溶媒中では沈殿物が凝集して攪拌困難となったり、また加水分解が遅くなったり十分に進行しなくなり、生成した樹脂の吸水量が低下するので、これらの方法を用いる。
【0087】
水混和性有機溶媒を使用する場合、使用する有機溶剤は、特に限定されないが、一般にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等がある。この中で、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂として乾燥する際に、特に乾燥が容易であり、かつ乾燥後に組成物内に溶剤が残留しにくい点でメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが好ましい。
【0088】
使用する水の使用量は容積効率を高めるために、生成する吸水性樹脂の1〜10重量倍が好ましく、特に1〜5重量倍が好ましい。
【0089】
使用する水の割合は、混合溶媒に対して5〜100重量%が好ましく、20〜80重量%が特に好ましい。
【0090】
無機もしくは有機塩を使用する場合、その無機もしくは有機塩は、特に限定されず、一般的な塩は広く使用できる。例えば、中性塩、塩基性塩、酸性塩が使用できる。ここで多価金属塩の場合、イミド環の加水分解で生成したカルボキシル基とイオン的に架橋し架橋度が高くなるので、その濃度を高くできない。
【0091】
使用する塩の添加の方法としては、水に加えて溶解させても、水中で中和により生成させても構わない。また、架橋反応によって生じた塩をそのまま用いることもできる。
【0092】
使用する塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、二亜硫酸、アミド硫酸、チオ硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、次リン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、過炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、塩素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、アルミン酸、テルル酸、イソシアン酸、チオシアン酸、マンガン酸、過マンガン酸、過ヨウ素酸、クロム酸、ニクロム酸、メタ亜アンチモン酸、メタバナジン酸、モリブデン酸等の無機鉱酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸、シュウ酸、有機フェノール等の金属塩もしくは有機塩基塩、酸化物等が挙げられる。この中で皮膚等への刺激性が低く、酸化還元性が無く、低コストであり、水への溶解性が高い塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、シュウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸の金属塩もしくは有機塩基塩が好ましく、特に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸の金属塩もしくは有機塩基塩が好ましい。
【0093】
金属塩の金属はリチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、テルリウム、セシウム、バリウム、セリウム、金、水銀、タリウム、鉛等が挙げられる。この中で皮膚刺激性が低く、低コストであり、水への溶解性が高いリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0094】
有機塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等が挙げられる。この中で水への溶解性、臭気、安全性、コストを考慮すると、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、のアミン塩等が特に好ましい。
【0095】
具体的な塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ベリリウム、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化バナジウム、塩化クロム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化イットリウム、塩化ジルコニウム、塩化モリブデン、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化銀、塩化カドミウム、塩化錫、塩化テルリウム、塩化セシウム、塩化バリウム、塩化セリウム、塩化鉛、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩等の塩化物塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ブロミド、テトラエチルアンモニウム・ブロミド、テトラブチルアンモニウム・ブロミド、トリエタノールアミン・臭化水素酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ヨード、テトラエチルアンモニウム・ヨード、テトラブチルアンモニウム・ヨード、トリエタノールアミン・ヨウ化水素酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硝酸塩、テトラエチルアンモニウム・硝酸塩、テトラブチルアンモニウム・硝酸塩、トリエタノールアミン・硝酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・炭酸塩、テトラエチルアンモニウム・炭酸塩、テトラブチルアンモニウム・炭酸塩、トリエタノールアミン・炭酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸リチウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラエチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム・安息香酸塩、トリエタノールアミン・安息香酸塩、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・シュウ酸塩、テトラエチルアンモニウム・シュウ酸塩、テトラブチルアンモニウム・シュウ酸塩、トリエタノールアミン・シュウ酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・酢酸塩、テトラエチルアンモニウム・酢酸塩、テトラブチルアンモニウム・酢酸塩、トリエタノールアミン・酢酸塩、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・プロピオン酸塩、テトラエチルアンモニウム・プロピオン酸塩、テトラブチルアンモニウム・プロピオン酸塩、トリエタノールアミン・プロピオン酸塩等が挙げられる。
【0096】
これらの中で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ブロミド、テトラエチルアンモニウム・ブロミド、テトラブチルアンモニウム・ブロミド、トリエタノールアミン・臭化水素酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ヨード、テトラエチルアンモニウム・ヨード、テトラブチルアンモニウム・ヨード、トリエタノールアミン・ヨウ化水素酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硝酸塩、テトラエチルアンモニウム・硝酸塩、テトラブチルアンモニウム・硝酸塩、トリエタノールアミン・硝酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・炭酸塩、テトラエチルアンモニウム・炭酸塩、テトラブチルアンモニウム・炭酸塩、トリエタノールアミン・炭酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラエチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム・安息香酸塩、トリエタノールアミン・安息香酸塩、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・酢酸塩、テトラエチルアンモニウム・酢酸塩、テトラブチルアンモニウム・酢酸塩、トリエタノールアミン・酢酸塩、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が好ましく、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が好ましくい。
【0097】
使用する塩の濃度は、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。濃度が低すぎる場合は効果が小さく、濃度が高すぎると塩が製品中に混入する場合がある。
【0098】
残りのイミド環の開環に使用できる試剤は、特に限定されないが、一般的には、アルカリ水が用いられる。使用するアルカリ水は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。この中で、コスト的に安価な水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0099】
残りのイミド環のアルカリ開環の反応液のpHはアルカリ水の濃度によって変わるが、pHが高すぎると主鎖のアミド結合を切断し、生成する樹脂の吸水能を低下させ、逆にpHが低すぎると、反応が遅くなり、実用的でない。一般的には7.5〜13が好ましく、9〜12がより好ましい。
【0100】
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の開環反応は、水中、5〜100℃にて行われる。特に10〜60℃が好ましい。
【0101】
[6] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環をアルカリ加水分解反応させた結果生成する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理については、特に限定されない。例えば、中和、塩交換、乾燥、精製、造粒、表面架橋処理等の処理を、必要に応じて行えばよい。以下、特に中和、塩交換、乾燥の処理について説明する。
【0102】
[6−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理は、必要に応じて行えばよい。ただし、加水分解反応後の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を含む反応液は、通常はアルカリ性である。したがって、酸等を添加して、中和することが好ましい。この中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内に存在するカルボキシル基を塩にすることができる。この中和度は特に限定されないが、一般的には架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内の全アスパラギン酸残基の総数を基準として、塩を形成するカルボキシル基の割合は、0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましい。
【0103】
中和処理の方法は特に限定されないが、加水分解反応後に、酸を添加してpHを調整する方法が一般的である。この酸の具体例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ベンゼンホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。
【0104】
[6−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の塩交換処理
中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内に存在するカルボキシル基を塩とした場合、必要に応じて、その塩を他の種類の塩に交換することもできる。
【0105】
この塩交換に使用される試剤の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げることができる。より具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等を例示することができる。
【0106】
これらの中では、その分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、その分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、皮膚等への刺激性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0107】
[6−3] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の乾燥処理
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の乾燥処理の方法は特に制限されない。例えば熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等の公知の手法を挙げることができる。乾燥温度は、一般的には、20〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
【0108】
この乾燥処理を施した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂に対して、さらに精製処理、造粒処理、表面架橋処理等を施しでもよい。
【0109】
[7] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状の具体例としては、不定形破砕状、球状、粒状、顆粒状、造粒状、リン片状、塊状、パール状、微粉末状、繊維状、棒状、フィルム状、シート状等種々のものを挙げることができ、用途に応じて好ましい形状を選択できる。また、繊維状基材、多孔質体、発泡体、造粒物等であってもよい。
【0110】
[8] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度(平均粒子直径)は特に限定されず、用途に応じて好ましい粒度を選択できる。例えば、紙オムツに用いる場合は、速い吸収速度とゲル・ブロッキングが起こらないことが望まれるので、その平均粒子径は100〜1000μmが好ましく、150〜600μmがより好ましい。また例えば、止水材等の樹脂への練り混みに用いる場合は、その平均粒子径は1〜10μmが好ましく、農園芸用の保水材に用いる場合は、土との分散性を考慮して、100μm〜5mmが好ましい。
【0111】
[10] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態は、特に限定されるものではなく、単独でも、他の素材と組み合わせて使用してもよい。
【0112】
例えば、他の樹脂と組合せて用いる場合、熱可塑性樹脂に混練りして射出成形等にて成形する方法、構成樹脂のモノマーと酸性ポリアミノ酸系樹脂及び必要により開始剤を混合後、光もしくは熱等で重合する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を溶剤に分散させ、キャストし、溶剤を除去する方法、プレポリマーと架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法等がある。
【0113】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の成型品としては、特に限定されるものではなく、固形物、シート、フィルム、繊維、不織布、発泡体、ゴム等として使用できる。また、その成型方法も特に限定されるものではない。
【0114】
一方、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、単独でも、他の素材との組み合わせによる複合体でも構わない。複合体の構造は特に限定されないが、例えば、パルプ層、不織布等にはさみ、サンドイッチ構造にする方法、樹脂シート、フィルムを支持体として多層構造とする方法、樹脂シートにキャストし、二層構造とする方法等がある。例えば、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂をシート状に成形加工すれば、吸水性シート(吸水性フィルムも包含する)が得られる。
【0115】
また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、必要により、1種以上の他の吸水性樹脂と混合して用いても良い。また、必要により、食塩、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物、キレート剤等の有機化合物を添加しても構わない。さらに酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、消臭剤、顔料等を混合しても構わない。
【0116】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、ゲル状でも固形物としても使用できる。例えば、農園芸用保水材、切り花延命剤、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤等に使用する場合はゲルとして用い、紙おむつ用吸収体等は固形状として用いる。
【0117】
[11] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途は特に限定されないが、従来の吸水性樹脂が使用できる用途のいずれにも使用できる。
【0118】
例えば、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、電子機器、光ファイバー等のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤、湿度調整材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0119】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において「部」とは「重量部」を意味する。実施例中の吸水量は、以下のティーバッグ法にて測定した。
【0120】
(1)ティーバッグ法
吸水量の測定は蒸留水、生理食塩水を対象として行った。すなわち、蒸留水の場合は吸水性樹脂約0.05部、生理食塩水の場合は吸水性樹脂約0.1部を不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、過剰の対応する溶液中に浸して該樹脂を1時間膨潤させた後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行い、膨潤した樹脂を含むティーバッグの重量を測定した。同様な操作をティーバッグのみで行った場合をブランクとして、その重量からブランクの重量と吸水性樹脂の重量を減じた値を、吸水性樹脂の重量で除した値を吸水量(g/樹脂1g)とした。なお、生理食塩水は0.9重量%塩化ナトリウム水溶液である。
【0121】
[実施例1]
リジン・1塩酸塩37.6部を蒸留水80部に分散し、水酸化ナトリウム9.5部を加えて中和し、リジン/リジン・ナトリウム塩水溶液を調整した。一方、窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド100部を、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す)400部に溶解し、この溶液に上記水溶液を加え、室温で10分攪拌後、分散剤(貧溶媒)であるメタノール400部を装入して分散させ、20時間反応した。反応後、吸引濾過して沈殿物を集め、メタノールで洗浄し架橋ポリコハク酸イミドのウェットケーキを得た。
【0122】
この架橋ポリコハク酸イミドのウェット・ケーキを、蒸留水400部とメタノール400部中に分散し、さらに27重量%苛性ソーダ水溶液122部を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに2時間攪拌し、7重量%塩酸水を用いて、pH7になるまで中和した。中和後、メタノール300部に排出し、1時間攪拌した。この沈殿物を濾過して集め、60℃で乾燥し、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂140部を得た。
【0123】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で920倍、生理食塩水で74倍であった。
【0124】
[実施例2]
リジン・1塩酸塩13.2部を蒸留水25部に分散し、水酸化ナトリウム3.0部を加えて中和し、リジン・ナトリウム水溶液を調整した。一方、窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド100部をDMF400部に溶解し、この溶液に上記水溶液を加え、室温で1時間攪拌後、撹拌を止め、20時間反応させ、架橋ポリコハク酸イミドのゲルを得た。この架橋ポリコハク酸イミドのゲルを、刃付攪拌翼を具備したミキサーに移送し、蒸留水400部とメタノール400部を加え、8000rpmにて5分間ゲルを粉砕した。
【0125】
さらに、樹脂の膨潤度を3乃至100倍の範囲内に保ちつつ、この中に、27重量%苛性ソーダ水溶液145.0部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、その後7重量%塩酸水を加えてpH7になるように中和した。中和後さらにメタノール300部を加え、沈殿物を60℃で乾燥し、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂131部を得た。
【0126】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で840倍、生理食塩水で68倍であった。
【0127】
[実施例3]
リジン・ナトリウム水溶液の代わりに、リジン・1塩酸塩15.1部を蒸留水20部に分散し、水酸化カリウム25重量%水溶液18.6部を加えて中和したリジン・カリウム水溶液を調整して用いたこと以外は、実施例2と同様に処理した。乾燥後、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂146部を得た。
【0128】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で810倍、生理食塩水で67倍であった。
【0129】
[実施例4]
リジン・ナトリウム水溶液の代わりに、オルニチン・1塩酸塩12.2部を蒸留水20部に分散し、水酸化ナトリウム3.0部を加えて中和し、オルニチン・ナトリウム水溶液を調整して用いたこと以外は、実施例2と同様に処理した。乾燥後、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂124部を得た。
【0130】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で830倍、生理食塩水で69倍であった。
【0131】
[比較例1]
窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド5部を、DMF20部に溶解し、リジンメチルエステル・2塩酸塩1.8部とトリエチルアミン3.1部を挿入し、室温で20時間攪拌した。反応物にメタノール100部を加え、室温で攪拌し、ゲルをほぐした。沈殿物を吸引濾過にて集め、メタノール続いて水で洗浄した。得られた沈殿物を蒸留水30部とメタノール90部に懸濁し、8重量%の水酸化ナトリウム水溶液をpH11〜12の範囲に入るように滴下し、更に反応溶液のpHが下がらなくなるまでアルカリを加え続けた。pHが下がらなくなった後、希塩酸を加え反応液のpHを7になるまで加え、メタノール100部を加えて、生成物を沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥後、吸水性ポリマー6.9部が得られた。
【0132】
この吸水性ポリマーの吸水量は蒸留水で160倍、生理食塩水で36倍と低かった。
【0133】
[比較例2]
リジン・ナトリウム塩水溶液の代わりに、リジン・1塩酸塩13.2部を蒸留水25部に分散し、水酸化ナトリウム1.5部を加えて中和したリジン水溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてポリコハク酸イミド誘導体のウエット・ケーキを得た。さらに、このウエット・ケーキを蒸留水400部とメタノール400部に懸濁し、実施例2と同様に処理し、樹脂79部を得た。この樹脂は水溶性であり、吸水能を示さなかった。
【0134】
[実施例1〜4と比較例1〜2の比較及び考察]
実施例1〜4では、架橋剤として塩基性アミノ酸のカルボン酸塩を用いたので高い吸水量を発現する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を高い生産性かつ低コストで製造することができた。
【0135】
対照的に、他の架橋剤を用いた比較例1では、架橋の制御がうまくいかず、樹脂の吸水量が著しく低下してしまい、比較例2では、リジンの反応性が低いためにうまく架橋反応が進行せず、吸水性樹脂は得られなかった。
【0136】
【発明の効果】
以上説明したように、紙オムツ用、農・園芸用等に使用される吸水体として、使用後もしくは廃棄後に生分解性することで地球環境に優しい架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造において、ポリコハク酸イミドを架橋させる架橋剤として、安全性、反応性に優れかつ安価な塩基性アミノ酸のカルボン酸塩を用いることで、生分解性を有し、安全性に優れた、高い吸水量を有する吸水性樹脂(架橋ポリアスパラギン酸系樹脂)、およびその中間体として非常に有用な架橋ポリコハク酸イミドを、高い生産性かつ低コストで製造できる。
Claims (10)
- ポリコハク酸イミドと塩基性アミノ酸のカルボン酸塩とを反応させることを特徴とする架橋ポリコハク酸イミドの製造方法。
- 塩基性アミノ酸が、リジン又はオルニチンである請求項1に記載した架橋ポリコハク酸イミドの製造方法。
- 塩基性アミノ酸のカルボン酸塩が、アルカリ金属塩である請求項1に記載した架橋ポリコハク酸イミドの製造方法。
- アルカリ金属塩が、ナトリウム又はカリウムである請求項4に記載した架橋ポリコハク酸イミドの製造方法。
- ポリコハク酸イミドと塩基性アミノ酸のカルボン酸塩とを反応させ、残りのイミド環を加水分解することを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 塩基性アミノ酸が、リジン又はオルニチンである請求項6に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 塩基性アミノ酸のカルボン酸塩が、アルカリ金属塩である請求項6に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- アルカリ金属塩が、ナトリウム又はカリウムである請求項9に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
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