JP4654990B2 - 車両用シート - Google Patents
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Description
また、上記の開示技術では、ケーブル部材の動力伝達経路中にエアダンパが設定されている。このエアダンパは、加圧板に車両衝突に伴う衝撃的な背凭れ荷重がかかった場合には、ケーブル部材が操作される操作力を移動機構に伝達する。しかし、エアダンパは、加圧板に徐々に増大していく背凭れ荷重がかかった場合には、ケーブル部材が操作される操作力が移動機構に伝達されないようにこれを遮断する。したがって、通常の着座使用時において、例えば体格の大きい乗員によって加圧板に大きな背凭れ荷重が掛かってしまっても、誤ってヘッドレストが前方移動してしまう事態を防止することができる。
先ず、第1の発明は、車両の衝突時に、シートに着座した乗員の頭部を受け止めるヘッドレストの支承部をシートバックに対して相対移動させることのできるヘッドレスト移動機構を備えた車両用シートである。シートバックの形状内部に配設された加圧板と、加圧板の動きをヘッドレスト移動機構に伝える伝達機構と、を有する。加圧板は、車両の衝突発生時に乗員の背部がシートバックに圧し掛かる背凭れ荷重を受けて後方側に押し動かされるように配置されている。伝達機構は、加圧板と一体的に連結されて加圧板をシートバックの骨格を成すバックフレームに対して回動可能に軸支する回動軸と、回動軸の軸長方向の端部に連結されて回動軸の回動運動に伴って揺動運動する腕部材と、腕部材とヘッドレスト移動機構とを連結し回動軸の回動運動を軸方向運動としてヘッドレスト移動機構に伝える伝達部材と、を有する。これにより、伝達機構は、車両の衝突発生時における加圧板の動きをヘッドレスト移動機構に伝えて支承部を通常時の初期位置から衝突対応位置に向けて移動させられるようになっている。伝達機構における回動軸と腕部材との伝達連結は、粘性流体を用いたロータリーダンパを介して行われている。ロータリーダンパの回動力の伝達特性は、車両の衝突発生時に生じる回動軸の回動は腕部材に伝えるが、通常の乗員の着座時に生じる回動軸の回動は腕部材に伝達しない特性となっている。
この第1の発明によれば、ロータリーダンパは、伝達機構の動力伝達経路中に設けられており、回動軸と腕部材との連結構造を構成している。このロータリーダンパによれば、車両の衝突発生時には、これによって生じる回動軸の回動が腕部材に伝えられて伝達部材が操作される。一方で、通常の乗員の着座時には、これによって生じる回動軸の回動は腕部材には伝達されず、伝達部材は操作されない。
この第2の発明によれば、ロータリーダンパは、ロータがダンパーケースに対して相対的に軸回動するか、或いは全体が一体的となって軸回動するかして、その場で自転する構成となっている。このロータリーダンパによれば、加圧板に車両の衝突発生に伴う衝撃的な背凭れ荷重がかかった場合には、加圧板の動きがロータとダンパーケースとの間で伝達されて伝達部材が操作される。一方で、加圧板に着座時の速度で背凭れ荷重がかかった場合には、加圧板の動きはロータとダンパーケースとの間では伝達されず、伝達部材は操作されない。
先ず、第1の発明によれば、回動軸と腕部材との連結部位にロータリーダンパを設定したことにより、ヘッドレストを移動させるための移動機構への動力伝達の切換え機構を、よりコンパクトに配設することができる。
更に、第2の発明によれば、ロータリーダンパの回動軸や腕部材に対する連結構造を具現化することができる。
ここで、図3〜図7では、本実施例の構成を分かり易く表すために、ヘッドレスト3やシートバック2の表皮構造を省略し内部の骨組み構造のみを表している。したがって、以下の説明において、ヘッドレスト3やシートバック2の表皮構造について述べる場合には、適宜図2を参照するものとする。
ところで、上記した4節リンク機構10の保持状態を解除する操作は、図3に示されている解除操作機構20の作動によって行われる。この解除操作機構20は、シートバック2の内部に配設されている。そして、この解除操作機構20は、4節リンク機構10を初期位置の状態に係合によって保持している保持部材30の解除操作を行う押動カム40に連結されている。ここで、解除操作機構20は、車両の後面衝突の発生により、その勢いで乗員の背部がシートバック2に大きく圧し掛かろうとする背凭れ荷重を受けて後方側に押し動かされる構造となっている。そして、解除操作機構20は、この押動によって、押動カム40を操作し、保持部材30と4節リンク機構10との係止状態を解除させるようになっている。ここで、押動カム40、4節リンク機構10及び保持部材30が、それぞれ本発明のヘッドレスト移動機構に相当する。
以下、4節リンク機構10や解除操作機構20等の各構成について詳しく説明する。
すなわち、4節リンク機構10は、図5に示されるように、可動リンク11、固定リンク12、原動リンク13及び従動リンク14を有する。これら各リンクは、樹脂によって形成されている。
詳しくは、可動リンク11は、前述した曲板形状の支承部3aとして構成されている。そして、固定リンク12は、厚板状に形成されており、ヘッドレスト3の各ステー3b,3bと一体的に連結されている。ここで、固定リンク12が本発明のヘッドレスト基部に相当する。そして、原動リンク13,13及び従動リンク14,14は、可動リンク11と固定リンク12とを繋ぐかたちでこれらにリンク連結されている。これら原動リンク13,13や従動リンク14,14は、ヘッドレスト3の幅長方向に左右一対の構成となっている。そして、原動リンク13,13や従動リンク14,14は、可動リンク11や固定リンク12に対して長尺棒状の連結軸10a〜10dによってそれぞれリンク連結されており、左右の動きが同期して行われるようになっている。
また、4節リンク機構10の連結軸10aと連結軸10cとの間には、引張ばねSaが掛け渡されている。この引張ばねSaにより、4節リンク機構10は、常時は、その進行の回動方向に附勢されている。ここで、4節リンク機構10の進行の回動方向とは、図6で見て、原動リンク13,13が連結軸10dを中心として時計回りに回動する方向のことである。
ここで、保持部材30は、樹脂によってリンク形状に形成されている。そして、保持部材30は、前述した各連結軸10a〜10dと平行な連結軸30aにより、その一端が固定リンク12に回動可能に軸支されている。詳しくは、連結軸30aは、連結軸10dに対してその前方かつ上方に離間した位置に配設されている。また、この保持部材30の他端には、軸方向に突出した係合ピン31が設けられている。この係合ピン31は、上述したように、原動リンク13の長孔13a内を長手方向にスライド移動自在に嵌め込まれている(図8参照)。これにより、保持部材30は、4節リンク機構10が進行方向(時計回り方向)に回動するときには、係合ピン31を長孔13a内で長手方向にスライド移動させながら、それ自身も進行方向に回動するようになっている。
ところで、図8に示されるように、前述した長孔13aは、連結軸10dにより軸支されている側の端部(一端)において、その長手方向に対して垂直方向に屈折した引込み形状の引込溝13bが形成されている。この引込溝13bは、同図の実線で示されているように、原動リンク13が初期位置の状態となったときに、係合ピン31をその内部に引き込めるように形成されている。そして、図6に示されるように、係合ピン31が引込溝13bに引き込まれた状態では、4節リンク機構10が引張ばねSaによって進行方向に回動附勢されることにより、係合ピン31によって保持部材30が原動リンク13に突き当てられた状態となる。
すなわち、保持部材30は、原動リンク13の軸支位置(連結軸10d)から径方向に離間した位置(連結軸30a)で軸支されており、原動リンク13とは異なる回動軌跡を有している。したがって、保持部材30は、係合ピン31が引込溝13bに引き込まれていない状態(長孔13a内にある状態)であれば、原動リンク13の回動に伴って、係合ピン31を長孔13a内でスライド移動させながら共に回動する。しかし、保持部材30は、係合ピン31が引込溝13bに引き込まれた状態では、係合ピン31の長手方向へのスライド移動が規制された状態となる。これにより、保持部材30は、進行方向に回動しようとする原動リンク13に突き当てられてその回動を規制した係止状態となる。
また、図8に示されるように、長孔13aの終端13c、すなわち、前述した回動中心とは反対側の端部は、係合ピン31のスライド移動を当接によって係止できるようになっている。この長孔13aの終端13cは、図6の仮想線で示されるように、4節リンク機構10の進行方向への回動により、支承部3aが衝突対応位置に到達したときに、係合ピン31が当接するようになっている。これにより、係合ピン31の長手方向へのスライド移動が規制された状態となり、保持部材30は、進行方向に回動しようとする原動リンク13に突き当てられてその回動を規制した係止状態となる。
この押動カム40は、樹脂によって形成されており、図6に良く示されるように、連結軸10dとの連結部を頂点とした略三角形状に形成されている。この押動カム40には、湾曲形状の案内孔41が形成されている。この案内孔41は、同図の実線で示さている押動カム40の紙面内右下方向に滑らかに湾曲した形状に形成されている。そして、この案内孔41には、後述するケーブル部材24のインナー部材24bの上端が案内孔41内をスライド移動自在な状態として掛け入れられている。
これにより、回動カムは、インナー部材24bが紙面内下方向に牽引操作されると、案内孔41の内周面がこのインナー部材24bによって押圧されるかたちで時計回り方向に押し動かされるようになっている。そして、この時計回り方向への回動により、押動カム40は、前述した引込溝13bの内部に引き込まれている保持部材30を下方側から押圧して引込溝13bから押し出す(図8参照)。これにより、係合ピン31は、長孔13a内での長手方向へのスライド移動が許容される状態となる。すなわち、原動リンク13(4節リンク機構10)の進行方向への回動が許容される状態となる。
したがって、車両の後面衝突の発生時には、支承部3aに後傾した乗員の頭部を受け止める受止荷重が作用しても、支承部3aは、進行方向とは逆方向(矢印の逆方向)に押し戻されない状態として保持される。
すなわち、解除操作機構20は、図1に示されるように、加圧板21と、回動軸22と、腕部材23と、ケーブル部材24と、を有する。ここで、ケーブル部材24が本発明の伝達部材に相当する。これら各部材は、シートバック2の形状内部に配設されている。詳しくは、各部材は、図7に示されるように、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2fのサイドフレームFsの前後幅に収まるように配設されている。なお、ケーブル部材24については、その下端側はシートバック2の形状内部に配設されているが、上端側は、図3に示されるように、ヘッドレスト3の幅長方向左側に設けられたステー3bの内部に挿し通されることによってヘッドレスト3の形状内部に配設されている。
詳しくは、加圧板21は、樹脂によって形成されており、図1に示されるように、その上側と下側の縁部がシートバック2の後方側に反り返った湾曲形状に形成されている。ここで、サイドフレームFs,Fsには、これらの間に板状の補強部材Rfが架け渡されて一体的に固定されている。そして、この補強部材Rfには、コ字状に折り曲げられた軸支ブラケットRbが一体的に固定されている。そして、この軸支ブラケットRbに、加圧板21が回動可能に軸支されている。
具体的には、加圧板21は、その幅長方向両側の下端部分に2本の支持棒21a,21aが固着されている。そして、紙面内左側に示された支持棒21aは、その下端部分が、軸支ブラケットRbのコ字状の紙面内左側の腕部分に軸支ピンPによって回動可能に軸支されている。そして、紙面内右側に示された支持棒21aは、その下端部分に連結部材21bが一体的に固着されており、連結部材21bを介して軸支ブラケットRbの紙面内右側の腕部分に軸支ピンPによって回動可能に軸支されている。これら軸支ピンP,Pは、その軸長方向がシートバック2の幅長方向に向けて配されている。これにより、加圧板21は、シートバック2に対して、その形状内部で各軸支ピンP,Pを中心に前後方向に押引動可能な状態とされている。この加圧板21は、常時は図1や図7の実線で示されている前側の姿勢位置に保持されている。そして、加圧板21は、車両の後面衝突の発生により、その勢いで乗員の背部がシートバック2に大きく圧し掛かろうとする背凭れ荷重を受けて、同図の仮想線で示されるように後方側に押し動かされる。
また、紙面内右側に示された支持棒21aの下端部分には、折れ曲がり形状の回動軸22の一端が一体的に連結されている。ここで、回動軸22は、その折れ曲がった先の他端部に、後述するロータリーダンパ50のロータ51が連結されている。この回動軸22の他端は、前述した軸支ピンP,Pと同一軸線上の位置に配置されている。これにより、回動軸22は、上記加圧板21の前後方向への押引動に伴って、他端側の軸部分を中心に軸回動するようになっている。この回動軸22は、その折れ曲がり形状によって、回動軸22の一端側(紙面内左端側)に何らかの障害物が設けられている場合に、これを回避する態様で回動できるようになっている。
ここで、ロータリーダンパ50の内部構造は、図9において詳しく表されている。同図に示されるように、円筒状のダンパーケース52には、その内周面部に、ロータ51の外周面と当接する半径方向の内方に突出した壁形状の区画壁52wが形成されている。一方、ロータ51には、その外周面部に、ダンパーケース52の内周面と当接する半径方向の外方に突出した壁形状の区画壁51wが形成されている。これにより、ダンパーケース52の筒内部の空間が、両区画壁51w,52wによって円周方向に区画されている。そして、このダンパーケース52の筒内部の空間には、粘性流体としてのシリコンオイル53が充填されている。ここで、ロータ51の区画壁51wには、その円周方向(壁厚方向)に貫通したオリフィス51bが形成されている。そして、この区画壁51wの側面、詳しくは同図の紙面内右側の側面には、オリフィス51bの開口部分を閉鎖することのできる弁体51aが固着されている。この弁体51aは、板バネにより形成されており、図9の実線で示されるように、常時はその弾性によりオリフィス51bを開口させた姿勢状態に保持されている。
しかし、弁体51aは、ロータ51が比較的緩やかな速度で回動する場合には、流動圧の影響を受け難いため、この場合にはオリフィス51bを閉鎖しない姿勢状態のままで保持されるようになっている。本実施例では、加圧板21に通常の着座時に生じる徐々に増大していく背凭れ荷重がかかった場合には、オリフィス51bが弁体51aによって閉鎖されないように設定されている。すなわち、この場合には、ロータ51の相対回動に伴ってシリコンオイル53がオリフィス51b内に流れ込むことができる。したがって、このシリコンオイル53の流動運動によって、ロータ51に入力された回動力が吸収され、ダンパーケース52への回動力の伝達が行われなくなる(遮断される)。
一方、弁体51aは、ロータ51が衝撃的な速度を伴って反時計回り方向に回動する場合には、流動圧の影響を受けてオリフィス51bの開口部分を閉鎖する。本実施例では、加圧板21に車両の衝突発生に伴う衝撃的な背凭れ荷重がかかった場合に、弁体51aによってオリフィス51bの開口部分が閉鎖されるように設定されている。すなわち、この場合には、ロータ51の相対回動に伴ってシリコンオイル53がオリフィス51b内に流れ込もうとし、その粘性抵抗に関係した流動圧によりオリフィス51bの開口部分を閉鎖する(仮想線状態)。したがって、オリフィス51bの開口部分が閉鎖されると、シリコンオイル53の非圧縮特性により、ロータ51とダンパーケース52とが回動方向に一体的な状態となる。これにより、ロータ51に入力された回動力がダンパーケース52に伝達され、ダンパーケース52が回動して腕部材23が揺動操作される。
なお、上述した各区画壁51w,52wやオリフィス51b等の構成は、円周方向の一箇所に形成されていても良いし、円周方向の複数箇所に形成されていても良いが、軸対称の位置に形成されていることが好ましい。
また、アウター部材24aの上端は、図4に示されるように、ヘッドレスト3のステー3bと一体に固定されており、インナー部材24bの上端は、前述したように押動カム40の案内孔41に掛け入れられている。このインナー部材24bの上端は、比較的剛性の高いワイヤー部材によって形成されており、その牽引操作に伴って押動カム40を押し動かせるようになっている。
なお、押動カム40は、インナー部材24bによる牽引状態が解かれることにより、重力の作用によって自動的に押し動かされる前の姿勢状態に戻される。したがって、進行方向に回動した4節リンク機構10を初期位置の状態に戻し込む操作を行うことにより、係合ピン31が重力の作用によって自動的に引込溝13bに入り込み、保持部材30と原動リンク13とが再び係止状態となる。
すなわち、図2の仮想線に示されるように、ヘッドレスト3の通常時の初期状態では、支承部3aが初期位置の状態で保持されている。そして、図1を参照して、車両の後面衝突が発生すると、その勢いで乗員の背部がシートバック2に大きく圧し掛かり、加圧板21が後方側に押し動かされる。これにより、図6に示されるように、ケーブル部材24が牽引操作され、保持部材30による4節リンク機構10の保持状態が解除される。そして、これにより、4節リンク機構10は、引張ばねSaの附勢によって、保持部材30の係合ピン31が長孔13aの終端13cと当接する位置まで進行方向(矢印方向)に回動する。これにより、同図の仮想線で示されるように、支承部3aが初期位置の状態(実線状態)から前方かつ上方に移動した衝突対応位置の状態となり、同位置で頭部が後傾してくるのを待ち受ける状態となる。そして、図2に戻って、支承部3aが衝突対応位置(実線位置)まで移動したことにより、支承部3aにかかる頭部の後傾に伴う受止荷重は、4節リンク機構10を進行方向に回動させる押圧力、すなわち係合ピン31を長孔13aの終端13cによって規制されている長手方向にスライド移動させる押圧力として作用する。したがって、支承部3aは、上記の受止荷重を受けても進行方向とは逆方向に押し戻されることはなく、乗員の頭部を衝突対応位置で受け止める。
なお、衝突対応位置(実線位置)まで移動させた支承部3aを元の初期位置(仮想線位置)の状態に戻すには、4節リンク機構10を引張ばねSaの附勢に抗して進行方向(矢印方向)とは逆の回動方向に戻し込むように操作すればよい。これにより、図6に示されるように、係合ピン31が自動的に引込溝13bに落ち込むため、支承部3aを再び初期位置の状態に保持することができる。
また、通常の着座使用時において、例えば体格の大きい乗員によって加圧板21に大きな背凭れ荷重が掛かってしまっても、このような比較的緩やかな速度の動作に対しては、ケーブル部材24は牽引操作されないようになっている。したがって、誤って支承部3aが衝突対応位置まで移動してしまう不測の事態を防止することができる。
例えば、ロータリーダンパ60として、図10や図11に示されているものを使用することもできる。
この図10に示されたロータリーダンパ60は、オリフィス61bの開口部分を閉鎖することのできる弁体61aが球体で形成されている。この球体から成る弁体61aは、オリフィス61b内に流れ込もうとするシリコンオイル63の流動圧を受けてオリフィス61bを閉鎖するようになっている。なお、このロータリーダンパ60は、オリフィス61bの形成された区画壁61wを有するロータ61と、区画壁62wを有するダンパーケース62と、を有し、ダンパーケース62の筒内部の空間に粘性流体としてのシリコンオイル63が充填された構成は上記実施例で示したものと実質的に同じである。
また、図11に示されたロータリーダンパ70は、ロータ71とダンパーケース72とがそれぞれ円盤状に形成されており、その対向する両円盤面に、互い違いに入り込み合う形状の起伏が形成されている。これら起伏は、それぞれ各円盤面の円周方向に沿って形成されており、ロータ71とダンパーケース72との相対回動時には互いに干渉し合わない配置関係となっている。そして、このロータ71とダンパーケース72との間には、粘性流体としてのシリコンオイル73が充填されている。したがって、ロータ71がダンパーケース72に対して衝撃的な速度で回動することにより、シリコンオイル73の粘性抵抗によって、ロータ71からダンパーケース72に回動力が伝達される。しかし、ロータ71が比較的緩やかな速度で回動する場合には、シリコンオイル73が流動運動することにより、ロータ71からダンパーケース72への回動力の伝達が遮断されるようになっている。
また、回動軸の回動運動を軸方向運動として保持部材(ヘッドレスト移動機構)に伝える伝達部材としてケーブル部材を例示したが、リンク部材を用いたものであっても良い。
また、4節リンク機構は、加圧板によって牽引操作されるケーブル部材によって、直接、進行方向に回動操作される構成であってもよい。このようなケーブル部材によって4節リンク機構を直接回動操作する構成は、特開2005−104259号公報等の文献に開示されている。
2 シートバック
2f バックフレーム
Fu アッパフレーム
Fs サイドフレーム
Rf 補強部材
Rb 軸支ブラケット
Bb 支持ブラケット
Sp 軸支部材
P 軸支ピン
2s サポート
3 ヘッドレスト
3a 支承部
3b ステー
10 4節リンク機構(ヘッドレスト移動機構)
10a〜10d 連結軸
11 可動リンク
12 固定リンク(ヘッドレスト基部)
13 原動リンク
13a 長孔
13b 引込溝
13c 終端
14 従動リンク
Sa 引張ばね
20 解除操作機構
21 加圧板
21a 支持棒
21b 連結部材
22 回動軸
23 腕部材
24 ケーブル部材(伝達部材)
24a アウター部材
24b インナー部材
30 保持部材(ヘッドレスト移動機構)
30a 連結軸
31 係合ピン
40 押動カム(ヘッドレスト移動機構)
41 案内孔
50 ロータリーダンパ
51 ロータ
51a 弁体
51b オリフィス
51w 区画壁
52 ダンパーケース
52w 区画壁
53 シリコンオイル(粘性流体)
Claims (2)
- 車両の衝突時に、シートに着座した乗員の頭部を受け止めるヘッドレストの支承部をシートバックに対して相対移動させることのできるヘッドレスト移動機構を備えた車両用シートであって、
前記シートバックの形状内部に配設された加圧板と、
該加圧板の動きを前記ヘッドレスト移動機構に伝える伝達機構と、を有し、
前記加圧板は、車両の衝突発生時に乗員の背部がシートバックに圧し掛かる背凭れ荷重を受けて後方側に押し動かされるように配置されており、
前記伝達機構は、前記加圧板と一体的に連結されて該加圧板をシートバックの骨格を成すバックフレームに対して回動可能に軸支する回動軸と、該回動軸の軸長方向の端部に連結されて該回動軸の回動運動に伴って揺動運動する腕部材と、該腕部材と前記ヘッドレスト移動機構とを連結し前記回動軸の回動運動を軸方向運動としてヘッドレスト移動機構に伝える伝達部材と、を有し、車両の衝突発生時における加圧板の動きを前記ヘッドレスト移動機構に伝えて前記支承部を通常時の初期位置から衝突対応位置に向けて移動させられるようになっており、
前記伝達機構における回動軸と腕部材との伝達連結は粘性流体を用いたロータリーダンパを介して行われており、該ロータリーダンパの回動力の伝達特性は車両の衝突発生時に生じる回動軸の回動は腕部材に伝えるが、通常の乗員の着座時に生じる回動軸の回動は腕部材に伝達しない特性となっていることを特徴とする車両用シート。 - 請求項1に記載の車両用シートであって、
前記ロータリーダンパは、筒状のダンパーケースの中心軸線上にロータが軸回動可能に収納され、該ダンパーケースと筒内部のロータとの間隙に粘性流体が密閉状態で充填された構成となっており、前記ロータ又はダンパーケースの一方が前記回動軸と一体的に連結され、前記ロータ又はダンパーケースの他方が前記腕部材と一体的に連結されており、
前記加圧板に車両の衝突発生に伴う衝撃的な背凭れ荷重がかかった場合には、該加圧板と一体的となって回動する回動軸の回動力が前記ロータリーダンパの内部に充填された粘性流体の粘性抵抗により前記ロータ及びダンパーケースの一方から他方に伝達されて前記腕部材が揺動して伝達部材が操作されるようになっており、
前記加圧板に通常の着座時の速度で背凭れ荷重がかかった場合には、前記ロータリーダンパの内部に充填された粘性流体の流動運動に伴って前記ロータからダンパーケースへの回動力の伝達が遮断され、前記腕部材が制止状態で維持されることを特徴とする車両用シート。
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