JP4652044B2 - カーボンナノチューブ膜の製造方法及び膜剥離強度を向上させたカーボンナノチューブ膜並びに電界電子放出素子 - Google Patents
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従来、カーボンナノチューブを用いて電子放出源を作製するには、スクリーン印刷法等により、カーボンナノチューブペーストを基板上に印刷し、焼成を行って膜を形成した後、この膜の表面に機械的研磨、レーザー照射、プラズマ処理等を施すことにより、カーボンナノチューブの多くを膜表面に露出させる方法が採られている。これにより、カーボンナノチューブを用いた電子放出源の電子放出量を高めることができる。
このカーボンナノチューブペーストは、焼成後に膜中に有機成分が残存した場合、真空環境を汚染する可能性がある。そこで、大気中にて焼成することにより、膜中に有機成分が残存しない様にしている。
現在、この様な目的に適合する無機バインダーとしては、フリットガラス(特許文献1参照)やコロイダルシリカ(特許文献2参照)等が提案されている。
例えば、フリットガラスを用いたカーボンナノチューブペーストの場合、450℃以下で加熱すると、十分な膜剥離強度を得ることができないために、少なくとも450℃を超える温度に加熱する必要がある。
また、このフリットガラスには、銀(Ag)や酸化鉛(PbO)等の低融点の無機成分が含まれているために、これらの無機成分が焼成中にカーボンナノチューブを酸化してしまい、その結果、電子電界放出に寄与するカーボンナノチューブの数が減少してしまうという問題点があった。
このカーボンナノチューブ膜は、カーボンナノチューブの損傷等がなく、ピーリング試験を実施した場合においても、剥離は全く認められないものである。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のカーボンナノチューブ含有ペーストは、カーボンナノチューブと、シランカップリング剤と、有機高分子と、有機溶媒と、シランカップリング剤を加水分解するための水と、触媒とを含有してなるペーストである。
カーボンナノチューブとしては、単層ナノチューブ(SWNT)、二層ナノチューブ(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができる。
また、塗膜に紫外線や電子線を照射してパターニングする目的で、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を添加してもよい。
触媒は、上記のシランカップリング剤の加水分解を促進するためのもので、例えば、硝酸、亜硝酸、塩酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸、アンモニア等の塩基が好適に用いられる。
本実施形態のカーボンナノチューブ膜は、本実施形態のカーボンナノチューブ含有ペーストを用いて形成することができる。
まず、上述したカーボンナノチューブ含有ペーストを、ガラス基板等の基材上に塗布する。
特に、本実施形態のカーボンナノチューブ含有ペーストの様に、粘性が高いペーストの場合、スクリーン印刷法やロールコート法が好適である。
次いで、この塗膜を、恒温槽等を用いて、50℃〜70℃にて30分以上加熱することにより、ペースト中のシランカップリング剤を加水分解させる。
ビニルトリエトキシシランを用いた場合も同様である。
次いで、この塗膜を、大気中、450℃以下の最高保持温度にて所定時間、例えば400℃〜450℃の温度にて30分〜3時間焼成する。
なお、焼成温度が400℃以下でも膜は緻密化するが、ペーストに添加した紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の樹脂を燃焼させるためには、400℃以上にて焼成することが望ましい。
このカーボンナノチューブ膜を電界電子放出源とすることにより、本実施形態の電界電子放出素子を得ることができる。
このカーボンナノチューブ膜は、450℃以下の温度領域で焼成したにもかかわらず、電界電子放出素子として十分な膜剥離強度を有するので、電子電界放出特性が極めて優れたものとなる。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、ビニルトリメトキシシランを含む無機バインダーを11重量%添加し、カーボンナノチューブ含有ペーストとした。
この無機バインダーとしては、ビニルトリメトキシシラン27重量%、メタノール47重量%、水23重量%、1N塩酸3重量%を2℃にて混合したものを用いた。この無機バインダーの加水分解後の固形分は約11重量%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有ペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、50℃にて5時間保持し、ペースト中でビニルトリメトキシシランを加水分解させた。
その後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、テープピーリング試験で剥離しない強度を有していた。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、ビニルトリエトキシシランを含む無機バインダーを11重量%添加し、カーボンナノチューブ含有ペーストとした。
この無機バインダーとしては、ビニルトリエトキシシラン27重量%、エタノール47重量%、水23重量%、1N塩酸3重量%を2℃にて混合したものを用いた。この無機バインダーの加水分解後の固形分は約8.5重量%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有ペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、50℃にて5時間保持し、ペースト中でビニルトリエトキシシランを加水分解させた。
その後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、テープピーリング試験で剥離しない強度を有していた。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、N−2アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含む無機バインダーを15重量%添加し、カーボンナノチューブ含有ペーストとした。
この無機バインダーとしては、N−2アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン30重量%、メタノール40重量%、水25重量%、1N塩酸5重量%を2℃にて混合したものを用いた。この無機バインダーの加水分解後の固形分は約8重量%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有ペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、50℃にて5時間保持し、ペースト中でN−2アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを加水分解させた。
その後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、テープピーリング試験で剥離しない強度を有していた。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、テトラエトキシシランを含む無機バインダーを17重量%添加し、ペーストとした。
この無機バインダーとしては、テトラエトキシシラン33重量%、エタノール33重量%、水33重量%、1N塩酸1重量%を2℃にて混合したものを用いた。この無機バインダーの固形分は約9.5重量%であった。
得られたペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、50℃にて5時間保持し、ペースト中でテトラエトキシシランを加水分解させた。
その後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させた。
次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、随所に剥離が認められ、テープピーリング試験では膜全体が容易に剥離した。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、テトラメトキシシランを含む無機バインダーを15重量%添加し、ペーストとした。
この無機バインダーとしては、テトラメトキシシラン33重量%、メタノール33重量%、水33重量%、1N塩酸1重量%を2℃にて混合したものを用いた。この無機バインダーの固形分は約13重量%であった。
得られたペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、50℃にて5時間保持し、ペースト中でテトラメトキシシランを加水分解させた。
その後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させた。
次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、随所に剥離が認められ、テープピーリング試験では膜全体が容易に剥離した。
カーボンナノチューブ(CNT)、α−テルピネオール、エチルセルロース、アクリル系紫外線硬化性樹脂からなるペースト基剤に、コロイダルシリカを固形分として2重量%添加し、ペーストとした。
得られたペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷法により印刷した後、100℃にて乾燥し、紫外線(UV)を照射してアクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させた。
次いで、大気中、400℃にて3時間焼成した。
得られたカーボンナノチューブ膜は、随所に剥離が認められた。
2 ガラス基板
3 アクリル樹脂
Claims (4)
- カーボンナノチューブと、シランカップリング剤と、有機高分子とを含有し、前記シランカップリング剤は、珪素原子に配位した4つの配位子のうち1つ以上かつ3つ以下の配位子がアルコキシル基またはハロゲン原子からなり、かつ前記4つの配位子のうちアルコキシル基またはハロゲン原子と異なる配位子は、前記有機高分子と相溶性の官能基であるカーボンナノチューブ含有ペーストを、基材上に塗布し、次いで、この塗膜を加熱または電磁波を照射することにより前記シランカップリング剤を加水分解させ、次いで、この塗膜を400℃以上かつ450℃以下の温度にて焼成することを特徴とするカーボンナノチューブ膜の製造方法。
- 前記加熱における温度は、50℃以上かつ70℃以下であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ膜の製造方法。
- 請求項1または2記載のカーボンナノチューブ膜の製造方法により得られたことを特徴とする膜剥離強度を向上させたカーボンナノチューブ膜。
- 請求項3記載の膜剥離強度を向上させたカーボンナノチューブ膜を備えてなることを特徴とする電界電子放出素子。
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