JP4599640B2 - 含フッ素共重合体および低薬液透過性含フッ素樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含フッ素共重合体ならびに該含フッ素共重合体を用いた低薬液透過性に優れた含フッ素樹脂組成物およびその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体分野では、ウェットプロセスに多量の薬液と水が用いられている。その薬液を移送する配管に耐薬品性、耐熱性、溶融成形性の優れたフッ素樹脂が用いられている。なかでもテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)との共重合体(PFA)、特にパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)との共重合体は、耐薬品性、耐熱性、溶融成形性に特に優れているとともに耐ストレスクラック性も良好なことから、薬液搬送用のチューブや継ぎ手などの配管システムとして好んで使われている。
【0003】
しかしながら、このPFA製の配管システムにおいては、薬液の少量の透過が問題となっており、改善の要求がある。現在の半導体工場内では、たとえば、PFAチューブの外側をポリ塩化ビニル(PVC)製などのパイプで覆って二重配管構造にしたり、あるいはウェットステーションまわりにおいては、定期的にPFAチューブの交換を行なったり、PVC製フィルムを巻き付けたり、さらにはチューブ外側を布拭きするなどして対処している。
【0004】
このような対処方法は、当然のことながら設備費用の増大やメンテナンス費の増加を招いており半導体製造コストを引き上げる一因となっている。
【0005】
このように、PFAの薬液の透過問題の解決は、もはや構造面やメンテナンス面からは限界となっており、材質面からの改善がいくつか考えられる。
【0006】
たとえば、薬液透過により優れるフッ素樹脂を使用するという手段があり、フッ素樹脂の中では透過性にもっとも優れるポリクロロトリフルオロエチレンを選択することが考えられるが、この樹脂は耐ストレスクラック性や成形性、耐熱性などに劣るという難点がある。
【0007】
さらに、PFAの結晶化度を増加させるという方法もある。一般的に結晶性高分子の薬液の透過は、非晶部で起こるので、結晶化度を上げることが有利である。PFAにおいては、PAVE組成を減らすことにより結晶化度を上げることが可能であるが、この場合、加工性や耐クラック性が悪化するなどの欠点が生じる。
【0008】
また、特開平10−259216号公報では、水酸基などの反応性基をもつフルオロビニルエーテルを第三成分としてPFAを変性させることで薬液透過性を改良することが開示されている。しかし、この方法では、変性モノマーの末端が−CH2OHという反応性基であるために耐薬品性がかえって低下してしまう。さらには、薬液透過性を室温で発煙硫酸中に4週間浸漬した後の重量増加によってのみ評価しており、実際に薬液の透過量についての記述はない。
【0009】
一方、特開平11−116706号公報では、PFAやテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂成形体に融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下、電離性放射線を照射することで高分子間の架橋を起こし、ガスバリア性を高める方法が開示されている。しかしながら、このような処理を行なうためには専用の設備が必要であり、経済的ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、PFA本来の優れた加工性、耐熱性、耐ストレスクラック性などの特性を低下させることなく、かつ経済的に有利な方法で、薬液透過抑制性に優れた成形品を製造し得る溶融成形可能な含フッ素共重合体および含フッ素樹脂組成物、さらには成形品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のパーフルオロアルキルビニルエーテルでテトラフルオロエチレン系共重合体を変性することで、本来の物性を損なわずに薬液透過抑制性を改良しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、テトラフルオロエチレンからなる繰り返し単位90〜99.4モル%、式(1):
CF2=CF−O−Rf1 (1)
(式中、Rf1は炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基)で示される短鎖のパーフルオロアルキルビニルエーテルの少なくとも1種からなる繰り返し単位0.5〜5モル%および式(2):
CF2=CF−O−Rf2 (2)
(式中、Rf2は炭素数5〜10のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜17のパーフルオロアルコキシアルキル基)で示される長鎖のパーフルオロビニルエーテルの少なくとも1種からなる繰り返し単位0.1〜5モル%からなり、メルトフローレートが0.1〜100g/10minで融点が290〜325℃である含フッ素共重合体に関する。
【0013】
式(2)で示される長鎖のフルオロビニルエーテルにおいてRf2が、式(3):
−(CF2C(CF3)FO)n-Rf3 (3)
(式中、nは1〜4の整数、Rf3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)からなるパーフルオロアルコキシル基が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の新規な共重合体は、TFEおよび式(1)で示される短鎖のパーフルオロアルキルビニルエーテルと式(2)で示される長鎖のパーフルオロビニルエーテルとの3元共重合体である。
【0015】
式(1)で示される短鎖のパーフルオロアルキルビニルエーテルには、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられる。なかでもパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(PPVE)が好ましい。
【0016】
また、式(2)で示される長鎖のパーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、パーフルオロ(ペンチルビニルエーテル)、パーフルオロ(ヘキシルビニルエーテル)、パーフルオロ(ヘプチルビニルエーテル)などがあげられる。
【0017】
さらに式(2)で示される長鎖のフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルとしては、Rf2が式(3):
−(CF2C(CF3)FO)n-Rf3 (3)
(式中、nは1〜4の整数、Rf3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)からなるパーフルオロアルコキシル基が好ましい。具体例としては、たとえば
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)−CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)3−CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)−CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)3−CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)−CF2CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF2CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)3−CF2CF2CF3などがあげられる。
【0018】
なかでも、CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)−CF2CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF2CF2CF3、
CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)3−CF2CF2CF3が特に好ましい。
【0019】
TFE、式(1)で示される側鎖の短いパーフルオロアルキルビニルエーテル(1)、式(2)で示される側鎖の長いパーフルオロビニルエーテル(2)に基づく重合単位の組成は、TFE/(1)/(2)が90〜99.4/0.5〜5/0.1〜5(モル%)の範囲であり、好ましくは94〜99.4/0.5〜3.0/0.1〜3.0(モル%)である。
【0020】
短鎖のビニルエーテル(1)単位が5モル%よりも多くなると、結晶化度の低下により耐熱性が低下する。また、短鎖のビニルエーテル(1)単位が、0.5モル%よりも少なくなると溶融成形性や耐ストレスクラック性が低下する。
【0021】
また、長鎖のビニルエーテル(2)単位が5モル%よりも多くなると、結晶化度の低下により薬液の透過抑制効果が低下する。また、0.1モル%よりも少なくなると変性量が少なすぎて薬液の透過抑制効果が不充分となる。
【0022】
特に薬液の透過抑制効果に優れる点で好適な共重合体としては、限定的ではないが、たとえばTFE/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)/CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)−CF2CF2CF3(90〜99.4/0.5〜5/0.1〜5)、TFE/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)/CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF2CF2CF3(90〜99.4/0.5〜5/0.1〜5)、TFE/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)/CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)3−CF2CF2CF3(90〜99.4/0.5〜5/0.1〜5)などがあげられる。
【0023】
なお、TFEの共重合成分としてとパーフルオロビニルエーテルを2種以上使用してもよいと記載されている先行文献はあるが(たとえば特公平4−83号公報、特開平7−304832号公報など)、本発明の特定のパーフルオロビニルエーテル、すなわち短鎖のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(1)および長鎖のパーフルオロビニルエーテル(2)とを特定割合で共重合した具体例はなく、また本発明の含フッ素共重合体が薬液不透過性に優れるという特異な効果を奏することも知られていない。
【0024】
本発明の含フッ素共重合体は融点が290〜325℃のものであり、そのメルトフローレートは0.1〜100g/10minであり、0.5〜30g/10minであることが好ましい。特にチューブに成形する場合には、耐ストレスクラック性および溶融成形性に優れる点から1〜3g/10minであることが望ましい。
【0025】
本発明の含フッ素共重合体の重合方法は何ら限定されるものでなく、当業者に周知の乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などにより通常の重合条件で製造できる。
【0026】
本発明によれば、薬液透過が抑制された成形品が製造できる。特に後述する薬液透過試験方法で測定した40日後の硝酸透過量が2.0×10-6g・cm/cm2以下、好ましくは1.6×10-6g・cm/cm2以下の成形品を得ることができる。したがって本発明は前記含フッ素共重合体を用いて成形された成形品にも関する。
【0027】
また本発明の含フッ素共重合体に薬液透過抑制剤を添加して得られる含フッ素樹脂組成物を用いて成形することにより、さらに硝酸透過量が少ない成形品を得ることができる。
【0028】
したがって本発明は、前記含フッ素共重合体と薬液透過抑制剤とからなる含フッ素樹脂組成物に関する。
【0029】
本発明で使用する薬液透過抑制剤としては、非晶質含フッ素ポリマーまたは非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメントをもつ含フッ素多元セグメント化ポリマーがあげられる。
【0030】
ここで、「非晶質」とは、示差走査型熱量計(DSC)で測定した場合融解ピーク温度(昇温時、Tm)および結晶化ピーク温度(降温時、Tc)の両方を有さず、ガラス転移温度(Tg)を有することをいう。換言すれば、実質的に結晶化した領域を有しないことをいう。一方、「結晶性」とはTmおよびTcを有することをいう。
【0031】
また、含フッ素多元セグメント化ポリマーにおける「非晶質」セグメント(A)および「結晶性」セグメント(B)は、それぞれのセグメントと同一の繰返し単位をもつポリマーが前記の「非晶質」および「結晶性」の定義を満たすものをいう。
【0032】
本発明で用いる薬液透過抑制剤である非晶質含フッ素ポリマーおよび含フッ素多元セグメント化ポリマーの中の非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)はガラス転移温度(Tg)を有する。Tgが室温(25℃)以下の非晶質ポリマーをエラストマーといい、Tgが25℃を超えるものを樹脂という。Tgが25℃以下のエラストマーを使用するときは薬液透過抑制効果が大きいという点で好ましく、用いる結晶性PFAとの相溶性に応じて選択することができる。しかし、本発明で用いる非晶質含フッ素ポリマーまたは非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)はTgが25℃以下のエラストマーでも25℃を超える樹脂でもよい。
【0033】
本発明に用いる薬液透過抑制剤には、非晶質含フッ素ポリマーからなるものと、前記含フッ素多元セグメント化ポリマーからなるものがあるが、まず非晶質含フッ素ポリマーからなるものについて説明する。
【0034】
非晶質含フッ素ポリマーとしてはTgが25℃以下の含フッ素エラストマーとTgが25℃を超える非晶質含フッ素ポリマー樹脂がある。
【0035】
含フッ素エラストマーとしては、たとえばテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体などのパーフルオロエラストマー;ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの水素原子含有含フッ素エラストマーなどがあげられる。
【0036】
これらのうち、PFA用の薬液透過抑制剤としてはTFE−PAVE共重合体がPFAとの相溶性の点から好ましい。TFE−PAVE共重合体に用いるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などがあげられる。PAVEの含有量はTFE−PAVE共重合体がTm、Tcを有さなくなる量である10〜50モル%、好ましくは20〜50モル%である。なお、非晶質と結晶性との境界が10〜20モル%の範囲内にあるが、非晶質であれば薬液透過抑制剤として使用できる。
【0037】
含フッ素エラストマーはフッ素ゴムの製造法として公知の重合法で製造できる(特公昭58−4728号公報、特開昭62−12734号公報)。
【0038】
たとえば実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記含フッ素モノマーを加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下乳化重合を行なう方法があげられる。
【0039】
用いるジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカンおよび1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタンである。これらの化合物は単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。なかでも、1,4−ジヨードパーフルオロブタンが好ましい。ジヨウ素化合物の量は、含フッ素モノマー全重量に対して0.01〜1重量%である。
【0040】
また、本発明において含フッ素エラストマーには、ヨウ素を含む単量体を共重合することも可能である。ヨウ素を含む単量体としては、パーフルオロビニルエーテル化合物がその共重合性から好適である。たとえば、特公平5−63482号公報や特開昭62−12734号公報に開示されているパーフルオロ(6,6ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)や、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などが好適である。
【0041】
重合温度は、使用する開始剤の性質及びモノマーによって約10℃〜100℃の範囲で変えることができる。しかし40℃未満では、過硫酸塩単独では重合速度が小さい。また、亜硫酸塩等を添加したレドックス系を使用しても、重合速度が小さく、その上、還元剤の金属イオンがポリマー中に残り、半導体製造用の用途などでは好ましくない。
【0042】
使用するラジカル重合開始剤は、従来からフッ素系エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。しかしクリーン度を要求される場合は、金属イオン源となる還元剤はできる限り使用しない方が好ましい。
【0043】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中に乳化剤分子への連鎖移動反応が起こるのを抑制する観点から、フルオロカーボン鎖または、フルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が望ましく、特に0.2〜1.5重量%が望ましい。
【0044】
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜5MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度は大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが望ましい。
【0045】
かくして得られる含フッ素エラストマーの数平均分子量は5,000〜750,000、さらに20,000〜400,000、特に50,000〜400,000とするのが、結晶性含フッ素樹脂との混合が良好である点から好ましい。
【0046】
Tgが25℃を超える非晶質含フッ素ポリマー樹脂としては主鎖に環状構造を有する非晶質含フッ素ポリマーがあげられ、たとえばテトラフルオロエチレン−フルオロジオキソール共重合体(特公昭63−18964号公報参照、たとえばテトラフルオロエチレン−フルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール共重合体など);少なくとも2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪属環構造を有する非晶質含フッ素ポリマー(たとえばパーフルオロアリルビニルエーテル、パーフルオロブテニルビニルエーテルなどのパーフルオロモノマーの環化重合物;またはこれらのパーフルオロモノマーとテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などのラジカル重合性モノマーとの共重合体)などがあげられる。これらのうち耐熱性、耐薬品性の点からテトラフルオロエチレン−パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール共重合体やパーフルオロアリルビニルエーテル重合体などのパーフルオロ非晶質ポリマーが好ましい。
【0047】
つぎに含フッ素多元セグメント化ポリマーについて説明する。
【0048】
本発明で薬液透過抑制剤として使用する含フッ素多元セグメント化ポリマーは、非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)と結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)とからなる。
【0049】
非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)には、前記非晶質含フッ素ポリマーと同じく、エラストマー性のものと樹脂性のものとがある。
【0050】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)はTgが25℃以下のセグメントであり、たとえば前記含フッ素エラストマーとして列挙した共重合体があげられ、また前述のヨウ素移動重合法で製造できる。ヨウ素移動重合法で製造した場合、このセグメントの末端部分はヨウ素原子を含むパーハロ型となっており、結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)をブロック共重合する際の開始点として利用できる。
【0051】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)の数平均分子量としては、5,000〜750,000、さらに20,000〜400,000、特に50,000〜400,000とするのが好ましい。
【0052】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)として特に好ましいセグメントとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)繰返し単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)繰返し単位とからなるエラストマー性TFE−PAVEセグメントである。この場合、PAVE繰返し単位の含有量はセグメントがTg25℃以下でTmとTcをもたない量、すなわち10〜50モル%、好ましくは20〜50モル%である。なお、非晶質と結晶性との境界が10〜20モル%の範囲内にあるが、非晶質の範囲のものを用いる。
【0053】
本発明で用いる含フッ素多元セグメント化ポリマーの結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)は、マトリックスである結晶性含フッ素樹脂に混合した場合、非晶質セグメント(A)がパーティクルとしてマトリックス樹脂から脱落しないように、アンカーの働きをする。したがって、結晶性セグメント(B)は結晶性含フッ素樹脂と相溶性のよいものが選ばれる。具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)繰返し単位と式(6):
CF2=CF−Rf4 (6)
[式中、Rf4はCF3またはORf5(Rf5は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)である]で示される繰返し単位からなり、式(6)の繰返し単位を20モル%以下、好ましくは0〜10モル%、さらに好ましくは0〜4モル%含むものである。20モル%を超えて式(6)の単位を含むときは非晶質となり、アンカー効果が不充分となり好ましくない。なお、非晶質と結晶性の境界が10〜20モル%の範囲内にあるが、結晶性のものを用いる。
【0054】
式(6)で示されるモノマーの具体例としては、たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)があげられ、PAVEとしてはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などがあげられ、特にPFAとの相溶性が良好な点からPPVEが好ましい。
【0055】
結晶性セグメント(B)として特に好ましいものとしては、TFE繰返し単位のみからなるPTFEセグメントまたは結晶性PFAセグメントである。
【0056】
結晶性セグメント(B)の非晶質セグメント(A)へのブロック共重合は、非晶質セグメント(A)の乳化重合に引き続き、単量体を結晶性セグメント(B)用に変えることにより行なうことができる。結晶性セグメント(B)の数平均分子量は、1,000〜1,200,000、好ましくは3,000〜400,000、特に好ましくは10,000〜400,000と広い幅で調整できる。
【0057】
かくして得られる含フッ素多元セグメント化ポリマーは、非晶質セグメント(A)の両側に結晶性セグメント(B)が結合したポリマー分子(B−A−B)、非晶質セグメント(A)の片側に結晶性セグメント(B)が結合したポリマー分子(A−B)を主体とするものである。
【0058】
本発明において含フッ素多元セグメント化ポリマー中の非晶質セグメント(A)と結晶性セグメント(B)との割合は、前記分子量の範囲内で選定すればよいが、たとえば重量比でA/Bが10/90〜99/1、特に25/75〜95/5であるのが好ましい。また、含フッ素多元セグメント化ポリマーの分子量は、結晶性含フッ素樹脂との混合が良好となる分子量であればよい。
【0059】
より具体的には、たとえばつぎのセグメントの組み合わせがあげられる。
(1)非晶質セグメント(A)が、数平均分子量50,000〜400,000のTFE−PMVE(80/20〜50/50。モル比)
結晶性セグメント(B)が、数平均分子量10,000〜400,000のTFE−PPVE(100/0〜80/20。モル比)
セグメント化ポリマーの構成:B−A−B
このセグメント化ポリマーはPFAの球晶を微小化し、かつアンカー効果を有し、PFAの物性を低下させずに薬液透過性を抑制する点で優れている。
【0060】
これらの薬液透過抑制剤を配合することにより、硝酸透過量を30%以上低減することができる。
【0061】
また、本発明で使用する薬液透過抑制剤は、その耐熱性を向上させ、さらに成形品の薬液透過抑制効果をさらに強化する目的でフッ素ガス処理を施すことが好ましい。
【0062】
フッ素ガス処理は、フッ素ガスを薬液透過抑制剤に接触させることにより行なう。しかし、フッ素との反応は非常に発熱性であるから、フッ素を窒素のような不活性ガスで希釈することが好適である。フッ素ガス/不活性ガス混合物中のフッ素量は1〜100重量%、好ましくは10〜25重量%である。処理温度は150〜250℃、好ましくは200〜250℃であり、フッ素ガス処理時間は3〜16時間、好ましくは4〜12時間である。フッ素ガス処理のガス圧は1〜10気圧の範囲であるが、好ましくは大気圧が使用される。反応器を大気圧で用いる場合、フッ素ガス/不活性ガス混合物を反応器中へ連続的に通過させればよい。その結果、薬液透過抑制剤中の不安定な末端は−CF3末端に転化され、熱的に安定となる。またヨウ素移動重合法で得られた含フッ素エラストマーおよび含フッ素多元セグメント化ポリマーに結合するヨウ素を検出限界以下まで除去することができる。
【0063】
薬液透過抑制剤の配合量は、含フッ素共重合体100部(「重量部」、以下同様)に対し、0.1〜50部、好ましくは0.25〜20部である。薬液透過抑制剤が多くなりすぎると機械的強度が低下するといった点が問題となる。
【0064】
本発明の共重合体および樹脂組成物の成形方法としては、従来のPFAと同様に圧縮成形、トランスファ成形、押出成形、射出成形、ブロー成形などの成形法が適用できる。
【0065】
このような成形法により所望の成形品を得ることができるが、成形品の例をあげると、シート、フィルム、パッキン、丸棒、角棒、パイプ、チューブ、丸槽、角槽、タンク、ウェハーキャリア、ウェハーボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプ、バルブ、コック、コネクター、ナットなどがある。
【0066】
これらのうち、特に薬液の不透過性が要求される各種の化学反応装置、半導体製造装置、さらには酸系またはアルカリ系の薬液供給装置などに使用するチューブ、パイプ、タンク、コネクターなどに好適に使用できる。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
まず、以下の実施例および比較例における各種物性測定は、以下の手順で行なった。
【0069】
(1)組成分析
19F−NMR法とIR法の併用によりポリマー組成を決定する。
【0070】
(2)熱分解温度
示差走査熱量計(セイコー電子(株)製、RDC−220)において10℃/minの昇温速度により1.0重量%減少時の温度(℃)である。
【0071】
(3)融点
示差走査熱量計(セイコー電子(株)製、RDC−220)により10℃/minで昇温したときの融解曲線から求められた値(℃)である。
【0072】
(4)メルトフローレート(MFR)
ASTM D 2116に従い、メルトインデクサー(東洋精機(株)製)を用いて、372℃、5kg荷重で測定した値(g/10min)である。
【0073】
(5)MIT値(耐屈曲疲労性)
ASTM D2176に従い、MIT式耐屈曲疲労試験機((株)東洋精機製作所製)を用い、試験片は厚さ0.20〜0.23mmの圧縮成形シートから切り出す。試験条件は、12.15N(1.25kgf)の荷重をかけ、屈曲速度178回/分、屈曲角度135°で測定する。
【0074】
(6)機械強度
ASTM D638に従い、テンシロン引張試験機((株)島津製作所製)を用い測定する。試験片は厚さ1.0mmの圧縮成形シートから切り出す。
【0075】
(7)薬液透過試験
ヒートプレスを用いた350℃での圧縮成形により、厚さ0.2mm、120mmφのシートを作製する。
【0076】
このサンプルシート1を図1に概略側面図として示す2個のガラス容器2aおよび2b(いずれも容量200ml)の中央にフッ素ゴム製のO−リング3を用いて挟み込む。シートの片側の容器2aに60重量%濃度の硝酸を、他方の容器2bに純水をそれぞれ200mlずつ入れて、25℃の恒温槽内に置く(サンプルシート1の接液面は70mmφとする)。この状態で放置し、40日後に純水側の容器2bのサンプリング口4から1mlほどサンプリングを行ない、その純水中に含まれる硝酸イオン濃度(Yppm)をイオンクロマトグラフ(横河電機(株)社製、IC7000-E)を用いて定量する。硝酸透過量(Xg・cm/cm2)は、次の式を用いて算出する。
X=Y×200×0.02×10-6/(3.5×3.5×3.14)
【0077】
実施例1
内容積4.2リットルのオートクレーブに純水1000mlを仕込んだ。ついで、内部空間を純窒素ガスで充分置換した後、真空に引き、溶媒としてパーフルオロシクロブタン800g、PPVE40g、CF2=CFO−(CF2C(CF3)FO)2−CF2CF2CF3(「n=2VE」と略す)4gおよびメタノール7.0gを仕込んだ。攪拌を行ない、内温を35℃に保持し、TFEを圧入しオートクレーブ内を0.83MPaGに保った。重合開始剤としてn-プロピルパーオキシジカルボネートを1.75g仕込み反応を開始させた。反応の進行と共に圧力が降下するので、TFEを追加圧入して反応圧力を0,83MPaGに保持した。TFEの仕込み量が230gになった時点で攪拌を止め、未反応の単量体と溶媒をパージ除去した。オートクレーブ内に生成した白色粉末をまず水、つぎにCH3CCl2F(R-141b)を用いて洗浄した後、200℃で5時間乾燥し、目的とする含フッ素共重合体236gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0078】
実施例2
n=2VEおよびメタノールの仕込み量をそれぞれ13g、2.0gとした以外は、実施例1と同様の方法で目的とする含フッ素共重合体245gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0079】
実施例3
PPVE、n=2VEおよびメタノールの仕込み量をそれぞれ20g、13gおよび2.0gとした以外は、実施例1と同様の方法で目的とする含フッ素共重合体237gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0080】
実施例4
PPVEおよびn=2VEの仕込み量をそれぞれ30gおよび8gとした以外は、実施例1と同様の方法で目的とする含フッ素共重合体245gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0081】
実施例5
PPVE、n=2VEおよびメタノールの仕込み量をそれぞれ35g、34gおよび2.0gとした以外は、実施例1と同様の方法で目的とする含フッ素共重合体237gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0082】
実施例6
PPVE、n=2VEおよびメタノールの仕込み量をそれぞれ35g、34gおよび4.0gとした以外は、実施例1と同様の方法で目的とする含フッ素共重合体235gを得た。
硝酸透過量を含むこの共重合体の物性を表1に示す。
【0083】
実施例7
(含フッ素多元セグメント化ポリマーの合成)
内容積47リットルのステンレス製オートクレーブに、純水30リットルおよび乳化剤としてC7F15COONH4300g、pH調整剤としてリン酸水素二ナトリウム・12水塩300gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、200rpmで攪拌しながら50℃に昇温し、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=32/68モル比)を内圧が0.78MPaGになるように仕込んだ。ついで過硫酸アンモニウム(APS)の55.8mg/mlの濃度の水溶液100mlを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0084】
重合の進行により内圧が0.69MPaGまで降下した時点で、ジヨウ素化合物I(CF2)4Iを27.24gとC7F15COONH4の10重量%水溶液234gの混合物を窒素圧にて圧入した。ついで圧力が0.78MPaGになるように、TFEを自圧にて60g、PMVE58g(TFE/PMVE=63/37モル比)をプランジャーポンプにて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、0.69〜0.78MPaGのあいだで昇圧降圧を繰り返した。
【0085】
重合反応の開始から12時間後、TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、6000gになった時点でオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度18.04重量%の水性分散体を得た。
【0086】
この水性分散体の一部を取り、凍結させ凝析を行ない、解凍後、凝析物を水洗、真空乾燥してエラストマー性の非晶質重合体を得た。この重合体のムーニー粘度ML1+10(100℃)は94であった。極限粘度は[η]=0.654dl/gであった。
【0087】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成はTFE/PMVE=60/40モル%であり、DSC分析により測定したTg(中央値)は2℃であった。
【0088】
内容積3リットルのステンレス製オートクレーブに、上記で得られた非晶質重合体の水性分散体349g、純水685g、PPVE26.4gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換したのち、系内の温度を80℃に保った。400rpmで撹拌を行ないながらTFEを内圧が0.78MPaGとなるよう圧入した。
【0089】
ついで過硫酸アンモニウム(APS)10mgを水2mlに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0090】
重合反応の進行にともなって圧力が低下するので、0.69MPaGまで低下した時点でTFEで0.78MPaGまで再加圧し、0.69〜0.78MPaGの間で降圧昇圧を繰り返した。
【0091】
重合開始よりTFEが189g消費された時点で供給を止め、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、半透明の水性分散体1231gを得た。
【0092】
得られた水性分散体中の固形分濃度は20.2重量%であり、動的光散乱法で測定した粒子径は82.3nmであった。
【0093】
ポリマーの得量の増加により計算された重合体全体に対する結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)の比率、すなわち、{(後重合で得られたポリマー得量)−(仕込んだポリマー量)}÷(後重合で得られたポリマー得量)×100は75重量%であった。
【0094】
得られた水性分散体を凍結凝析し、析出したポリマーを洗浄、乾燥し、白色固体を得た。
【0095】
得られた含フッ素多元セグメント化ポリマー中の結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)の組成は19F−NMR分析により、TFE/PPVE=97.1/2.9モル%であった。また、DSC分析により、非晶質含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)はTm、TcをもたずTgは2℃であり、結晶性含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)のTmおよびTcはそれぞれ312.7℃および294.3℃であった。またセグメント化ポリマーのMFRは11g/10minであった。
【0096】
(含フッ素樹脂組成物の製造)
上記で製造した含フッ素多元セグメント化ポリマーからなる薬液透過抑制剤1部を実施例6で合成したPFA100部に溶融混練して含フッ素樹脂組成物を調製した。溶融混練は、東洋精機(株)製のローラーミキサーR−60H型(ミキサー容量約60ml)に各成分を投入し、350℃にて回転数15rpmで10分間溶融混練して行なった。
【0097】
得られた含フッ素樹脂組成物に対し、つぎの要領でフッ素化処理を行なった。
【0098】
専用トレイに入れた含フッ素樹脂組成物を箱型反応オーブンに入れて密閉し、窒素ガスで充分に置換したのちフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガス濃度20重量%)を0.6リットル/分の流速で5時間通した。オーブン内は大気圧とし、230℃に保った。
【0099】
反応終了後、加熱を中止するとともに窒素ガスに切替え、約2時間にわたってフッ素ガスを充分に除いた。
硝酸透過量を含むこのフッ素化処理含フッ素樹脂組成物の物性を表1に示す。
【0100】
比較例1
n=2VEを仕込まなかった以外は実施例1と同様にして、TFE−PPVEの2元共重合体235gを得た。
硝酸透過量を含むこの2元共重合体の物性を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
以上の実施例1〜6の結果(表1)から、長鎖のパーフルオロビニルエーテル(2)(n=2VE)で変性した3元の含フッ素共重合体の薬液透過量は、2元の共重合体である比較例1と比べて30%以上も低減している。さらに実施例7の結果に示すように、含フッ素多元セグメント化ポリマーを薬液透過抑制剤として1重量%添加するだけで、硝酸透過量を30%以上低減することができる。
【0103】
また、本発明で得られた新規含フッ素共重合体に融点や分解温度の著しい低下は認められず、比較例1と同様に高い耐熱性を有していた。また、MIT値についても著しい低下は認められず、優れた耐屈曲性を保持していた。したがって、耐熱性や耐屈曲性などが要求される半導体製造装置用のチューブ、パイプ、タンク、コネクターなどに最適である。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、側鎖の長いパーフルオロビニルエーテルで変性することにより得られる新規な含フッ素共重合体は、本来の優れた耐熱性、耐ストレスクラック性および加工性を保持しつつ、薬液透過抑制性が向上しており、この共重合体または共重合体と薬液透過抑制剤との樹脂組成物から得られる成形品は、半導体製造装置などの分野で使用する材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形品の薬液透過性を調べるために使用した試験装置の概略側面図である。
Claims (4)
- テトラフルオロエチレンからなる繰り返し単位90〜99.4モル%、式(1):
CF2=CF−O−Rf1 (1)
(式中、Rf1は炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基)で示される短鎖のパーフルオロアルキルビニルエーテルの少なくとも1種からなる繰り返し単位0.5〜5モル%および式(2):
CF2=CF−O−Rf2 (2)
(式中、Rf2は式(3):
−(CF 2 C(CF 3 )FO) n -Rf 3 (3)
(式中、nは1〜4の整数、Rf 3 は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)からなるパーフルオロアルコキシアルキル基)で示される長鎖のパーフルオロビニルエーテルの少なくとも1種からなる繰り返し単位0.1〜5モル%からなり、メルトフローレートが0.1〜100g/10minで融点が290〜325℃である含フッ素共重合体。 - 請求項1記載の共重合体100重量部に対し、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる非晶質ポリマー鎖セグメント(A)およびテトラフルオロエチレン繰り返し単位80〜100モル%と式(6):
CF2=CF−Rf4 (6)
(式中、Rf4はCF3またはORf5(Rf5は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)である)で示される繰り返し単位0〜20モル%からなる結晶性ポリマー鎖セグメント(B)とからなる含フッ素多元セグメント化ポリマーあるいはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる非晶質ポリマーを0.1〜50重量部含んでなる含フッ素樹脂組成物。 - 請求項1記載の含フッ素共重合体または請求項2に記載の含フッ素樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
- 薬液透過試験における40日後の硝酸透過量が、2.0×10-6g・cm/cm2以下である請求項3記載の成形品。
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