JP4543546B2 - 磁気記録媒体用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムの品質、特に熱的寸法安定性と表面特性を大幅に向上させた2軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
2軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御し易さから各種用途に使用されており、特に磁気テープ用などのベースフィルムとしての有用性は周知である。近年、磁気テープは機材の軽量化、小型化と長時間記録化のために高密度記録化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録信号を小型化することが有効である。
【0003】
高密度記録化、記録信号の小型化に伴い、磁性層の形態は、酸化鉄塗布型からメタル塗布型、金属蒸着型へ移行しており、特にデジタルビデオテープ等の高密度記録が求められる用途において、ベースフィルムの片側表面に強磁性金属薄膜層(以後、蒸着層とする)を設けた蒸着型の磁気記録媒体が広く用いられるようになってきている。この蒸着層の厚さは通常0.04〜0.5μm程度で、他の種類の磁性層と比較して、非常に薄いため、ベースフィルムの表面がそのまま磁気テープの表面形状となる。このため、突起高さや突起個数、表面粗さなどのベースフィルムの表面性を非常に精密にコントロールする必要がある。
【0004】
また、記録信号を小型化すると、磁気テープの走行時における熱や、またテープ保存時の熱変形により、記録トラックのずれを起こしやすくなる問題点がある。また、強磁性金属薄膜層を設けて磁気記録媒体とする蒸着加工工程での熱により、フィルムの平坦性の悪化やオリゴマー発生による電磁変換特性の低下の問題、さらに、磁気記録媒体を使用する所が高温であったりするため、フィルムが高温環境下でも熱寸法安定性が高く、品質低下しないことが求められてきている。
【0005】
したがって、高密度記録の、特に蒸着型磁気記録媒体用ベースフィルムにおいては、特に微細な表面形態の制御と熱に対する寸法安定性、品質安定性が要求されているのが現状である。また、これらの製品を安価に市場に供給するためには、高い生産性を必要とすることは言うまでもない。
【0006】
表面性をコントロールするという点では、従来、表面突起形成のための粒子を含有させた積層ポリエステルフィルムや(例えば特開平7−272249号公報)、微粒子を含んだ不連続被膜をコーティングする手法(例えば特開平3−208639号公報)等が知られている。しかしながら、ポリエステルの耐熱性の低さに起因して、蒸着工程で加えられる熱による「しわ」の発生やオリゴマー析出など、蒸着工程の安定性に関する問題等が残されているのが現状である。
【0007】
上記の耐熱性や寸法安定性の要求に応え得るベースフィルムとして、従来からアラミドフィルム(例えば特開平10−114038号公報)が知られている。
アラミドフィルムは高価格であるためコストの点では不利であり、また、従来のポリエチレンテレフタレートフィルムの様に溶融押出による成型が不可能であるため生産効率も低いという点でも不利であり、低価格で高い生産性を有するベースフィルムの開発が切望されている。
【0008】
これに対して、高い生産性を有する2軸配向ポリエステルフィルムの寸法安定性を改善する技術として、鋭意検討の結果、ポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドからなる2軸配向ポリエステルフィルム(特開平12−141475号公報)を開発した。
【0009】
しかしながら、この高い生産性を有する2軸配向ポリエステルフィルムを蒸着型磁気記録媒体用ベースフィルムに用いるに当たっては、蒸着型ベースフィルムとしての好ましい表面形態に制御する手法が全く知られておらず、まして、オリゴマーの析出や、蒸着工程での「しわ」の発生を抑制するなど、蒸着安定性の問題を解決する手法に関しては、何ら知見も得られていないのが現状である。前述の表面をコントロールする手法を上記フィルムに適用する際にも、ポリエステルとポリイミドの表面のぬれ特性の違いやポリマーとコーティング液の親和性の違いに基づく、コーティング斑の問題や、ポリエステルとポリイミドの溶融粘度の違いによる積層状態の悪化など、様々な困難な問題が残されており、その適用法は全く知られていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い生産性と寸法安定性を有するポリエステルとポリイミドからなる2軸配向ポリエステルフィルムの特性を改善し、表面粗さなどの表面形態が精密にコントロールされ、特に蒸着型の磁気記録媒体用ベースフィルムして使用したときに良好な電磁変換特性を示す高密度磁気記録テープを製造でき、磁気記録媒体用ベースフィルムとして好適な2軸配向ポリエステルフィルムを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的は、ポリエステルとポリイミドを必須成分としてなる基層部(A層)を有する、少なくとも2層以上のフィルム層で構成される全厚みが3〜8μmである積層ポリエステルフィルムであって、一方の表面(f面)に突起高さ5nm〜25nmの突起が500万〜7000万個/mm2存在し、f面側の表面粗さRaf、反対側の表面(b面)の表面粗さRab、f面側のフィルム表面の粗大突起数H1、H2が以下の関係を満たす磁気記録媒体用ポリエステルフィルムとすることによって達成できる。
0.1≦Raf(nm)≦5
5≦Rab(nm)≦20
0≦H1(個/100cm2)≦100
0≦H2(個/100cm2)≦1
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルムは基層部(A層という)の少なくとも一方に積層部(B層という)が積層されてなる、少なくとも2層以上のフィルム層を有する積層ポリエステルフィルムである。1層のみからなるフィルムである場合は本発明の特性を満足させることができない。A層は磁気記録媒体用として用いる際、一般的にフィルム中で最も厚みの厚い層であり、主に強度、寸法安定性の保持などの働きをする層である。さらに、一般的には製膜性に最も大きな影響を与える層でもある。また、積層部であるB層はA層よりもフィルム層の厚みが薄い層であり、主に磁気テープとした際のテープ走行性や走行耐久性を得る働きをする層で、比較的粗い表面とすることで、良好な走行性を得ることもできる。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムにあっては、これを構成する少なくともA層が2軸に配向している必要がある。全ての層が無配向や一軸配向では本発明の特性を満足させることができない。
【0014】
本発明のA層はポリエステルとポリイミドを必須成分とするポリマーアロイを必須成分としてなる。ここでいうポリマーアロイとは、高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドであってもよい。ただし、粒子として市販されている物を外部添加した場合を除く。また、ここでいう「必須成分としてなる」とは、該成分が全体の80重量%以上を占める場合をいい、例えば、上記の場合では、ポリエステルとポリイミドの総量がA層の80重量%を占めることをいう。
【0015】
本発明で用いるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分から構成されるポリエステル単位を70重量%以上含有するポリマーである。
【0016】
酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましく例示される。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0017】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールが特に好ましく例示される。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明で用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)が特に好ましく例示され、溶融成形性や2軸延伸性(製膜性)の観点から、最も好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0019】
また、ポリエステルには、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸等の多官能化合物、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸あるいはp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の量であればさらに共重合してもよい。
【0020】
本発明で用いるもう一つのポリマーのポリイミドは、ポリエステルと良好な親和性を有し、溶融成形性であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。なお、ここでいう良好な親和性(相溶性)を有するとは、例えば、ポリマー1とポリマー2からなるポリマーアロイを用い、未延伸または2軸延伸フィルムを作成し、該フィルム断面を透過型電子顕微鏡で3万〜50万倍の倍率で観察した場合、外部添加粒子などの添加物に起因しない直径200nm以上の構造(例えば、分散不良のポリマードメインなど)が観察されないことをいう。ただし、ポリマー1とポリマー2の親和性を判定する方法は特にこれに限定されるものではなく、また、必要に応じて、温度変調型DSC(MDSC)によって単一のガラス転移点が観察されることによって良好な親和性があると判定してもよい。
【0021】
【化1】
Figure 0004543546
ただし、式中のR1は、
【0022】
【化2】
Figure 0004543546
【0023】
【化3】
Figure 0004543546
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表して、
また、式中のR2 は、
【0024】
【化4】
Figure 0004543546
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表す。
【0025】
かかるポリイミドは、テトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、脂肪族一級モノアミン、芳香族一級モノアミン、脂肪族一級ジアミンおよび芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物を脱水縮合することにより得ることができる。
【0026】
ポリエステルとの溶融成形性や取り扱い性、表面突起の形成性などの点から、下記一般式で示されるような、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが特に好ましい。
【0027】
【化5】
Figure 0004543546
(ただし、上記式中R3は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、R4は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
【0028】
上記R3、R4 としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基
【化6】
Figure 0004543546
を挙げることができる。
【0029】
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0030】
【化7】
Figure 0004543546
または
【0031】
【化8】
Figure 0004543546
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。
【0032】
本発明のA層を構成するポリマーアロイには、分散径を制御するために、必要に応じて、相溶化剤を併用してもよい。この場合、相溶化剤の種類は、ポリマーの種類によって異なるが、添加量は0.01〜10重量%が好ましい。
【0033】
本発明において、ポリイミドをポリエステルに添加する時期は、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に添加してもよい。また、溶融押出前に、ポリエステルとポリイミドを混合してペレタイズしてもよい。
【0034】
また本発明のA層を構成するポリマーアロイをより好ましい分散状態に調整する他の方法としては、例えば、タンデム押出機を用いて混合する方法、2種類以上のポリエステルを用いてポリイミドを微分散させる方法、粉砕器でポリイミドを粉末状に粉砕した後に混合する方法、両者を溶媒に溶解し共沈させることにより混合する方法、一方を溶媒に溶かした溶液状とした後に他方に混合する方法なども挙げられるが、この限りではない。特に好ましくは、2種以上のポリエステルを用い、まず、高分子量ポリエステルとポリイミドをペレタイズによって、一旦、ポリイミドを高濃度(例えば、35〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%)含有するマスターペレットを作成してから、さらに溶融押出前に比較的低分子量のポリエステルで希釈して、所定の濃度に調整する方法を用いると、ポリマー同士の分散性が向上し、本発明のポリマーアロイとしてより好ましい分散状態を示すことがある。また、この手法では、ポリマーアロイ全体としての溶融粘度は低く抑えられるため、溶融成型性が向上し、生産性が向上することがあり好ましい。
【0035】
本発明のA層以外のフィルム層に用いるポリマー種は特に限定されないが、A層に用いたものと同じポリエステル、またはA層に用いたものと同じポリエステルとポリイミドからなるポリマーアロイを用いた場合、基層部と積層部に溶融粘度の差が生じにくいため、積層斑や口金すじなど生産工程でのトラブルが生じにくいため好ましい。最も好ましくは、A層に用いたものと同じポリエステルとポリイミドをA層と同じ重量比で含むポリマーアロイを用いる場合がよい。
【0036】
本発明の積層ポリエステルフィルムのA層には、実質的に不活性粒子を含有しない場合、A層中の粒子の凝集による粗大突起の生成や、フィルター詰まりの問題が低減するため好ましい。ここでいう「実質的に不活性粒子を含有しない」とは、A層中の不活性粒子が全く含まれないか、あるいは含まれたとしても、平均粒径が10nmより小さい場合、もしくは、不活性粒子の含有量が0.001重量%より少ない場合をいう。
【0037】
ただし、本発明の積層ポリエステルフィルムのA層には、特に限定されないが、磁気記録媒体としたときの、磁気テープの走行耐久性や、磁気ヘッドとの走行性の良化、あるいは、巻き取り性などハンドリング性の向上のため、不活性粒子を含有させてもよい。なお、本発明でいう不活性粒子とは、平均粒径10nm〜1μm程度の無機または有機の粒子で、本発明のポリマー中で化学反応を起こしたり、電磁気的影響により磁気記録に悪影響を与えないものを言う。不活性粒子としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)や、界面活性剤などがある。
【0038】
本発明の積層ポリエステルフィルムのA層に不活性粒子を含有させる場合、平均粒径は0.001〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3μmである。不活性粒子の平均粒径が0.5μmより大きい場合には、磁気記録媒体として用いた場合、電磁変換特性が悪化したり、磁気ヘッドと傷つけやすくなる場合がある。不活性粒子の平均粒径が0.001μmより小さい場合には、粒子凝集が起こりやすく、またポリマー中に良好に分散させることが困難であり表面突起個数等を制御しにくいため、好ましくない。
【0039】
本発明の積層ポリエステルフィルムのA層に不活性粒子を含有させる場合、含有量は0.01〜1重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.05重量%である。不活性粒子の含有量が1重量%より大きい場合、粒子凝集により突起が粗大となって、電磁変換特性を悪化させたり、突起が削れやすくなることがある。不活性粒子の含有量が0.01重量%より小さい場合には、磁気ヘッドとの走行性の良化の効果が小さいため、好ましくない。
【0040】
本発明の積層ポリエステルフィルムのB層には、製膜および加工時のハンドリング性向上や磁気記録媒体とした際の走行性、走行耐久性の付与の目的から不活性粒子を含有させる。この際、B層に含有させる不活性粒子としては、前述のような不活性粒子を用いることができる。不活性粒子は1種類でも良いが、2種類以上併用しても構わない。B層の不活性粒子の平均粒径dは、0.05〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径が1μmを越える場合、フィルムを巻き取った状態で保存しておく際に、突起が平滑な磁性面側(f面側)に転写し、f面側を粗くし、電磁変換特性を低下させることがある。また、平均粒径が0.05μmより小さい場合には、ハンドリング性や磁気テープの走行性に十分な効果を及ぼさないことがある。B層の不活性粒子の含有量は0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。不活性粒子の含有量が1重量%を越える場合には、蒸着加工工程での冷却効率が低下し、「しわ」やオリゴマー析出の原因となったり、転写により電磁変換特性を低下させることがある。
【0041】
本発明の積層ポリエステルフィルムのB層の厚みはフィルム全体の厚みの20%以下であると、製膜性が良好であり好ましい。B層の厚みは、より好ましくはフィルム全体の厚みの15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、厚みは0.01〜1.5μmであると、製膜性がより一層良好となり好ましい。好ましくは0.03〜1μm、より好ましくは0.05〜0.75μmである。また、B層の厚みtは不活性粒子の平均粒径dの0.1〜10倍が好ましく、より好ましくは0.2〜5倍である。t/dが0.1より小さい場合は、不活性粒子が脱落しやすくなることがあり、10を越える場合には、B層側の突起高さが不揃いとなって、走行性やハンドリング性に十分な効果を及ぼさないことがある。
【0042】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、A層/B層の2層積層構成の基材フィルムの少なくともB層と反対側の表面に易滑平滑層(C層)が設けられたフィルム構成、または、B層のA層と反対側にポリエステルまたはポリエステルとポリイミド、および、不活性粒子を必須成分としてなる積層部(D層)が設けられたD層/A層/B層の3層積層構成である場合に、本発明の効果を十分に発揮できるので好ましいが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、易滑平滑層(C層)を設ける場合、C層はコーティングにより形成される。C層は、特に限定されないが、水溶性高分子と不活性粒子を主たる成分にしたものから形成されることが好ましい。C層は、磁気ヘッドとの走行性、走行耐久性の観点から、少なくともB層と反対側の表面に設けられなければならない。C層を設けることにより、テープの保存工程や蒸着加工工程において、フィルム中から表面に析出する低分子量体を効果的に抑止することができるため好ましい。また、特に限定されないが、磁気テープに加工する工程や、保存中のオリゴマー析出の抑止の観点から、B層側の表面にも易滑平滑層(C’層)を設けたC層/A層/B層/C’層の構成をとってもよい。
ただし、この場合はC’層を設けない場合と比較して、生産効率が低下する。
【0044】
本発明の積層ポリエステルフィルムにC層を設ける場合、C層を構成する水溶性高分子としては、水酸基、エーテル基、エステル基、スルホン基、アミド基、メトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基等の極性基を持ち、分子量が1万〜200万、好ましくは10万〜100万のものが使用でき、具体例としては、ポリビニルアルコール、トラガントゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸とエチレングリコールなどからなる水溶性ポリエステル、水溶性ポリエステルエーテル共重合体等が適用でき、これらのブレンド体も適用できる。中でも、メチルセルロースと水溶性ポリエステルのブレンド体がA層とのぬれ性の点から特に好ましく例示される。
【0045】
本発明の積層ポリエステルフィルムにC層を設ける場合、C層を構成する不活性粒子の種類としては、前述のような粒子が例示されるが、中でも、アクリル酸類、スチレン、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、特にアクリル酸類またはイミド類を構成成分とする有機粒子である場合、ポリエステルとポリイミドを主成分とするA層との親和性が高いためと考えられるが、コーティングの塗布斑が起こりにくく、製膜、加工工程における粒子の脱落や表面の傷付きが著しく低減するため好ましい。
【0046】
本発明の積層ポリエステルフィルムにC層を設ける場合、C層を構成する不活性粒子の平均粒径dcは5〜50nmが好ましく、より好ましくは6〜25nm、最も好ましくは7〜20nmである。C層はコーティングにより形成される層であるため、平均粒径が50nmを越える場合は、製膜、加工工程で粒子が著しく脱落しやすくなる場合がある。また、平均粒径が5nmより小さい場合には、塗液を調合する際に不活性粒子が凝集し易くなり、粗大突起の原因となったり、製膜、加工工程で脱落しやすくなる場合がある。
【0047】
本発明の積層ポリエステルフィルムにC層を設ける場合、C層を構成する不活性粒子の含有量は300万〜7000万個/mm2である。なお、C層の粒子含有量を面積当たりの個数で表しているのは、C層は粒子の平均粒径に対して、極めて薄いため、C層に含有する粒子は、ほぼすべてC層側の表層に露出するためである。含有量を水溶性高分子との比率で表す場合、水溶性高分子100重量部(C層中にシランカップリング剤またはチタンカップリング剤を含有させるときは、水溶性高分子と該カップリング剤の合計量100重量部)に対して5〜50重量部が好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。粒子の含有量がこの範囲であると粒子のC層からの脱落がなく、また電磁変換特性も向上する。
【0048】
本発明の積層ポリエステルフィルムにC層を設ける場合、C層の被覆厚みは、特に限定されないが、好ましくは1nm〜50nm、より好ましくは、5nm〜25nmの範囲であることが、本発明のフィルムを得るのに有効である。C層の厚みが1nmより小さい場合、コーティングの際の単位面積当たりの塗布量が非常に少なくなるため、安定塗布が困難となり、50nmより大きい場合は、インラインにおける塗液の乾燥が不十分となったり、C層が延伸の際に割れて、剥がれやすくなったりする。
【0049】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、D層/A層/B層の3層積層とする場合、D層に用いるポリマーはA層を構成するポリエステルと同一のポリエステル、または、A層を構成するポリマーアロイと同一のポリエステルとポリイミドからなるポリマーアロイである場合、積層斑や口金すじ等の製膜工程における問題を抑制しやすいため好ましい。なかでも、D層にポリエステルのみを用いる場合は、A層を構成するポリエステルより高分子量のポリエステルを用いること、また、ポリエステルとポリイミドからなるポリマーアロイを用いる場合は、それぞれA層を構成するポリエステル、ポリイミドと同一分子量のものを用い、ポリイミドの含有量も等しくすることが、製膜の際の問題を低減するために特に好ましい手法である。
【0050】
本発明の積層ポリエステルフィルムのD層に用いるポリエステルがエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルである場合、ポリエステルは直重法およびDMT法のいずれによるものでもよいが、DMT法の時はエステル交換触媒として酢酸カルシウムを用いることが好ましい。また重合段階では、特に限定されないが、ゲルマニウム化合物を重合触媒として用いることが異物による粗大突起を低減させるため好ましい。ゲルマニウム触媒としては、公知のとおり、(1)無定形酸化ゲルマニウム、(2)5μm以下の結晶性酸化ゲルマニウム、(3)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属またはアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および、(4)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液等が用いられる。
【0051】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、D層/A層/B層の3層積層とする場合、D層に含有させる不活性粒子の種類としては、前述のような粒子が例示される。中でも、コロイド状シリカや微分散アルミナやスチレン、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子が好ましく例示される。
【0052】
本発明の積層ポリエステルフィルムをD層/A層/B層の3層積層とする場合、D層に含有させる不活性粒子の平均粒径dDは、10〜50nmが好ましく、より好ましくは15〜50nm、最も好ましくは20〜40nmである。平均粒径が50nmを越える場合には、蒸着型磁性層を有する磁気テープとしては、磁性面側の突起が粗大であり、電磁変換特性の低下や、磁気ヘッドを傷付けてしまい、走行耐久性の低下を招く場合がある。平均粒径が20nmより小さい場合には、磁性面側の突起高さが低いため、磁気ヘッドとの摩擦が高くなりすぎて、ヘッドの走行性が悪化したり、製膜、加工の際にロールとの摩擦のために傷が付きやすくなったりする。
【0053】
本発明の積層ポリエステルフィルムをD層/A層/B層の3層積層とする場合、D層に含有させる不活性粒子の含有量は0.1〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5重量%、最も好ましくは0.5〜1重量%である。含有量が3重量%を越える場合には、溶融成形の工程で粒子の凝集が起こり突起が粗大となって、電磁変換特性が低下したり、突起が削れやすくなったりする。含有量が0.1重量%より少ない場合、磁性面が平坦となりすぎて、ヘッドの走行性が悪化したり、製膜、加工の際にロールとの摩擦のために傷が付きやすくなったりする。
【0054】
本発明の積層ポリエステルフィルムをD層/A層/B層の3層積層とする場合、D層の厚みtDは0.01μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.03μm〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.1μmである。D層の厚みが0.01μmより薄い場合、D層の粒子が脱落し易くなり、走行耐久性の悪化などを招くことがあり、また厚みが0.5μmより厚い場合には、突起の高さが不揃いとなるため、ヘッドの走行性の低下を招くことがある。また、D層厚みtDは平均粒径dDの0.1〜10倍が好ましく、より好ましくは0.5〜5倍である場合、電磁変換特性とヘッド走行性がともに良好となる。
【0055】
本発明の積層ポリエステルフィルムをD層/A層/B層の3層積層とする場合、特に限定されないが、各フィルム層中に、脂肪酸エステルのようなワックスや界面活性剤を含有させる場合、フィルム中から表面に析出する低分子量体を効果的に抑止することができるため好ましい。より好ましくは、B層、D層に比較的高濃度に含有させ、A層には低濃度に含有させるか、または、実質的に含有させない場合、弾性率の低下などを引き起こす懸念が少ない。ワックスとしては、カルナウバワックスのような天然ワックス、または、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネートのような脂肪酸エステルが挙げられ、特にカルナウバワックスが好ましく例示される。界面活性剤としては、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウムなどのアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が挙げられ、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましく例示される。含有量としては、0.1〜2重量%が好ましく、より好ましくは、0.2〜0.8重量%である。
【0056】
本発明の積層ポリエステルフィルムのB層側の表面(b面)の表面粗さRabは5〜20nmであり、好ましくは6〜17nm、さらに好ましくは7〜15nmである。Rabが5nmより小さい場合には、製膜および加工工程において十分なハンドリング性が得られず生産性が低下したり、磁気テープに加工した際の走行性や耐摩耗性が低下して、十分な磁気テープ特性が得られないため好ましくない。Rabが20nmより大きい場合には、磁気テープとして用いる際、走行面側の形態が磁性面側に転写して、電磁変換特性を悪化させたり、走行面側の粒子が脱落し易くなり、走行特性の悪化やドロップアウトなどの原因となるため好ましくない。また、蒸着型磁性層を有する磁気テープの場合、蒸着工程における冷却効率が低下するため、「しわ」等の熱負けの原因となったり、オリゴマーが析出しやすくなる。
【0057】
本発明の積層ポリエステルフィルムのB層と反対側の表面(f面)の表面粗さRafは0.1〜5nmであり、好ましくは1〜4nm、さらに好ましくは1.5〜3nmである。Rabが0.1nmより小さい場合は、工業的に製造が困難であったり、磁気テープに加工した際の磁気ヘッドとの走行性が低下して十分な磁気テープ特性が得られない場合がある。Rafが5nmより大きい場合には、蒸着型磁性層を有する磁気テープとして用いる際、電磁変換特性が低下したり、磁気ヘッドを傷つけやすくなるため好ましくない。
【0058】
本発明の積層ポリエステルフィルムのf面の粗大突起数H1は、電磁変換特性、走行耐久性の観点から、100個/100cm2以下であり、好ましくは50個/100cm2以下、より好ましくは10個/100cm2以下である。同様に粗大突起数H2は10個/100cm2以下であり、好ましくは5個/100cm2以下、より好ましくは2個/100cm2以下である。粗大突起数H1が100個/100cm2を越えると、電磁変換特性が悪化するため好ましくなく、H2が10個/100cm2を越えると、磁気ヘッドが傷付きやすくなって、走行耐久性が悪化する。なお、本発明でf面の粗大突起数を表すH1、H2は、後述の測定法によって定義される値である。
【0059】
本発明の積層ポリエステルフィルムのA層中のポリイミドの含有量は、ポリマーアロイ中の5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、8〜15重量%である。一般的にポリエステルとポリイミドの溶融粘度は大きく異なるため、ポリイミドの含有量が5重量%未満であると、押出機にて十分に微分散することが困難な場合があり、ポリイミドのドメインが粗大となることによって、表面突起が粗大となる場合がある。また、ポリイミドの含有量が30重量%を超える量であると、押出成形加工や延伸加工を施すことが困難となり、フィルム破れや押出時の口金すじなどの製膜、加工上のトラブルの原因となる場合がある。
【0060】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などが添加されてもよい。
【0061】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和は、9〜20GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜18GPa、さらに好ましくは11〜15GPaである。該ヤング率の和が9GPa未満であれば、例えば、磁気記録媒体用などに用いる場合、走行時の磁気記録ヘッドやガイドピンから受ける張力のため、磁気テープに伸び変形が生じやすくなり、さらに電磁変換特性(出力特性)に悪影響を与えたりして、実用上使用に耐えない場合がある。また、該ヤング率の和が20GPaを越えるフィルムは工業的に製造が困難であったり、フィルムの耐引裂性や寸法安定性が著しく低下したりする場合がある。
【0062】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率は、磁気ヘッドとのヘッド当たりの観点から、4.3GPa以上であることが好ましい。より好ましくは4.5GPa以上、最も好ましくは5GPa以上である。
【0063】
本発明の積層ポリエステルフィルムの幅方向のヤング率はテープエッジダメージや、長手方向の伸びを抑える観点から、4.7GPa以上であることが好ましい。より好ましくは5GPa以上、最も好ましくは5.5GPa以上である。
【0064】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向の温度100℃、30分における熱収縮率は、テープの伸び変形性および保存性の観点から、1.2%以下であることが好ましい。より好ましくは、1%以下である。該熱収縮率が1.2%を越える場合は、寸法安定性が損なわれやすくなる場合がある。例えば磁気記録媒体用においては、ベースフィルムの磁気層を塗布するなどのフィルム加工工程における熱履歴や走行時の磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱による磁気テープの昇温時にテープの熱変形が起こりやすくなったり、フィルム表面の耐久性が劣下したり、テープの保存性が悪化する場合がある。
【0065】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向の温度80℃、30分における熱収縮率は、テープの伸び変形性および保存性の観点から、0.3%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.25%以下である。
【0066】
本発明の積層ポリエステルフィルムの幅方向の温度100℃、30分における熱収縮率は、テープの伸び変形性および保存性の観点から、0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3%以下である。該熱収縮率が0.5%を越える場合は、寸法安定性が損なわれやすくなる場合がある。例えば磁気記録媒体用においては、ベースフィルムの磁気層を塗布するなどのフィルム加工工程における熱履歴や走行時の磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱による磁気テープの昇温時にテープの熱変形が起こりやすくなったり、フィルム表面の耐久性が劣下したり、テープの保存性が悪化する場合がある。
【0067】
本発明の積層ポリエステルフィルムの幅方向の温度80℃、30分における熱収縮率は、テープの伸び変形性および保存性の観点から、0.1%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.05%以下である。
【0068】
本発明のA層のポリマーの補外ガラス転移開始温度(Tgonset)は、特に限定されないが92〜150℃であることが好ましく、より好ましくは96〜130℃、さらに好ましくは98〜120℃の範囲内である。また、A層のポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、105〜170℃であることが好ましく、より好ましくは、110〜140℃である。TgonsetおよびTgが本範囲に満たない場合、磁気テープ走行時の寸法安定性が低下したり、テープ保存時に熱収縮によるしわが入りやすくなるほか、蒸着用磁気記録媒体として用いる際には、蒸着工程においてフィルムが熱収縮することによる「しわ」が発生する場合がある。また、TgonsetおよびTgが本範囲を越える場合には、延伸等に要する温度が高くなり過ぎるため、生産性が低下したり、延伸ロール等の設備の耐久性が低下することがある。
【0069】
本発明のA層を構成するポリマーアロイの固有粘度は、フィルム成形加工の安定性や熱可塑性樹脂との混合性の観点から、0.55〜3.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜2.0(dl/g)である。また、製膜後のフィルムの固有粘度は、フィルム成形加工の安定性や寸法安定性などの観点から、0.50〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.55〜1.0(dl/g)である。
【0070】
本発明の積層ポリエステルフィルムの全厚みは、3〜8μmである。好ましくは4〜7μmであり、より好ましくは4.5〜6.5μmである。厚みが3μmより小さい場合は、テープに腰がなくなるため、電磁変換特性が低下する。厚みが8μmより大きい場合は、テープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量化が困難になるため好ましくない。
【0071】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、さらに他のポリマー層、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンおよびアクリル系ポリマーを直接、あるいは接着剤などの層を介して積層してもよい。
【0072】
本発明の2軸延伸フィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0073】
本発明の積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に磁性層を設けることにより、磁気記録媒体として用いることができる。磁性層を設ける面は、フィルムのいずれの面でも、あるいは、両方の面でも良いが、前記積層構造のフィルムを用いる場合は、A層側に磁性層を設けることが好ましい。
【0074】
磁性層としては、強磁性金属薄膜や強磁性金属微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層や金属酸化物塗布による磁性層などが好適な例として挙げられる。前記強磁性金属薄膜に用いる金属としては、鉄、コバルト、ニッケルやその合金等が好ましい。また、前記強磁性金属微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層に用いる強磁性金属微粉末としては、強磁性六方晶フェライト微粉末や、鉄、コバルト、ニッケルやその合金からなる粉末が好ましい。前記結合剤としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物などが好ましい。
【0075】
磁性層の形成法としては、磁性粉を熱硬化性、熱可塑性あるいは放射線硬化性などの結合剤と混練し、塗布、乾燥を行う塗布法、金属または合金を蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法などにより、基材フィルム上に直接磁性金属薄膜層を形成する乾式法のいずれの方式も採用できる。
【0076】
本発明の磁気記録媒体においては、磁性層上に保護膜が設けられていてもよい。この保護膜によってさらに走行耐久性、耐食性を改善することができる。保護膜としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物保護膜、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物保護膜、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物保護膜、グラファイト、無定型カーボンなどの炭素からなる炭素保護膜があげられる。
【0077】
前記炭素保護膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法等で作成したアモルファス、グラファイト、ダイヤモンド構造、もしくはこれらの混合物からなるカーボン膜であり、特に好ましくは一般にダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質カーボン膜である。
【0078】
また、この硬質炭素保護膜上に付与する潤滑剤との密着をさらに向上させる目的で、硬質炭素保護膜表面を酸化性もしくは不活性気体のプラズマによって表面処理しても良い。
【0079】
本発明では、磁気記録媒体の走行耐久性および耐食性を改善するため、上記磁性層もしくは保護膜上に、潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。
【0080】
本発明の積層ポリエステルフィルムの用途は、均一で微細な表面形態と高い寸法安定性を必要とするデジタル記録方式の磁気記録媒体である。中でも、蒸着型の磁性層を有する磁気記録媒体に特に好ましく用いることができる。具体的には、データストレージ用高密度磁気記録用テープやデジタルビデオテープなどのベースフィルムに適したものである。
【0081】
以下、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法の例について説明するが、これに限定されるものではない。ここでは、A層ポリマーのポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、ポリイミドとして、ポリエーテルイミド“ウルテム”を用いたD/A/B3層積層ポリエステルフィルムの例を示す。また、A/B2層積層構成の基材フィルムに易滑平滑層(C層)を設ける場合には、基材フィルムの製造方法は、D層部を用いない以外は、本例と同様にすればよい。製造条件は、用いるポリエステルおよびポリイミド、または積層構成によって異なる。
【0082】
まず、常法に従い、テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化することにより、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応することにより、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移行しながら、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る。得られたポリエステルをペレット状にして減圧下におき、固相重合する。固相重合する場合は、ペレット状ポリエステルをあらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに不活性粒子を含有させる場合には、エチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。不活性粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接ポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0083】
次に、ポリエチレンテレフタレートのペレットとポリエーテルイミドのペレットを混合して、270〜300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、溶融押出する。このときの剪断速度は50〜300sec-1が好ましく、より好ましくは100〜200sec-1、滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分の条件である。混合比率は、20〜80%が好ましく、より好ましくは40〜60%である。ポリエーテルイミドの混合比率が高すぎたり、低すぎたりすると、混練にて両者が十分に相溶しない場合がある。さらに、上記条件にて両者が相溶しない場合は、得られたチップを再び2軸押出機に投入し相溶するまで押出を繰り返してもよい。
【0084】
得られたポリエーテルイミド含有のポリエステルのペレットと不活性粒子のマスターペレット、および、ポリエステルのペレットを所定の割合になるように混合して、180℃で3時間以上真空乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で、280〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。
【0085】
その際、ポリマー中の異物や変質ポリマー、未溶融物などを除去する方法としては、各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。特に、A層および3層積層構成の際はD層のポリマーは、1.2μmカット以下の繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過すること好ましく例示される。より好ましくは、0.8μm以下のフィルターである。また、必要に応じて、2つ以上のフィルター部分を通過させ、2段階以上で濾過するとより効果的に未溶融物を除去できるため好ましい。最も好ましくは、サンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターを順に用いて、3段階に濾過する方法が挙げられる。
【0086】
なお、ここでいう1.2μmカットのフィルターとは、濾過精度1.2μmのことをいい、濾過精度とはJIS−B8356の方法によりフィルターメディアを透過した最大グラスビーズ粒径を意味する。
【0087】
また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けることが好ましい。
【0088】
フィルムを積層する方法としては、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する方法が好ましい。
【0089】
次に、この未延伸フィルムを2軸延伸し、2軸配向させる。延伸方法としては、逐次2軸延伸法または同時2軸延伸法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次2軸延伸法を用いる。延伸温度については、積層の構成成分により異なるが、例えば、3層構造でA層、B層、D層ともにポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドの混合ポリマー(混合重量比9:1)からなる場合を例示して説明する。未延伸フィルムを70〜130℃の加熱ロール群で加熱し、長手方向に3〜8倍に1段もしくは多段で延伸(再縦延伸を行う場合は1段目の延伸は2〜4倍)し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。長手方向延伸速度は1000〜50000%/分の範囲で行うのが好ましい。続いて、幅方向の延伸を行う。幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸倍率は3〜8倍(再横延伸を行う場合は1段目の延伸は2〜4倍)、延伸速度は1000〜20000%/分、温度は80〜150℃の範囲で行うのが好ましい。さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行う。その場合の延伸条件としては、長手方向の延伸は、温度80〜170℃の加熱ロール群で、延伸倍率1.1〜2.5倍、幅方向の延伸方法としてはテンターを用いる方法が好ましく、温度80〜180℃、延伸倍率1.1〜2.5倍で行うのが好ましい。続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。この場合の熱処理温度は、200℃〜230℃、好ましくは、210〜220℃で、時間は0.2〜10秒の範囲で行うのが好ましい。
【0090】
2層積層フィルムに易滑平滑層(C層)を被覆する場合、被覆する時期は上記フィルム製造過程において、理論上、長手方向延伸前、幅方向延伸前、幅方向延伸後、さらにはフィルム製膜後オフラインにてコーティング可能であるが、C層が極薄層であることから上記幅方向延伸前あるいは後のいずれかで被覆し、被覆後C層が固定されるまではロール等に接触しないようにするのが好ましい。従って、例えば、長手方向延伸、続いて幅方向延伸を行う逐次二軸延伸における幅方向延伸前、あるいは同時二軸延伸における延伸前等においてC層を被覆することが好ましい。被覆はフィルム連続製造工程中でコーティングする、いわゆるインラインコーティング等が工業的に好ましい。オフライン専用の別工程にて行っても良い。
【0091】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0092】
(1)表面の突起高さと突起個数
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、以下の条件で、場所を変えて測定を10回行う。
装置:NanoScopeIII AFM (Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :5μm×5μm
走査速度 :0.5Hz
測定環境 :温度 25℃、相対湿度 55%
平坦面より、2〜50nmの範囲にある突起個数を測定し、その平均をとって、1mm2当たりの数に換算する。
【0093】
(2)表面粗さRa
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて中心線平均粗さRaを測定した。条件は下記のとおりであり、フィルム幅方向に走査して20回測定を行った平均値をもって値とした。
・触針先端半径:0.5μm
・触針荷重 :5mg
・測定長 :1mm
・カットオフ値:0.08mm
【0094】
(3)不活性粒子の平均粒径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍以上の倍率で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野以上測定する。測定した等価円相当径の重量平均を不活性粒子の平均粒径dとした。
フィルム中に粒径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記の等価円相当径の個数分布が2種類以上のピークを有する分布となるため、そのそれぞれについて、別個に平均粒径を算出する。
【0095】
(4)ポリエステル、ポリイミド、フィルム層中の不活性粒子の含有量
ポリエステルとポリイミドとの両者を溶解する適切な溶媒に溶解し、1H核のNMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定する。適切な溶媒は、ポリマーの種類によって異なるが、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/重クロロホルムが用いられる。得られたスペクトルにおいて、ポリエステル、ポリイミドに特有の吸収(例えばPETであればテレフタル酸の芳香族プロトンの吸収、PEIであればビスフェノールAの芳香族のプロトンの吸収)のピーク面積強度をもとめ、その比率とプロトン数よりポリエステルとポリイミドのモル比を算出する。さらに各々のポリマーの単位ユニットに相当する式量より重量比を算出する。測定条件は、例えば、以下のような条件であるが、ポリマーの種類によって異なるため、この限りではない。
【0096】
装置 :BRUKER DRX-500(ブルカー社)
溶媒 :HFIP/重クロロホルム
観測周波数:499.8MHz
基準 :TMS(テトラメチルシラン)(0ppm)
測定温度 :30℃
観測幅 :10KHz
データ点 :64K
acquisiton time :4.952秒
pulse delay time:3.048秒
積算回数 :256回
また、必要に応じて、顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)で組成分析を行ってもよい。その場合、ポリエステルのカルボニル基に起因するピークとそれ以外の物質に起因するピークの比から求める。なお、ピーク高さ比を重量比に換算するために、あらかじめ重量比既知のサンプルで検量線を作成してポリエステルとそれ以外の物質の合計量に対するポリエステル比率を求める。これと、不活性粒子含有量よりPEI比率を求める。また、必要に応じてX線マイクロアナライザーを併用してもよい。
【0097】
また、不活性粒子の含有量については、ポリエステル、ポリイミドは溶解するが不活性粒子は溶解させない溶媒を選んで、ポリエステル、ポリイミドを溶解し、不活性粒子を遠心分離して重量百分率を求めた。
【0098】
(5)易滑平滑層(C層)中の不活性粒子の含有量
C層側のフィルム表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、3万倍程度の拡大倍率でフィルム表面を10視野以上観察し、突起状に見える突起が1mm2当たり何個あるかを求めることにより測定した。
【0099】
(6)積層厚さ
透過型電子顕微鏡(日立製H−600型)を用いて、加速電圧100kVで、フィルム断面を、超薄切片法(RuO4染色)で観察する。その界面の観察結果から、各層の厚さを求める。倍率は、判定したい積層厚さによって適切な倍率を選ぶが、1万〜10万倍が適当である。
【0100】
また、2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定することもできる。
表層から深さ3000nmの範囲のフィルム中の不活性粒子の内もっとも高濃度の粒子(積層部と基層部でポリイミドの含有量が異なる場合には、ポリイミドでも可)に起因する元素と、ポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を、表面から深さ3000nmまで厚さ方向にSIMSで分析する。表層では不活性粒子に起因する元素濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて不活性粒子に起因する元素濃度は高くなる。本発明フィルムの場合は一旦極大値となった不活性粒子に起因する元素濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線において、不活性粒子に起因する元素濃度が極大値の1/2まで減少した深さを積層厚さとする。条件は次の通りである。
【0101】
i)測定装置
2次イオン質量分析装置(SIMS)
***、ATOMIKA社製 A−DIDA3000
ii)測定条件
1次イオン種 :O2 +
1次イオン加速電圧:12KV
1次イオン電流 :200nA
ラスター領域 :400μm□
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :5.0×10-9Torr
E−GUN :0.5KV−3.0A
なお、表層から深さ3000nmの範囲に最も多く含有する不活性粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し積層厚みを求めることもできる。
【0102】
(7)ヤング率
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件とした。
測定装置:オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロン”AMF/RTA−100
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm、
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
【0103】
(8)粗大突起数H1、H2
測定面(100cm2)同士を2枚重ね合わせて静電気力(印加電圧5.4kv)で密着させた後、2枚のフィルム間で粗大突起の光の干渉によって生じるニュートン環から粗大突起の高さを判定し、1重環以上の粗大突起数をH1、2重環以上の粗大突起数をH2とした。なお、光源はハロゲンランプに564nmのバンドパスフィルタをかけて用いた。
【0104】
(9)熱収縮率(加工時および保存時の寸法安定性)
JIS C2318に従って、測定した。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度100℃、処理時間30分、無荷重状態
熱収縮率を次式より求めた。
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
0:加熱処理前の標線間隔
L:加熱処理後の標線間隔
この結果、長手方向の熱収縮率が1%以下であり、幅方向の熱収縮率が0.5%以下である場合、加工時および保存時の寸法安定性が良好である(○)とし、長手方向、幅方向のいずれか一方でもこの範囲から外れる場合、加工時および保存時の寸法安定性が不良である(×)と判定した。
【0105】
(10)磁気テープの電磁変換特性(S/N)
本発明のフィルムのB層と反対側の表面に連続真空蒸着装置を用いて、微量の酸素の存在下において、コバルト−酸素薄膜を150nmの膜厚で形成した。次にコバルト−酸素薄膜上にスパッタリング法により、ダイアモンド状カーボン保護膜を10nmの厚みで常法で形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚みで塗布した。続いて、B層側の表面に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚みで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに巻き取り磁気記録テープ(DVCビデオテープ)を作成した。
【0106】
上記、磁気記録テープの特性評価は、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーを改造したもの用いてビデオS/N比を求めた。S/N比の測定には、TV試験信号発生器から信号を供給し、ビデオノイズメーターを用い、比較例1のフィルムより作成したテープを0デシベル(dB)として比較測定し、次の基準で評価した。。なお、走行条件は25℃、60%RHである。
【0107】
○:+0.5dB以上
△:−0.5dB以上、+0.5dB未満
×:−0.5dB未満
ここでいう、○は蒸着型の高密度記録磁気テープ用途として、優れたレベルであることをいい、△は使用可能であり、×は不十分なレベルであることをいう。
【0108】
(11)蒸着安定性
本発明のフィルム3000m、10本に対して、上記(10)の連続真空蒸着を行い、該蒸着工程における工程安定性を以下の基準で評価した。
【0109】
○:オリゴマー付着などによるフィルム切れが起こったり、または、幅方向の収縮などに起因する「しわ」が発生した本数が2本以下であった。
【0110】
△:3本または4本で、オリゴマー付着などによるフィルム切れが起こったり、または、幅方向の収縮などに起因する「しわ」が発生した。
【0111】
×:5本以上、でオリゴマー付着などによるフィルム切れが起こったり、または、幅方向の収縮などに起因する「しわ」が発生した。
【0112】
ここでいう、○は蒸着工程における工程安定性が優れていることをいい、△は使用可能であり、×は不十分なレベルであることをいう。
【0113】
(12)オリゴマー抑止性
本発明のフィルムを、150℃で30分、オーブン中に放置し、低分子量体を強制的にフィルム表面に析出させ、f面側の表面をアルミ蒸着して微分干渉顕微鏡で総合倍率1000倍で、25視野観察する。各視野での低分子量体の大きさが、表面写真上で0.5mm以上のものの個数を数え、その総数1mm2あたりに換算して、を表面オリゴマ析出個数(個/mm2)とした。
【0114】
(13)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式から計算する。
【0115】
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0116】
(14)補外ガラス転移開始温度(Tgonset)、ガラス転移温度(Tg)
下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
【0117】
装置 :TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度 :270〜570K(RCS冷却法)
温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量 :5mg
試料容器 :アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器 :アルミニウム製開放型容器(18mg)
なお、ガラス転移温度は下記式により算出した。
【0118】
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(15)総合評価
上記の(9)、(10)、(11)の評価項目のうち、以下の判定基準で判断した。
【0119】
○:すべての特性が優れているレベル(○)であるか、または、2つの項目が優れている(○)で1つの項目が使用可能(△)である。
【0120】
×:どれか1つの項目でも不十分なレベル(×)があるか、または、2つが使用可能(△)である。
【0121】
ここでいう、○は蒸着型磁性層を有する磁気記録媒体用途として適していることをいい、×は蒸着型磁性層を有する磁気記録媒体用途として適さないことをいう。
【0122】
【実施例】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0123】
実施例1
常法により得られた固有粘度0.85のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット(Tg80℃)50重量%と、General Electric(GE)社製の固有粘度0.68の“ウルテム”1010(Tg216℃)50重量%を、290℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に供給して、PEIを50重量%含有したブレンドチップ(II)を作成した。
【0124】
次いで、押出機2台を用い、製膜を行った。290℃に加熱された押出機Aには、上記ペレタイズ操作により得たブレンドチップ20重量部と実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット80重量部の混合原料(A1)を180℃で3時間真空乾燥した後に供給した。295℃に加熱された押出機Bには、上記ペレタイズ操作により得たブレンドチップ20重量部と実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット60重量部と平均粒径0.25μmの架橋ジビニルベンゼン粒子を2重量%含有する固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット20重量部の混合原料(B1)を180℃で3時間真空乾燥した後に供給した。続いて、A1をサンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に3段階に濾過し、B1をサンドフィルター、3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に2段階で濾過した後、2層用の矩形の合流ブロック(フィードブロック)にて、A/Bの積層した。また各層の厚みはそれぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節して押出量を制御することによって調節した。これを静電印加キャスト法を用いて、表面温度25℃のキャスティングドラム上に巻き付けて冷却固化し、2層積層未延伸フィルム(積層厚み比A1/B1=10/1)を作成した。
【0125】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて、110℃で長手方向に3.1倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用して行った。この一軸延伸フィルムのA層上に次の水溶液を塗布した。
【0126】
メチルセルロース 0.10重量部
水溶性ポリエステル 0.3重量%
アミノエチルシランカップリング剤 0.01重量%
カルナウバワックス 0.2重量%
平均粒径20nmのアクリル粒子 0.02重量%
固形分塗布濃度 20mg/m2
さらに、テンターを用いて、幅方向に温度100℃で3.4倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に1段で、温度150℃で1.55倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度195℃で1.6倍再延伸した。定長下で温度205℃で8秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ約6.0μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0127】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0128】
実施例2
表1のように、A層、B層ポリマーは実施例1と全く同様にして、2層積層未延伸フィルム(積層厚み比A/B=11/1)を作成した。
【0129】
この未延伸フィルムを、実施例1と全く同様の延伸方法、延伸温度、延伸倍率で延伸し、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。ただし、塗布した水溶液のアミノエチルシランカップリング剤を0.01重量%から、0.15重量%に組成変更し、不活性粒子を平均粒径12nmの極微細シリカ(0.03重量%)に組成変更した。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.1GPa、幅方向のヤング率は6.2GPaであった。
【0130】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0131】
実施例3
表1のように、A層、B層ポリマーのPETとPEIの重量比を85:15に変更し、B層の不活性粒子を平均粒径0.18μmのケイ酸アルミニウム粒子(0.95重量%含有)に変更した以外は、実施例1と同様にして、2層積層未延伸フィルム(積層厚み比A/B=11/1)を作成した。
【0132】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度120℃で3.05倍延伸し、不活性粒子を平均粒径18nmの極微細シリカ(0.16重量%)に変更した以外は実施例1と同様の水溶液を塗布した後、テンターを用いて、幅方向に温度105℃で3.4倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に、温度150℃で1.7倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.7倍再延伸した。定長下で温度200℃で8秒間熱処理後、幅方向に3%の弛緩処理を行い、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.0GPa、幅方向のヤング率は5.7GPaであった。
【0133】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0134】
実施例4
押出機を3台用いて、製膜を行った。表1のように、A層、B層のポリマー組成、粒子含有量は実施例1と全く同様にし、D層ポリマーとして、PEIを50重量%含有したブレンドチップ20重量部と実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット5重量部と平均粒径25nmの架橋ジビニルベンゼン粒子を1重量%含有する固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット75重量部の混合原料を用いた。なお、B層、D層にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.3重量%、A層には0.1重量%含有させた。また、A、B層ポリマーの濾過方法も、実施例1と同様にし、D層ポリマーはサンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に3段階に濾過した。3層積層未延伸フィルム(積層厚み比D/A/B=0.15/11/1)を作成した。
【0135】
この未延伸フィルムの延伸方式、延伸温度、延伸倍率等は実施例1と全く同様にして、厚さ約6.1μmの積層ポリエステルフィルムを得た。ただし、実施例1のような水溶液の塗布は行わなかった。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μm、D層0.075μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0136】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0137】
実施例5
表1のように、A層、B層、D層ポリマーをポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)とPEIの混合ポリマー(重量比90:10)に変更し、D層の不活性粒子を平均粒径30nmの極微細シリカ粒子(1.2%含有)に変更し、B層の不活性粒子を平均粒径0.18μmのケイ酸アルミニウム粒子(0.5%含有)に変更し、押出機の温度を3台ともに320℃に変更して、実施例4と同様に、3層積層未延伸フィルム(積層厚み比D/A/B=0.2/10/1)を作成した。
【0138】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に温度135℃で4.5倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度130℃で5.5倍延伸した。その後、定長下で温度240℃で6秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ約4.5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、再縦、再横延伸は行わなかった。各層のフィルム厚みは、A層4μm、B層0.4μm、0.08μmであった。長手方向のヤング率は7.2GPa、幅方向のヤング率は7.5GPaであった。
【0139】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0140】
実施例6
表1のように、A層、B層、D層ポリマーをPETとPEIの混合ポリマー(重量比80:20)に変更し、B層の不活性粒子を平均粒径0.2μmの架橋ジビニルベンゼン粒子(0.2重量%含有)、D層の不活性粒子を平均粒径20nmの極微細シリカ粒子(1.5重量%含有)に変更した以外は実施例4と同様にして、3層積層未延伸フィルム(積層厚み比D/A/B=0.1/15/1)を作成した。
【0141】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度125℃で3倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度115℃で3.3倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に、温度155℃で1.8倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.7倍再延伸した。定長下で温度200℃で8秒間熱処理後、幅方向に3%の弛緩処理を行い、厚さ約8μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層7.5μm、B層0.5μm、0.05μmであった。長手方向のヤング率は4.9GPa、幅方向のヤング率は5.4GPaであった。
【0142】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0143】
実施例7
表1のように、A層、B層ポリマーを、PETとPEIの混合ポリマー(重量比70:30)に変更し、B層の不活性粒子を平均粒径0.18μmのケイ酸アルミニウム粒子(0.35重量%含有)に変更して、実施例1と同様に2層積層未延伸フィルム(積層厚み比A/B=11/1)を作成した。
【0144】
この未延伸フィルムを、この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度130℃で3.05倍延伸し、不活性粒子を平均粒径12nmの極微細シリカ(0.035重量%)に変更した以外は実施例1と同様の水溶液を塗布した後、テンターを用いて、幅方向に温度110℃で3.5倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に、温度155℃で1.75倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.8倍再延伸した。定長下で温度205℃で8秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は4.8GPa、幅方向のヤング率は5.2GPaであった。
【0145】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0146】
実施例8
表1のように、A層ポリマーをPENとPEIの混合ポリマー(重量比92:8)に変更し、B層、C層ポリマーをPENに変更した。B層の不活性粒子を平均粒径0.2μmの架橋ジビニルベンゼン粒子(0.17重量%含有)、D層の不活性粒子を平均粒径45nmの極微細シリカ粒子(0.5重量%含有)に変更し、実施例5と同様にして、3層積層未延伸フィルム(積層厚み比D/A/B=0.2/7.5/1)を作成した。
【0147】
この未延伸フィルムの延伸条件などは実施例5と同様にして、厚さ3.5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層3μm、B層0.4μm、0.08μmであった。長手方向のヤング率は7.1GPa、幅方向のヤング率は7.4GPaであった。
【0148】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性、走行耐久性など磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた特性を有していた。
【0149】
比較例1
A層、B層ポリマーとして、PETとPEIのブレンドポリマーを用いる代わりにPETを用いた以外は、粒子含有量等は実施例1と同様にして、A/B2層積層構成の未延伸フィルムを作成した。なお、押出機の温度は2台とも280℃とした。
【0150】
次いで、実施例1と同様にして、この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に温度105℃で3.1倍延伸し、実施例1と同様の水溶液を塗布した後、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.4倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に温度150℃で1.55倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度190℃で1.6倍再延伸した。定長下で温度210℃で8秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.3GPa、幅方向のヤング率は6.7GPaであった。
【0151】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0152】
比較例2
A層ポリマーをPET、B層、D層ポリマーをPET/PEI(重量比90:10)として、粒子含有量等は実施例1と全く同様にして、3層積層構成の未延伸フィルムを作成した。
【0153】
次いで、この未延伸フィルムを比較例1と同様の延伸条件で延伸し、厚さ約6.1μmの積層ポリエステルフィルムを得た。ただし、水溶液の塗布は行わなかった。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.5GPaであった。
【0154】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0155】
比較例3
表2のように、B層の不活性粒子を平均粒径1.1μmの球状シリカ粒子(0.1重量%含有)に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0156】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0157】
比較例4
表2のように、塗布する水溶液の不活性粒子の含有量を0.01重量%に変更した以外は、実施例1と全く同様にして、厚さ約6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0158】
比較例5
表2のように、D層の不活性粒子を平均粒径60nmの球状シリカ粒子(2重量%含有)とする以外は、実施例4と全く同様にして、厚さ約6.1μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μm、D層0.075μmであった。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0159】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0160】
比較例6
A層の組成を実施例1のB層と同じ(PET/PEI=90:10、平均粒径0.27μmのジビニルベンゼン架橋粒子を0.3重量%含有する。)に変更し、積層を行わずに、単層の未延伸フィルムを作製した。
【0161】
水溶液の組成、延伸方式、延伸条件等は実施例1と全く同様にして、厚さ約6μmのポリエステルフィルムを得た。長手方向のヤング率は5.2GPa、幅方向のヤング率は6.1GPaであった。
【0162】
比較例7
表2のように、A層、B層、D層ポリマーのPET/PEIの重量比60:40に変更し、D層の不活性粒子を平均粒径30nmの極微細球状シリカ粒子(3.1重量%含有)に変更し、また、各層のポリマーの濾過方法を3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターのみを用いる方法に変更して、3層積層構成の未延伸フィルムを作成した。実施例4と同様の延伸条件では、再縦、再横延伸性は不良であり、破れが多発した。このため、未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に温度110℃で3.5倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度100℃で4.5倍延伸した。その後、定長下で温度205℃で7秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ約6.1μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μm、D層0.075μmであった。長手方向のヤング率は4.1GPa、幅方向のヤング率は4.9GPaであった。
【0163】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0164】
比較例8
表2のように、実施例4と全く同様にして、3層積層未延伸フィルムを作製した。
【0165】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に温度110℃で3.5倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度100℃で4.5倍延伸した。その後、定長下で温度205℃で7秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ約2.4μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、再縦、再横延伸は行わなかった。長手方向のヤング率は5.1GPa、幅方向のヤング率は5.5GPaであった。
【0166】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0167】
比較例9
表2のように、A層ポリマーとして、平均粒径60nmのシリカを0.03重量%含有するPET/PEIのブレンドポリマー(重量比90:10)を用い、B層ポリマーとして、平均粒径0.25μmのケイ酸アルミニウム粒子を0.4重量%含有するPETを用い、A層の濾過手法は公知の手法(3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルター、1段)を用い、2層積層未延伸フィルム(積層厚み比A/B=4/1)を作成した。
【0168】
この未延伸フィルムを、95℃で長手方向に3.2倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用して行った。この一軸延伸フィルムのA層上に次の水溶液を塗布した。
【0169】
メチルセルロース 0.10重量部
水溶性ポリエステル 0.3重量%
アミノエチルシランカップリング剤 0.01重量%
平均粒径12nmの極微細シリカ 0.03重量%
固形分濃度 20mg/m2
その後、テンターを用いて115℃で幅方向に3.4倍延伸した。さらに長手方向に140℃で1.5倍延伸し、続いてこのフィルムを定長下で220℃、5秒間熱処理した後、幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層4μm、B層1μmであった。長手方向のヤング率は5.3GPa、幅方向のヤング率は5.4GPaであった。
【0170】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0171】
比較例10
表2のように、A層ポリマーとして実質的に粒子を含有しないPETを用い、B層ポリマーとして平均粒径0.2μmの架橋ジビニルベンゼン粒子を0.3重量%含有するPETを用い、D層ポリマーとして平均粒径30nmの球状シリカ粒子を0.3重量%含有するPET/PEIブレンドポリマー(重量比90:10)を用い、3層積層未延伸フィルムを得た。D層の濾過手法は公知の手法(1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルター、1段)を用い、2層積層未延伸フィルム(積層厚み比D/A/B=0.05/3.95/1)を作成した。
【0172】
この未延伸フィルムを、95℃で長手方向に3.2倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用して行った。その後、テンターを用いて100℃で幅方向に4.5倍延伸した。さらに長手方向に140℃で1.5倍延伸し、続いてこのフィルムを定長下で220℃、5秒間熱処理した後、幅方向に7%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層3.95μm、B層1μm、D層0.05μmであった。長手方向のヤング率は5.5GPa、幅方向のヤング率は5.6GPaであった。
【0173】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0174】
比較例11
表2のように、D層の不活性粒子を平均粒径30nmの球状シリカ(3.1重量%含有)に変更し、B層の不活性粒子を平均粒径0.18μmのケイ酸アルミニウム粒子(0.5重量%含有)に変更する以外は、実施例4と全く同様にして、厚さ約9.9μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層9μm、B層0.8μm、D層0.1μmであった。長手方向のヤング率は5.1GPa、幅方向のヤング率は6.2GPaであった。
【0175】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0176】
比較例12
表2のように、B層の不活性粒子を平均粒径20nmの極微細球状シリカ粒子(2.5重量%含有)に変更して、積層構成をB/A/B型3層積層(積層厚み比B/A/B=1/11/1)に変更する以外は、実施例4と全く同様にして、厚さ約6.5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。各層のフィルム厚みは、A層5.5μm、B層0.5μmであった。長手方向のヤング率は5.1GPa、幅方向のヤング率は6.2GPaであった。
【0177】
この積層ポリエステルフィルムは、表3に示したとおり、磁気テープとして使用した場合、テープ走行不良を生じ、磁気記録媒体用途のフィルムとして劣るものであった。
【0178】
【表1】
Figure 0004543546
【0179】
【表2】
Figure 0004543546
【0180】
【表3】
Figure 0004543546
【0181】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルにポリイミドを含有させ、良好な寸法安定性を有するフィルムの表面の突起高さと突起個数、および、表面粗さを規定する、または、積層構成と各層に含有させる不活性粒子の平均粒径と粒子含有量を規定することにより、保存安定性と電磁変換特性を高いレベルで両立させた磁気記録媒体用ポリエステルフィルムを得ることができる。

Claims (10)

  1. ポリエステルとポリイミドを必須成分としてなる基層部(A層)を有する、少なくとも2層以上のフィルム層で構成される全厚みが3〜8μmである積層ポリエステルフィルムであって、一方の表面(f面)に突起高さ5nm〜25nmの突起が500万〜7000万個/mm2存在し、f面側の表面粗さRaf、反対側の表面(b面)の表面粗さRab、f面側のフィルム表面の粗大突起数H1、H2が以下の関係を満たすことを特徴とする磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
    0.1≦Raf(nm)≦5
    5≦Rab(nm)≦20
    0≦H1(個/100cm2)≦100
    0≦H2(個/100cm2)≦10
  2. 基層部(A層)の片面側に、ポリエステルまたはポリエステルとポリイミドを必須成分とし、平均粒径0.05〜1μmの不活性粒子を0.05〜1.5重量%含む積層部(B層)が積層されてなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくともB層と反対側の表面に設けられた、平均粒径7〜25nmの不活性粒子を300万〜7000万個/mm2と水溶性高分子を含む易滑平滑層(C層)とからなる積層ポリエステルフィルムである請求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  3. 基層部(A層)の片面側に、ポリエステルまたはポリエステルとポリイミドを必須成分とし、平均粒径0.05〜1μmの不活性粒子を0.05〜1.5重量%含む積層部(B層)が積層され、B層と反対の面側に、ポリエステルまたはポリエステルとポリイミドを必須成分とし、平均粒径10〜50nmの不活性粒子を0.1〜3重量%含む積層部(D層)が積層されてなる、D層/A層/B層の少なくとも3層積層構成からなる積層ポリエステルフィルムである請求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  4. A層のポリイミドがポリエーテルイミドである請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  5. A層のポリエステルがエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするものである請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  6. ポリイミドがA層中に5〜30重量%含まれる請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  7. フィルム長手方向と幅方向の弾性率の和が9〜20GPaであり、フィルム長手方向の弾性率が4.3GPa以上であり、かつ、フィルム幅方向の弾性率が4.7GPa以上である請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルム。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に磁性層を設けてなる磁気記録媒体。
  9. 請求項に記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に強磁性金属薄膜を形成してなる磁気記録媒体。
  10. 請求項またはに記載の磁気記録媒体からなるデジタル記録方式のカセットテープ。
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