JP4232378B2 - 二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来のポリエステルフィルムの物性・品質を大幅に向上させた二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法に関する。
具体的には、剛性、強靱性、寸法安定性などに優れ、例えば、磁気記録媒体用、コンデンサー用、あるいは熱転写リボン用などの各種の工業材料用フィルムとして非常に適した二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、他の素材からは得られないような大面積のフィルムの連続生産が可能であり、その強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与が可能などの特長を活かして、磁気記録媒体用、コンデンサー用、熱転写リボン用、感熱孔版印刷用原紙用などの各種工業材料用、農業用、包装用、建材用などの大量に需要のある各種分野で用いられている。
【0003】
その中でも、二軸配向ポリエステルフィルムは、機械特性や寸法安定性の観点などから様々な分野で利用されていて、特に磁気記録媒体用ベースフィルムとして有用である。磁気記録媒体用において、特に、近年は、機材の軽量化、小型化と長時間記録化のために、ベースフィルムの一層の薄膜化が要求されている。また、熱転写リボン用、コンデンサー用、あるいは感熱孔版印刷原紙用においても、近年、薄膜化の傾向が非常に強い。
【0004】
しかしながら、フィルムを薄膜化すると、機械的強度が不十分となって、フィルムの腰の強さが弱くなったり、伸びやすくなったりするため、例えば、磁気記録媒体用では、テープダメージを受けやすくなったり、ヘッドタッチが悪化して電磁変換特性が低下したりする。また、フィルムを薄膜化すると、熱転写リボン用では、印字する際のリボンの平坦性が保たれず、印字ムラや過転写が発生し、また、コンデンサ用では、絶縁破壊電圧が低下するといった問題点がある。
【0005】
このような薄膜化志向の中で、ヤング率に代表されるような引張特性などの機械特性の向上が望まれている。
【0006】
そのため、従来から種々の方法でフィルムの高強度化が検討されてきた。一般に知られてきた、二軸延伸ポリエステルフィルムの高強度化の手法としては、例えば、縦・横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸し、縦方向に高強度化する、いわゆる再縦延伸法が一般的である(例えば、特公昭42−9270号公報、特公昭43−3040号公報、特公昭46−1119号公報、特公昭46−1120号公報など)。
【0007】
また、さらに横方向にも強度を付与したい場合には、上述の再縦延伸を行なった後、再度横方向に延伸するという再縦再横延伸法が提案されている(例えば、特開昭50−133276号公報、特開昭55−22915号公報など)。また、一段目の延伸をフィルムの縦方向に2段階以上で行い、引き続き、フィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法が提案されている(例えば、特公昭52−33666号公報、特公昭57−49377号公報など)。
【0008】
しかし、このような従来技術で得られた高強度化ポリエステルフィルムは、例えば磁気記録媒体用において、応力伸び変形あるいは環境条件によって寸法変化し、記録トラックにずれが生じて記録再生時にエラーが発生したりするために、所望の電磁変換特性が得られなかったりする等の問題があり、大容量の高密度磁気記録テ−プへの適用に際して課題が残されているのが現状である。
【0009】
一方、ポリエステルとポリイミドの組成物については過去にも記述があり、例えば、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を、また、ポリイミドとしてポリエーテルイミド(PEI)を用い、種々の混合比の組成物を作成すると、PEIの重量分率の増加に伴ってガラス転移温度が上昇することが示されている(例えば、「JOURNAL of APPLIED POLYMER SCIENCE」1993年,48巻,935−937頁、「Macromolecules」1995年,28巻,2845−2851頁、「POLYMER」1997年,38巻,4043−4048頁」等)。また、PETとPEIとの混合物からなる二軸配向ポリエステルフィルムに関する検討例もある(例えば、特開2000−141475号公報、特開2000−309650号公報、特開2000−309651号公報など)。該検討例によると、ガラス転移温度の上昇から熱寸法安定性の向上された磁気記録媒体用や感熱転写リボン用、コンデンサー用として好適なベースフィルムが提案されている。しかしながら、PETとPEIとの混合物からなる二軸配向ポリエステルフィルムの配向をさらに向上させて、ヤング率などに代表される機械特性を向上させるための具体的な製造方法については開示されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヤング率などの機械強度や寸法安定性に優れた高品質の二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することであり、特に磁気記録媒体用ベースフィルムして使用したときに、電磁変換特性、走行耐久性や保存安定性に優れて高密度磁気記録テープ用ベースフィルムに好適であり、さらに、感熱転写リボン用、コンデンサー用としても好適な二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿う本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含んでなる単一のガラス転移温度を有するポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルムであって、ポリエステル(A)がエチレンテレフタレートおよび/またはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とし、ポリイミド(B)の含有量が5〜30重量%の範囲であり、レーザーラマン散乱法で測定した1780cm-1における、フィルム長手方向に対するラマンピーク強度(IMD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1M(=IMD/I55)、及び、フィルム幅方向に対するラマンピーク強度(ITD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1T(=ITD/I55)のうちの少なくとも一方が2.5〜20の範囲であることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記した本発明のポリイミド含有二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、シート状に溶融押出された溶融ポリマーを冷却固化させた後、二軸配向させることにより二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法において、ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含んでなる溶融ポリマーを溶融押出により相溶させること、及び、冷却固化されたシート状成形物を、長手方向に3〜10倍、幅方向に3〜10倍の倍率で延伸して二軸配向させ、この二軸配向されたポリエステルフィルムに、60〜140℃の温度で、10〜400kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理を施すことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル(A)は、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分から構成される。
【0014】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4―ナフタレンジカルボン酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4'―ジフェニルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0015】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,2―シクロヘキサンジメタノール、1,3―シクロヘキサンジメタノール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'―ビス(4'―β―ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0016】
また、ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2, 4―ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0017】
本発明のポリエステル(A)は、特に限定されないが、機械強度、生産性および取り扱い性等の点から、エチレンテレフタレートおよび/またはエチレン−2,6―ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とするポリエステルおよびそれらの変性体よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。これらのうちでも、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とする(特に80重量%以上含む)ポリエステルが特に望ましい。なぜならば、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルは、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とするポリエステルよりも、押出成形加工がし易く、製膜時のフィルム破れが少ないからである。
【0018】
本発明のポリイミド(B)は、特に限定されないが、環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであることが好ましく、溶融成形性を有するポリマーであることが好ましく例示される。例えば、米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号公報、特許第2606912号公報、特許第2606914号公報、特許第2596565号公報、特許第2596566号公報、特許第2598478号公報などのポリエーテルイミド、特許第2598536号公報、特許第2599171号公報、特開平9−48852号公報、特許第2565556号公報、特許第2564636号公報、特許第2564637号公報、特許第2563548号公報、特許第2563547号公報、特許第2558341号公報、特許第2558339号公報、特許第2834580号公報に記載のポリマー等が挙げられる。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリイミド(B)の主鎖に環状イミド以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていてもよいことは無論である。
【0019】
このポリイミド(B)としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0020】
【化1】
Figure 0004232378
上記式中のArは6〜42個の炭素原子を有する芳香族基であり、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族基、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、4〜30個の炭素原子を有する脂環族基からなる群より選択された2価の有機基である。
【0021】
上記一般式において、Arとしては、例えば、
【0022】
【化2】
Figure 0004232378
【0023】
【化3】
Figure 0004232378
を挙げることができる。Rとしては、例えば、
【0024】
【化4】
Figure 0004232378
【0025】
【化5】
Figure 0004232378
を挙げることができる。
【0026】
これらは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、1種あるいは2種以上一緒にポリマー鎖中に存在してもよい。
【0027】
本発明のポリイミド(B)は、特に限定されないが、ポリエステル(A)との溶融成形性や取り扱い性などの点から好ましい例として、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する構造単位であるポリマーであるポリエーテルイミドを挙げることができる。
【0028】
【化6】
Figure 0004232378
ただし、上記式中R1 は、2〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族基、脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2 は、前記Rと同様の2価の有機基である。
【0029】
上記R1 、R2 としては、例えば、下記式群に示される芳香族基
【0030】
【化7】
Figure 0004232378
を挙げることができる。
【0031】
本発明では、ガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドを用いると本発明の効果が得やすく、ポリエステル(A)との相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
【0032】
【化8】
Figure 0004232378
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。
【0033】
また、本発明のポリイミド(B)の他の好ましい例として、ポリエステル(A)との溶融成形性や取り扱い性などの点から、前記一般式中のArが、
【0034】
【化9】
Figure 0004232378
であり、Rが、
【0035】
【化10】
Figure 0004232378
であるポリマーを挙げることができる。
【0036】
このポリイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、上記Arを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、上記Rを誘導することができる原料である脂肪族一級ジアミンおよび/または芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物とを脱水縮合することにより得られ、具体的には、ポリアミド酸を得て、次いで、加熱閉環する方法を例示することができる。または、酸無水物とピリジン、カルボジイミドなどの化学閉環剤を用いて化学閉環する方法、上記テトラカルボン酸無水物と上記Rを誘導することのできるジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法などを例示することができる。
【0037】
上記方法で用いられるテトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1'−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,2'−ビス[(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等および/またはその酸無水物等が用いられる。
【0038】
またジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p−フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等およびこれらの例示した芳香族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する芳香族一級ジアミン等や、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等およびこれらの例示した脂肪族および脂環族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する脂肪族および脂環族一級ジアミン等を例示することができる。
【0039】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)とポリイミド(B)を含有するものであり、この両ポリマが相溶した状態でフィルムを構成している。
【0040】
ここでいう相溶とは、得られたチップのガラス転移温度(Tg)が単一であることを意味する。このように両者が相溶した場合のTgは、ポリエステル(A)のTgとポリイミドのペレット(B)のTgの間に存在することが一般的に知られている。本発明でいうガラス転移温度は、示差走査熱分析における昇温時の熱流束ギャップからJIS K7121に従って求めることができる。示差走査熱分析による方法のみで判定しにくい場合には、動的粘弾性測定あるいは顕微鏡観察などの形態学的方法を併用してもよい。また、示差走査熱分析によってガラス転移温度を判定する場合は、温度変調法や高感度法を使用することも有効である。該フィルムが2つ以上のガラス転移温度を有する場合はフィルム中でポリエステル(A)とポリイミド(B)が相溶しておらず、本発明の効果は得られない。なお、本発明で単一のガラス転移点温度を有する二軸配向ポリエステルフィルムというのは、2層以上の積層フィルムである場合、フィルムの少なくとも1層がかかる特質を有することを指している。従って、本発明のフィルムに、発明の効果を妨げない範囲で、ガラス転移点の異なるフィルムが積層されていてもよい。但し、積層される各層間のガラス転移点があまり異なるとフィルム製造が困難となるので、ガラス転移点の差は50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。但し、コーティング層はこの限りでないことは言うまでない。
【0041】
本発明において、ポリイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後、溶融押出前に添加してもよい。また、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリイミド(B)との混合物をペレタイズしてもよい。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、レーザーラマン散乱法で測定した1780cm-1における、フィルム長手方向に対するラマンピーク強度(IMD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1M(=IMD/I55)、および、フィルム幅方向に対するラマンピーク強度(ITD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1T(=ITD/I55)のうちの少なくとも一方が2.5〜20の範囲である。本発明におけるレーザーラマン散乱法で測定した1780cm-1におけるラマンピーク強度は、その測定方向に対するポリイミド(B)の配向の強さを反映しており、強度比R1Mおよび/またはR1Tは、フィルム面内での相対的な配向の強さの指標となる。これは、フィルムにレーザー光をあてた場合のラマン散乱光を測定することにより求めることができる。そのラマンスペクトルにおいて、1780cm-1のラマンバンドは、イミド結合中のカルボニル基のC=O伸縮振動に帰属される。ラマンピーク強度比R1Mおよび/またはR1Tの好ましい範囲は、それぞれ、2.7〜10であり、さらに好ましい範囲は、3.0〜8の範囲である。該ラマンピーク強度比R1MおよびR1Tがいずれも2.5未満であると、ポリイミド(B)のフィルム面内での配向が十分でなく、フィルムの強度が十分でないため、本発明の目的を達成できず、例えば、磁気記録媒体テープなどに用いた場合に電磁変換特性や走行耐久性に劣ったりすることがある。一方、該ラマンピーク強度比R1MおよびR1Tがいずれも20を越えると、フィルムの寸法安定性に劣ったり、耐引裂伝播抵抗が小さく、フィルム破れが生じやすくなったりすることがある。
【0043】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、特に限定されないが、広角X線回折のディフラクトメータ法による結晶配向解析で該二軸配向ポリエステルフィルムをその法線を軸として回転した時に得られる該二軸配向ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半価幅が30〜80度の範囲であることが好ましい。ポリエステル主鎖方向の結晶面の回折ピークの円周方向の半値幅は二軸配向ポリエステルフィルムの結晶の配向の方向の分布の広がりを表すものであり、この半価幅が30度未満の場合、フィルムの寸法安定性に劣って保存安定性が悪化したり、フィルムの引裂伝播抵抗が小さくなってテープ破断が生じ易くなったりする。また、半値幅が80度を越える場合には、フィルムの強度が十分でなく、本発明の目的を達成できないことがある。ここで、ポリエステル主鎖方向の結晶面とは、広角X線ディフラクトメータ法によって回折ピークとして検知される結晶面の中で、その法線がポリエステル主鎖方向に最も近い結晶面であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは(−105)面、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは(−306)面である。前記半価幅は、例えば、磁気記録媒体用に用いる場合、リニアテープシステムのデータストレージ用であれば、30〜55度の範囲がより好ましく、デジタルビデオなどのヘリカルスキャンシステムのビデオテープ用であれば、55〜80度の範囲がより好ましい。
【0044】
本発明の二軸配向フィルムについて、広角X線回折法から得られるポリエステル主鎖方向の結晶サイズは、特に限定されないが、40オングストローム以上から90オングストローム以下の範囲であることが好ましい。ここで、ポリエステル主鎖方向とは、ポリエステル主鎖方向に最も近い、結晶面の法線方向であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートでは(−105)面、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは(−306)面の法線方向である。該結晶サイズが40オングストローム未満では、テープの伸び変形が大きくなって、エッジダメージも発生し易く、またテープ加工後の保存安定性が悪化する。また、結晶サイズが90オングストロームを越えるとテープ破断の発生頻度が高くなることがある。該結晶サイズは、使用するポリエステルによって変わるが、ポリエチレンテレフタレートの場合、45オングストローム以上から85オングストローム以下の範囲がより好ましく、50オングストローム以上から80オングストローム以下の範囲がさらに好ましい。また使用するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合には、35オングストローム以上から65オングストローム以下の範囲がさらに好ましい。
【0045】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリマ中におけるポリイミド(B)の含有量は、特に限定されないが、1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、5〜30重量%の範囲であり、より好ましくは、10〜25重量%の範囲である。ポリエステル(A)とポリイミド(B)の溶融粘度は大きく異なるため、ポリイミド(B)の含有量が1重量%未満であれば、押出機にて十分な混練を得て互いに相溶することが困難なことがある。また、ポリイミド(B)の含有量が50重量%を超える量であれば、押出成形加工が困難であったりして、さらに得られたポリエステルフィルムに十分な強度を発現するために、延伸加工を施すことが困難であったりすることがある。
【0046】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和は、特に限定されないが、10〜25GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは12〜22GPa、さらに好ましくは13〜20GPaである。該ヤング率の和が10GPa未満であれば、例えば、磁気記録媒体用などに用いる場合、走行時の磁気記録ヘッドやガイドピンから受ける張力のため、磁気テープに伸び変形が生じやすくなり、さらに電磁変換特性(出力特性)に悪影響を与えたりして、実用上使用に耐えないことがある。また、該ヤング率の和が25GPaを越えるフィルムは工業的に製造が困難であったり、フィルムの耐引裂性や寸法安定性が著しく低下したりすることがある。
【0047】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の温度100℃、30分における熱収縮率は、特に限定されないが、テープの伸び変形性および保存性の観点から、いずれも0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜1.5%であり、さらに好ましくは、0.01〜1.0%である。温度100℃での熱収縮率が2.0%を越える場合は、寸法安定性が損なわれやすくなることがあり、例えば磁気記録媒体用においては、ベースフィルムの磁気層を塗布するなどのフィルム加工工程における熱履歴や走行時の磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱による磁気テープの昇温時にテープの熱変形が起こりやすくなったり、テープの保存性が悪化することがある。また、温度100℃の熱収縮率が0.01%未満の場合には、フィルムが膨張して、しわが発生したりすることがある。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含有してなるフィルムの場合、レーザーラマン散乱法で測定した1617cm-1におけるフィルム長手方向に対するラマンピーク強度(I2MD)とフィルム厚み方向のラマンピーク強度(IND)との比R2M(=I2MD/IND)、および、フィルム幅方向に対するラマンピーク強度(I2TD)とフィルム厚み方向のラマンピーク強度(IND)との比R2T(=I2TD/IND)のうちの少なくとも一方が5〜45の範囲であることが好ましい。本発明におけるレーザーラマン散乱法で測定した1617cm-1におけるラマンピーク強度は、その測定方向に対するポリエステル(A)の配向の強さを示す指標であり、強度比R2Mおよび/またはR2Tは、フィルム面に平行方向に対する配向の強さの指標となる。そのラマンスペクトルにおいて、1617cm-1のラマンバンドは、ベンゼン環のC=C伸縮振動に帰属される。ラマンピーク強度比R2Mおよび/またはR2Tの好ましい範囲は、それぞれ、6〜40であり、さらに好ましい範囲は、7〜30の範囲である。該ラマンピーク強度比R2MおよびR2Tがいずれも5未満であると、ポリエステル(A)のフィルム平行方向への配向が十分でなく、フィルムの強度が十分でないため、例えば、磁気記録媒体テープなどに用いた場合に電磁変換特性や走行耐久性に劣ったりすることがある。一方、該ラマンピーク強度比R2MまたはR2Tが45を越えると、フィルムの寸法安定性に劣ったり、耐引裂伝播抵抗が小さく、フィルム破れが生じやすくなったりすることがある。
【0049】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、エチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含有してなるフィルムの場合、その補外ガラス転移開始温度(Tg-onset )が90〜150℃であることが好ましい。Tg-onsetは、より好ましくは93〜130℃、さらに好ましくは95〜120℃の範囲内にあることである。Tg-onsetが90℃未満であれば、フィルムの寸法安定性向上について、本発明の効果が小さかったりすることがある。また、Tg-onsetが150℃を越える温度であれば、溶融成形性や延伸加工性などの成形加工の点で劣ったりすることがある。
【0050】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造でもよい。特に限定されないが、2層以上の積層構造である方がより好ましい。単層であると、例えば、磁気記録媒体用として用いる場合、粒子を含有させると、表面の突起がそろわず、電磁変換特性や走行性が悪化する場合がある。さらに、3層の場合に本発明の効果がより一層良好となり好ましい。最外層の厚みは、特に限定されないが、最外層に含有された粒子の平均径の0.1〜10倍であることが、本発明の効果がより一層良好となり好ましい。なぜならば、この範囲の下限値を下回ると、電磁変換特性の不良となる恐れがあり、一方、この範囲の上限値を超えると走行性の不良の恐れがあるからである。また、積層させる場合、2層以上の積層構造の中で、少なくとも1層がポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる。他の層は特に限定されないが、ポリエステルが好ましく例示され、そのポリエステルとしては、特に限定されないが、エチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2ークロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、エチレン2,6−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に、特に好ましい。
【0051】
ポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる層を内層に配した場合、保存性や引張強度向上などの効果が得られる。その場合その厚さは全体の厚さの80%以上であることが好ましい。また、外層に配した場合には、走行耐久性向上に効果がある。その場合その厚さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0052】
本発明のポリエステル(A)の固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性やポリイミド(B)との混合性の観点から、0.55〜3.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜2.0(dl/g)である。また、二軸配向ポリエステルフィルムの固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性や寸法安定性などの観点から、0.50〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.55〜1.0(dl/g)である。
【0053】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などが添加されてもよい。また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、積層フィルムの最外層に無機粒子、有機粒子などを添加すると、例えば、磁気記録媒体用などにおいて有用である。該添加物としては、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などがある。
【0054】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの用途は、特に限定されないが、磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷原紙用などに用いられる。
【0055】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5〜500μmの範囲である。後述のように用途、目的に応じて適宜決定できるが、例えば、0.5〜20μmの範囲が好ましい。特に、磁気記録媒体用では、高密度磁気記録用テープ、例えば、データストレージ用のベースフィルムに適したものであり、該データ記録容量としては、好ましくは30GB(ギガバイト)以上、より好ましくは70GB以上、さらに好ましくは100GB以上である。また、リニア記録密度としては、好ましくは25キロバイト/cm以上、より好ましくは34キロバイト/cm以上、さらにより好ましくは39キロバイト/cm以上である。またフィルム厚みは、通常磁気記録材料用では1〜15μm、データ用またはデジタルビデオ用塗布型磁気記録媒体用では2〜10μm、データ用またはデジタルビデオ用蒸着型磁気記録媒体用では3〜9μmの範囲が好ましい。また、コンデンサー用には、好ましくは0.5〜15μmのフィルムが適用され、絶縁破壊電圧および誘電特性の安定に優れたものとなる。熱転写リボン用途には、好ましくは1〜6μmのフィルムが適用され、印字する際のしわがなく、印字むらやインクの過転写を生じることなく、高精細な印刷を行うことができる。
【0056】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、これに他のポリマー層、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマーからなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して積層させてもよい。
【0057】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0058】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、シート状に溶融押出された溶融ポリマーを冷却固化させた後、二軸配向させることにより二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法において、ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含んでなる溶融ポリマーを溶融押出により相溶させること、及び、冷却固化されたシート状成形物を、長手方向に3〜10倍、幅方向に3〜10倍の倍率で延伸して二軸配向させ、この二軸配向されたポリエステルフィルムに、60〜140℃の温度で、10〜400kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理(カレンダリング)を施すことにより製造できるものである。
【0059】
より好ましい延伸条件は、長手方向に3.5〜9倍、幅方向に3.5〜9倍の倍率であり、さらに好ましい条件は、長手方向に4〜8倍、幅方向に4〜8倍の倍率である。加圧処理において、より好ましい温度は65〜125℃であり、さらに好ましい温度は70〜110℃である。温度が60℃未満であったり、140℃を超える温度であったりすると、本発明の効果が得られないことがある。加圧処理において、より好ましい線圧は100〜375kN/mであり、さらに好ましい線圧は200〜350kN/mである。線圧が10kN/m未満であると、本発明の効果が得られないことがある。線圧が400kN/mを超える方法は工業的に困難であることがある。また、処理時間は、特に限定されないが、1秒〜30分が好ましく、より好ましくは2秒〜10分、さらに好ましくは3秒〜5分である。該加圧処理は、ポリエステルフィルムの製造工程において、二軸延伸後であれば、熱処理工程の前でも後でもよく、巻き取った後に、オフラインで処理してもかまわない。より好ましくは、延伸・熱処理後に加圧処理を施し、巻き取るものである。
【0060】
また、特に限定されないが、延伸工程後、熱処理工程前に、必要に応じて、180℃〜250℃の温度で長手方向および幅方向のうちの少なくとも一方向に対して1.1〜2倍に延伸してもよい。その延伸条件として、より好ましくは190〜240℃、さらに好ましくは200〜230℃の温度範囲で、長手方向または幅方向の少なくとも一方向に対して、より好ましくは1.15〜1.8倍、さらに好ましくは1.2〜1.5倍に延伸するものである。
【0061】
ポリエステル(A)とポリイミド(B)を相溶させる場合、ポリイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。中でも、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリイミド(B)をペレタイズして、マスターチップにすることが溶融成形性の観点から好ましい。該ペレタイズには、ポリエステル(A)とポリイミド(B)を二軸混練押出機に供給して溶融押出するのが、ポリエステル(A)とポリイミド(B)を相溶化させ、本発明のフィルムを得る上で、特に好ましい。また、特に限定されないが、ポリイミド(B)として、重量平均分子量の小さいポリイミドを用いると、ポリエステル(A)との相溶性がさらに向上することがある。
【0062】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する際の延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた逐次二軸延伸法や、長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0063】
本発明において、ポリエステルフィルムに対して延伸を施す場合の延伸温度は、特に限定されないが、未延伸フィルムに対して延伸を施す場合は、(ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg℃))〜(Tg+120)℃に保つことが好ましく、(Tg+10)℃〜(Tg+80)℃がより好ましい。 延伸温度がTg℃未満では、延伸による配向が進みすぎて高倍率まで延伸しにくくなる。
【0064】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法の例について説明するが、これに限定されるものではない。ここでは、ポリエステル(A)として、ポリエチレンテレフタレートを用い、ポリイミド(B)として、ポリエーテルイミド“ウルテム”を用いた例を示すが、用いるポリエステルやポリイミドにより製造条件の詳細は異なる。
【0065】
まず、常法に従い、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化させ、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応することにより、ビスーβ―ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移送し、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルが得られる。この時、所定量のポリエーテルイミドを添加しておいてもよい。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる方法としては、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成する時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。粒子の含有量、個数を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスタを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0066】
次に、該ポリエチレンテレフタレートのペレット(A)とポリエーテルイミドのペレット(B)を、一定の割合で混合して、270〜320℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、溶融押出する。このときの滞留時間は0.5〜15分が好ましく、より好ましくは1〜10分の条件である。さらに、上記条件にて相溶しない場合は、得られたチップを再び二軸押出機に投入し相溶するまで押出を繰り返してもよい。上記混練によって、ポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドは相溶し、ガラス転移点が単一のポリエステルのペレットを得ることができる。
【0067】
得られたポリエーテルイミド含有のポリエステルのペレットを、180℃で3時間以上真空乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で280〜320℃に加熱された押出機に供給し、通常の方法により製膜する。また、この押出機内で異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。積層フィルムの場合には、2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルやポリエステルとポリエーテルイミドの混合物を積層したシートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。
【0068】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、ポリエステル(A)やポリイミド(B)の構造成分や、積層の構成成分により異なるが、例えば、単層でポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミド“ウルテム”(登録商標)の混合ポリマーからなる場合を例にとって以下説明する。
【0069】
未延伸フィルムを80〜150℃の加熱ロール群で加熱し、長手方向に1〜10倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。長手方向の延伸速度は1000〜50000%/分の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。続いて、幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸倍率は1〜10倍、延伸速度は1000〜20000%/分、温度は80〜150℃の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行う。その場合の延伸条件としては、長手方向の延伸は、温度80〜180℃、延伸倍率1.1〜2.0倍、幅方向の延伸方法としてはテンターを用いる方法が好ましく、温度80〜200℃、延伸倍率1.1〜2.0倍で行うのが好ましいが、特に限定されない。トータルの延伸倍率は、長手方向に3〜10倍、幅方向に3〜10倍であることが好ましい。より好ましくは、長手方向に3.5〜9倍、幅方向に3.5〜9倍であり、さらに好ましくは、長手方向に4〜8倍、幅方向に4〜8倍である。また、延伸工程の後半では、延伸温度を2段階以上で徐々に高めながら延伸することが好ましい。
【0070】
次に、緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。この場合の熱処理温度は、140℃〜250℃、好ましくは、150〜230℃、さらに好ましくは160〜210℃で、時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらに、熱処理温度からの冷却過程で、好ましくは100〜220℃の温度範囲で長手および幅方向に、好ましくは幅方向に対して1〜6%の範囲で弛緩処理を行う。弛緩処理は1段でもよいし、多段で行ってもよく、温度分布の変化を設けてもよい。
【0071】
続いて、60〜140℃の温度で10〜400kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理(カレンダリング)を施す。加圧処理において、より好ましい温度は65〜125℃であり、さらに好ましい温度は70〜110℃である。加圧処理において、より好ましい線圧は100〜375kN/mであり、さらに好ましい線圧は200〜350kN/mである。また、処理時間は、特に限定されないが、1秒〜30分が好ましく、より好ましくは2秒〜10分、さらに好ましくは3秒〜5分である。該加圧処理工程を施すことで、ポリイミドを十分に延伸配向させることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0072】
また、延伸工程の後、熱処理工程の前に、特に限定されないが、180℃〜250℃の温度で長手方向および幅方向のうちの少なくとも一方向に対して、1.1〜2倍に延伸してもよい。その温度条件として、より好ましくは190〜240℃、さらに好ましくは200〜230℃の温度範囲で、長手方向または幅方向の少なくとも一方向に対して、より好ましくは1.15〜1.8倍、さらに好ましくは1.2〜1.5倍に延伸を施す。
【0073】
加圧処理した後、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0074】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0075】
(1)レーザーラマン散乱法によるレーザーラマン強度
レーザーラマン散乱法によるレーザーラマン強度の測定条件は、次の通りである。
Figure 0004232378
【0076】
測定に用いるフィルムは、サンプリングしてエポキシ樹脂に包理後、ミクロトームでフィルム断面を出した。フィルム断面がフィルム長手方向または幅方向に平行なものを調整し、測定は位置をずらして10回測定して平均値をとった。測定は、フィルム面に平行な偏光での1780cm-1のラマンピーク強度(I)とフィルム面と55°をなす角度方向における偏光での1780cm-1のラマンピーク強度(I55)の比I/I55を求めて、ポリイミドの配向の指標とした。また同様に、1617cm-1のラマンピーク強度(I)とフィルム面と垂直な方向における偏光での1617cm-1のラマンピーク強度(IND)の比I/INDから、ポリエステルの配向の指標とした。
【0077】
(2)広角X線回折法によるフィルムの結晶面回折ピークの円周方向の半価幅X線回折装置((株)理学電機社製 4036A2型(管球型))を用いて下記の条件で、ディフラクトメータ法により測定した。
Figure 0004232378
【0078】
2θ/θスキャンで得られた結晶面の回折ピーク位置に、2cm×2cmに切り出して、方向をそろえて重ね合わせた試料およびカウンターを固定し、試料を面内回転させることにより円周方向のプロファイルを得る(βスキャン)。βスキャンで得られたピークプロファイルのうち、ピークの両端の谷部分をバックグランドとして、ピークの半値幅(deg)を計算した。
【0079】
(3)広角X線回折法から得られる結晶サイズ
X線回折装置((株)理学電機社製 4036A2型)を用いて下記の条件で、透過法により測定した。
Figure 0004232378
【0080】
2cm×2cmに切り出して、方向をそろえて重ね合わせ、コロジオン・エタノール溶液で固めた試料をセットして、広角X線回折測定で得られた2θ/θ強度データのうち、各方向の面の半値幅から、下記のScherrerの式を用いて計算した。ここで結晶サイズは、配向主軸方向を測定した。
【0081】
結晶サイズL(オングストローム)=Kλ/β0cosθB
K:定数(=1.0)
λ:X線の波長(=1.5418オングストローム)
θB:ブラッグ角
β0=(βE 2−βI 21/2
βE:見かけの半値幅(実測値)
βI:装置定数(=1.046×10-2
【0082】
(4)補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)、ガラス転移温度(Tg)
擬似等温法にて下記装置および条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
装置: TA Instrument社製温度変調DSC
測定条件:
加熱温度:270〜570K(RCS冷却法)
温度校正:高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
昇温ステップ:5K
試料重量:5mg
試料容器:アルミニウム製開放型容器(22mg)
参照容器:アルミニウム製開放型容器(18mg)
【0083】
なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
により算出した。
【0084】
(5)ヤング率
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件とした。
測定装置:オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:10mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
【0085】
(6)熱収縮率
JIS−C2318に従って、測定した。
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度100℃、処理時間30分、無荷重状態
100℃熱収縮率を次式より求めた。
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
0:加熱処理前の標線間隔
L:加熱処理後の標線間隔
【0086】
(7)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式から計算される値を用いる。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0087】
(8)重量平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置に低角度レーザー光散乱光度計(LALLS)および示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度および屈折率差を溶出時間を追って測定することにより、重量平均分子量を求めた。GPCの測定条件は、次の通りである。
【0088】
Figure 0004232378
【0089】
Figure 0004232378
【0090】
屈折率濃度は、既知のポリスチレンの値を基に下記式で算出した。
屈折率濃度(dn/dc)=ポリスチレンの屈折率濃度×(一定量の試料が示すRIシグナル強度/一定量のポリスチレンが示すRIシグナル強度)
【0091】
さらに、GPC−LALLS曲線から、各溶出容積(V)における絶対分子量(Mi)の計算を次式により算出した。
Figure 0004232378
【0092】
さらに、重量平均分子量(Mw)は、次式により求めた。
w=(ΣCi/Mi)/ΣCi
【0093】
(9)磁気テープの電磁変換特性(C/N)
二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で塗布厚0.1μm、非磁性下層の厚みは適宜変化させた)し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、小型テストカレンダー装置(スチール/スチールロール、5段)で、温度:85℃、線圧:200kN/mでカレンダー処理した後、60℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を8mm幅にスリットし、パンケーキを作成した。次いで、このパンケーキから長さ200m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
【0094】
このテープに、市販のHi8用VTR(SONY社製 EV−BS3000)を用いて、7MHz+1MHzのC/N(キャリア対ノイズ比)の測定を行った。このC/Nを市販のHi8用ビデオテープ(SONY社製120分MP)と比較して、+3dB以上は○、+1以上+3dB未満は△、+1dB未満は×と判定した。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
【0095】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
【0096】
(非磁性下層塗料の組成)
・酸化チタン : 100重量部
・カーボンブラック : 10重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・メチルエチルケトン : 30重量部
・メチルイソブチルケトン : 30重量部
・トルエン : 30重量部
【0097】
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・酸化亜鉛 : 0.3重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 20重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
【0098】
(10)磁気テープの走行耐久性および保存性
二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料を塗布厚さ2.0μmになるように塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、カレンダー処理した後、70℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、磁気テープとして、長さ670m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
【0099】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
【0100】
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
【0101】
作成したカセットテープを、IBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveを用い、100回往復走行させ、次の基準でテープの走行耐久性を評価した。○を合格品とした。
○:テープ端面の伸び、折れ曲がりがなく、削れ跡が見られない。
△:テープ端面の伸び、折れ曲がりがないが、一部削れ跡が見られる。
×:テープ端面の一部が伸び、ワカメ状の変形が見られ、削れ跡が見られる。
【0102】
また、上記作成したカセットテープをIBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveに、データを読み込んだ後、カセットテープを40℃、80%RHの雰囲気中に100時間保存した後、データを再生して次の基準で、テープの保存性を評価した。○を合格品とした。
○:トラックずれもなく、正常に再生した。
△:テープ幅に異常がないが、一部に読みとり不可が見られる。
×:テープ幅に変化があり、読みとり不可が見られる。
【0103】
(11)熱転写リボンの印字性
片面に融着防止層を塗布した本発明の熱転写リボン用ポリエステルフィルムに下記組成の熱転写インクを、塗布厚みが3.5μmになるようにホットメルトコーターで融着防止層とは反対面に塗工し、熱転写リボンを作成した。
(熱転写インクの組成)
カルナウバワックス :60.6重量%
マイクロクリスタリンワックス :18.2重量%
酢酸ビニル・エチレン共重合体 : 0.1重量%
カーボンブラック :21.1重量%
【0104】
作成した熱転写リボンについて、オークス社製のバーコードプリンター(BC−8)で黒ベタを印字して、印字性を評価した。○を合格品とした。
○:鮮明に印字。
△:印字にピッチずれが生じる。
×:リボンにしわが入り、印字が乱れる。
××:ホットメルト塗工時にフィルムにしわが入り、熱転写インクが均一に塗布できない。
【0105】
(12)コンデンサ用特性評価
絶縁抵抗および絶縁破壊電圧については以下の通りに評価した。
【0106】
A.絶縁抵抗
二軸配向ポリエステルフィルムの片面に表面抵抗値が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅57mm、マージン部の幅3mmの繰り返し)。次に各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に1.5mm幅のマージンを有する全幅30mmのテープ状の巻き取りリールとした。得られた左右対称のマージンを有するアルミ蒸着フィルム1対を重ね,1.5μFの容量となる長さに巻回した。この巻回物を120℃、20kg/cm2 の圧力で10分間プレスして成形した。両端面にメタリコンを溶射して電極とし、リード線を取り付けてコンデンサーサンプルとした。次いで、ここで作成した1.5μFのコンデンサーサンプル1000個を23℃、65%RHの雰囲気下においてYHP社製の超絶縁抵抗計4329Aにて印加電圧500Vでの1分値として測定し、絶縁抵抗が5000MΩ未満のコンデンサーサンプルを不良品として以下の基準で判定した。なお、本発明においては、◎、○及び△を合格とした。
【0107】
◎:不良品が10個未満、
○:不良品が10個以上20個未満、
△:不良品が20個以上50個未満、
×:不良品が50個以上
【0108】
B.絶縁破壊電圧
JIS−C−2318に記載の方法に準じて、ただし、金属蒸着を施していないフィルムを試験片として用いて、次のように評価する。
【0109】
適当な大きさの金属製平板の上にゴムショア硬さ約60度、厚さ約2mmのゴム板を一枚敷き、その上に厚さ約6μmのアルミニウム箔を10枚重ねたものを下部電極とし、約50gの重さで周辺に約1mmの丸みを持った径8mmの底面が平滑で傷のない黄銅製円柱を上部電極とする。試験片は、あらかじめ温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気に48時間以上放置しておく。上部電極と下部電極の間に試験片をはさみこみ、温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気中で両電極間に直流電源により直流電圧を印加し、該直流電圧を1秒間に100Vの速さで0Vから絶縁破壊するまで上昇させる。試料50個に対し試験を行い、絶縁破壊電圧を試験片の厚みで除したものの平均値を求め、その値が400V/μm以上を合格(○)とする。
【0110】
【実施例】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0111】
実施例1
通常の方法により得られたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.77)のペレットを50重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標、重量平均分子量32000)50重量%とを、300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを50重量%含有するポリエステル組成物(I)のペレットを得た。さらに、該組成物(I)のペレット20重量%をポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62、滑り剤として平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレット80重量%と混合し、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステル組成物(II)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0112】
一方、ポリエステル組成物(I)のペレット20重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを80重量%を、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給し、同様の方法で、ポリエステル組成物(III)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0113】
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(III)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/III/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0114】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度105℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度150℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0115】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性について測定、評価した結果は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0116】
実施例2、3
実施例1と同様にして、表1のようにポリエーテルイミドの含有量を変更して、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0117】
実施例4〜7
加圧処理条件以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例4の加圧処理条件は、温度80℃、線圧180kN/m、実施例5の加圧処理条件は、温度80℃、線圧50kN/m、実施例6の加圧処理条件は、温度60℃、線圧300kN/m、実施例7の加圧処理条件は、温度120℃、線圧300kN/mである。
【0118】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0119】
実施例8
温度200℃の再横延伸工程と温度205℃の熱処理工程の間に、温度205℃で横方向に1.2倍再延伸する工程を実施する以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0120】
実施例9
実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た後、その未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に2段で、温度120℃で2倍延伸と温度90℃で2.5倍延伸を行い、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.3倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度155℃で1.3倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度190℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0121】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0122】
実施例10
実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た後、その未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度120℃で2倍延伸を行い、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度120℃で2倍延伸と温度90℃で2倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度90℃と温度135℃で3.7倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度190℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0123】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0124】
実施例11
実施例1と同様にして未延伸フィルムを得た後、この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度105℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度150℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度180℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度180℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0126】
実施例12
実施例1において、ポリエーテルイミド“ウルテム1010”の代わりに、“ウルテム1040”(重量平均分子量20000)を用いた以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
を得た。
【0127】
実施例13
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレット(IV)を180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、実施例1で得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比IV/II/IV=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0128】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度103℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度145℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度195℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0130】
実施例14
通常の方法により得られたポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(固有粘度0.65、ガラス転移温度125℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレットを90重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)10重量%とを、290℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステル組成物(V)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0131】
一方、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(固有粘度0.65、ガラス転移温度125℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを90重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)10重量%とを、300℃に加熱された、ベント式の2軸混練押出機に供給して、同様の方法で、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステル組成物(VI)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0132】
押出機2台を用い、290℃に加熱された押出機Aには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(VI)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく290℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(V)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(V)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比V/VI/V=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0133】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度145℃で5.0倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度150℃で5.0倍延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0134】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0135】
実施例15,16,17
本実施例ではポリエーテルイミド“ウルテム”以外の下記ポリイミドA,B,Cを使用して作成した二軸配向ポリエステルフィルムの例を示す。
【0136】
(1)ポリイミドA
イソホロンジイソシアネート200gを窒素雰囲気下でN−メチルー2−ピロリドン(NMP)3000ml中に添加し攪拌する。次いで、この溶液に無水ピロメリット酸240gを室温で添加した後、徐々に昇温する。その後、180℃で6時間加熱すると、二酸化炭素の発生が終了したので加熱を止めた。このポリマー溶液を水中に展開して洗浄した後、ここで得られたポリマーを乾燥し、下記式で示す構造のポリイミドAを得た。
【化11】
Figure 0004232378
【0137】
(2)ポリイミドB
窒素気流下にて、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物200gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3000mlに投入した。この溶液に、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン57gをNMP17.6gに溶解したものを滴下し、室温で2時間、さらに50℃で4時間攪拌しポリアミド酸溶液を得た。この溶液を冷却後、水500mlに投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾取し、窒素中、250℃で2時間熱処理し、下記式で示すポリイミドBを得た。
【化12】
Figure 0004232378
【0138】
(3)ポリイミドC
ドデカメチレンジアミン200gを窒素雰囲気下でN−メチルー2−ピロリドン(NMP)3000mlとトルエン500mlの混合溶媒中に添加し攪拌する。次いで、この溶液に無水ピロメリット酸250gを室温で添加した後、徐々に昇温する。その後、150℃で4時間加熱して、このポリマー溶液を水中に展開して洗浄した後、ここで得られたポリマーを乾燥し、下記式で示す構造のポリイミドCを得た。
【化13】
Figure 0004232378
【0139】
ここで得られたポリイミドA,B,Cをポリエーテルイミド“ウルテム”の代わりに使用する以外は実施例1と同様の方法で製膜し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。実施例15はポリイミドAを10重量%含有するフィルムであり、実施例16はポリイミドBを10重量%含有するフィルムであり、実施例17はポリイミドCを10重量%含有するフィルムである。
【0140】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有していた。
【0141】
実施例18
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0142】
得られた二軸配向ポリエステルフィルム、及び、このフィルムから得られた磁気テープの特性は、表1および表2に示したとおりであり、機械特性や寸法安定性に優れ、特に磁気記録媒体用のフィルムとして優れた特性を有している。
【0143】
比較例1
3層積層(II/III/II)において、3層ともポリエーテルイミドが混合されていないポリエチレンテレフタレート(PET)にすること以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムを作成した。
【0144】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度95℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度95℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度135℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度190℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0145】
この二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリイミドエーテルを含有していておらず、その組成・特性等は、表1および表2に示したとおりであり、特に寸法安定性に劣り、磁気記録媒体用のフィルムとして劣るものであった。
【0146】
比較例2
表1のようにポリイミドの含有量を変更する以外は実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度115℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度105℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度160℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.2倍再延伸した。さらに、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、幅方向に1%の弛緩処理、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0147】
このポリエステルフィルムは、表1に示したとおり、レーザーラマン散乱法で測定したラマンピーク強度比が本発明の範囲外であり、その特性は、表2に示したとおり、機械特性等に劣り、磁気記録媒体用のフィルムとして劣るものであった。
【0148】
比較例3
加圧処理を施さない以外は、実施例1と同様にして、厚さ6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0149】
この二軸配向ポリエステルフィルムは、表1に示したとおり、レーザーラマン散乱法で測定したラマンピーク強度比が本発明の範囲外であり、その特性は、表2に示したとおり、機械特性等に劣り、磁気記録媒体用のフィルムとして劣るものであった。
【0150】
比較例4,5
加圧処理条件以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。比較例4の加圧処理条件は、温度40℃、線圧300kN/m、比較例5の加圧処理条件は、温度160℃、線圧300kN/mである。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性は、表1に示したとおり、レーザーラマン散乱法で測定したラマンピーク強度比が本発明の範囲外であり、その特性は、表2に示したとおり、機械特性等に劣り、磁気記録媒体用のフィルムとして劣るものであった。
【0151】
【表1】
Figure 0004232378
【0152】
【表2】
Figure 0004232378
【0153】
実施例19
実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(I)のペレットを20重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62、平均径1.0μmの二酸化ケイ素粒子0.2重量%配合)のペレット80重量%とを混合し、290℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有するポリエステル組成物(X)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0154】
該ポリエステル組成物(X)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの片面に融着防止層として下記組成の塗剤を乾燥後の塗布厚みが0.5μmになるようにグラビアコーターで塗工した。
【0155】
(塗剤の組成)
アクリル酸エステル :14.0重量%
アミノ変性シリコーン : 5.9重量%
イソシアネート : 0.1重量%
水 :80.0重量%
その後、得られた未延伸フィルムに、実施例1と同様の条件で延伸、続いて、加圧処理を施し、厚さ4μmの熱転写リボン用フィルムを得た。さらに得られたフィルムに熱転写リボン用加工を施して、熱転写リボン用としての実用特性を評価した。それらの結果は、表3及び表4のとおりであり、優れた特性を有していた。
【0156】
比較例6
ポリエーテルイミドを含有しないポリエチレンテレフタレートを用いること以外は、実施例16と同様にして未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、比較例1と同様に延伸・加圧処理を施して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた厚さ4μmのフィルムに熱転写リボン用加工を施して、熱転写リボン用としての実用特性を評価した。それらの結果は、表3及び表4のとおりであり、実用特性に劣るものであった。
【0157】
比較例7
加圧処理を施さない以外は、実施例16と同様にして、厚さ4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムに熱転写リボン用加工を施して、熱転写リボン用としての実用特性を評価した。結果は、表3及び表4のとおり、実用特性に劣るものであった。
【0158】
実施例20
実施例1と同様にして得た50重量%のポリエーテルイミド含有ポリエステルチップ(I)を20重量%と、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62、平均径1.2μmの凝集シリカ粒子0.1重量%配合)のペレット80重量%と混合し、290℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステル組成物(XI)のペレットを得た。得られたペレットは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0159】
該ポリエステル組成物(XI)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムに、実施例1と同様の条件で延伸・加圧処理を施した厚さ4μmのフィルムを、コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価した。それらの結果は、表3及び表5のとおりであり、優れた特性を有していた。
【0160】
実施例21
実施例17と同様にして得られた未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を110℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.69倍(縦倍率:1.3倍、横倍率:1.3倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度205℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、続いて、温度80℃、線圧300kN/mの条件で加圧処理を施し、厚さ4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得る。コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価する。それらの結果は、表3及び表5のとおりであり、優れた特性を有している。
【0161】
比較例8
ポリエーテルイミドを含有しないポリエチレンテレフタレートを用いること以外は、実施例17と同様にして未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、比較例1と同様に延伸・加圧処理を施して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた厚さ4μmのフィルムを、コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価した。それらの結果は、表3及び表5のとおりであり、実用特性に劣るものであった。
【0162】
比較例9
加圧処理を施さない以外は、実施例17と同様にして、厚さ4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムを、コンデンサー用に加工を施して、実用特性を評価した。それらの結果は、表3及び表5のとおりであり、実用特性に劣るものであった。
【0163】
【表3】
Figure 0004232378
【0164】
【表4】
Figure 0004232378
【0165】
【表5】
Figure 0004232378
【0166】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルムのヤング率などの機械特性や寸法安定性を向上させた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができ、このフィルムは、磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用などの各種フィルム用途に広く活用が可能である。具体的には、磁気記録媒体用として、電磁変換特性、走行耐久性、保存安定性などに優れ、さらに、感熱転写リボン用として印字性やコンデンサー用として絶縁特性に優れたベースフィルムを得ることができる。

Claims (7)

  1. ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含んでなる単一のガラス転移温度を有するポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルムであって、ポリエステル(A)がエチレンテレフタレートおよび/またはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位を主たる構成成分とし、ポリイミド(B)の含有量が5〜30重量%の範囲であり、レーザーラマン散乱法で測定した1780cm-1における、フィルム長手方向に対するラマンピーク強度(IMD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1M(=IMD/I55)、及び、フィルム幅方向に対するラマンピーク強度(ITD)とフィルム面と55°の角度をなす方向に対するラマンピーク強度(I55)との比R1T(=ITD/I55)のうちの少なくとも一方が2.5〜20の範囲であることを特徴とするポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 長手方向と幅方向のヤング率の和が10〜25(GPa)である請求項1に記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 長手方向と幅方向の100℃、30分における熱収縮率がいずれも0.01〜2.0%である請求項1または2に記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. ポリエステル(A)がエチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするものである請求項1〜のいずれかに記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. レーザーラマン散乱法で測定した1617cm-1における、フィルム長手方向に対するラマンピーク強度(I2MD)とフィルム厚み方向のラマンピーク強度(IND)との比R2M(=I2MD/IND)、及び、フィルム幅方向に対するラマンピーク強度(I2TD)とフィルム厚み方向のラマンピーク強度(IND)との比R2T(=I2TD/IND)のうちの少なくとも一方が5〜45の範囲である請求項に記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)が90〜150℃である請求項またはに記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルム。
  7. シート状に溶融押出された溶融ポリマーを冷却固化させた後、二軸配向させることにより二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法において、ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含んでなる溶融ポリマーを溶融押出により相溶させること、及び、冷却固化されたシート状成形物を、長手方向に3〜10倍、幅方向に3〜10倍の倍率で延伸して二軸配向させ、この二軸配向されたポリエステルフィルムに、60〜140℃の温度で、10〜400kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド含有二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
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