JP4497064B2 - 車両の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
このような技術の一例としては、以下の特許文献1の技術が挙げられ、この特許文献1には、単に車両の姿勢制御を実行するのみならず、例えば、アクセルペダルの踏込量が大きい場合や操舵角速度などが小さい場合には、ドライバによる車両制御に余裕があるとみなし、姿勢制御が実行されにくくする旨が開示されている。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、車両の実際の走行状態に応じて、車両に必要な走行安定性を確保することができる、車両の姿勢制御装置を提供することを目的とする。
また、姿勢制御の実行を規制することが望まれているのか否かに応じて、姿勢制御の実行開始のトリガとなる開始条件値が変化するので、必要な場合に限って姿勢制御を的確に実行することができる。(請求項1)
また、車両の前後方向加速度を実測する前後加速度センサの測定結果を加速相関値とすることができるようになっているので、車両の実際の挙動に的確に対応して姿勢制御の実行制御を行なうことができる。(請求項2)
図1に示すように、車両10の前方(図1中左方)側には、エンジン11およびトランスミッション12が備えられ、このエンジン11によって生じたトルクがトランスミッション12およびドライブシャフト14L,14Rを介して左右前輪13L,13Rに対してそれぞれ伝達されるようになっている。また、このトランスミッション12には図示しないディファレンシャルギアボックスが内蔵され、車両10が旋回した場合に生じる左右前輪13L,13Rでの回転速度が吸収されるようになっている。
さらに、車両10のドライバによって操作されるステアリングホイール(図示略)の角度、即ち、舵角を検出する舵角センサ23が設けられるとともに、ブレーキペダルに対するドライバの踏力に応じて上昇するブレーキマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ(油圧計測手段)24が設けられている。
また、この車両10には、ECU(電子制御ユニット;Electronic Controlled Unit)30が備えられており、このECU30は、いずれも図示しない、インターフェースユニット,CPU,メモリなど種々の機器が内蔵されて構成されている。そして、このECU30のメモリ内には、ソフトウェアプログラムとして、実ヨーレイト検出部(実ヨーレイト検出手段)31,目標ヨーレイト検出部(目標ヨーレイト検出手段)32,姿勢制御部(姿勢制御手段)33,前後加速検出部(加速相関値検出手段)34,開始条件値補正部(開始条件値補正手段)35および作動許可部(作動許可手段)36が内蔵されている。
これらのうち、実ヨーレイト検出部31は、ヨーレイトセンサ21によって検出されたヨーレイト(実ヨーレイト)を示す信号をヨーレイトセンサ21から読込み、車両10の実際の旋回状態を示す値である実旋回相関値として求めるものである。
・関係(1)−右旋回時
US/OS指数が正: アンダーステア状態
US/OS指数が負: オーバステア状態
・関係(2)−左旋回時
US/OS指数が正: オーバステア状態
US/OS指数が負: アンダーステア状態
したがって、目標ヨーレイト検出部42は、舵角センサ23により検出された舵角により車両10が右旋回中であると判定し且つUS/OS指数が正(US/OS指数>0)となっている場合には、車両10はアンダーステア状態にあると判定し、車両10が右旋回中であると判定し且つUS/OS指数が負(US/OS指数<0)となっている場合には、車両10はオーバステア状態にあると判定するようになっている。
ここで、姿勢制御の開始条件値について、図2に示すオリジナルマップ37の詳細図を用いて説明する。このオリジナルマップ37の縦軸にはUS/OS指数が規定され、他方、横軸には車両10の実際の前後加速度(加速相関値)が規定されている。また、このオリジナルマップ37は、アンダーステア抑制領域37Aと、姿勢制御非作動領域37Bと、オーバステア抑制領域37Cとに区分されている。
つまり、US/OS指数の絶対値がUS側閾値TH-US0の絶対値よりも大きくなり、US/OS指数および前後加速度によって規定される制御点がアンダーステア抑制領域37A内に位置することとなった場合、姿勢制御部33が作動を開始し、車両10に生じているアンダーステアを抑制するヨーモーメントを発生させる姿勢制御であるアンダーステア抑制制御を実行するようになっている。
また、開始条件値補正部35は、前後加速検出部34によって得られた加速相関値が増大するに連れて、上述した開始条件値を大きくなるように補正するものであって、より具体的には、後述する作動許可部36から作動許可を受けた場合のみ、補正後マップ38アクティブとすることで、姿勢制御部33が補正後マップ38を参照することを可能とし、オリジナルマップ37上に規定されていた開始条件値TH-US0,TH-OS0から、図3に示す補正後マップ38上に規定されている開始条件値TH-US1,TH-OS1に補正することができるようになっている。
そして、この補正後マップ38には、オリジナルマップ37に規定されているUS側閾値TH-US0を補正することによって得られたUS側閾値TH-US1と、オリジナルマップ37に規定されているOS側閾値TH-OS0を補正することによって得られたOS側閾値TH-OS1とがそれぞれ開始条件値として設定されている。
また、補正後のOS側閾値TH-OS1の最小値(即ち、OS側閾値TH-OS1の絶対値の最大値)はOS2であり、また、その最大値(即ち、OS側閾値TH-OS1の絶対値の最小値)はOS1となるように設定されており、車両10の前後方向加速度が大きくなるほど徐々に最小値OS2となるように設定され、車両10の前後方向加速度が小さくなるほど(即ち、車両の前後方向減速度が大きくなるほど)徐々に最大値OS1となるように設定されている。
もっとも、ドライバが姿勢制御部33による姿勢制御を必要としていない場合であっても、車両10の安定性を最低限は確保する必要があるため、加速優先スイッチ27がオン状態になっていたとしても、完全に姿勢制御部33の作動を停止させるのではなく、姿勢制御が開始される条件が満たされにくく設定するようになっているのである。
図4のフローチャートに示すように、まず、ステップS11において、ECU30の実ヨーレイト検出部31が、ヨーレイトセンサ21から信号を読込み、車両10の実際の旋回状態を示す実旋回相関値として取り扱われる実ヨーレイトを検出する。
さらに、ステップS13において、この目標ヨーレイト検出部32は、実旋回相関値と目標旋回相関値とに基づいてUS/OS指数を求める。このUS/OS指数は、上述したように、車両10がアンダーステア傾向にあるのか、或いは、オーバステア傾向にあるのかを示す値であって、その値が大きいほどアンダーステア傾向が強くなっていることを示すものである。
このとき、加速優先スイッチ27がオフ状態である場合には(ステップS14のNoルート)、作動許可部36が開始条件値補正変更部35の作動を禁止するため補正後マップ38はアクティブ状態とならず、このため、姿勢制御部33はオリジナルマップ37を参照する(ステップS15)。
一方、加速優先スイッチ27がオン状態である場合には(ステップS14のYesルート)、前後加速検出部34が、前後Gセンサ22によって計測された、車両10の前後方向加速度を示す前後G信号を読込み、車両10の前後方向の加減速に相関する値である加速相関値を求める。(ステップS17)
そして、ステップS18において、作動許可部36からその作動の許可を受けた開始条件値補正変更部35は、補正後マップ38をアクティブ状態にすることで、姿勢制御部33は、オリジナルマップ37ではなく、補正後マップ38を参照する。換言すれば、姿勢制御部33が参照する制御マップを、オリジナルマップ37から補正後マップ38への切換えることにより、開始条件値TH-US1,TH-OS1が、前後加速検出部34によって得られた加速相関値が増大するに連れて大きくなるように補正されるのである(ステップS18)。
図2に示すように、前後加速度がa1であり且つUS/OS指数がUSAであり且つ加速優先スイッチ27がオフ状態である場合には、前後加速度a1,US/OS指数USAによって規定される制御点P1は、オリジナルマップ37上、非作動領域37B内に位置することとなり、姿勢制御部33は姿勢制御を実行しない。
別の例を挙げて説明すると、図2に示すように、前後加速度がa1であり且つUS/OS指数がOSAであり且つ加速優先スイッチ27がオフ状態である場合には、前後加速度a1,US/OS指数OSAによって規定される制御点P2は、オリジナルマップ37上、非作動領域37B内に位置することとなり、姿勢制御部33は姿勢制御を実行しない。
このように、車両10の前後加速度が小さくなる、即ち、減速度が大きくなることによって失われた車両10の安定性を、姿勢制御の実行により補い、且つ、車両10に生じているオーバステアを抑制することできる。
つまり、前後加速度が増大していることにより、車両10の安定性は増加しているため、姿勢制御部33による姿勢制御の実行を停止することができ、これにより、車両10に必要な安定性を確保しながら、加速性能が低減することを防ぐことができる。また、各車輪13L,13R,15L,15Rのブレーキ装置16L,16R,17L,17Rが必要以上に作動することを防ぐことができるので、ブレーキ装置16L,16R,17L,17Rの磨耗部品の寿命を延ばすことができ、さらには、ブレーキ装置21L,21R,22L,22Rが作動する際に生じる熱量を低減することで、熱害の発生を抑制することもできる。
これにより、加速性能が低減することを防ぐことができ、また、ブレーキ装置16L,16R,17L,17Rの磨耗部品の寿命を延ばすことができる。
また、姿勢制御の実行を規制することが望まれているのか否かに応じて、姿勢制御の実行開始のトリガとなる開始条件値が変化するので、必要な場合に限って姿勢制御を的確に実行することができる。
これにより、車両10の加速性能の低減を抑制し、また、各車輪13L,13R,15L,15Rのブレーキ装置16L,16R,17L,17Rの磨耗部品の寿命を延ばすこともできるとともに、ブレーキ装置16L,16R,17L,17Rが発熱することを抑制することができる。
例えば、上述の実施形態において、図3に示して説明した補正後マップ38における補正後のUS側閾値TH-US1およびOS側閾値TH-OS1は、US/OS指数=0となる中心線C1を挟んで略対称となる特性を有するように設定されていたが、このような場合に限定するものではない。
つまり、図3に示す補正後マップ38におけるOS側閾値TH-OS1の最小値はOS2で、また、その最大値はOS1となるように設定されており、車両10の前後方向加速度が大きくなるほど徐々に最小US/OS指数のOS2となるように設定され、車両10の前後方向加速度が小さくなるほど(即ち、車両の前後方向減速度が大きくなるほど)徐々に最大US/OS指数のOS1となるように設定されている。
また、上述の実施形態においては、開始条件値補正部35が、補正後マップ38アクティブとすることで、姿勢制御部33が参照する制御マップをオリジナルマップ37から補正後マップ38に切り替え、この結果、開始条件値が大きくなるように補正される場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、制御マップを1つのみを備え、前後加速検出部34によって検出された加速相関値が増大するに連れて、この制御マップに規定された開始条件値そのものを可変とするようにしてもよい。
22 前後加速度センサ
31 実ヨーレイト検出部(実旋回相関値検出手段)
32 目標ヨーレイト検出部(目標旋回相関値取得手段)
33 姿勢制御部(姿勢制御手段)
34 前後加速検出部(加速相関値検出手段)
35 開始条件補正部(開始条件値補正手段)
27 加速優先スイッチ(規制要求検出手段)
36 作動許可部(作動許可手段)
TH-US1,TH-OS1,TH-US2,TH-OS2 開始条件値
Claims (2)
- 車両の実際の旋回状態を示す実旋回相関値を検出する実旋回相関値検出手段と、
該車両の目標とする旋回状態を示す目標旋回相関値を求める目標旋回相関値取得手段と、
該実旋回相関値検出手段により検出された該実旋回相関値と該目標旋回相関値取得手段により検出された該目標旋回相関値との差が開始条件値よりも大きくなると、該実旋回相関値検出手段により検出された該実旋回相関値が該目標旋回相関値取得手段によって取得された該目標旋回相関値に近づくように該車両の各車輪に対して制動力を調整する制御である姿勢制御を実行する姿勢制御手段とを備えて構成する車両の姿勢制御装置において、
該車両の前後方向加速度に相関する値である加速相関値を検出する加速相関値検出手段と、
該姿勢制御手段の作動を規制する旨の要求を検出する規制要求検出手段と、
該開始条件値の補正を行う開始条件値補正手段と、
該開始条件値補正手段の作動を許可する作動許可手段とを備え、
該姿勢制御手段に対する作動規制要求を該規制要求検出手段が検出した場合にのみ該作動許可手段が該開始条件値補正手段の作動を許可し、
該開始条件値は、該開始条件値補正手段の作動が許可されない場合は該加速相関値によらず一定の値が設定される一方、該開始条件値補正手段の作動が許可される場合は該加速相関値が増大するに連れて該開始条件値の絶対値が大きくなるように補正される
ことを特徴とする、車両の姿勢制御装置。 - 該車両の前後方向加速度を実測する前後加速度センサが設けられ、
該加速相関値検出手段は、該前後加速度センサの測定結果を該加速相関値とする
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の姿勢制御装置。
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