JP4439779B2 - 二軸延伸フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状アセタール骨格を有するジオール単位及び/又は環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂を用いた、耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性が良好な二軸延伸フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)に代表されるポリエステル樹脂から得られる二軸延伸フィルムは、透明性、機械的物性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性などが良好であることから磁気テープ、食品包装用などに幅広く使用されている。
【0003】
近年、食品包装用途では、内容物が美しく見えることや、内容物が保存期間中に食味を損なわないことなど、包装フィルムに特に高度な要求がされている。しかしながら、PETの二軸延伸フィルムは透明性、ガスバリア性には優れるが、柔軟性、耐ピンホール性が乏しいため、輸送時などにピンホールができ、それによりガスバリア性が低下したり、内容物が外に出てしまったりすることがあるという問題があった。
【0004】
そこで、耐ピンホール性を改善するために、ポリエステルにソフトセグメントを共重合する事が提案されている。具体的には、特開平7−330926号公報には分子量の低いポリテトラメチレングリコールとテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステル樹脂から得られる二軸延伸フィルムが提案されている。この二軸延伸フィルムは耐ピンホール性は改善されるものの耐熱性が低下するという問題があった。また、特開平8−41184号公報には分子量の低いポリオキシテトラメチレングリコールとナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなるポリエステル樹脂から得られる二軸延伸フィルムが提案されている。この二軸延伸フィルムは耐ピンホール性、耐熱性は良好であるが、透明性が損なわれるという問題があった。PET、ポリエチレンナフタレート(以下PENと略すことがある)から得られる二軸延伸フィルムに耐ピンホール性を付与する検討が種々行われてきたが、耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性を兼ね備えた二軸延伸フィルムは未だ提案されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑み、耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性を兼ね備えた二軸延伸フィルムを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸及び/又は環状アセタール骨格を有するジオールで変性したポリエステル樹脂から得られる二軸延伸フィルムが耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性が良好であること見い出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位とを有するポリエステル樹脂であって、少なくとも、(a)前記ジカルボン酸構成単位の1〜10モル%が環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位であるか、又は(b)前記ジオール構成単位の1〜10モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位である、下記の(1)及び(2)の物性を有するポリエステル樹脂を用いてなる二軸延伸フィルムに関するものである。
(1)フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度が0.3〜1.5dl/g。
(2)280℃で溶融して150〜230℃で定温結晶化した際の脱偏光強度法に基づく半結晶化時間の最小値が300秒以下。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の二軸延伸フィルムに用いられるポリエステル樹脂は、(A)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位(環状アセタール骨格を有するジカルボン酸に由来する構成単位)を1〜10モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有さないジオール構成単位、(B)環状アセタール骨格を有さないジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有するジオール単位(環状アセタール骨格を有するジオールに由来する構成単位)を1〜10モル%含むジオール構成単位、又は、(C)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を1〜10モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有するジオール単位を1〜10モル%含むジオール構成単位とから成るポリエステル樹脂である。
【0009】
本発明の二軸延伸フィルムに用いられる樹脂を構成する環状アセタール骨格を有するジオールとしては一般式(1):
【化5】
又は一般式(2):
【化6】
で表される化合物が好ましい。一般式(1)と(2)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有機基、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基を表す。R3は炭素数が1〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有機基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピル基、イソブチル基を表す。一般式(1)及び(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0010】
環状アセタール骨格を有するジカルボン酸としては、一般式(3):
【化7】
又は一般式(4):
【化8】
で表される化合物が好ましい。一般式(3)及び(4)において、R3は前記と同様であり、R4及びR5はそれぞれ独立して炭素数が1〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有機基、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基を表す。R6およびR7はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基、好ましくは水素原子あるいはメチル基を表す。一般式(3)及び(4)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0011】
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位及び/又は環状アセタール骨格を有するジオール単位を導入することにより、二軸延伸フィルムに屈曲時の耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性が付与できる。
【0012】
本発明に用いられる樹脂を構成する環状アセタール骨格を有するジオール単位、又は環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の含有割合は、それぞれジオール構成単位、ジカルボン酸構成単位の1〜10モル%であり、好ましくは3〜10モル%である。1モル%未満では屈曲時の耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性が充分には得られないことがあり好ましくなく、10モル%を超えると、樹脂の結晶性が確保できないことがあり好ましくない。上記割合で製造された二軸延伸フィルム用ポリエステル樹脂を二軸延伸して得られる二軸延伸フィルムは、良好な屈曲時の耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性を示す。
【0013】
本発明に用いられる樹脂を構成する環状アセタール骨格を有するジオール以外のジオールとしては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等が例示できる。本発明の二軸延伸フィルムの機械的性能、経済性等の面から特にエチレングリコールが好ましい。ジオール構成単位中のエチレングリコール単位の割合を好ましくは80〜99モル%、より好ましくは90〜99モル%とすることで上記効果は一層顕著になる。
【0014】
また本発明に用いられる樹脂を構成する環状アセタール骨格を有するジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体が例示できる。本発明の二軸延伸フィルムの機械的性能の面から芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が好ましく、経済性の面から特にテレフタル酸及びこのエステル形成性誘導体が好ましい。また、耐熱性の面から2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が好ましい。ジカルボン酸構成単位中に占める芳香族ジカルボン酸単位の割合は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。上記割合とすることにより、本発明の二軸延伸フィルムは耐熱性、機械的性能がより優れたものとなる。
【0015】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、280℃で溶融して150〜230℃で定温結晶化した際の脱偏光強度法に基づく半結晶化時間の最小値が300秒以下である。半結晶化時間が300秒を超えると結晶性が小さくなり、二軸延伸フィルムを熱固定する際に球晶が大きくなって、透明性が損なわれたり、熱固定ができなくなったりすることがあり好ましくない。
【0016】
本発明で用いられるポリエステル樹脂の極限粘度(フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比が6:4の混合溶媒中25℃で測定)は好ましくは0.3〜1.5dl/gの範囲であり、より好ましくは0.5〜1.3dl/g、更に好ましくは0.6〜1.1dl/gの範囲である。上記範囲とすることで、二軸延伸フィルムに強度と良好な成形性を付与することができる。
【0017】
本発明で用いられるポリエステル樹脂には本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール類やトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸を原料モノマーとして用いることもできる。
【0018】
更に用途に応じて各種の成形助剤や添加剤、例えばフィラー、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、増量剤、つや消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、熱可塑性オリゴマー等を含むこともできる。
【0019】
本発明で用いられるポリエステル樹脂を製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法または溶液重合法を挙げることが出来る。エステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、また重合に用いる重合触媒、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることが出来る。エステル交換触媒として、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム等の化合物、またエステル化触媒として、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウム等の化合物、またエーテル化防止剤としてアミン化合物等が例示される。重縮合触媒としてはゲルマニウム、アンチモン、スズ、チタン等の化合物が例示される。また熱安定剤としてリン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸等の各種リン化合物を加えることも有効である。その他光安定剤、耐電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤等を加えても良い。また、直接エステル化法において、スラリー性改善のために水を加えても良い。
【0020】
本発明で用いられるポリエステル樹脂から二軸延伸フィルムを得る方法としては特に制限されるものではないが、押し出し成形やカレンダー成形等の公知の方法でフィルムを製膜し、一方向に1.1〜7倍、好ましくは2〜6倍、特に好ましくは2.5〜5倍に延伸し、該方向と直角方向に1.1〜7倍、好ましくは2〜6倍、特に好ましくは2.5〜5倍に延伸する。フィルムの延伸手段としては、ロール延伸、長間隙延伸、テンター延伸などの方法が適用でき、また、延伸時の形状においてもフラット状、チューブ状等の方法が適用できる。更に、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、一軸延伸あるいはこれらの組み合わせなどで行われる。これらの延伸におけるヒートセットは30〜240℃の加熱ゾーンを1〜30秒通すことにより行われる。
【0021】
本発明の二軸延伸フィルムの厚さは好ましくは5〜300μm、より好ましくは7〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0022】
本発明の二軸延伸フィルムを500回屈曲させた後のピンホールの数は2.0個/m2以下、好ましくは1.0個/m2以下である。500回屈曲させた後のピンホールの数が2.0個/m2を超えると、ピンホールが出来易く、ガスバリア性が損なわれたり、機械的性能が損なわれたりすることがあり好ましくない。
【0023】
本発明の二軸延伸フィルムの衝撃穴あけ試験での衝撃強度は5000kg・cm/cm以上、好ましくは6000kg・cm/cm以上、更に好ましくは7000kg・cm/cm以上である。衝撃穴あけ試験での衝撃強度が5000kg・cm/cm未満では衝撃強度が不足し、二軸延伸フィルムが破損することがあり好ましくない。
【0024】
本発明の二軸延伸フィルム(厚さ15μm)のヘーズは3%以下、好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。ヘーズが3%を超えると透明性が損なわれることがあり好ましくない。
【0025】
本発明の二軸延伸フィルムは沸騰水中で30分間熱水処理した後の収縮率が3%以下、好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。該収縮率が3%を越えると、耐熱性が不足することがあり好ましくない。
【0026】
本発明の二軸延伸フィルムは耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性が良好であり、食品をはじめ各種包装フィルム、磁気記録媒体用フィルム、コンデンサ用フィルムなどに好適に用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により限定するものではない。
【0028】
実施例1〜6、参考例1、比較例1〜3
(1)樹脂の合成
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた150リットル(L)のポリエステル製造装置に表1〜3に記載の量のモノマーを仕込み、酢酸マンガン四水和物をジカルボン酸成分に対して0.03モル%加え、常圧、窒素雰囲気下で昇温した。200℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を90モル%以上とした後、ジカルボン酸成分に対して0.02モル%の三酸化アンチモンと0.06モル%のリン酸トリメチルを加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270〜300℃、0.1kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。
【0029】
(2)二軸延伸フィルムの作製
得られたポリエステル樹脂を押し出し成形により、シリンダー温度250〜280℃、ダイ温度250〜280℃、ロール温度75〜80℃の条件で、厚さ約0.2mmの未延伸シートを作製した。次に該未延伸シートをガラス転移温度より10〜20℃高い温度で3.6×3.6倍に同時二軸延伸を行った後、210〜230℃で10〜30秒間熱固定処理して、厚さ15μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0030】
(3)樹脂の評価
・極限粘度
混合溶媒(質量比:フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=6/4)を用いて25℃恒温下で測定した。
・半結晶化時間
樹脂ペレットを押し潰してシート状とし、カバーガラスにはさみ、280℃で3分間溶融した後、所定温度の結晶化浴に入れ脱偏光強度の経時変化を測定して、その温度での半結晶化時間を求めた。結晶化浴の温度を150〜230℃まで10℃間隔で変化させて半結晶化時間を測定し、その中で最小の値をその樹脂の半結晶化時間とした。
【0031】
(4)二軸延伸フィルムの評価
・耐ピンホール性
二軸延伸フィルムを理学工業(株)製ゲルボーフレックスで、500回屈曲させた後、ゲルボーフレックスの軸方向を測定方向としてピンホールテスター(微弱電流測定法)でピンホールの数を測定した。測定回数は5回、測定電圧は1.0kVで行った。
・衝撃穴あけ試験での衝撃強度
JIS P813、ASTM D781に準じて測定した。測定機器は、東洋精機(株)製パンクチャー テスターを使用した。測定回数は5回、測定条件は、温度23℃、相対湿度50%で行った。
・ヘーズ
JIS−K−7105、ASTM D1003に準じ、測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
・耐熱性
二軸延伸フィルムに5.0cm×5.0cmの印をつけ、沸騰水中に30分間入れて熱水処理を行った後、その間隔を測定した。収縮率を以下の式によりにより算出した。
収縮率(%)=(1−熱水処理後の間隔/熱水処理前の間隔)×100
これらの結果を表1〜3に示す。
【0032】
尚、表中で使用した略記の意味は下記の通りである。
DMT:テレフタル酸ジメチル
NDCM:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル
SPD:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを
DOD:5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシキシエチル)−1,3−ジオキサン
EG:エチレングリコール
SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
DOG:5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン
【0033】
表1
実施例番号 実施例1 実施例2 実施例3 参考例1
モノマー仕込量(モル)
ジカルボン酸成分
DMT 293.7 304.5 280.4 −
NDCM − − − 235.9
ジオール成分
EG 484.6 511.6 451.4 389.2
SPG 14.7 6.1 25.2 11.8
ポリエステル樹脂の評価
Tg(℃) 87 85 89 125
IV(dl/g) 0.68 0.67 0.70 0.65
半結晶化時間(秒) 125 57 247 198
二軸延伸フィルムの評価
ヘーズ(%/15μm) 0.3 0.8 0.2 0.3
衝撃強度(kg・cm/cm)
7000 6000 7500 9000
耐ピンホール性(個/m2 )
0.3 0.7 0.1 0.5
収縮率(TD:%) 0.8 1.2 0.5 0.2
収縮率(MD:%) 1.4 1.8 0.8 0.3
【0034】
表2
実施例番号 実施例4 実施例5 実施例6
モノマー仕込量(モル)
ジカルボン酸成分
DMT 300.0 297.2 303.7
SPD − 14.9 −
DOD − − 15.2
ジオール成分
EG 495.0 505.2 516.2
DOG 15.0 − −
ポリエステル樹脂の評価
Tg(℃) 85 84 84
IV(dl/g) 0.65 0.69 0.68
半結晶化時間(秒) 78 178 277
二軸延伸フィルムの評価
ヘーズ(%/15μm) 0.2 0.5 0.8
衝撃強度(kg・cm/cm)8500 5500 5500
耐ピンホール性(個/m2 ) 0.1 0.8 0.9
収縮率(TD:%) 0.4 1.2 0.9
収縮率(MD:%) 0.6 1.6 1.3
【0035】
表3
【0036】
【発明の効果】
本発明で用いられる樹脂から得られる二軸延伸フィルムは耐ピンホール性、耐衝撃性、透明性、耐熱性など、優れた性能を兼ね備えており本発明の工業的意義は大きい。
Claims (5)
- ジカルボン酸構成単位とジオール構成単位とを有するポリエステル樹脂であって、前記ジオール構成単位の1〜10モル%が下記一般式(1)又は一般式(2)で表される環状アセタール骨格を有するジオールに由来する単位であり、前記ジオール構成単位の90〜99モル%がエチレングリコールに由来する単位であり、前記ジカルボン酸構成単位の80モル%以上がテレフタル酸に由来する単位であり、下記の(1)及び(2)の物性を有するポリエステル樹脂を用いてなる、沸騰水中で30分間熱水処理した後の収縮率が3%以下である二軸延伸フィルム。
(1)フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度が0.3〜1.5dl/g。
(2)280℃で溶融して150〜230℃で定温結晶化した際の脱偏光強度法に基づく半結晶化時間の最小値が300秒以下。
- 環状アセタール骨格を有するジオールが3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)1,3−ジオキサンである請求項1に記載の二軸延伸フィルム。
- ジカルボン酸構成単位の90〜100モル%がテレフタル酸に由来する単位である請求項1または2に記載の二軸延伸フィルム。
- 環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコールに由来する単位である請求項1ないし3のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
- 下記の(1)ないし(3)の物性を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
(1)屈曲試験後のピンホールの数が2.0個/m2以下。
(2)衝撃穴あけ試験での衝撃強度が5000kg・cm/cm以上。
(3)厚さ15μmのフィルムのヘーズが3%以下。
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