JP4298845B2 - 偏光回折素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光性を有する回折光を生じることができる偏光回折素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折素子は、分光光学などの分野で光の分光や光束の分割を行う目的で広く用いられている汎用光学素子である。回折素子は、その形状からいくつかの種類に分類され、光が透過する部分と透過しない部分を周期的に配置した振幅型回折素子、透過性の高い材料に周期的な溝を形成した位相型回折素子などに通常分類される。また、回折光の生じる方向に応じて透過型回折素子、反射型回折素子と分類される場合もある。
【0003】
上記の如き従来の回折素子では、自然光(非偏光)を入射した際に得られる回折光は非偏光しか得ることができない。分光光学などの分野で頻繁に用いられるエリプソメーターのような偏光光学機器では、回折光として非偏光しか得ることができないため、光源より発した自然光を回折素子により分光し、さらにこれに含まれる特定の偏光成分だけを利用するために、回折光を偏光子を通して用いる方法が一般的に行われている。この方法では、得られた回折光のうちの約50%以上が偏光子に吸収されるために光量が半減するという問題があった。またそのために感度の高い検出器や光量の大きな光源を用意する必要もあり、回折光自体が円偏光や直線偏光のような特定の偏光となる回折素子の開発が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するものであり、液晶層構造を制御することで、コレステリック配向フィルムの一部の領域に回折能を付与することに成功した。さらに詳しくは、コレステリック液晶に特有な選択反射特性および円偏光特性に併せて回折能という新たな特性をコレステリック配向フィルムに容易に付与する方法を見出し、遂に本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、配向支持基板上にコレステリック配向フィルムを形成する第1工程、該コレステリック配向フィルム表面に回折素子基板の回折パターンを転写し、偏光性を有する回折光を生じる領域を形成する第2工程、回折パターンが転写されたコレステリック配向フィルム面と支持基板1とを接着剤層1を介して積層する第3工程、第1工程で用いた配向支持基板をコレステリック配向フィルムから除去する第4工程、及び配向支持基板を除去したコレステリック配向フィルム面と支持基板2とを接着剤層2を介して積層する第5工程、を含む偏光回折素子の製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0007】
本発明の第1工程は、配向支持基板上にコレステリック配向フィルムを形成する工程であり、コレステリック配向を形成、固定化したコレステリック配向フィルムを得ることができるのであれば製法条件等について特に制限されるものではない。
【0008】
コレステリック配向フィルムを形成するフィルム材料としては、高分子液晶、低分子液晶またはこれら混合物を用いることができる。高分子液晶としては、コレステリック配向が固定化できるものであれば特に制限はなく、主鎖型、側鎖型高分子液晶等いずれでも使用することができる。具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマー、あるいはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサンなどの側鎖型液晶ポリマーなどが挙げられる。なかでもコレステリック配向を形成する上で配向性が良く、合成も比較的容易である液晶性ポリエステルが望ましい。ポリマーの構成単位としては、例えば芳香族あるいは脂肪族ジオール単位、芳香族あるいは脂肪族ジカルボン酸単位、芳香族あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を好適な例として挙げられる。
【0009】
またコレステリック配向フィルムのフィルム材料となる低分子液晶としては、例えばアクリロイル基、ビニル基やエポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格としたものが挙げられる。また低分子液晶としては、ライオトロピック性、サーモトロピック性のどちらも用いることができるが、サーモトロピック性を示すものが作業性、プロセス等の観点からより好適である。
【0010】
コレステリック配向を固定化する方法は公知の方法、例えば高分子液晶を用いる場合には、配向支持基板上に高分子液晶を配した後、熱処理等によってコレステリック液晶相を発現させ、その状態から急冷してコレステリック配向を固定化する方法を用いることができる。また低分子液晶を用いる場合には、配向支持基板上に低分子液晶を配した後、熱処理等によってコレステリック液晶相を発現させ、その状態を維持したまま光、熱または電子線等により架橋させてコレステリック配向を固定化する方法等を適宜採用することができる。
【0011】
またコレステリック配向フィルムの耐熱性等を向上させるために、フィルム材料中にコレステリック液晶相の発現を妨げない範囲において、例えばビスアジド化合物やグリシジルメタクリレート等の架橋剤を添加することもでき、これら架橋剤を添加することによりコレステリック液晶相を発現させた状態で架橋させることもできる。さらにフィルム材料には、コレステリック液晶相の発現を妨げない範囲において二色性色素、染料や顔料等を適宜添加することもできる。
【0012】
本発明の第1工程では、上記の如きフィルム材料を配向支持基板上に配し、コレステリック配向フィルムを得る。第1工程に供することができる配向支持基板としては、例えばガラス基板またはプラスチックフィルム、プラスチックシート等のプラスチック基板を例示することができる。ガラス基板としては例えばソーダガラス、シリカコートソーダガラス、ホウケイ酸ガラス基板等を用いることができる。またプラスチック基板としては、具体的には、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂、アモロファスポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース等のセルロース系プラスチックス等が挙げられる。これらの配向支持基板に必要に応じて一軸または二軸延伸操作を適宜加えることもできる。さらに上記基板に、親水化処理や疎水化処理や易剥離性処理などの表面処理を施すこともできる。また配向支持基板としては1種単独、または2種以上の基板を積層したものを配向支持基板として用いることもできる。
【0013】
また上記各配向支持基板上に配向膜を形成したものも本発明では配向支持基板に包含するものである。配向膜としては、ラビング処理したポリイミドフィルムが好適に用いられるが、その他当該分野で公知の配向膜も適宜使用することができる。またポリイミド等を塗布することなく、直接ラビング処理によって配向能を付与して得られるプラスチック基板等もコレステリック配向フィルムを得る際の配向支持基板として使用することができる。なお配向処理の方法は特に制限されるものではないが、液晶分子を配向処理界面と一様に平行に配向させるものであればよい。
【0014】
次いで配向支持基板上にフィルム材料を塗布する手段としては、溶融塗布、溶液塗布が挙げられるが、プロセス上溶液塗布が望ましい。
【0015】
溶液塗布は、フィルム材料を所定の割合で溶媒に溶解し、所定濃度の溶液を調製する。溶媒としては、用いるフィルム材料の種類により異なるが、通常トルエン、キシレン、ブチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素系、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系、ブチルアルコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール、ヘキシレングリコール等のアルコール系等を用いることができる。これらの溶媒は必要により2種以上を適宜混合して使用することもできる。また溶液の濃度は用いられる高分子液晶の分子量や溶解性、さらに最終的に目的とするフィルムの膜厚等により異なるため一概には言えないが、通常1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%である。
【0016】
また溶液中には、塗布を容易にするために界面活性剤等を加えても良い。界面活性剤としては、例えばイミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類や溶剤、あるいは塗布する支持基板にもよるが、通常、高分子液晶の重量に対する比率にして10ppm〜10%、好ましくは50ppm〜5%、さらに好ましくは0.01%〜1%の範囲である。
上記の如くして調製したフィルム材料溶液を配向支持基板上に塗布する。
【0017】
塗布方法としては、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等を採用することができる。
【0018】
塗布後溶媒を乾燥により除去し、コレステリック液晶相を呈する所定温度、所定時間熱処理してコレステリック配向を完成させる。次いで液晶状態において形成したコレステリック配向を、高分子液晶を主とするフィルム材料を用いた場合にはガラス転移点以下の温度に急冷することによってコレステリック配向が固定化されたコレステリック配向フィルムを得ることができる。また低分子液晶を主とするフィルム材料を用いた場合には、液晶状態においてコレステリック配向を形成した後、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)を照射して低分子液晶を架橋させることによってコレステリック配向が固定化されたコレステリック配向フィルムを得ることができる。
【0019】
配向支持基板上に形成されたコレステリック配向フィルムの実膜厚としては、特に制限されるものではないが、量産性、製造プロセスの面から、通常0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.6〜6μmであることが望ましい。またコレステリック配向の螺旋巻き数としては、通常2巻き以上10巻き以下、好ましくは2巻き以上6巻き以下であることが望ましい。螺旋巻き数が2巻きより少ない場合、また10巻きより多い場合には、偏光回折素子としての効果を発現できない恐れがある。
【0020】
本発明の第2工程は、第1工程で得られたコレステリック配向フィルム表面に回折素子基板の回折パターンを転写する工程である。コレステリック配向フィルムに回折パターンを転写する際に用いられる回折素子基板の材質としては、金属や樹脂のような材料であっても良く、あるいはフィルム表面に回折機能を付与したもの、あるいはフィルムに回折機能を有する薄膜を転写したもの等、およそ回折機能を有するものであれば如何なる材質であっても良い。なかでも取り扱いの容易さや量産性を考えた場合、回折機能を有するフィルムまたはフィルム積層体がより望ましい。
【0021】
またここでいう回折素子とは、平面型ホログラムの原版等の回折光を生じる回折素子全てをその定義として含む。またその種類については、表面形状に由来する回折素子、いわゆる膜厚変調ホログラムのタイプであってもよいし、表面形状に因らない、または表面形状を屈折率分布に変換した位相素子、いわゆる屈折率変調ホログラムのタイプであっても良い。本発明においては、回折素子の回折パターン情報をより容易に液晶に付与することができる点から、膜厚変調ホログラムのタイプがより好適に用いられる。また屈折率変調のタイプであっても、表面形状に回折を生じる起伏を有したものであれば本発明に好適に用いることができる。
【0022】
回折パターンをコレステリック配向フィルムに転写する際の諸条件は、コレステリック配向フィルムの諸物性、回折素子基板の材質等によって異なるため一概には言えないが、通常、温度40〜300℃、好ましくは70〜180℃、圧力0.05〜80MPa、好ましくは0.1〜20MPaの加温および/または加圧条件下で行うことができる。温度が40℃未満の場合、室温で十分安定な配向状態を有するコレステリック配向フィルムにおいては回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。また300℃を越えるとコレステリック配向フィルムの分解や劣化が起こり恐れがある。また圧力が0.05MPaより低い場合、回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。さらに80MPaより高い場合には、コレステリック配向フィルムや他の基材の破壊等が起こる恐れがあり望ましくない。
【0023】
また転写に要する時間は、コレステリック配向フィルムを形成しているフィルム材料の種類、フィルム形態、回折パターン型や回折素子基板の材質等により異なるため一概には言えないが、通常0.01秒以上、好ましくは0.05秒〜1分である。処理時間が0.01秒より短い場合、回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。また1分を越えるような処理時間は生産性の観点から望ましいとは言えない。
【0024】
回折パターンをコレステリック配向フィルムに転写する具体的な方法としては、例えば上記諸条件を満足する一般の圧縮成型機、圧延機、カレンダーローラー、ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド等を用い、コレステリック配向フィルムの液晶面と回折パターン面が接するようにした状態で成型機等に供することにより、回折素子基板の回折パターンをコレステリック配向フィルムに転写することができる。また回折パターンの転写は、コレステリック配向フィルムの片面のみに限られるものではなく、同様の方法により、コレステリック配向フィルム両面に回折パターンを転写することもできる。
【0025】
上記の如き方法および条件にてコレステリック配向フィルムに回折素子基板の回折パターンを転写した後、当該回折素子基板はコレステリック配向フィルムから除去する。
【0026】
回折素子基板が取り除かれたコレステリック配向フィルムは、回折パターンが転写された当該フィルム面に回折能を示す領域を有することになる。ここで回折能を示す領域とは、その領域を透過した光またはその領域で反射された光が、幾何学的には影になる部分に回り込むような効果を生じる領域を意味する。また回折能を有する領域の有無は、例えばレーザー光等を前記領域に入射し、直線的に透過または反射する光(0次光)以外に、ある角度をもって出射する光(高次光)の有無により確認することができる。また別法としては、原子間力顕微鏡や透過型電子顕微鏡などで液晶層の表面形状や断面形状を観察することにより回折能を示す領域が形成されているか否か確認することができる。また回折能を示す領域は、コレステリック配向フィルムの複数領域、例えばフィルム表裏面にそれぞれ形成することもできる。また回折能を示す領域は、例えばフィルム面に均一な厚さを持った層状態として形成されていることは必ずしも必要とせず、フィルム面の少なくとも一部に回折能を示す領域が形成されていれば偏光回折素子としての効果を発現することができる。また回折能を示す領域を、所望の図形、絵文字、数字等の型を象るように形成することもできる。さらに回折能を示す領域を複数有する場合、全ての当該領域が同じ回折能を示す必要性はなく、それぞれの領域において異なった回折能を示すものであってもよい。
【0027】
また回折能を示す領域が層状態として形成されている場合、回折能を示す層(領域)の厚みとしては、コレステリック配向フィルムの膜厚に対して通常50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下の厚みを有する層状態で形成されていることが望ましい。回折能を示す層(領域)の厚さが50%を超えると、コレステリック液晶相に起因する選択反射特性、円偏光特性等の効果が低下し、偏光回折素子としての効果を得ることができない恐れがある。
【0028】
さらに本発明の第2工程において、回折素子基板の回折パターンを転写されたコレステリック配向フィルムは、その回折パターンを転写されたフィルム面における配向状態、すなわち回折能を示す領域の配向状態が、螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではないコレステリック配向、好ましくは螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行でなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向を形成していることが望ましい。またそれ以外の領域においては、通常のコレステリック配向と同様の配向状態、すなわち螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔な螺旋構造を形成していることが望ましい。
【0029】
また本発明のコレステリック配向フィルムにおいて、回折能を示す領域が一方のフィルム面領域に有する際、そのフィルムの表裏、すなわち回折能を示す領域を有するフィルム面とその面とは反対のフィルム面とは多少異なった光学効果、呈色効果等を示すものである。したがって用途や目的とする機能等に応じ、コレステリック配向フィルムのフィルム面の配置位置等を選択することが望ましい。
【0030】
本発明の第3工程では、第2工程で得られた回折パターン転写後のコレステリック配向フィルムの回折パターン転写面と支持基板1とを接着剤層1を介して積層する工程である。第3工程において用いられる支持基板1としては、シート状物、フィルム状物、板状物等の形状を有する自己支持性を具備する基板であれば特に制限されるものではない。なお支持基板1を後述する第6工程において除去する必要がある場合には、形状、自己支持性と併せて、再剥離性を有することが必要である。このような支持基板1としては、通常剥離性を有するプラスチックフィルムが望ましく用いることができる。ここで再剥離性とは、接着剤を介してコレステリック配向フィルムと支持基板1とを接着した状態において、接着剤と支持基板1との界面で剥離できることをいい、好ましくは接着剤を介して支持基板1に転写されたコレステリック配向フィルムの空気側面と、後述する支持基板2を対向させて接着剤を介して張り合わせた後に、支持基板1が直接接する接着剤との界面で剥離できることが望ましい。本発明の第3工程において用いられる上記の如き支持基板1としては、接着剤(硬化後)との界面での剥離強度(180゜剥離試験、剥離速度30cm/分)の値として、通常0.5〜80gf/25mm、好ましくは2〜50gf/25mmの剥離強度のものが望ましく用いられる。このような支持基板1として好適なプラスチックフィルムとしては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース系プラスチックス等が挙げられる。これらのプラスチックフィルムそれ自身を用いてもよいし、適度な再剥離性を付与するためにこれらのプラスチックフィルムの表面に、シリコーンコートをしたもの、有機薄膜または無機薄膜を形成したもの、化学的処理や物理的処理を施したものを用いることができる。本発明の第3工程において用いられる支持基板1としては、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等やさらにこれらのフィルム表面をシリコーン等の離型剤で処理したプラスチックフィルムが、接着剤と適度な接着性および剥離性を兼ね備えていることから望ましい。
【0031】
またコレステリック配向フィルムと支持基板1との間に介される接着剤層1としては、特に制限されるものではなく、従来公知の様々な粘・接着剤、例えば光または電子線硬化型の反応性接着剤、ホットメルト型接着剤等を適宜用いることができる。
【0032】
反応性接着剤としては、光または電子線重合性を有するプレポリマーおよび/またはモノマーに必要に応じて他の単官能、多官能性モノマー、各種ポリマー、安定剤、光重合開始剤、増感剤等を配合したものを用いることができる。
【0033】
光または電子線重合性を有するプレポリマーとしては、具体的にはポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート等を例示することができる。また光または電子線重合性を有するモノマーとしては、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、2官能アクリレート、2官能メタクリレート、3官能以上の多官能アクリレート、多官能メタクリレート等が例示できる。またこれらは市販品を用いることもでき、例えばアロニックス(アクリル系特殊モノマー、オリゴマー;東亞合成社製)、ライトエステル(共栄社化学社製)、ビスコート(大阪有機化学工業社製)等を用いることができる。
【0034】
また光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン誘導体類、アセトフェノン誘導体類、ベンゾイン誘導体類、チオキサントン類、ミヒラーケトン、ベンジル誘導体類、トリアジン誘導体類、アシルホスフィンオキシド類、アゾ化合物等を用いることができる。
【0035】
光または電子線硬化型の反応性接着剤の粘度は、接着剤の加工温度等により適宜選択するものであり一概にはいえないが、通常25℃で10〜2000mPa・s、好ましくは50〜1000mPa・s、さらに好ましくは100〜500mPa・sである。粘度が10mPa・sより低い場合、所望の厚さが得られ難くくなる。また2000mPa・sより高い場合には、作業性が低下する恐れがあり望ましくない。粘度が上記範囲から外れている場合には、適宜、溶剤やモノマー割合を調整し所望の粘度にすることが好ましい。
【0036】
また光硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては公知の硬化手段、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を使用することができる。また露光量は、用いる反応性接着剤の種類により異なるため一概にはいえないが、通常50〜2000mJ/cm2、好ましくは100〜1000mJ/cm2である。
【0037】
また電子線硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては、電子線の透過力や硬化力により適宜選定されるものであり一概にはいえないが、通常、加速電圧が50〜1000kV、好ましくは100〜500kVの条件で照射して硬化することができる。
【0038】
また接着剤としてホットメルト型接着剤を用いる場合、当該接着剤も特に制限はないが、ホットメルトの作業温度が80〜200℃、好ましくは100〜160℃程度のものが作業性等の観点から望ましく用いられる。具体的には、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ゴム系、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等をベース樹脂として製造されているものが挙げられる。
【0039】
さらに接着剤として粘着剤を用いる場合も特に制限されるものではなく、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系粘着剤などを用いることができる。
【0040】
接着剤の厚さは、用いられる用途やその作業性等により異なるため一概にはいえないが、通常0.5〜50μm、好ましくは1〜10μmである。
【0041】
また接着剤の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法を用いて支持基板またはコレステリック配向フィルムの回折パターンが転写されたフィルム面若しくは支持基板1およびコレステリック配向フィルムの両方に形成することができる。
【0042】
また第3工程において用いられる接着剤層1中には、紫外線防止剤、ハードコート剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、上記の如き接着剤成分と相溶または分散できるものであれば特に制限はなく、例えばベンゾフェノン系化合物、サルシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物等の有機系紫外線吸収剤、酸化セシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤を用いることができる。なかでも紫外線吸収効率が高いベンゾフェノン系化合物が好適に用いられる。また紫外線吸収剤は、1種単独または複数種添加することができる。またハードコート剤としても、接着剤成分と相溶または分散できるものであれば特に制限はなく、例えばオルガノポリシロキサン系、光硬化型樹脂系のアクリルオリゴマー系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、熱硬化型樹脂系のアクリル−シリコン系、またはセラミックス等の無機系化合物等を用いることができる。なかでもオルガノポリシロキサン系、光硬化型樹脂系であるアクリルオリゴマー系のハードコート剤が好適に用いられる。
【0043】
第3工程において用いられる接着剤層1中の紫外線吸収剤および/またはハードコート剤の配合割合は、使用する接着剤成分により異なるが、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0044】
さらに第3工程において用いられるコレステリック配向フィルムと支持基板1との接着に用いられる接着剤層1中には、紫外線吸収剤およびハードコート剤の他に必要に応じてヒンダードアミンや消光剤等の光安定剤、帯電防止剤、スベリ性改良剤、染料、顔料、界面活性剤、微細なシリカやジルコニア等の充填剤等の各種添加剤を配合することもできる。これら各種添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0045】
第3工程においてコレステリック配向フィルムの回折パターンが転写されたフィルム面と支持基板1とを接着剤層1を介して積層する方法としては特に制限されるものではないが、例えば前述の回折パターンをコレステリック配向フィルムに転写する方法として例示した各種機器類から適宜選定する等により積層することができる。
【0046】
次いでこれまでの工程において得られた配向支持基板/コレステリック配向フィルム/接着剤層1/支持基板1の順に構成された積層物から、第4工程として第1工程で用いた配向支持基板を除去する工程を行う。
【0047】
配向支持基板をコレステリック配向フィルムから除去する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば配向支持基板を剥離除去する、または配向支持基板を溶解する、といった方法等が挙げられる。剥離除去方法としては、例えば配向支持基板のコーナー端部に粘着テープを貼り付けて人為的に剥離する方法、ロール等を用いて機械的に剥離する方法、構造材料全てに対する貧溶媒に浸漬した後に機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向支持基板とコレステリック配向フィルムとの熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、配向支持基板そのもの、または配向支持基板上の配向膜を溶解除去する方法等を例示することができる。剥離性については、コレステリック配向フィルムを形成しているフィルム材料の諸物性や配向支持基板との密着性によって異なるため、その系にもっとも適した方法を採用すべきである。
【0048】
本発明では、第4工程において配向支持基板を除去した後、第5工程として配向支持基板を除去したコレステリック配向フィルム面と支持基板2とを接着剤層2を介して積層する工程を行う。第5工程において用いられる支持基板2としては、シート状物、フィルム状物、板状物等の形状を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリアリレート、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のシート、フィルムあるいは基板、または紙、合成紙等の紙類、金属箔、ガラス板等から適宜選択して用いることができる。また支持基板2としては、その表面に凹凸が施されているものであってもよい。
【0049】
またコレステリック配向フィルムと支持基板2との間に介される接着剤層2としては、特に制限されるものではなく、第3工程における接着剤層1として説明した従来公知の様々な粘・接着剤、例えば光または電子線硬化型の反応性接着剤、ホットメルト型接着剤等を適宜用い、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法を用いて支持基板2または配向支持基板を除去したコレステリック配向フィルム面若しくは支持基板2およびコレステリック配向フィルム面の両方に形成することができる。
【0050】
本発明は、以上説明した第1工程から第5工程を経ることにより支持基板2/接着剤層2/コレステリック配向フィルム/接着剤層1/支持基板1の順に構成された偏光回折素子を製造することができる。ここで第3工程で用いた支持基板1が光学的に透明でない当該基板を用いた場合、また目的とする用途において望ましくない光学特性を示す支持基板1や偏光回折素子としての効果を消失させてしまう支持基板1等を用いた場合、また支持基板1として再剥離性を有するものを用いた場合には、第6工程として第3工程で用いた支持基板1をコレステリック配向フィルムから除去し、支持基板2/接着剤層2/コレステリック配向フィルム/接着剤層1の順に構成された偏光回折素子を製造することができる。ここで第3工程において接着剤層1中に紫外線吸収剤および/またはハードコート剤を配合しておくことにより、接着剤層1に保護層としての機能を付与しておくこともできる。
【0051】
第6工程における支持基板1の除去方法は、第4工程における配向支持基板を除去する方法と同様に、例えば支持基板1のみを剥離除去する、または支持基板1を溶解する、といった方法等が挙げられる。剥離除去方法としては、例えば支持基板1のコーナー端部に粘着テープを貼り付けて人為的に剥離する方法、ロール等を用いて機械的に剥離する方法、構造材料全てに対する貧溶媒に浸漬した後に機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、支持基板1と接着剤層1との熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、支持基板1そのものを溶解除去する方法等を例示することができる。剥離性については、接着剤層1の諸物性や支持基板1との密着性によって異なるため、その系にもっとも適した方法を採用すべきである。
【0052】
このようにして得られる本発明の偏光回折素子は、回折光が円偏光性を有するという、従来の光学部材には無い特異な効果を有する。この効果により、例えばエリプソメーターのような偏光を必要とする分光光学機器に用いることにより、光の利用効率を極めて高くすることが可能となる。従来の偏光を必要とする分光光学機器では、光源より発した光を回折格子やプリズム等の分光素子を用いて波長ごとに分光した後に偏光子を透過させる、または偏光子を透過させた後に分光する必要があり偏光子が必須であった。この偏光子は、入射した光の約50%を吸収してしまい、また界面での反射が生じるために光の利用効率が極めて悪いといった問題があったが、本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子を用いることにより光の利用効率を極めて高く、理論的には約100%利用することが可能となる。また本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、通常の偏光板を用いることによって容易に回折光の透過および遮断をコントロールすることが可能である。通常、偏光性を有していない回折光では、どのような偏光板と組み合わせても完全に遮断することはできない。すなわち本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子では、例えば右偏光性を有する回折光は、左円偏光板を用いた時にのみ完全に遮断することができ、それ以外の偏光板を用いても完全な遮断を実現することができないものである。このような効果を有することから、例えば観察者が偏光板越しに回折像を観察する環境において、偏光板の状態を変化させることによって、回折像を暗視野から突然浮かび上がらせたり、また突然消失させたりすることが可能となる。
【0053】
以上のように本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、新たな回折機能素子として応用範囲は極めて広く、種々の光学用素子や光エレクトロニクス素子、装飾用部材、偽造防止用素子等として使用することができる。
【0054】
具体的に光学用素子や光エレクトロニクス素子としては、例えば透明かつ等方なフィルム、例えばフジタック(富士写真フィルム社製)、コニカタック(コニカ社製)などのトリアセチルセルロースフィルム、TPXフィルム(三井化学社製)、アートンフィルム(日本合成ゴム社製)、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン社製)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン社製)等を第3工程の支持基板として偏光回折素子を得ることにより様々な光学用途への展開を図ることが可能である。例えば当該偏光回折素子をTN(twisted nematic)−LCD(Liquid Crystal Display)、STN(Super Twisted Nematic)−LCD、ECB(Electrically Controlled Birefringence)−LCD、OMI(Optical Mode Interference)−LCD、OCB(Optically Compensated Birefringence)−LCD、HAN(Hybrid Aligned Nematic)−LCD、IPS(In Plane Switching)−LCD等の液晶ディスプレーに備えることによって色補償および/または視野角改良された各種LCDを得ることができる。また当該偏光回折素子を上記したように分光された偏光を必要とする分光光学機器、回折現象により特定の波長を得る偏光光学素子、光学フィルター、円偏光板、光拡散板等として用いることも可能であり、さらに1/4波長板と組み合わせることによって直線偏光板を得ることもできる等、光学用素子や光エレクトロニクス素子として従来にない光学効果を発現しうる様々な光学部材を提供することができる。
【0055】
装飾用部材としては、回折能による虹色呈色効果とコレステリック液晶による色鮮やかな呈色効果等を併せ持った新たな意匠性フィルムをはじめ様々な意匠性成形材料を得ることができる。また薄膜化できることから既存製品等に添付する、一体化する等の方法によって、他の類似製品との差別化にも大きく貢献することが期待できる。例えば、意匠性のある回折パターンを組み込んだ偏光回折素子をガラス窓等に張り付ける、または第3工程における支持基板としてガラス窓等を用いることにより、外部からはその視角によって前記回折パターンを伴ったコレステリック液晶特有の選択反射が異なった色に見え、ファッション性に優れたものとなる。また明るい外部からは内部が見え難く、それにもかかわらず内部からは外部の視認性がよい窓とすることができる。
【0056】
偽造防止用素子としては、回折素子およびコレステリック液晶のそれぞれの偽造防止効果を併せ持った新たな偽造防止フィルム、シール、ラベル等として用いることができる。具体的には本発明の第3工程における支持基板として、例えば自動車運転免許証、身分証明証、パスポート、クレジットカード、プリペイドカード、各種金券、ギフトカード、有価証券等のカード基板、台紙等を用いることによって、偏光回折素子をカード基板、台紙等と一体化するまたは一部に設ける、具体的には貼り付ける、埋め込む、紙類に織り込むことができる。また本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、回折能を示す領域がコレステリック配向フィルム表面に有するもので、かつそのフィルム面は接着剤層によって覆われており、さらにコレステリック液晶の波長選択反射性、円偏光選択反射性、色の視角依存性、コレステリックカラーの美しい色を呈する効果を併せ持ったものである。したがって本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、偽造防止用素子として用いた場合には、当該偏光回折素子の偽造が困難であり、より具体的には回折能を示す領域をフィルム表面に有するコレステリック配向フィルムの偽造は極めて困難であるといえる。また偽造防止効果とあわせて、回折素子の虹色呈色効果、コレステリック液晶の色鮮やかな呈色効果を有することから意匠性にも優れたものである。これらのことから本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は偽造防止用素子として非常に好適である。
【0057】
これらの用途はほんの一例であり、本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、従来、回折素子単体、通常のコレステリック配向を固定化したコレステリック配向フィルム単体が使用されている各種用途や、新たな光学的効果を発現することが可能であること等から前記用途以外の様々な用途にも応用展開が可能である。
【0058】
【実施例】
以下に実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(参考例1)
フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)混合溶媒中の固有粘度が0.145dL/g(濃度0.5g/dL,温度30℃)、ガラス転移温度(Tg)が85℃のR体光学活性単位を含有する液晶性ポリエステルのN−メチル−2−ピロリドン溶液(20重量%)を調整した。
【0060】
次いで得られた溶液をラビング処理したポリフェニレンスルフィド(PPS;配向支持基板)フィルム上にスピンコート法で製膜し、200℃で5分間熱処理したところ、金色の選択反射を呈するコレステリック配向フィルムが得られた。
【0061】
同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトル測定したところ,中心波長が約600nm,選択反射波長帯域幅が100nmの選択反射を示す厚み1.6μmのコレステリック配向フィルムが形成されていることが確認された。
【0062】
(実施例1)
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(刻線900本/mm)の回折面と、参考例1で得たPPSフィルム上のコレステリック配向フィルム面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いたところ、回折パターンが転写されたコレステリック配向フィルムをPPSフィルム上に得ることができた。
【0063】
回折格子フィルムが重ねられていたコレステリック配向した液晶面を観察したところ、回折パターンに起因する虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。また回折格子フィルムを取り除いたコレステリック配向フィルム面の配向状態を偏光顕微鏡観察および液晶層断面の透過型電子顕微鏡観察をしたところ、コレステリック相における螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向が液晶層の表面領域に形成されていることが確認された。またそれ以外の領域においては、螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔なコレステリック配向が形成していることが確認された。この領域のコレステリック配向の螺旋巻き数は5巻きであった。
【0064】
またコレステリック配向フィルム面内に垂直にHe−Neレーザー(波長632.8nm)を入射したところ、0゜および約±35゜の出射角にレーザー光が観察された。さらに偏光特性を確認するために、通常の室内照明下に得られた積層体をおき、右円偏光板(右円偏光のみ透過)を介して観察したところ、虹色の反射回折光が観察され、偏光板なしで観察した場合の明るさとほぼ同じであった。これに対し左円偏光板(左円偏光のみ透過)を介して観察したところ、暗視野となり、虹色の反射回折光は観察されなかった。
【0065】
これらのことよりコレステリック配向フィルムには、回折能を示す領域がフィルム表面領域に形成され、またその回折光が右円偏光であることが確認された。
【0066】
ついで、回折パターンが転写されたコレステリック配向フィルム面にバーコーターにより市販の光硬化型アクリル系接着剤を5μmとなるように塗布し、塗布面にトリアセチルセルロースフィルムをラミネーターを用いて貼り合わせ、紫外線照射により接着剤を硬化させた後、配向支持基板であったPPSフィルムを180°方向に剥離除去した。
【0067】
さらに、PPSフィルムが剥離除去されたコレステリック配向フィルム面に前記光硬化型アクリル系接着剤を5μmとなるように塗布し、塗布面にトリアセチルセルロースフィルムをラミネーターを用いて貼り合わせ、紫外線照射により接着剤を硬化させ本発明の偏光回折素子を得た。
【0068】
得られた偏光回折素子について、偏光顕微鏡観察、透過型電子顕微鏡観察およびHe−Neレーザー(波長632.8nm)光入射により配向状態等を観察したが、上述の回折パターン転写後の観察結果と差は見られなかった。また、肉眼観察でも、回折パターンに起因する虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。
【0069】
(実施例2)
実施例1と同様にして回折パターンが設けられたコレステリック配向フィルムをPPSフィルム上に得た。
厚み25μmの表面にシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルム(PET;支持基板1)フィルムと,上記のPPSフィルム上のコレステリック配向フィルム面を,市販のアクリル系光硬化型接着剤1で接着し,PPSフィルムのみ剥離して,コレステリック配向フィルム層/光硬化型接着剤層1/PETフィルム(支持基板1)からなる積層体を得た。
【0070】
ついで、該積層体のコレステリック配向フィルム面に市販のポリエステル系ホットメルト接着剤(接着剤層2)を公知の方法で塗布し,100℃に加温されたラミネーターにて、厚み80μmのUV吸収剤含有トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フイルム社製UVD80;支持基板2)と積層した。冷却後支持基板1のPETフィルムを剥離除去し、本発明の偏光回折素子を得た。得られた偏光回折素子は、回折パターンによる虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。
【0071】
また、上記のホットメルト接着剤を塗布した積層体のホットメルト接着剤層側が、表面にアルミニウムを蒸着した厚さ1mmのポリ塩化ビニルシートに接するようにしてホットスタンプにより転写したところ、支持基板1たるPETフィルム面からきれいに剥離転写された。得られた偏光回折素子には、反射光でも鮮やかな回折パターンによる虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。
【0072】
(実施例3)
実施例1において、回折パターンの転写を、伸栄産業社製26トンプレスを用い、80℃、15MPa、20秒保持の条件で行った以外は実施例1と同様に行い、偏光回折素子を得た。
得られた偏光回折素子には、回折パターンによる虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。
【0073】
【発明の効果】
本発明では、複雑な工程や処理等を行うことなく、回折光が円偏光性を示すという特異な光学特性を有する偏光回折素子を製造することができる。また本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子は、回折パターンが転写されたコレステリック配向フィルム面が最外層の接着剤層に接していることから、当該素子における回折効果をより強調して発現することができる。
またこのような光学特性を有することから、本発明の製造方法で得られる偏光回折素子は、回折機能素子としてその応用範囲は極めて広く、例えば液晶ディスプレー等の光学素子、光エレクトロニクス素子、装飾用材料、偽造防止用素子等の光学部材として好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. 配向支持基板上にコレステリック配向フィルムを形成する第1工程、該コレステリック配向フィルム表面に回折素子基板の回折パターンを転写し、偏光性を有する回折光を生じる領域を形成する第2工程、回折パターンが転写されたコレステリック配向フィルム面と支持基板1とを接着剤層1を介して積層する第3工程、第1工程で用いた配向支持基板をコレステリック配向フィルムから除去する第4工程、及び配向支持基板を除去したコレステリック配向フィルム面と支持基板2とを接着剤層2を介して積層する第5工程、を含む偏光回折素子の製造方法。
  2. 配向支持基板を除去したコレステリック配向フィルム面と支持基板2とを接着剤層を介して積層した後、コレステリック配向フィルムから第3工程で用いた支持基板1を除去する第6工程を含む請求項1記載の偏光回折素子の製造方法。
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