JP4102966B2 - シリコン単結晶の引上げ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン融液にカスプ(CUSP)磁場を印加しながら、シリコン単結晶のインゴットをシリコン融液から引上げる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶の製造方法として、シリコン単結晶のインゴットをチョクラルスキー法(以下、CZ法という)により引上げる方法が知られている。このCZ法は、石英るつぼに貯留されたシリコン融液に種結晶を接触させ、石英るつぼ及び種結晶を回転させながら種結晶を引上げることにより、円柱状のシリコン単結晶のインゴットを製造する方法である。
【0003】
一方、半導体集積回路を製造する工程において、歩留りを低下させる原因として酸化誘起積層欠陥(Oxidation Induced Stacking Fault、以下、OSFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、或いは侵入型転位(Interstitial-type Large Dislocation、以下、LDという。)の存在が挙げられている。OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。またCOPは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現する結晶に起因したピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットも本来のパーティクルとともに光散乱欠陥として検出される。
【0004】
このCOPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependent dielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。更にLDは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このLDも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。この結果、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからOSF、COP及びLDを減少させることが必要となっている。
【0005】
このOSF、COP及びLDを有しない無欠陥のシリコンウェーハを切出すためのシリコン単結晶インゴットの製造方法が特開平11−1393号公報に開示されている。一般に、シリコン単結晶のインゴットを速い速度で引上げると、インゴット内部に空孔型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[V]が形成され、インゴットを遅い速度で引上げると、インゴット内部に格子間シリコン型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[I]が形成される。このため上記製造方法では、インゴットを最適な引上げ速度で引上げることにより、上記点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域[P]からなるシリコン単結晶を製造できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の特開平11−1393号公報に示されたシリコン単結晶インゴットの製造方法では、シリコン単結晶のインゴットとシリコン融液との固液界面近傍での鉛直方向の温度勾配が均一になるように制御する必要があり、この制御はシリコン融液の残量の変化や対流の変化による影響を受けるため、インゴットの直胴部全長にわたって、無欠陥のシリコン単結晶を製造することは困難であった。
本発明の目的は、比較的少ない電力及び比較的狭い空間で、無欠陥であって、しかも酸素濃度が制御されたシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる、シリコン単結晶の引上げ方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、シリコン融液13を貯留する石英るつぼ14を所定の回転速度で回転させ、シリコン融液13から引上げられるシリコン単結晶のインゴット16を所定の回転速度で回転させ、石英るつぼ14の外径より大きなコイル直径を有する第1及び第2コイル11,12を石英るつぼ14の回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設し、第1及び第2コイルに互いに逆向きの電流を流すことにより第1及び第2コイルの各コイル中心から第1及び第2コイル間の中立面17aを通るカスプ磁場17を発生させ、インゴット16内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴット16を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法の改良である。
その特徴ある構成は、カスプ磁場17の中立面17aとシリコン融液13の表面との距離をHとするとき、280mm≦H≦700mmを満たすように、中立面17aをシリコン融液13の表面の下方に制御するか、或いは140mm≦H≦600mmを満たすように、中立面17aをシリコン融液13の表面の上方に制御し、インゴット16の直径が300mmでありかつ石英るつぼ14の内径が650mmであるとき、カスプ磁場17の水平方向の強度を0.02テスラに制御し、石英るつぼ14を4rpmの回転速度で回転させかつインゴット16を石英るつぼ14とは反対方向に12〜8rpmの回転速度で回転させながらインゴット16を0.2〜0.5mm/分の引上げ速度で引上げるところにある。
【0008】
この請求項1に記載されたシリコン単結晶の引上げ方法では、カスプ磁場17の中立面の位置と、カスプ磁場の強度と、石英るつぼ14の回転速度と、インゴット16の回転速度とを制御しながら、インゴットを引上げると、シリコン融液13に所定の対流21〜23が発生し、これらの対流21〜23により固液界面19形状が上側に凸となる。この結果、固液界面の中心がシリコン融液13表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面19の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット16を比較的容易に製造できる。
【0009】
請求項2に係る発明は、図1に示すように、シリコン融液13を貯留する石英るつぼ14を所定の回転速度で回転させ、シリコン融液13から引上げられるシリコン単結晶のインゴット16を所定の回転速度で回転させ、石英るつぼ14の外径より大きなコイル直径を有する第1及び第2コイル11,12を石英るつぼ14の回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設し、第1及び第2コイルに互いに逆向きの電流を流すことにより第1及び第2コイルの各コイル中心から第1及び第2コイル間の中立面17aを通るカスプ磁場17を発生させ、インゴット16内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴット16を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法の改良である。
その特徴ある構成は、カスプ磁場17の中立面17aとシリコン融液13の表面との距離をHとするとき、H=500mmを満たすように、中立面17aをシリコン融液13の表面の下方に制御し、インゴット16の直径が200mmでありかつ石英るつぼ14の内径が600mmであるとき、カスプ磁場17の水平方向の強度を0.018テスラに制御し、石英るつぼ14を3〜3.5rpmの回転速度で回転させかつインゴット16を石英るつぼ14とは反対方向に20〜16rpmの回転速度で回転させながらインゴット16を0.3〜0.7mm/分の引上げ速度で引上げるところにある。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のシリコン単結晶の引上げ方法は、シリコン融液13を貯留する石英るつぼ14を所定の回転速度R1で回転させ、シリコン融液13から引上げられるシリコン単結晶のインゴット16を所定の回転速度R2で回転させ、かつシリコン融液13に第1及び第2コイル11,12を用いてカスプ磁場17を印加しながら、上記シリコン融液13から上記インゴット16を引上げる方法である。上記第1及び第2コイル11,12は、石英るつぼ14の外径より大きなコイル直径を有し、石英るつぼの回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設される。また第1及び第2コイル11,12には互いに逆向きの電流が流され、これにより第1及び第2コイルの各コイル中心から第1及び第2コイル間の中立面17aを通るカスプ磁場17が発生するようになっている。なお、上記中立面17aは、第1及び第2コイル11,12間における、鉛直方向の磁場強度がゼロとなる水平面である。また、図1の符号18は石英るつぼ14の外周面を包囲するヒータである。
【0012】
一方、上記インゴット16は、このインゴット内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で引上げられる。即ち、インゴットは、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液13からボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロファイルで引上げられる。
【0013】
一般的に、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液13からシリコン単結晶のインゴット16を引上げると、インゴット内には、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0014】
点欠陥は一般的にシリコン融液13とインゴット16の間の接触面、即ち固液界面19で形成される。しかし、インゴット16を継続的に引上げることによって固液界面19であった部分は引上げとともに冷却し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因して発生する三次元構造となる。
【0015】
空孔型点欠陥の凝集体は、前述したCOPの他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述したLDと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコエッチング(Secco etching、HF:K2Cr2O7(0.15mol/l)=2:1の混合液によるエッチング)したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。
【0016】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴット16を成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、インゴットとシリコン融液13の界面近傍のインゴット中の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図2に示すように、V/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される。図2において、[I]は格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)1以下)を示し、[V]はインゴット内での空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領域[P]に隣接する領域[V]にはOSF核を形成する領域[OSF]((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。
【0017】
このパーフェクト領域[P]は更に領域[PI]と領域[PV]に分類される。[PI]はV/G比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、[PV]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領域である。即ち、[PI]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域であり、[PV]は領域[V]に隣接し、かつOSFを形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。なお、上記OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。
【0018】
図1に戻って、シリコン融液13とインゴット16との固液界面19形状が上側に凸となるように、カスプ磁場17の中立面17aの位置と、カスプ磁場17の強度と、石英るつぼ14の回転速度と、インゴット16の回転速度とを制御する。具体的には、カスプ磁場17の中立面17aとシリコン融液13の表面との距離をHとするとき、280mm≦H≦700mmを満たすように、上記中立面17aをシリコン融液13の表面の下方に制御するか、或いは140mm≦H≦600mmを満たすように、上記中立面17aをシリコン融液13の表面の上方に制御する。
【0019】
また石英るつぼ14の直径が大きくなるに従ってカスプ磁場17の強度が強くなるように、第1及び第2コイル11,12に流す電流を制御する。このように第1及び第2コイルの電流を制御するのは、固液界面19が上側に凸となるようにシリコン融液13に対流を発生させるローレンツ力を、石英るつぼ14の直径が大きくなるに従って大きくする必要があるためである。例えば、直径が200mmのインゴット16を引上げるために、内径が600mmの石英るつぼ14を用いた場合には、カスプ磁場17の強度を0.018テスラに制御し、直径が300mmのインゴット16を引上げるために、内径が650mmの石英るつぼ14を用いた場合には、カスプ磁場17の強度を0.02テスラに制御する。
【0021】
上述のように、カスプ磁場17の中立面17aの位置と、カスプ磁場17の強度と、石英るつぼ14の回転速度と、インゴット16の回転速度とを制御しながら、シリコン単結晶のインゴット16を引上げると、石英るつぼ14の底部中央から固液界面19の中央に向って上昇した後に、固液界面の外周縁近傍から石英るつぼ14の底部中央に流下する第1対流21が発生し、石英るつぼ14の底部外周縁から周縁に沿って上昇した後に、上記第1対流21に沿って流下する第2対流22が発生し、更に第1対流21の外方かつ第2対流22の上方であってシリコン融液13の表面近傍を循環する第3対流23が発生する。上記第1対流21は固液界面19を押上げるので、固液界面形状は上側に凸となる。
【0022】
この結果、固液界面19の中心がシリコン融液13表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面19の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット16を比較的容易に製造できる。またカスプ磁場17の強度は極めて低いので、少ない消費電力でインゴット16を引上げることができるとともに、第1及び第2コイル11,12を小型化できるので、比較的狭い空間でインゴット16を引上げることができる。なお、第2対流22は、場合によっては存在しないこともあり、第3対流23は、シリコン融液13から引上げられたインゴット16内の酸素濃度に対して影響する可能性がある。
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
図1に示すように、シリコン単結晶のインゴット16を引上げるときのシリコン融液13に発生する対流21〜23を、カスプ磁場17の中立面17aの位置を変えて数値解析により求めた後に、固液界面19の周縁及び中心における鉛直方向の温度勾配の差の変化(図3)と、固液界面の周縁に対する中心の鉛直方向への距離(図4)とを算出した。このときの具体的な条件は次の通りである。石英るつぼ14の内径は650mmであり、石英るつぼの外周面をヒータ18により包囲した。またコイル直径が1450mmの第1及び第2コイル11,12を、石英るつぼ14の回転軸をコイル中心としかつ鉛直方向に400mmあけて配設した。これらのコイル11,12の互いに逆向きの電流を流すことにより、各コイル中心から第1及び第2コイルの中立面を通るカスプ磁場17を発生させた。このとき中立面17aと石英るつぼ14の内周面の延長面との交線上におけるカスプ磁場17の水平方向の強度が0.02テスラとなるように各コイルに流す電流を制御した。この状態で石英るつぼ14を+4rpmの回転速度で回転させ、かつインゴット16を−12〜−8rpmの回転速度で回転させながら、直径300mmのインゴットを0.2〜0.5mm/分の引上げ速度で上記シリコン融液13から引上げた。
【0024】
その結果、図3から明らかなように、カスプ磁場の中立面がシリコン融液表面から下方に280〜700mmの範囲と、シリコン融液表面から上方に140〜600mmの範囲で、固液界面の周縁と中心で鉛直方向の温度勾配の差が殆ど無くなった。また図4から明らかなように、カスプ磁場の中立面がシリコン融液表面から下方に280〜700mmの範囲と、シリコン融液表面から上方に140〜600mmの範囲で、固液界面形状が上側に凸となった。この結果、カスプ磁場の中立面の位置が固液界面形状に大きな影響を与えることが判った。
【0025】
<実施例2>
図1に示すように、シリコン単結晶のインゴット16を引上げるときのシリコン融液13に発生する対流21〜23を、石英るつぼ14の回転速度を変えて数値解析により求めた後に、固液界面19の周縁及び中心における鉛直方向の温度勾配の差の変化(図5)と、固液界面の周縁に対する中心の鉛直方向への距離(図6)とを算出した。このときの具体的な条件は次の通りである。石英るつぼ14の内径は600mmであり、石英るつぼの外周面をヒータ18により包囲した。またコイル直径が1450mmの第1及び第2コイル11,12を、石英るつぼ14の回転軸をコイル中心としかつ鉛直方向に400mmあけて配設した。これらのコイル11,12の互いに逆向きの電流を流すことにより、各コイル中心から第1及び第2コイルの中立面を通るカスプ磁場17を発生させた。このとき上記中立面の位置はシリコン融液13表面から下方に500mmとし、中立面17aと石英るつぼ14の内周面の延長面との交線上におけるカスプ磁場17の水平方向の強度が0.018テスラとなるように各コイルに流す電流を制御した。この状態で直径200mmのインゴット16を0.3〜0.7mm/分の引上げ速度で上記シリコン融液13から引上げた。なお、インゴット16の回転速度R2を−20〜−16rpmに設定し、石英るつぼ14の回転速度R1を−1〜+7rpmの範囲内の13種類の速度に変えて上記対流などをそれぞれ算出した。
【0026】
その結果、図5から明らかなように、石英るつぼの回転速度が3〜3.5rpmの範囲で、固液界面の周縁と中心で鉛直方向の温度勾配の差が最も小さくなった。また図6からも明らかなように、石英るつぼの回転速度が3〜3.5rpmの範囲で、固液界面形状が上側に最も突出する凸形状となった。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、シリコン融液とインゴットとの固液界面形状が上側に凸となるように、カスプ磁場の中立面の位置と、カスプ磁場の強度と、石英るつぼの回転速度と、インゴットの回転速度とを制御し、シリコン単結晶のインゴット内がパーフェクト領域となるような引上げ速度でインゴットを引上げるので、シリコン融液に所定の対流が発生し、これらの対流により固液界面形状が上側に凸となる。この結果、固液界面の中心がシリコン融液表面の延長面上より上方に位置するという理由から、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなるので、この温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる。またカスプ磁場の強度は極めて低いので、少ない消費電力でインゴットを引上げることができるとともに、第1及び第2コイルを小型化できるので、比較的狭い空間でインゴットを引上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態のシリコン単結晶のインゴットを引上げている状態を示す断面構成図。
【図2】ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成されることを示す図。
【図3】カスプ磁場の中立面とシリコン融液の表面との距離を変化させたときの、固液界面の周縁及び中心における鉛直方向の温度勾配の差の変化を示す図。
【図4】カスプ磁場の中立面とシリコン融液の表面との距離を変化させたときの、固液界面の周縁に対する中心の鉛直方向への距離の変化を示す図。
【図5】石英るつぼの回転速度を変化させたときの、固液界面の周縁及び中心における鉛直方向の温度勾配の差の変化を示す図。
【図6】石英るつぼの回転速度を変化させたときの、固液界面の周縁及び中心における鉛直方向の温度勾配の差の変化を示す図。
【符号の説明】
11 第1コイル
12 第2コイル
13 シリコン融液
14 石英るつぼ
16 シリコン単結晶のインゴット
17 カスプ磁場
17a カスプ磁場の中立面
19 固液界面
Claims (2)
- シリコン融液(13)を貯留する石英るつぼ(14)を所定の回転速度で回転させ、前記シリコン融液(13)から引上げられるシリコン単結晶のインゴット(16)を所定の回転速度で回転させ、前記石英るつぼ(14)の外径より大きなコイル直径を有する第1及び第2コイル(11,12)を前記石英るつぼ(14)の回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設し、前記第1及び第2コイル(11,12)に互いに逆向きの電流を流すことにより前記第1及び第2コイルの各コイル中心から前記第1及び第2コイル間の中立面(17a)を通るカスプ磁場(17)を発生させ、前記インゴット(16)内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で前記インゴットを引上げるシリコン単結晶の引上げ方法において、
前記カスプ磁場 (17) の中立面 (17a) と前記シリコン融液 (13) の表面との距離をHとするとき、280mm≦H≦700mmを満たすように、前記中立面 (17a) を前記シリコン融液 (13) の表面の下方に制御するか、或いは140mm≦H≦600mmを満たすように、前記中立面 (17a) を前記シリコン融液 (13) の表面の上方に制御し、
前記インゴット (16) の直径が300mmでありかつ前記石英るつぼ (14) の内径が650mmであるとき、前記カスプ磁場 (17) の水平方向の強度を0.02テスラに制御し、
前記石英るつぼ (14) を4rpmの回転速度で回転させかつ前記インゴット (16) を前記石英るつぼ (14) とは反対方向に12〜8rpmの回転速度で回転させながら前記インゴット (16) を0.2〜0.5mm/分の引上げ速度で引上げる
ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。 - シリコン融液(13)を貯留する石英るつぼ(14)を所定の回転速度で回転させ、前記シリコン融液(13)から引上げられるシリコン単結晶のインゴット(16)を所定の回転速度で回転させ、前記石英るつぼ(14)の外径より大きなコイル直径を有する第1及び第2コイル(11,12)を前記石英るつぼ(14)の回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設し、前記第1及び第2コイル(11,12)に互いに逆向きの電流を流すことにより前記第1及び第2コイルの各コイル中心から前記第1及び第2コイル間の中立面(17a)を通るカスプ磁場(17)を発生させ、前記インゴット(16)内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で前記インゴットを引上げるシリコン単結晶の引上げ方法において、
前記カスプ磁場 (17) の中立面 (17a) と前記シリコン融液 (13) の表面との距離をHとするとき、H=500mmを満たすように、前記中立面 (17a) を前記シリコン融液 (13) の表面の下方に制御し、
前記インゴット (16) の直径が200mmでありかつ前記石英るつぼ (14) の内径が600mmであるとき、前記カスプ磁場 (17) の水平方向の強度を0.018テスラに制御し、
前記石英るつぼ (14) を3〜3.5rpmの回転速度で回転させかつ前記インゴット (16) を前記石英るつぼ (14) とは反対方向に20〜16rpmの回転速度で回転させながら前記インゴット (16) を0.3〜0.7mm/分の引上げ速度で引上げる
ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。
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