JP3731417B2 - 点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)により点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハを製造する方法に関する。更に詳しくは、イントリンシックゲッタリング(以下、IG)源を有する半導体集積回路用のシリコンウェーハの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路を製造する工程において、歩留りを低下させる原因として酸化誘起積層欠陥(Oxidation Induced Stacking Fault、以下、OSFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、或いは侵入型転位(Interstitial-type Large Dislocation、以下、LDという。)の存在が挙げられている。OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。またCOPは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現する結晶に起因したピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットも本来のパーティクルとともに光散乱欠陥として検出される。このCOPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependent dielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。更にLDは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このLDも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。
【0003】
以上のことから、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからOSF、COP及びLDを減少させることが必要となっている。
このOSF、COP及びLDを有しない無欠陥のシリコンウェーハが特開平11−1393号公報に開示されている。この無欠陥のシリコンウェーハは、シリコン単結晶インゴット内での空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体がそれぞれ存在しないパーフェクト領域を[P]とするとき、パーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出されたシリコンウェーハである。パーフェクト領域[P]は、格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在する領域[I]と、シリコン単結晶インゴット内で空孔型点欠陥が支配的に存在する領域[V]との間に介在する。このパーフェクト領域[P]からなるシリコンウェーハは、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)とし、シリコン融液とインゴットとの界面近傍におけるインゴット鉛直方向の温度勾配をG(℃/mm)とするとき、熱酸化処理をした際にリング状に発生するOSFがウェーハ中心部で消滅するように、V/G(mm2/分・℃)の値を決めて作られる。
【0004】
一方、半導体デバイスメーカーの中には、OSF、COP及びLDを有しない上に、デバイス工程で生じる金属汚染をゲッタリングする能力を有するシリコンウェーハを求める場合がある。ゲッタリング能力が十分に備わっていないウェーハでは、デバイス工程で金属により汚染されると、接合リークや、金属不純物によるトラップ準位によるデバイスの動作不良等を生じ、これにより製品の歩留りが低下する。
上記パーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出されたシリコンウェーハは、OSF、COP及びLDを有しないけれども、デバイス工程の熱処理において、必ずしもウェーハ面内で均一に酸素析出が起らず、これによりIG効果が十分に得られない場合がある。
またパーフェクト領域[P]からなるシリコンウェーハを作り出すV/G値は、温度勾配Gが一定である場合、インゴットの引上げ速度Vに比例し、狭い範囲に制御された比較的低い速度でインゴットを引上げることが要求されるが、この要求を確実に充足することは技術的に必ずしも容易ではなく、インゴットの生産性も高くない。
【0005】
この点を解決するために、上記V/Gの値をたて軸、結晶中心から結晶周辺までの距離Dをよこ軸とした欠陥分布図において、OSFリングの外側のN領域(本発明の[P]領域に相当)のうち、酸素析出の多いN2(V)領域(本発明の[PV]領域に相当)で引上げるか、OSFリング領域を含むOSFリング内外のN1(V)領域とN2(V)領域でシリコン単結晶を引上げる方法が提案されている(特開平11−157996)。この方法によれば、制御し易い製造条件の下で、領域[I]及び領域[V]のいずれも存在しない、結晶全面にわたって極低欠陥密度であるとともに、酸素析出によるゲッタリング(IG)能力のあるシリコンウェーハを、高生産性を維持しながら製造することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−157996号公報に記載されたシリコン単結晶の製造方法では、シリコンウェーハの状態でOSF熱酸化処理をした際にOSF核の成長を阻害するために、成長結晶内の酸素濃度を24ppma(ASTM’79値)[約1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)に相当]未満に抑えたシリコンウェーハを用いるか、或いは成長結晶中の1050℃から850℃までの温度域を通過する時間を140分以下となるように熱履歴を制御しなければならない制約があった。
【0007】
本発明の目的は、領域[PV]又は領域[PI]のいずれか一方又は双方からなる酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上のインゴットから切出されたシリコンウェーハであっても、IG効果が得られ、かつ点欠陥の凝集体の存在しないシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、領域[OSF]及び領域[PV]の混合領域からなる酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上のインゴットから切出されたシリコンウェーハであっても、ウェーハ面内で均一なIG効果が得られ、かつ点欠陥の凝集体の存在しないシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、酸素ドナーキラー処理を要することなく、かつ点欠陥の凝集体の存在しないシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、シリコン単結晶インゴット内での格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とするとき、パーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出された点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法の改良である。
その特徴ある構成は、上記領域[I]に隣接しかつ上記パーフェクト領域[P]に属し侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン濃度未満の領域を[PI]とし、上記領域[V]に隣接しかつ上記パーフェクト領域[P]に属しCOP又はFPDを形成し得る空孔濃度以下の領域を[PV]とするとき、上記領域[PV]又は領域[PI]のいずれか一方又は双方からなりかつ酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコン単結晶インゴットを引上げ、このインゴットから切出されたシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜120分間保持する第1段熱処理を行うことにある。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記領域[V]に属しかつシリコン単結晶インゴットをシリコンウェーハの状態で熱酸化処理をした際に発生するOSFの領域を[OSF]とするとき、領域[OSF]を含むパーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出された点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法の改良である。
その特徴ある構成は、上記領域[OSF]及び上記領域[PV]からなりかつ酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコン単結晶インゴットを引上げ、このインゴットから切出されたシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜120分間保持する第1段熱処理を行うことにある。
【0010】
請求項1又は請求項4に係る発明では、インゴットの酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上あっても、シリコンウェーハが領域[PV]又は領域[PI]のいずれか一方又は双方からなるか、或いは領域[OSF]及び領域[PV]からなるときに、このインゴットから切出されたシリコンウェーハを上記条件で熱処理すると、ウェーハ内の酸素の外方拡散効果により結晶成長時に導入された酸素析出核やOSF核がウェーハの表面近傍で収縮又は消失し、これによりウェーハ表面にデヌーデッドゾーン(Denuded Zone、以下、DZ層という。)が形成される。またウェーハ表面近傍より内部のウェーハでは酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるため、所定密度以上の酸素析出物(Bulk Micro Defect、以下、BMDという。)が発生し、IG効果を有するようになる。
【0011】
請求項2又は請求項5に係る発明では、請求項1又は請求項4記載の第1段熱処理を行った後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から500〜800℃の炉内に導入して750〜1100℃まで10〜50℃/分の昇温速度で加熱し、4〜48時間保持する第2段熱処理を行う方法である。
また請求項3に係る発明では、請求項1記載の第1段熱処理を行った後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から400〜700℃の炉内に導入して800〜1100℃まで0.5〜10℃/分の昇温速度で加熱し、0.5〜40時間保持する第2段熱処理を行う方法である。
上記条件で第2段熱処理を行うことにより、第1段熱処理で形成したウェーハのBMD密度が増大し、ウェーハ面内のBMD密度の分布が均一化するようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のシリコンウェーハは、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からインゴットをボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロファイルで引上げた後、このインゴットをスライスして作製される。
一般的に、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げたときには、シリコン単結晶における欠陥として、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0013】
点欠陥は一般的にシリコン融液(溶融シリコン)とインゴット(固状シリコン)の間の接触面で導入される。しかし、インゴットを継続的に引上げることによって接触面であった部分は引上げとともに冷却し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因して発生する三次元構造である。
空孔型点欠陥の凝集体は前述したCOPの他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述したLDと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間無撹拌にてセコエッチング(Secco etching、K2Cr2O7:50%HF:純水=44g:2000cc:1000cc)の混合液によるエッチング)したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。
【0014】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴットを成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、インゴットとシリコン融液の界面近傍のインゴット中の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図1Aに示すように、V/Gをよこ軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一のたて軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される。図1Aにおいて、[I]は格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン型点欠陥が存在する領域((V/G)1以下)を示し、[V]はインゴット内での空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領域[P]に隣接する領域[V]にはOSF核を形成する領域[OSF]((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。
【0015】
このパーフェクト領域[P]は更に領域[PI]と領域[PV]に分類される。[PI]はV/G比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、[PV]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領域である。即ち、[PI]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域であり、[PV]は領域[V]に隣接し、かつOSFを形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。
【0016】
本願請求項1又は3に係る発明の所定の引上げ速度プロファイルは、インゴットがホットゾーン炉内のシリコン溶融物から引上げられる時、温度勾配に対する引上げ速度の比(V/G)が格子間シリコン型点欠陥の凝集体の発生を防止する(V/G)1以上であって、空孔型点欠陥の凝集体をインゴットの中央にある空孔型点欠陥が支配的に存在する領域内に制限する(V/G)2以下に維持されるように決められる。
また本願請求項2に係る発明の所定の引上げ速度プロファイルは、V/Gが臨界点以上であって、(V/G)2以下に維持されるように決められる。
また本願請求項4に係る発明の所定の引上げ速度プロファイルは、V/Gが臨界点以上であって、(V/G)3以下に維持されるように決められる。
【0017】
この引上げ速度のプロファイルは、実験的に基準インゴットを軸方向にスライスすることで、又はこれらの技術を組合わせることで、シミュレーションによって上記ボロンコフの理論に基づき決定される。即ち、この決定は、シミュレーションの後に、軸方向にスライスしたインゴットを横断方向にスライスしてウェーハ状態で確認し、更にシミュレーションを繰り返すことによりなされる。シミュレーションのために複数種類の引上げ速度が所定の範囲で決められ、複数個の基準インゴットが成長される。
即ち、図1Eに示すように引上げ速度を1.2mm/分から0.4mm/分まで徐々に低下させてV/Gを連続的に低下させたときのインゴットの断面図を図1B、図1C及び図1Dにそれぞれ示す。各図の横軸はそれぞれ図1Aの横軸(V/G)に対応して描かれている。図1Bは上記インゴットをN2雰囲気下、1000℃、40時間熱処理した後のX線トポグラフによる概念図である。この図では引上げ速度を低下させるに従って領域[V]、領域[OSF]、領域[PV]、領域[PI]及び領域[I]が現れる。図1Cは引上げ直後(as-grownの状態)の上記インゴットを30分間セコエッチングしたときの結晶の欠陥分布図である。この図では上記[V]に相当する領域にCOP、FPDが現れ、上記[I]に相当する領域にLDが現れる。更に図1Dは上記インゴットを湿潤O2雰囲気下、1100℃、1時間熱処理した後、2分間セコエッチングしたときの結晶の欠陥分布図である。この図ではOSFが現れる。
【0018】
図1Bに対応する図2において、4カ所でインゴットをスライスしたときのシリコンウェーハW1、W2、W3及びW4をそれぞれ図3A、図3B、図3C及び図3Dに示す。ウェーハW1は中心部にOSF核を形成する領域[OSF]が、その周囲に領域[PV]が存在する。ウェーハW2はすべてが領域[PV]である。ウェーハW3は中心部に領域[PV]が、その周囲に領域[PI]が存在する。ウェーハW4はすべてが領域[PI]である。
なお、COPやLDなどの点欠陥の凝集体は検出方法によって検出感度、検出下限値が異なる値を示すことがある。そのため、本明細書において、「点欠陥の凝集体が存在しない」の意味は、鏡面加工されたシリコン単結晶を無攪拌セコエッチングを施した後に光学顕微鏡により、観察面積とエッチング取り代との積を検査体積として観察した際に、フローパターン(空孔型欠陥)及び転位クラスタ(格子間シリコン型点欠陥)の各凝集体が1×10-3cm3の検査体積に対して1個欠陥が検出された場合を検出下限値(1×103個/cm3)とするとき、点欠陥の凝集体の数が上記検出下限値以下であることをいう。
【0019】
本発明のシリコンウェーハは上述したウェーハW1、W2、W3及びW4のいずれかであって、かつ初期の酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であることが必要である。このためにシリコンウェーハに切出される前のインゴットはその酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上である。これは第1段熱処理により上記ウェーハW1〜W4に所望の密度以上のBMDを発生させてウェーハW1〜W4をIGウェーハにするためである。
【0020】
次に上記シリコンウェーハの第1段熱処理及び第2段熱処理について説明する。
(a) 第1段熱処理
上記ウェーハW1〜W4の第1段熱処理(請求項4及び請求項1)は、ウェーハW1〜W4を水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜120分間保持することにより行われる。熱処理雰囲気を非酸化性の水素又はアルゴンガス雰囲気にするのは、ウェーハ内の酸素の外方拡散効果により結晶成長時に導入された酸素析出核又はOSF核をウェーハ表面近傍で収縮又は消失させて、ウェーハ表面において深さ方向にDZ層(幅約1〜5μm)を形成するためである。
昇温速度が50℃/分を越え、かつ保持温度が900℃未満又は保持時間が5分未満の場合には、酸素の外方拡散効果が低いために結晶成長時に導入された酸素析出核又はOSF核が収縮せず、ウェーハ表面において深さ方向にDZ層を十分に形成できない。またウェーハ内部においてIG効果を奏するのに必要なBMD密度が得られない。一方、昇温速度が5℃/分未満で、かつ保持温度が1200℃を越える場合には、炉やボード材の熱的耐久性や熱処理の生産性が低下する。第1段熱処理は、室温から1000〜1200℃まで10〜40℃/分の昇温速度で加熱し、10〜60分間保持することが好ましい。
【0021】
(b) 第2段熱処理
第1段熱処理を行ったウェーハW1〜W4は第2段熱処理を行うことが、BMD密度が増大し、IG効果がより高められるため、好ましい。
上記ウェーハW1及びW2の第2段熱処理(請求項5及び請求項2)は、ウェーハW1及びW2を窒素又は酸化性雰囲気下で室温から500〜800℃の炉内に導入して750〜1100℃まで10〜50℃/分の昇温速度で加熱し、4〜48時間保持することにより行われる。熱処理雰囲気を窒素又は酸化性雰囲気にするのは、第1段熱処理で形成されたBMD密度をより高めるためである。昇温速度が50℃/分を越え、かつ保持温度が750℃未満又は保持時間が4時間未満の場合には、BMDを十分に高くすることが困難になる。一方、昇温速度が10℃/分未満で、かつ保持温度が1100℃を越えるか、又は保持時間が48時間を越える場合には、熱処理の生産性が低下する。この場合の第2段熱処理は、室温から600〜800℃の炉内に導入して800〜1000℃まで10〜40℃/分の昇温速度で加熱し、6〜40時間保持することが好ましい。
【0022】
上記ウェーハW3及びW4の第2段熱処理(請求項3)は、ウェーハW3及びW4を第1段熱処理した後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から400〜700℃の炉内に導入して800〜1100℃まで0.5〜10℃/分の昇温速度で加熱し、0.5〜40時間保持することにより行われる。熱処理雰囲気を窒素又は酸化性雰囲気にするのは、上記と同じ理由である。昇温速度が10℃/分を越え、かつ保持温度が800℃未満又は保持時間が0.5時間未満の場合には、ウェーハ面内で均一にBMDを形成することが困難になる。一方、昇温速度が0.5℃/分未満で、かつ保持温度が1100℃を越えるか、又は保持時間が40時間を越える場合には、熱処理の生産性が低下する。この場合の第2段熱処理は、室温から300〜600℃の炉内に導入して900〜1000℃まで1〜3℃/分の昇温速度で加熱し、1〜12時間保持することが好ましい。
第1段熱処理を行うことにより、ウェーハプロセスのうちの酸素ドナーキラー処理が不要となる。
【0023】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
シリコン単結晶引上げ装置を用いて直径6インチのボロン(B)がドープされたp型のシリコンインゴットを引上げた。このインゴットは直胴部の長さが600mm、結晶方位が(100)、抵抗率が1〜15Ωcm、酸素濃度が1.4×1018atoms/cm3(旧ASTM)であった。インゴットは、引上げ時のV/Gを0.24mm2/分℃から0.18mm2/分℃まで連続的に減少させながら、同一条件で2本育成した。そのうちの1本のインゴットは図2に示すように引上げ方向にインゴット中心を切断し、各領域の位置を調べ、別の1本から各領域の位置に対応してシリコンウェーハを切出し、試料とした。この例では試料となるウェーハは、中心部に領域[OSF]を有し、その周囲に領域[PV]を有する図2及び図3Aに示すウェーハW1である。
インゴットから切出し鏡面研磨したこのウェーハW1を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った。
【0024】
<実施例2>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW1を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った後、このウェーハW1を窒素雰囲気下で室温から800℃の炉内に導入して1000℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、24時間保持する第2段熱処理を行った。
【0025】
<比較例1>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW1であって、第1段熱処理も第2段熱処理も行わないウェーハW1を比較例1とした。
【0026】
<比較例2>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW1であって、第1段熱処理を行わずに、実施例2の第2段熱処理のみ行ったウェーハW1を比較例2とした。
【0027】
<比較評価1>
実施例1と比較例1のウェーハをそれぞれ湿潤酸素雰囲気下で1200℃、60分間加熱して、OSF顕在化熱処理を行った後、セコエッチングを2分間行った。その結果、図4に示すように比較例1のウェーハではその中心部にOSFが顕在化したのに対して、実施例1のウェーハでは表面から20μmの深さにわたって全面OSFフリーであった。
また実施例1,2及び比較例1,2のウェーハをそれぞれ劈開し、更にウェーハ表面をライト(Wright)エッチング液で選択エッチングを行い、光学顕微鏡の観察により、ウェーハ表面から深さ100μmにおけるウェーハ中心部からウェーハ周辺部までのウェーハ全面のBMD体積密度を測定した。これらの結果を図5に示す。図5の右端図のよこ軸はウェーハ中心部(0mm)からウェーハ周辺部(±75mm)までを表し、たて軸はBMD体積密度を表す。
【0028】
図5から明らかなように、比較例1のウェーハからはBMDは検出下限(1×106個/cm3)以下であった。実施例1のウェーハではウェーハ全面にわたってIG効果があるとされる2×107個/cm3以上、好ましくは108個/cm3台のBMD体積密度が検出された。また実施例2のウェーハではウェーハ全面にわたってこれより2桁大きい1010個/cm3台のBMDが検出され、より高いIG効果が得られることが判った。なお、比較例2のウェーハでは実施例2と同様にウェーハ全面にわたって1010個/cm3台のBMD体積密度が検出されたが、このウェーハは酸化性雰囲気下で処理するとOSFが顕在化した。
更に実施例1,2及び比較例2のウェーハの各表面におけるDZ層の幅を測定したところ、それぞれ5μm、5μm及び0.5μm以下であった。なお、比較例1のウェーハの表面におけるDZ層は検出不能であった。
【0029】
<実施例3>
実施例1で引上げたインゴットからシリコンウェーハを切出し、試料とした。この例では試料となるウェーハは、中心部に領域[PV]を有し、その周囲に領域[PI]を有する図2及び図3Cに示すウェーハW3である。
インゴットから切出し鏡面研磨したこのウェーハW3を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った。
【0030】
<実施例4>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW3を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った後、このウェーハW3を窒素雰囲気下で室温から800℃の炉内に導入して1000℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、24時間保持する第2段熱処理を行った。
【0031】
<実施例5>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW3を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った後、このウェーハW3を窒素雰囲気下で室温から500℃の炉内に導入して1000℃まで1℃/分の昇温速度で加熱し、4時間保持する第2段熱処理を行った。
【0032】
<比較例3>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW3であって、第1段熱処理も第2段熱処理も行わないウェーハW3を比較例3とした。
<比較例4>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW3であって、第1段熱処理を行わずに、実施例4の第2段熱処理のみ行ったウェーハW3を比較例4とした。
【0033】
<比較評価2>
実施例3,4,5及び比較例3,4のウェーハをそれぞれ上記比較評価1と同様にしてウェーハ表面から深さ100μmにおけるウェーハ中心部からウェーハ周辺部までのウェーハ全面のBMD体積密度を測定した。これらの結果を図6に示す。図6の右端図のよこ軸はウェーハ中心部(0mm)からウェーハ周辺部(±75mm)までを表し、たて軸はBMD体積密度を表す。
図6から明らかなように、比較例3のウェーハからはBMDは全く検出されなかった。実施例3のウェーハではその周辺部の領域[PI]に相当する部分のBMD体積密度が108個/cm3以下であったのに対して、その中心部の領域[PV]に相当する部分のBMD体積密度はIG効果があるとされる約109個/cm3であった。また実施例4のウェーハではウェーハ周辺部及び中央部にこれより2桁大きいBMDが検出された。実施例5のウェーハではウェーハ全面にわたって約1011個/cm3のBMD体積密度が検出された。このことから、実施例4のウェーハでは中心部に、また実施例5のウェーハではウェーハ全面に、それぞれ実施例3よりIG効果が高くなることが判った。なお、比較例4のウェーハでは実施例4と同様にBMD体積密度が検出されたが、この場合のBMD密度分布はウェーハの径方向で均一性に劣っていた。
更に実施例3,4及び5のウェーハの各表面におけるDZ層の幅を測定したところ、いずれも5μmであった。なお、比較例3のウェーハの表面におけるDZ層は検出不能であり、比較例4のDZ層はウェーハ中心部で0.5μm以下、外周部で検出不能であった。
【0034】
<実施例6>
実施例1で引上げたインゴットからシリコンウェーハを切出し、試料とした。この例では試料となるウェーハは、全てが領域[PI]である図2及び図3Dに示すウェーハW4である。
インゴットから切出し鏡面研磨したこのウェーハW4を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った後、このウェーハW4を窒素雰囲気下で室温から800℃の炉内に導入して1000℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、24時間保持する第2段熱処理を行った。
【0035】
<実施例7>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW4を水素雰囲気下で室温から1200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、60分間保持する第1段熱処理を行った後、このウェーハW4を窒素雰囲気下で室温から500℃の炉内に導入して1000℃まで1℃/分の昇温速度で加熱し、4時間保持する第2段熱処理を行った。
【0036】
<比較例5>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW4であって、第1段熱処理も第2段熱処理も行わないウェーハW4を比較例5とした。
<比較例6>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW4であって、第1段熱処理を行わずに、実施例6の第2段熱処理のみ行ったウェーハW4を比較例6とした。
【0037】
<比較例7>
実施例1と同じインゴットから切出し鏡面研磨したウェーハW4であって、第1段熱処理を行わずに、実施例7の第2段熱処理のみ行ったウェーハW4を比較例7とした。
【0038】
<比較評価3>
実施例6,7及び比較例5,6,7のウェーハをそれぞれ上記比較評価1と同様にしてウェーハ表面から深さ100μmにおけるウェーハ中心部からウェーハ周辺部までのウェーハ全面のBMD体積密度を測定した。これらの結果を図7に示す。図7の右端図のよこ軸はウェーハ中心部(0mm)からウェーハ周辺部(±75mm)までを表し、たて軸はBMD体積密度を表す。
図7から明らかなように、比較例5及び6の各ウェーハからはBMDは全く検出されなかった。実施例6のウェーハではウェーハ全面にわたってIG効果があるとされる2×107個/cm3のBMD体積密度となった。また実施例7のウェーハではウェーハ全面にわたってこれより3桁大きい1010個/cm3台のBMD体積密度が検出され、より高いIG効果が得られることが判った。なお、比較例7のウェーハでは109個/cm3台のBMD体積密度が検出されたが、酸化性雰囲気下で熱処理するとOSFが顕在化した。
更に実施例6及び7のウェーハの各表面におけるDZ層の幅を測定したところ、いずれも5μmであった。なお、比較例5及び6のウェーハの各表面におけるDZ層は検出不能であり、比較例7のDZ層はウェーハ中心部で0.5μm以下、外周部で検出不能であった。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、本願請求項1に係る発明によれば、領域[PV]又は領域[PI]のいずれか一方又は双方からなりかつ酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜60分間保持する第1段熱処理を行うことにより、点欠陥の凝集体が存在しないことに加えて、成長結晶内の酸素濃度を24ppma(ASTM’79値)[約1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)に相当]未満に抑えなくても、IG効果が得られる。
本願請求項4に係る発明によれば、領域[OSF]及び領域[PV]の混合領域からなる酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜60分間保持する第1段熱処理を行うことより、点欠陥の凝集体が存在しないことに加えて、成長結晶内の酸素濃度を24ppma(ASTM’79値)[約1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)に相当]未満に抑えなくても、ウェーハ面内で均一なIG効果が得られる。特に従来OSFが形成される領域であっても、OSFフリーとなることから、IG能力のあるシリコンウェーハを高い生産性で製造することができる。
本願請求項1又は4に係る第1段熱処理を行うことにより、従来行われていた酸素ドナーキラー処理が不要となり、更に本願請求項2,3又は5に係る第2段熱処理を行うことにより、IG効果のより一層高いウェーハが得られる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】A ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界点以上では空孔豊富インゴットが形成され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン豊富インゴットが形成されることを示す図。
B インゴットをN2雰囲気下、1000℃、40時間熱処理した後のX線トポグラフによる概念図。
C 引上げ直後(as-grownの状態)のインゴットをセコエッチングしたときの結晶の欠陥分布図。
D インゴットを湿潤O2雰囲気下熱処理した後セコエッチングしたときの結晶の欠陥分布図。
E インゴットの引上げ速度の変化状況を示す図。
【図2】図1Bに対応する図。
【図3】A 図2のW1に相当するウェーハの平面図。
B 図2のW2に相当するウェーハの平面図。
C 図2のW3に相当するウェーハの平面図。
D 図2のW4に相当するウェーハの平面図。
【図4】実施例1及び比較例1の各ウェーハW1の熱処理方法及びOSF顕在化処理結果を示す図。
【図5】実施例1,2及び比較例1,2の各ウェーハW1の熱処理方法及び各ウェーハW1におけるBMDの発生状況を示す図。
【図6】実施例3,4,5及び比較例3,4の各ウェーハW3の熱処理方法及び各ウェーハW3におけるBMDの発生状況を示す図。
【図7】実施例6,7及び比較例5,6,7の各ウェーハW4の熱処理方法及び各ウェーハW4におけるBMDの発生状況を示す図。
Claims (5)
- シリコン単結晶インゴット内での格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とするとき、
前記パーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出された点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法において、
前記領域[I]に隣接しかつ前記パーフェクト領域[P]に属し侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン濃度未満の領域を[PI]とし、前記領域[V]に隣接しかつ前記パーフェクト領域[P]に属しCOP又はFPDを形成し得る空孔濃度以下の領域を[PV]とするとき、
前記領域[PV]又は領域[PI]のいずれか一方又は双方からなりかつ酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコン単結晶インゴットを引上げ、
前記インゴットから切出されたシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜120分間保持する第1段熱処理を行うことを特徴とする点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法。 - 領域[PV]からなるシリコン単結晶インゴットから切出されたシリコンウェーハを第1段熱処理した後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から500〜800℃の炉内に導入して750〜1100℃まで10〜50℃/分の昇温速度で加熱し、4〜48時間保持する第2段熱処理を行う請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
- 領域[PI]又は領域[PI]と領域[PV]の混合領域からなるシリコン単結晶インゴットから切出されたシリコンウェーハを第1段熱処理した後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から400〜700℃の炉内に導入して800〜1100℃まで0.5〜10℃/分の昇温速度で加熱し、0.5〜40時間保持する第2段熱処理を行う請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
- シリコン単結晶インゴット内での格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在する領域を[I]とし、空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を[V]とし、格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域を[P]とし、前記領域[V]に属し前記インゴットをシリコンウェーハの状態で熱酸化処理をした際に発生するOSFの領域を[OSF]とするとき、
前記領域[OSF]を含むパーフェクト領域[P]からなるインゴットから切出された点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法において、
前記領域[I]に隣接しかつ前記パーフェクト領域[P]に属し侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン濃度未満の領域を[PI]とし、前記領域[V]に隣接しかつ前記パーフェクト領域[P]に属しCOP又はFPDを形成し得る空孔濃度以下の領域を[PV]とするとき、
前記領域[OSF]及び前記領域[PV]の混合領域からなりかつ酸素濃度が1.2×1018atoms/cm3(旧ASTM)以上であるシリコン単結晶インゴットを引上げ、
前記インゴットから切出されたシリコンウェーハを水素又はアルゴンガス雰囲気下で室温から900〜1200℃まで5〜50℃/分の昇温速度で加熱し、5〜120分間保持する第1段熱処理を行うことを特徴とする点欠陥の凝集体が存在しないシリコンウェーハの製造方法。 - 領域[OSF]及び領域[PV]の混合領域からなるシリコン単結晶インゴットから切出されたシリコンウェーハを第1段熱処理した後、このシリコンウェーハを窒素又は酸化性雰囲気下で室温から500〜800℃の炉内に導入して750〜1100℃まで10〜50℃/分の昇温速度で加熱し、4〜48時間保持する第2段熱処理を行う請求項4記載のシリコンウェーハの製造方法。
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