JP4081398B2 - 光波長変換素子 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、電界印加を利用する分極反転領域の製造方法、ならびにそれによって製造された分極反転領域を有していて、光情報処理や光応用計測制御分野に使用されるコヒーレント光源を応用した光波長変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
強誘電体の分極を強制的に反転させる分極反転現象を利用すると、強誘電体の内部に周期的な分極反転領域(分極反転構造)を形成することができる。このようにして形成された分極反転領域は、表面弾性波を利用した光周波数変調器や、非線形分極の分極反転を利用した光波長変換素子などに利用される。特に、非線形光学物質の非線形分極を周期的に反転することが可能になれば、非常に変換効率の高い光波長変換素子を作製することができる。これを用いて半導体レーザなどの光を変換すれば、印刷、光情報処理、光応用計測制御分野などに応用できる小型の短波長光源を実現することができる。
【0003】
周期状の分極反転領域を形成する従来の方法としては、Ti熱拡散による方法、SiO2を装荷した後に熱処理する方法、プロトン交換処理と熱処理とを行う方法等が報告されている。一方、強誘電体の自発分極が電界により反転することを利用して周期状の分極反転領域を形成する方法も、報告されている。この電界を利用する方法としては、例えば、C軸に沿って切り出された基板の−C面に電子ビームを照射する方法や、+C面に正イオンを照射する方法がある。いずれの場合でも、照射された荷電粒子により形成される電界により、数100μmの深い分極反転領域が形成される。
【0004】
さらに他の従来の分極反転領域の製造方法としては、LiNbO3基板やLiTaO3基板に櫛形電極を形成して、これにパルス状の電界を印加する方法が報告されている(特開平3−121428号公報、特開平4−19719号公報)。
【0005】
図30を参照して、従来の光波長変換素子の製造方法を説明する。
【0006】
図30に示すようなLiNbO3基板55を利用した従来の光波長変換素子50を製造するには、まず、LiNbO3基板55の+c面55aに周期状の櫛形電極51を形成し、−C面55bに平面電極52を形成する。次に、+C面55aを接地し、−C面55bにパルス電源56によってパルス幅が典型的には100μsのパルス電圧を印加して、基板55にパルス電界を印加する。分極を反転させるために必要な電界は、約20kV/mm以上である。そのような値の電界を印加する際に、基板55が厚いと電界印加によって基板55の結晶が破壊される可能性がある。しかし、基板55の厚みを200μm程度にすることで、電界印加による結晶破壊を回避することが可能になり、室温での分極反転領域の形成が可能になる。
【0007】
さらに、光波長変換素子50の高効率化を実現するには、周期が3〜4μmである短周期の分極反転構造が必要になる。電界印加によって分極反転領域を形成すると、電極の直下の部分の分極が反転した後に、基板55の表面に平行な方向に分極反転領域が広がる。このため、分極反転構造の短周期化が困難になる。この問題を解決するために、従来の方法では、パルス幅が100μs程度である短時間パルス電圧を電極に印加することによって電圧印加時間を短縮して、短周期の分極反転構造を形成している。
【0008】
以上のように従来の方法では、基板55を薄くすることにより室温での電界印加による分極反転領域の形成を可能にし、電界印加時間を短縮することにより分極反転構造の短周期化を実現している。
【0009】
さらに、従来の分極反転領域の形成方法を利用した光波長変換素子の製造方法は、例えば、M.Yamada, N.Nada, M.Saitoh, and K.Watanabe :"First-order quasi-phase matched LiNbO3 waveguide periodically poled by applying an external field for efficient blue second-harmonic generation", Appl. Phys. Lett., 62, pp435-436 (Feb. 1993)に開示されている。この開示された方法では、周期状の分極反転領域を形成した後に、これに直交するように光導波路を形成し、光波長変換素子を製造する。製造された光波長変換素子では、相互作用長3mmで入射する基本光のパワーが196mWである場合に、出力として20.7mWの第2高調波が得られる。
【0010】
さらに、プロトン交換処理と電界印加とを組み合わせた分極反転領域の製造方法は、例えば、特開平4−264534号公報に開示されている。この方法によれば、基板の表面全体にプロトン交換処理を施してプロトン交換層を形成した後に、プロトン交換層の表面に櫛形電極を形成し、基板の裏面には平面電極を形成する。これらの電極間に電圧を印加することにより、分極反転領域を形成する。プロトン交換処理を施すことによって分極反転領域の形成が容易になり、均一性の高い周期的な分極反転構造を形成することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の分極反転領域の製造方法では、高電圧(数kV)かつパルス幅の短い(100μs以下)パルス電圧を印加する必要がある。この様な高電圧の短パルス電圧は形成が難しく、印加時の再現性、信頼性及び均一性を十分確保するのが難しい。
【0012】
また、高電圧で短いパルス電圧を基板に印加すると、基板平面内で電界分布の不均一性が生じる。これによって、形成される分極反転構造の面内での均一性が劣化するという問題があった。また、均一な分極反転構造を広い範囲にわたって形成することが困難であることから、大型基板を利用して分極反転構造を量産化することができないという問題がある。
【0013】
さらに、印加される電界が不均一であると基板割れが生じることがあり、素子作製の歩留まりが低下する。また、先に述べたように、高電圧パルスを印加しても基板の結晶破壊を生じさせないようにするためには、薄膜基板しか利用できない。このため、基板の取扱いが難しく作業性が高くない。
【0014】
また、高効率の光波長変換素子を実現するためには短周期の分極反転領域が必要であるが、従来の電界印加を利用した分極反転領域の製造方法では、櫛形電極を構成するストライプ状の電極枝を中心に分極反転領域が広がり、隣り合う分極反転領域同志がつながることで、短周期の分極反転領域の形成が困難になる。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために行われたものであり、その目的は、電界印加によって分極反転領域を形成するにあたって小さいパルス電界強度で分極反転領域の形成を可能にする分極反転領域の製造方法、ならびにそれを利用した光波長変換素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面によれば、分極反転領域の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極間に直流電圧を印加する工程と、該直流電圧にパルス電圧を重畳して、該直流電圧と該パルス電圧との合計電圧を該第1及び第2の電極に印加して、該強誘電体結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
ある実施形態では、前記直流電圧のレベルは分極反転を生じさせる電圧レベルよりも小さく、前記合計電圧のレベルは分極反転を生じさせる該電圧レベルに実質的に等しいかあるいはそれよりも大きい。
【0018】
他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極である。好ましくは、前記櫛形電極は、前記強誘電体結晶基板の+C面に設けられている。
【0019】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板の前記分極方向は基板表面に垂直である。好ましくは、前記強誘電体結晶基板は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0020】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極を除去する工程と、前記強誘電体結晶基板を580℃以下の温度で熱処理する工程と、をさらに包含している。
【0021】
さらに他の実施形態では、前記電圧印加工程に先立って、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方の周辺部において、前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。
【0022】
本発明の他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極の少なくとも一方の周辺部において、該強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程と、該第1及び第2の電極間に所定の電圧を印加して、該強誘電結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0023】
ある実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極であり、該櫛形電極の電極枝の間隙部分で強誘電性を劣化させる。
【0024】
他の実施形態では、前記強誘電性を劣化させる工程はプロトン交換処理を行う。
【0025】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板であって、前記第1及び第2の電極は、それぞれ該C板基板の第1の面に形成された櫛形電極及び第2の面に形成された平面電極である。
【0026】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0027】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0028】
さらに他の実施形態では、前記C板基板の前記第1の面及び第2の面の少なくとも一方の近傍を、所定の深さまで除去する工程をさらに包含する。
【0029】
さらに他の実施形態では、前記C板基板が、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている基板であって、前記第1の面が+C面であり前記第2の面が−C面である。
【0030】
さらに他の実施形態では、前記強誘電性を劣化させる工程はプロトン交換処理を行う。
【0031】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極を除去する工程と、前記強誘電体結晶基板を500℃以下の温度でアニールする工程と、をさらに包含する。
【0032】
さらに他の実施形態では、前記絶縁膜が誘電体膜である。
【0033】
さらに他の実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0034】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極である。
【0035】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0036】
さらに他の実施形態では、前記絶縁膜の抵抗率が1015Ω/cmよりも大きい。
【0037】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板であって、前記第1及び第2の電極は、それぞれ該C板基板の第1の面に形成された櫛形電極及び第2の面に形成された平面電極である。
【0038】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0039】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりもよりも小さい。
【0040】
さらに他の実施形態では、前記C板基板が、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている基板であって、前記第1の面が+C面であり前記第2の面が−C面である。
【0041】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極の少なくとも一方の近傍の該強誘電体結晶基板の表面を削る工程と、該第1及び第2の電極間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0042】
ある実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極であり、該櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る。
【0043】
他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0044】
さらに他の実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0045】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0046】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極であり、該櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板であって、前記第1及び第2の電極は、それぞれ該C板基板の第1の面に形成された櫛形電極及び第2の面に形成された平面電極であり、該櫛形電極の電極枝の間隙部分で該強誘電体結晶基板の表面を削る。
【0047】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0048】
さらに他の実施形態では、前記C板基板が、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている基板であって、前記第1の面が+C面であり前記第2の面が−C面である。
【0049】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極間に所定の磁界を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0050】
ある実施形態では、前記所定の磁界はパルス磁界である。
【0051】
他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板である。好ましくは、前記強誘電体結晶基板は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0052】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0053】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極である。好ましくは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。あるいは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0054】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板であって、前記第1及び第2の電極は、それぞれ該C板基板の第1の面に形成された櫛形電極及び第2の面に形成された平面電極である。
【0055】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0056】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0057】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極及び平面電極の少なくとも一方の近傍の前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0058】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。あるいは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0059】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極及び前記平面電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0060】
さらに他の実施形態では、前記C板基板が、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている基板であって、前記第1の面が+C面であり前記第2の面が−C面である。
【0061】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板である強誘電体結晶基板の第1面に櫛形電極を、及び第2面に平面電極を形成する工程と、該第1面及び第2面の少なくとも一方に光学基板を接着する工程と、該櫛形電極及び該平面電極の間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0062】
ある実施形態では、前記光学基板と前記強誘電体結晶基板とを接着後に、該強誘電体結晶基板を研磨する工程をさらに包含し、前記平面電極は該研磨面に形成する。
【0063】
他の実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0064】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶基板は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0065】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0066】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0067】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。あるいは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0068】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極及び前記平面電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0069】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、基板表面に強誘電体結晶を成長させる工程と、該強誘電体結晶の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0070】
ある実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0071】
他の実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0072】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶はC軸方向に成長し、該強誘電体結晶の表面に前記櫛形電極を、及び前記光学基板の裏面に前記平面電極をそれぞれ形成する。好ましくは、前記強誘電体結晶の表面が、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0073】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極の間に該分極方向に対向する第1の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の全体で分極を反転させる工程と、該第1及び第2の電極の間に該反転した分極方向に対向する第2の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の少なくとも一部で分極を再反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0074】
ある実施形態では、前記第1及び第2の電圧の印加は室温で行われる。
【0075】
他の実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0076】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0077】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0078】
本発明のさらに他の局面によれば、分極反転領域の製造方法が、結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板である強誘電体結晶基板の第1の面及び第2の面にそれぞれ平面電極を形成する工程と、該平面電極間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の全体で分極を反転させる工程と、前記第2の面の前記平面電極を除去して櫛形電極を形成する工程と、該櫛形電極及び該平面電極の間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の少なくとも一部で分極を再反転させる工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0079】
ある実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0080】
他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0081】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。あるいは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0082】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極及び前記平面電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0083】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子の製造方法が、強誘電体結晶基板の分極方向にお互いに離れた第1及び第2の電極を形成する工程と、該第1及び第2の電極間に所定の電圧を印加して、該強誘電体結晶基板の内部の所定の領域の分極を反転させる工程と、光導波路を形成する工程と、を包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0084】
ある実施形態では、プロトン交換処理によって前記光導波路を形成する。
【0085】
他に実施形態では、前記所定の電圧がパルス電圧である。あるいは、前記所定の電圧が直流電圧にパルス電圧を重畳した合計電圧である。
【0086】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0087】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方が櫛形電極である。
【0088】
さらに他の実施形態では、前記第1及び第2の電極の少なくとも一方を絶縁膜で覆う工程をさらに包含する。
【0089】
さらに他に実施形態では、前記強誘電体結晶基板は結晶のC軸に垂直な面で切り出されたC板基板であって、前記第1及び第2の電極は、それぞれ該C板基板の第1の面に形成された櫛形電極及び第2の面に形成された平面電極である。
【0090】
さらに他の実施形態では、前記第1の面は、その近傍に分極反転のための核が発生する面である。
【0091】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極に含まれる各ストライプ電極枝の幅は、該ストライプ電極枝の間隔の1/2に等しいかまたはそれよりも小さい。
【0092】
さらに他の実施形態では、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の強誘電性を劣化させる工程をさらに包含する。あるいは、前記櫛形電極の電極枝の間隙部分で前記強誘電体結晶基板の表面を削る工程をさらに包含する。
【0093】
さらに他の実施形態では、前記光導波路は、前記強誘電体結晶の前記分極方向に垂直な方向に形成される。
【0094】
さらに他の実施形態では、前記光導波路を形成する工程は、該形成された光導波路の表面の一部を除去する工程をさらに包含する。
【0095】
さらに他の実施形態では、前記電極を形成する工程に先立って、前記強誘電体結晶基板の表面にスラブ導波路を形成する工程を包含し、前記光導波路を形成する工程は、該形成された光導波路をリッジ形状に加工する工程をさらに包含する。あるいは、前記電極を形成する工程に先立って、前記強誘電体結晶基板の表面にスラブ導波路を形成する工程を包含し、前記光導波路を形成する工程は、該スラブ導波路の表面にストライプ状の誘電体膜を堆積する工程を包含する。
【0096】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、強誘電体結晶基板と、該強誘電体結晶基板の内部に周期状に形成した分極反転領域と、を備え、該強誘電体結晶基板の該分極反転領域の間に位置する所定の領域は、分極反転の横方向への拡大を抑制するための処理が施された領域であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0097】
ある実施形態では、前記所定の領域は強誘電性が劣化している。好ましくは、前記所定の領域はプロトン交換処理が施された領域である。
【0098】
他の実施形態では、前記所定の領域には溝が形成されている。
【0099】
さらに他の実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0100】
さらに他の実施形態では、さらに光導波路を備えている。
【0101】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、強誘電体結晶基板と、該強誘電体結晶基板の内部に周期状に形成した分極反転領域と、該強誘電体結晶基板の表面に形成された絶縁膜と、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0102】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、強誘電体結晶基板と、該強誘電体結晶基板の内部に周期状に形成した分極反転領域と、該強誘電体結晶基板の表面及び裏面のいずれか一方に接着された光学基板と、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0103】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、結晶基板と、該結晶基板の上に結晶成長された強誘電体結晶と、該強誘電体結晶の内部に周期状に形成された分極反転領域と、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0104】
ある実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。好ましくは、さらに光導波路を備えている。
【0105】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、強誘電体結晶基板と、該強誘電体結晶基板の内部に周期状に形成した分極反転領域と、該強誘電体結晶基板の表面に形成された光導波路と、を備えており、そのことにより上記目的が達成される。
【0106】
ある実施形態では、前記光導波路が、リッジ状の光導波路である。あるいは、前記光導波路が、前記強誘電体結晶基板の表面に形成されたスラブ状の光導波路と、該スラブ状の光導波路の上に形成されたストライプ状の誘電体膜と、を含んでいる。
【0107】
他の実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0108】
さらに他の実施形態では、前記光導波路は、プロトン交換処理によって形成されているプロトン交換導波路である。
【0109】
本発明のさらに他の局面によれば、光波長変換素子が、強誘電体結晶基板と、該強誘電体結晶基板の内部に周期状に形成した分極反転領域と、該強誘電体結晶基板の端面に形成された入射面及び出射面と、を備え、該分極反転領域は該入射面に平行ではなくある角度を有していて、そのことにより上記目的が達成される。
【0110】
ある実施形態では、前記強誘電体結晶は、LiNb(1−x)TaxO3(0≦x≦1)及びKTiOPO4からなるグループから選択された材料からできている。
【0111】
他の実施形態では、前記入射面及び前記出射面にそれぞれ設けられた反射防止膜をさらに備えている。
【0112】
さらに他の実施形態では、前記角度が10度以上、好ましくは30度以上である。
【0113】
さらに他の実施形態では、前記出射面は前記分極反転領域に平行であって、該出射面に反射膜が設けられている。
【0114】
以下、作用について説明する。
【0115】
本発明では、分極反転領域を形成するために、基板に予め直流電圧を印加する。直流電圧により印加される電界が基板結晶の自発分極を反転させる反転電界を越えないように印加電圧値を設定すれば、電界による分極反転は生じない。この状態で、直流電圧に短パルス電圧を重畳すると、短パルス電圧にともなう短パルス電界と直流電圧にともなう直流電界との合計の電界によって、分極が反転する。重畳するパルス電圧は小さな値でよいため、再現性の高いパルス印加が可能となる。さらに、パルス電圧が小さいため、基板に印加される電界の均一性が増大する。
【0116】
本発明によれば、前述した方法により、周期状の分極反転領域を大面積に渡り均一に形成することを可能にする。以下に、その理由を述べる。
【0117】
強誘電体結晶の分極方向に互いに離れた2つの電極を形成し、両電極間に電圧を印加して分極反転を形成する際に、形成される分極反転領域の均一性は、印加される電界分布の均一性に依存する。そこで、本発明によれば、電極間に基板の分極を反転させる反転電界以下の直流電圧をあらかじめ印加しておき、この状態のもとで、印加電圧に短パルス状の電圧を重畳することにより、分極反転領域を製造する。電極間に印加する電圧が直流電圧であるため、電極間の電界の均一性が高く、大面積に渡り均一な電圧を印加できる。さらに重畳するパルス電圧強度が小さくとれるため、パルス電圧により電極間に印加される電界分布が均一であり、電圧制御も容易である。従って、再現性の高い、面内均一性の優れた分極反転領域を大面積に渡って形成することが可能になる。
【0118】
次に、短周期の分極反転領域の形成を容易にする方法について説明する。
【0119】
電界印加により形成される分極反転領域は、基板の+C面より分極が反転する。この現象をもとに、分極反転領域の横方向の拡大を抑圧する方法について種々検討を行った結果、基板の+C面の表面近傍の結晶性(強誘電性)を劣化させることにより、分極反転の発生を抑圧できることを発見した。さらに、基板表面(+C面)に櫛形電極を形成し、櫛形電極を構成するストライプ状の電極枝以外の結晶表面近傍の強誘電性を劣化させたところ、電極枝の下に形成される分極反転領域の横方向拡大が抑圧され、短周期の分極反転領域の形成が可能になる。以下にその理由を述べる。
【0120】
強誘電体結晶基板の+C面にストライプ状電極枝からなる櫛形電極を、−C面に平面電極を形成し、両電極間に電圧を印加すると、+C面より分極反転が発生して、電極の下に針状の反転領域が形成される。しかし、電圧印加をさらに継続すると、反転領域は時間とともに幅方向に広がり、短周期の分極反転領域の形成を困難にする。そこで、分極反転の形成プロセスの観測を行ったところ、分極反転が発生する+C面近傍の結晶性(ここでは強誘電性)を劣化させることにより、分極反転の発生が抑圧できることを見いだした。例えば、+C面にプロトン交換処理を施し、基板表面の結晶をプロトン交換領域に変えることで、分極反転に必要な反転電圧を数kV/mm以上も高くすることができ、分極反転の発生を抑圧できる。そこで、櫛形電極を構成しているストライプ状の電極間の結晶の+C面の表面近傍の強誘電性を劣化させることにより、電極枝の直下以外の部分への分極反転の幅方向の広がりを抑制することができる。即ち、ストライプ状の電極枝の間に強誘電性を劣化させた領域を設けることにより、反転領域の幅方向の広がりを抑圧し、短周期の分極反転領域の形成が可能になる。
【0121】
一方、本発明によれば、基板に形成される分極反転領域の形状の均一化を図るため、基板に形成した電極を絶縁体で被った後に、電極間に電圧を印加する。電極を絶縁体膜で被うことにより、電極周辺への自由電荷の移動を抑圧することができる。そのため、分極反転形成時に、電極の周辺部に広がる分極反転部の横方法拡大を抑圧することが可能になり、均一な分極反転構造が得られる。
【0122】
強誘電体結晶の分極方向に互いに離れた2つの電極を形成し、これに電界を印加することで分極反転を生じさせる形成過程では、電界の印加によりまず最初に分極反転核が形成され、次に分極反転核から分極方向に分極反転部が成長し(前進成長)、さらに反転核の周辺部に分極反転部が広がっていく(横方向成長)。ところが、電極パターンの周辺部に分極反転部が拡大するため、微細構造の分極反転パターンの形成が難しくなる。特に、周期状の分極反転層を形成する場合は、短周期の分極反転層の形成が困難になる。また、電極周辺部への横方向成長の均一性が乏しいため、分極反転部の構造を電極パターン通りに作製するのが困難になる。
【0123】
我々は、分極反転部の拡大現象について種々検討した結果、分極反転核の発生する結晶表面状態が分極反転の形成に影響を与えることを見いだした。つまり、強誘電体表面に存在する表面自由電荷の移動が、強誘電体への印加電界分布の不均一性および電極周辺部への電界の発生を引き起こし、これが分極反転部の横方向成長を促進していることを発見した。即ち、結晶表面に存在する表面自由電荷が電圧印加により、電極周辺部に移動し、電極直下だけではなく、その周辺部にも電界が誘起されることにより、分極反転が電極周辺部にも広がるというメカニズムである。
【0124】
そこで、分極反転部の横方向成長を抑圧するため、電極を絶縁体で被うことで、電極周辺部への表面自由電荷の移動を抑制することを提案した。即ち、強誘電体の分極方向に形成した電極を絶縁体膜で被うことにより、電極周辺への分極反転部の拡大を抑圧し、均一な分極反転層を形成することができる。
【0125】
また、光波長変換素子に必要な周期状分極反転層を形成するにも、同様の手段が利用できる。即ち、強誘電体表面に形成した櫛形電極と裏面に形成した平面電極間に電圧を印加することにより、周期状の分極反転層を形成する際、微細パターンである櫛形電極を絶縁体膜で被うことにより、櫛形電極を構成するストライプ状電極周辺部への分極反転部の拡大を抑圧し、短周期で均一な周期状分極反転層を形成することができる。
【0126】
また、高効率の光波長変換素子を形成する他の方法として、櫛形電極を構成するストライプ電極間の結晶表面を削ることで、表面自由電荷の移動を抑圧することができる。これによって、櫛形電極周辺部への分極反転部の拡大を抑圧し、短周期で均一な周期状分極反転層を形成することができる。
【0127】
さらに、形成された短周期で均一な周期状分極反転層を用いることにより、高効率の光波長変換素子を製造することが可能になる。
【0128】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を説明する前に、まず、強誘電体の分極反転について説明する。
【0129】
強誘電体は、自発分極による電荷の偏りを結晶内に有している。自発分極に対向する電界を印加することにより、強誘電体における自発分極の方向を変えることができる。
【0130】
自発分極の方向は、結晶(材料)の種類により異なる。LiTaO3、LiNbO3等の結晶はC軸方向のみに自発分極を有するため、これらの結晶では、分極はC軸に沿った+方向あるいはその逆向きの−方向の2通りしか存在しない。電界を印加することで、これらの結晶の分極は180度回転して、それまでとは逆の方向を向くようになる。この現象を、分極反転という。分極の反転を生じさせるために必要な電界を反転電界と称し、LiNbO3、LiTaO3等の結晶では、室温で約20〜30kV/mm程度の値をとる。
【0131】
強誘電体において、単一の分極方向を持った結晶にすることを「分極の単分域化」と称する。この分極の単分域化を達成するために、結晶成長後に高温中で電界を印加する方法が一般に行われている。
【0132】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態にしたがった分極反転領域の形成方法を説明するための模式的な斜視図である。
【0133】
図1(a)に示すようなLiTaO3基板1を利用した光波長変換素子100を製造するには、まず、LiTaO3基板1の+C面1aに周期状の櫛形電極2を形成し、−c面1bに平面電極3を形成する。次に、+C面1aの上の櫛形電極2に直流電源4を、−C面1bの上の平面電極3にパルス電源5を接続する。このような構成によって、所定の電圧レベルを有し必要に応じてパルス電圧が重畳された直流電圧を、LiTaO3基板1に印加することができる。
【0134】
電圧印加時の放電の発生をさけるために、基板1を絶縁液または真空中(10−6Torr以下)に配置して、直流電圧を印加する。分極反転が生じると、櫛形電極2と平面電極3との間に、強誘電体の自発電極の大きさと電極面積とに比例した電流(「反転電流」と称する)が流れる。
【0135】
まず、印加する直流電界Ecw及びパルス電界Eppと分極反転現象との関係を以下に説明する。
【0136】
最初に、パルス電源5のみを使用して、パルス電圧のみを印加して分極反転領域の形成を試みた例を説明する。この場合には、図1(a)の構成で、パルス電源5によって平面電極3を介してLiTaO3基板1にパルス電圧を印加する。直流電源4は使用せずに、櫛形電極2は接地する。
【0137】
厚さが0.2mmの基板1にパルス幅100μs程度のパルス電圧を印加すると、基板1にはパルス電界が印加される。このとき、約20kV/mm(1mmあたり20kVの電圧が印加されていることを意味する)以上の電界印加により、分極が反転した。さらに、厚さが0.3mmの基板1について同様の操作を行ったところ、分極反転は同様に20kV/mm以上の電界印加で発生したが、基板1の割れが生じやすく歩留まりが低かった。
【0138】
次に、基板1の厚さを0.2mmで一定、平面電極3の面積を10mm×10mmにして、周期3μmの周期状分極反転領域の形成を試みた。しかし、このように平面電極3の面積を増大させると、厚さが0.2mmの基板1でも割れが多発した。また、分極反転領域が部分的にしか形成されない、或いは形成される分極反転領域の形状が不均一であるなどの問題点が生じた。これらは、パルス電圧が印加される平面電極3の厚さや形状が実際には不均一性であるために、基板1への印加電界が部分的に集中するためと考えられる。また、形成された分極反転領域の周期構造の均一性も悪くなった。
【0139】
このように、パルス電圧印加によるパルス電界のみを印加して分極反転領域を形成する場合には、形成される周期状分極反転領域の形状を均一なものにするためには、分極反転構造が形成される全体の領域のサイズが3mm×3mm程度以下でなくてはならない。また、厚さが0.3mm以上の基板では、十分な大きさの分極反転領域の形成が難しい、或いは形成された分極反転領域の面内均一性が悪い等の問題が生じた。
【0140】
次に、直流電源4のみを使用して、直流電圧のみを印加して分極反転領域の形成を試みた例を説明する。この場合には、図1(a)の構成で、直流電源4によって櫛形電極2を介してLiTaO3基板1に直流電圧を印加する。パルス電源5は使用せずに、平面電極3は接地する。
【0141】
厚さが0.2mmの基板1に直流電圧を印加すると、基板1には直流電界が印加される。約20kV/mm以上の電界強度に相当する電圧が印加された時点で、反転電流が流れて分極が反転した。さらに、基板1の厚さに対する分極反転特性を測定したところ、基板1の厚さが0.5mm以下では分極反転領域の形成が可能であったが、厚さが0.5mm以上になると基板1に割れが生じて、分極反転領域の形成が困難になった。これは、基板1の厚さが増加するとともに分極反転領域の形成に必要な電界強度を得るために印加すべき電圧レベルが増加するために、厚い基板に分極反転領域を形成しようとすると基板1の結晶の破壊電圧を越えた電圧が印加されることにより、基板1に割れが生じたと考えられる。
【0142】
しかし、直流電圧の印加時には、基板1に印加される電界の面内均一性が高いため、大きな強度を有する電界の印加が可能である。
【0143】
上記の直流電圧の印加による周期状の分極反転領域の形成に関して、さらに以下のような様々な条件で、約20kV/mmの直流電界を印加して周期状分極反転領域の形成を試みた。すなわち、櫛形電極2の周期を2μm〜10μm、基板1の厚さを0.2mm〜0.5mm、電圧印加時間を0.5秒〜10秒としたところ、何れの場合でも、周期が5μm以下である周期状分極反転構造は形成されなかった。これは、櫛形電極2の直下に形成される分極反転領域が横方向に速い速度で広がるために、直流電圧のみの印加では短周期の周期構造形成が困難であることを示している。
【0144】
以上のように、直流電圧(電界)のみ、或いはパルス電圧(電界)のみを印加する場合には、短周期の分極反転構造を大面積に渡り均一に形成するのが難しい。それに対して本発明によれば、直流電圧(電界)にパルス電圧(電界)を重畳して基板に印加することによって、上記のような目的を達成することができる。
【0145】
図1(b)は、本実施形態に従った電圧印加によって基板1に印加される電界強度の経時変化を示す。以下の説明では、直流電源4からの直流電圧により印加される直流電界をEcw、パルス電源5からのパルス電圧(ここでは単パルス)により印加されるパルス電界をEppとする。本発明では、図1(b)に示すように、直流電界Ecwにパルス電界Eppを重畳して基板1に印加する。
【0146】
パルス電界Eppは、典型的にはパルス幅が100μs以下であり、以下の説明では0.5msとする。また、実際に基板に印加されるパルス電圧では、その立ち上がり及び立ち下がり時における所定の振幅の電圧変化は瞬時に行われるのではなく、ある程度の時間を必要とする。図1(b)では、記載を簡潔にするために、これらの点を省略して、パルス電界Eppをインパルス波形として描いている。
【0147】
Ecw及びEppの値をパラメータにして、分極反転特性を測定した。また、反転電流の測定を通じて、分極反転が生じる電圧値(反転電圧値)の測定も行った。その結果、EppあるいはEcwの個別の値には関係なく、Ecw+Eppの合計値が約20kV/mm以上になると分極が反転することが明らかになった。
【0148】
ところで、電界印加による分極反転領域の形成にあたっては、分極の再反転現象に留意する必要がある。これに対して、本実施形態における分極反転領域の製造方法によれば、分極の再反転現象に起因する従来の問題点も解決することができる。この点を、図2(a)〜(e)及び図3を参照して以下に説明する。
【0149】
従来のパルス電圧印加による分極反転領域の形成にあたっては、印加するパルス電圧のパルス幅、立ち上がり速度や立ち下がり速度を調整しても、最終的に分極反転領域が基板内部に形成されないことがある。この現象の原因を検討するために、本発明者らは、パルス電圧の印加とともに、分極反転の発生にともなって流れる反転電流の測定を行った。図2(a)〜(d)には、その結果を示している。
【0150】
図2(a)及び(b)は、従来の方法における基板への印加電圧波形とそれにともなって流れる反転電流波形である。図2(a)に示すようにパルス電圧(ここでは負のパルス電圧として描かれている)を基板に印加し、反転電圧を越える電圧が基板に印加されると、図2(b)に示すように反転電流が流れて、分極反転が発生する。しかし、パルス電圧の印加が終了し、印加電圧を零に向かって減少させていく過程で、反転電流とは逆向きの電流が流れる。これは、一旦反転した分極が再反転して最初の状態に戻るときに流れる再反転電流である。このように、従来のパルス電圧(電界)のみを印加する方法では、分極の再反転現象の影響で、分極反転領域が結果的に形成できないことがある。この再反転現象は、形成直後の分極反転領域が不安定であることを示している。
【0151】
分極が再反転して再反転電流が流れる電圧値は、印加したパルス電圧を零レベルに戻す際の電圧の変化率に依存する。この関係を図3に示す。このグラフは、基板として厚さが0.2mmのLiTaO3基板を用いて、−5kVのパルス電圧を基板に印加した場合のグラフである。なお、実際にはこの関係は電源の負荷抵抗の値に依存して変化するが、図3のグラフは、負荷抵抗値が1MΩである場合の関係である。図3によれば、パルス電圧の変化率が大きくなるにつれて、分極の再反転が発生して再反転電流が流れ始める電圧値が増加して、反転電圧値に次第に近づく。
【0152】
これに対して本実施形態の方法によれば、図2(c)に示すように、直流電圧にパルス電圧を重畳した電圧を基板に印加する。このとき、直流電圧の大きさは、分極反転は生じず、かつ再反転電流が流れない電圧値に設定する。この結果、印加電圧をパルス電圧値から零レベルに向けて減少させる場合に、図2(d)に示すように再反転電流が流れることなく、形成された分極反転層を維持することができる。なお、この分極反転後に印加される直流電圧は、上記のような所定の電圧レベルで、少なくとも所定の時間、例えば数秒間にわたって印加すればよい。
【0153】
例えば、上記のように厚さが0.2mmのLiTaO3基板を用いる場合には、直流電圧を−2kV、パルス電圧を−3kVとして、最大で−5kVの電圧を基板に印加すればよい。また、分極反転領域形成後の印加電圧の零レベルへの変化率は、100V/秒にすればよい。さらに、反転電流の波形から基板に流れ出た総電荷量を計算することによって、パルス電圧のパルス幅を最適化することができる。これらの設定に基づいて本実施形態のプロセスを実施することによって、基板全体に渡って分極反転領域を均一に形成することができる。
【0154】
なお、上記の説明ではLiTaO3基板を使用しているが、LiTaO3基板に対しても同様な結果を得ることができる。
【0155】
反転電流は、反転電圧を越える電圧が基板に印加された場合にのみ流れる。形成される分極反転領域の形状(面積)を正確に制御するためには、反転電流の総量を制御する必要がある。その様な制御は、反転電流の大きさと、印加電圧が反転電圧値を越えている時間とを正確に制御することによって行うことができる。そのためには、例えば図2(e)に示すように、印加電圧をパルス電圧値から零レベルに変化させる際に、まずステップ的に反転電圧レベル以下に変化させて、その後に漸次変化させればよい。
【0156】
以上に説明したような本実施形態の分極反転領域の製造方法において、Ecw+Eppの合計値を21kV/mm一定にして、Ecwの値と分極反転領域の形成が可能である基板1の厚さとの関係を求めると、図4(a)に示す結果が得られる。すなわち、Ecwの値を増大させることにより、厚い基板に対しても、基板の割れを生じることなく分極反転領域の形成が可能になる。例えば、Ecwが5kV/mm以上の場合には厚さ0.3mmの基板において、Ecwが10kV/mm以上である場合には厚さ0.4mm以上の基板において、分極反転領域の形成が可能になる。
【0157】
Ecwの値が増大すると、形成される分極反転領域における面内均一性が向上する。最も均一性が良好な分極反転領域が形成されるのは、Ecwを、分極反転が実際に発生する電界(すなわち反転電界)より僅かに小さな値にした場合である。具体的な数値は基板によって僅かに異なるが、反転電界が約20kV/mmである場合には、Ecwの値を例えば19.9kV/mmにすればよい。上記のような値にEcwを設定することによって、20mm×20mm以上の大きな面積に分極反転領域を形成することができる。
【0158】
次に、パルス電圧(電界)が重畳された直流電圧(電界)の印加によって分極反転領域を形成する場合において、形成される分極反転領域の短周期化について検討する。
【0159】
電界印加により形成される分極反転領域は、電極の直下に発生した後に横方向に拡大する。このため、短周期の分極反転領域を形成しようとしても、隣接して形成された分極反転領域がお互いに接触して、周期構造が形成されなくなる。そこで、分極反転領域の横方向への拡大に対する印加電圧形状の影響を以下で検討する。
【0160】
図1(a)の構成で、基板1の+C面1aにそれぞれのストライプ状電極枝の幅が10μmである櫛形電極2を、−C面1bに平面電極3を、それぞれ形成し、各電極2及び3の間にパルス電圧を重畳した直流電圧を印加する。パルス幅を5μs、電圧印加によって印加される電界強度Ecw+Eppの合計値を21kV/mmでそれぞれ一定として、Ecwの値をパラメータとして変化させると、分極反転領域の幅とEcwとの間には図4(b)に示す関係が得られる。具体的には、印加される直流電界Ecwが大きい程、分極反転領域の横方向の拡大が小さくなる。また、Ecwが5kV/mm以下である場合に形成される分極反転領域の幅は、パルス電圧を単独で印加した場合に形成される分極反転領域の幅と、実質的に等しくなる。
【0161】
以上のように、直流電圧にパルス電圧を重畳して基板1に印加することにより、従来は20kV/mm程度と大きなパルス電界の印加を必要としていた分極反転領域の形成が、数kV/mmのパルス電界の印加で形成可能になる。これにともなって、形成される分極反転領域の均一化及び短周期化が容易になる。特に、5kV/mm以上の直流電界を印加すること、また、パルス電界の印加終了後に印加している直流電界を低減することが、均一で短周期の分極反転領域の形成に有効である。
【0162】
本実施形態では、電極2及び3の間に電界を印加しているが、電界の代わりに磁界を印加しても、同様な分極反転領域を形成することができる。例えば、+Z方向に10kH以上の強磁界を印加することで、電界印加時と同様の分極反転領域の形成が可能となる。また、磁界の印加時間を短縮してパルス形状とすることで、短周期の分極反転領域の形成も可能である。
【0163】
また、本実施形態では、パルス電界として単パルスを重畳しているが、その代わりに複数のパルスを重畳しても同様の効果が得られる。単パルスを重畳する場合には、形成される分極反転領域の形状は、印加されるパルス電圧の振幅とパルス幅とで制御できる。一方、複数のパルスを重畳する場合は、印加されるパルス電界の個数によって形成される分極反転領域の形状を制御することも可能であり、分極反転領域の面内均一性の向上に有効である。
【0164】
なお、櫛形電極2を基板1の+C面1aの上に形成するのは、分極反転核の形成が+C面1aで生じるためである。−C面1bの上に櫛形電極2を形成して周期状の分極反転構造を形成しようとしても、分極反転領域が横方向(基板1の表面に平行な方向)へ急速に拡大するために、短周期の分極反転構造の形成は困難である。
【0165】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態にしたがって作製される分極反転領域を利用してストライプ状の光導波路を有する光波長変換素子を作製する方法について述べる。図5(a)〜(c)は、本実施形態における光波長変換素子200の製造方法を示す斜視図である。
【0166】
第1の実施形態にて説明したように、厚さ0.3mmのLiTaO3基板1の+C面に櫛形電極を、−C面に平面電極を形成して、パルス電圧Eppを重畳した直流電圧Ecwの印加によって周期状の分極反転領域9を形成する。印加電圧は、例えば直流電界の大きさEcw=19.5kV/mm、パルス電界の大きさEpp=1.5kV/mmが得られる値として、パルス電圧のパルス幅を0.5msとする。また、直流電源に電流検知機能を付加して反転電流を検知し、パルス電圧の重畳により分極反転が形成されると同時に、直流電界を1.5kV/mm以下に低下させる。以上の結果として、図5(a)に示すように、周期が3.5μmである分極反転領域9が10mm×10mmの大きさの領域の全体にわたって形成される。
【0167】
形成した周期状分極反転領域9に直交するようにストライプ状の光導波路を形成すれば、光導波路型の光波長変換素子が製造される。ところが、一般に分極が反転している領域の屈折率は、基板1の屈折率より増加している。そのため、上記のような電界印加により作製した周期状分極反転領域9では、屈折率が周期的に変化していて、形成される光導波路の伝搬損失が著しい増加をもたらす。
【0168】
以上の問題を解決するために、光導波路を形成する前に、基板1を酸素雰囲気中でアニール処理して、分極反転領域9の屈折率変化を減少させて、屈折率分布を均一化させる。
【0169】
アニール処理温度を300〜600℃の間で変化させたところ、400℃以上の温度でアニール処理することによって、屈折率変化がかなり減少することが明らかになった。しかし、アニール温度をさらに上げて580℃以上で処理すると、一旦形成された分極反転領域が縮小する。特に、このような高温におけるアニール処理を60秒以上継続して行うと、分極反転領域がほぼ完全に消滅する。
【0170】
以上の結果より、アニール温度は580℃以下とすることが好ましい。また、アニール処理後に温度を下げる際に、温度低下速度を5℃/秒以下に設定することにより、屈折率の変化をさらに低減して均一な屈折率分布を得ることができる。
【0171】
第1の実施形態にしたがって周期的な分極反転領域を形成した後に、上記の条件でアニールを行う。さらにその後に、図5(a)〜(c)に示す工程で、ストライプ状の光導波路を有する光波長変換素子200を製造する。
【0172】
分極反転領域9の形成後に光導波路を形成する場合には、すでに形成されている周期状の分極反転構造に影響を与えないようにするために、低温プロセスで行われることが望ましい。例えば、LiTaO3のキュリー温度は約600℃であるのでそれ以下の温度でプロセスを実行することが望ましい。そこで本発明では、低温で光導波路を作成することができるプロトン交換処理を行う。
【0173】
プロトン交換処理では、酸の中に浸した基板を熱処理することによって、基板中の金属イオンと酸中のプロトンとが交換されて、高い屈折率を有する層が形成形される。例えば、LiTaO3基板の場合には、Liとプロトンとが交換される。なお、プロトン交換処理が施された領域は、非線形性が基板本来の値の約半分に低下するために、プロトン交換処理後にアニール処理を行って、非線形性を回復する必要がある。
【0174】
具体的には、まず図5(a)に示すように、周期的な分極反転領域9がその内部に形成された基板1の表面に、Taマスク層10をスパッタリング法で堆積する。Taマスク層10の厚さは、典型的には10nm〜500nm、好ましくは20nm〜100nm、例えば40nmとする。続いて、図5(b)に示すように、Taマスク層10に対して、フォトリソグラフィ法によるパターンニング及び引き続くドライエッチングを行って、ストライプ状光導波路に対応するストライプ状の開口部10aを形成する。その後、260℃のピロ燐酸中で16分間熱処理することによってTaマスク層10の開口部10aを介してプロトン交換処理を行い、図5(c)に示すようなプロトン交換導波路11を形成する。その後にTaマスク層10を除去し、さらに導波路の低損失化及び導波路の非線形性の回復という目的から420℃にて60秒間の熱処理を行うことによって、ストライプ状の光導波路11が完成する。
【0175】
製造される光波長変換素子200の斜視図を、図6に示す。図6の光波長変換素子200において、素子長及び作用長はともに10mmであり、分極反転領域9の周期は3.5μmである。また、光導波路11は、幅4μm、深さ3μmである。また、図6に矢印9a及び9bで示しているように、分極反転領域9とそれ以外の部分では、分極の方向がお互いに正反対を向いている。
【0176】
本実施形態によれば、分極反転領域が大面積にわたって均一に形成できて、製造される光波長変換素子200の動作特性が向上する。特に、光導波路11を伝搬する光を、深い位置に至るまで形成された分極反転領域9に十分に重ねることができ、高効率の光波長変換素子を製造することができる。
【0177】
本実施形態の上記説明では、基板1としてはLiTaO3基板を用いている。あるいは、KTP(KTiOPO4)基板、KNbO3基板、LiNbO3基板、またはMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3基板やLiNbO3基板を使用することができる。あるいは、LiTaO3とLiNbO3との混晶であるLiNb(1−x)TaXO3基板(0≦x≦1)でも、同様な光波長変換素子が作製できる。特に、上記のうちでLiNbO3基板は、高い非線形光学定数を持つために、高効率の光波長変換素子を製造するには有効である。
【0178】
なお、本実施形態に関する上記の説明では、光導波路11を基板1の+C面1aに形成している。しかし、分極反転領域9は基板1の裏面に達するまで形成されているので、光導波路11を基板1の−C面1bに形成しても、同様の性能を有する光波長変換素子を製造することができる。そのように−C面に光導波路を形成する場合、−C面には平面電極が形成されているのみであって櫛形電極のパターンは形成されていないので、面の荒れが少ない。そのため、導波損失の少ない導波路が作製でき、効率の高い光波長変換素子の作製が可能である。
【0179】
光導波路としては、上述のプロトン交換処理によって形成した導波路に代わって、Ti拡散導波路、Nb拡散導波路、イオン注入導波路など他の光導波路を用いることができる。
【0180】
プロトン交換処理は、上述のピロ燐酸を用いる処理の他に、オルト燐酸、安息香酸、硫酸などを用いることができる。
【0181】
また、プロトン交換処理のためのマスクはTaマスクに限られるものではなく、Ta2O5、Pt、Auなど耐酸性を有する材料からなるマスクであればよい。
(第3の実施形態)
短周期の分極反転領域を形成するには、分極反転領域の幅を所望の周期以下に抑える必要がある。基板の+C面に形成された櫛形電極を介して電界を印加することにより形成される分極反転は、櫛形電極を構成するストライプ状の電極枝の直下の+C面より発生し、−C軸方向に成長する。しかし、それと同時に、ストライプ状電極枝の幅方向(すなわち、基板の表面に平行な方向)にも広がる。その結果、分極反転領域の幅が広がって、短周期の分極反転構造の形成を困難にする。
【0182】
これに対して本願発明者は、分極反転領域の幅方向への拡大を抑圧する方法について考察した。その結果、基板の+C面において、ストライプ状の電極枝の間隙における分極の発生を抑圧することにより、幅方向の分極反転領域の広がりを抑圧することができると考えた。そこで、分極反転の発生を抑圧する方法を検討した結果、LiTaO3結晶またはLiNbO3結晶の+C面近傍の強誘電性を劣化させることで、その部分の分極反転の発生を抑圧できることを見いだした。例えば、LiTaO3の+C面の表面にプロトン交換処理を施すことで、分極を反転させる反転電界の値が数kV/mm増加し、分極反転の発生が抑圧されることが明らかになった。
【0183】
このような発明者による検討結果を用いて、分極反転領域の短周期化を試みた。図7(a)〜(c)を参照して、これを説明する。
【0184】
図7(a)は、先に図1(a)として説明した測定系におけるLiTaO3基板1の断面図であって、図2(a)と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0185】
図7(a)におけるLiTaO3基板1の+C面1aに設けられた櫛形電極2では、幅10μmのストライプ状の電極枝が10μmのギャップをあけて形成されている。一方、基板1の−C面1bには平面電極3が形成されている。この時点では、基板1の内部の分極は、図7(a)に矢印9bで示しているように図面中で上方向を向いている。
【0186】
櫛形電極2と平面電極3との間に電圧を印加して基板1に電界を印加すると、基板1の内部における電界強度が約20kV/mm以上になった時点で、櫛形電極2の電極枝の直下に分極反転領域9が形成される。この分極反転領域9における分極の向きは、図7(b)に矢印9aで示すように図面中で下向きであって、電界印加前から逆転している。
【0187】
しかし、そのようにして形成された分極反転領域6は、さらに電極枝の幅方向(すなわち基板1の表面に平行な方向)にも広がる。このような幅方向の成長が進展すると、最終的に、隣接する分極反転領域9がお互いに接触してしまう可能性がある。
【0188】
これに対して、図7(c)に示すように、電極枝の間の+C面1aの表面近傍にプロトン交換処理を施して、プロトン交換領域7を形成する。このようなプロトン交換領域7ではその強誘電性が劣化されていて、分極反転領域6の横方向への拡大が抑圧される。この結果、図7(c)に示すように、それぞれの電極枝の直下のみに、電極枝と同じ幅を有する分極反転領域9が形成される。
【0189】
さらに、プロトン交換処理の有無が分極反転領域9の横方向への拡大に与える影響を、図8(a)及び図8(b)を参照して説明する。
【0190】
図8(b)で、縦軸は、形成された分極反転領域9の幅Wを示す。この分極反転領域9は、図8(a)に示すように、幅が10μmである櫛形電極2を用いて形成されたものである。言い換えると、図8(b)の縦軸に示す分極反転領域の幅Wは、分極反転領域9の拡大の程度を表している。
【0191】
一方、図8(b)の横軸は、櫛形電極2と平面電極3との間に印加される電圧を示す。具体的には、直流電圧Ecwにパルス電圧Eppを重畳した電圧を印加し、印加電圧の直流成分Ecwは3kVで一定としている。図8(b)の縦軸には、直流電圧Ecwとパルス電圧Eppとの合計値E=Ecw+Eppの値をとっている。なお、パルス電圧のパルス幅は3msである。
【0192】
図8(b)には、櫛形電極2のストライプ状電極枝の間隙における+C面にプロトン交換処理(260℃、20分間)を施したサンプル、及びそのようなプロトン交換処理を施さないサンプルにおける、分極反転領域9の幅Wと印加電圧の大きさEとの関係を、それぞれ示している。
【0193】
図8(b)より、プロトン交換処理の有無に係わらず、分極反転領域9の幅W、すなわち横方向への広がりは、印加電圧Eの増加とともに増大する。しかし、プロトン交換処理を行わない場合には、印加電圧が5.5kV以下では均一な分極反転が形成されない。したがって、この時の分極反転領域の幅Wである2.7μmが、得られるWの最小値である。すなわち、プロトン交換処理を施さないサンプルでは、分極反転領域9の形成に使用する櫛形電極2のストライプ状電極枝の幅が2μmであるにもかかわらず、実際に形成される分極反転領域9の幅Wは最小でも2.7μmである。
【0194】
それに対してプロトン交換処理を行う場合には、分極反転領域9の横方向の拡大が抑圧される。その結果、幅Wが櫛形電極2のストライプ状電極枝の幅とほぼ等しい分極反転領域9を形成することができる。このように、プロトン交換処理を施すことで、分極反転領域9の横方向の拡大が抑圧されることが明らかになった。
【0195】
次に、上記の結果を周期状の分極反転領域の形成に適用した例を、図9(a)〜(c)を参照して説明する。図9(a)〜(c)で、これまでに示した参照して説明した図面に置いてと同じ構成要素には、同じ参照番号を付けている。
【0196】
まず、図9(a)に示すように、C板のLiTaO3基板1の+C面1aに櫛形電極2を、−C面1bに平面電極3を、それぞれ形成する。このうち平面電極3は、例えば厚さ約500nmのTa膜とすることができる。次に、櫛形電極2をマスクとして、そのストライプ状の電極枝の間隙の+C面1aにプロトン交換処理を施す。このプロトン交換処理は、典型的には、260℃のピロ燐酸中で30分間行う。これによって、図9(b)に示すように、深さ約0.4μmのプロトン交換領域7が形成される。次に、図9(c)に示すように、上記処理が施された基板1を絶縁液中または真空中に設置し、直流電源4及びパルス電源5を用いて櫛形電極2と平面電極3との間に電圧を印加して、基板1に電界を印加する。具体的な印加電界としては、例えば、直流電界Ecw=18kV/mmに、パルス電界Epp=3kV/mmを重畳する。
【0197】
上記のような工程によれば、周期が2μm〜10μmである分極反転領域9を形成することができる。櫛形電極2のストライプ状電極枝の間隙にプロトン交換処理を施さない場合には、周期が3μm以下である分極反転領域を均一に形成することは困難である。これに対して、本実施形態にしたがってストライプ電極枝間にプロトン交換を施すと、周期が2.5μm以下である短周期の分極反転領域9を均一に形成することができる。
【0198】
次に、分極反転領域9の形成に対するプロトン交換処理の時間の影響を説明する。
【0199】
260℃のピロ燐酸を用いてプロトン交換処理を行う場合、プロトン交換時間を5分以上にすることで、分極反転領域9の広がりを抑圧する効果が表れる。さらに、10分間以上のプロトン交換処理を行うことによって、面内均一性の良好な分極反転領域9が得られる。しかし、プロトン交換処理を非常に長時間にわたって行うと、隣接するプロトン交換領域7がお互いに接触してしまって、周期状の分極反転構造9が形成できない。これより、プロトン交換処理は、10分間以上であって、隣接するプロトン交換領域7がお互いに接触しない限度内の時間だけ行うことが有効である。
【0200】
なお、プロトン交換処理によって生じる基板1の強誘電性の劣化とは、自発分極の反転が可能な結晶状態の劣化を意味する。具体的には、自発分極が小さくなった状態、自発分極の反転電界が増大した状態、または、結晶が強誘電性を示さなくなった状態を示す。例えば、プロトン交換処理を施すと結晶構造の歪が小さくなるため、自発分極が非常に小さくなる。
【0201】
あるいは、同様な現象をプロトン交換以外の処理によって得ることもできる。例えば、基板1の表面にイオン注入を施すと、結晶構造が崩れてランダムな構造に近くなり、自発分極を示さなくなる。
【0202】
このように、分極反転が発生する結晶表面に結晶構造の変化をおこすことで、分極反転領域9の拡大を抑圧することができる。上記で説明したLiTaO3基板やLiNbO3基板の場合には、分極反転領域9は+C面1aから発生する。あるいは、結晶の種類によっては、分極反転が+C面ではなく、−C面、またはそれ以外の面から発生する場合もある。しかし、その場合には、分極反転が発生する面の強誘電性を同様に劣化させることで、分極反転領域の拡大を同様に抑圧することができる。
【0203】
本実施形態の上記説明では、基板表面の強誘電性を劣化させる手段としてプロトン交換処理を用いている。あるいは、Zn、Cd等のイオン交換、プロトンイオン、Heイオン、Siイオン、Auイオン等の注入、Ti拡散などの金属拡散、あるいはMgO拡散などによっても、同様な効果を得ることができる。
【0204】
本実施形態の上記説明では、プロトン交換処理をピロ燐酸を用いて行っている。あるいは、オルト燐酸、安息香酸、硫酸などを用いてプロトン交換処理を行っても、上記説明と同様の効果を得ることができる。また、上記説明では電極を構成する金属膜としてTa膜を用いているが、適切な耐熱性を有する膜であれば、他の膜でもよい。具体的には、Ti、Pt、Auなどの材料の膜を用いることができる。
【0205】
本実施形態の上記説明では、基板1としてはLiTaO3基板を用いている。あるいは、LiNbO3基板、またはMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3基板やLiNbO3基板を使用することができる。あるいは、LiTaO3とLiNbO3との混晶であるLiNb(1−x)TaXO3基板(0≦x≦1)でも、同様な光波長変換素子が作製できる。これらの結晶は、上記の説明で示したと同様に、プロトン交換処理により強誘電性劣化層を容易に形成することができる。そのため、周期状分極反転領域を電界印加により容易に製造することができる。特に、LiNbO3は、高い非線形光学定数を持つために、高効率の光波長変換素子を製造するために有効である。
【0206】
一方、基板1としては、KTP(KTiOPO4)基板やKNbO3基板を使用することもできる。これらの基板は高い非線形光学定数を持つために、高効率の光波長変換素子を製造するには有効である。このうち、KTP基板では、櫛形電極の電極枝の間隙の結晶表面をイオン交換によって劣化させる場合に、Rbイオンを用いた処理によっても表面の結晶性を変えることができる。この後に電界を印加することで、深い分極反転領域が形成される。
【0207】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第3の実施形態にしたがってプロトン交換処理を施した上で作製される周期的な分極反転領域を利用して、光波長変換素子を作製する方法について述べる。
【0208】
先に第2の実施形態で説明したように、形成した分極反転領域の上に光導波路を形成すれば、図5(c)に示した形状を有する光波長変換素子を製造することができる。しかし、第3の実施形態にしたがって周期状分極反転領域9を形成したLiTaO3基板1の+C面1aに対しては、周期的にプロトン交換処理が行われている。そのため、周期的な屈折率分布(基板1と分極反転領域9との間の屈折率の差)が存在する。このため、低損失の光導波路を形成するには、アニール処理により屈折率分布を均一化する必要がある。
【0209】
図10(a)〜(d)は、上記目的で行われるアニール処理の温度が、形成された分極反転領域9の形状に与える影響を模式的に示す断面図である。図10(a)はアニール処理を行っていない状態であり、図10(b)〜(d)はそれぞれ450℃、500℃、及び550℃でアニール処理を行った後の状態を示す。
【0210】
アニール処理実施前には、図10(a)に示すように、基板1の+C面1aの表面近傍に針状のマイクロドメイン8が残留している。このようなマイクロドメイン8は、分極反転領域9からなる周期状分極反転構造の周期性を劣化させる。これに対して、図10(b)〜(d)に示すように、アニール処理を行うことによってこのようなマイクロドメイン8は消滅する。
【0211】
しかし、アニール温度が500℃を越えると、図10(c)及び図10(d)に示すように、形成された周期状分極反転領域9が基板1の+C面1aの近傍から消滅する。アニール温度またはアニール時間を増すと、それだけ深い箇所に至るまでの分極反転領域9が消滅する。
【0212】
基板1の表面近傍から周期的分極反転構造が消滅してしまうと、所期の光波長反転機能が得られなくなる。したがって、形成した周期的分極反転構造の均一性を向上して低損失の光導波路を形成するためには、アニール処理温度を500℃以下に設定することが望ましい。
【0213】
以上の方法によれば、分極反転構造の周期を2μmまで短くすることが可能であるために、位相整合波長を740nmまで短波長化できる。したがって、波長370nmの紫外光の発生が可能になる。
【0214】
このように、本実施形態によれば、均一な分極反転領域が得られるので光波長変換素子の特性向上を図ることができる。また、分極反転領域を基板の深い箇所にまで形成することによって、高効率の光波長変換素子が製造できる。さらに、分極反転領域を短周期化することによって、短波長の第2高調波の発生が可能になる。
【0215】
上記の説明では、電界印加前のプロトン交換処理により形成された屈折率変化を、アニール処理によって除去しているが、他の方法によって取り除くこともできる。
【0216】
プロトン交換処理により形成される基板表面のプロトン交換層の厚さは、約1μm程度にすぎない。そこで、基板表面を光学研磨することで、プロトン交換層を容易に取り除くことができる。具体的には、LiNbO3基板やLiTaO3基板などの光学研磨に一般に用いられているポリッシングダイヤ液を使用して、研磨布の上で基板表面を研磨することで、基板表面のプロトン交換層を取り除く。その後に、上述した方法でプロトン交換光導波路を形成すれば、同様に高効率の光波長変換素子を形成することができる。
【0217】
あるいは、湿式エッチングやドライエッチングによって、基板表面のプロトン交換層を除去することもできる。
【0218】
エッチング液を用いる湿式エッチングの場合、エッチング液として例えばHFとHNO3とを2:1で混合した液体を用いて、エッチング液の温度を60℃程度にしてエッチングを行う。湿式エッチングに対するエッチングレートは、通常は+C面と−C面とでは異なっているが、プロトン処理後はほぼ等しい値になっているために、分極反転した表面に凹凸が現れること無くエッチングが行われる。これによって、低損失の光導波路の形成が可能になる。
【0219】
ドライエッチングの場合は、例えばCF4あるいはCHF3等のガスを用いてエッチングできる。例えば、反応性イオンエッチング装置を用いてRFパワーを100W程度にすれば、数10nm/分程度のエッチングレートが得られる。プロトン交換処理後の基板表面のエッチングレートは、処理前の基板における値より高くなっており、より効率の高いプロセスが行える。
【0220】
(第5の実施形態)
本実施形態では、高効率の光波長変換素子を形成する他の方法について述べる。
【0221】
光波長変換素子の効率は、光導波路を伝搬する光のパワー密度に依存する、そのため、閉じ込めの強い光導波路を形成すれば、より高効率の光波長変換素子が製造可能となる。本実施形態では、閉じ込めの強い光導波路を備えた光波長変換素子を製造するために、光導波路としてリッジ型の光導波路を用いる。
【0222】
図11(a)〜(d)は、本実施形態にしたがってリッジ型光導波路17aを分極反転領域9の上に形成する方法を説明する。なお、分極反転領域9の形成は、先に説明した第1の実施形態または第3の実施形態のいずれの方法にしたがったものであってもよい。
【0223】
まず、周期状の分極反転領域9を形成したLiTaO3基板1にプロトン交換処理を施して、図11(a)に示すように基板1の表面にプロトン交換層17を形成する。プロトン交換処理は、例えば、温度260℃のピロ燐酸中に基板1を20分間浸すことで実施できる。次に、図11(b)に示すように、プロトン交換層17の上にフォトリソグラフィ法によって、光導波路を形成するためのレジストパターン12を形成する。続いて、レジストパターン12をマスクとして、CHF3ガス雰囲気中でドライエッチングを行う。これによって、プロトン交換層17を300nm程度エッチングする。さらに、レジストパターン12を除去することによって、図11(c)に示すように、一部にリッジ17aを有するプロトン交換層17が形成される。さらに、アニール処理を、例えば温度420℃で60秒間行って、図11(d)に示すような、リッジ型光導波路17aを備えた光波長変換素子500が得られる。
【0224】
上記のようにして製造される光波長変換素子500では、光導波路17aの厚さを従来の2μm程度から1.5μmに、幅を従来の4μmから3μmに、それぞれ低減することが可能になる。このような光導波路の小型化にともなって、光導波路を伝搬する光のパワー密度を従来の1.5倍に高めることができる。この結果、光波長変換素子の変換効率が、従来の約2倍に高められる。
【0225】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態における光波長変換素子600を、図12を参照して説明する。
【0226】
光波長変換素子600では、LiTaO3基板1の内部に周期的な分極反転領域9が形成されている。基板1の表面近傍における分極反転領域9の間隙には、プロトン交換領域7が設けられている。さらに、周期状分極反転領域9を形成した基板1の両端部には、研磨後に反射膜14をそれぞれ堆積する。反射膜14は、典型的には、波長800nmの基本波を90%以上反射する。
【0227】
このような光波長変換素子600に、半導体レーザ21の光(基本波)23を集光光学系22を介して入射すると、入射した基本波23は基板1の両端面の反射膜14で多重反射して、基板1の内部で共振する。すなわち、光波長変換素子600は共振器として機能して、その内部パワーの増大により、入射された基本波23が高効率で第2高調波24に変換されて出射される。
【0228】
光波長変換素子600では、基板1の内部に形成された周期状分極反転領域9をそのままバルク状で利用して、入射した光の波長変換を行う。基本波23と分極反転領域9との十分なオーバラップが得られるので、高効率の光波長変換が行える。
【0229】
また、基板1の表面近傍における分極反転領域9の間に形成したプロトン交換領域7は、分極反転領域9の劣化を防止する機能を発揮する。電界印加によって分極反転を生じさせる場合、深い分極反転領域9を形成できる一方で、基板1の結晶に大きな歪が与えられる。そのような歪は、形成された分極反転領域9の経時変化を起こす。例えば、数週間から数カ月で、分極反転領域9の形状が徐々に変化して、光波長変換素子600の動作特性が変化することがある。これに対して、分極反転領域9の間にプロトン交換領域7を形成すると、分極反転領域9のそのような形状変化の発生が防止されて、動作特性の経時変化の無い安定な光波長変換素子600を構成できる。
【0230】
さらに、LiTaO3基板1は強い焦電効果を有するため、基板1の温度が変化すると、基板1の中の結晶表面に焦電電荷が蓄積されて電界が発生する。電界が発生すると、電気光学効果によって屈折率変化を生じる。このため、光波長変換素子600の位相整合特性に影響を与え、出力が不安定になる。これに対して、プロトン交換領域7はLiTaO3基板1より一桁程度低い電気抵抗を有するため、基板1の表面にプロトン交換領域7を形成することによって、焦電効果により発生する電荷の移動速度を高め、電界の発生を防止することができる。これによって、外部温度が変動しても安定した出力特性を維持できる光波長変換素子600が構成できる。
【0231】
上述のように光波長変換素子600は共振器として機能させるが、そのためには、多重反射する基本波23のビーム径より深い位置に至るまで、典型的には数10μm以上の深さまで、分極反転領域9が均一に形成されていなければならない。電界印加によれば、数100μm程度の深さまで均一な周期状分極反転領域9が形成されるので、高効率の共振器型光波長変換素子600を作製することができる。
【0232】
なお、本実施形態の上記説明では、基板1の内部に形成された分極反転領域9を利用して波長変換を行うバルク型光波長変換素子600を説明している。これに対して、第2、第4あるいは第5の実施形態として説明したように、基板1の表面に光導波路を形成して、光導波路型の光波長変換素子を構成することもできる。その場合、第2の実施形態に関連して説明したように、基板1と分極反転領域9との間に存在する周期的な屈折率変化を低減するためのアニール処理が必要になる。これに対して、本実施形態では、基板1の表面近傍における分極反転領域9の間隙に、基板1より高い屈折率を有するプロトン交換領域7が形成されるので、上記のような分極反転領域9と基板1との間の屈折率差が低減される。このため、低損失の光導波路の作製が可能になり、高効率の光波長変換素子を構成できる。
【0233】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態における分極反転領域の形成方法を、図13(a)〜(c)を参照して説明する。
【0234】
まず、図13(a)に示すように、厚さが例えば200μmのC板のLiTaO3基板1(結晶のC軸に垂直な面で切り出した基板)の+C面1aに、それぞれのストライプ状の電極枝の幅が1.2μmである櫛形電極2を形成する。一方、基板1の−C面1bには、平面電極3を形成する。これらの電極2及び3は、例えば厚さ約60nmのTa膜とすることができる。次に、図13(b)に示すように、+C面1aの表面の櫛形電極2を覆うように、厚さ200nmのSiO2からなる絶縁膜34をスパッタリング法により堆積する。その後に、櫛形電極2を接地した上で、平面電極3に負のパルス電圧(典型的にはパルス幅3ms)を印加する。放電の発生をさけるため、電圧印加時には、基板1の全体を絶縁液または10−6Torr以下の真空中に設置する。
【0235】
以上のようにして形成される分極反転領域9の横方向への拡大を、図14(a)〜(c)を参照して説明する。
【0236】
図14(a)で、縦軸は形成された分極反転領域9の幅Wを示し、横軸は櫛形電極2と平面電極3との間に印加される電圧(絶対値)を示す。一方、図14(b)及び図14(c)は、形成される分極反転領域9の形状を示す断面図である。
【0237】
図14(a)には、比較として、SiO2絶縁膜34を櫛形電極2の上に堆積しない場合のデータも示している。それによると、SiO2絶縁膜34を形成しない場合には、形成される分極反転領域9の幅Wは1.7μm以下には小さくならない。また、図14(b)に模式的に示すように、SiO2絶縁膜34を形成しない場合に得られる分極反転領域9は不均一な形状を有しており、その幅Wは±30%以上の範囲で大きくばらつく。さらに、印加電圧が5.5kV未満であると、基板1の内部で分極が反転しない部分が生じたり、小さな領域のみが分極反転したりする現象が観測される。したがって、SiO2絶縁膜34を櫛形電極2の上に堆積しない場合には、基板の広い範囲にわたって分極反転領域9を安定して形成するためには、5.5kV以上の電圧を印加する必要がある。
【0238】
それに対して、本実施形態にしたがって厚さ200nmのSiO2絶縁膜34を櫛形電極2の上に堆積すると、形成される分極反転領域9の幅Wを、櫛形電極のストライプ状電極枝の幅に近い1.5μmまで低減することができる。また、図15(c)に示すように、均一な形状の分極反転領域9が形成されて、その幅のばらつきも±5%以下に抑えられる。さらに、4.9kV以上の電圧を印加すれば、電極全体に対応した広い範囲に渡って、分極反転領域9を形成することができる。
【0239】
このように、絶縁膜34で櫛形電極2を覆うことにより、印加電圧の広い範囲に渡って、分極反転領域9の幅方向の広がりが抑制されて、均一な形状の分極反転領域9を形成することができる。
【0240】
次に、櫛形電極2の上に形成する絶縁膜34に要求される特性を説明する。
【0241】
まず最初に、抵抗率の異なる絶縁膜を堆積して上で形成した分極反転領域の幅をそれぞれ測定した結果に基づいて、絶縁膜34の抵抗率の影響を検討する。その結果、抵抗率が1015Ω・cm以上の絶縁膜を形成すると、形成される分極反転領域9の広がりが1μm程度に抑制されて、また幅のばらつきも±10%程度に低減する。絶縁膜の抵抗率をさらに増加させると、1016Ω・cm以上の絶縁膜に対しては、形成される分極反転領域9の幅の広がりがさらに抑圧され、ばらつきも±5%以内に抑制され、より均一な分極反転領域9が形成される。
【0242】
上記の結果を考慮すると、周期が5μm程度の分極反転領域9は、抵抗率が1015Ω・cm程度の絶縁膜を用いて形成することができるが、周期が4μm以下であるような短周期の分極反転領域9を形成する場合には、抵抗率が1016Ω・cm以上の絶縁膜を用いることが望ましい。
【0243】
次に、櫛形電極2の上にSiO2膜(抵抗率が1017Ω・cm程度である)を異なる厚さで堆積する場合を例にとって、絶縁膜34の厚さと形成される分極反転領域9の幅との関係を説明する。
【0244】
SiO2膜の厚さが20nm以上である場合に、分極反転領域9の幅方向への拡大を抑制する効果が得られる。また、SiO2膜の厚さを100nm以上にすると、分極反転領域9の幅のばらつきは±10%程度に低減される。さらに、SiO2膜の厚さが200nm以上である場合には、分極反転領域9の幅のばらつきは±5%以下に低減され、加えて、その広がりが0.2μm以下に抑えられる。しかし、SiO2膜の厚さを200nm以上にしても、それ以上の改善は認められない。
【0245】
一方、SiO2膜が薄いと、電界印加時の周囲雰囲気である絶縁液(抵抗率:1015Ω・cm)の影響を受けて、分極反転領域9の幅方向の拡大の抑制に対して十分な効果が得られない。
【0246】
上記の説明では、絶縁膜34としてSiO2膜を用いているが、他の材料からなる絶縁膜を用いることができる。例えば、Ta2O5膜をスパッタリング法で200nm堆積した基板において上記と同様に分極反転領域を形成すると、SiO2膜を用いる場合と同様の特性が得られる。しかし、有機ポリマの膜を絶縁膜として用いると、SiO2膜やTa2O5膜の半分程度の抑圧効果しか得られない。
【0247】
また、上記の説明では、絶縁膜34をスパッタリングによって堆積している。スパッタリング法では、堆積されるべき膜の材料がターゲットからスパッタされて基板に付着するときに、大きな運動エネルギーを有している。このため、基板1の表面の自由電荷に与える影響が大きく、分極反転の抑圧効果に優れている。しかし、他の成膜方法、例えば、EB蒸着法、CVD法、イオンビームスパッタリング法、ゾルゲル法等によって、絶縁膜34を堆積してもよい。
【0248】
上記の説明では、基板1の+C面1aに櫛形電極2を形成している。LiNbO3基板やLiTaO3における分極反転領域の形成は、+C面1aにおける分極反転核の形成で始まる。このため、上記のように+C面1aに櫛形電極2を設けることによって、櫛形電極2のパターンを分極反転領域のパターンに正確に転写することができる。これに対して基板1の−C面1bに櫛形電極を形成しても、均一性の高い周期状の分極反転構造は形成されない。
【0249】
本実施形態の上記説明では、基板1としてはLiTaO3基板を用いている。あるいは、KTP(KTiOPO4)基板、KNbO3基板、LiNbO3基板、またはMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3基板やLiNbO3基板を使用することができる。あるいは、LiTaO3とLiNbO3との混晶であるLiNb(1−x)TaXO3基板(0≦x≦1)でも、同様な光波長変換素子が作製できる。特に、上記のうちでLiNbO3基板は、高い非線形光学定数を持つために、高効率の光波長変換素子を製造するには有効である。
【0250】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態における分極反転領域の形成方法を、図15(a)〜(d)を参照して説明する。
【0251】
まず、図15(a)に示すように、厚さが例えば200μmのC板のLiTaO3基板1(結晶のC軸に垂直な面で切り出した基板)の+C面1aに櫛形電極2を、−C面1bに平面電極3を、それぞれ形成する。これらの電極2及び3は、例えば厚さ約60nmのTa膜とすることができる。また、櫛形電極2は、例えば、ストライプ状の電極枝の周期が3.8μmで、各電極枝の幅を1.9μmとする。
【0252】
次に、櫛形電極2の上に厚さ1μmのレジストを堆積して、CHF3ガス雰囲気中の反応性イオンエッチングにより、櫛形電極2で覆われていない基板1の表面をエッチングする。その後にレジストを除去することによって、図15(b)に示すように、櫛形電極2のストライプ状の電極枝の間における基板1の+C面1aに、溝18が形成される。エッチングによる除去深さは、例えば0.1μmにする。
【0253】
続いて、櫛形電極2及ぶ溝18を含めて、基板1の+C面1aを覆うように、厚さ200nmのSiO2からなる絶縁膜34をスパッタリング法により堆積する。その後に、櫛形電極2を接地した上で、平面電極3に負のパルス電圧(典型的には、パルス幅3msで、振幅5.2kVとする)を印加する。放電の発生をさけるため、電圧印加時には、基板1の全体を絶縁液または10−6Torr以下の真空中に設置する。
【0254】
以上の工程により、櫛形電極2の各電極枝の直下のみに分極反転領域9が形成され、電極2のパターンが分極反転構造に完全に転写される。特に、櫛形電極2のストライプ状電極枝の周辺部における基板1の表面をエッチングで除去して溝18を形成することにより、基板1の表面における電荷の移動が低減される。この結果、分極反転領域9の幅方向の拡大が抑制されて、均一な周期状分極反転領域9が形成される。
【0255】
(第9の実施形態)
これまでの各実施形態で説明してきたように、櫛形電極を用いて強誘電体結晶の分極方向に電圧を印加することで、周期状の分極反転領域の形成が可能になる。しかし、結晶によっては、容易に分極反転が形成できない場合や、分極は反転しても短周期の分極反転領域の形成が難しい場合がある。以下に説明する本実施形態では、そのような従来技術では分極反転領域の形成が困難な結晶について、分極反転領域を容易に形成する方法を説明する。
【0256】
強誘電体基板における分極反転を容易にするには、薄い基板を用いて、小さな反転電圧で大きな電界を印加することが考えられる。しかし、薄い基板は十分な強度を有していないので、電極作成プロセスなどの実施が非常に難しくなる。そこで本実施形態では、薄い基板を容易に取り扱うことができるようにするために、図16(a)〜(e)に示す工程によって分極反転領域を基板の中に形成する。
【0257】
まず、図16(a)に示すように、厚さが0.5mmであるMgOドープLiNbO3基板31の+C面31aに、櫛形電極2を形成する。次に、図16(b)に示すように、表面に引出し電極20を形成したLiNbO3基板32の上に、MgOドープLiNbO3基板31を接着する。このとき、LiNbO3基板32の引出し電極20とMgOドープLiNbO3基板31の櫛形電極2とが、電気的に接触するようにする。続いて、そのように接着されている状態のMgOドープLiNbO3基板31を光学研磨して、図16(c)に示すようにその厚さを50μmまで減じる。その後、図16(d)に示すように、MgOドープLiNbO3基板31の研磨面上に、平面電極3を形成する。そして、図16(e)に示すように、LiNbO3基板32の引出し電極20とMgOドープLiNbO3基板31の平面電極3との間にパルス電源5を接続して、パルス電圧を印加する。これによって、MgOドープLiNbO3基板31の内部に短周期で分極反転領域9が形成される。
【0258】
MgOドープLiNbO3基板は、高い非線形光学定数を有し且つ耐光損傷性に優れるため、波長変換素子の材料として有望なものである。しかし、従来技術では周期状の分極反転構造の形成が困難であった。これに対して、以上に説明した本実施形態の方法によれば、MgOドープLiNbO3基板31に周期3μmで分極反転領域9を形成することができる。このようにして周期状の分極反転領域9が形成されたMgOドープLiNbO3基板31を用いることにより、高効率の光波長変換素子の作製が可能になり、高出力のSHG光の発生が可能になる。
【0259】
なお、先に第8の実施形態で説明したように、本実施形態のプロセスにおいても、櫛形電極2をSiO2膜などの絶縁膜で覆うことによって、形成される分極反転領域の周期構造の均一性を増すことができる。
【0260】
また、本実施形態に従って形成される光波長変換素子を焦電センサへ応用する場合には、光学基板として熱伝導性の高い材料を用いれば、焦電センサの応答速度を高めることができる。
【0261】
さらに、上記のようにして形成した分極反転構造を利用して、光導波路型の光波長変換素子を製造することができる。その場合には、図16(a)〜(e)に示した一連の工程を実施する前に、まずMgOドープLiNbO3基板31の+C面31aに光導波路を形成する。
【0262】
光導波路の作製は、例えば以下の工程による。基板31の+C面31aにスパッタリングによってTa膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びドライエッチングによってストライプ状の光導波路のパターンを形成する。その後、230℃のピロ燐酸中で8分間熱処理することによってプロトン交換を行い、プロトン交換導波路を形成する。その後さらに、300℃で10分間の熱処理を行うことによって、光導波路が形成される。その後に、図16(a)〜(e)に示す工程を実施すると、光導波路内に周期状の分極反転領域が形成される。これによって、図17に示すようなストライプ状光導波路33を有する光波長変換素子900が形成できる。
【0263】
光波長変換素子900では、光導波路33の入射部15から素子900の内部に入射した基本波23は、光導波路33の中に限定されて伝搬する。その過程で、基本波23は第2高調波24に変換されて、出射部16から外部に取り出される。このとき、基本波23は光導波路33の中に限定されて伝搬するので、素子900の内部における基本波23のパワー密度が増加する。また、伝搬する基本波23と分極反転構造9との相互作用長も増加する。この結果、高効率の波長変換素子900が実現される。
【0264】
光導波路33の上にLiNbO3基板31を接着することで、光導波路33の上に塵等が堆積して導波損失が生じることが防止される。また、光導波路33の上に、基板の屈折率に近い値の屈折率を有する材料を堆積することにより、光導波路33の屈折率分布を対称構造にすることができる。これによって、光導波路33を伝搬する光の電界分布が対称構造となり、基本波23の結合効率が高くなる。なお、図17の光波長変換素子900の櫛形電極は、光導波路33の損失を低減するために透明電極で形成しなければならない。
【0265】
以上の本実施形態の説明では、強誘電体基板31としてMgOドープLiNbO3基板を用いている。あるいは、その他に、MgOドープLiTaO3基板、NdドープLiNbO3基板、NdドープLiNbO3基板、KTP基板、KNbO3基板、NdとMgOとをドープしたLiNbO3基板、あるいはNdとMgOとをドープしたLiTaO3基板などであってもよい。
【0266】
このうち、Ndをドープした結晶からなる基板はレーザ発振が可能であるので、レーザ発振による基本波の発生とその波長変換による第2高調波の発生とが同時に行える。そのため、高効率で安定した動作特性を有する短波長光源が作製できる。
【0267】
また、KNbO3基板は、高い非線形光学定数を有するとともに耐光損傷性にも優れているので、高出力の光波長変換素子が形成できる。
【0268】
一方、本実施形態の上記説明では、強誘電体基板31に張り付ける基板32としてLiNbO3基板を用いているが、光学的に平板な基板であれば、他の材料からなる基板も使用できる。特に、強誘電体基板31と等しい熱膨張係数を有する材料からなる基板32を用いることが、強誘電体基板31に対する熱的な歪みの印加を低減できるという点で好ましい。
【0269】
(第10の実施形態)
液相結晶成長、気相結晶成長、レーザアブレージョン等の手法を用いれば、強誘電体材料の薄膜結晶を形成できる。このような強誘電体薄膜結晶を用いれば、周期状の分極反転領域の形成が困難な材料に対しても、分極反転領域を形成することができる。さらに、薄膜を光導波路として用いることで、高効率な光導波路型の光波長変換素子が構成できる。
【0270】
以下では、本発明の第10の実施形態として、結晶成長により形成した強誘電体薄膜30に分極反転領域9を形成する方法を説明する。
【0271】
MgOをドープしたLiNbO3結晶は、耐光損傷性に優れた高非線形材料であるが、従来技術によれば、周期状の分極反転領域をその内部に形成することが困難である。そこで、本実施形態では、まずLiTaO3基板31の上にMgOドープLiNbO3層30を結晶成長させた上で、その成長したMgOドープLiNbO3層30の内部に周期状の分極反転領域9を形成する。
【0272】
本実施形態における分極反転領域9の形成方法を、図18(a)〜(c)を参照して説明する。
【0273】
まず、図18(a)に示すように、C板のLiTaO3基板32(結晶のC軸に垂直な面で切り出した基板)の+C面32aに、MgOを5mol%ドープした厚さ2μmのLiNbO3層30を液相成長により堆積する。次に、図18(b)に示すように、成長させたLiNbO3層30の上に櫛形電極2を、LiTaO3基板32の−C面32bの上に平面電極3を、それぞれ形成する。これらの電極2及び3は、例えば厚さ約60nmのTa膜とすることができる。また、櫛形電極2は、例えばストライプ状の電極枝の周期が3.8μmで、各電極枝の幅を1.9μmとする。続いて、櫛形電極2と平面電極3との間に、パルス電源5によってパルス電圧を印加する。これによって、周期状の分極反転領域9が、MgOドープLiNbO3層30の内部に形成される。
【0274】
結晶成長法によって形成した強誘電体膜は、不純物濃度が低く、かつ結晶構造を変えることができるため、高効率の光波長変換素子が形成できる。さらに、薄い膜が容易に形成できるため、均一性の高い周期状の分極反転構造が容易に形成できる。
【0275】
なお、先に第8の実施形態で説明したように、本実施形態のプロセスにおいても、櫛形電極2をSiO2などの絶縁膜で覆うことによって、形成される分極反転領域9の周期構造の均一性を増すことができる。
【0276】
さらに、本実施形態にしたがって形成した周期状の分極反転領域9を用いて、リッジ型光導波路30aを有する光波長変換素子1000を形成する方法を、図19(a)及び(b)を参照して説明する。
【0277】
まず、図18(a)〜(c)の工程によって周期状の分極反転領域9がその内部に形成されたMgOドープLiNbO3層30上に、図19(a)に示すようなストライプ状のTi膜29を形成する。次に、Ti膜29をマスクとして利用して、ECRエッチング装置でMgOドープLiNbO3層30をエッチングする。その後にTi膜29を除去することによって、図19(b)に示すように、MgOドープLiNbO3層30にストライプ部分30aが形成される。このTi膜29に覆われていてエッチングされずに残ったMgOドープLiNbO3層30のストライプ部分30aは、例えば、幅6μmで高さ0.3μmのサイズを有する。また、ストライプ部分30a以外のMgOドープLiNbO3層30の厚さは、エッチングによって典型的には10μmまで薄くなる。
【0278】
MgOをドープしたLiNbO3層30の屈折率は、LiTaO3基板32の屈折率より小さいために、上記のようにして形成されたMgOドープLiNbO3層30のストライプ部分30aは、光導波路30aとして機能する。したがって、図19(a)及び(b)に示す工程によって、図7(a)〜(c)の工程で、周期状の分極反転領域9を有する光導波路30aが形成される。
【0279】
さらに、形成された光導波路30aの両端面を光学研磨することで、光波長変換素子1000が形成される。MgOドープLiNbO3は高い非線形光学定数を有する材料であるために、このようにして形成された光波長変換素子1000は、高効率の波長変換が可能になる。さらに、MgOドープLiNbO3は耐光損傷性に優れる材料であるので、高出力の波長変換が可能になる。
【0280】
上記の本実施形態の説明では、液層成長によって形成した強誘電体薄膜30を用いている。あるいは、強誘電体薄膜30の成長は、気相成長またはレーザアブレージョン等の他の成長方法で行うこともできる。
【0281】
特に、強誘電体薄膜30の形成にレーザアブレージョンを利用すると、基板32の上に強誘電体結晶の歪超格子の薄膜を形成することができる。超格子薄膜は、薄膜を形成している結晶以上に大きな歪を有するため、非線形定数の大きな膜となる。本実施形態のプロセスにおいても、レーザアブレージョンによって強誘電体薄膜30を堆積した上で周期状の分極反転領域9を形成することで、高効率の光波長変換素子の形成が可能になる。
【0282】
さらに、強誘電体薄膜30を結晶成長以外の方法によって形成してもよい。例えば、強誘電体の結晶を光学結晶の基板の上に接合し、その後に強誘電体結晶を研磨およびエッチングすることによって、薄膜結晶を形成することができる。このような結晶の張り合わせによって形成した薄膜に対して、図18(a)〜(c)の工程で周期状の分極反転領域を形成し、さらに図19(a)及び図19(b)の工程で光導波路を形成する。このような結晶の張り合わせを利用すれば、結晶成長が難しい材料、例えば、KNbO3、KTP、BBO等の非線形材料においても周期状の分極反転構造を形成することができる。
【0283】
(第11の実施形態)
本実施形態では、第8の実施形態で説明した工程によって形成した分極反転領域を用いた光波長変換素子の製造方法を説明する。形成される光波長変換素子の構成を図20に示す。
【0284】
高性能の光波長変換素子を実現するためには、長い距離に渡り均一な構造を有する短周期の周期状分極反転領域を形成する必要がある。例えば、LiNbO3、LiTaO3、KTP等の結晶に形成した分極反転構造を利用して、波長変換により波長400nm帯の青色光を発生するためには、周期が3〜4μmである分極反転領域を、長さ10mm程度に渡り均一に形成する必要がある。すでに述べたように、短周期の分極反転領域を形成するには、分極反転領域の電極幅方向への広がりを極力抑える必要があり、均一な周期構造を形成するためには、分極反転形状の均一性が要求される。上記の点を考慮すれば、第8の実施形態で示した製造方法によって得られる分極反転領域は、高効率の光波長変換素子の製造に非常に有効である。
【0285】
光波長変換素子の製造方法は、図15(a)〜(d)を参照して説明した方法と実質的に同様である。
【0286】
すなわち、厚さが0.2mmであるLiTaO3基板1の+C1a面に櫛形電極2を、−C面1bに平面電極3を形成する。櫛形電極2の周期は3.8μmとして、櫛形電極2を構成するストライプ電極枝の幅はそれぞれ1.9μmとする。一方、平面電極3のサイズは3mm×10mmとする。櫛形電極2の形成後に、各ストライプ電極枝の周辺の基板1の表面(+C面1a)を100nmエッチングして、溝18を形成する。その後に、+C面1aの櫛形電極2の上に、スパッタリング法で厚さ200nmのSiO2層34を堆積する。その後に、電極2及び3の間にパルス電圧を印加する。印加するパルス電圧は、例えば、パルス幅が約3msで、ピーク値が5.1kVである。
【0287】
以上のような工程によって、基板1の内部に、幅1.9μmでデューティ比が50%である周期状の分極反転領域9が、長さ10mmに渡り均一に形成される。特に、形成される分極反転領域9は、基板1の底、すなわち−C面1bまで達する。
【0288】
その後に、図20に示すように、基板1の入射面25及び出射面26を光学研磨して、波長850nmの基本波23に対する反射防止膜19として機能する厚さ145nmのSiO2膜19を堆積する。これによって、図20に示す光波長変換素子1100が構成される。
【0289】
作製した光波長変換素子1100に、基本波23としてTi:Al2O3レーザの光を入射して、そのSHG特性を測定した。具体的には、レーザ21から出た光(基本波)23を、集光光学系22により光波長変換素子1100の入射面25に集光して入射する。入射した基本波23は、素子1100の内部を伝搬する際に波長変換されて、基本波23の半分の波長を有する第2高調波(SHG光)24として出射面26から出射する。基本波23から第2高調波24への変換効率は、集光スポット径がφ37μmの場合に最大になる。
【0290】
図21には、入力する基本波23の波長(位相整合波長)と出力される第2高調波24のパワー(SHG出力)との関係を示す。基本波23の集光スポット径は、上記のφ37μm一定としている。図21に示されるように、位相整合波長が850nmであるときにSHG出力は最大になり、このときの波長許容度の半値全幅は0.12nmである。この値は、理論値0.1nmに非常に近い値であり、周期的な分極反転構造が、素子長10mmに渡り均一に形成されていることを意味している。
【0291】
次に、入力される基本波23のパワーとSHG出力との関係を、図22に示す。基本波入力パワーが300mWのとき、4.2mWのSHG出力が得られている。また、このときの変換効率は1.4%である。この値は理論値と等しく、形成された分極反転構造が理想的な形状を有していることを示している。
【0292】
また、基板1の表面近傍における分極反転領域9の間に形成した溝18は、分極反転領域9の劣化を防止する機能を発揮する。電界印加によって分極反転を生じさせる場合、深い分極反転領域9を形成できる一方で、基板1の結晶に大きな歪が与えられる。そのような歪は、形成された分極反転領域9の経時変化を起こす。例えば、数週間から数カ月で、分極反転領域9の形状が徐々に変化して、光波長変換素子900の動作特性が変化することがある。これに対して、分極反転領域9の間に溝18を形成すると、分極反転領域9のそのような形状変化の発生が防止されて、動作特性の経時変化の無い安定な光波長変換素子を構成できる。
【0293】
光波長変換素子を形成する際に、櫛形電極2に含まれるストライプ状電極枝の幅Wは、櫛形電極2の周期ΛとW≦Λ/2の関係にあるのが好ましい。その理由を以下に説明する。
【0294】
電極全体に渡り均一に分極反転が形成される印加電圧条件下では、ストライプ状電極枝の下に形成される分極反転領域の幅Wdは、電極枝の幅Wより僅かにひろがる。一方、光波長変換素子の効率は、周期Λと分極反転領域の幅Wdとの関係がΛ/2=Wdのときに最大になる。このため、Wdの値をΛ/2にするには、分極反転領域の幅方向の広がりを考慮して、電極の幅WをΛ/2の値に等しくするか、またはそれより小さく設定することが好ましい。
【0295】
さらに、本実施形態に従って、共振器型の光波長変換素子を形成することもできる。その場合には、図20の構成において、周期状分極反転領域9を形成したLiTaO3基板1の両端面を研磨した後に、反射防止膜19の代わりに、波長が800nmの基本波23を99%以上反射する反射膜14を堆積する。このような光波長変換素子に、基本波23が入射すると、基板1の両端面に形成した反射膜14で多重反射して、基板1の内部で共振する。すなわち、光波長変換素子は共振器として機能して、その内部パワーの増大により、入射された基本波23が高効率で第2高調波24に変換される。
【0296】
このように光波長変換素子を共振器として機能させるためには、多重反射する基本波23のビーム径より深い位置に至るまで、典型的には数10μm以上の深さまで、分極反転領域9が均一に形成されていなければならない。電界印加によれば、数100μm程度の深さまで均一な周期状分極反転領域9が形成されるので、高効率の共振器型光波長変換素子を作製することができる。
【0297】
(第12の実施形態)
本実施形態では、高いパワー密度と長い相互作用長とを有する高効率の光波長変換素子の製造方法を説明する。具体的には、形成された均一で短周期の分極反転領域の内部に、光導波路を形成する。具体的には、まず、これまでに示した実施形態で説明した方法によって、LiTaO3基板に周期状の分極反転領域を形成する。その後に、プロトン交換処理によって光導波路を形成する。
【0298】
このときの形成方法としては、例えば、以下のプロセスが考えられる。周期状の分極反転領域が形成されている基板の+C面の上に、形成すべき光導波路のパターンに対応したTaマスク層を形成し、260℃のピロ燐酸中での16分間の熱処理、及び空気中での420℃における5分間の熱処理によって、プロトン交換導波路を形成する。
【0299】
しかし、以上のプロセスにより形成された光導波路の両端面を光学研磨して、光導波路に基本波を入力して出力されるSHG光の出力特性を測定すると、理論値の約半分の変換効率しか得られない。この低い変換効率がもたらされる原因に関して、発明者らによる検討によって、光導波路の内部で周期状分極反転領域の一部が消滅していることが発見された。即ち、光導波路の作製プロセスにより、形成されていた分極反転領域が表面から深さ約0.6μm迄の範囲で消滅するために、変換効率が低下していることが明らかになった。また、LiNbO3基板、或いはLiNbO3とLiTaO3との混晶の基板でも、同様に、分極反転領域の表面部分からの後退が観測される。
【0300】
そこで、光導波路の作製プロセスによる分極反転領域への影響を防止するために、本実施形態では、図23(a)〜(c)に示す工程で光導波路11を作製する。
【0301】
図23(a)に示すように、周期状の分極反転領域(不図示)が形成されている基板1の+C面1aの上に、形成すべき光導波路11のパターンに対応したTaマスク層10を形成する。次に、260℃のピロ燐酸中での20分間の熱処理、及び空気中での420℃における5分間の熱処理によって、図23(b)に示すように、Taマスク層10の開口部に相当する基板1の部分にプロトン交換導波路11を形成する。その後に、CHF3ガス中での反応性イオンエッチングにより、Taマスク層10を除去するとともに、基板1の表面をさらに0.5μmエッチングして除去する。この際に、プロトン交換光導波路11の表面部分も同様にエッチングで除去することによって、光導波路11の表面近傍に存在する周期状分極反転領域の劣化部分を除去する。
【0302】
以上のプロセスにより形成された光導波路11の両端面を光学研磨して、光導波路に基本波を入力して出力されるSHG光の出力特性を測定すると、例えば、100mWの基本波入力に対して20mWの第2高調波出力が得られた。このときの変換効率は理論値に等しい値であり、本実施形態に基づくプロセスによって、高効率の光波長変換素子が得られている。
【0303】
なお、本実施形態に関する上記の説明では、光導波路11を基板1の+C面1aに形成している。しかし、分極反転領域は基板1の裏面、すなわち−C面1bに達するまで形成されているので、光導波路11を基板1の−C面1bに形成しても、同様の性能を有する光波長変換素子を製造することができる。そのように−C面1bに光導波路11を形成する場合、−C面1bには平面電極が形成されているのみであって櫛形電極のパターンは形成されていないので、面の荒れが少ない。そのため、導波損失の少ない導波路が作製でき、効率の高い光波長変換素子の作製が可能である。
【0304】
光導波路としては、上述のプロトン交換処理によって形成した導波路に代わって、Ti拡散導波路、Nb拡散導波路、イオン注入導波路など他の光導波路を用いることができる。
【0305】
このうち、拡散処理を利用して光導波路を作製するためには、拡散温度を1000℃以上に設定する必要がある。しかし、LiTaO3のキュリー温度は600℃、LiNbO3のキュリー温度は1000℃であって、いずれも拡散温度と同等かそれ以下である。このため、分極反転領域の形成後に従来技術に従って拡散処理によって光導波路を形成すると、形成されていた分極反転領域がすべて消滅してしまう。それに対して、光導波路の形成後に分極反転領域を形成することで、拡散で形成した光導波路の内部に周期状の分極反転領域を形成することができ、高効率の光波長変換素子の製造が可能になる。
【0306】
プロトン交換処理は、上述のピロ燐酸を用いる処理の他に、オルト燐酸、安息香酸、硫酸などを用いることができる。
【0307】
また、プロトン交換処理のためのマスクはTaマスクに限られるものではなく、Ta2O5、Pt、Auなど耐酸性を有する材料からなるマスクであればよい。
【0308】
(第13の実施形態)
本発明の第13の実施形態として、図24(a)及び(b)を参照して、改変された周期型分極反転構造を有するバルク型光波長変換素子1300を説明する。
【0309】
本発明にしたがって周期型分極反転領域が形成された基板をバルクとして利用するバルク型の光波長変換素子では、入射する基本波の光軸に対して素子をある角度で傾けることによって、素子の内部を進行する光に対する分極反転周期を変えることができる。この点を利用すれば、入射する基本波の発振波長の変動や環境温度の変化による位相整合波長の変動を、調整することができる。
【0310】
しかし、このような素子の角度の調節で可変できる分極反転構造の周期範囲は、基板の屈折率に依存するスネルの法則によって規定される。したがって、周期を大きく変化させることはできない。
【0311】
例えば、LiTaO3基板の内部に、その端面に平行に分極反転領域が形成されている光波長変換素子の場合、基板を入射する基本波の光軸に対して12度傾ける場合、基本波が素子の入射面に垂直に入射する場合に比べて、分極反転構造の周期は1.02倍になるにすぎない。
【0312】
そこで、本実施形態の光波長変換素子1300では、図24(a)に示すように、基板1の内部に、その入射面15及び出射面16、あるいは少なくとも入射面15に対してある角度θで傾いた分極反転領域9を形成する。そのためには、これまでに説明してきた実施形態における分極反転領域9の製造工程において、基板1の+C面1aの上に櫛形電極2を形成する際に、基板1の端面に対して角度θだけ傾けて形成すればよい。形成工程の他の特徴は実質的に同じであるので、ここでは説明は省略する。
【0313】
このように、分極反転領域9が基板1の入射面15及び出射面16、あるいは少なくとも入射面15に対してある角度θで傾けて設けられている光波長変換素子1300では、入射する基本波23の光軸に対して素子1300を傾けることによって素子1300の内部を進行する光に対する分極反転周期を変えて位相整合範囲を調整する際に、より広い範囲に渡る調整が可能になる。
【0314】
例えば、LiTaO3基板1の内部に、その入射面15に対して45度傾いた方向に分極反転領域9が形成されている光波長変換素子1300の場合、レーザ21から発せられて集光光学系22を介して入射する基本波23の光軸に対して基板1を12度傾けると、基本波23が素子1300の入射面15に垂直に入射する場合に比べて、分極反転構造の周期は1.12倍になる。このように、従来技術による素子の場合に比べて、角度調節の範囲が5倍以上に増大する。この結果、位相整合波長の許容度が拡大されて、光波長変換素子1300をより簡便に使用できるようになる。
【0315】
さらに、入射ビームに対して分極反転領域9を傾けて作製することにより、位相整合温度の許容度を拡大することが可能になる。これは、周期状の分極反転構造を集光ビーム(基本波)が斜めに横切ることによって、集光ビームの光軸に対して角度を有する成分に対する位相整合が、広い範囲で生じるために起こるからである。
【0316】
なお、図24(a)では、分極反転領域9は、基板1の入射面15及び出射面16の両方に対して傾いて形成されているが、出射面16と分極反転領域9とは平行になるように形成してもよい。
【0317】
次に、バルク型の光波長変換素子1300aにおいて、出射面16から出てくる基本波23aと高調波24とを分離する方法を、図24(b)を参照して説明する。
【0318】
光波長変換素子では、レーザ21から集光光学系22を経て素子1300aの入射面15から入射された基本波23は、素子1300aの内部を伝搬しながら高調波24に変換される。その後に出射面16から変換された高調波24が出射されるが、このとき、変換されなかった基本波成分23aも、同時に出射面16から外部に出てくる。したがって、この変換されなかった基本波成分23aを、変換された高調波24から分離する必要が生じる。
【0319】
このとき、図24(b)に示すように、内部に周期状の分極反転領域9が形成されているバルク型光波長変換素子1300aの出射面16を、入射する基本波23の光軸に対して傾けると、基本波と高調波との波長分散によってそれぞれが感じる屈折率が異なって、基本波23aと高調波24とを異なった出射角度(すなわちθ1とθ2)で出射させて両者を分離することができる。具体的には、素子1300aの内部では基本波が感じる屈折率nfと高調波が感じる屈折率nsとが異なるので、スネルの法則に基づいて、それぞれに対する出射角度が異なることになる。
【0320】
(第14の実施形態)
本実施形態では、光導波路の形成プロセスが周期状分極反転領域に及ぼす影響に関する本願発明者らの検討結果をさらに説明するとともに、その検討結果に基づいたより好ましい光導波路の形成プロセスを含む光波長変換素子の製造方法を説明する。
【0321】
周期状の分極反転領域がすでに形成されているLiTaO3基板の+C面にプロトン交換処理を施して、光導波路を形成するプロセスを考える。例えば、そのようなプロトン交換処理としては、基板を温度260℃のピロ燐酸に浸して16分間の熱処理を行い、その後にアニール処理として、空気中で温度420℃で5分間の熱処理を行う。このプロセスは、LiTaO3基板のキュリー温度(約600℃)よりも低い温度で行われる低温プロセスである。
【0322】
しかし、上記プロセスによって光導波路を形成すると、形成されていた周期状の分極反転領域が、基板の+C面から深さ方向に向かって消滅することがある。分極反転領域が消滅する深さは、アニール時間とともにある程度まで増加した後に一定の値を保つようになるが、アニール条件が一定であれば、主として図25に示すようにプロトン交換処理の時間に依存する。したがって、プロトン交換時のプロトンの熱拡散によって、形成された分極反転領域が消滅すると考えられる。アニール温度を300℃まで下げても、依然として分極反転領域の消滅が発生することがあり、高効率の波長変換を実現する光波長変換素子を安定して製造できないという問題が生じる。
【0323】
また、上記の分極反転領域の消滅は、基板の+C面のみで発生する。−C面では、光導波路の形成にともなう分極反転領域の消滅は認められない。
【0324】
本実施形態では、光導波路の製造プロセスの実施にともなう分極反転領域の消滅現象の影響を防ぐために、分極反転領域の形成に先立ってプロトン交換処理による光導波路の形成を行って、光波長変換素子を製造する。
【0325】
図26(a)〜(d)には、本実施形態にしたがって、ストライプ状の埋込型光導波路11を有する光波長変換素子1410を製造する工程を模式的に示す斜視図である。
【0326】
まず、光導波路のパターンに対応する開口部を有するTaマスク層(不図示)を基板1の表面に堆積し、ピロ燐酸中での熱処理によってプロトン交換処理を行う。これによって、図26(a)に示すようなストライプ状の埋込型プロトン交換光導波路11を形成する。その後にアニール処理を行って、プロトン交換を施した箇所(光導波路11)とそれ以外の箇所との間における分極反転特性の差を低減する。その後に、図26(b)に示すように、基板1の+C面及び−C面に櫛形電極2及び平面電極3をそれぞれ形成する。そして、これらの電極2及び3を介して基板1に所定の電界を印加して、図26(c)に示すような周期状の分極反転領域9を基板1の内部に形成する。さらに、櫛形電極2及び平面電極3を除去すれば、図26(d)に示す、ストライプ状の埋込型光導波路11を有する光波長変換素子1410が得られる。
【0327】
図27(a)〜(d)には、本実施形態にしたがって、リッジ形の光導波路17aを有する光波長変換素子1420を製造する工程を模式的に示す斜視図である。
【0328】
まず、基板1の+C面に対してプロトン交換処理とアニール処理とを施して、図27(a)に示すプロトン交換層(スラブ型光導波路)17を形成する。その後に、図27(b)に示すように、プロトン交換層17及び基板1の裏面(−C面)に櫛形電極2及び平面電極3をそれぞれ形成する。そして、これらの電極2及び3を介して基板1に所定の電界を印加して、図27(c)に示すような周期状の分極反転領域9を基板1の内部に形成する。その後に、櫛形電極2及び平面電極3を除去するとともに、プロトン交換層17をストライプ状に加工してリッジ型の光導波路17aを形成する。これによって、図27(d)に示す、ストライプ状のリッジ型光導波路17aを有する光波長変換素子1420が得られる。
【0329】
埋込型光導波路11では、プロトン交換を施した箇所(光導波路11)とそれ以外の箇所との間にプロトン分布の僅かな差が存在する。これに対してリッジ型光導波路17aを形成する上記プロセスでは、基板1の表面全体にわたってプロトン交換層17が形成されるために、分極反転領域の形成のための電界印加時に電極面内におけるプロトン分布の不均一さが存在しない。これより、面内分布が均一な分極反転領域を形成することができる。さらに、光導波路17aの側面にもプロトン交換層17が存在するので、機械的破壊に対する強度が向上するとともに、耐光損傷性にも優れている。この結果、埋込型光導波路11の場合に比べて、リッジ型光導波路17aは2倍以上の耐光損傷強度を有する。
【0330】
図28(a)〜(d)には、プロトン交換層(スラブ型光導波路)17の表面にさらにストライプ状の高屈折率層44が装荷型の光導波路44として設けられている光波長変換素子1430を、本実施形態にしたがって製造する工程を模式的に示す斜視図である。
【0331】
まず、基板1の+C面に対してプロトン交換処理とアニール処理とを施して、図28(a)に示すプロトン交換層(スラブ型光導波路)17を形成する。その後に、図28(b)に示すように、プロトン交換層17及び基板1の裏面(−C面)に櫛形電極2及び平面電極3をそれぞれ形成する。そして、これらの電極2及び3を介して基板1に所定の電界を印加して、図28(c)に示すような周期状の分極反転領域9を基板1の内部に形成する。その後に、櫛形電極2及び平面電極3を除去するとともに、プロトン交換層17の上にストライプ状の高屈折率層44を形成する。これによって、図28(d)に示す、ストライプ状光導波路44を有する光波長変換素子1430が得られる。
【0332】
光波長変換素子1430における光導波路44は、リッジ型光導波路17aよりもさらに強い閉じ込め特性を示すので、高効率の光波長変換素子が得られる。
【0333】
以上のように、分極反転領域の形成に先立って光導波路を形成することによって、周期状分極反転構造の消滅を防ぐことができる。これによって、耐光損傷性に優れ、高効率の波長変換を実現する光波長変換素子が得られる。
【0334】
(第15の実施形態)
図29(a)〜(d)を参照して、分極の前面反転及び一部領域での再反転を利用した本実施形態における分極反転領域の形成方法を説明する。
【0335】
図29(a)に示すように、LiTaO3基板1の+C面1a及び−C面1bに、それぞれ平面電極43及び3を形成する。このとき、基板1の内部の分極は、図29(a)に矢印41aで示すように、図面中で上方向を向いている。
【0336】
次に、室温で基板1に電極3及び43を介して電界を印加して、基板1の内部のほぼ全域の分極を反転させる。これによって、図29(b)に示すように、矢印41bで示す図面中で下向きの分極方向を有する分極反転領域41が形成される。
【0337】
その後、基板1の+C面1aの上の平面電極43を除去して、その代わりに、図29(c)に示すように櫛形電極2を形成する。そして、櫛形電極2と平面電極3に電圧を印加して基板1に所定の電界を印加することによって、櫛形電極2の各ストライプ状電極枝の直下の領域49の分極を再反転させる。これによって、図29(d)に示すように、矢印41aで示す方向の分極方向を有する領域49と、矢印41bで示す逆向きの分極方向を有する領域41とが、周期的に交互に配置された構造を形成する。
【0338】
以上の方法によれば、基板1の内部のほぼ全域で分極を一旦反転させることによって、−C面1bの近傍においても均一な周期状の分極反転構造が形成される。特に、−C面1bでは、プロトン交換処理とアニール処理とを用いて光導波路を形成する際の分極反転領域の消滅が発生しない。したがって、本実施形態にしたがって周期状の分極反転構造を形成した後に、−C面の上に光導波路を形成することによって、高効率の光波長変換素子を実現することができる。
【0339】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基板の+C面及び−C面にそれぞれ櫛形電極及び平面電極を形成し、両電極を介して、パルス電界を重畳した直流電界を基板に印加する。これによって、均一な強度分布を有する電界を基板に印加することが可能になり、均一な周期構造を有する分極反転領域を形成することができる。また、形成された周期状分極反転領域の上にさらに光導波路を形成する、あるいは形成された周期状分極反転領域をそのままバルクとして用いることにより、高効率の光波長変換素子が製造される。
【0340】
短周期の分極反転領域を形成するには、分極反転領域が櫛形電極直下から横方向に拡大することを抑制する必要がある。これに対しては、基板表面における櫛形電極のストライプ状電極枝の間隙部分にプロトン交換処理を施して、その部分の強誘電性を劣化させることで、分極反転領域の横方向への拡大が抑制される。これによって、分極反転領域が短周期で形成される。これにより、高効率の光波長変換素子が製造される。
【0341】
あるいは、強誘電体結晶の表面と裏面とに絶縁体膜で覆われた櫛形電極及び平面電極をそれぞれ形成して、両電極間にパルス電界を印加することで、基板表面における自由電荷の移動を抑制して、均一な強度分布を有する電界を結晶に印加することができる。これにより、均一な周期構造を有する分極反転領域が形成される。
【0342】
また、櫛形電極のそれぞれのストライプ状電極枝の間の結晶表面を削って溝を形成し、その後に結晶表面に絶縁膜を形成して電界を印加することで、均一な周期構造を有する分極反転領域が形成できる。
【0343】
また、形成した周期状分極反転領域に光導波路を形成することにより、高効率の光波長変換素子の製造が可能になる。
【0344】
短周期の分極反転領域を形成するには、分極反転領域が櫛形電極直下から横方向に拡大することを抑制する必要がある。このとき、LiTaO3、LiNbO3等の強誘電体基板の表面自由電荷は、電界印加時に結晶表面を移動し、電極周辺部における電界分布の不均一性を生じる。このような電界分布の不均一性が分極反転領域の横方向拡大を促進することが、発明者らの検討によって発見された。そこで、このような表面自由電荷の移動を抑圧するため、分極反転核が生じる表面に形成する櫛形電極全体を絶縁体膜で覆うことによって、分極反転領域の横方向への拡大が抑制される。これによって、分極反転領域が短周期で形成される。これにより、高効率の光波長変換素子が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す斜視図
(b)分極反転領域の形成のために基板に印加される電界強度の経時変化を示す模式的なグラフ
【図2】(a)従来の方法における基板への印加電圧波形
(b)それにともなって流れる反転電流波形
(c)本発明における基板への印加電圧波形
(d)それにともなって流れる反転電流波形
(e)本発明における他の印加電圧波形の例
【図3】パルス印加電圧の変化率と再反転電流が流れる電圧値との関係を示すグラフ
【図4】(a)基板に印加する直流電界の強度と分極反転領域の形成が可能な基板の厚さとの関係を示すグラフ
(b)基板に印加する直流電界の強度と分極反転領域の幅との関係を示すグラフ
【図5】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図6】図5の工程で製造される光波長変換素子の斜視図
【図7】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図8】(a)櫛形電極と分極反転領域との位置的関係を示す断面図
(b)印加電圧と分極反転領域の幅との関係を示すグラフ
【図9】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図10】アニール処理温度と分極反転領域の形状との関係を示す断面図
【図11】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図12】本発明のある実施形態における光波長変換素子を示す斜視図
【図13】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図14】(a)印加電圧と分極反転領域の幅との関係を示すグラフ
(b)形成される分極反転領域の形状を模式的に示す断面図
(c)形成される分極反転領域の形状を模式的に示す断面図
【図15】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図16】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図17】図16の工程によって得られた分極反転領域を利用して製造される光波長反転素子の斜視図
【図18】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す断面図
【図19】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図20】本発明のある実施形態における光波長変換素子を示す斜視図
【図21】本発明の光波長変換素子における入力される基本波と出力される第2高調波のパワーとの関係を示すグラフ
【図22】本発明の光波長変換素子における入力される基本波のパワーと出力される第2高調波のパワーとの関係を示すグラフ
【図23】本発明のある実施形態における光導波路の形成方法を示す断面図
【図24】(a)本発明のある実施形態における光波長変換素子を示す斜視図
(b)変換された高調波と変換されなかった基本波との分離方法を説明する断面図
【図25】光導波路の形成のために行われるプロトン交換の処理時間と分極反転が消滅する深さとの関係を示すグラフ
【図26】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図27】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図28】本発明のある実施形態における光波長変換素子の形成工程を示す斜視図
【図29】本発明のある実施形態における分極反転領域の形成方法を示す模式的な断面図
【図30】従来の方法における分極反転領域の形成方法を示す模式的な斜視図
【符号の説明】
1、32、55 基板
2、51 櫛形電極
3、52 平面電極
4 直流電源
5 パルス電源
7、17 プロトン交換領域
8 マイクロドメイン
9 分極反転領域
10 Taマスク層
11、33、44 光導波路
12 レジスト
14 反射膜
15 入射部
16 出射部
18 溝
19 反射防止膜
20 引き出し電極
21 レーザ
22 集光光学系
23 基本波
24 第2高調波
25 入射端面
26 出射端面
29 Ti膜
30 MgOドープLiNbO3薄膜
31 MgOドープLiNbO3基板
34 絶縁膜
Claims (5)
- 光学基板と、
前記光学基板の上に接着または接合された強誘電体薄膜と
を備え、
前記強誘電体薄膜の内部には、分極反転領域が周期状に形成されており、
前記強誘電体薄膜自体によって光導波路が形成されており、
前記強誘電体薄膜は、表面にリッジ加工部を備えている光波長変換素子。 - 前記強誘電体薄膜は、強誘電体結晶を前記光学基板の上に接合または接着した後に、前記強誘電体結晶を研磨およびエッチングすることによって形成されている、請求項1に記載の光波長変換素子。
- 前記光学基板と前記強誘電体薄膜は、略等しい熱膨張係数を有する材料からなる、請求項1記載の光波長変換素子。
- 前記光導波路が薄膜結晶からなる、請求項1記載の光波長変換素子。
- 前記強誘電体薄膜は、MgOドープLiNbO3、KTP、KNbO3、BBOのいずれかの非線形光学結晶からなる、請求項1に記載の光波長変換素子。
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