JP4000675B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、いわゆるバイワイヤー方式の車両用ブレーキ装置(以下、電気駆動ブレーキ装置と称す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気駆動ブレーキ装置は、ブレーキ操作力又はブレーキ操作量を検出するセンサの出力に基づいてその出力に応じた制動力を生じるように電子制御装置によって電動アクチュエータを制御し、そのアクチュエータで摩擦材をロータに押圧して車輪の制動を行うようになっている。
【0003】
この電動駆動ブレーキ装置の従来例としては、例えば、特開平9−137841号公報に示されるものがある。同公報の装置は、非制動時に摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスを、以下の方法、即ち、摩擦材の押付け圧を検出する押圧センサ(同公報では推力センサと称している)と摩擦材の位置を検出するセンサを設け、押圧センサの出力がゼロになった位置を原点にし、位置センサの出力に基づいてクリアランスが規定値になるまで電動アクチュエータの推進体を後退させる方法で確保するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のクリアランスが小さ過ぎると、ロータの振れによって非制動時に摩擦材がロータに接触し、いわゆる引きずりが発生してその引きずりが車両の燃費の低下、摩擦材の寿命低下、ブレーキジャダー等の原因となる。
【0005】
逆に、かかるクリアランスが大き過ぎると、ブレーキペダル踏込みから制動力が発生するまでの時間が長くなり、制動の応答遅れ等の問題が起こる。
【0006】
従って、クリアランスの設定に当っては十分な配慮がなされるが、特開平9−137841号公報の装置のように、押圧センサの出力がゼロになる位置をクリアランス制御の原点にする方法では、温度変化等による影響を受けて原点が変動し、それが原因でクリアランスがばらつく欠点がある。
【0007】
即ち、図4に示すように、本来ならセンサ出力がゼロのときにクリアランスはゼロでなければならない(同図の実線)。ところが、同図に点線で示すように、押圧センサの出力が温度変化の影響を受けてドリフトすると、センサ出力ゼロの位置とクリアランスゼロの位置との間にずれが生じ、そのために、設定通りのクリアランスが確保されない。
【0008】
非制動時に摩擦材とロータ間に確保するクリアランスは、一般に0.5mm程度と非常に小さいため、センサ出力のドリフトによる影響は決して無視できるものではなく、引きずりの低減、応答遅れの防止のためにその影響を排除することが望まれる。
【0009】
この発明は、かかる要求に応えてクリアランス制御の高精度化を図ることを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、制動解除時に押圧センサの出力に基づいて摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスの原点を設定し、その原点から前記クリアランスが規定値になるまで電動アクチュエータの推進体を後退させる車両用ブレーキ装置において、押圧センサ出力の微分回路と、微分値を設定閾値と比較する回路を設け、押圧センサ出力の微分値と設定閾値との比較によりクリアランスの原点を決めてクリアランス制御がなされるようにしたのである。
【0011】
また、摩擦材を押圧してロータに摺接させる電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを制御する電子制御装置と、摩擦材に加わる押圧力を検出する押圧センサを有し、制動解除時に前記押圧センサの出力に基づいて摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスの原点を設定し、その原点から前記クリアランスが規定値になるまで電動アクチュエータの推進体を後退させる車両用ブレーキ装置において、モータの回転位置またはブレーキピストンの位置を検出する位置検出センサを設け、押圧センサ出力の微分回路と前記位置検出センサ出力の微分回路を設けて、さらに前記位置検出センサの微分値に対する前記押圧センサ出力の微分値との比を算出する除算回路を設け、前記除算回路による除算結果と設定閾値とを比較する比較回路を設けて、除算結果と設定閾値との比較によりクリアランスの原点を決めてクリアランス制御がなされるようにしたのである。
【0012】
なお、前述の閾値は、押圧センサの出力特性を考慮し、そのセンサの出力の微分値の急変を判定できる値(例えば可及的にゼロに近い値)に設定しておく。
【0013】
【作用】
この発明のブレーキ装置による原点設定の原理を図5に基づいて説明する。
今、制動の解除により電動アクチュエータの推進体が後退し出すと、押圧センサの出力は次第に小さくなっていく。このときのセンサ出力の変化率は、摩擦材に押圧力が働かなくなった位置(クリアランスゼロの位置)で急変する。センサ出力の微分値を求めて設定閾値と比較することによりその急変位置を検出でき、そこを原点にすれば、原点は常にクリアランスゼロ(或いはほぼゼロ)の位置に定まり、原点の極端なずれが生じない。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の電気駆動ブレーキ装置の実施形態を示す。これは、浮動型ディスクブレーキへの適用例であって、図中1はブレーキペダル、2はブレーキペダル1の踏込み力を検出する踏力センサである。踏力センサ2は、ブレーキペダル1の踏込み量を検出するストロークセンサで代替してもよい。また、ブレーキペダルのON、OFFは踏力センサ2の出力の有無によって判断できるが、そのON、OFF検出用のブレーキスイッチを別途付加してもよい。ブレーキペダル1の踏込み反力を発生させるストロークシミュレータ(図示せず)を付加するのも自由である。
【0015】
3は、各種センサからの情報を入力して電動アクチュエータ10を制御する電子制御装置、4はディスクロータ、5はパッド(摩擦材)、6はキャリパ、7はキャリパ6に固定するハウジングである。
【0016】
電動アクチュエータ10は、キャリパ6のシリンダに挿入してパッド5(又はキャリパ6)で回り止めしたブレーキピストン11、ボールナット12、そのボールナット12に螺合させたスクリューシャフト13、電動方式のモータ14及びピニオン15aと平歯車15bから成る歯車セット15を主たる要素とするものであって、モータ14の動力が歯車セット15経由で伝わってスクリューシャフト13が回転し、そのスクリューシャフト13の回転でブレーキピストン11が推進してパッド5を押圧する。
【0017】
なお、図のブレーキ装置は、ボールナット12とブレーキピストン11の端壁との間にスリーブ16とスプリング17を介在しており、スリーブ16がスプリング17を圧縮してブレーキピストン11の端壁に当った後にブレーキピストン11に推力が発生する。また、ピストンシール18を設けてブレーキピストン11の復帰をそのピストンシール18の弾性復元力で行うようにしている。
【0018】
さらに、後述する制御を実行するために、ブレーキピストン11による押付け圧を検出するアナログ式の押圧センサ8(これはロードセルや歪センサなどでよい)と、モータ14の回転数を制御するためのエンコーダ9を設け、さらに、電子制御装置3内に、押圧センサ8の出力の微分回路(図示せず)とセンサ出力の微分値を設定閾値と比較する回路(これも図示せず)を含めている。エンコーダ9は、特開平9−137841号が述べているような位置センサに置き換えてもよいが、エンコーダ内蔵のモータを用いると、より簡単な構造でクリアランスの制御が行える。
【0019】
このブレーキ装置は、電動アクチュエータ10が電子制御装置3によって踏力センサ2の出力に応じた制動力を生じるように制御され、前進したブレーキピストン11によりパッド5が押圧されてディスクロータ4と一体回転する車輪(図示せず)の制動がなされる。また、制動が解除されるとブレーキピストン11が復帰する。
【0020】
図のブレーキ装置は、可逆機構の電動アクチュエータを採用しているので、ブレーキピストン11の復帰をモータ14への通電を止めてピストンシール18の力で行うことができる。この装置は、クリアランスの制御目標値がピストンシール18によるピストン戻り量と同一のときにはクリアランス制御は不要であるが、その条件が満たされないときにはボールナット12の戻り量(=ピストン戻り量)を制御しなければならない。
【0021】
図の装置は、その制御のために、制動解除時に押圧センサ8の出力を電子制御装置3内に取込み、それを微分回路に通して微分値をモニタし、微分値の絶対値が所定の閾値より小さくなったところを原点にし、そこからのボールナット12の戻り量(ピストン戻り量)をエンコーダ9で確認してその戻り量が所定値に達したところでモータ14の逆転を止め、その位置にボールナット12を保持するようにしている。
【0022】
なお、本実施例では微分値の絶対値を設定閾値と比較しているが、ブレーキ解除時の押圧センサ出力の微分値は負の値を持ち、この値がほぼゼロになるところが原点になるので、この微分値が設定閾値より大きくなったところを原点としてよい。
【0023】
なお、制動が解除されたことは、踏力センサ2の検出信号がある一定の閾値よりも小さくなったことやブレーキスイッチがONからOFFに変わったことによって検出でき、この制動解除を確認したときに前述の制御が実行されるようにしておく。
【0024】
また、制動解除を確認した後、押圧センサの出力がある一定の閾値より小さくなった事を確認した時に、前述の制御が実行されるようにしておけば、よりクリアランスの原点位置決めの信頼性が高くなる。
【0025】
図2に、その制御のフローチャートを示す。ブレーキペダルONから同ペダルOFFまでのステップは、従来の電気駆動ブレーキ装置における制御と同じであり、アンチロック等の高度な挙動制御が必要なら車輪速センサや加速度センサ(共に図示せず)等からの情報に基づいて押圧力(ブレーキ力)の増減制御がなされる。
【0026】
また、制動が解除されると先に述べた手順により狂いの少ないクリアランス制御がなされる。
【0027】
図3には、第2実施例での制御のフローチャートを示す。位置検出センサ信号の微分値と押圧センサ信号の微分値との比と、設定閾値との比較からクリアランス原点を求めているところが図2の第1実施例と異なっている。なお、位置検出信号は、エンコーダの様にパルス数をカウントする様な場合には、このカウント数の微分値となる。第2実施例では、制御は若干複雑にはなるが、位置の変化量に対する押圧力の変化量の比を基準にするために時間の影響が無くなり、第1実施例であればゆっくりブレーキを解除した場合には押圧センサ出力の微分値の絶対値も小さくなって設定閾値との差が小さくなるという問題が考えられるが、第2実施例であればその問題が解決される。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明のブレーキ装置は、押圧センサの出力がゼロになった位置ではなく、そのセンサ出力の変化率が急変する位置を原点にしてクリアランス制御を行うので、押圧センサ出力のドリフトによる影響が排除されて非制動時に摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスが安定し、引きずりの低減効果と制動の応答遅れの抑止効果が確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】このブレーキ装置の実施形態を示す断面図
【図2】同上の装置の制御フローチャートの一例を示す図
【図3】制御フローチャートの他の例を示す図
【図4】センサ出力のドリフトによるクリアランス原点の振れを示す図
【図5】この発明の装置による原点設定の原理説明図
【符号の説明】
1 ブレーキペダル
2 踏力センサ
3 電子制御装置
4 ディスクロータ
5 パッド
6 キャリパ
7 ハウジング
8 押圧センサ
9 エンコーダ
10 電動アクチュエータ
11 ブレーキピストン
12 ボールナット
13 スクリューシャフト
14 モータ
15 歯車セット
16 スリーブ
17 スプリング
18 ピストンシール
Claims (2)
- 摩擦材を押圧してロータに摺接させる電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを制御する電子制御装置と、摩擦材に加わる押圧力を検出する押圧センサを有し、制動解除時に前記押圧センサの出力に基づいて摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスの原点を設定し、その原点から前記クリアランスが規定値になるまで電動アクチュエータの推進体を後退させる車両用ブレーキ装置において、押圧センサ出力の微分回路と、微分値を設定閾値と比較する回路を設け、押圧センサ出力の微分値と設定閾値との比較によりクリアランスの原点を決めてクリアランス制御がなされるようにしたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
- 摩擦材を押圧してロータに摺接させる電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを制御する電子制御装置と、摩擦材に加わる押圧力を検出する押圧センサを有し、制動解除時に前記押圧センサの出力に基づいて摩擦材とロータ間に生じさせるクリアランスの原点を設定し、その原点から前記クリアランスが規定値になるまで電動アクチュエータの推進体を後退させる車両用ブレーキ装置において、モータの回転位置またはブレーキピストンの位置を検出する位置検出センサを設け、押圧センサ出力の微分回路と前記位置検出センサ出力の微分回路を設けて、さらに前記位置検出センサの微分値に対する前記押圧センサ出力の微分値との比を算出する除算回路を設け、前記除算回路による除算結果と設定閾値とを比較する比較回路を設けて、除算結果と設定閾値との比較によりクリアランスの原点を決めてクリアランス制御がなされるようにしたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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