JP4546976B2 - ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
この特許文献1に記載のブレーキ装置においては、イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切り換えられた場合に、ブレーキが作動させられて0点位置が検出されるようにされている。
本項に記載のブレーキ装置においては、ブレーキの解除時、すなわち、ブレーキ部材のブレーキ回転体への押付力が減少させられる際に、0点位置が検出される。車輪の回転を抑制する必要があって作用状態にされたブレーキが非作用状態にされる際に検出されるのであり、0点位置検出のためにブレーキを作動させる必要がなく、エネルギが無駄に消費されることを回避することができる。
また、0点位置検出装置においては、0点位置がブレーキ解除中の少なくとも1時点におけるブレーキの作動状態と、ブレーキ部材の非復元量とに基づいて検出される。
ブレーキ部材はブレーキが作用状態にある場合には圧縮(弾性変形)させられているのが普通である。そして、ブレーキが解除された場合には戻されて、元の状態(厚み)になるのであるが、ブレーキ部材に加えられる押付力が除かれた場合に直ちに戻るとは限らない。そのため、その直ちに戻らない弾性変形量分(非復元量)を考慮して0点位置を決定すれば、検出精度を向上させることができるのである。
この場合において非復元量は一定の量としたり、そのブレーキ部材の材料等によって決まる最大値としたり、作用状態にある場合におけるブレーキ力に基づいて決まる量としたりすることができる。ブレーキ部材の圧縮量はブレーキ力が大きいほど大きくなるため、ブレーキ力が大きいと非復元量も大きくなるのである。
ブレーキの作動状態は、例えば、駆動源が電動モータである場合に、電動モータが特定の回転位置に達した時点を上記1時点とし、その時点におけるブレーキ部材のブレーキ回転体に対する押付力をブレーキの作動状態として0点位置が検出されるようにしても、逆に、特定の押付力に達した時点を1時点とし、その時点における電動モータの回転位置をブレーキの作動状態として0点位置が検出されるようにしてもよい。電動モータの回転位置の変化に対する押付力の変化勾配が一定であれば、1時点の電動モータの回転位置とブレーキ部材の押付力とに基づいて0点を検出することができるのであり、押付力が0になった時点を1時点とする必要は必ずしもない。また、電動モータの回転位置の変化に対する押付力の変化勾配が一定とは言い得ない場合には、2時点以上における電動モータの回転位置とブレーキ部材の押付力とに基づいて0点を検出することができる。さらに、後述するように、ブレーキの作動状態のブレーキの構造等に起因して決まる特定の変化状態を捕らえて0点を検出することができる。また、設定期間内におけるブレーキ作動状態に基づいて検出されるようにしてもよい。後者の場合には、例えば、その期間内におけるブレーキ作動状態の平均的な変化に基づいて検出されるようにすることができる。さらに、ブレーキ解除中のすべての期間内におけるブレーキ作動状態に基づいて検出されるようにすることもできる。いずれにしても、押付力が0より大きい状態から0にされるまでの間の駆動装置の位置の変化と、押付力が0の状態から0より大きい状態にされるまでの駆動装置の位置の変化とは互いに対応している(ほぼ同じである)と考えることができるため、ブレーキ解除中のブレーキの作動状態に基づいて0点位置を検出することができるのである。
0点位置はブレーキ部材がブレーキ回転体に摩擦係合し始める駆動装置の位置であるが、この駆動装置の位置は、駆動装置に含まれる駆動源の出力軸の位置として検出したり、駆動源の出力軸と一対一に対応して移動する可動部材の位置として検出したりすることができる。例えば、駆動源が電動モータである場合において、電動モータの出力軸に送りねじ装置等の運動変換装置を介して接続される直線移動部材が上記可動部材に該当する。また、少なくとも0点位置検出時において、駆動装置の作動量と一対一に対応して前進・後退させられる可動部材(例えば、ブレーキ部材)の位置として0点位置を検出することも可能である。この場合において、駆動装置の位置は、上記出力軸や可動部材の端面等のブレーキ本体に対する相対位置で表したり、駆動源の作動状態で表したりすることができる。例えば、駆動源が電動モータを含む場合には、電動モータの予め定められた状態(例えば、可動部材が後退端位置にある状態)からの累積回転角度で駆動装置の位置を表すことができる。
0点位置は、ブレーキ部材がブレーキ回転体に摩擦係合し始める位置であり、ブレーキの作用が開始される位置である。例えば、ブレーキの非作用状態において、ブレーキ部材がブレーキ回転体から離間している状態にある場合には、0点位置は、ブレーキ部材がブレーキ回転体に接触し始める際の駆動装置の位置である。また、非作用状態においても、ブレーキ部材がブレーキ回転体に軽く接触している(摩擦係合しておらず、ブレーキ力は発生していない状態)が、ブレーキ部材と駆動装置の押圧部材とは離間している状態にある場合には、押圧部材がブレーキ部材に接触し始める際の位置とされる。なお、ブレーキ部材が一対設けられて、共通の駆動装置により駆動される場合には、それら一対のブレーキ部材が共にブレーキ回転体に摩擦係合し始める駆動装置の位置が0点位置である。
さらに、前記「駆動装置による押付力の減少中」には、運転者によるブレーキ操作が解除される場合のみではなく、運転者のブレーキ操作が行われない状態でブレーキが作用状態にされた場合において、その作用状態にされたブレーキが非作用状態にされる過程も含まれる。例えば、トラクション制御終了時,ビークルスタビリティ制御終了時,自動ブレーキ作動終了時等がある。
なお、駆動装置は、ブレーキ部材をブレーキ回転体に押し付ける装置であるが、上述の電動モータ,圧電素子等の電動アクチュエータを含むものとしたり、流体圧シリンダとその流体圧を制御可能な流体圧制御弁とを含む電気流体圧制御アクチュエータを含むもの等としたりすることができる。また、ブレーキは、ドラムブレーキであっても、ディスクブレーキであってもよく、これらについては後述する。
前記駆動装置による前記ブレーキ部材の前記ブレーキ回転体への押付力が減少させられる際の少なくとも1時点における前記ブレーキの作動状態と、前記ブレーキ部材に加えられる押付力が除かれた場合に直ちに戻らない弾性変形量分である非復元量とに基づいて、前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記駆動装置の位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置(請求項1)。
(2)前記0点位置検出装置が、前記非復元量を予め定められた一定の量として前記0点位置を検出する手段を含む(1)項に記載のブレーキ装置(請求項2)。
(3)前記0点位置検出装置が、前記ブレーキが作用状態から非作用状態に移行した際の前記駆動装置の位置から、前記ブレーキ部材の前記非復元量だけ前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体から遠くなる位置を前記0点位置とする手段を含む(1)項または(2)項に記載のブレーキ装置(請求項3)。
ブレーキ部材のブレーキ回転体への押付力が0まで低下した場合に、ブレーキが非作用状態になったとすることができる。
(4)前記0点位置検出装置が、前記ブレーキの作動状態の変化状態に基づいて0点位置を検出する手段を含む(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
例えば、ブレーキの作動状態の変化状態が予め定められた設定状態になった場合における駆動装置の位置を0点位置としたり、その設定状態になった場合における駆動装置の位置に基づいて決まる位置を0点位置とすることができる。
具体的には、ブレーキ力の変化勾配が予め定められた設定勾配以下になった場合における駆動装置の位置を0点位置(例えば、図9の時点ts における位置)としたり、駆動装置の位置に基づいて決まる位置(例えば、図7の0点位置)としたりすることができる。
(5)前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量変化させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の位置より、前記非復元量で決まる長さだけ前進側の位置にある場合の前記駆動装置の位置を前記0点位置とする手段を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項4)。
(6)前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が前記設定量変化させられる間に、前記押付力を複数回検出する検出部と、その検出部によって検出された複数の押付力のうちの2つ以上に基づいて前記減少勾配を取得する手段とを含む(5)項に記載のブレーキ装置(請求項5)。
(7)前記減少勾配を取得する手段が、前記複数の押付力の各々について、前記ブレーキ部材の位置が単位量変化する場合の押付力の変化量を取得し、それら複数の押付力の変化量の平均値を前記減少勾配として取得する手段を含む(5)項に記載のブレーキ装置。
(8)前記0点位置検出装置が、前記駆動装置の作動状態に基づいて前記ブレーキの作動状態を検出するブレーキ作動状態検出部を備えた(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、駆動装置の作動状態に基づいてブレーキの作動状態が検出される。駆動装置によってブレーキ部材がブレーキ回転体に押し付けられるため、駆動装置の作動状態に基づけばブレーキの作動状態を検出することができる。
この場合において、駆動装置の作動状態とブレーキの作動状態とは、駆動装置が作動状態にあるすべての範囲において1対1に対応するとは限らないが、0点位置の検出時等には1対1に対応すると考えることができる。ブレーキの非作用状態と作用状態との切り換え時(ブレーキ部材がブレーキ回転体に接触し始めたり、離間し始めたりする時または、押圧部材がブレーキ部材に接触し始めたり、離間し始めたりする時)には1対1に対応するのである。
(9)前記駆動装置が駆動源たるアクチュエータを有し、当該ブレーキ装置が、そのアクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
本項に記載のブレーキ装置においては、駆動装置の駆動源としてのアクチュエータを制御することによって、ブレーキの作動状態が制御される。アクチュエータは、ブレーキが作動状態にある場合においてそのブレーキ力を制御する場合や、0点位置を検出する場合等に制御される。前者のブレーキ力を制御する場合において、0点位置検出装置によって検出された0点位置に基づいて制御されるようにすれば、クリアランスの変化に起因するブレーキ力の効き遅れを小さくすることができる。
(10)前記ブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、予め定められたパターンに従って制御する0点位置検出時ブレーキ制御部を含む(9)項に記載のブレーキ装置(請求項6)。
本項に記載のブレーキ装置においては、0点位置の検出の際に予め定められたパターンに従ってアクチュエータが制御される。アクチュエータが予め定められたパターンに従って制御されれば、0点位置検出の際の条件のバラツキを小さくすることができ、検出された0点位置のバラツキを小さくすることができる。
また、ブレーキ作用開始時には、アクチュエータは、運転者によるブレーキ操作部材の操作状態に応じて制御されるのが普通であり、0点位置検出のために、制御されるようにすることは望ましくない。それに対して、ブレーキ解除時に、0点位置検出のためにアクチュエータが制御されるようにしても、ブレーキ作用開始時より、車両への影響は小さい。
(11)前記0点位置検出時ブレーキ制御部が、前記0点位置検出装置によって0点位置が検出される際に、前記アクチュエータを予め定められた速度でブレーキ解除方向に作動させる手段を含む(10) 項に記載のブレーキ装置。
アクチュエータが電動モータである場合には、電動モータの回転数が一定に保たれ、電気液圧制御アクチュエータである場合には、液圧シリンダの液圧の変化速度が一定に保たれる。それによって、アクチュエータによってブレーキ部材に加えられる押付力の減少速度を一定にすることができる。
(12)前記0点位置検出時ブレーキ制御部が、前記アクチュエータを、前記押付力が予め定められた設定値以下になった後に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する方向に、一定の速度で作動させる手段を含む(10)項または(11)項に記載のブレーキ装置(請求項7)。
(13)前記駆動装置が駆動源たるアクチュエータを有し、当該ブレーキ装置が、そのアクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置を含み、そのブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する向きに、予め定められた一定の速度で作動させる0点位置検出時ブレーキ制御部を含み、前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量変化させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の位置より、前記非復元量で決まる設定量だけ前進側の位置を前記0点位置とする手段を含む(1),(2),(4)ないし(12)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項8)。
(14)前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材を前記0点位置から予め定められた設定値だけ前進させた場合において、前記押付力が予め定められた設定値以上増加しない場合に、前記検出された0点位置が妥当であると確認する0点位置確認部を含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置(請求項10)。
0点位置を確認すれば、0点位置の検出精度を向上させることができる。例えば、0点位置が検出された後、実際の駆動装置の位置をその検出0点位置あるいはわずかに後方の位置まで移動させ、その状態において僅かにアクチュエータをブレーキの作用状態への方向に僅かに作動させて、ブレーキ力の変化状態を検出する。ブレーキ力が殆ど増加しない場合は0点位置は採用され、設定量以上の値になった場合は採用されないようにするのである。
(15)前記駆動装置が駆動源たるアクチュエータを有し、当該ブレーキ装置が、前記0点位置検出装置によって検出された0点位置に基づいて前記アクチュエータを制御する0点位置対応ブレーキ制御装置を含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
アクチュエータをクリアランスに基づいて制御すれば、ブレーキの効き遅れを小さくしたり、ブレーキ部材がブレーキ回転体に押し付けられる際に発せられる音を小さくしたりすることができる。また、ブレーキの作用開始時におけるオーバシュートを回避することもできる。
また、0点位置が検出されるため、オートアジャスタが不要となるという利点もある。さらに、ブレーキ部材の磨耗の程度を検出することができるため、磨耗の程度を運転者に報知することも可能である。この場合には、ブレーキ部材の交換時期を報知することもできる。
(16)前記0点位置対応ブレーキ制御装置が、前記ブレーキが非作用状態にある場合における前記ブレーキ部材の厚みに基づいて、前記アクチュエータを制御する(15)項に記載のブレーキ装置。
ブレーキ部材の厚みに基づいてアクチュエータを制御すれば、ブレーキ力を精度よく制御することができる。
(17)前記0点位置対応ブレーキ制御装置が、前記ブレーキ作動終了後に、前記駆動装置の位置を前記0点位置検出装置によって検出された0点位置に戻す0点位置復帰部を含む(15)項または(16)項に記載のブレーキ装置。
ブレーキ作動終了時に駆動装置が0点位置に戻されるようにすれば、次に作用状態にする際のブレーキの効き遅れを小さくすることができる。また、アクチュエータにおいて消費される無駄なエネルギを減少させることができる。オートアジャスタが設けられていないブレーキに有効である。
(18)前記0点位置対応ブレーキ制御装置が、前記アクチュエータを、前記0点位置検出装置によって検出された0点に対応する駆動装置の位置において遠い位置におけるより小さい速度で作動させるブレーキ作動時ブレーキ制御部を含む(15)項ないし(17)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
駆動装置の位置が0点位置から離れている場合にはアクチュエータの作動速度を早くして、0点位置にある場合には遅くする。それによって、ブレーキの効き遅れを小さくし、ブレーキ作用開始時にオーバシュートが生じることを回避することができる。なお、0点位置にある場合には作動速度を最小にすることもできる。
本項に記載のブレーキ装置は、0点復帰が行われないブレーキについて有効である。
(19)前記0点位置対応ブレーキ制御装置が、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける際に、前記アクチュエータを、そのアクチュエータのブレーキ解除位置と前記0点位置に対応する位置との間の予め定められた設定位置から作動速度が減少するように制御するブレーキ作動時ブレーキ力制御部を含む(15)項ないし(18)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
作動速度を減速すれば、0点位置付近における作動速度が小さくなる。
(20)(a)車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付けるアクチュエータを有する駆動装置とを備えたブレーキと、
前記アクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置と、
前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記駆動装置の位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むブレーキ装置であって、
前記ブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する向きに、予め定められたパターンで作動させる0点位置検出時ブレーキ制御部を含み、前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量後退させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の位置より、予め定められた設定量だけ前進側の位置を前記0点位置とする手段を含むことを特徴とするブレーキ装置(請求項9)。
(21)前記ブレーキ回転体が回転ドラムであり、前記ブレーキ部材が、それぞれ回転ドラムの内周側に配設され、各々の外周面にライニングが施された一対のブレーキシューであり、前記駆動装置が、それら一対のブレーキシューを拡開させることによって前記ライニングを前記回転ドラムの内周面に押し付ける拡開装置であって、前記ブレーキがドラムブレーキである(1) 項ないし(20)項のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
ブレーキをドラムブレーキとした場合には、ブレーキ回転体が回転ドラムとされ、ブレーキ部材がブレーキシューとされ、駆動装置が拡開装置とされる。また、保持部材がバッキングプレートとされる。
拡開装置により一対のブレーキシューが拡開させられると、ブレーキシューが回転ドラムの内周面に接触させられ、ブレーキ力が発生させられる。拡開装置によって加えられるブレーキシューをドラム内周面に押しつける作用力が大きくされれば、ブレーキ力は大きくなる。
拡開装置による作用力が小さくされれば、ブレーキ力が小さくなる。作用力が設定力より小さくなると、一対のブレーキシューは回転ドラムの内周面から離間させられ、ブレーキが解除される(非作用状態にされる)。
(22)前記ドラムブレーキが、前記一対のブレーキシューを前記回転ドラムの内周面から離間させる方向に付勢するリターンスプリングを含み、
前記0点位置検出装置が、(a)前記拡開装置によって前記一対のブレーキシューに加えられる拡開力を検出する拡開力検出装置と、(b)その拡開力検出装置によって検出される拡開力が設定範囲内にある状態においてその拡張力の減少勾配が予め定められた設定勾配より緩やかになった場合に、その時点における前記拡開装置の位置を0点位置とする減少勾配対応0点位置検出部とを含む(21)項に記載のブレーキ装置。
(23)前記ドラムブレーキが、前記一対のブレーキシューを前記回転ドラムの内周面から離間させる方向に付勢するリターンスプリングを含み、
前記0点位置検出装置が、(a)前記拡開装置によって前記ブレーキシューに加えられる拡開力を検出する拡開力検出装置と、(b)その拡開力検出装置によって検出された拡開力が予め定められたパターンに従って変化する間に、そのパターンの予め定められた部分に対応する前記拡開装置の位置を前記0点位置とする変化パターン対応0点位置検出部とを含む(22)項に記載のブレーキ装置。
ドラムブレーキがリターンスプリングを含む場合には、拡開力が例えば図9のグラフで示されるパターンに従って変化する。
ブレーキが非作用状態から作用状態にされる過程において、ブレーキシューに加えられる拡開力がリターンスプリングのセット荷重より小さい期間T1 においては、拡開装置の出力の増加に伴って拡開力が増加する。それに対して、拡開力がリターンスプリングのセット荷重に達すると、一対のブレーキシューはリターンスプリングの弾性力に抗して拡開させられて回転ドラムの内周面に接触する。このリターンスプリングの弾性力に抗して拡開させられる期間T2 においては、拡開力はほぼ一定の大きさに保たれる。そして、一対のブレーキシューがドラム内周面に接触した時点t0 以降の接触状態においては、拡開力が再び駆動装置の出力の増加に伴って増加する状態となる。この期間においては、ブレーキシューをドラム内周面に押し付ける押付力が増加し、ブレーキ力が増加する。
また、ブレーキが作用状態から非作用状態にされる過程においては、拡開装置の出力が減少させられ、それに伴って拡開力が減少させられる。拡開力の減少に伴ってブレーキシューのブレーキドラムへの押付力が減少させられ、ブレーキ力が減少する。拡開力がリターンスプリングのセット荷重より大きい間は、一対のブレーキシューは回転ドラムの内周面への接触状態に保たれるが、拡開力がセット荷重より小さくなれば、リターンスプリングの弾性力によって一対のブレーキシューが互いに接近させられ、ドラム内周面から離間する。このリターンスプリングの弾性力によって一対のブレーキシューが互いに接近させられる期間T3 においては、駆動装置がブレーキ解除方向に作動させられても拡開力は殆ど減少しない。この期間T3 の開始時点ts において一対のブレーキシューがドラム内周面から離間させられるのであり、ブレーキ力が0となる。したがって、この開始時点ts の拡開装置の位置に基づいて0点位置を検出することができる。例えば、開始時点ts の拡開装置の位置自体を0点位置としたり、開始時点の拡開装置の位置に予め定められた補正を施して0点位置としたりすることができる。
上記期間T3 の開始時点ts は、期間T4 内における拡開力と拡張装置の位置との関係が記憶され、拡開力がグラフのように変化したことが検出された後において、減少勾配が設定勾配より小さくなった時点が期間T3 の開始時点として検出されるようにしたり、減少勾配が設定勾配より小さくなった時点における拡開装置の位置が記憶され、その後の拡開装置の位置と拡開力との関係がグラフのように変化するか否かが監視され、変化した場合は先に記憶された拡開装置の位置が開始時点ts と決定されるようにしたりすることができる。このように、ある期間内において拡開力が予め定められたパターンに従って減少させられたことが確認された場合に開始時点ts が検出されるようにすれば、ブレーキ力が0になる時点ts を確実に検出することができる。
上記リターンスプリングの弾性力に抗して一対のブレーキシューが拡開させられる期間T2 、弾性力によって一対のブレーキシューが接近させられる期間T3 は、拡開装置に含まれるアクチュエータの作動速度が早い場合は遅い場合より短くなる。そして、拡開力の変化パターンに基づいて0点位置を検出する場合には、アクチュエータの作動速度が常に同じであることが望ましい。それに対して、ブレーキが非作用状態から作用状態にされる際にアクチュエータの作動速度が常に同じにされることは望ましくないが、ブレーキ解除時には常に同じにしても差し支えない。そのため、ブレーキ解除時に運転者により行われるブレーキ操作部材の操作速度とは関係ない一定の速度でアクチュエータが作動させられるようにすることが可能であり、それによって検出精度を向上させることができる。この場合、アクチュエータの作動速度が常に一定にされるのは、拡開力が開始時点ts の拡開力に近い設定拡開力以下の領域とし、それ以外の領域ではアクチュエータの作動速度が運転者により行われるブレーキ操作部材の操作速度に対応させられるようにすることが望ましい。
なお、後述するように、(22)項, (23)項に記載の技術的特徴は、(1)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の技術的特徴から独立して採用することができる。すなわち、ブレーキ作動時に0点位置が検出される場合に適用したり、ディスクブレーキに適用したりすることができるのである。
(24)前記ブレーキ回転体が回転ディスクであり、前記ブレーキ部材が、それぞれ回転ディスクの両側の摩擦面に対向して配設され、各々平板状の摩擦パッドとその摩擦パッドの背面に固定された裏板とを有するブレーキパッドであり、前記駆動装置が、それら一対のブレーキパッドを前記回転ディスクの両摩擦面に押し付ける押圧装置であって、前記ブレーキがディスクブレーキである(1)項ないし(23)項のいずれか1に記載のブレーキ装置。
ディスクブレーキにおいては、ブレーキ回転体が回転ディスクとされ、ブレーキ部材が摩擦パッドと裏板とを有するブレーキパッドとされ、駆動装置が押圧装置とされる。押圧装置は回転ディスクと一対のブレーキパッドとを跨ぐ状態で配設されるキャリパとされる。キャリパは、回転ディスクの回転軸線にほぼ平行な方向に移動可能な浮動キャリパでも、移動不能な固定キャリパでもよい。前者の場合には、キャリパの片側にアクチュエータが設けられ、後者の場合にはキャリパの両側にアクチュエータが設けられる。保持部材はマウンティングブラケットとされるが、上記固定キャリパにおいては、固定キャリパとマウンティングブラケットとが一体に形成される。
例えば、押圧装置が浮動キャリパである場合には、キャリパの片側に設けられたアクチュエータによって、一方のブレーキパッドに、そのブレーキパッドを回転ディスクに押し付ける押付力が加えられると、キャリパが軸方向に移動させられ、他方のブレーキパッドが回転ディスクに押し付けられる。その際、ブレーキパッドの摩擦パッドが圧縮され、キャリパが弾性変形させられる。押付力が大きくされれば、ブレーキ力が大きくなり、ブレーキパッドやキャリパの弾性変形量も大きくなる。
押圧装置により加えられた押付力が小さくされるとブレーキ力が小さくなる。キャリパ,摩擦パッドの弾性変形量が小さくなり、キャリパの上述のブレーキ作用開始時とは逆の方向への移動が許容され、ブレーキパッドがそれぞれ回転ディスクから離間することが許容される。押圧装置によってブレーキパッドに加えられる押付力が0になれば、ブレーキ力が0になる。
(25)前記駆動装置が、サービスブレーキ操作部材の操作時に前記ブレーキ部材をブレーキ回転体に押し付けるとともに、パーキングブレーキ操作部材の操作時に前記ブレーキ部材をブレーキ回転体に押し付けるものである(1)項ないし(24)項に記載のブレーキ装置。
イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切り換えられた場合においては、パーキングブレーキが作用状態にあるのが普通である。そのため、イグニッションスイッチがON状態にされてから、最初にパーキングブレーキの作用が解除される際に0点位置が検出されるようにすれば、早期に0点位置を検出することができ、好都合である。
(26)(a)車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体から離間する方向に付勢するリターンスプリングと、(e)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける駆動装置とを備えたブレーキと、
前記駆動装置によって前記ブレーキ部材に加えられる駆動力を検出する駆動力検出装置と、
その駆動力検出装置によって検出された駆動力の減少勾配が予め定められた設定勾配より緩やかになった場合に、その場合における前記駆動装置の位置を0点位置とする減少勾配対応0点位置検出部と
を含むブレーキ装置。
前述のように、リターンスプリングの弾性力に基づく作用力の変化を利用して0点位置が検出されるようにされる場合には、ブレーキ力が0の状態と0より大きい状態とに切り換わった場合の駆動装置の位置を0点位置とする場合に比較して、0点位置の検出精度を向上させることができる。一般的に、力の大きさを検出する作用力検出装置等による検出値のしきい値を0とするより0より大きい値とした方が、しきい値より大きいか否かの検出精度は高いのである。
本項に記載のブレーキ装置は、ブレーキの作動時にも解除時にも適用することができる。また、ディスクブレーキにおいてもリターンスプリングが設けられていれば、適用することができる。
なお、本項に記載のブレーキ装置には、(1)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
また、減少勾配対応0点位置検出部の代わりに、その作用力検出装置によって検出された作用力が予め定められたパターンに従って変化させられた場合に、その変化状態における少なくとも一時期における前記駆動装置の位置を0点位置とする変化パターン対応0点位置検出部とすることもできる。
(27)(a)車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける駆動装置とを備えたブレーキと、
予め定められた設定時間毎に前記ブレーキ部材の前記ブレーキ回転体への押付力を検出する検出部を含み、前記駆動装置によって前記押付力が減少させられる場合において、前記検出部によって予め定められた数の押付力が検出される間の、押付力の平均的な変化を表す減少勾配を取得する減少勾配取得装置と、
その減少勾配取得装置によって取得された減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の前記ブレーキ部材の位置に基づいて、前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記駆動装置の位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置。
本項のブレーキ装置には、(1)項ないし(26)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(28)(a)車両の車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付けるアクチュエータを有する駆動装置とを備えたブレーキと、
前記アクチュエータを制御することにより、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置と、
前記駆動装置によって前記ブレーキ部材の前記ブレーキ回転体への押付力が減少させられる際の少なくとも1時点における前記ブレーキの作動状態に基づいて、前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記アクチュエータの位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むブレーキ装置であって、
前記ブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、予め定められたパターンに従って制御する0点位置検出時ブレーキ制御部を含むことを特徴とするブレーキ装置。
本項のブレーキ装置には、(1)項ないし(27)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
図1に示すブレーキ装置は、左右前輪FL,FRに設けられた電動モータ20を含むディスクブレーキ22と、左右後輪RL,RRに設けられた電動モータ30を含むドラムブレーキ32とを含む。本実施形態においては、電動モータ20,30は共に超音波モータとされている。
本ブレーキ装置には、サービスブレーキ用のブレーキ操作部材としてのブレーキペダル40と、パーキングブレーキ用のブレーキ操作部材としてのパーキングブレーキレバー42とが設けられている。ブレーキペダル40が操作されれば、前輪のディスクブレーキ22,後輪のドラムブレーキ32が電動モータ20,30の駆動によりそれぞれ作動させられ、パーキングブレーキレバー42が操作されれば、後輪のドラムブレーキ32が作動させられる。また、緊急ブレーキ操作部材44が設けられており、緊急ブレーキ操作部材44が操作されると、それに伴って後輪のドラムブレーキ32が緊急ブレーキ作動装置46により機械的に作動させられる。
このように、ディスクブレーキ22は電動モータ20により作動させられる電動ディスクブレーキである。また、ドラムブレーキ32は電動モータ30により作動させられる場合と緊急ブレーキ作動装置46により機械的に作動させられる場合とがあるが、機械的にも作動可能な電動ブレーキと考えることができるため、以下、これらディスクブレーキ22,ドラムブレーキ32を、電動ディスクブレーキ22,電動ドラムブレーキ32と称する。
電動ディスクブレーキ22は、車輪と共に回転するブレーキ回転体としての回転ディスク60と、回転ディスク60の両側に配設された一対のブレーキパッド62a,bと、ブレーキパッド62a,bを相対回転不能かつ接触・離間可能に保持するマウンティングブラケット64と、電動モータ20を有する駆動装置66とを含む。ブレーキパッド62a,bは、回転ディスク60の両側の摩擦面68a,bに対向して配設された平板状の摩擦パッド70a,bと、摩擦パッド70a,bの背面に固定された裏板72a,bとを含む。駆動装置66により、ブレーキパッド62a,bが回転ディスク60の摩擦面68a,bにそれぞれ押し付けられてブレーキ力が発生させられる。
マウンティングブラケット64には駆動装置66が設けられている。駆動装置66は、マウンティングブラケット64に軸方向(ブレーキパッド62a,bの移動方向と平行な方向)に移動可能に設けられたキャリパ80等によって構成される。キャリパ80は、一方のブレーキパッド62bを背後から係合するリアクション部82と、他方のブレーキパッド62aに、そのブレーキパッド62aをブレーキ回転体60に押し付ける押付力を加える電動モータ20が取り付けられた押圧部84とこれらを連結する連結部とを含む。
押圧ピストン88はキャリパ80の押圧部84に対して軸方向に相対移動可能に設けられている。また、押圧部84と押圧ピストン88との間にはシール部材90が設けられ、異物の混入が防止される。
超音波モータ20は、進行波式のものであり、ステータに超音波振動を与えて表面に波を生じさせるとともに、ステータとロータとの間の摩擦力によってロータを回転させるものである。本実施形態においては、超音波モータ20は、ステータ92とロータ94と押圧接触機構96とを含むものである。ステータ92は複数の圧電体を含むものであり、隣接する圧電体に互いに位相の異なる電圧を印加させることによってステータ92の表面に波を生じさせる。押圧接触機構96は、皿ばねを含むものであり、皿ばねによりロータ94がステータ92に押し付けられ、これらの間に必要な摩擦力が得られるようにされている。ロータ94のうちのステータ92と接触する部分には摩擦材料が接着されており、これにより、ステータ92に発生した進行波振動がロータ94に確実に伝達され、回転させられる。
また、電動モータ20においては、ステータ92の圧電体に電圧が印加されない限り、ステータ92とロータ94とが相対回転させられることはない。換言すれば、ステータ92に電圧が印加されない間は、押圧ピストン88の位置は保たれるのであり、ブレーキ力が保たれることになる。
雄ねじ部材100は押圧部84に回転阻止部103によって回転不能に取り付けられており、雌ねじ部材102は、ロータ94に相対回転不能に、キャリパ80に対し相対回転可能かつ軸方向の相対移動不能な状態で取り付けられている。雌ねじ部材102は、軸方向の隔たった位置においてラジアル軸受け120とラジアルスラスト軸受け122とを介して押圧部84に支持されている。また、スナップリング124により、これら軸受け120,122の軸方向の移動が阻止される。
したがって、ロータ94が正方向に回転すれば、雌ねじ部材102がキャリパ80に対して相対回転させられ、それによって、雄ねじ部材100が前進させられ、押圧ピストン88がブレーキパッド62aが回転ディスク60に接近する向きに移動する。逆に、ロータ94が逆方向に回転すれば、雄ねじ部材100が後退し、押圧ピストン88がブレーキパッド62aが回転ディスク60から離間する向きに移動することが許容される。
電動モータ20が逆方向に回転させられれば、押圧ピストン88に加えられた押圧力が小さくされる。また、キャリパ80の弾性変形量,摩擦パッド70a,bの弾性変形量が小さくなり、キャリパ80の軸方向の上述とは反対方向の移動が許容される。押圧ピストン88の後退が許容され、ブレーキパッド62a,bの回転ディスク60の摩擦面68a,bからの離間が許容される。ブレーキパッド62a,bの回転ディスク60への押付力が0にされれば、ブレーキ力が0となり、ブレーキが非作用状態にされる。なお、ブレーキ力が0になった場合に、直ちに摩擦パッド70a,bが弾性変形前の状態に戻るとは限らない。完全に復元しない場合があるのであり、弾性変形させられた状態に保たれる場合があるのである。
各ブレーキシュー202a,202bの外周面には、それぞれ、摩擦係合部材としてのブレーキライニング219a,219bが保持され、それら一対のブレーキライニング219a,219bがドラム206の内周面204に摩擦係合させられることにより、ブレーキライニング219a,219bとドラム206との間に摩擦力が発生する。本実施形態においては、ストラット210がアジャスト機構を備えたものであり、ブレーキライニング219a,219bの摩耗に応じてブレーキライニング219a,219bとドラム内周面204との隙間が調整される。ドラムブレーキにおいては、これらブレーキライニング219a,bを含むブレーキシュー202a,bによってブレーキ部材が構成される。
パーキングブレーキケーブル242の他端部は、図1に示すように、緊急ブレーキ作動装置46が設けられている。緊急ブレーキ作動装置46は緊急ブレーキ操作部材44の操作力により機械的に作動させられるものであり、一対のブレーキシュー202a,202bが拡張する向きにレバー230bが回動するようにブレーキケーブル242へ引張力が付与される。
拡開力が、これらリターンスプリング218とシューリターンスプリング215a,bとのセット荷重の和(以下、リターンスプリング等のセット荷重と略称する)より大きくなると、一対のブレーキシュー202a,bがリターンスプリング等の弾性力に抗して拡開させられ、ブレーキシュー202a,bがドラムの内周面204に接触させられ、ブレーキが作用状態とされる。ブレーキの作用状態においては、電動アクチュエータ207によって加えられる拡開力の増加に伴って一対のブレーキシュー202a,bに加わる押付力が大きくされ、ブレーキ力が増加させられる。
なお、本実施形態においては、ブレーキシュー202a,bに加えられる拡開力がレバー230aに加えられる荷重fとして検出される。また、荷重fは、図9に示すように、一対のブレーキシュー202a,bがリタースプリング等の弾性力に抗して拡開させられる期間T2 においては、電動モータ30が正方向に回転させられても、増加せず、ほぼ一定の大きさに保たれる。その後、一対のブレーキシュー202a,bがドラム内周面204に接触した状態においては、ブレーキ力の増加に伴って大きくなる。
なお、レバー230aに加えられる荷重は、図9に示すように、一対のブレーキシュー202a,bがドラム内周面204に接触させられた状態においては、ブレーキ力の減少に伴って減少させられるが、一対のブレーキシュー202a,bがリタースプリング等の弾性力によって接近させられる期間T3 においては、電動モータ30が逆方向に回転させられても、減少せず、ほぼ一定の大きさに保たれる。
図1に示すように、コントローラ298は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータ300を主体として構成されている。このコントローラ298の入力側には操作力センサ302、ブレーキペダルスイッチ304、パーキングレバースイッチ306、荷重センサ140,246、エンコーダ308,310、電流センサ312等が接続されている。
操作力センサ302は、ブレーキペダル40に加えられた操作力を検出するものであり、操作力センサ302によって検出された操作力に基づいて運転者の所望する要求ブレーキ力が求められる。ブレーキペダルスイッチ304は、ブレーキペダル40が操作状態にある場合と非操作状態にある場合とで、異なる状態に切り換えられるものであり、パーキングレバースイッチ306は、同様に、パーキングブレーキレバー42の操作状態を検出するものである。また、エンコーダ308,310は、電動モータ20,30の回転回数をそれぞれ検出するものである。さらに、電流センサ312によって各電動モータ20,30に流れる電流が検出される。
コンピュータ300のROMには、図4のフローチャートで表されるブレーキ制御ルーチン、図5のフローチャートで表されるディスクブレーキ用0点位置検出ルーチン,図6のフローチャートで表されるドラムブレーキ用0点位置検出ルーチン、フローチャートの図示は省略するが、ブレーキ力制御ルーチン等の複数のプログラムやテーブル等が記憶されている。
本実施形態においては、ブレーキペダル40が操作されると、その操作力に基づいて運転者の意図する要求ブレーキ力が求められ、その要求ブレーキ力が得られるように、コントローラ298の指令に基づき電動モータ20,30への供給電流が制御され、ブレーキ力が制御される。電動モータ20,30は、検出された0点位置等基づいて制御される。また、0点位置は、ブレーキが作用状態から非作用状態に切り換えられる場合に検出される。
また、ブレーキスイッチ304がOFFになっても、0点位置検出フラグがリセットされていない場合、後述するが0点位置復帰フラグがセットされていない場合には、S6,7のいずれかの判定がNOとなり、S4において0点位置の検出が行われる。0点位置の検出や0点位置への復帰は、ブレーキスイッチ304がOFFになっても行われることがあるのである。
本実施形態においては、図7,8に示すように、電動モータ20の単位回転角当たりの押圧力の変化量(押圧力の減少勾配)が予め定められたしきい値TH 以下になった場合の電動モータ20の回転位置と、摩擦パッド70a,bの非復元量とに基づいて0点位置が決定される。図8の(a),(b)に示すように、摩擦パッド70a,bは、ブレーキ作用時に圧縮させられるのであるが、ブレーキが解除された場合に直ちにブレーキ作動前の状態に戻るとは限らない。また、押圧力の減少勾配がしきい値TH 以下になった場合には、図7に示すように、その時点の電動モータ20の位置より前進側に0点位置があると推定される。そのため、押圧力の変化量に基づいて検出された0点位置(以下、暫定0点位置と称する)より実際の0点位置は前進側にあると考えられる。これらの事情を考慮すると、暫定0点位置より前進側に実際の0点位置があると推定されるのであるが、(真の)0点位置を、非復元量αを考慮した値βだけ前進側に移動した位置とする。非復元量αは、図8に示す非復元量の2倍の大きさである。ディスクロータ60に対して摩擦パッド70a,bが一対設けられているからである。
さらに、0点位置を検出する際には、電動モータ20を、一定の回転数で逆方向に回転させる。運転者のブレーキペダル40の解除状態とは関係なく、一定の速度で後退させるのである。
また、0点位置が検出された場合には、ブレーキ解除後、電動モータ20の回転位置が0点位置に復帰させられる。
S21において、電動モータ20の単位回転角当たりの押圧力の減少勾配(ΔF/Δsと表す、以下、押圧力の変化量と略称する)が読み取られる。本実施形態においては、電動モータ20の回転角の変化量(今回値と前回値との差)が設定数に達するとトリガとしてのパルスが出力され、押圧力が検出される。そして、例えば、その押圧力の単位回転角当たりの変化量の過去6回の平均値が他のルーチンによって計算されて、押圧力の変化量として求められるのである。なお、過去6回分の押圧力のデータが記憶されるようにしておき、その記憶された6回分のデータに基づいて変化量が検出されるようにすることもできる。また、6回のうちの最初の押圧力の値と最後の値との差を6回分の回転角の変化量で割った値を押圧力の変化量として採用することもできる。このようにしても、平均的な押圧力の変化量を検出することができる。さらに、6回に限らず、所定の回転角毎に変化量が求められるようにすることもできる。いずれにしても、回転角が予め定められた設定回転角だけ変化する間の押圧力の変化量が検出されればよいのである。
いずれも終了していない場合には、S24において、電動モータ20がその位置から逆方向、すなわち、後退方向に予め定められた回転数で回転させられる。S25において、S21において読み取られた押圧力の変化量ΔF/Δsがしきい値TH より小さいか否かが判定される。しきい値TH 以上である場合には、判定がNOとなる。この場合には、S1〜3,4(S21〜25)が繰り返し実行される。
それに対して、荷重センサ140の検出値が設定値以上上昇した場合には、検出された0点位置が妥当でないため、その値は採用されない。S36において、0点位置復帰フラグはセットされるが、この場合には、例えば、前回の0点位置が採用されるようにすることができる。その後、前回の0点位置まで電動モータ20が回転させられる等の処理が行われる。また、荷重センサ140のオフセットも前回の値に戻すことが望ましい。
また、電動モータ20の単位回転角当たりの変化量ではなく、単位時間当たりの変化量がしきい値以下であるか否かが判定されるようにすることもできる。電動モータ20が一定の回転数で逆方向に回転させられる場合にはこれらは同じになる。
さらに、0点位置の検出は、ブレーキペダル40の操作が解除された場合に限らず、ブレーキが作用状態から非作用状態にされる過程に行うこともできる。この場合には、荷重センサ140によって検出された押圧力が減少傾向にあり、かつ、押圧力が設定値以下になった場合に0点位置の検出が行われるようにすることができる。ブレーキペダル40の操作に伴わないで、ブレーキが作動させられることがあるからである。例えば、トラクション制御が終了させられる過程、ビークルスタビリティ制御が終了させられる過程、自動ブレーキが解除される過程、疑似的に作動させられたエンジンブレーキが解除される過程等が該当する。これらの場合においても0点位置の検出が行われるようにすれば、0点検出の機会を増やすことができ、正確に0点位置を検出することができる。
本実施形態においては、レバー230aに加わる荷重の減少勾配が設定勾配より緩やかになった場合における電動モータ30の回転位置を0点位置とする。レバー230aに加わる荷重は、前述のように、図9のグラフに示すように変化させられるため、荷重がリターンスプリング等のセット荷重に対応する大きさとなり、一対のブレーキシュー202a,bがリターンスプリング等の弾性力によって互いに接近させられ、ドラム内周面204から離間させられた時点ts における電動モータ30の回転位置を0点位置とするのである。なお、この場合には、電動モータ30は、実際の荷重が目標値(0)に近くように制御される。
S1〜3,4(51,52,53)が繰り返し実行され、減少勾配が緩やかになった場合には、S53における判定がYESとなり、その時点ts における荷重fと電動モータ30の回転位置とが検出される。そして、0点位置検出仮フラグがセットされる。
パーキングブレーキは、イグニッションスイッチがOFF状態にある場合に作動させられ、ON状態に切り換えられた場合に解除されることが多い。このパーキングブレーキの解除時に0点位置を検出することができるのであり、イグニッションスイッチがONにされてから早急に検出することができるというメリットがある。
さらに、電動ディスクブレーキにおいて、一対のブレーキ部材62a,bにリターンスプリングを設ければ、ドラムブレーキ用の0点位置検出プログラムの実行に従って0点位置を検出することが可能となる。逆に、ドラムブレーキにディスクブレーキ用の0点位置検出ルーチンに従って0点位置を検出することも不可能ではない。
その他、〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の欄に記載した態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができる。
Claims (10)
- (a)車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付ける駆動装置とを備えたブレーキと、
前記駆動装置による前記ブレーキ部材の前記ブレーキ回転体への押付力が減少させられる際の少なくとも1時点における前記ブレーキの作動状態と、前記ブレーキ部材に加えられる押付力が除かれた場合に直ちに戻らない弾性変形量分である非復元量とに基づいて、前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記駆動装置の位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むことを特徴とするブレーキ装置。 - 前記0点位置検出装置が、前記非復元量を予め定められた一定の量として前記0点位置を検出する手段を含む請求項1に記載のブレーキ装置。
- 前記0点位置検出装置が、前記ブレーキが作用状態から非作用状態に移行した際の前記駆動装置の位置から、前記ブレーキ部材の前記非復元量だけ前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体から遠くなる位置を前記0点位置とする手段を含む請求項1または2に記載のブレーキ装置。
- 前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量変化させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった位置より、前記非復元量で決まる長さだけ前進側の位置を前記0点位置とする手段を含む請求項1または2に記載のブレーキ装置。
- 前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が前記設定量変化させられる間に、前記押付力を複数回検出する検出部と、その検出部によって検出された複数の押付力のうちの2つ以上に基づいて前記減少勾配を取得する手段とを含む請求項4に記載のブレーキ装置。
- 前記駆動装置が駆動源たるアクチュエータを有し、当該ブレーキ装置が、そのアクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置を含み、そのブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、予め定められたパターンに従って制御する0点位置検出時ブレーキ制御部を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
- 前記0点位置検出時ブレーキ制御部が、前記アクチュエータを、前記押付力が予め定められた設定値以下になった後に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する向きに、一定の速度で作動させる手段を含む請求項6に記載のブレーキ装置。
- 前記駆動装置が駆動源たるアクチュエータを有し、当該ブレーキ装置が、そのアクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置を含み、そのブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する向きに、予め定められた一定の速度で作動させる0点位置検出時ブレーキ制御部を含み、前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量変化させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の位置より、前記非復元量で決まる設定量だけ前進側の位置を前記0点位置とする手段を含む請求項1,2,4ないし7のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
- (a)車輪と共に回転するブレーキ回転体と、(b)そのブレーキ回転体の摩擦面と摩擦係合してブレーキ回転体の回転を抑制するブレーキ部材と、(c)自身は車体側部材に相対回転不能に保持され、前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体の摩擦面に接触・離間可能に保持する保持部材と、(d)前記ブレーキ部材を前記ブレーキ回転体に押し付けるアクチュエータを有する駆動装置とを備えたブレーキと、
前記アクチュエータを制御することによって、前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置と、
前記ブレーキ部材が前記ブレーキ回転体の摩擦面に摩擦係合し始める時点の前記駆動装置の位置である0点位置を検出する0点位置検出装置と
を含むブレーキ装置であって、
前記ブレーキ制御装置が、前記0点位置検出装置による前記0点位置の検出の際に、前記アクチュエータを、前記ブレーキ部材が後退する向きに、予め定められたパターンで作動させる0点位置検出時ブレーキ制御部を含み、前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材の位置が予め定められた設定量後退させられる間の前記押付力の平均的な変化である減少勾配が予め定められた設定値以下になった場合の位置より、予め定められた設定量だけ前進側の位置を前記0点位置とする手段を含むことを特徴とするブレーキ装置。 - 前記0点位置検出装置が、前記ブレーキ部材を前記0点位置から予め定められた設定値だけ前進させた場合において、前記押付力が予め定められた設定値以上増加しない場合に、前記検出された0点位置が妥当であると確認する0点位置確認部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載のブレーキ装置。
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