JP3843605B2 - 放射線画像変換パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルに関するものであり、さらに詳しくは防湿性保護フィルムに起因する画像欠陥がなく長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線画像のような放射線画像は病気診断用などに多く用いられている。このX線画像を得るために被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせてこの可視光を通常の写真をとるときと同じように銀塩を使用したフィルムに照射して現像した、いわゆる放射線写真が利用されている。しかし近年銀塩を塗布したフィルムを使用しないで蛍光体層から直接画像を取り出す方法が工夫されるようになった。
【0003】
この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体を例えば光又は熱エネルギーで励起することによりこの蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。具体的には、例えば米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号公報などに記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0004】
この方法は輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーで蓄積させて、その後に輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号をたとえば光電変換し、電気信号を得て、この信号を感光フィルムなどの記録材料、CRTなどの表示装置上に可視像として再生するものである。
【0005】
上記の放射線像記録再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合と比較して、はるかに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。
【0006】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用上では、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0007】
従来より放射線像変換パネルに用いられてきた輝尽性蛍光体の例としては下記のものが一例として挙げられる。
(1)特開昭55−12145号公報に記載されている(Ba1−X,M2+ X)FX:yA(ただし、M2+はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、およびErのうちの少なくとも一つ、そしてxは、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表わされる希土類元素付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;
また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい:
特開昭56−74175号公報に記載されている、X′、BeX′′、M3 X′′′3(ただし、X′、X′′、およびX′′′はそれぞれCl、BrおよびIのうち少なくとも一種であり、M3は三価金属である);
【0008】
特開昭55−160078号公報に記載されているBeO、BgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al2O3、Y2O3、La2O3、In2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb2O5、Ta2O5およびThO2などの金属酸化物;
特開昭56−116777号公報に記載されているZr、Sc;
特開昭57−23673号公報に記載されているB;
特開昭57−23675号公報に記載されているAs、Si;
【0009】
特開昭58−206678号公報に記載されているM・L(ただし、MはLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である);
特開昭59−27980号公報に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;
特開昭59−27289号公報に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;
特開昭59−56479号公報に記載されているNaX′(ただし、X′はCl、BrおよびIのうちの少なくとも一種である);
特開昭59−56480号公報に記載されているV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiなどの遷移金属;
【0010】
特開昭59−75200号公報に記載されているM1X′、M′2X′′、M3X′′′、A(ただし、M1はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′2はBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり;M3はAl、Ga、In、およびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;Aは金属酸化物であり;X′、X′′およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭60−101173号公報に記載されているM1X′(ただし、M1はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
【0011】
特開昭61−23679号公報に記載されているM2′X′2・M2′X′′2(ただし、M2′はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′およびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X′′である);および
特願昭60−106752号明細書に記載されているLnX′′3(ただし、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X′′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
【0012】
(2)特開昭60−84381号公報に記載されているM2X2・aM2′2:xEu2+(ただし、M2はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX′はCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦0.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;
【0013】
また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい;
特開昭60−166379号公報に記載されているM1 X′′(ただし、M1はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭60−221483号公報に記載されているKX′′、MgX′′′2、M3 X′′′′3(ただし、M3はSc、Y、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X′′、X′′′およびX′′′′はいずれもF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭60−228592号公報に記載されているB;
特開昭60−228593号公報に記載されているSiO2、P2O5等の酸化物;
特開昭61−120882号公報に記載されているLiX′′、NaX′′(ただし、X′′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
特開昭61−120883号公報に記載されているSiO;
特開昭61−120885号公報に記載されているSnX′′2(ただし、X′′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);
【0014】
特開昭61−235486号公報に記載されているCsX′′、SnX′′′2(ただし、X′′およびX′′′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである);および
特開昭61−235487号公報に記載されているCsX′′、Ln3+(ただし、X′′はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である);
【0015】
(3)特開昭55−12144号公報に記載されているLnOX:xA(ただし、LnはLa、Y、Gd、およびLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つ;AはCeおよびTbのうち少なくとも一つ;そして、xは、0<x<0.1である)の組成式で表わされる希土類元素付活希土類オキシハライド蛍光体;
【0016】
(4)特開昭58−69281号公報に記載されているM3OX:xCe(ただし、M3はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、およびIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表わされるセリウム付活三価金属オキシハライド蛍光体;
【0017】
(5)特願昭60−70484号明細書に記載されているM1X:xBi(ただし、M1はRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされるビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;
【0018】
(6)特開昭60−141783号公報に記載されているM2 5(PO4)3 x:xEu2+(ただし、M2はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
【0019】
(7)特開昭60−157099号公報に記載されているM2 2BO3X:xEu2+(ただし、M2はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;
【0020】
(8)特開昭60−157100号公報に記載されているM2 2PO4X:xEu2+(ただし、M2はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体;
【0021】
(9)特開昭60−217354号公報に記載されているM2HX:xEu2+(ただし、M2はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;
【0022】
(10)特開昭61−21173号公報に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+(ただし、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XおよびX′はそれぞれF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされるセリウム付活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;
【0023】
(11)特開昭61−21182号公報に記載されているLnX3・aM1X′:xCe3+(ただし、LnおよびLn′はそれぞれY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M1はLi、Na、K、CsおよびRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされるセリウム付活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体;
【0024】
(12)特開昭61−40390号公報に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+(ただし、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされるセリウム付活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;
【0025】
(13)特願昭60−78151号明細書に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+(ただし、XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体;および
【0026】
(14)特願昭60−78153号明細書に記載されているM2X2・aM1 X′:xEu2+(ただし、M2はBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M1はLi、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XおよびX′はそれぞれCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる二価ユーロピウム付活複合ハロゲン化物蛍光体;
を挙げることができる。
【0027】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0029】
そこで、放射線画像変換パネルには得られる放射線画像の画質を劣化させることなく長期間の使用に耐える性能を付与することが望ましい。
【0030】
しかし放射線画像変換パネルの製造に用いられる輝尽性蛍光体は一般に吸湿性が大であり、通常の気候条件の室内に放置すると空気中の水分を吸収し、時間の経過とともに著しく劣化する。
【0031】
具体的には、例えば輝尽性蛍光体を高湿度のもとに置くと、吸収した水分の増大にともなって前記蛍光体の放射線感度が低下する。また一般には輝尽性蛍光体に記録された放射線画像の潜像は、放射線照射後の時間の経過にともなって退行するため、再生される放射線画像信号の強度は放射線照射から励起光による走査までの時間が長いほど小さくなるという性質を有するが、輝尽性蛍光体が吸湿すると前記潜像退行の速さが速くなる。
【0032】
そのため、吸湿した輝尽性蛍光体を有する放射線画像変換パネルを用いると、放射線画像の読み取り時再生信号の再現性が低下する。
【0033】
従来、輝尽性蛍光体の吸湿による前記の劣化現象を防止するには、透湿度の低い防湿性保護層で輝尽性蛍光体を被覆することにより該蛍光体層に到達する水分を低減させる方法がとられてきた。
【0034】
透湿度の低い防湿性保護層としては従来三弗化塩化エチレン等のフィルムが使用されてきたが、このフィルムは高価であり厚みも大きく、フロンを原料として作られるために環境を汚染するという問題点がある。
【0035】
この問題に対し、電界蛍光灯用として特開平10−12376号には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着したフィルムを2〜8枚積層してなる積層フィルムを使用する方法が記載されているが、この方法では防湿性保護フィルムに起因する画像欠陥や、防湿性保護フィルムと蛍光体面との接着状態に起因する画像欠陥等の問題で、病気診断用に使用される放射線画像変換パネル用の防湿性保護フィルムとしてはとても使用できるレベルのものではなかった。
【0036】
本発明の目的は、金属酸化物蒸着フィルムを含む複数の樹脂フィルムからなる積層保護フィルムを使用した場合の前述のような問題点を解決し、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.防湿性保護フィルムが、支持体上に輝尽性蛍光体層が設けられてなる蛍光体シートの上下に配置され、該防湿性保護フィルムは、該蛍光体シートの輝尽性蛍光体層と実質的に接着しておらず周縁が該蛍光体シートの周縁より外側にあり、該蛍光体シートの全表面を被覆するように設けられている、励起光の光源がレーザー光である放射線画像変換パネルであって、前記支持体面側の防湿性保護フィルムは1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムであり、且つ前記蛍光体層面側の防湿性保護フィルムは少なくとも1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムであり、しかも該積層フィルムを構成する接着層の厚さが2.5μmより大きく5μm以下である硬化性接着剤層であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0038】
2.防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層が熱融着性を有する樹脂で構成され、該熱融着層を有する樹脂層中に無機微粒子を0.01wt%〜1.0wt%含有することを特徴とする上記1に記載の放射線画像変換パネル。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する
蛍光体面側の防湿性保護フィルムとして1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムを使用した場合、放射線画像変換パネルから得られる再生画像には該積層フィルムに起因した被写体の放射線画像以外の濃淡が発生する。
【0041】
輝尽性蛍光体プレートの励起光の光源としては一般にビーム収束性の高いレーザー光が用いられるが、このレーザー光を用いた場合には特にこれらの画像欠陥が現れやすい。
【0042】
このような問題点を解決すべく鋭意検討するなかで、本発明者らは蛍光体層面側の防湿性保護フィルムとして、金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムを使用した場合、該積層フィルムを構成する複数層の硬化性の接着剤層が再生画像の微細な濃度ムラに関係があることを見出した。例えば共押出しラミネーション法によって作成された積層フィルムは、積層数に関わらず、かかる濃度ムラは発生しない。また硬化性の接着剤層が存在しても、その厚さが2.5μmより大きければ接着層に起因する濃度ムラは発生しないことも見出した。
【0043】
厚さ2.5μm未満の硬化性接着剤層で濃度ムラ故障が何故に発生するのかは必ずしも明確ではないが、塗布ムラ等による接着剤の硬化時の不均一な体積変化や、或いは硬化のための熱処理時の樹脂フィルムと接着剤層の熱膨張特性の差によって、接着剤層の両側に位置する樹脂フィルムに生じた微細な凹凸(うねり)による光の屈折や、この厚みが励起光波長及び輝尽発光波長の数倍にあたることから光の干渉が関係していると推測される。
【0044】
本発明で言う硬化性の接着剤層とは熱や紫外線による架橋反応を伴うものであり、具体的には主剤と硬化剤を混合して使用する2液反応型や分子構造中に反応基を有する1液型のビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系等の接着剤であり、一般にはドライラミネーション等で頻繁に使用されるものである。
【0045】
但し、ホットメルト系接着剤は、経時硬化タイプを除けば本発明で言う硬化性の接着剤層に含まれない。
【0046】
本発明の積層保護フィルムにより蛍光体シートを封止するにあたって、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることで防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される。
【0047】
しかしながら本発明者らは、上記のような熱融着による蛍光体シートの封止作業によって前記の樹脂フィルム間の接着層による画像ムラとは異なるもっと大きな周期の画像ムラが発生していることを見出した。この画像ムラもまた病気診断用に使用される再生画像としては許容できるものではない。
【0048】
本発明者らはこの画像ムラを解消すべく鋭意検討する中で、防湿性保護フィルムの最下層に位置する熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面との界面に起因するものもあることを見出した。
この種の濃度ムラは蛍光体面と積層保護フィルムが接着状態であっても、実質的に接着していない状態でも発生する。
【0049】
また本発明で言う蛍光体層と実質的に接着していない防湿性保護フィルムとは、つまり蛍光体層面と防湿性保護フィルムが光学的に一体化していない状態のことである。
【0050】
また本発明で言う熱融着性フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等があげられるがこれに限られたものではない。
【0051】
本発明者らは、鋭意検討する中でこの大きな周期の画像ムラは熱融着性を有する樹脂層中にシリカ、チタン、ゼオライト等の無機微粒子を0.01wt%〜1.0wt%含有させておくことで防止できることを見出した。
【0052】
熱融着性を有する樹脂層中の無機微粒子量が0.01wt%以下では効果は少なく、1.0wt%以上では積層保護フィルムの透明性やヘイズ値の劣化を伴う。
【0053】
このような無機微粒子量の添加により該熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面の界面に起因する画像ムラが防止できるのかは必ずしも明らかではないが、樹脂層に高屈折率の無機微粒子を含有することで樹脂層での光の屈折が変化することに起因していると推測される。
【0054】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で該上下の防湿性保護フィルムが融着している封止構造とすることで蛍光体シートの外周部からの水分侵入も阻止できる。
【0055】
さらに支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすること(図1)でより確実に水分の侵入を低減できる。図1において、11は蛍光体、12は支持体、13は積層保護フィルム、14はアルミラミネートフィルムを示す。
またこの封止方法は作業的にも容易である。
【0056】
本発明の放射線画像変換パネルの防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層の熱融着性を有する樹脂層と蛍光体面は接着しても実質的に接着していなくてもかまわないが、実際上は異質な上記樹脂層と蛍光体層を加熱により融着させることは困難であり、また融着状態にムラがあると新たな画像欠陥となるため、樹脂層と蛍光体層を実質的に接着させない方がより好ましい。
ここで言う実質的に接着していない状態とは、つまり蛍光体層面と防湿性保護フィルムが光学的に一体化していない状態のことである。
【0057】
つまり、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムは点接触していたとしても、光学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。より具体的には点接触による接触面積が蛍光体面積の5%未満の状態である。
【0058】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて積層保護フィルムの膜厚が300μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのと後述のインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
【0059】
本発明で使用するシリカやアルミナ等の無機酸化物の蒸着により防湿性を高めた蒸着フィルムは安価で加工性や透明性に優れ、防湿性及び酸素透過性が温度や湿度の影響を受けづらいため、環境によらず安定した画像品質を要求される医療用輝尽性蛍光体プレート用の防湿性保護フィルムとして適している。これらの蒸着フィルムは近年、透明で中身の確認ができることや、熱安定性が高くレトルト殺菌ができる。電子レンジによる中身の加熱が可能等の利点を生かして主に食品分野で不透明なアルミニウムラミネートフィルムの代替えとして普及してきた。
【0060】
但し、前記蒸着フィルム単膜では従来蛍光体の封止に使用されてきた三弗化塩化エチレンフィルムに防湿性の面で劣っており、複数枚を積層化して使用する必要があった。
【0061】
しかしながら、これらの積層化フィルムを放射線画像変換パネル用の保護フィルムとして使用した場合、再生画像に微細な濃度ムラが発生し病気診断用に使用される画像としては許容できるものではなかったが本発明により防湿性保護フィルムとして使用可能となった。
【0062】
本発明に使用する前記蒸着フィルムは必要とされる防湿性にあわせて、蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができる。この場合の積層方法としては、本発明の条件を満たせば一般に知られているどのような方法でもかまわない。
【0063】
積層方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用するが本発明に従うと接着剤層厚は2.5μmより大きくする必要がある。但し接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺などが発生することがあるためより好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0064】
また樹脂フィルムを積層化するためには、ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法及び共押出しラミネーション法も使用でき、上記ドライラミネート方式との併用も可能である。
【0065】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し基材に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0066】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより基材上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0067】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用されるが、基材との接着性を増すために基材にあらかじめ接着促進剤を塗設しておくことがある。
【0068】
この接着促進剤としては、有機チタン系、ポリエチレンイミン系、イソシアネート系、ポリエステル系等があるが、一般にこれらの接着促進剤層は基材フィルムの表面に微細な凹凸をつけ溶融ポリマーの拡散性を向上する目的のものであり本発明で言う2.5μmより大きく5μm以下である硬化性接着剤層には含まれない。
【0069】
共押出しラミネーション法とは異種又は同種の熱可塑性樹脂を2個以上の押出し機から、それぞれの樹脂を同時に押し出して、特別に設計されたダイスの内部又は外部で積層され、製膜と同時に多層フィルムを形成することを言う。
【0070】
一般に共押出しラミネーションに使用される樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、Ny(ナイロン)、ION(アイオノマー)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、POL(ポリオレフィン)等が挙げられる。
【0071】
本発明の封止構造においては蛍光体シートの支持体側の防湿保護フィルムは光学的には不透明であってもかまわないため、防湿性の向上のためにアルミラミネートフィルムとすることが好ましい。
【0072】
ラミネートに使用するアルミ箔フィルムとしてはピンホール等による防湿性劣化の点から9μm以上あることが望ましい。また支持体側の防湿保護フィルムも蛍光体面側の防湿保護フィルムと同様に、膜厚300μm以下、であることが望ましい。
【0073】
本発明の放射線画像変換パネルにおいて用いられる支持体としては各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シートあるいは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。
【0074】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80μm〜500μmである。
これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0075】
本発明において輝尽性蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどのような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができる。
【0076】
このような結合剤の中で特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、ニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物およびポリウレタンとポリビニルブチラールとの混合物である。なお、これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。輝尽性蛍光体層は、例えば、次のような方法により下塗層上に形成することができる。
【0077】
まず、輝尽性蛍光体、および結合剤を適当な溶剤に添加し、これらを充分に混合して結合剤溶液中に蛍光体粒子および該化合物の粒子が均一に分散した塗布液を調製する。
【0078】
本発明に用いられる結着剤としては、例えばゼラチンの如き蛋白質、デキストランの如きポリサッカライドまたはアラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニルデン・塩化ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール等のような通常層構成に用いられる造膜性の結着剤が使用される。一般に結着剤は輝尽性蛍光体1重量部に対して0.01〜1重量部の範囲で使用される。しかしながら得られる放射線画像変換パネルの感度と鮮鋭性の点では結着剤は少ない方が好ましく、塗布の容易さとの兼合いから0.03〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
【0079】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比(ただし、結合剤全部がエポキシ基含有化合物である場合には該化合物と蛍光体との比率に等しい)は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、蛍光体の種類、エポキシ基含有化合物の添加量などによって異なるが、一般には結合塗布液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エノタール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;トルエン;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0080】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製に用いられる溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、トリオール、キシロールなどの芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0081】
なお、塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。そして可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0082】
なお、輝尽性蛍光体層用塗布液中に、輝尽性蛍光体層蛍光体粒子の分散性を向上させる目的で、ステアリン酸、フタル酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などの分散剤を混合してもよい。また必要に応じて結着剤に対する可塑剤を添加してもよい。前記可塑剤の例としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルなどのフタル酸エステル、コハク酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル等が挙げられる。
【0083】
上記のようにして調製された塗布液を、次に下塗層の表面に均一に塗布することにより塗布液の塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いることにより行なうことができる。
【0084】
次いで、形成された塗膜を徐々に加熱することにより乾燥して、下塗層上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。輝尽性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は20μm〜1mmとする。ただし、この層厚は50〜500μmとするのが好ましい。
【0085】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、および超音波分散機などの分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液をドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどの塗布液を用いて支持体上に塗布し、乾燥することにより輝尽性蛍光体層が形成される。
【0086】
支持体上に蛍光体層が塗設された蛍光体シートを所定の大きさに断裁する。断裁にあたっては一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0087】
所定の大きさに断裁された蛍光体シートを防湿性保護フィルムで封止するには既知のいかなる方法も使用できるが、例を挙げると蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間に挟み周縁部をインパルスシーラーで加熱融着する方法、や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0088】
上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0089】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を例証する。
実施例1
ユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.5N)2500mlとEuBr3水溶液(0.2N)125mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を攪拌しながら83℃で保温した。
弗化アンモニウム水溶液(8N)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。
注入終了後も保温と攪拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行なった。
次に沈澱物をろ別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。
【0090】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.1重量%添加し、ミキサーで充分攪拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、820℃で2時間焼成してユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。
次に上記蛍光体粒子を分級することにより平均粒径3μmの粒子を得た。
【0091】
次に放射線像変換パネルの製造例を示す。
【0092】
蛍光体層形成材料として、上記で得たユーロピウム付活弗化ヨウ化バリウム蛍光体427g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30PSの塗布液を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて下塗付きポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、230μmの厚さの蛍光体層を形成した。
【0093】
上記塗布サンプルを5cm×5cmの正方形に断裁し、下記表1で示したアルミナ蒸着PET樹脂層を含む各種積層保護フィルムを使用し、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着することで封止した。
【0094】
尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0095】
蛍光体シートの支持体面側の保護フィルムはキャステングポリプロピレン(CPP)30μm/アルミフィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。またこの場合の接着剤層の厚みは3.0μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0096】
表1の中のVMPETはアルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)を示している。
【0097】
【表1】
【0098】
(放射線画像変換パネルの評価)
▲1▼鮮鋭性の評価
鮮鋭度については、放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80KVpのX線を照射した後パネルHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。下記の表1には空間周波数2サイクル/ におけるMTF値(%)が示されている。
【0099】
この場合MTF値が高いほど鮮鋭性がよい。
▲2▼画像ムラの評価
放射線画像変換パネルに管電圧80KVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像として再生し出力装置より5倍に拡大してプリントアウトし、得られたプリント画像を目視により観察して画像ムラの出現を評価した。
【0100】
各々のサンプルについて1mm未満の周期の画像ムラ、1mm以上の周期の画像ムラそれぞれについて全く発生のなかったものを0、一番激しい発生のものを5として評価した。
【0101】
表中”/”、”//”、”///”はドライラミネーション接着層を意味し、”/”は接着剤層の厚みが1.5μm、”//”は接着剤層の厚みが2.5μm、”///”は接着剤層の厚みが3.0μmであることを示す。またこの時使用した接着剤は樹脂層にあわせて選択した2液反応型のウレタン系接着剤である。
【0102】
また表中”|”はエクストルージョンラミネートまたは共押出しラミネーション法により形成された積層で硬化性の接着剤層が介在しないことを意味し、CPP又はLDPEの先頭に”m−”の記載があるものは樹脂内に0.5wt%のシリカ粒子を含む樹脂層であることを意味する。また各樹脂層の後ろの数字は樹脂層の膜厚(μm)を示す。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、金属酸化物蒸着フィルムを含む複数の樹脂フィルムからなる積層保護フィルムを使用した場合の問題点を解決し、長期間良好な状態で使用することのできる放射線画像変換パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放射線画像変換パネルの一実施例を示す概略断面図
【符号の説明】
11 蛍光体
12 支持体
13 積層保護フィルム
14 アルミラミネートフィルム
Claims (2)
- 防湿性保護フィルムが、支持体上に輝尽性蛍光体層が設けられてなる蛍光体シートの上下に配置され、該防湿性保護フィルムは、該蛍光体シートの輝尽性蛍光体層と実質的に接着しておらず周縁が該蛍光体シートの周縁より外側にあり、該蛍光体シートの全表面を被覆するように設けられている、励起光の光源がレーザー光である放射線画像変換パネルであって、前記支持体面側の防湿性保護フィルムは1層以上のアルミニウムフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムであり、且つ前記蛍光体層面側の防湿性保護フィルムは少なくとも1層以上の金属酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが層状に接着されてなる積層フィルムであり、しかも該積層フィルムを構成する接着層の厚さが2.5μmより大きく5μm以下である硬化性接着剤層であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層の樹脂層が熱融着性を有する樹脂で構成され、該熱融着層を有する樹脂層中に無機微粒子を0.01wt%〜1.0wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
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