JP3737257B2 - 2次元表現によるスペクトルデータの処理方法及び補正方法 - Google Patents

2次元表現によるスペクトルデータの処理方法及び補正方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光分析における分析対象物のスペクトルデータの処理に微分演算を利用して、該分析対象物について正確な特徴情報を得るようにした2次元表現によるスペクトルデータの処理方法と、該処理方法を利用してスペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを一致させ、あるいは補正するようにしたスペクトルデータの補正方法とに関するものである。分光分析としては、赤外、近赤外、可視、紫外スペクトル分析、各種クロマトグラム分析、ラマンスペクトル分析、電子線、X線スペクトル分析等が例示される。
【0002】
【従来の技術】
一般に、分光分析(例えば、赤外線吸収スペクトル分析等)においては、分析の対象となっている物質(以下、これを「分析対象物」という)を透過した光の強度スペクトル又は吸光度スペクトルを測定し、該スペクトルの形態すなわちスペクトルプロファイルに基づいて分析対象物に関する種々の自然科学的な特徴ないしは情報(以下、これを「特徴情報」という)、例えば該分析対象物に含まれる物質の種類あるいは濃度等を得るようにしている。そして、かかるスペクトルプロファイルとしては、従来より、分析対象物の透過光の吸光度(あるいは強度)を、波数(あるいは波長)に対してあらわしたもの(以下、これを「吸光度・波数スペクトルプロファイル」という)が広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような吸光度・波数スペクトルプロファイルに基づいて種々の特徴情報を得るようにした従来の分光分析手法では、スペクトルデータには多数の特徴情報が潜在的に含まれているのにもかかわらず、これらの特徴情報のすべてを正確に抽出することはできないので、分析対象物についてさほど多くの特徴情報を得ることができず、あるいは得られた特徴情報の種類によってはその精度があまり高くない場合があるといった問題がある。
したがって、分析対象物について測定されたスペクトルデータから、精度の高い特徴情報をより多く得ることができるスペクトルデータの処理手法ないしは解析手法が求められている。
【0004】
また、定量分光分析においては、一般に多数の標準サンプルをつくり、これらの標準サンプルのスペクトルデータから定量モデルをつくる必要がある。そして、この場合、各標準サンプルのスペクトルデータは各別のスペクトル測定によって採取されるが、各スペクトル測定における測定状態(例えば、分光器の状態、サンプルの状態等)は、どのように注意しても多少は違ったものになり、したがって各標準サンプルのスペクトルデータはかかる測定条件の違いによる偏差ないしは誤差を含むことになる。
【0005】
具体的には、かかるスペクトルデータからつくられた吸光度・波数スペクトルプロファイルには、特徴情報を得る上において無効な底辺部分が存在する。そして、この吸光度・波数スペクトルプロファイルの特徴情報を得る上において有効な部分と無効な部分との境界は、一般に「基準(定量の基準)」ないしは「ベースライン」と称されるが、この定量の基準ないしはベースラインは、分光器のドリフト、あるいはサンプルの状態等によって変動する。このため、各標準サンプルの吸光度・波数スペクトルプロファイルから定量モデルをつくる際には、各標準サンプルのスペクトルプロファイル間の定量の基準ないしはベースラインを一致させ、あるいは補正する必要がある。
【0006】
しかしながら、吸光度・波数スペクトルプロファイルを用いる従来の分光分析手法では、定量の基準ないしはベースラインを一致させ、あるいは補正するのがなかなかむずかしいといった問題がある。なお、標準サンプルが水系サンプルである場合は、吸光度・波数スペクトルプロファイル中でベースラインを判別することが不可能であるので、定量の基準ないしはベースラインの補正、ひいては定量モデルの作成が極めてむずかしいといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、分析対象物のスペクトルデータから、該分析対象物について容易に、より正確な特徴情報をより多く得ることができる手段を提供することを解決すべき課題とする。さらに、本発明は、スペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを容易に一致させ、あるいは補正することができる手段を提供することをも解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明の1つの態様は、(a)所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、(b)nを0以上の整数とし、nをnとは異なる0以上の整数とした場合において、スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn次微分値及びn次微分値を演算し、(c)2次元座標面におけるx座標がn次微分値であり、y座標がn次微分値である点を2次元座標面上にプロットして、スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、(d)微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得るようにした2次元表現によるスペクトルデータの処理方法であって、(e)上記特徴情報が、所定の時間領域、波数領域又は波長領域におけるスペクトルプロファイルの一致の程度又は対称性であることを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法を提供する。
本発明の別の態様は、上記構成(a)〜(d)を備えた2次元表現によるスペクトルデータの処理方法であって、上記特徴情報が、所定の時間領域、波数領域又は波長領域におけるスペクトルプロファイルの一致の程度又は対称性であることを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法を提供する。
【0009】
このスペクトルデータの処理方法においては、微分スペクトル2次元プロファイルが分析器の出力信号強度の時間、波数又は波長に対するスペクトルプロファイルの微分処理に基づいて作成されるので、該微分スペクトル2次元プロファイルには、該スペクトルプロファイル中に存在する極大点、極小点、最大勾配点(変曲点)等が明瞭に表現される。さらには、該スペクトルプロファイル中に存在する重畳した不明瞭なピーク、あるいはショルダに埋もれた微小なスペクトル等の特徴も鮮明に表現される。このため、分析対象物のスペクトルデータから該分析対象物について容易により正確な特徴情報をより多く得ることができる。
【0010】
また、微分スペクトル2次元プロファイルでは、時間、波数又は波長は媒介変数に過ぎないので、スペクトルプロファイルの時間、波数又は波長のずれ(シフト)は消去される。このため、スペクトルプロファイルでは波数又は波長のずれが伴われる複数のスペクトルデータについて、格別に該ずれを補正しなくても、該ずれがない状態で各スペクトルデータの特徴情報を比較・評価することができる。
【0011】
さらに、微分スペクトル2次元プロファイルでは、格別にスペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを補正しなくても該定量の基準ないしはベースラインを実質的に消去することができる。また、低周波成分を消去することも可能である。このため、定量分光分析において、標準サンプルのスペクトルデータから定量モデルを作成するのが容易となる。
【0012】
上記スペクトルデータの処理方法においては、n1及びn2が、それぞれ4以下であるのが好ましい。5次以上の微分を用いるのは、演算を複雑化するばかりか、ノイズの影響が顕著となるので、実用性があまり高くないからである。
【0013】
上記スペクトルデータの処理方法においては、n次微分値及びn次微分値を、それぞれ、所定のデータ点数(ウィンドウ幅)の2次の多項式を微分次数に対応する回数だけ繰り返して数値微分することにより演算するようにしてもよい。このようにすれば、ノイズの影響をほとんど受けずに微分スペクトル2次元プロファイルを作成することができる。
また、n次微分値及びn次微分値を、それぞれ、所定のデータ点数の3・4次の多項式を微分次数に対応する回数だけ繰り返して数値微分することにより演算するようにしてもよい。
【0014】
上記スペクトルデータの処理方法においては、複数の分析対象物についてそれぞれ微分スペクトル2次元プロファイルを作成して同一の2次元座標面上に表示し、各微分スペクトル2次元プロファイル中の、時間、波数又は波長が等しい点を結ぶ線を付け加えた上で、スペクトルデータに関する特徴情報を得るようにするのが好ましい。このスペクトルデータの処理方法は、特徴情報が、例えばスペクトルデータを採取する分光器の線形性である場合等において有効である。
【0015】
また、この場合、分析対象物の物性から時間、波数又は波長が等しい点を結ぶ線が直線となることが予測される場合には、時間、波数又は波長が等しい各点にフィットする直線を最小2乗法により設定し、該時間、波数又は波長が等しい各点が該直線上にくるようにスペクトルデータを補正することにより、該スペクトルデータの誤差を消去することができ、より正確な微分スペクトル2次元プロファイルを作成することができる。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、上記の2次元表現によるスペクトルデータの処理方法により得られた特徴情報を用いて、スペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを補正することを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの補正方法を提供する。このスペクトルデータの補正方法によれば、スペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを容易に一致させることができ、あるいは補正することができる。
【0017】
上記2次元表現によるスペクトルデータの処理方法においては、n1次微分値及びn2次微分値を、それぞれ最適な微分パラメータを用いて数値微分することにより演算するようにしてもよい。この場合、最適な微分パラメータは、上記スペクトルデータの処理方法を用いて得られた特徴情報に基づいて設定することができる。
また、本発明のもう1つの態様によれば、上記2次元表現によるスペクトルデータの処理方法により得られた特徴情報を用いて、スペクトルデータ間の定量の基準を補正し、補正されたスペクトルデータを用いて微分スペクトル2次元プロファイルを作成することを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
(2次元表現によるスペクトルデータ処理及びベースライン補正の概要)
スペクトルデータのプロファイルには、多くの特徴情報が顕在的あるいは潜在的に含まれている。目的とする特徴情報をいかに抽出するか、鮮明にするか、あるいは濃縮するかは、分光分析の分野における研究課題の1つである。そして、かかるスペクトルデータのプロファイルをより合理的に表現することができれば、その特徴情報の抽出、分類、比較あるいは補正などといったスペクトルデータ解析が容易かつ正確なものとなる。一般に、関数ないしは曲線は、これらを微分することによってその特徴をより正確に把握することができる。微分を用いれば、関数や曲線の増減、凹凸、極値、変曲点の判別・抽出等を容易に行うことができる。微分は、スペクトルデータのプロファイル解析における有力な手段であるといえる。
【0019】
本発明は、このような微分の機能を利用した、2次元のグラフィカルなスペクトルプロファイルの特徴抽出手法に関するものであり、以下では、その基礎と応用例とについて説明する。グラフィカルな表現によれば、その本質を直感的に把握することができ、またその拡大・縮小、移動、変形・修正などといった基本処理ないしは基本操作が容易である。また、該表現の次元を増やせば、その数学的な操作も多彩なものとなるといった利点がある。
【0020】
(微分の作用・効果)
微分スペクトルとは、吸光度スペクトル又は強度をスペクトル(以下では、単に吸光度スペクトルという)を波数又は波長(以下では、単に波数という)に対して1次微分又は高次微分して、該微分値を波数に対してプロットしたものである。なお、以下では、吸光度スペクトルをn次微分したものをn次微分スペクトルという。このように吸光度スペクトルを微分することにより、極大点、極小点、最大勾配点(変曲点)などといった特徴点を明確に検出することができる。さらには、吸光度スペクトル中の重畳した不明瞭なピークや、ショルダに埋もれた微小なスペクトルなどといった特徴を鮮明にすることができる。吸光度スペクトルのディテール(詳細部)の抽出能力を高めれば、非常に類似したスペクトルを区別したり、スペクトルの微妙な変化を追跡することが可能となる。微分の作用としては、上記のプロファイルの特徴抽出作用のほかに、ベースラインのシフト補正作用があげられる。例えば、1次微分を用いれば、ベースラインのオフセットを除去することができる。2次微分を用いれば、ベースラインの傾斜も除去することができる。さらに、微分処理は、低周波成分を除去・低減するといった作用・効果も有する。
【0021】
(曲線の特徴)
前記のとおり、関数や曲線はこれらを微分することによってその特徴を把握することができ、例えば微分によれば、関数や曲線の増減、凹凸、極値、最大勾配点(変曲点)の判別・抽出等を容易に行うことができる。
特徴点である極値(頂上、谷)及び最大勾配点(変曲点)の判別・抽出は、それぞれ、式1a,1b(又は、式2a、2b)及び式3a,3bに示すような極値判定条件及び最大勾配点(変極点)判定条件に従って、表1に示すような増減表を用いて行うといった方法が従来より知られている。
【0022】
【表1】
Figure 0003737257
【0023】
<極値の判定条件1>
【数1】
f'(a)=0 かつ f"(a)<0 ならば、f(x)は x=a で極大………………式1a
f'(a)=0 かつ f"(a)>0 ならば、f(x)は x=a で極小………………式1b
<極値の判定条件2>
【数2】
f'(a)=0 であるとき、x=a の近傍において
x<a で f'(x)>0、x>a でf'(x)<0ならば、f(x)はx=a で極大…式2a
x<a で f'(x)<0、x>a でf'(x)>0ならば、f(x)はx=a で極小…式2b
【0024】
<最大勾配点(変極点)の判定>
【数3】
f"(a)=0 かつ f'(a)<0ならば、f(x)は x=aで下り側最大勾配点…式3a
f"(a)=0 かつ f'(a)>0ならば、f(x)は x=aで上り側最大勾配点…式3b
【0025】
図1に、次の式4であらわされるガウス関数を用いて合成した双峰ピークのグラフを示す。以下では、この図1に示すグラフを、模擬原スペクトル(吸光度・波数スペクトル)であるとして曲線の特徴を説明する。
【数4】
f(x)=exp{−(x+1.25)2/2σ2}+0.8exp{−(x−1.25)2/2σ2}……式4
ただし、ここでは、σ=1としている。
【0026】
まず、模擬原スペクトルの1次微分D1と2次微分D2とについての2次元(2D)表現を説明する。D1値をx軸にとり、D2値をy軸にとり、同一波数のデータ対をプロットしてこれらを順次直線で結んでゆくと、図2に示すような2次元の軌跡(以下、これを「D1−D2プロット」という)が得られる。該軌跡のy軸との交点は極値である。該交点のy座標が負ならば極大点(T1、T2)であり、正ならば極小点(V1)であり、これらの座標値は極値の大きさを示している。他方、該軌跡のx軸の交点は最大勾配点である(P1〜P4)。
【0027】
ここで、xの始点からxの終点にわたって走査すると、図2に示す2次元プロットにおいては、軌跡は原点Oを出発点とし、第1象限を通ってx軸とP1(上り側最大勾配点)で交差して第4象限に入る。そしてy軸とT1(極大)で交差して第3象限に入る。以下、詳しい説明は省略するが、該軌跡は、時計回りにピークの特徴を描きつつ順次P2、V1、P3、T2、P4を経て、最後に再び原点Oに収束する。
【0028】
ところで、実際に得られるスペクトルデータは、たいていは連続データではなく、適当なサンプリング間隔ないしはデータ間隔でデジタル化されたデータである。このため、例えば2次微分値(あるいは1次微分値)が0となる点が、実際に存在するデータ点と一致するとは限らない。したがって、隣接するデータ対(x=x1のデータと、x=x2のデータ)について、次の式5を満たすような、微分値の符号が反転するデータ対を全データ点について走査して調べなければならない。
【数5】
(f"(x1)・f"(x2)≦0)……………………………………………………式5
したがって、デジタル化されたデータについて、表1に示すような増減表を作成するのはかなり煩わしく、かつ間違いが生じやすいといった欠点がある。
【0029】
他方、本発明にかかるD1−D2プロットは、グラフィカルな表現で時計回りの軌跡として描かれるので、非常に理解しやすく、かつ間違いもほとんど起こらない。しかも、特徴点の大きさを定量的に把握することができる。また、微妙なプロファイルの形状を把握することができる。このように、本発明にかかる2Dプロットは、プロファイルの軌跡を追跡するための信頼性の高いピーク検出アルゴリズムとして利用することができる。
なお、例えば図3に示すようなマルチピークを有する吸光度スペクトルの全体像を広い波数域にわたって把握するには、例えば図4に示すように、D1−D2プロットに対して、波数(ないしは波長)を第3軸にとって3次元表現すればよい。
【0030】
また、図1に示す模擬原スペクトルを2次微分すると、図5に示すような2次微分スペクトルが得られるが、この2次微分スペクトルをさらにxで微分して3次微分D3及び4次微分D4をとり、D3値をx軸にとり、D4値をy軸にとり、同一波数のデータ対をプロットしてこれらを順次直線で結んでゆくと、図6に示すような2次元プロット(D3−D4プロット)が得られる。これは、式4に示すガウス関数を用いて合成した図1に示す双峰ピークの模擬原スペクトルの2次微分スペクトルの特徴点を抽出・判別するものである。図6に示すD3−D4プロットでは、図2に示すD1−D2プロットに比べて特徴点が増加している。
【0031】
(2次曲線のベースライン)
以下、原スペクトルにベースラインが伴われる場合について説明する。
図7は、図1に示すベースラインが存在しない模擬原スペクトルに対して、次の式6に示すような2次曲線g(x)のベースラインが付加された模擬原スペクトルを示している。
【数6】
g(x)=a+bx+cx2…………………………………………………………式6
ただし、ここでは、a=0.1、b=0.02、c=0.003としている。
したがって、図7に示す原スペクトルは、次の式7で示される関数h(x)に対応するグラフである。なお、表2に、式7に示す関数h(x)ついての増減表を示す。
【数7】
h(x)=f(x)+g(x)…………………………………………………………式7
【0032】
【表2】
Figure 0003737257
【0033】
図8と図9とに、それぞれ、図7に示すベースラインを伴った模擬原スペクトルについて、D1−D2プロットと、D3−D4プロットとを作成した結果を示す。
D1−D2プロットである図2と図8とを比較すれば明らかなとおり、式4についてのD1−D2プロットと、式7についてのD1−D2プロットとは明らかにその形状が異なっている。しかしながら、D3−D4プロットである図6と図9とを比較すれば明らかなとおり、式4についてのD3−D4プロットと、式7についてのD3−D4プロットとは完全に一致している。すなわち、式6に示す2次曲線g(x)のベースラインの影響は、D3−D4プロットでは除去(ないしは減殺)されていることがわかる。このように、微分はベースラインの影響を除去するといった作用・効果がある。
【0034】
(2Dプロットの種類)
以下、2Dプロットの種類について説明する。
原スペクトルを高次微分する場合、その微分次数は4次以下とするのが実用的であるが、原スペクトル微分して4次微分までとる場合、2D表現としては、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0、D1−D2、D2−D3、D3−D4、D2−D4の各プロットが実用可能と考えられる。なお、D1−D3プロットあるいはD1−D4プロットを用いることも不可能ではない。
【0035】
以下では、理解を容易にするため、互いにピーク高さが異なる複数のガウス型単峰ピークを模擬原スペクトルとして用いて、各種2Dプロットの特徴等を説明する。すなわち、シミュレーション用スペクトルとして、次の式8であらわされるガウス型関数を用いる。
【数8】
f(x)=exp{−(x2/2σ2)}………………………………………………式8
ただし、ここでは、データ間隔を 0.02σとしている。
【0036】
図10(a)〜(d)に、それぞれ、式8を用いて合成された単峰ピークの4種の模擬原スペクトルと、これらの模擬原スペクトルの1次微分スペクトルと、2次微分スペクトルと、4次微分スペクトルとを示す。なお、ここにおける微分処理では、ディジタル微分式として13点の3・4次の微分式を用い、かつマルチパスによる高次微分を用いている。
【0037】
図11(a)〜(h)に、それぞれ、図10(a)〜(d)に示す模擬原スペクトル又は微分スペクトルに基づいて、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0、D1−D2、D2−D3、D3−D4、D2−D4の各2Dプロットを作成した結果を示す。
図11(a)〜(h)に示す各2Dプロットにおいては、用いる原スペクトル又は微分スペクトルの組み合わせに応じて、そのプロファイル(パターン)にそれぞれの特徴があらわれている。例えば、D1−D0プロットは、バルーン型となっている。そして、D2−D0プロットでは、模擬原スペクトルの単峰ピークの右側半部と左側半部とが完全に重なっており、これにより該ピークが完全な対称性を有していることがわかる。また、D1−D2プロットは、ハート型となっている。
【0038】
これらの結果から、ピークの対称性は、D2−D0プロット又はD4−D0プロットから容易に判定することができることがわかる。また、1次微分は模擬原スペクトルのプロファイルの勾配であるので、D1−D0プロットにおいてD1の符号を反転して重ね描きすれば、ピークの対称性をさらに明瞭に把握することができる。
【0039】
また、微分スペクトルの2Dプロットを用いれば、ベースラインやバックグラウンドの補正を行うことができる。具体的には、1次微分スペクトルを用いれば、ベースラインのオフセットを除去することができる。2次微分スペクトルを用いれば、ベースラインの傾斜も除去することができる。さらに、このような微分処理は、低周波成分を除去・低減するといった作用・効果を有する。
【0040】
(2Dプロットと同波数線)
図12(a)〜(h)に、それぞれ、図11(a)〜(h)に示す各2Dプロットにおいて、同一波数点(ないしは同一波長点)を直線で結んだプロファイル(パターン)を示す。このシミュレーション例では、図10(a)に示す模擬原スペクトルは高さの異なるガウス型ピークであり、かつそのベースラインはオフセットを持たない水平な直線(すなわちx軸)であるので、同一波数点は同一直線上に存在する。また、これらの直線は原点を通ることは明らかである。なお、以下ではこれらの直線を「同波数線」ということにする。すべての同波数線において、データ点の原点からの距離の比はピーク高さの比に対応しており、これらの2Dプロット(2次元表現)においては、線形性が成り立っている。したがって、図形的には、これらのプロファイルを容易に拡大又は縮小することができる。なお、一般論として、同波数線が原点を通らない場合は、同波数線のy軸上の切片(オフセット)の大きさは、何らかのエラーあるいはバックグラウンド等の影響があることを意味する有用な特徴情報となる。
【0041】
(2Dプロットと最小2乗フィッティング)
ところで、例えば分析対象物の物性等に鑑み、同一波数点が直線上に存在しなければならないことが予測されないしは前提とされる場合は、任意のスペクトルあるいはデータ点のエラー(誤差)を、最小2乗法を用いて同一波数点に直線をフィッティングすることにより補正することができる。かかるフィッティングとしては、例えば、y軸方向のエラーを最小にする通常の最小2乗フィッティング、あるいはy軸及びx軸の両軸方向のエラーを最小にする2次元フィッティング(以下、2Dプロット・2Dフィッティングと呼ぶ)を用いることができる。また、ベースライン領域では、高次微分スペクトルの方がより真値に近くなるので、局所的なフィッティングも用いることができる。
【0042】
(数値微分式のパラメータの選択)
一般に、微分処理は高周波ノイズを増幅するので、SN比の小さいスペクトルでは微分処理に注意を要する。デジタル微分演算においては、スペクトルの半値幅やノイズの特性を考慮して、微分に用いる多項式の最適な次数及びデータ点数を設定しなければならない。しかしながら、一般には、これらを試行錯誤により設定しているのが実状である。
【0043】
本発明にかかるデジタル微分演算においては、2次微分は、1次微分を2回繰り返すことにより(2パス方式)行われ、これより高次の微分も同様にマルチパス方式で行われる。
以下、数値微分を行うための多項式の次数として、2次式(quadratic)と3・4次式(cubic quartic)とを用いて、これらについて微分処理の態様を比較・評価した結果を説明する。
【0044】
ここで、シミュレーション用スペクトル(模擬原スペクトル)としては、基本的には、ガウス型関数を用いて合成された次の式9に示す関数を用いた。
【数9】
f(x)=exp{−(x+1)2/2σ2}+0.5exp{−(x−3)2/2(σ/2)2}……式9
なお、デジタル化は、データ間隔0.04σ(σ=1)で行った。
そして、ノイズを含むシミュレーション用スペクトルとして、式9に示す関数f(x)にあるレベルのランダムノイズn(x)を加算した次の式10で示す関数j(x)を用いた。
【数10】
j(x)=f(x)+n(x)…………………………………………………………式10
【0045】
図13(a)〜(e)に、それぞれ、式10に示す関数を用いて合成された模擬原スペクトルと、該模擬原スペクトルを連続関数として微分して得られた1次〜4次微分スペクトルとを示す。
図14(a)〜(e)に、それぞれ、式10に示す関数を用いて合成された模擬原スペクトルと、該模擬原スペクトルを2次の多項式(微分式)を用いた数値微分により微分して得られた1次〜4次微分スペクトルとを示す。
図15(a)〜(e)に、それぞれ、式10に示す関数を用いて合成された模擬原スペクトルと、該模擬原スペクトルを3・4次の多項式(微分式)を用いた数値微分により微分して得られた1次〜4次微分スペクトルとを示す。
これらの結果から、2次の多項式を用いて数値微分を行った場合は、微分スペクトルにノイズの影響はほとんど生じないが、3・4次の多項式を用いて数値微分を行った場合は、微分スペクトルにノイズの影響が比較的強くあらわれることがわかる。
【0046】
図16(a)〜(d)に、それぞれ、図13(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、連続関数として微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す。
図17(a)〜(d)に、それぞれ、図14(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、2次の多項式を用いて数値微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す。
図18(a)〜(d)に、それぞれ、図15(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、3・4次の多項式を用いて数値微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す。
これらの結果から、2次の多項式を用いて数値微分を行った場合は、2Dプロットにノイズの影響はほとんど生じないが、3・4次の多項式を用いて数値微分を行った場合は、2Dプロットにノイズの影響が比較的強くあらわれることがわかる。
【0047】
以下、ノイズを含まない連続関数の模擬原スペクトルの微分により作成された微分スペクトルないしは2Dプロットを理想値として、ノイズを含む模擬原スペクトルの2次又は3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された微分スペクトルないしは2Dプロットを比較・評価する。
図19(a)〜(d)に、それぞれ、ノイズを含まない連続関数の模擬原スペクトルの微分により作成された上記理想値である、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図20(a)〜(d)に、それぞれ、レベル1のノイズ(Noise1)を含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図21(a)〜(d)に、それぞれ、レベル2のノイズ(Noise2)を含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図22(a)〜(d)に、それぞれ、レベル3のノイズ(Noise3)を含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図23(a)〜(d)に、それぞれ、レベル4のノイズ(Noise4)を含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
【0048】
図24(a)〜(d)に、それぞれ、ノイズを含まない連続関数の模擬原スペクトルの微分により作成された上記理想値である、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図25(a)〜(d)に、それぞれ、レベル1のノイズ(Noise1)を含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図26(a)〜(d)に、それぞれ、レベル2のノイズ(Noise2)を含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図27(a)〜(d)に、それぞれ、レベル3のノイズ(Noise3)を含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
図28(a)〜(d)に、それぞれ、レベル4のノイズ(Noise4)を含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。
【0049】
図13〜図28から明らかなとおり、数値微分に2次の多項式(微分式)を用いた場合は、その平滑効果が効くのでノイズの影響は受けにくいものの、スペクトルの大きさは、連続関数のそれと比較するとやや小さくなっている。他方、数値微分に3・4次の多項式(微分式)を用いた場合は、ノイズの影響を受けやすいものの、スペクトルの大きさは連続関数の微分値にほぼ一致している。1次微分においては、2次の多項式(微分式)を用いた場合と3・4次の多項式(微分式)を用いた場合との間の差異は小さいが、微分演算を繰り返して高次微分を求めてゆくと、上記差異が大きくなってゆくことがわかる。ノイズの影響を考慮すれば、数値微分に2次の多項式(微分式)を用いるのが実用的である。
【0050】
(2Dプロットと最小2乗フィッティング)
多成分系サンプルにおいては、各成分の吸光度の加算性が成り立つ。すなわち、同一波数点が同一直線上(同波数線上)になければならないという前提が成り立つであろう。これは、この場合は任意のスペクトルあるいはデータ点のエラー(誤差)を、最小2乗フィッティングにより補正することができるということを意味する。かかる最小2乗フィッティングとしては、前記のとおり、y軸方向のエラーを最小にする通常の最小2乗フィッティング、あるいはy軸とx軸の両軸方向のエラーを最小にする2Dプロット・2Dフィッティングを用いることができる。また、ベースライン領域は、ノイズの影響がなければ、高次微分スペクトルの方がより真値に近いことから、局所的なフィッティングも用いることができる。
【0051】
このシミュレーションとして、前記の式10に示す関数の模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分による2Dプロットに最小2乗2Dフィッティングを施し、その効果を調べた。
図29(a)〜(d)に、それぞれ、数値微分に3・4次の多項式(微分式)を用いた1次〜4次微分スペクトルを示す。
図30(a)〜(d)に、それぞれ、そのD1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットにおいてデータを最小2乗2Dフィッティング法で補正ないしは推定した値から再生して得られた、1次〜4次微分スペクトルを示す。
【0052】
図29及び図30からは、最小2乗2Dフィッティングの効果を明らかに読み取ることができる。このシミュレーションでは、サンプル数は4個であるが、サンプル数が多くなれば、ノイズの低減効果あるいはひずみの補正効果がより大きくなることが期待できる。
従来のスペクトル表現方法では、このような手法を用いることは不可能である。従来のスペクトル表現方法では、高次微分スペクトルに対するノイズの影響の増大を抑制するために、一般にデジタルスムージングを施しているが、その効果は小さい。
なお、定量分光が目的の場合は、微分スペクトルを用いてもよいことは明らかである。この場合、高次微分を用いるかどうかは、微分で得られるベースラインやバックグラウンドの補正効果と、高次微分に対するノイズの影響度との兼ね合いで決定される。
【0053】
(波長シフトと2Dプロット)
原スペクトルにおける原点や基点のずれによる単純な波数シフト(波長シフト)は、連続関数であればこれを波数方向に平行移動することにより解消することができる。しかしながら、デジタル化されたスペクトルデータにおいては、推定されるすべての波数点において内挿近似計算をやり直す必要があるので、その処理は非常に繁雑である。
【0054】
しかしながら、本発明にかかる2Dプロット表現においては、波数(又は波長)は媒介変数であり、したがって2Dプロットは波数シフトを含まないプロファイルそのものを表現している。
図31(a)〜(c)に、それぞれ、同じガウス型単峰ピークで波数シフト(波長シフト)した複数の原スペクトルと、これらの原スペクトルの1次〜2次微分スペクトルとを示す。
また、図32(a)〜(c)に、それぞれ、図31(a)〜(c)に示す原スペクトル又は微分スペクトルに基づいて作成された、D1−D0、D2−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す。これらの図から明らかなとおり、2Dプロット表現では、ピークプロファイルが同一であるために、そのプロファイル(パターン)は完全に一致する。
【0055】
このように、2Dプロット表現は、波数の異なる2つのピークプロファイルの一致度や参照ピークとの一致度を調べるのに非常に便利である。ピークの勾配のプロファイルである1次微分について、その符号を反転して重ね描きすればピークの対称性もよくわかる。一般に、中心軸や対称軸を求めるのは、試行錯誤的な計算を繰り返す必要があるので厄介であるが、本発明にかかる2Dプロット表現では、中心軸や対称軸の計算は不要である。
【0056】
(プロファイルの対称性)
水系サンプルの分光分析においては、水吸収ピークの影響の小さい水吸収ピークの中間の領域が注目に値する。
図33(a)は、波数域8000−4000cm-1における水の吸光度スペクトルである。以下、この吸光度スペクトルの波数域4100−5000cm-1におけるプロファイルの特徴を2Dプロット法で調べた結果を説明する。
図33(b)は、図33(a)に示す吸光度スペクトルの波数域4100−5000cm-1におけるD1−D0プロットである。
図33(c)は、図33(b)に示すD1−D0プロットについて、1次微分D1の符号を反転して重ね描きしてプロファイルの対称性をみたものである。この処理においては、中心軸や対称軸の計算は不要である。
図33(d)は、図33(b)に示すD1−D0プロットを、2次曲線で近似することができるかどうかを調べたものである。
このように、2Dプロット法は、微分操作とグラフィカルの重ね合わせとを用いて、プロファイルの対称性などの特徴を調べることができる。
【0057】
(検知器の応答特性と最適セル長)
分光分析に際して分光器の応答特性(線形性)を把握しておくことは、スペクトル走査の基本事項である。以下、可変長セルを用いて最適セル長と2Dプロットの特徴との関係について調べた結果を説明する。ここでは、セル長を、800〜100μmの範囲内で50μm間隔で変化させて走査した。検知器とビームスプリッタとは、それぞれ、FT−IR分光器に付属のPbSe検知器ユニットとCaF2とを使用した。
【0058】
図34と図35とに、それぞれ、セル長が100、150、200、250、300、350、400μmにおける、水のシングルビームスペクトルとその2Dプロット上の同波数線とを示す。
従来の普通のスペクトル表現からは、スペクトルデータが線形であるか非線形であるかを読み取ることはできない。しかしながら、図35から明らかなとおり、この2Dプロットにおいては、セル長が300μmを超えると1.93μmの特性吸収ピークは非線形になっている。この波数域で線形性の水の特性吸収ピークを得るには、セル長が200μm以下であることが望ましいことがわかる。
【0059】
(ベースライン補正)
スペクトルの比較や定量においては、スペクトル間の定量の基準、一般にはベースラインを一致させる必要がある。水系サンプル中の混合成分のスペクトルは、水のバックグラウンドに埋没しており、したがって混合成分のスペクトルは、差スペクトルで観察することになる。この場合、両者の基準が一致していないと目的とする明瞭な差スペクトルは得られない。
また、定量モデルを作成する際には、多数の標準サンプルを用いる。この場合、スペクトル走査に時間を要するので、分光器のドリフトや、サンプルのセッティング誤差や、サンプルの状態のばらつきが生じるのは避けられない。そして、ベースラインはシフトしたり、傾いたり、湾曲したりし、しかも一定しない。これらの要素は、主成分回帰法などの多変量解析手法の定量モデルを作成する場合でも、モデルの確度に影響を及ぼし、定量モデルのトランスファーの障害となる。そこで、これらを前処理で取り除いてモデルを作成する必要がある。
【0060】
ベースラインやバックグラウンドの補正手法については、従来より種々のものが知られている。具体的には、例えば、フーリエ変換を用いて低周波成分をフィルタリングする手法、中間領域の極小値を探索しながらフィッティングする手法、deconvolution 処理で分解能を高めた後、ピーク頂上とベースラインの参照点を求めてフィッティングする手法、あるいは平均スペクトルにフィッティングする手法(MSC)などが知られている。なお、これらのフィッティング法は、何にフィッティングするかが異なる。
【0061】
(フラット領域のある赤外スペクトルのベースライン補正)
以下、フラット領域のある赤外スペクトルのベースライン補正方法について説明する。
図36(a)は、濃度の異なる5種のサンプルの吸光度スペクトルを重ね描きしたものである。図36(a)から明らかなとおり、各吸光度スペクトル間でベースラインは一致しておらず、シフトが観察される。
図36(b)は、図36(a)に示す吸光度スペクトルのベースライン部分を拡大して示す図である。ピークの両側にフラットな領域をもつ孤立したピークの場合、フラットなデータ点に直線又は2次曲線をフィッティングすることによりベースラインを推定することができる。フラットな領域であるか否かは、その勾配、すなわち微分値から判断することができる。
図36(c)は、原吸光度スペクトルと、その1次及び2次の微分値にスレシホールドレベル(しきい値)を設定することにより、自動的に抽出されたフラットな領域である。
【0062】
図37(a)は、図36(c)に示すデータ点に2次曲線をフィッティングした図である。
フラットな領域といえるためには、さらに厳密には、これらのデータ点が何点か連続していなければならない。また、選出した波数点は、サンプル間においても本来一致していなければならないはずである。微分操作は、高調波ノイズを増幅するので、ベースラインの推定に用いる場合は平滑効果の効いたディジタル微分を行うことが必要である。
【0063】
推定したベースラインを原吸光度スペクトルから差し引けば、ベースライン補正が施されたスペクトルが得られる。
図37(b)は、ベースライン補正が施された吸光度スペクトルである。
図37(c)は、図37(b)に示す吸光度スペクトルのベースライン部分を拡大して示す図である。図37(c)から明らかなとおり、ベースライン部分は完全には一致していない。
広い波数域にわたって選出したデータ点に直線又は2次曲線をフィッティングしようとしてもうまくフィッティングしないことが多い。とくに、2次曲線をフィッティングすると、フラットな部分や両端部は湾曲する。多次曲線を用いても局所的にひずみが大きくなることが多い。したがって、フィッティングは波数域をサブ領域に分割して行うのが好ましい。また、多項式に比べて振動の少ないスプライン関数を用いるのも好ましい。このようなフィッティング法の欠点を回避するために、抽出したフラットな領域のデータ点の隣接点を直線で結び、直線上のすべてのデータ点の値を推定した後、平滑化して推定ベースラインとするといった手法も考えられる。この場合は、曲線のフィッティングにみられるような湾曲は観測されない。
【0064】
マルチピークを伴った吸光度スペクトルの極小点は、ベースラインの一部なのか、それともピークの谷であるのかの判定が難しい。また、この判定は、サンプル間で統一した基準で行わなければならない。ベースラインの変動の要因は複雑であり、個々のスペクトルに内在する基準のみでは判断することができない。このため、サンプル間に現れる類似性についての情報、とくに特性吸収バンドにおける相似性についての情報を用いて精密にベースライン補正を施す必要がある。2Dプロット・2Dフィッティング法はその1つである。
【0065】
図38(a)は、上記の手法でベースライン補正を施したした吸光度スペクトルの、波数域が1300−970cm-1の部分を示している。
図38(b)は、図38(a)に示す吸光度スペクトルのD2−D0プロットである。
図38(c)は、2Dプロット・2Dフィッティング法で推定した値をもとに再生した吸光度スペクトルである。
図38(d)は、2Dプロット・2Dフィッティング法で外挿推定したオフセットである。オフセットが生じる原因は、主として上記のベースライン補正が完全でないことである。目的にもよるが、オフセットがゼロとなるように、さらにスペクトルを補正すれば完壁なベースライン補正となる。
【0066】
(水系サンプルのベースライン補正)
以下、水系サンプルのベースライン補正について説明する。
図39は、グルコース水溶液の原吸光度スペクトルである。水系サンプルの場合は、図39から明らかなとおり、ベースラインは存在しない。
図40に示すように、この場合は、図39に示す吸光度スペクトルと純水の吸光度スペクトルとの差スペクトルをとることによって、初めてスペクトル間の基準線が一致しているか否かがわかる。したがって、ベースラインが存在しない場合には何を基準にすべきかが問題となる。
【0067】
D1−D0(D1−Ab)プロット又はD2−D0(D2−Ab)プロットにおいては、x軸に平行な波数領域、すなわち等吸光度の同波数線を含む波数領域、換言すればサンプル間の分散がゼロに近い領域が存在する。グルコース水溶液の場合は、8000−4000cm-1の波数域に、5つの等吸光度領域が存在する。これは、混合成分が水又は溶媒に添加されると、単位容積(または重量)当たりの水又は溶媒の含量が減少するという排除効果に起因して生じるものであり、混合系の反応に起因する isosbestic point とは意味合いが異なる。等吸光度線は、サンプルの濃度には依存しないので、定量の基準の1つとすることができる。
【0068】
図41に示すように、この場合、まず2Dプロットにおいて推定同波数線図から等吸光度線領域を検出する。この領域においては、同波数線の勾配は前進に伴って正から負(あるいは負から正)に符号を変える。そこで、最も水平に近い同波数線を選出する。スペクトルデータは、あるデータ間隔でデジタル化されているので、完全に水平な同波数線は内挿計算して求めなければならないが、ベースラインは緩やかに変化する曲線であるので、厳密に計算する必要はない。データ間隔は、適切に選択すればよい。2Dプロットにおいて、個々のスペクトルの等吸光度点の値は、同波数線への垂線の交点の値であると推定されるので、その値を求める。そして全サンプルの平均値を、最も確からしい等吸光度値として、個々のスペクトルの吸光度差に曲線を最小2乗回帰フィッティングして、個々のスペクトルのベースラインのずれを推定して補正する。
【0069】
ベースライン補正した0次スペクトルについて、再度微分して、2Dプロットを描き直す。そして同波数のデータ点について、x軸とy軸方向の誤差が最小になるようにフィッティングして個々のスペクトルの個々のデータ点の推定値を得る。そして個々の推定スペクトルが得られる。
図43(a)〜(c)に、それぞれ、補正前における差スペクトルと、該差スペクトルの2つの等吸光度領域を拡大した図とを示す。
また、図44(a)〜(c)に、それぞれ、補正後における差スペクトルと、該差スペクトルの2つの等吸光度領域を拡大した図とを示す。
もし必要であれば、スムージング処理を施すことにより、数学処理に伴うエラーを平滑化することができる。また、同波数線を延長することによって、図42に示すような収束点を含む同波数線の標準パターンが得られる。
【0070】
最初の2Dプロット処理は、ベースラインの補正が目的である。そこで、平滑効果の高い微分を用いる。2回目の2Dプロット処理は、真のスペクトルを推定するのが目的である。そこで、とくにスペクトル間の類似性の高い領域あるいは特性吸収領域に注目する。
【0071】
かくして、標準の同波数線パターンができると、いわばキャリブレーションモデルが作成されたのと同様に、これを新しいスペクトルのベースラインの変動やその他のエラーの補正に利用することができる。2Dプロットで推定したスペクトルには、スムージング効果のほか、スペクトルのひずみを矯正する効果が得られる。
図45と図46とに、それぞれ、従来の普通の2次微分スペクトルと、本発明にかかるD2−D0(D2−Ab)プロット法で得た2次微分スペクトルとを示す。これらの図から明らかなとおり、本発明にかかる2Dプロットを用いて得た2次微分スペクトルでは、ノイズやひずみが低減されている。
なお、水系サンプルの場合、差スペクトルで2Dプロットすると、スペクトル間の変化量を大きくとることができる。また、混合成分のプロファルを容易に理解することができる。
【0072】
以上、本発明によれば、分析対象物のスペクトルデータから、該分析対象物について容易に、より正確な特徴情報をより多く得ることができる。さらに、スペクトルデータ間の定量の基準ないしはベースラインを容易に一致させ、あるいは補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 模擬的に作成されたベースラインを伴っていない原スペクトルを示す図である。
【図2】 図1に示す模擬原スペクトルのD1−D2プロットを示す図である。
【図3】 マルチピークを有する吸光度スペクトルを示す図である。
【図4】 図3に示す吸光度スペクトルの微分スペクトル3次元プロファイルを示す図である。
【図5】 図1に示す模擬原スペクトルの2次微分スペクトルを示す図である。
【図6】 図1に示す模擬原スペクトルのD3−D4プロットを示す図である。
【図7】 模擬的に作成されたベースラインを伴った原スペクトルを示す図である。
【図8】 図7に示す模擬原スペクトルのD1−D2プロットを示す図である。
【図9】 図7に示す模擬原スペクトルのD3−D4プロットを示す図である。
【図10】 (a)〜(d)は、それぞれ、単峰ピークを伴った模擬的な原スペクトルと、該模擬原スペクトルの1次〜4次微分スペクトルとを示す図である。
【図11】 (a)〜(h)は、それぞれ、図10に示す模擬原スペクトル又は微分スペクトルに基づいて作成された2Dプロットを示す図である。
【図12】 (a)〜(h)は、それぞれ、図11(a)〜(h)に示す2Dプロットに、同波数線を書き込んだ図である。
【図13】 (a)〜(e)は、それぞれ、ノイズを含む模擬的な原スペクトルと、該模擬原スペクトルを連続関数として微分することにより得られた、1次〜4次微分スペクトルとを示す図である。
【図14】 (a)〜(e)は、それぞれ、ノイズを含む模擬的な原スペクトルと、該模擬原スペクトルを2次の多項式を用いて数値微分することにより得られた、1次〜4次微分スペクトルとを示す図である。
【図15】 (a)〜(e)は、それぞれ、ノイズを含む模擬的な原スペクトルと、該模擬原スペクトルを3・4次の多項式を用いて数値微分することにより得られた、1次〜4次微分スペクトルとを示す図である。
【図16】 (a)〜(d)は、それぞれ、図13(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、連続関数として微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す図である。
【図17】 (a)〜(d)は、それぞれ、図14(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、2次の多項式を用いて数値微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す図である。
【図18】 (a)〜(d)は、それぞれ、図15(a)〜(e)に示す、模擬原スペクトルと、3・4次の多項式を用いて数値微分された微分スペクトルとを用いて作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットを示す図である。
【図19】 (a)〜(d)は、それぞれ、ノイズを含まない連続関数の模擬原スペクトルの微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図20】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル1のノイズを含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図21】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル2のノイズを含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図22】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル3のノイズを含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図23】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル4のノイズを含む模擬原スペクトルの2次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図24】 (a)〜(d)は、それぞれ、ノイズを含まない連続関数の模擬原スペクトルの微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図25】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル1のノイズを含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図26】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル2のノイズを含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図27】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル3のノイズを含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図28】 (a)〜(d)は、それぞれ、レベル4のノイズを含む模擬原スペクトルの3・4次の多項式を用いた数値微分により作成された、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図29】 (a)〜(d)は、それぞれ、数値微分に3・4次の多項式(微分式)を用いた1次〜4次微分スペクトルを示す図である。
【図30】 (a)〜(d)は、それぞれ、D1−D0、D2−D0、D3−D0、D4−D0の各2Dプロットにおいてデータを最小2乗2Dフィッティング法で補正した値から再生して得られた、1次〜4次微分スペクトルを示す図である。
【図31】 (a)〜(c)は、それぞれ、波数シフト(波長シフト)を伴った模擬原スペクトルと、該模擬原スペクトルの1次〜2次微分スペクトルとを示す図である。
【図32】 (a)〜(c)は、それぞれ、図31(a)〜(c)に示す原スペクトル又は微分スペクトルに基づいて作成された、D1−D0、D2−D0、D1−D2の各2Dプロットを示す図である。
【図33】 (a)〜(d)は、それぞれ、水の吸光度スペクトルと、該吸光度スペクトルの3種のD1−D0プロットとを示す図である。
【図34】 セル長が100、150、200、250、300、350、400μmにおける、水のシングルビームスペクトルを示す図である。
【図35】 図34に示すシングルビームスペクトルの2Dプロット上の同波数線を示す図である。
【図36】 (a)〜(c)は、それぞれ、吸光度スペクトルを示す図と、該吸光度スペクトルのベースライン部を拡大して示す図と、該ベースライン部のフラットな領域を抽出して示す図とである。
【図37】 (a)〜(c)は、それぞれ、図36(c)に示すフラット領域を2次曲線でフィッティングした図と、ベースライン補正が施された吸光度スペクトルを示す図と、補正された吸光度スペクトルのベースライン部を拡大して示す図とである。
【図38】 (a)〜(d)は、それぞれ、ベースライン補正が施された吸光度スペクトルの波数域1300−970cm-1の部分を示す図と、該吸光度スペクトルのD2−D0プロットを示す図と、2Dプロット・2Dフィッティング法で推定した値をもとに再生した吸光度スペクトルを示す図と、2Dフィッティング法で外挿推定したオフセットを示す図とである。
【図39】 グルコース水溶液の吸光度スペクトルを示す図である。
【図40】 図39に示す吸光度スペクトルの、水の吸光度スペクトルに対する差スペクトルを示す図である。
【図41】 図39に示す吸光度スペクトルの、同波数線を伴ったD1−D0プロットを示す図である。
【図42】 ベースライン補正後における図41と同様の図である。
【図43】 (a)〜(c)は、それぞれ、補正前における差スペクトルを示す図と、該差スペクトルの2つの等吸光度領域を拡大して示す図とである。
【図44】 (a)〜(c)は、それぞれ、補正後における差スペクトルを示す図と、該差スペクトルの2つの等吸光度領域を拡大して示す図とである。
【図45】 従来の2次微分スペクトルを示す図である。
【図46】 本発明にかかるD2−D0プロット法で得た2次微分スペクトルを示す図である。

Claims (11)

  1. 所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、
    を0以上の整数とし、n をn とは異なる0以上の整数とした場合において、上記スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、上記出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn 次微分値及びn 次微分値を演算し、
    2次元座標面におけるx座標が上記n 次微分値であり、y座標が上記n 次微分値である点を上記2次元座標面上にプロットして、上記スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、
    上記微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、上記スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得るようにした2次元表現によるスペクトルデータの処理方法であって、
    複数の分析対象物についてそれぞれ微分スペクトル2次元プロファイルを作成して同一の2次元座標面上に表示し、
    各微分スペクトル2次元プロファイル中の、時間、波数又は波長が等しい点を結ぶ線を付け加えた上で、上記のスペクトルデータに関する特徴情報を得ることを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  2. 所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、
    を0以上の整数とし、n をn とは異なる0以上の整数とした場合において、上記スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、上記出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn 次微分値及びn 次微分値を演算し、
    2次元座標面におけるx座標が上記n 次微分値であり、y座標が上記n 次微分値である点を上記2次元座標面上にプロットして、上記スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、
    上記微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、上記スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得ることを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法であって、
    上記特徴情報が、所定の時間領域、波数領域又は波長領域におけるスペクトルプロファイルの一致の程度又は対称性であることを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  3. 上記n及びnが、それぞれ4以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  4. 上記n次微分値及びn次微分値を、それぞれ、所定のデータ点数の2次の多項式を微分次数に対応する回数だけ繰り返して数値微分することにより演算することを特徴とする、請求項に記載された2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  5. 上記n次微分値及びn次微分値を、それぞれ、所定のデータ点数の3・4次の多項式を微分次数に対応する回数だけ繰り返して数値微分することにより演算することを特徴とする、請求項に記載された2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  6. 分析対象物の物性から上記の時間、波数又は波長が等しい点を結ぶ線が直線となることが予測される場合には、上記時間、波数又は波長が等しい各点にフィットする直線を最小2乗法により設定し、該時間、波数又は波長が等しい各点が上記直線上にくるようにスペクトルデータを補正した上で、該スペクトルデータから微分スペクトル2次元プロファイルを作成することを特徴とする、請求項に記載された2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  7. 上記特徴情報が、スペクトルデータを採取する分光器の線形性であることを特徴とする、請求項に記載された2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  8. 所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、
    を0以上の整数とし、n をn とは異なる0以上の整数とした場合において、上記スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、上記出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn 次微分値及びn 次微分値を演算し、
    2次元座標面におけるx座標が上記n 次微分値であり、y座標が上記n 次微分値である点を上記2次元座標面上にプロットして、上記スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、
    上記微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、上記スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得た後、
    上記特徴情報を用いて、スペクトルデータ間の定量の基準を補正することを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの補正方法。
  9. 補正されるスペクトルデータ間の定量の基準がベースラインであることを特徴とする、請求項に記載された2次元表現によるスペクトルデータの補正方法。
  10. 所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、
    を0以上の整数とし、n をn とは異なる0以上の整数とした場合において、上記スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、上記出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn 次微分値及びn 次微分値を演算し、
    2次元座標面におけるx座標が上記n 次微分値であり、y座標が上記n 次微分値である点を上記2次元座標面上にプロットして、上記スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、
    上記微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、上記スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得た後、
    上記特徴情報に基づいて、最適な微分パラメータを設定することを特徴とする2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
  11. 所定の分析対象物について、分析器の出力信号強度が、その時間、波数又は波長の関数としてあらわされたスペクトルデータを準備し、
    を0以上の整数とし、n をn とは異なる0以上の整数とした場合において、上記スペクトルデータについて、そのスペクトルプロファイル上の複数のデータ点についてそれぞれ、上記出力信号強度の、時間、波数又は波長に対するn 次微分値及びn 次微分値を演算し、
    2次元座標面におけるx座標が上記n 次微分値であり、y座標が上記n 次微分値である点を上記2次元座標面上にプロットして、上記スペクトルデータについての微分スペクトル2次元プロファイルを作成し、
    上記微分スペクトル2次元プロファイルに基づいて、上記スペクトルデータに関する所定の特徴情報を得た後、
    上記特徴情報を用いて、スペクトルデータ間の定量の基準を補正し、補正されたスペクトルデータを用いて微分スペクトル2次元プロファイルを作成することを特徴とする、2次元表現によるスペクトルデータの処理方法。
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