JP3645358B2 - 多数のリッジよりなる装飾体を備えた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関するもので、特に、サイドウオールの表面に、周方向に小さな間隔を置いて設けられた多数の小さなリッジよりなる環状の装飾体を備えた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤは、トロイド状またはドーナツ状の円環体であるが、一般に、そのカーカスは初めから円環体として製造されるのではなく、まずシート状に製造されたカーカス・プライがタイヤの成型ドラム上で一周回転されて、巻初めと巻終わりの個所がジョイントされることによって円環状に張り付けられる。その後、チェーファー、ブレーカーまたはベルトおよびトレッドなどの必要な構造部材が張り付けられて成型された生タイヤが、スチールやアルミニュームなどの金属よりなるモールド内で一定時間加圧・加熱されて、加硫されることによってタイヤが製造されている。
その結果、加硫後のタイヤのサイドウオールには、カーカス・プライの巻初めと巻終わりのジョイント部に相当する個所に、大なり小なり、凹凸が生じる。このサイドウオールの凹凸は、タイヤの性能面や耐久面では致命的な欠陥ではないが、カーカス・プライが1プライよりなる乗用車用ラジアル・タイヤなどでは、サイドウオールの凹凸が相対的に顕著に目立って、顧客に要らざる不安感を与えることがある。
【0003】
また、空気入りタイヤは、一般に、左右一対のビード・コアーを備えていて、カーカス・プライがこのビード・コアーを内側から外側に折り返されてビード部に係留されているので、カーカス・プライの折り返し端部がサイドウオールに位置し、その外側にサイドゴムが配置されている。タイヤの軽量化等の要請を受けて、サイドゴムが薄くなると、カーカス・プライの折り返し端部がサイドウオールの凹凸として相対的に目立ってくることがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
タイヤのサイドウオールに形成された、文字、数字、記号又は図形などよりなるトレードマークやトレードドレスなどを目立させるために、従来から、サイドウオールの表面に、周方向に等間隔に設けられた多数の小さな、同じ高さのリッジよりなる環状の装飾体を備え、この装飾体の上に、文字や図形などを設けることが行われている。
発明者は、タイヤのサイドウオールに生じる上記の凹凸を目立たなくするために、トレードマークやトレードドレスなどを目立たさせるために設けられた上記の小さなリッジをタイヤのサイドウオールの広範囲にわたって形成することを思いついた。
しかしながら、従来公知の上記のようなリッジをサイドウオールの広範囲にわたって形成してみたが、結果的に、タイヤのサイドウオールに生じる上記の凹凸を目立たなくすることにおいて、予期した効果が得られなかった。
また、タイヤのサイドウオールにリッジを形成するためには、モールドに凹部を形成する必要があり、この凹部形成加工の際バイトの刃先が次第に摩滅し、凹部の掘り初めと掘り終わりとでは凹部の断面形状に差が生じて、モールド一周の加工が終わったときに、掘り初めと掘り終わりの隣接個所が不均一な模様となって外観上好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、上記のような従来技術の不具合を解消して、タイヤのサイドウオールに生じる凹凸を目立たなくするとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良を目立たなくするようなリッジをサイドウオールに備えた空気入りタイヤを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による空気入りタイヤは、周方向に5mm程度以下の小さな間隔を置いて設けられた、高さが2mm程度以下の多数の小さなリッジよりなる円環状装飾体をサイドウオールの表面に備えた空気入りタイヤにおいて、
(1)該円環状装飾体は、ラジアル方向に対して70度以上90度未満の大きな角度で傾斜した方向に延びる細い帯状の分断帯域によって、周上複数個の半月状装飾体に分割され、
(2)該リッジが、同一の半月状装飾体では互いにほぼ平行に延び、隣接する半月状装飾体では異なる方向に延びている
ことを特徴とする空気入りタイヤ
である。
本発明による空気入りタイヤは、このような構成であり、従来のように単調なデザインではなく、該内向きリッジと該外向きリッジとが上記のように組み合わされているので、光と影のバランスや反射光の強弱が微妙に変化し、視線が分散されることによって、タイヤのサイドウオールに生じる前記の凹凸が目立たなくなるとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良も目立たなくなる。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による空気入りタイヤでは、
該円環状装飾体が該分断帯域によって周上3乃至50個の半月状装飾体に分割されていること、
該分断帯域が、該円環状装飾体のラジアル方向外側端縁からラジアル方向内側端縁まで、直線状または曲線状に延びていること、および/または
該分断帯域が細い帯状に延びる方向に直角方向に測定した該分断帯域の幅が1乃至5mmであること
が好ましい。このような構成によって、光と影のバランスや反射光の強弱が微妙に変化し、視線が分散されることによって、タイヤのサイドウオールに生じる前記の凹凸が目立たなくなるとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良も目立たなくなる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による空気入りタイヤでは、
該円環状装飾体の周上で、該分断帯域の始点から終点に至る間に、隣接する次の分断帯域の始点が位置していること
が好ましい。このような構成によって、光と影のバランスや反射光の強弱が微妙に変化し、視線が分散されることによって、タイヤのサイドウオールに生じる前記の凹凸が目立たなくなるとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良も目立たなくなる。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による空気入りタイヤでは、
該リッジが、少なくともそれぞれの半月状装飾体において、ほぼ等間隔に配置されていること、
該リッジが、少なくともそれぞれの半月状装飾体において、同一またはほぼ同一の断面形状を備えていること、
該リッジの延びる方向に直角方向に測定したリッジの間隔が0.6乃至1.2mmであること、
該リッジが、少なくとも一部の該半月状装飾体において、ラジアル方向と平行または実質的に平行に延びていること、および/または
該リッジが、少なくとも一部の該半月状装飾体において、該分断帯域の延びる方向と実質的に平行に延びている
ことが好ましい。このような構成によって、光と影のバランスや反射光の強弱が微妙に変化し、視線が分散されることによって、タイヤのサイドウオールに生じる前記の凹凸が目立たなくなるとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良も目立たなくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にしたがう実施例1乃至2のタイヤ及び従来例1乃至2のタイヤについて図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明による実施例1のタイヤのサイドウオールの表面に、周方向に小さな間隔を置いて設けられた多数の小さなリッジR1 およびR2 よりなる装飾体Sの一部正面図である。
本発明による実施例1の空気入りタイヤは、サイドウオールの表面に、周方向に約0.8mmの小さな間隔を置いて設けられた、高さが0.6mmの多数の小さなリッジR1 およびR2 よりなる円環状装飾体Sを備えている。
図示のように、円環状装飾体Sは、円環状装飾体Sのラジアル方向外側端縁S1 からラジアル方向内側端縁S2 まで、ラジアル方向に対して70度以上90度未満の大きな角度で傾斜した方向に曲線状に延びている細い帯状の分断帯域Dによって、周上12個の互いに異なる2種類の半月状装飾体T1 、T2 に分割されている。つまり、リッジR1 およびR2 の延びる方向が互いに異なる2種類の6個の半月状装飾体T1 およびT2 が交互に周上に形成されている。リッジR1 およびR2 が、それぞれ、同一の半月状装飾体T1 およびT2 では互いにほぼ平行に延び、隣接する半月状装飾体T1 、T2 では異なる方向に延びている。
分断帯域Dが細い帯状に延びていて、その延びる方向に直角方向に測定した分断帯域Dの幅dが1.5mmである。分断帯域Dの周方向長さ(周方向に投影した長さ)が、隣接する半月状装飾体T1 、T2 の周方向長さ(周方向に投影した長さ)と同じであり、したがって前者は後者の100%である。円環状装飾体Sの周上で、分断帯域Dが始点D1 から終点D2 まで延びていて、この終点D2 と同じ位置に隣接する次の分断帯域Dの始点D1'が位置している。
リッジR1 およびR2 は、それぞれの半月状装飾体T1 、T2 において、ほぼ等間隔に配置されている。リッジR1 およびR2 は、それぞれの半月状装飾体において、同一の断面形状を備えている。リッジR1 およびR2 の延びる方向に直角方向に測定したリッジの間隔は0.8mmである。リッジR1 およびR2 は、それぞれ半月状装飾体T1 、T2 において、ラジアル方向に対して45および0度の角度をなして延びている。リッジR1 およびR2 は、本実施例1のタイヤでは、分断帯域Dの延びる方向と平行または実質的に平行には延びていない。
【0012】
図2は、本発明による実施例2のタイヤのサイドウオールの表面に、周方向に小さな間隔を置いて設けられた多数の小さなリッジR1 、R2 よりなる円環状装飾体Sの一部正面図である。
実施例2のタイヤは、リッジR1 およびR2 は、それぞれ半月状装飾体T1 、T2 において、リッジR1 が分断帯域Dの延びる方向と実質的に平行に延びていることを除いて、ほぼ実施例1のタイヤと同じである。
【0013】
図3は、従来例1のタイヤのサイドウオールの表面に、周方向に小さな間隔を置いて設けられた多数の小さなリッジRよりなる装飾体Sの一部正面図である。リッジRは、装飾体Sの全域にわたってラジアル方向とほぼ平行に直線状に延びている。
【0014】
図4は、従来例2のタイヤのサイドウオールの表面に、周方向に小さな間隔を置いて設けられた多数の小さなリッジRよりなる装飾体Sの一部正面図である。リッジRは、装飾体Sの全域にわたって直線状に延びているが、ラジアル方向外側ではタイヤの子午線すなわちラジアル方向に対して右方向18度の角度で直線状に延び、ラジアル方向内側ではタイヤの子午線に対して左方向45度の角度で直線状に延びている。
【0015】
実施例1乃至2のタイヤおよび従来例1乃至2のタイヤについて、タイヤのサイドウオールに生じている凹凸がどの程度目立つかを目視によって評価した。その評価結果を、リッジなしの従来例1のタイヤの評価結果を100として、表1に示す。数字が大きいほど目視性が優れていることを示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【発明の効果】
表1に示す結果から、本発明の空気入りタイヤは、タイヤのサイドウオールに生じる凹凸を目立たなくするとともに、モールドに凹部を形成する際バイトの刃先が次第に摩滅し掘り初めと掘り終わりの隣接個所に生じるタイヤの外観不良を抑制することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例のタイヤの装飾体の一部正面図である。
【図2】本発明による実施例のタイヤの装飾体の一部正面図である。
【図3】従来例のタイヤの装飾体の一部正面図である。
【図4】従来例のタイヤの装飾体の一部正面図である。
【符号の説明】
D 分断帯域
D1 分断帯域Dの始点
D2 分断帯域Dの終点
R リッジ
R1 リッジ
R2 リッジ
S 円環状装飾体
S1 円環状装飾体Sのラジアル方向外側端縁
S2 円環状装飾体Sのラジアル方向内側端縁
T1 半月状装飾体
T2 半月状装飾体
Claims (10)
- 周方向に5mm程度以下の小さな間隔を置いて設けられた、高さが2mm程度以下の多数の小さなリッジよりなる円環状装飾体をサイドウオールの表面に備えた空気入りタイヤにおいて、
(1)該円環状装飾体は、ラジアル方向に対して70度以上90度未満の大きな角度で傾斜した方向に延びる細い帯状の分断帯域によって、周上複数個の半月状装飾体に分割され、
(2)該リッジが、同一の半月状装飾体では互いにほぼ平行に延び、隣接する半月状装飾体では異なる方向に延びている
ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 該分断帯域が、該円環状装飾体のラジアル方向外側端縁からラジアル方向内側端縁まで、直線状または曲線状に延びていることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 該円環状装飾体が該分断帯域によって周上3乃至50個の半月状装飾体に分割されていることを特徴とする請求項1乃至2記載の空気入りタイヤ。
- 該分断帯域が細い帯状に延びる方向に直角方向に測定した該分断帯域の幅が1乃至5mmであることを特徴とする請求項1乃至3記載の空気入りタイヤ。
- 該円環状装飾体の周上で、該分断帯域の始点から終点に至る間に、隣接する次の分断帯域の始点が位置していることを特徴とする請求項1乃至4記載の空気入りタイヤ。
- 該リッジが、少なくともそれぞれの半月状装飾体において、ほぼ等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5記載の空気入りタイヤ。
- 該リッジが、少なくともそれぞれの半月状装飾体において、同一またはほぼ同一の断面形状を備えていることを特徴とする請求項1乃至6記載の空気入りタイヤ。
- 該リッジの延びる方向に直角方向に測定したリッジの間隔が0.6乃至1.2mmであることを特徴とする請求項1乃至7記載の空気入りタイヤ。
- 該リッジが、少なくとも一部の該半月状装飾体において、ラジアル方向と平行または実質的に平行に延びていることを特徴とする請求項1乃至8記載の空気入りタイヤ。
- 該リッジが、少なくとも一部の該半月状装飾体において、該分断帯域の延びる方向と平行または実質的に平行に延びていることを特徴とする請求項1乃至9記載の空気入りタイヤ。
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