JP3573530B2 - エポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は溶融粘度が低くフィラーの高充填化が可能であり、しかも耐熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂混合物、エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてビスフェノ−ルAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる液状および固形のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂がある。その他液状のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂にテトラブロムビスフェノ−ルAを反応させて得られる難燃性臭素含有エポキシ樹脂などが汎用エポキシ樹脂として工業的に使用されている。また、特に半導体の封止用途としては、オルソクレゾールノボラックにエピクロルヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂などが主に利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したようなオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は分子量が大きくなるにつれて、それを使用して得られる硬化物の耐熱性は向上するものの、溶融粘度が高くなるという欠点がある。また分子量の小さなオルソクレゾール型エポキシ樹脂、或は結晶性のテトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂などは、溶融粘度は低くなるものの、その硬化物の耐熱性は低下するという欠点がある。近年、半導体封止材の高性能化を図るためフィラーの高充填化が可能なほど低粘度で、しかも、その硬化物の耐熱性の高いエポキシ樹脂の開発が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、低粘度でしかも耐熱性に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、下記の特定の構造の化合物をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂混合物が、極めて溶融粘度が低く、しかもその硬化物に対して優れた耐熱性を付与するものであることを見い出して本発明を完成させるに到った。
【0005】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中Rは水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Gはグリシジル基を表す。)で表される化合物からなる混合物であって、該混合物中の式(1)で表される化合物の総モル数を100とした場合の下式(2)で表される化合物の総モル数が80以上であることを特徴とするエポシキシ樹脂混合物、
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、R及びGは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
(2)上記(1)記載のエポキシ樹脂混合物、硬化剤、必要により硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物、
(3)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物
を提供するものである。
【0010】
以下、本発明の詳細を説明する。
式(1)表される化合物を得るには公知の方法が採用できる。例えばフェノール類を酸触媒の存在下でグリオキザールと縮合反応させる。用いうるフェノール類の具体例としては、フェノールまたは、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキル一置換フェノールの各種o−,m−,p−異性体、またはキシレノール、メチルエチルフェノール、メチル−n−プロピルフェノール、メチルイソブチルフェノール、メチル−t−ブチルフェノール等のアルキル二置換フェノールの各種o−,m−,p−異性体並びにこれらのハロゲン置換体が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。フェノール類の使用量は、グリオキザール1モルに対して通常4〜50モル、好ましくは5〜40モルである。また、グリオキザール類は通常その水溶液が用いられる。
【0011】
縮合に際して用いうる酸触媒の具体例としては通常p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、シュウ酸等の無機あるいは有機酸または三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸が挙げられ、特にp−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、グリオキザール1モルに対して通常0.001〜0.1モルである。
【0012】
上記反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いうる有機溶剤の具体例としてはトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。有機溶剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して50〜300重量%が好ましく、特に100〜250重量%が好ましい。反応温度は、通常50〜150℃、反応時間は通常1〜10時間である。
【0013】
反応終了後、中和処理あるいは水洗処理を行った後、加熱減圧下で、未反応のフェノール類及び溶剤を留去して生成物の濃縮を行う。このようにして下式(3)表される化合物からなる混合物を得ることができる。
【0014】
【化5】
【0015】
(式中Rは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
次いで式(3)で表される化合物からなる混合物から公知の方法で精製を繰り返し式(4)で表される化合物のモル分率が80%以上、好ましくは85%以上の混合物を得る。
【0016】
【化6】
【0017】
(式中Rは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
ここで、精製の方法は特に制限がなく、例えば得られたガラス状固体をトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤に溶解し、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の貧溶媒を加える操作を数回繰り返すことにより結晶を析出させる方法などが挙げられる。また、上記の方法以外でも例えば特開平7−76538号に記載の方法に準じてもよい。このようにして得られた式(3)で表される化合物からなる混合物であって、式(4)で表される化合物のモル分率が80%以上、好ましくは85%以上である混合物を以下、特に断りのない限り混合物(A)という。
【0018】
混合物(A)から本発明のエポキシ樹脂混合物を得る方法としては公知の方法が採用できる。例えば混合物(A)と過剰のエピハロヒドリンの溶解混合物にアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃の温度で反応させることにより得ることが出来る。上記反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応混合物内に添加すると共に減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物内に連続的に戻す方法でもよい。
【0019】
混合物(A)とエピハロヒドリンの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で反応させて得られる混合物(A)のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃の温度で反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0020】
通常これらの反応において使用されるエピハロヒドリンの量は混合物(A)の水酸基1当量に対し、通常1〜20モル、好ましくは1.5〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は混合物(A)の水酸基1当量に対し0.8〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。更に反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール等のアルコール類の他、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0021】
アルコール類を添加する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対して2〜40重量%が好ましく、特に4〜30重量%が好ましい。また非プロトン性極性溶媒を添加する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対して5〜100重量%が好ましく、特に10〜90重量%が好ましい。
【0022】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、エピハロヒドリンや、溶媒などを除去し、必要により更に後処理を行う。後処理は、疎水性溶剤に得られたエポキシ樹脂を溶解する。用いうる疎水性溶剤の具体例としてはメチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるが、メチルイソブチルケトン、トルエンが好ましい。これらは単独もしくは混合して使用できる。
【0023】
その後、原料として用いた混合物(A)の水酸基1モルに対して、0.025〜0.3モルのアルカリ金属水酸化物を加え、好ましくは40〜90℃で30〜3時間撹拌し、脱ハロゲン化反応を行う。この際、アルカリ金属水酸化物は5〜50重量%水溶液を用いることが好ましい。
【0024】
反応終了後、得られた樹脂溶液を数回水洗した後、疎水性溶剤を減圧下で留去することにより、目的とするエポキシ樹脂混合物を得ることが出来る。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂混合物は単独でまたは他のエポキシ樹脂との併用で通常のエポキシ樹脂の場合と同様に硬化剤、さらに必要により硬化促進剤等を添加することにより硬化させることができる。
本発明のエポキシ樹脂混合物と他のエポキシ樹脂とを併用する場合、本発明のエポキシ樹脂混合物が全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、40重量%以上が特に好ましい。この場合用いうるエポキシ樹脂の例としては通常は1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、電子機器用として一般に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールI型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の、芳香族2価フェノール類から得られるエポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸とエピハロヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、またジアミノジフェニルメタン、イソシアヌール酸などのポリアミンとエピハロヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0026】
本発明で用いる硬化剤はアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などである。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられる。また、本発明のエポキシ樹脂混合物を調製する際に用いた混合物(A)も硬化剤として用いることができる。これらの硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
これらの硬化剤の使用量は、エポキシ基に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0028】
また本発明のエポキシ樹脂組成物には硬化促進剤を添加しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じてシリカ、アルミナ、タルク等の無機あるいは有機充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂混合物、硬化剤更に必要により硬化促進剤の配合された本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物を得ることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂混合物と硬化剤、必要により硬化促進剤及びその他の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃に加熱することによりその硬化物を得ることができる。
【0030】
また本発明のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることなどもできる。
【0031】
この際用いうる溶剤の具体例としてはメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、エポキシ樹脂組成物と溶剤の混合物において通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%を占める量を使用する。
【0032】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、ガラス転移温度、吸水率の測定条件は次の通りである。
溶融粘度
I.C.Iコーンアンドプレート粘度計:リサーチエクイップメント社
ガラス転移温度
熱機械測定装置(TMA):真空理工社製 TM−7000
昇温速度:2℃/min
【0033】
実施例1
温度計、冷却官、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら下記式(5)
【0034】
【化7】
【0035】
で表される化合物からなる混合物であって式(6)
【0036】
【化8】
【0037】
で表される化合物のモル分率が98%である混合物149部、エピクロルヒドリン555部、メタノール111部を仕込み溶解させた。更に70℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム60部を100分かけて分割添加し、その後、更に70℃で75分間反応させた。反応終了後ロータリエバポレーターを使用し130℃、5mHgの加熱減圧下で、過剰のエピクロルヒドリン及びメタノールを留去し、残留物に470部のメチルイソブチルケトンを加え、溶解した。
【0038】
更に、このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し、メタノール23部、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し1時間反応させた後、水洗を繰り返し洗浄液のpHを中性とした。更に水層は分離除去し、ロータリーエバポレーターを使用して油層から加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去し下記式(7)
【0039】
【化9】
【0040】
(式中、Gはグリシジル基を表す。)
で表される化合物からなる混合物であって、式(8)
【0041】
【化10】
【0042】
(式中Gはグリシジル基を表す。)
で表される化合物のモル分率が98%である本発明のエポキシ樹脂混合物(A)219部を得た。得られたエポキシ樹脂混合物のエポキシ当量は164g/eq、150℃における溶融粘度は0.4ポイズ、軟化点は81.4℃であった。
【0043】
実施例2
エポキシ樹脂混合物(A)、硬化剤としてフェノールノボラック(水酸基当量106g/eq、軟化点80℃)を用い、表1の配合物の組成の欄に示す組成で配合して、70℃で15分ロールで混練し、150℃、180秒でトランスファー成形して、その後160℃で2時間、更に180℃で8時間硬化せしめて試験片を作成し、ガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。尚、表中の配合物の組成の欄の数値は部を表す。
【0044】
【表1】
表1
配合物の組成
エポキシ樹脂混合物(A) 100
フェノールノボラック 64.6
硬化物の物性
ガラス転移温度(℃) 192
【0045】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂混合物又は組成物は、適度な軟化点及び極めて低い溶融粘度を有するにも拘らず、それを使用して得られる硬化物は、耐熱性に非常に優れるという特性を備えている。
すなわち本発明のエポキシ樹脂混合物はフィラーの高充填が可能で耐熱性に優れた硬化物を与えることができ、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストなどの広範囲の用途に極めて有用であり、更にアクリル酸やメタクリル酸と反応させることにより、紫外線硬化型樹脂として使用することも可能である。
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