JP3554439B2 - シール剤入りタイヤチューブの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気が充填される空気室とシール剤が充填されるシール剤室とを備えたシール剤入りタイヤチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般のチューブ入りタイヤは、チューブが釘等による刺傷を受けた場合、チューブ内の空気はその刺傷からタイヤ及びチューブ間の微小間隙を通ってリムのニップル孔から外部に漏出し、所謂パンク状態となり易い。
【0003】
そこで、チューブが刺傷を受けたとき、これを自動的に応急補修するための液状シール剤をチューブ内に予め適量注入しておくものが知られている(特開昭58−74342号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のものは、チューブを成形する際に該チューブの内部にシール剤を充填したカプセルを入れておき、成形後に前記カプセルを破壊してシール剤をチューブ内に充填するようになっているため、カプセルを破壊すべく外力を加えた際にチューブが損傷し易いという問題があるだけでなく、シール剤がチューブの空気弁を詰まらせたり、チューブ内の空気圧測定時に圧力ゲージを詰まらせたりする問題がある。
【0005】
かかる問題を解決するには、チューブの内部を空気が充填される空気室とシール剤が充填されるシール剤室とに区画し、カプセルを使用せずにシール剤室に直接シール剤を充填すれば良い。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、空気室及びシール剤室を備えたチューブを効率的に製造するシール剤入りタイヤチューブの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、円形断面の周壁の内部を隔壁で仕切ることにより、周壁の半周を構成する空気室周壁と隔壁との間に空気が充填される空気室を画成するとともに、周壁の残りの半周を構成するシール剤室周壁と隔壁との間にシール剤が充填されるシール剤室を画成してなるシール剤入りタイヤチューブの製造方法であって、隔壁の自由長が空気室周壁の自由長及びシール剤室周壁の自由長に略等しくなり、かつ隔壁の断面が波形となるようにチューブ素材を押し出し成形する第1工程と、チューブ素材を所定長さに切断する第2工程と、チューブ素材の両端部を径方向に圧縮して空気室周壁、隔壁及びシール剤室周壁を3層に重ね合わせる第3工程と、径方向に圧縮したチューブ素材の両端部を相互に圧接して接合する第4工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施例の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図8は本発明の第1実施例を示すもので、図1はチューブ入りタイヤを装着した車輪の横断面図、図2はチューブの製造工程を示す図、図3はチューブ素材の横断面図、図4は押し出し成形機の部分斜視図、図5は図4の5方向拡大矢視図、図6はスプライサーの側面図、図7は図6の7−7線拡大矢視図、図8は加熱型の断面図である。
【0011】
図1に示すように、自動二輪車用車輪のリムRはワイヤスポークを介してハブ(図示せず)に連結される。このリムRには、タイヤ1と、その内部に収納されるチューブ2とからなるチューブ入りタイヤTが装着される。チューブ2は、半径方向内側に位置する空気室周壁4iと、半径方向外側に位置するシール剤室周壁4oとを備えて断面環状に形成された周壁4を備える。周壁4の空気室周壁4iとシール剤室周壁4oとを接続する一対の接続部間は、それと一体に形成された隔壁5によって相互に接続される。
【0012】
空気室周壁4iと隔壁5との間に画成された断面略円形の空気室3には空気が充填され、シール剤室周壁4oと隔壁5との間に画成された断面略円弧状のシール剤室7には公知の液状シール剤8が充填される。また空気室周壁4iには空気室3に空気を充填するための空気弁6が設けられる。
【0013】
而して、チューブ2のシール剤室7は空気室3の空気圧によりタイヤ1の内面に沿った形状に保持されるため、シール剤室7に充填されたシール剤8に車輪の回転中による遠心力が作用しても、そのシール剤8がチューブ2の外周側に片寄るのを防ぐことができる。従って、釘等により半径方向あるいは側方からチューブ2が刺傷を受けても、シール剤8がその刺傷を直ちに埋めて補修し、空気室3からの空気の漏出を遅らせる。また、シール剤8はシール剤室7に保持されていて、空気室3側へ流出することがないから、空気弁6やそれに当てがわれる圧力ゲージ等を詰まらせることもない。
【0014】
次に、前記チューブ2の製造方法について説明する。
【0015】
図2に示すように、チューブ2の製造工程は、材料混練工程、チューブ素材押し出し成形工程、切断工程、空気弁取付工程、接合工程、第1加硫工程、孔開け工程、シール剤充填工程、生ゴムシート貼付工程、第2加硫工程及び検査工程からなる。
【0016】
先ず、材料混練工程で混練した材料をチューブ素材押し出し成形工程で押し出し成形することにより、生ゴムよりなるチューブ素材2′を成形する。図3〜図5に示すように、押し出し成形機11のノズル12から連続的に押し出し成形されるチューブ素材2′は、横断面円形の周壁4と、この周壁4の直径上に位置する2点を波形に接続する隔壁5とを備える。即ち、周壁4は隔壁5との接続部を境にして空気室周壁4iとシール剤室周壁4oとに分かれており、空気室周壁4iの長さLiと、シール剤室周壁4oの長さLoと、隔壁5の長さLcとは略等しく設定されている。隔壁5を波形に形成することにより、急激な屈曲部を発生させることなく前記長さLcを確保することができる。
【0017】
チューブ素材2′を押し出し成形する押し出し成形機11のノズル12の内部には、空気室3及びシール剤室7にそれぞれタルク等の離型剤を供給・排出する2個の離型剤吐出口13,13及び2個の離型剤吸引口14,14が設けられる。チューブ素材2′の空気室3及びシール剤室7を横断面波形の隔壁5によって同一断面積に形成することにより、離型剤吐出口13,13及び離型剤吸引口14,14を配置するスペースを容易に確保することができる。
【0018】
続く切断工程でチューブ素材2′を所定長さに切断した後、空気弁取付工程で空気室周壁4iの適所に空気弁6を取り付け、更に接合工程でチューブ素材2′の両端部を接合する。
【0019】
図6及び図7は接合工程で使用されるスプライサーを示すものである。チューブ素材2′の両端部は一対のクランプ部材15,16よりなるクランプ17によって挟持され、クランプ部材15,16から僅かに突出したチューブ素材2′の両端面どうしが相互に圧接される。加硫前の生ゴムよりなるチューブ素材2′は前記圧接により環状に接合される。
【0020】
このとき、チューブ素材2′の一端の空気室周壁4i、隔壁5及びシール剤室周壁4oを、それぞれチューブ素材2′の他端の空気室周壁4i、隔壁5及びシール剤室周壁4oに正しく接合すべく、前記クランプ17によって空気室周壁4i及びシール剤室周壁4o間に隔壁5が挟まれて3層になるようにクランプされる(図7参照)。前述したように、空気室周壁4iの長さLi、隔壁5の長さLc及びシール剤室周壁4oの長さLoは全て等しく設定されているため(図3参照)、空気室周壁4i、隔壁5及びシール剤室周壁4oは圧縮又は伸長されることなく自然長のままクランプされる。これにより空気室周壁4i、隔壁5又はシール剤室周壁4oに皺が寄ることが防止され、その接合を確実に行うことが可能となる。
【0021】
続く第1加硫工程において、図8に示すように前記チューブ素材2′を加熱型18内に挿入し、空気弁6から空気室3に加熱した空気或いは高温の水蒸気を供給することにより、空気室周壁4i及びシール剤室周壁4oを加熱型18に密着させるとともに隔壁5をシール剤室周壁4oに密着させ、この状態で加熱型18を加熱して加硫を行う。
【0022】
続く孔開け工程でチューブ素材2′のシール剤室周壁4oにシール剤充填孔41 を開設した後、シール剤充填工程でシール剤充填孔41 からシール剤室7にシール剤8を充填する。このとき、シール剤8の充填に先立って空気弁6から空気を供給して空気室3を膨張させることにより、図8に示す状態と同様に隔壁5をシール剤室周壁4oに密着させてシール剤室7内の空気を完全に排出しておき、この状態からシール剤8の充填を開始する。このように、シール剤室7内の空気を完全に排出した状態からシール剤8の充填を開始することにより、シール剤8に対する空気の混入を確実に防止し、シール剤8のみを充填することができる。また空気弁6を利用して空気室3に空気を供給しているので、空気室周壁4iに空気充填用の孔を開ける必要がない。
【0023】
続く生ゴムシート貼付工程において、シール剤充填孔41 を覆うように生ゴムシート19を貼付した後、第2加硫工程で生ゴムシート19の近傍を局部的に加硫してシール剤充填孔41 を閉塞することによりチューブ2を完成する。チューブ素材2′と同一材料である生ゴムシート19を使用してシール剤充填孔41 を閉塞するので、閉塞部の強度を向上させてシール剤8の漏れを確実に防止することができる。而して、完成したチューブ2を検査工程において検査して製造工程を終了する。
【0024】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0025】
例えば、チューブ素材2′を押し出し成形する際の隔壁5の形状は実施例の波形に限定されず、図9に示すような他の波形であっても良い。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載された発明によれば、周壁の半周を構成する空気室周壁と隔壁との間に空気が充填される空気室を画成するとともに、周壁の残りの半周を構成するシール剤室周壁と隔壁との間にシール剤が充填されるシール剤室を画成したことにより、空気室及びシール剤室を確実に区画してシール剤の漏れを防止することができる。また隔壁の自由長が空気室周壁の自由長及びシール剤室周壁の自由長に略等しくなるようにチューブ素材を押し出し成形するので、所定長さに切断したチューブ素材の両端部を径方向に圧縮し、空気室周壁、隔壁及びシール剤室周壁を3層に重ね合わせて相互に圧接して接合する際に、空気室周壁、隔壁及びシール剤室周壁に皺が寄るのを防止して前記接合を確実に行うことができる。しかも、隔壁の断面が波形となるようにチューブ素材を押し出し成形するので、隔壁の急激な屈曲を防止しながら隔壁の必要な長さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チューブ入りタイヤを装着した車輪の横断面図
【図2】チューブの製造工程を示す図
【図3】チューブ素材の横断面図
【図4】押し出し成形機の部分斜視図
【図5】図4の5方向拡大矢視図
【図6】スプライサーの側面図
【図7】図6の7−7線拡大矢視図
【図8】加熱型の断面図
【図9】チューブ素材の他の実施例を示す図
【符号の説明】
2′ チューブ素材
3 空気室
4 周壁
4i 空気室周壁
4o シール剤室周壁
5 隔壁
7 シール剤室
8 シール剤
Claims (1)
- 円形断面の周壁(4)の内部を隔壁(5)で仕切ることにより、周壁(4)の半周を構成する空気室周壁(4i)と隔壁(5)との間に空気が充填される空気室(3)を画成するとともに、周壁(4)の残りの半周を構成するシール剤室周壁(4o)と隔壁(5)との間にシール剤(8)が充填されるシール剤室(7)を画成してなるシール剤入りタイヤチューブの製造方法であって、
隔壁(5)の自由長が空気室周壁(4i)の自由長及びシール剤室周壁(4o)の自由長に略等しくなり、かつ隔壁(5)の断面が波形となるようにチューブ素材(2′)を押し出し成形する第1工程と、
チューブ素材(2′)を所定長さに切断する第2工程と、
チューブ素材(2′)の両端部を径方向に圧縮して空気室周壁(4i)、隔壁(5)及びシール剤室周壁を3層に重ね合わせる第3工程と、
径方向に圧縮したチューブ素材(2′)の両端部を相互に圧接して接合する第4工程と、
を備えたことを特徴とするシール剤入りタイヤチューブの製造方法。
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