JP3386549B2 - 味覚改質剤 - Google Patents

味覚改質剤

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JP3386549B2 JP01042394A JP1042394A JP3386549B2 JP 3386549 B2 JP3386549 B2 JP 3386549B2 JP 01042394 A JP01042394 A JP 01042394A JP 1042394 A JP1042394 A JP 1042394A JP 3386549 B2 JP3386549 B2 JP 3386549B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、味覚改質剤に関するも
のであり、より詳細には、食品の苦味等の不快感を除去
し、良好な風味を付与する味覚改質剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】食品を
摂取する場合、本来の目的である栄養摂取の他に、甘味
・旨味に起因するある種の満足感を求めたり、苦味によ
る不快感の回避等の欲求がある。日常的な生活において
はもちろんのこと、ある種の病者においては、摂取糖量
或いはアミノ酸量の制限を受け、甘味の低下による苦味
の増加は食餌内容に影響を与え、精神的苦痛は重篤のも
のがある。
【0003】苦味の緩和或いは低減については、食品工
業上、多大な努力が成されている。食品本来の風味を損
なわず食品中の苦味を除去する方法に関しては、食品の
調理の際の「あく抜き」等の手段に見られるように、浸
漬、水洗或いは弱アルカリ処理等による中和除去が多く
行われる。工業的には、例えば柑橘類の果汁苦味除去に
用いられるシリカゲル(特開昭60−91969号公
報)に代表されるような吸着体による除去法や、シクロ
デキストリンの添加による苦味成分の包括法(特開平2
−283246号公報)、或いは配糖体、ペプチド等の
苦味成分については酵素処理による分解除去(特開平2
−207768号公報)等の方法が提案されている。
【0004】従来、食品の苦味の除去については甘味剤
や香料を添加して苦味の緩和を行うが、強い苦味を呈す
る食品については十分な効果が得られない。適度の甘味
が、人間にある種の満足感や安息感を与え、それらが添
加された経口内に対し良好な状態を付与することは知ら
れており、また先に述べた苦味の低減、緩和に関しても
対比効果によってある程度有効であることが知られてい
る。しかし、過度の甘味性糖質の添加は、カロリー摂取
過多、虫歯の誘発等の好ましくない結果をもたらす。そ
こで、各種の低カロリーの強力甘味剤が開発されて一部
では砂糖の代替物として利用されている。
【0005】また呈味剤或いはマスキング剤の利用によ
る味覚の改質では、味覚受容組織に関してこれを修飾す
る物質が報告されている(化学と生物 第27巻 第6
号p350)。例えば、ガガイモ科のある種の植物の葉
に含有されるギムネマ酸やナツメの葉に含まれるジジフ
ィンは、トリテルペン配糖体であり苦味に対する抑制効
果が知られており、またアカテツ科の植物果実であるミ
ラクルフルーツから得られるミラクリンやキンバイザサ
科の植物に含有されるクルクリンは口に含んだ後、酸味
或いは無味の水を飲むと甘味を感じさせる効果を有する
ことが見いだされている(特開平2−84158号公
報)。しかしながら、これらはその供給量、分離精製、
化学的安定性、価格等の点で問題があり産業上有効に利
用されてはいない。即ち、甘味の増強或いは苦味抑制等
の味覚改質において、いずれの方法も、限られた味質や
限られた苦味物質に対してしか適用できないこと、また
工業上その有用性に欠けるということの問題があった。
従って、本発明の目的は、大量生産が容易で、且つ安価
に提供でき、経口摂取に対して安全性があり、且つ苦味
抑制作用と甘味及び旨味増強作用を併せ持つ味覚改良剤
を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、口腔内の
味覚器にて行われる味覚受容機構並びに呈味物質と脂質
構造体の相互作用に着目し、味覚改質効果について鋭意
研究を行った結果、本発明に係る蛋白質−脂質複合体
が、(1) 疎水性物質との親和性が高く、特に苦味物質を
吸着し系内の苦味物質の濃度を低下させること、(2) ま
た同時に或いは独立に舌上の味細胞の味覚受容部位に吸
着し、味覚の受容が修飾されることを見いだし本発明に
至った。即ち、本発明は、リン脂質、リゾリン脂質、糖
脂質、ステロール脂質、ポリオール脂肪酸エステル及び
脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂質と、乳蛋白
質、大豆由来蛋白質及び卵蛋白質から選ばれる1種又は
2種以上の蛋白質とから得られる蛋白質−脂質複合体か
らなることを特徴とする味覚改質剤を提供することによ
り上記目的を達成したものである。
【0007】
【作用】人間の味覚の内の基本五味覚はそれぞれ異なる
機構で受容し認識する。一般に苦味物質は疎水基を有し
味覚受容器の脂質層に結合することによって苦味を知覚
させる。このため強く脂質に結合する物質であるという
特質がある。この特質を利用して苦味物質にリン脂質で
構成されたリポソーム等を添加すると、苦味物質は吸着
されて味細胞を刺激できないことが知られている。一
方、甘味、旨味の受容に対しては蛋白質からなる味覚受
容体を介して行われる。このため、プロテアーゼ処理や
界面活性剤による変性作用により、これらの味質に対す
る感受性が低下することが報告されている。
【0008】しかし、リポソーム等に代表される脂質構
造体は、表面の疎水性、生体膜親和性を期して、薬剤を
包含したドラックデリバリーシステムとしての利用が研
究されているが、味覚受容機構に関連した味覚改質に対
する積極的な使用法は知られていない。またリポソーム
の調製については実用面で困難性を有する。即ち、リン
脂質を用いる場合においては、乳化及び分散工程が必要
とされ、更に製品中で安定に存在させることも困難であ
る。
【0009】一方、本発明における蛋白質−脂質複合体
、脂質の水への分散性を高めることが可能となり、有
効な味覚改質剤として用いることができる。しかも、口
腔内の味覚器にて行われる味覚受容機構並びに呈味物質
と脂質構造体との相互作用により、蛋白質−脂質複合体
は、疎水性物質との親和性が高く、特に苦味物質を吸着
し口内の苦味物質の濃度を低下させ、同時に或いは独立
に舌上の味細胞の味覚受容部位に吸着し、味覚の受容を
修飾する作用が見られる。従って、蛋白質−脂質複合体
は、苦味を抑制すると共に甘味、旨味を増強する作用を
持つため、食品の苦味抑制、食品の不快な味の低減とコ
ク味の増強等の効果が得られ、しかも液状、粉末状又は
細粒状であるため、操作性にも優れ、対象とする原料或
いは製品にそのまま混合して使用をすることができ、更
に水に分散させて用いることもできる。また、生体に対
しても安全で大量生産が容易にできる。
【0010】以下、本発明の味覚改良剤について詳しく
詳述する。本発明に係る味覚改良剤は、脂質と蛋白質と
から得られる蛋白質−脂質複合体からなる。蛋白質−脂
質複合体の調製成分である蛋白質は、水溶性蛋白質が好
ましく、乳蛋白質、大豆由来蛋白質、卵蛋白質から選ば
れる1種又は2種以上である。また、蛋白質の成分の全
量に対してβーラクトグロブリンを30重量%以上含有
していることが望ましく、この範囲を下回ると、良好な
結果が得難くなる。
【0011】蛋白質−脂質複合体の脂質は、リン脂質、
リゾリン脂質、糖脂質、ステロール脂質、ポリオール脂
肪酸エステル、脂肪酸である。好ましくはリン脂質及び
/又はリゾリン脂質を用いるのが良く、その場合、大
豆、卵黄等の動物又は/及び植物性の抽出レシチン、精
製レシチン或いは酵素処理等による加工レシチンの使用
ができる。また具体的なリン脂質及び/又はリゾリン脂
質としては、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリ
ン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル
イノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエ
リン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリ
ン等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用い
ることが望ましい。
【0012】また、化学合成及び/又は酵素を用い合成
されたリン脂質類及び/又はリゾリン脂質類を用いるこ
とができる。具体的な合成手法としては、ジグリセリド
のリン酸エステル化、モノグリセリドのリン酸エステル
化、グリセロリン酸の脂肪酸エステル化等が挙げられ、
これらの合成手法により生じた反応生成物であるリン脂
質類及び/又はリゾリン脂質類を用いることができる。
具体的には、モノアシルグリセロモノフォスフェート、
モノアシルグリセロジフォスフェート、ジアシルグリセ
ロモノフォスフェート、ビスホスファチジン酸等が挙げ
られる。さらに、水素添加リン脂質及び/又は水素添加
リゾリン脂質等が挙げられる。
【0013】蛋白質−脂質複合体は、蛋白質と脂質とを
機械的手段及び/又は超音波処理等で均一に乳化分散さ
せた後、脱水処理を行うことにより粉末状或いは顆粒状
の組成物として得ることができる。蛋白質−脂質複合体
を製造する際の蛋白質と脂質の配合比は、蛋白質1部に
対し、脂質0.05部〜50部(重量)が好ましく、更
に好ましくは蛋白質1部に対し、脂質0.4〜3部であ
る。上記比率において、蛋白質1部に対し脂質0.05
部以下の場合、味覚を改質する効果が得られない。又、
蛋白質1部に対し脂質50部を超える場合には、水への
分散性が低下し調製作業上有効ではない、使用上も困難
である。
【0014】蛋白質と脂質を上記比率にて混合し、水に
分散させ乳化物を得る際、蛋白質−脂質混合物に対する
水の配合比率は、蛋白質と脂質の混合物1部に対し、水
0.5部〜100部が好ましく、更に好ましくは、蛋白
質と脂質の混合物1部に対し、水1部〜10部である。
混合物に対する水分が上記範囲を下回ると、蛋白質と脂
質の均一化が妨げられ、上記範囲を超えると、脱水工程
の負荷が増大し実用に乏しくなる。
【0015】蛋白質と脂質の混合に際しては、蛋白質と
脂質を予め混合し、所定の量の水に分散乳化を行う方
法、或いは均一な蛋白質水溶液を調製し、これに対し脂
質を分散乳化させる方法等があるが、いずれの方法でも
良い。これらの分散乳化に際して、均質化装置又は乳化
装置、或いは超音波処理装置等の利用ができる。乳化組
成物の乳化状態については、水中油型(O/W型)、油
中水型(W/O型)、或いは油中水中油型(O/W/O
型)等の多相乳化型等を挙げることができ、特にその実
施に制限されない。乳化組成物の粒子径は0.1〜10
0μmが好ましく、特に0.5〜10μmが好ましい。
【0016】蛋白質と脂質の混合或いはそれらの水への
分散時の温度に制限はないが、高温では脂質等の劣化が
生じるため、悪臭等の悪影響を防止すべく温度60℃以
下が好ましい。脱水処理方法は特に制限はなく公知の方
法を用いることができ、例えば、減圧乾燥、噴霧乾燥、
或いは凍結乾燥等の手段が挙げられ、微生物等の汚染、
或いは蛋白質、脂質の劣化を引き起こさず、速やかに脱
水処理できる方法が望ましい。乾燥後の水分含有量につ
いては、20重量%以下、好ましくは12重量%以下、
更に好ましくは10重量%以下である。蛋白質−脂質複
合体の形状は、水分含有量及び脂質含有量に依存し、粉
末状、顆粒状、又はペースト状が挙げられ、形状及び大
きさについては使用上の便利さを考えた上で、取扱上の
不都合である様な物を除けば特に限定されるものではな
い。
【0017】このようにして得られた蛋白質−脂質複合
体を味覚改質剤として用いる場合、水溶液及び固形物の
利用分野としては、食品、飲料及びそれらの原料等があ
る。本発明の味覚改質剤の添加量は、適用できる製品に
よって異なり、概ね好ましい添加量は0.05〜10.
0重量%、特に、0.1〜3.0重量%である。また、
本発明の味覚改質剤は、フレーバー、香辛料、風味油な
どの香気成分を含む原料と併用してもよい。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。尚、例中の部は重量基準である。 (実施例1)ホエー蛋白濃縮粉末(商品名サンラクトN
−2:太陽化学(株)製)100gと大豆レシチン(商
品名日清DX:日清製油(株)製)40gとを混練し、
1リットルの水に分散後、特殊機化(株)製TKホモミ
キサーにて9000rpmの回転数を与え、15分間均
質化した。得られた乳化物を40℃、0.1Torr
で、固形物中の水分を9.8%まで減圧脱水を行った。
得られた塊状の組成物を粉砕し、20メッシュの篩で篩
過して、本発明の味覚改質剤(以下、実施試料1と略
記)136gを得た。
【0019】上記の実施試料1を用い、5種の基本味覚
に対する味覚改質効果を等価濃度法にて検定した。等価
濃度法とは、試験溶液の味の強さを、何種類かの標準溶
液と比較し、同じ味の強さとする方法である。表1に示
すような濃度で各味物質の溶液を調製し、実施試料1を
0.1%の濃度になるように添加した。結果が図1及び
図2に示す様に、甘味、旨味については増強が認めら
れ、図3に示すように苦味に対しては抑制作用を示し
た。また、図4及び図5に示すように酸味、塩味に関し
てはほとんど影響を与えなかった。
【0020】
【表1】
【0021】(実施例2及び比較例1)実施例1で用い
た、ホエー蛋白濃縮粉末100gと大豆レシチン40g
とを混練し、蒸留水1リットルを加え、実施例1と同様
な方法で分散、乳化のみ行い、懸濁液(比較試料1)を
得た。更に、これを凍結乾燥装置を用い、固形物中の水
分量が7.8%になるまで乾燥し、20メッシュの篩で
篩過し、粉末(実施試料2)を得た。これらの試料を用
いて、表1に示す試験溶液を用い、味覚に対する効果を
等価濃度試験で検定した。同時に、ホエー蛋白濃縮物、
大豆レシチン、それぞれの味覚に対する効果を検定した
(表2)。この結果(表2)より、脱水処理が蛋白質−
脂質複合体(ホエー蛋白質−大豆レシチン)の生成に、
また効果の発現に関して重要であることがわかる。
【0022】
【表2】
【0023】(実施例3)実施例1で得た実施試料1
を、0〜0.6%の濃度で調製した蔗糖水溶液に0.3
%になるように添加し、甘味に対する効果を刺激閾値を
測定することによって求めた。閾値は各濃度の蔗糖水溶
液をランダムに口に含み、甘味を感じたものを選び出
し、そのうち最小濃度のものを閾値とした。表3の結果
でわかるように、実施試料1を添加した系では、閾値が
低下しており、甘味を感じ易くなっていることがわか
る。
【0024】
【表3】
【0025】(実施例4)実施例2で得た実施試料2
を、1.875%の濃度で蔗糖を添加した市販の牛乳
に、0.1%になるように加え、実施例1と同様な方法
で、各濃度で蔗糖を含んだ牛乳を標準液として、等価濃
度試験を行った結果、認識濃度は2.25%となり、実
施試料2は牛乳中でも効果を発現することがわかる。 (実施例5)ホエー蛋白濃縮粉末(商品名:サンラクト
N−5:太陽化学(株)製)100gを蒸留水1リット
ルに溶解し、特殊機化(株)製TKホモミキサーで90
00rpmの攪拌を与えながら、大豆レシチン(味の素
(株)製)20gを少量づつ添加し室温で乳化分散させ
た。この分散物を固形物中の水分が6.5%になるまで
凍結乾燥を行い、108gの固形物を得た。これを金属
へらで粉砕し、粉末状の組成物を得た(実施試料3)。
この組成物を0.1%の濃度で添加した1.0%蔗糖水
溶液及び0.00070%テオブロミン(ココアの苦味
成分)水溶液の等価濃度はそれぞれ1.25%、0.0
0058%であった。また、実施試料3を用いて以下の
評価実験を行った。
【0026】〔実験例1〕実施例5で得た実施試料3に
ついて、モデル生体膜を用いた苦味応答系で効果を検討
した。常法に従い、アゾレクチンの一枚膜リポゾームを
調製し、これに対するテオブロミン(ココアの苦味成
分)の吸着を、クマザワ等の方法(バイオケミスティー
27巻 p1239 1988年)により、膜電位感
受性色素diS−C3 (5)(日本感光色素研究所製)を
用い、その蛍光強度の変化を、膜電位の変化として測定
した。その結果は図6に示す通りである。実施試料3は
膜に作用して、苦味を抑制することが推測された。
【0027】〔実験例2〕実施例5で得た実施試料3の
疎水性物質の吸着能について、有機溶媒−水の2相に対
する分配により検討した(油化学 第30巻 第11
号、942頁)。0.02Mリン酸カリ緩衝液(pH
7.0)30mlに対し、実施試料3を3%の濃度で添加
したものに、n−オクタノール、n−デカノール、n−
ドデカノール、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン
の0.1%n−ヘプタン溶液をそれぞれ10mlづつ重層
した。水相側をマグネチックスターラーでゆっくり攪拌
し、6時間後のn−ヘプタン層の各物質の濃度を、ガス
クロマトグラフィーにより測定した。対照として、水相
側に何も加えないものを用意し、同様に6時間後のn−
ヘプタン層の物質濃度をCn 、試料添加系のn−ヘプタ
ン層の物質濃度をCs とすると、それぞれの実験系にお
ける物質の水層への分配量は、Wn =(1−Cn /0.
1)、Ws =(1−Cs /0.1)と表される。従っ
て、試料に対する各物質の吸着量は水層分配量の差分
(Ws −Wn )×100(%)として表される。各物質
の吸着量を表4にまとめる。複合化によって脂溶性物質
の吸着が増大し、苦味抑制の機構の一つに、蛋白質−脂
質複合体による苦味物質の吸着があることが示された。
尚、比較のため、実施試料3に代えて実施試料3の調製
に用いたホエー蛋白のみを添加したもの、大豆レシチン
のみ添加したもの、及び実施試料3の調製に用いたホエ
ー蛋白と大豆レシチンとを混練して得られた混練品を添
加したものを上記と同様に製造した。
【0028】
【表4】
【0029】〔実験例3〕実施例5で得た実施試料3の
甘味、苦味に対する味覚応答をラット鼓索神経系の刺激
応答により調べた。ラットの下顎を切開し神経束を露出
させ、銀電球を接触させた後、味覚刺激によって生じた
電気信号を増幅装置に導き記録した。実施試料4を0〜
0.5%の濃度で含んだ0.5mMテオブロミン及び1
M蔗糖水溶液をラットの口腔内に還流させ、応答電位を
記録した。その結果を図7及び図8に示す。本発明の蛋
白質−脂質複合体は味覚受容レベルで作用していること
がわかる。
【0030】(実施例6)大豆レシチン(商品名エピク
ロン200:ルーカスマイヤー製)80gを蒸留水1リ
ットルに超音波処理により分散させ、これにミルクホエ
ー濃縮粉末(商品名ミルクプローH:三栄化学(株)
製)100gを加え、攪拌した。得られた乳化分散物を
凍結乾燥し、固形物中の水分含量を6.8%とした。こ
のものを20メッシュの篩で篩過し167gの粉末を得
た(実施試料4)。下記配合及び製法に従い、ホイップ
クリームを製造し、クリーム風味を比較した。
【0031】 <配合> (油相)・ナタネ硬化油(融点32.8℃) 20部(重量部) ・ヤシ硬化油(融点34.5℃) 6部 ・バター脂(融点32.4℃) 14部 ・レシチン 0.28部 (水相) ・水 54.5部 ・脱脂粉乳 4部 ・蔗糖脂肪酸エステル(HLB11) 0.2部 ・ヘキサメタ燐酸 0.1部 ・実施試料4 0.5部
【0032】<製法>油相と水相それぞれを溶解ないし
分散させて調製後、予備乳化、高圧均質化、滅菌処理
し、常法に従いクリーム状油脂組成物を得た。この組成
物1リットルにグラニュー糖80gを混合し、ホイップ
を行いホイップクリームを得た。比較のため、実施試料
4を無添加のもの、実施試料4に代えて実施試料4の調
製に用いたホエー蛋白0.5部をのみ添加したもの、及
び実施試料4の調製に用いたホエー蛋白と大豆レシチン
とを混練して得られた混練品を0.5部添加したものを
上記と同様に製造した。実施試料4を添加していないク
リームを対照として、クリーム風味の官能評価を行っ
た。結果を表5に示す。実施試料4添加品はミルク風味
が強く、コクがあり、苦味、渋味などの異味が無いクリ
ームであった。
【0033】
【表5】 (表中の数値は専門パネラー20名のランク付けによる
平均点数であり、・対照の方が良い −1点、・対照の
方がやや良い −0.5点、・対照と同等 0点、・対
照よりやや良い +0.5点、対照より良い +1点で
ある。)
【0034】〔実験例4〕 脂質と蛋白質との複合体を簡易的に定量化する方法とし
て、脂質と蛋白質が複合体を形成することによりn−ヘ
キサンに抽出される脂質量が減少することに着目した。
脂質−蛋白質複合体組成物からなる試料2gを密栓付三
角フラスコに秤量し純水15ml、n−ヘキサンを加え、
20℃で15分間攪拌し、静置後、上層(n−ヘキサン
層)を10ml分取し、ヘキサン留去後、固形物重量を精
秤する。得られたn−ヘキサン可溶物重量より、 遊離脂質率(%)=(n−ヘキサン可溶物重量×1.5 )/(試料2g中の脂質 重量) と定義する。実施試料4の原料である大豆レシチンとミ
ルクホエー濃縮粉末とを混練して得られた混練品、水へ
分散後均質化して得られた乳化物及び実施試料4の三試
料で遊離脂質率を測定した。その結果を表6に示す。
【0035】
【表6】
【0036】(実施例7)大豆レシチン(商品名エピク
ロン200:ルーカスマイヤー製)80gを蒸留水1リ
ットルに超音波処理により分散させ、これにミルクホエ
ー濃縮粉末(商品名ミルブローH:三栄化学(株)製)
40gとカゼインナトリウム(三栄化学(株)製)60
gを添加し攪拌する。得られた乳化分散物を、固形物中
の水分が6.8%になるまで凍結乾燥し、20メッシュ
の篩で篩過して粉末(実施試料5)170gを得た。実
施試料5を実施例6と同様な方法で調製したホイップク
リームに添加し、風味に対する効果を官能評価により検
討した。結果を表7に示すが、無添加のものに対して風
味的に良好な製品が得られた。
【0037】
【表7】 (表中の数値評価は表5と同様である。)
【0038】(実施例8)大豆レシチン(商品名エピク
ロン200)80gを蒸留水1リットルに超音波処理に
よって分散させ、脱脂粉乳(雪印乳業(株)製)100
gを攪拌混合した。得られた乳化分散物を凍結乾燥し、
固形物中の水分を6.5%とした。このものを20メッ
シュの篩で篩過し、粉末(実施試料6)165gを得
た。
【0039】〔実験例5〕実施例6、実施例7及び実施
例8で用いた蛋白質製剤を、SDS(ドデシル硫酸ナト
リウム)及びメルカプタン処理を行い、SDS−ポリア
クリルアミドゲル電気泳動を行った。泳動結果をデンシ
トメーターで解析し、それぞれの蛋白成分を定量した。
結果は表8に示す。風味的に良好な製品を得るために
は、β−ラクトグロブリンが30%以上であることが好
ましい。
【0040】
【表8】
【0041】
【発明の効果】本発明に係る味覚改質剤は、苦味低減化
に優れ、粉末状及び液状において適用可能で、生体に対
して安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の味覚改良剤の甘味増強効果を示す棒
グラフである。
【図2】本実施例の味覚改良剤の旨味増強効果を示す棒
グラフである。
【図3】本実施例の味覚改良剤の苦味抑制効果を示す棒
グラフである。
【図4】本実施例の味覚改良剤の酸味影響効果を示す棒
グラフである。
【図5】本実施例の味覚改良剤の塩味影響効果を示す棒
グラフである。
【図6】本実施例の味覚改良剤がテオブロミンの膜電位
の変化に影響を与えることを示す棒グラフである。
【図7】本実施例の味覚改良剤をテオブロミンに加えた
ときのラットの鼓索神経系の刺激応答の特性線図であ
る。
【図8】本実施例の味覚改良剤を蔗糖に加えたときのラ
ットの鼓索神経系の刺激応答の特性線図である。
フロントページの続き (72)発明者 桂木 能久 茨城県鹿島郡波崎町土合本町1−8762− 23 花王土合寮 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/00 - 1/03 A23J 7/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン脂質、リゾリン脂質、糖脂質、ステ
    ロール脂質、ポリオール脂肪酸エステル及び脂肪酸から
    選ばれる1種又は2種以上の脂質と、乳蛋白質、大豆由
    来蛋白質及び卵蛋白質から選ばれる1種又は2種以上の
    蛋白質とから得られる蛋白質−脂質複合体からなること
    を特徴とする味覚改質剤。
  2. 【請求項2】 蛋白質が水溶性蛋白質である請求項1記
    載の味覚改質剤。
  3. 【請求項3】 蛋白質が未変性βーラクトグロブリンを
    30重量%以上含有する蛋白質である請求項1又は2
    載の味覚改質剤。
  4. 【請求項4】 脂質が動物/植物由来のレシチンである
    請求項1記載の味覚改質剤。
  5. 【請求項5】 蛋白質−脂質複合体は、蛋白質と脂質を
    機械的手段及び/又は超音波処理によって均一に乳化分
    散させた後、脱水処理を行って得られたものである請求
    項1記載の味覚改質剤。
  6. 【請求項6】 請求項1〜のいずれかに記載の味覚改
    質剤を含有することを特徴とする食品。
  7. 【請求項7】 請求項1〜のいずれかに記載の味覚改
    質剤を含有することを特徴とする飲料。
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