JP3218885B2 - 車輌の挙動制御装置 - Google Patents

車輌の挙動制御装置

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JP3218885B2
JP3218885B2 JP24694494A JP24694494A JP3218885B2 JP 3218885 B2 JP3218885 B2 JP 3218885B2 JP 24694494 A JP24694494 A JP 24694494A JP 24694494 A JP24694494 A JP 24694494A JP 3218885 B2 JP3218885 B2 JP 3218885B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車輌の旋回
時に於けるドリフトアウトやスピンの如き好ましからざ
る挙動を抑制し低減する挙動制御装置に係り、特に車輪
の制動力を制御することによって好ましからざる旋回挙
動を抑制し低減する挙動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車輌の旋回時に於ける挙動を
制御する装置の一つとして、例えば特開平3−4545
3号公報に記載されている如く、操舵量検出手段と、車
速検出手段と、ヨーレート検出手段と、操舵量に応じた
タイヤのグリップ限界車速を求める限界車速検出手段
と、操舵量及びタイヤのグリップ限界車速に対応する目
標ヨーレートを求める目標ヨーレート設定手段と、各輪
毎に設けられた制動手段とを有し、車速がタイヤのグリ
ップ限界車速を越えるときにはヨーレートが目標ヨーレ
ートに近付くような態様にて車速が限界車速に低下する
よう旋回内輪及び外輪の制動力を制御するよう構成され
た挙動制御装置が従来より知られている。
【0003】かかる挙動制御装置によれば、車輌を常に
タイヤのグリップ域にて走行させることができると共
に、ヨーレートが目標ヨーレートを越えることを防止
し、これにより車輌のスピンやドリフトアウト等の好ま
しからざる旋回挙動を防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載された
従来の挙動制御装置に於ては、各車輪に付与される制動
力は検出される実ヨーレートと目標ヨーレートとの偏差
に応じて決定されるようになっているが、必要な制動力
の大きさは路面の摩擦係数μや運転者による制動操作等
によっても変化し、そのため路面の摩擦係数等の状況に
よっては旋回内輪と旋回外輪との間の制動力の差による
最適のアンチスピンモーメントを発生させることができ
ず、車輌の旋回挙動を良好に抑制することができないと
いう問題がある。
【0005】またかかる問題は制動力が実ヨーレートと
目標ヨーレートとの偏差に応じて決定される場合に限ら
れるものではなく、μ−S特性が路面の摩擦係数等によ
って変化し、許容される目標スリップ率の最大値、即ち
目標スリップ率の上限値も路面の摩擦係数等によって変
化するので、車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に応じ
て旋回挙動を安定化するに必要な所定の車輪の制動力に
対応する目標スリップ率が演算され、所定の車輪の車輪
速が目標スリップ率となるよう所定の車輪の制動圧が制
御される場合にも上述の如き問題がある。
【0006】本発明は、従来の挙動制御装置に於ける上
述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主
要な課題は、路面の摩擦係数等の車輌の走行状況に応じ
て最適のアンチスピンモーメントが生じるよう挙動制御
量を最適化することにより、車輌の旋回挙動を更に一層
良好に制御することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の如き主要な課題
は、本発明によれば、車輌の旋回挙動を示すスピン状態
量に基づきスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記
スピン状態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要な
回外輪の制動力に対応する目標スリップ率を演算し、前
旋回外輪スリップ率が前記目標スリップ率となるよ
う前記旋回外輪の制動圧を制御する挙動制御手段とを有
する車輌の挙動制御装置に於て、路面と前記旋回外輪
の間に於けるμ−S特性の線形領域の傾きを推定する傾
き推定手段と、推定された前記線形領域の傾きが大きい
ほど小さくなるよう前記目標スリップ率を補正する目標
スリップ率補正手段とを有していることを特徴とする車
輌の挙動制御装置(請求項1の構成)、車輌の旋回挙動
を示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定する挙動
推定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回挙動を安定
化するに必要な旋回外輪の制動力に対応する目標スリッ
プ率を演算し、前記旋回外輪スリップ率が前記目標ス
リップ率となるよう前記旋回外輪の制動圧を制御する挙
動制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に於て、スリ
ップ率演算の基準となる車輪の荷重に対する前記旋回外
の荷重の比を検出する手段と、前記荷重の比が高いほ
ど小さくなるよう前記目標スリップ率を補正する目標ス
リップ率補正手段とを有していることを特徴とする車輌
の挙動制御装置(請求項3の構成)、車輌の旋回挙動を
示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定する挙動推
定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回挙動を安定化
するに必要な旋回外輪の制動力に対応する目標スリップ
率を演算し、前記旋回外輪のスリップ率が前記目標スリ
ップ率となるよう前記旋回外輪の制動圧を制御する挙動
制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に於て、路面の
摩擦係数を検出する手段と、路面の摩擦係数が低いほど
大きくなるよう前記目標スリップ率の上限値を設定する
手段とを有していることを特徴とする車輌の挙動制御装
置(請求項4の構成)、ABS装置が搭載された車輌の
旋回挙動を示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定
する挙動推定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回挙
動を安定化するに必要な旋回外輪の制動力に対応する目
標スリップ率を演算し、前記旋回外輪のスリップ率が前
記目標スリップ率となるよう前記旋回外輪の制動圧を制
御する挙動制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に於
て、前記目標スリップ率演算の基準となる前輪側の旋回
内輪が前記ABS装置により制御されているか否かを検
出する手段と、前記旋回内輪が前記ABS装置により制
御されているときには前記目標スリップ率の上限値を小
さく設定する手段とを有していることを特徴とする車輌
の挙動制御装置(請求項5の構成)、車輌の旋回挙動を
示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定する挙動推
定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回外輪の制動圧
を制御し旋回挙動を安定化させる挙動制御手段とを有す
る車輌の挙動制御装置に於て、運転者による制動操作を
検出する手段と、運転者により制動操作が行われている
ときには前記旋回外輪以外の車輪の制動圧の増圧勾配が
前記旋回外輪の制動圧の増圧勾配よりも小さくなるよう
前記旋回外輪若しくは前記旋回外輪以外の車輪の制動圧
を調整する手段とを有していることを特徴とする車輌の
挙動制御装置(請求項6の構成)、又は 車輌の旋回挙動
を示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定する挙動
推定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回挙動を安定
化するに必要な旋回外輪の制動力に対応する目標スリッ
プ率を演算し、前記旋回外輪のスリップ率が前記目標ス
リップ率となるよう前記旋回外輪の制動圧を制御する挙
動制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に於て、路面
と前記旋回外輪との間に於ける路面の摩擦係数を推定す
る摩擦係数推定手段と、推定された前記路面の摩擦係数
が大きいほど小さくなるよう前記目標スリップ率を補正
する目標スリップ率補正手段とを有していることを特徴
とする車輌の挙動制御装置(請求項7の構成)によって
達成される。
【0008】また本発明によれば、上述の主要な課題を
効果的に達成すべく、請求項1の車輌の挙動制御装置に
於て、前記傾き推定手段は前記旋回外輪のスリップ角に
応じたμ−S特性について線形領域の傾きを推定するよ
う構成される(請求項2の構成)。また本発明によれ
ば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、請求項7
の構成に於て、前記摩擦係数推定手段は前記旋回外輪の
スリップ角を考慮して前記路面の摩擦係数を推定するよ
う構成される(請求項8の構成)。
【0009】
【作用】一般に路面と車輪との間に於けるμ−S特性は
路面の表面性状によって変化し、例えば図14に示され
ている如くμ−S特性の線形領域の傾きは路面の摩擦係
数が高いほど大きくなる。従って或る一定のμ−S特性
を想定し、スピン状態量に応じて目標スリップ率(So
)を演算し、旋回外輪の車輪速が目標スリップ率とな
るよう旋回外輪の制動圧を制御しても、図15に示され
ている如く、路面の摩擦係数μが高いときには車輪の摩
擦力Fが必要な値Fo よりも高くなり、逆に路面の摩擦
係数が低いときには車輪の摩擦力が必要な値よりも低く
なり、最適のアンチスピンモーメントを発生させること
ができない。
【0010】上述の請求項1の構成によれば、路面と
回外輪との間に於けるμ−S特性の線形領域の傾きが傾
き推定手段により推定され、推定された線形領域の傾き
が大きいほど小さくなるよう目標スリップ率が目標スリ
ップ率補正手段により補正されるので、走行に伴って路
面の表面性状が変化し、これによりμ−S特性の線形領
域の傾きが変化しても、旋回外輪の制動力が旋回挙動を
安定化させるに必要な値に正確に制御され、路面の表面
性状の変化に拘らず最適のアンチスピンモーメントが発
生され、これにより車輌の旋回挙動が良好に制御され
る。
【0011】尚μ−S特性の線形領域の傾きはスリップ
率に対する路面の摩擦係数の比μ/Sに等しく、路面の
摩擦係数μは旋回挙動制御中に於ける車体の水平方向の
慣性力(加速度)の大きさに比例するので、傾き推定手
段は例えばスリップ率Sに対する車体の水平方向の加速
度の大きさの比により線形領域の傾きを推定するよう構
成されていてよい。
【0012】また一般に路面と車輪との間に於けるμ−
S特性は、路面及び車輪の表面性状が同一であっても例
えば図16に示されている如く車輪のスリップ角αによ
って変化する。従って或るスリップ角についてのμ−S
特性に基づきスピン状態量に応じて目標スリップ率を演
算し、旋回外輪スリップ率が目標スリップ率となるよ
旋回外輪の制動圧を制御しても、旋回外輪の実際のス
リップ角が予め設定された或るスリップ角とは異なる場
合には、最適のアンチスピンモーメントを発生させるこ
とができない。
【0013】上述の請求項2の構成によれば、請求項1
の構成に於て、傾き推定手段は旋回外輪のスリップ角に
応じたμ−S特性について線形領域の傾きを推定するよ
う構成されているので、車輌の旋回時に於ける旋回外輪
のスリップ角に応じてその車輪の制動力が旋回挙動を安
定化させるに必要な値に正確に制御され、旋回外輪のス
リップ角の変化に拘らず最適のアンチスピンモーメント
が発生され、これにより車輌の旋回挙動が良好に制御さ
れる。
【0014】また一般に車輌の制動力、即ち路面と車輪
との間に於ける摩擦力は、路面及び車輪の表面性状が同
一であってもその車輪の荷重によって変化し、従って実
際に発生するアンチスピンモーメントも車輌の旋回や制
動に伴なう荷重移動に起因するスリップ率演算の基準と
なる車輪の荷重に対する旋回外輪の荷重の比の変化によ
っても変化する。
【0015】上述の請求項3の構成によれば、スリップ
率演算の基準となる車輪の荷重に対する旋回外輪の荷重
の比が検出され、荷重の比が高いほど小さくなるよう目
標スリップ率が目標スリップ率補正手段により補正され
るので、車輌の旋回や制動に伴なう荷重移動に起因する
旋回外輪及びスリップ率演算の基準となる車輪の荷重の
変化に拘らず、それらの車輪の制動力が旋回挙動を安定
化させるに必要な値に正確に制御され、実際に発生する
アンチスピンモーメントが正確に制御され、これにより
車輌の旋回挙動が良好に制御される。
【0016】また一般に路面の摩擦係数が高いときには
車輪の制動力も高くなり、効果的なアンチスピンモーメ
ントが発生するので、目標スリップ率が高く設定される
必要がないのに対し、路面の摩擦係数が低いときには車
輪の横力も低く、車体に作用するスピンモーメントも小
さいが、車輪の制動力及びアンチスピンモーメントも低
くなるので、目標スリップ率の上限値が過剰に低く設定
されると、車輌の旋回挙動を適正に行うことができない
虞れがある。また一般に路面の摩擦係数が高くなるにつ
れてμ−S特性のピーク値以上の領域の負勾配が大きく
なるので、目標スリップ率が高く演算されると、旋回外
輪の制動圧の制御にハンチングが生じ易くなる。
【0017】上述の請求項4の構成によれば、路面の摩
擦係数が検出され、路面の摩擦係数が低いほど大きくな
るよう目標スリップ率の上限値が設定されるので、路面
の摩擦係数が高いときには支障なく効果的なアンチスピ
ンモーメントが発生されることによって車輌の旋回挙動
が良好に制御されると共に、μ−S特性のピーク値以上
の領域の負勾配が大きいことに起因して旋回外輪の制動
圧の制御にハンチングが生じることが確実に防止され、
路面の摩擦係数が低いときには旋回外輪の目標スリップ
率が高く設定されることが可能であることにより、十分
なアンチスピンモーメントが発生され、車輌の旋回挙動
が確実に制御される。
【0018】また目標スリップ率の演算の基準となる前
輪側の旋回内輪がABS(アンチロックブレーキシステ
ム)装置により制御されている状況、即ち前輪側の旋回
内輪の実スリップ率が高くなっている状況に於てもその
ままスピン状態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要
な旋回外輪の制動力に対応する目標スリップ率が演算さ
れると、目標スリップ率が過剰に高くなり、車輌の旋回
挙動を安定化させるに必要な適正なアンチスピンモーメ
ントを発生させることができず、またμ−S特性のピー
ク値以上の領域の負勾配に起因する旋回外輪の制動圧の
制御にハンチングが生じ易くなる。
【0019】上述の請求項5の構成によれば、目標スリ
ップ率の演算の基準となる前輪側の旋回内輪がABS装
置により制御されているか否かが検出され、前輪側の
回内輪がABS装置により制御されているときには旋回
外輪の目標スリップ率の上限値が小さく設定されるの
で、旋回外輪のスリップ率が過剰であることに起因して
適正なアンチスピンモーメントが発生されなくなること
が防止され、またμ−S特性のピーク値以上の領域の負
勾配に起因する旋回外輪の制動圧の制御のハンチングも
防止される。
【0020】また運転者により急激な制動操作が行わ
れ、制動圧が制御される旋回外輪以外の車輪の制動圧が
急激に増大されるような場合には、挙動制御による旋回
外輪の制動圧の増圧勾配よりも該旋回外輪以外の車輪の
制動圧の増圧勾配の方が高くなり、そのため車輌の旋回
挙動を安定化させるに必要なアンチスピンモーメントと
は逆方向のモーメントが発生し、車輌の旋回挙動を安定
化させることができなくなる。
【0021】上述の請求項6の構成によれば、運転者に
よる制動操作が検出され、運転者により制動操作が行わ
れているときには制動圧が制御される旋回外輪以外の車
輪の制動圧の増圧勾配が該旋回外輪の制動圧の増圧勾配
よりも小さくなるよう該旋回外輪若しくは該旋回外輪
外の車輪の制動圧が調整されるので、運転者により急激
な制動操作が行われても、制動圧が制御される旋回外輪
の制動圧の増圧勾配は必ず該旋回外輪以外の車輪の制動
圧の増圧勾配よりも大きくなり、これにより旋回挙動を
安定化させるに必要なアンチスピンモーメントが確実に
発生され、旋回挙動が確実に安定化される。また上述の
請求項7の構成によれば、路面と旋回外輪との間に於け
る路面の摩擦係数が摩擦係数推定手段により推定され、
推定された路面の摩擦係数が大きいほど小さくなるよう
目標スリップ率が目標スリップ率補正手段により補正さ
れるので、上述の請求項1の構成の場合と同様、走行に
伴って路面の表面性状が変化し、これにより路面の摩擦
係数が変化しても、旋回外輪の制動力が旋回挙動を安定
化させるに必要な値に正確に制御され、路面の表面性状
の変化に拘らず最適のアンチスピンモーメントが発生さ
れ、これにより車輌の旋回挙動が良好に制御される。ま
た上述の請求項8の構成によれば、請求項7の構成に於
て、摩擦係数推定手段は旋回外輪のスリップ角を考慮し
て路面の摩擦係数を推定するよう構成されているので、
上述の請求項2の構成の場合と同様、車輌の旋回時に於
ける旋回外輪のスリップ角に応じてその車輪の制動力が
旋回挙動を安定化させるに必要な値に正確に制御され、
旋回外輪のスリップ角の変化に拘らず最適のアンチスピ
ンモーメントが発生され、これにより車輌の旋回挙動が
良好に制御される。
【0022】
【実施例】以下に添付の図を参照しつつ、本発明を実施
例について詳細に説明する。
【0023】図1は本発明による挙動制御装置が適用さ
れる車輌の制動装置及びその電気式制御装置を示す概略
構成図である。
【0024】図1に於て、制動装置10は運転者による
ブレーキペダル12の踏み込み操作に応答してブレーキ
オイルを第一及び第二のポートより圧送するマスタシリ
ンダ14と、マスタシリンダ内のオイル圧力に対応する
圧力(レギュレータ圧)にブレーキオイルを増圧するハ
イドロブースタ16とを有している。マスタシリンダ1
4の第一のポートは前輪用のブレーキ油圧制御導管18
により左右前輪用のブレーキ油圧制御装置20及び22
に接続され、第二のポートは途中にプロポーショナルバ
ルブ24を有する後輪用のブレーキ油圧制御導管26に
より左右後輪用の3ポート2位置切換え型の電磁式の制
御弁28に接続されている。制御弁28は導管30によ
り左後輪用のブレーキ油圧制御装置32及び右後輪用の
ブレーキ油圧制御装置34に接続されている。
【0025】また制動装置10はリザーバ36に貯容さ
れたブレーキオイルを汲み上げ高圧のオイルとして高圧
導管38へ供給するオイルポンプ40を有している。高
圧導管38はハイドロブースタ16に接続されると共
に、前輪用の切換弁42及び後輪用の切換弁44に接続
されており、高圧導管38の途中にはオイルポンプ40
より吐出される高圧のオイルをアキュムレータ圧として
蓄圧するアキュムレータ46が接続されている。図示の
如く切換弁42及び44も3ポート2位置切換え型の電
磁式の切換弁である。
【0026】左右前輪用のブレーキ油圧制御装置20及
び22はそれぞれ対応する車輪に対する制動力を制御す
るホイールシリンダ48FL及び48FRと、3ポート2位
置切換え型の電磁式の制御弁50FL及び50FRと、リザ
ーバ36に接続されたリターン通路としての低圧導管5
2とハイドロブースタ16の吐出ポートとの間に接続さ
れたレギュレータ圧供給導管53の途中に設けられた常
開型の電磁式の開閉弁54FL及び54FR及び常閉型の電
磁式の開閉弁56FL及び56FRとを有している。それぞ
れ開閉弁54FL、54FRと開閉弁56FL、56FRとの間
のレギュレータ圧供給導管53は接続導管58FL、58
FRにより制御弁50FL、50FRに接続されている。
【0027】左右後輪用のブレーキ油圧制御装置32、
34は制御弁28と低圧導管52との間にて導管30の
途中に設けられた常開型の電磁式の開閉弁60RL、60
RR及び常閉型の電磁式の開閉弁62RL、62RRと、それ
ぞれ対応する車輪に対する制動力を制御するホイールシ
リンダ64RL、64RRとを有し、ホイールシリンダ64
RL、64RRはそれぞれ接続導管66RL、66RRにより開
閉弁60RL、60RRと開閉弁62RL、62RRとの間の導
管30に接続されている。
【0028】制御弁50FL及び50FRはそれぞれ前輪用
のブレーキ油圧制御導管18とホイールシリンダ48FL
及び48FRとを連通接続し且つホイールシリンダ48FL
及び48FRと接続導管58FL及び58FRとの連通を遮断
する図示の第一の位置と、ブレーキ油圧制御導管18と
ホイールシリンダ48FL及び48FRとの連通を遮断し且
つホイールシリンダ48FL及び48FRと接続導管58FL
及び58FRとを連通接続する第二の位置とに切替わるよ
うになっている。
【0029】レギュレータ圧供給導管53と左右後輪用
制御弁28との間には左右後輪用のレギュレータ圧供給
導管68が接続されており、制御弁28はそれぞれ後輪
用のブレーキ油圧制御導管26と開閉弁60RL、60RR
とを連通接続し且つ開閉弁60RL、60RRとレギュレー
タ圧供給導管68との連通を遮断する図示の第一の位置
と、ブレーキ油圧制御導管26と開閉弁60RL、60RR
との連通を遮断し且つ開閉弁60RL、60RRとレギュレ
ータ圧供給導管68とを連通接続する第二の位置とに切
替わるようになっている。
【0030】制御弁50FL、50FR、28はマスタシリ
ンダ圧遮断弁として機能し、これらの制御弁が図示の第
一の位置にあるときにはホイールシリンダ48FL、48
FR、64RL、64RRが導管18、26と連通接続され、
各ホイールシリンダへマスタシリンダ圧が供給されるこ
とにより、各輪の制動力が運転者によるブレーキペダル
12の踏み込み量に応じて制御され、制御弁50FL、5
0FR、28が第二の位置にあるときには各ホイールシリ
ンダはマスタシリンダ圧より遮断される。
【0031】また切換弁42及び44はホイールシリン
ダ48FL、48FR、64RL、64RRへ供給される油圧を
アキュムレータ圧とレギュレータ圧との間にて切換える
機能を果し、制御弁50FL、50FR、28が第二の位置
に切換えられ且つ開閉弁54FL、54FR、60RL、60
RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが図示の
位置にある状態にて切換弁42及び44が図示の第一の
位置に維持されるときには、ホイールシリンダ48FL、
48FR、64RL、64RRへレギュレータ圧が供給される
ことにより各ホイールシリンダ内の圧力がレギュレータ
圧にて制御され、これによりブレーキペダル12の踏み
込み量及び他の車輪の制動圧に拘わりなくその車輪の制
動圧がレギュレータ圧による増圧モードにて制御され
る。
【0032】尚各弁がレギュレータ圧による増圧モード
に切換え設定されても、ホイールシリンダ内の圧力がレ
ギュレータ圧よりも高いときには、ホイールシリンダ内
のオイルが逆流し、制御モードが増圧モードであるにも
拘らず実際の制動圧は低下する。
【0033】また制御弁50FL、50FR、28が第二の
位置に切換えられ且つ開閉弁54FL、54FR、60RL、
60RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが図
示の位置にある状態にて切換弁42及び44が第二の位
置に切換えられると、ホイールシリンダ48FL、48F
R、64RL、64RRへアキュムレータ圧が供給されるこ
とにより各ホイールシリンダ内の圧力がレギュレータ圧
よりも高いアキュムレータ圧にて制御され、これにより
ブレーキペダル12の踏み込み量及び他の車輪の制動圧
に拘わりなくその車輪の制動圧がアキュームレータ圧に
よる増圧モードにて制御される。
【0034】更に制御弁50FL、50FR、28が第二の
位置に切換えられた状態にて開閉弁54FL、54FR、6
0RL、60RRが第二の位置に切換えられ、開閉弁56F
L、56FR、62RL、62RRが図示の状態に制御される
と、切換弁42及び44の位置に拘らず各ホイールシリ
ンダ内の圧力が保持され、制御弁50FL、50FR、28
が第二の位置に切換えられた状態にて開閉弁54FL、5
4FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62
RL、62RRが第二の位置に切換えられると、切換弁42
及び44の位置に拘らず各ホイールシリンダ内の圧力が
減圧され、これによりブレーキペダル12の踏み込み量
及び他の車輪の制動圧に拘わりなくその車輪の制動圧が
減圧モードにて制御される。
【0035】切換弁42及び44、制御弁50FL、50
FR、28、開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び
開閉弁56FL、56FR、62RL、62RR、は後に詳細に
説明する如く電気式制御装置70により制御される。電
気式制御装置70はマイクロコンピュータ72と駆動回
路74とよりなっており、マイクロコンピュータ72は
図1には詳細に示されていないが例えば中央処理ユニッ
ト(CPU)と、リードオンリメモリ(ROM)と、ラ
ンダムアクセスメモリ(RAM)と、入出力ポート装置
とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに
接続された一般的な構成のものであってよい。
【0036】マイクロコンピュータ72の入出力ポート
装置には車速センサ76より車速Vを示す信号、実質的
に車体の重心に設けられた横加速度センサ78より車体
の横加速度Gy を示す信号、ヨーレートセンサ80より
車体のヨーレートγを示す信号、操舵角センサ82より
操舵角θを示す信号、実質的に車体の重心に設けられた
前後加速度センサ84より車体の前後加速度Gx を示す
信号、車輪速センサ86FL〜86RRよりそれぞれ左右前
輪及び左右後輪の車輪速(周速)VFL、VFR、VRL、V
RRを示す信号、ブレーキスイッチ88より該スイッチが
オン状態にあるか否かを示す信号が入力されるようにな
っている。尚横加速度センサ78等は車輌の左旋回方向
を正として横加速度等を検出するようになっている。
【0037】またマイクロコンピュータ72のROMは
後述の如く種々の制御フロー及びマップを記憶してお
り、CPUは上述の種々のセンサにより検出されたパラ
メータに基づき後述の如く種々の演算を行い、車輌の旋
回挙動を判定するためのスピンバリューSVを求め、ス
ピンバリューに基づき車輌の旋回挙動を推定し制御する
と共に各車輪の制動力についてABS制御を行うように
なっている。
【0038】次に図2乃至図4に示されたフローチャー
トを参照して車輌の旋回挙動制御(これ以降「VSC」
という)及びABS制御の制御量演算ルーチンについて
説明する。尚図2及び図3に示されたフローチャートに
よる制御及び図4に示されたフローチャートによる制御
は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成
により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0039】まず図2に示されたVSC制御量演算ルー
チンのステップ10に於ては車速センサ56により検出
された車速Vを示す信号等の読込みが行われ、ステップ
20に於ては横加速度Gy と車速V及びヨーレートγの
積V*γとの偏差Gy −V*γとして横加速度の偏差、
即ち車輌の横すべり加速度Vydが演算され、ステップ3
0に於ては横加速度の偏差Vydが積分されることにより
車体の横すべり速度Vy が演算される。ステップ40に
於ては車体の前後速度Vx (=車速V)に対する車体の
横すべり速度Vy の比Vy /Vx として車体のスリップ
角βが演算され、ステップ50に於てはA及びBを正の
定数としてステップ20に於て演算された横加速度の偏
差Vyd及びステップ40に於て演算された車体のスリッ
プ角βに基づき下記の数1に従ってスピンバリューSV
が演算される。
【数1】SV=A*Vyd+B*β
【0040】尚スピンバリューSVの演算自体は本願発
明の要旨をなすものではなく、スピンバリューは車輌の
スピン状態に対応する状態量として演算される限り任意
の態様にて求められてよく、例えば車体のスリップ角β
及び車体のスリップ角速度βd の線形和として演算され
てもよい。
【0041】ステップ60に於ては制御輪、即ち制動力
がスピンバリューに応じて制御されるべき車輪が前輪側
の旋回外輪に特定されるよう、スピンバリューSVが正
のときには右前輪に、スピンバリューが負のときには左
前輪に特定される。ステップ70に於てはスピンバリュ
ーSVの絶対値に基づき左前輪又は右前輪の基本目標ス
リップ率Rsbが図5に示されたグラフに対応するマップ
より演算される。
【0042】ステップ80に於ては制動中であるか否か
の判別、即ちブレーキスイッチ88がオン状態にあるか
否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステ
ップ110へ進み、否定判別が行われたときにはステッ
プ90に於て旋回挙動制御中であるか否かの判別が行わ
れる。ステップ90に於て肯定判別が行われたときには
ステップ100に於て前輪側の旋回外輪及び旋回内輪の
車輪速をそれぞれVout 及びVinとして下記の数2に従
って旋回外輪の実スリップ率Sが演算され、実スリップ
率Sに対する前後加速度Gx の絶対値の比|Gx |/S
が演算され、更にこの比に基づき図6に示されたグラフ
に対応するマップより基本目標スリップ率Rsbに対する
補正係数K1 が演算され、否定判別が行われたときには
ステップ110に於て補正係数K1 が1にセットされ
る。
【数2】S=(Vout −Vin)/Vin
【0043】ステップ120に於てはステップ40に於
て演算された車体のスリップ角β、車体のヨーレート
γ、車速V及び操舵角センサ82により検出された操舵
角θに基づき下記の数3に従って旋回外輪のスリップ角
αが演算されると共に、図7に示されたグラフに対応す
るマップより補正係数K2 が演算される。尚数3に於て
Lf は車輌の重心と前輪の車軸との間の距離であり、N
はステアリングギヤ比である。
【数3】α=β+Lf *γ/V−θ/N
【0044】ステップ130に於ては横加速度センサ7
8により検出された車体の横加速度Gy に基づき前輪側
の車輌横方向の荷重移動量ΔWf が演算され、前輪側の
旋回外輪及び旋回内輪の標準荷重をそれぞれWouto及び
Wino とすると、車輪荷重比による補正係数K3 が下記
の数4に従って旋回内輪の荷重に対する旋回外輪の荷重
の比の逆数Win/Wout として演算される。ステップ1
40に於ては補正係数K1 〜K3 と基本目標スリップ率
Rsbとの積として目標スリップ率Rs が演算される。
【数4】 K3 =Win/Wout =(Wino −ΔWf )/(Wouto+ΔWf )
【0045】ステップ150に於ては旋回挙動制御中で
あるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときに
はステップ160に於て路面の摩擦係数μを表す状態量
として車体の前後加速度Gx 及び横加速度Gy のベクト
ル和(Gx 2 +Gy 2 1/2が演算されると共に、該ベ
クトル和に基づき図8に示されたグラフに対応するマッ
プより目標スリップ率の上限値Rsmaxが演算され、否定
判別が行われたときには目標スリップ率の上限値Rsmax
が既定値Rsmaxb に設定される。
【0046】ステップ180に於ては図4に示された後
述のABS制御量演算ルーチンによりセットされるAB
S要求フラグに基づき、前輪側の旋回内輪がABS制御
中であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたと
きにはそのままステップ200へ進み、肯定判別が行わ
れたときにはステップ190に於て目標スリップ率の上
限値Rsmaxが所定値ΔRso(正の定数)低減補正され
る。ステップ200に於てはステップ140に於て演算
された目標スリップ率Rs がその上限値Rsmaxを越えて
いるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときに
はそのままステップ220へ進み、肯定判別が行われた
ときにはステップ210に於て目標スリップ率Rs が上
限値Rsmaxに設定される。
【0047】ステップ220に於てはVinを前輪側の旋
回内輪の車輪速として下記の数5に従って前輪側の旋回
外輪の目標車輪速Vwtが演算される。
【数5】Vwt=(1−Rs )*Vin
【0048】ステップ230に於ては前輪側の旋回外輪
の開閉弁に対する駆動電流のデューティ比Dr がKp 及
びKd をそれぞれ車輪速フィードバック制御に於ける比
例項及び微分項の比例定数として下記の数6に従って演
算され、ステップ240に於てはデューティ比Dr に応
じてVSC要求フラグがセットされる。
【数6】Dr =Kp *(Vout −Vwt)+Kd *d(V
out −Vwt)/dt
【0049】尚この場合、デューティ比が正の定数Dop
を越えているときには制動圧制御モードが増圧モードに
設定され、デューティ比Dr が負の定数Don未満である
ときには制動圧制御モードが減圧モードに設定され、デ
ューティ比がDon以上であり且つDop以下であるときに
は制動圧制御モードが保持モードに設定される。
【0050】ステップ250に於ては制動中であるか否
かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのま
まステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはス
テップ260に於て旋回挙動制御中であるか否かの判別
が行われる。ステップ260に於て否定判別が行われた
ときにはそのままステップ10へ戻り、肯定判別が行わ
れたときにはステップ270に於て前輪側の旋回内輪に
ついて制動圧が所定時間毎に所定時間保持されるようV
SC要求フラグが更新される。
【0051】また図4に示されたABS制御量演算ルー
チンのステップ310に於ては、車速センサ76により
検出された車速Vを示す信号及び車輪速センサ86FL〜
86RRにより検出された左右前輪及び左右後輪の車輪速
Vi ( i=FL、FR、RL、RR)を示す信号の読込みが行わ
れ、ステップ320に於てはKs を正の定数として下記
の数7に従って各輪のスリップ量Si が演算される。
【数7】Si =V−Ks *Vi
【0052】ステップ330に於てはスリップ量Si が
負の定数Son未満であるときにはデューティ比Draがス
リップ量に応じて演算されると共に制動圧制御モードが
増圧モードに決定され、スリップ量Si が正の定数Sop
を越えているときにはデューティ比Draがスリップ量に
応じて演算されると共に制動圧制御モードが減圧モード
に決定され、スリップ量Si がSon以上であり且つSop
以下であるときにはデューティ比Draが0%に設定され
ると共に制動圧制御モードが保持モードに決定され、ス
テップ340に於てはステップ330に於て演算された
デューティ比Dra及び制動圧制御モードに基づき後述の
如くABS要求フラグがセットされる。
【0053】尚ABS制御量の演算は本発明の要旨をな
すものではなく、また図4に示されたルーチンに限定さ
れるものでもなく、従来より公知の任意の態様にて行わ
れてよい。
【0054】図9(A)及び(B)に示されている如
く、VSC要求フラグ及びABS要求フラグは切換弁4
2及び44の位置を指示する部分と、制御弁50FL、5
0FR、28の位置を指示する部分と、開閉弁54FL、5
4FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62
RL、62RRの位置を指示する部分とよりなっている。特
にVSC要求フラグに於ては、切換弁42が第二の位置
に指示され、制御弁50FL又は50FRが第二の位置に指
示され、制御モードに応じて開閉弁54FL及び56FL又
は開閉弁54FR及び56FRが第一又は第二の位置に指示
される。またABS要求フラグに於ては、切換弁42若
しくは44が第一の位置に指示され、制御弁50FL、5
0FL若しくは28が第二の位置に指示され、制御モード
に応じて開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び開
閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが第一又は第二の
位置に指示される。
【0055】次に図10に示されたフローチャートを参
照して第一の実施例に於ける弁駆動処理ルーチンについ
て説明する。尚図10に示されたフローチャートによる
制御も図には示されていないイグニッションスイッチの
閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行され
る。
【0056】ステップ410に於てはVSC要求フラグ
及びABS要求フラグよりVSC中であり且ABS制御
中であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたと
きにはステップ420に於てABS制御中であるか否か
の判別が行われる。ステップ420に於て肯定判別が行
われたときにはステップ430に於て出力フラグ(図9
(C)参照)にABS要求フラグがそのままセットされ
る。ステップ430が完了した後又はステップ420に
於て否定判別が行われたときにはステップ440に於て
VSC中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行わ
れたときにはステップ450に於て出力フラグにVSC
要求フラグがそのままセットされる。
【0057】ステップ460に於てはVSC要求フラグ
のマスク処理が行われ、ステップ470に於てはABS
要求フラグのマスク処理が行われ、ステップ480に於
ては出力フラグがVSC要求フラグとABS要求フラグ
との重ね合せにセットされる。尚ステップ460に於て
実行されるVSC要求フラグのマスク処理に於ては、V
SCが実行される車輪に関連する各弁についてVSCの
指示がストアされ他の指示がクリアされ、ステップ47
0に於て実行されるABS要求フラグのマスク処理に於
ては、VSCが実行されない車輪に関連する弁について
ABS制御の指示がストアされ他の指示がクリアされ
る。またステップ480に於て実行される二つのフラグ
の重ね合せに於ては、一方のフラグのクリアされた部分
に他方のフラグの指示がストアされることにより二つの
フラグの指示が重ね合される。
【0058】ステップ490に於てはVSC要求フラグ
が増圧であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われ
たときにはステップ500に於てABS要求フラグが増
圧であるか否かの判別が行われる。ステップ500に於
て否定判別が行われたときにはそのままステップ550
へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ510に
於て出力フラグのABS制御輪に保持出力がセットさ
れ、ステップ520に於て出力フラグの切換弁42又は
44が第二の位置にセットされる。
【0059】ステップ490に於て否定判別が行われた
ときにはステップ530に於てABS要求フラグが増圧
であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたとき
にはそのままステップ550へ進み、肯定判別が行われ
たときにはステップ540に於て出力フラグの切換弁4
2又は44が第一の位置にセットされる。ステップ55
0に於ては出力フラグに対応する制御信号が切換弁等へ
出力される。
【0060】例えば図9(D)及び(E)はそれぞれ右
前輪がVSCされる場合についてマスク処理されたVS
C要求フラグ及びマスク処理されたABS要求フラグを
示している。
【0061】かくしてこの実施例に於ては、ステップ2
0〜50に於て車輌の旋回挙動を示すスピンバリューS
Vが演算され、ステップ60に於て制御輪、即ち車輌の
スピンやドリフトアウトを抑制するために制動力が与え
られるべき車輪として前輪側の旋回外輪がスピンバリュ
ーSVの符号に応じて特定され、ステップ70〜210
に於て制御輪の目標スリップ率Rs が演算され、ステッ
プ220に於て目標スリップ率に応じて目標車輪速Vwt
が演算され、ステップ230に於て制御輪の車輪速をフ
ィードバック制御するためのデューティ比Dr が演算さ
れ、ステップ240に於てデューティ比Dr に応じてV
SC要求フラグがセットされる。
【0062】特にこの実施例の図2に示されたフローチ
ャートのステップ80〜110及びステップ140は請
求項1の構成の一部に対応しており、ステップ80に於
て制動中である旨の判別が行われ、ステップ90に於て
旋回挙動制御中である旨の判別が行われると、ステップ
100に於て旋回外輪の実スリップ率Sが演算され、実
スリップ率Sに対する前後加速度Gx の絶対値の比|G
x |/Sが演算され、この比に基づき図6に示されたグ
ラフに対応するマップより基本目標スリップ率Rsbに対
する補正係数K1 が演算され、ステップ140に於て基
本目標スリップ率Rsbが補正係数K1 にて補正される。
【0063】この場合ステップ100に於て演算される
比|Gx |/Sは路面と旋回外輪との間に於けるμ−S
特性の線形領域の傾きに相当し、従ってステップ100
に於てμ−S特性の線形領域の傾きが大きいほど目標ス
リップ率Rs が小さくなるよう演算されるので、車輌の
走行や天候の変化に伴って路面の表面性状が変化し、こ
れによりμ−S特性の線形領域の傾きが変化するような
場合にも、前輪側の旋回外輪の制動力が旋回挙動を安定
化させるに必要な値に正確に制御され、路面の表面性状
の変化に拘らず最適のアンチスピンモーメントが発生さ
れる。
【0064】またこの実施例のステップ120及び14
0は請求項2の構成の一部に対応しており、ステップ1
20に於て車体のスリップ角β、車体のヨーレートγ、
車速V及び操舵角θに基づき旋回外輪のスリップ角αが
演算されると共に、図7に示されたグラフに対応するマ
ップより補正係数K2 が演算され、ステップ140に於
て基本目標スリップ率Rsbが補正係数K2 にて補正され
る。
【0065】従って目標スリップ率Rs が旋回外輪のス
リップ角αに応じて演算されることにより、結果的にス
リップ角αに応じたμ−S特性について線形領域の傾き
が推定され、旋回外輪のスリップ角によってμ−S特性
が変化することの影響が排除されるので、車輌の旋回時
に於ける旋回外輪のスリップ角に拘らずその車輪の制動
力が旋回挙動を安定化させるに必要な値に正確に制御さ
れ、スリップ角の変化に拘らず最適のアンチスピンモー
メントが発生される。
【0066】またこの実施例のステップ130及び14
0は請求項3の構成の一部に対応しており、横加速度セ
ンサ78により検出された車体の横加速度Gy に基づき
旋回内輪の荷重に対する旋回外輪の荷重の比の逆数Win
/Wout として車輪荷重比による補正係数K3 が演算さ
れ、ステップ140に於て基本目標スリップ率Rsbが補
正係数K3 にて補正される。
【0067】従って旋回内輪(スリップ率演算の基準と
なる車輪)の荷重に対する旋回外輪(制御輪)の荷重の
比(Wout /Win)が高いほど目標スリップ率Rs が小
さくなるよう演算されるので、車輌の旋回や制動に伴な
う荷重移動に起因する旋回外輪及び旋回内輪の荷重の変
化に拘らず、それらの車輪の制動力が旋回挙動を安定化
させるに必要な値に正確に制御され、実際に発生するア
ンチスピンモーメントが正確に制御される。
【0068】またこの実施例のステップ150〜170
及びステップ200、210は請求項4の構成の一部に
対応しており、ステップ150に於て旋回挙動制御中で
ある旨の判別が行われると、ステップ160に於て路面
の摩擦係数μを表す状態量として車体の前後加速度Gx
及び横加速度Gy のベクトル和(Gx 2 +Gy 2 1/2
が演算されると共に、該ベクトル和に基づき図8に示さ
れたグラフに対応するマップより目標スリップ率の上限
値Rsmaxが演算される。またステップ200に於て目標
スリップ率Rs がその上限値Rsmaxを越えているか否か
の判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ
210に於て目標スリップ率Rs が上限値Rsmaxに設定
される。
【0069】従って路面の摩擦係数が低いほど目標スリ
ップ率の上限値Rsmaxが大きい値に設定され、目標スリ
ップ率Rs が高い値になることが許されるので、路面の
摩擦係数が高いときには支障なく効果的なアンチスピン
モーメントが発生されることによって車輌の旋回挙動が
良好に制御されることが確保されると共に、μ−S特性
のピーク値以上の領域の負勾配が大きいことに起因して
旋回外輪の制動圧の制御にハンチングが生じることも確
実に防止され、路面の摩擦係数が低いときには目標スリ
ップ率が必要に応じて高い値に設定されることにより、
車輌の不安定な旋回挙動が確実に安定化される。
【0070】またこの実施例のステップ180〜210
は請求項5の構成の一部に対応しており、ステップ18
0に於て前輪側の旋回内輪がABS制御中であるか否か
の判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ
190に於て目標スリップ率の上限値Rsmaxが所定値Δ
Rso(正の定数)低減補正される。またステップ200
に於て目標スリップ率Rs がその上限値Rsmaxを越えて
いるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときに
はステップ210に於て目標スリップ率Rs が上限値R
smaxに設定される。
【0071】従ってスリップ率演算の基準となる前輪側
の旋回内輪がABS制御されているときには、即ち前輪
側の旋回内輪の実スリップ率が高くなっている状況であ
るときには、目標スリップ率の上限値Rsmaxが小さく設
定され目標スリップ率Rs が高い値になることが阻止さ
れるので、スリップ率が過剰であることに起因して適正
なアンチスピンモーメントが発生されなくなることが防
止され、またμ−S特性のピーク値以上の領域の負勾配
に起因する旋回外輪の制動圧の制御のハンチングも防止
される。
【0072】またこの実施例のステップ250〜270
は請求項6の構成の一部に対応しており、ステップ25
0に於て制動中であるか否かの判別が行われ、肯定判別
が行われたときにはステップ260に於て旋回挙動制御
中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたと
きにはステップ270に於て前輪側の旋回内輪の制動圧
が所定時間毎に所定時間保持されるようVSC要求フラ
グが更新される。
【0073】従って運転者により急制動の操作が行わ
れ、基準輪である前輪側の旋回内輪の制動圧がマスタシ
リンダ圧によって急増圧される虞れがあるときには、
輪側の旋回内輪の制動圧の増圧勾配が旋回外輪の制動圧
の増圧勾配よりも小さくなるよう前輪側の旋回内輪の制
動圧が調整されるので、運転者により急激な制動操作が
行われても、旋回外輪の制動圧の増圧勾配は必ず旋回内
輪の制動圧の増圧勾配よりも大きくなり、これにより旋
回挙動を安定化させるに必要なアンチスピンモーメント
が確実に発生される。
【0074】例えば図11及び図12はそれぞれ従来の
挙動制御装置に於て緩制動及び急制動が行われる場合に
於ける前輪側の旋回外輪及び旋回内輪の制動圧の変化の
一例を示しており、図13は図示の実施例に於て急制動
が行われる場合に於ける前輪側の旋回外輪及び旋回内輪
の制動圧の変化の一例を示している。
【0075】図11に示されている如く、従来の挙動制
御装置の場合にも運転者による制動操作が穏やかであ
り、マスタシリンダ圧によって増圧される旋回内輪の制
動圧の増圧勾配も穏やかであるときには、VSCが開始
されることによってアキュムレータ圧により増圧される
旋回外輪の制動圧の増圧勾配は旋回内輪の制動圧の増圧
勾配よりも大きく、これにより旋回外輪の制動力が旋回
内輪の制動力よりも高いことによってアンチスピンモー
メントが発生される。
【0076】しかし図12に示されている如く、運転者
による制動操作が非常に急激であり、旋回内輪の制動圧
の増圧勾配も非常に急激であるときには、VSCが開始
され旋回外輪の制動圧がアキュムレータ圧により増圧さ
れても、旋回外輪の制動圧の増圧勾配が旋回内輪の制動
圧の増圧勾配と実質的に同一になってアンチスピンモー
メントが発生されなかったり、前者が後者よりも小さく
なり、これにより旋回外輪の制動力が旋回内輪の制動力
よりも低くなってアンチスピンモーメントとは逆方向
の、即ち車輌の旋回挙動を安定化させる方向とは逆方向
のモーメントが発生され、そのためVSCによって却っ
て旋回挙動が悪化される場合がある。
【0077】これに対し図示の実施例によれば、図13
に示されている如く、運転者により急激な制動操作が行
われても、旋回外輪の制動圧の増圧勾配は必ず旋回内輪
の制動圧の増圧勾配よりも大きくなり、旋回外輪の制動
力も必ず旋回内輪の制動力よりも高くなることによって
効果的なアンチスピンモーメントが発生され、これによ
り旋回挙動が確実に安定化される。
【0078】尚図示の実施例に於ては、本発明がABS
搭載車に適用され、上述の請求項5に対応してステップ
180及び190が実行されるようになっているが、本
発明の挙動制御装置が上述の請求項1〜4又は請求項6
の構成に対応して構成される場合には、本発明が適用さ
れる制動装置は各ホイールシリンダへ供給される油圧が
マスタシリンダ14よりの油圧又はアキュムレータ46
に蓄圧された油圧のみである制動装置であってよい。
【0079】また図示の実施例に於ては、ステップ25
0に於て制動中である旨の判別が行われ、ステップ26
0に於て旋回挙動制御中である旨の判別が行われたとき
には、ステップ270に於て基準輪について制動圧が所
定時間毎に所定時間保持されるようVSC要求フラグが
更新されるようになっているが、このステップに於て制
御輪のデューティ比が増大補正されるようVSC要求フ
ラグが更新されてもよく、或いは基準輪の制動圧が所定
時間毎に所定時間保持されると共に制御輪のデューティ
比が増大補正されるようVSC要求フラグが更新されて
もよい。
【0080】また図示の実施例に於けるステップ270
に於て基準輪の制動圧が保持される所定時間は一定であ
るが、この所定時間若しくは制御輪のデューティ比の増
大率はスピンバリューSVの大きさが大きいほど大きく
なるようスピンバリューの大きさに応じて可変設定され
てもよい。
【0081】また図示の実施例に於けるステップ250
に於ては制動中であるか否かの判別が行われるようにな
っているが、ブレーキスイッチ88がオン状態にて制御
輪以外の車輪の減速度や前後加速度Gx の変化率より急
制動状態であるか否かの判別が行われ、急制動時であり
且つ旋回挙動制御中である場合にのみステップ270に
於て制御輪の制動圧の増圧勾配を基準輪の制動圧の増圧
勾配よりも高くする処理が行われるよう構成されてもよ
い。かかる構成によれば、運転者による制動操作が穏や
かである場合に基準輪の制動圧の増圧勾配が不必要に低
減されたり制御輪の制動圧が不必要に増大されることが
なくなる。
【0082】以上に於ては本発明を特定の実施例につい
て詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定され
るものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例
が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0083】例えば上述の実施例に於ては、車輌がスピ
ンを生じたときには前輪側の旋回外輪の制動力がスピン
バリューSVに応じて制御され、前輪側の旋回外輪の制
動力と旋回内輪の制動力との差によるアンチスピンモー
メントによりスピンが低減されるようになっているが、
前輪側及び後輪側の両方の旋回外輪の制動力が制御され
てもよい。
【0084】また上述の実施例に於ては、前輪側の旋回
外輪についてのVSCの増圧要求と前輪側の旋回内輪に
ついてのABS制御の増圧要求とが競合した場合にはV
SCの要求が優先されるようになっているが、ABS制
御の要求が優先されるよう構成されてもよく、また先に
生じた要求が優先されるよう構成されてもよい。
【0085】
【発明の効果】以上の説明より明らかである如く、本発
明の請求項1の構成によれば、路面と旋回外輪との間に
於けるμ−S特性の線形領域の傾きが傾き推定手段によ
り推定され、推定された線形領域の傾きが大きいほど小
さくなるよう目標スリップ率が目標スリップ率補正手段
により補正されるので、走行に伴って路面の表面性状が
変化し、これによりμ−S特性の線形領域の傾きが変化
しても、旋回外輪の制動力を旋回挙動を安定化させるに
必要な値に正確に制御し、路面の表面性状の変化に拘ら
ず最適のアンチスピンモーメントを発生させ、これによ
り車輌の旋回挙動を良好に制御することができる。
【0086】また請求項2の構成によれば、傾き推定手
段は旋回外輪のスリップ角に応じたμ−S特性について
線形領域の傾きを推定するよう構成されているので、車
輌の旋回時に於ける旋回外輪のスリップ角に応じてその
車輪の制動力を旋回挙動を安定化させるに必要な値に正
確に制御し、旋回外輪のスリップ角の変化に拘らず最適
のアンチスピンモーメントを発生させ、これにより車輌
の旋回挙動を良好に制御することができる。
【0087】また請求項3の構成によれば、スリップ率
演算の基準となる車輪の荷重に対する旋回外輪の荷重の
比が検出され、荷重の比が高いほど小さくなるよう目標
スリップ率が目標スリップ率補正手段により補正される
ので、車輌の旋回や制動に伴なう荷重移動に起因する
回外輪及びスリップ率演算の基準となる車輪の荷重の変
化に拘らず、それらの車輪の制動力を旋回挙動を安定化
させるに必要な値に正確に制御し、実際に発生するアン
チスピンモーメントを正確に制御し、これにより車輌の
旋回挙動を良好に制御することができる。
【0088】また請求項4の構成によれば、路面の摩擦
係数が検出され、路面の摩擦係数が低いほど大きくなる
よう目標スリップ率の上限値が設定されるので、路面の
摩擦係数が高いときには支障なく効果的なアンチスピン
モーメントを発生させて車輌の旋回挙動を良好に制御す
ることができると共に、μ−S特性のピーク値以上の領
域の負勾配が大きいことに起因して旋回外輪の制動圧の
制御にハンチングが生じることを確実に防止することが
でき、路面の摩擦係数が低いときには旋回外輪の目標ス
リップ率が必要に応じて高く設定されることが可能であ
ることにより、十分なアンチスピンモーメントを発生さ
せ、これにより車輌の旋回挙動を確実に制御することが
できる。
【0089】また請求項5の構成によれば、目標スリッ
プ率の演算の基準となる前輪側の旋回内輪がABS装置
により制御されているか否かが検出され、前輪側の旋回
内輪がABS装置により制御されているときには旋回外
輪の目標スリップ率の上限値が小さく設定されるので、
スリップ率が過剰であることに起因して適正なアンチス
ピンモーメントが発生されなくなることを防止すること
ができ、またμ−S特性のピーク値以上の領域の負勾配
に起因する旋回外輪の制動圧の制御のハンチングも防止
することができる。
【0090】また請求項6の構成によれば、運転者によ
る制動操作が検出され、運転者により制動操作が行われ
ているときには制動圧が制御される旋回外輪以外の車輪
の制動圧の増圧勾配が該旋回外輪の制動圧の増圧勾配よ
りも小さくなるよう該旋回外輪若しくは該旋回外輪以外
の車輪の制動圧が調整されるので、運転者により急激な
制動操作が行われても、制動圧が制御される旋回外輪
制動圧の増圧勾配を必ず該旋回外輪以外の車輪の制動圧
の増圧勾配よりも大きくすることができ、これにより旋
回挙動を安定化させるに必要なアンチスピンモーメント
を確実に発生させて旋回挙動を確実に安定化させること
ができる。また上述の請求項7の構成によれば、路面と
旋回外輪との間に於ける路面の摩擦係数が摩擦係数推定
手段により推定され、推定された路面の摩擦係数が大き
いほど小さくなるよう目標スリップ率が目標スリップ率
補正手段により補正されるので、上述の請求項1の構成
の場合と同様、走行に伴って路面の表面性状が変化し、
これにより路面の摩擦係数が変化しても、旋回外輪の制
動力を旋回挙動を安定化させるに必要な値に正確に制御
し、路面の表面性状の変化に拘らず最適のアンチスピン
モーメントを発生させ、これにより車輌の旋回挙動を良
好に制御することができる。また上述の請求項8の構成
によれば、請求項7の構成に於て、摩擦係数推定手段は
旋回外輪のスリップ角を考慮して路面の摩擦係数を推定
するよう構成されているので、上述の請求項2の構成の
場合と同様、車輌の旋回時に於ける旋回外輪のスリップ
角に応じてその車輪の制動力を旋回挙動を安定化させる
に必要な値に正確に制御し、旋回外輪のスリップ角の変
化に拘らず最適のアンチスピンモーメントを発生させ、
これにより車輌の旋回挙動を良好に制御することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による挙動制御装置が適用される車輌の
制動装置及びその電気式制御装置を示す概略構成図であ
る。
【図2】本発明による挙動制御装置のVSC制御量演算
ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図3】本発明による挙動制御装置のVSC制御量演算
ルーチンの残りの部分を示すフローチャートである。
【図4】本発明による挙動制御装置のABS制御量演算
ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】スピンバリューSVの絶対値と基本目標スリッ
プ率Rsbとの間の関係を示すグラフである。
【図6】実スリップ率Sに対する前後加速度Gx の絶対
値の比と補正係数K1 との間の関係を示すグラフであ
る。
【図7】車輪のスリップ角αと補正係数K2 との間の関
係を示すグラフである。
【図8】前後加速度Gx 及び横加速度Gy のベクトル和
と目標スリップ率の上限値Rsmaxとの間の関係を示すグ
ラフである。
【図9】VSC要求フラグ、ABS要求フラグ、出力フ
ラグを示す説明図である。
【図10】本発明による挙動制御装置の実施例による弁
駆動処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】緩制動時に於ける前輪側の旋回外輪及び旋回
内輪の制動圧の変化の一例を従来の挙動制御装置の場合
について示すタイムチャートである。
【図12】急制動時に於ける前輪側の旋回外輪及び旋回
内輪の制動圧の変化の一例を従来の挙動制御装置の場合
について示すタイムチャートである。
【図13】急制動時に於ける前輪側の旋回外輪及び旋回
内輪の制動圧の変化の一例を図示の実施例の場合につい
て示すタイムチャートである。
【図14】種々の路面の摩擦係数μについて路面と車輪
との間に於けるμ−S特性を示すグラフである。
【図15】種々の路面の摩擦係数μについてスリップ率
Sと車輪の制動力Fとの間の関係を示すグラフである。
【図16】種々の車輪のスリップ角αについて路面と車
輪との間に於けるμ−S特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10…制動装置 14…マスタシリンダ 16…ハイドロブースタ 20、22、32、34…ブレーキ油圧制御装置 28、50FL、50FR…制御弁 42、44…切換弁 44FL、44FR、64RL、64RR…ホイールシリンダ 54FL、54FR、60RL、60RR…開閉弁 56FL、56FR、62RL、62RR…開閉弁 72…電気式制御装置 76…車速センサ 78…横加速度センサ 80…ヨーレートセンサ 86FL〜86RR…車輪速センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 - 8/96

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に基づ
    きスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記スピン状
    態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要な旋回外輪
    制動力に対応する目標スリップ率を演算し、前記旋回外
    スリップ率が前記目標スリップ率となるよう前記
    回外輪の制動圧を制御する挙動制御手段とを有する車輌
    の挙動制御装置に於て、路面と前記旋回外輪との間に於
    けるμ−S特性の線形領域の傾きを推定する傾き推定手
    段と、推定された前記線形領域の傾きが大きいほど小さ
    くなるよう前記目標スリップ率を補正する目標スリップ
    率補正手段とを有していることを特徴とする車輌の挙動
    制御装置。
  2. 【請求項2】請求項1の車輌の挙動制御装置に於て、前
    記傾き推定手段は前記旋回外輪のスリップ角に応じたμ
    −S特性について線形領域の傾きを推定するよう構成さ
    れていることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
  3. 【請求項3】車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に基づ
    きスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記スピン状
    態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要な旋回外輪
    制動力に対応する目標スリップ率を演算し、前記旋回外
    スリップ率が前記目標スリップ率となるよう前記
    回外輪の制動圧を制御する挙動制御手段とを有する車輌
    の挙動制御装置に於て、スリップ率演算の基準となる車
    輪の荷重に対する前記旋回外輪の荷重の比を検出する手
    段と、前記荷重の比が高いほど小さくなるよう前記目標
    スリップ率を補正する目標スリップ率補正手段とを有し
    ていることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
  4. 【請求項4】車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に基づ
    きスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記スピン状
    態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要な旋回外輪の
    制動力に対応する目標スリップ率を演算し、前記旋回外
    輪のスリップ率が前記目標スリップ率となるよう前記旋
    回外輪の制動圧を制御する挙動制御手段とを有する車輌
    の挙動制御装置に於て、路面の摩擦係数を検出する手段
    と、路面の摩擦係数が低いほど大きくなるよう前記目標
    スリップ率の上限値を設定する手段とを有していること
    を特徴とする車輌の挙動制御装置。
  5. 【請求項5】ABS装置が搭載された車輌の旋回挙動を
    示すスピン状態量に基づきスピン状態を推定する挙動推
    定手段と、前記スピン状態量に応じて旋回挙動を安定化
    するに必要な旋回外輪の制動力に対応する目標スリップ
    率を演算し、前記旋回外輪のスリップ率が前記目標スリ
    ップ率となるよう前記旋回外輪の制動圧を制御する挙動
    制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に於て、前記目
    標スリップ率演算の基準となる前輪側の旋回内輪が前記
    ABS装置により制御されているか否かを検出する手段
    と、前記旋回内輪が前記ABS装置により制御されてい
    るときには前記目標スリップ率の上限値を小さく設定す
    る手段とを有していることを特徴とする車輌の挙動制御
    装置。
  6. 【請求項6】車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に基づ
    きスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記スピン状
    態量に応じて旋回外輪の制動圧を制御し旋回挙動を安定
    化させる挙動制御手段とを有する車輌の挙動制御装置に
    於て、運転者による制動操作を検出する手段と、運転者
    により制動操作が行われているときには前記旋回外輪
    外の車輪の制動圧の増圧勾配が前記旋回外輪の制動圧の
    増圧勾配よりも小さくなるよう前記旋回外輪若しくは前
    旋回外輪以外の車輪の制動圧を調整する手段とを有し
    ていることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
  7. 【請求項7】 車輌の旋回挙動を示すスピン状態量に基づ
    きスピン状態を推定する挙動推定手段と、前記スピン状
    態量に応じて旋回挙動を安定化するに必要な旋回外輪の
    制動力に対応する目標スリップ率を演算し、前記旋回外
    輪のスリップ率が前記目標スリップ率となるよう前記旋
    回外輪の制動圧を制御する挙動制御手段とを有する車輌
    の挙動制御装置に於て、路面と前記旋回外輪との間に於
    ける路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、推
    定された前記路面の摩擦係数が大きいほど小さくなるよ
    う前記目標スリップ率を補正する目標スリップ率補正手
    段とを有していることを特徴とする車輌の挙動制御装
    置。
  8. 【請求項8】 請求項7の車輌の挙動制御装置に於て、前
    記摩擦係数推定手段は前記旋回外輪のスリップ角を考慮
    して前記路面の摩擦係数を推定するよう構成されている
    ことを特徴とする車輌の挙動制御装置。
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