JP3114581B2 - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

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JP3114581B2
JP3114581B2 JP07242190A JP24219095A JP3114581B2 JP 3114581 B2 JP3114581 B2 JP 3114581B2 JP 07242190 A JP07242190 A JP 07242190A JP 24219095 A JP24219095 A JP 24219095A JP 3114581 B2 JP3114581 B2 JP 3114581B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は制動力制御装置に係
り、特に旋回走行中の制動操作時に各車輪のスリップ率
が同じになるように各車輪の制動力を制御するよう構成
した制動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の各車輪を制動する制動力制御装
置では、路面状態(例えば、乾燥した路面、濡れた路
面、凍結した路面等)によって制動時の制動力を制御し
ており、特に滑りやすい路面での急制動により車輪がロ
ックして車両の操縦が困難になることを防止するため、
アンチロック制動力制御システムが採用されている。
【0003】この種のアンチロック制動力制御システム
では、増圧用電磁弁と減圧用電磁弁とを有し、増圧用電
磁弁と減圧用電磁弁との開閉動作により増圧モード、保
持モード、減圧モードのいずれかに切り換えるようにな
っている。従って、運転者がブレーキペダルを踏み込み
各車輪にブレーキ圧力が供給される際、車両が走行中で
あれば各車輪へのブレーキ圧を増圧又は保持する増圧モ
ード又は保持モードにして車輪の制動力を増大させ、車
両走行中で車輪がロックする直前であればブレーキ圧を
減圧する減圧モードにして車輪がロックすることを防止
するように動作する。そして、車両が停止するとき、各
車輪が同時にロックしないように各車輪へのブレーキ圧
を調整するように増圧用電磁弁、減圧用電磁弁を開閉制
御する。
【0004】さらに、コーナリング走行中の車両におい
て、車両の外側車輪には横加速度による荷重が大となる
反面、内側車輪への荷重が小となる。そのため、車両旋
回時に運転者がブレーキペダルを踏み込んだ場合、各車
輪へのブレーキ圧を等しく増圧させてしまうと、内側車
輪が外側車輪よりも先にロックしてしまうことになる。
そのため、アンチロック制動力制御システムを有する制
動力制御装置では、旋回制動時には内側車輪へ供給され
るブレーキ圧が外側車輪へ供給されるブレーキ圧よりも
小さくなるようにブレーキ圧(制動力)を制御してい
た。
【0005】このような、旋回制動時に横加速度が所定
値以上になったとき旋回内側車輪へのブレーキ圧が小さ
くなるように各車輪の制動力を制御して車両の挙動を安
定させることが考えられている。この種の制動力の制御
を行う制動力制御装置としては、例えば特開昭1−17
8059号公報にみられるような装置がある。
【0006】上記公報の装置では、車両が旋回中に制動
が検出されると、内側車輪の増圧用電磁弁を閉弁させる
とともに同車輪の減圧用電磁弁を一定時間開弁させてブ
レーキ圧を低下させるように各車輪の制動力を制御す
る。従って、旋回制動時は、内側車輪のブレーキ圧低下
により車両をスピンさせようとする方向のモーメントと
逆方向のアンチスピンモーメントを発生させて旋回制動
時の走行安定性を高めている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記公報の
装置では、旋回制動時、内側車輪の増圧用電磁弁を閉弁
させるとともに同車輪の減圧用電磁弁を一定時間開弁さ
せてブレーキ圧を低下させて内側車輪にアンチスピンモ
ーメントを発生させるようにしているが、ブレーキ圧を
どの程度低下させるのか制動力低下量(あるいはブレー
キ圧低下量)に関する説明がない。
【0008】従って、上記公報の装置において、例えば
旋回制動時に内側車輪のブレーキ圧を低下させるように
してもブレーキ圧の低下が充分でないと内側車輪と外側
車輪との制動力の差により旋回制動時の走行安定性が維
持できなくなり、逆にブレーキ圧を下げ過ぎると内側車
輪の制動性能の低下により制動距離が延びてしまったり
外側車輪に過大なアンチスピンモーメントを発生させる
ことになるといった課題がある。
【0009】そこで、本発明は上記課題に鑑み、旋回制
動時に発生する横加速度に応じて内輪と外輪のスリップ
率が同じになるようにブレーキ圧を調整して旋回制動時
の走行安定性を保つことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、車両の車体速度を検出する車体速度検
出手段と、該車両の各車輪の速度を検出する車輪速度検
出手段と、前記車両に作用する横加速度を検出する横加
速度検出手段と、前記車両が旋回状態であるか否かを判
別する旋回状態判別手段と、前記車両が制動状態である
か否かを判別する制動状態判別手段と、前記車両が旋回
制動状態であると判別された場合に、前記車体速度、前
記横加速度、および、前記車輪速度検出手段により検出
された実際の旋回外輪の車輪速度に基づいて、旋回外輪
のスリップ状態と旋回内輪のスリップ状態とが同じにな
るように、旋回内輪の目標車輪速度を演算する目標旋回
内側車輪速度演算手段と、旋回内輪の車輪速度が前記目
標車輪速度になるように旋回内輪の制動力を制御する制
動力制御手段と、を備えることを特徴とする制動力制御
装置
【0011】上記請求項1によれば、車体速度、旋回外
側車輪速度、横加速度に基づいて左右輪が同時にロック
するように旋回時の内側車輪の目標車輪速度を演算し、
この演算により得られた目標車輪速度になるように旋回
内側車輪の制動力を制御することにより、各車輪のスリ
ップ率が同じになるようにブレーキ圧が制御され旋回制
動時の走行安定性を高めるとともに制動性能をより高め
られる制動距離を短縮することができる。
【0012】上記の目的は、請求項2に記載する如く、
上記請求項1記載の制動力制御装置において、前記目標
旋回内側車輪速度演算手段は、目標旋回内側車輪速度を
WI,車体速度をVB ,横加速度をGy,旋回外側車輪
速度をVWOとした場合、次式により VWI={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・G
y/2VB )}・VWO 目標旋回内側車輪速度VWIを演算する制動力制御装置に
より達成される。
【0013】請求項2によれば、目標旋回内側車輪速度
をVWI,車体速度をVB ,横加速度をGy,旋回外側車
輪速度をVWOとした場合、次式により VWI={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・G
y/2VB )}・VWO 目標旋回内側車輪速度VWIを演算することにより、車両
の自転のヨーレートと公転のヨーレートとが一致するよ
うにして旋回制動時の内輪側と外輪側とが同時にロック
するように各車輪の制動力を制御する。
【0014】上記の目的は、請求項3に記載する如く、
上記請求項1記載の制動力制御装置において、前記目標
旋回内側車輪速度演算手段は、次式により VWI=(VWO 2 −2dGy)1/2 目標旋回内側車輪速度VWIを演算する制動力制御装置に
よっても達成される。
【0015】請求項3によれば、次式により VWI=(VWO 2 −2dGy)1/2 目標旋回内側車輪速度VWIを演算して旋回制動時の内輪
側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになるように各
車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外輪側と
が同時にロックする。
【0016】上記の目的は、請求項4に記載の如く、旋
回外側車輪速度VWOを検出する旋回外側車輪速度検出手
段と、旋回内側車輪速度VWIを検出する旋回内側車輪速
度検出手段と、VWO 2 −VWI 2 >K(Kは所定値)であ
るか否かを判定する判定手段と、非制動状態を検出する
非制動状態検出手段と、旋回制動時にVWO 2 −VWI 2
Kと判定されたとき、旋回外側車輪のスリップ率と旋回
内側車輪のスリップ率との偏差をゼロとすべくWO 2
WI 2 =Kとなるように旋回内側車輪の制動力を制御す
る制動力制御手段と、を備えることを特徴とする制動力
制御装置。
【0017】請求項4によれば、横加速度Gyを検出す
ることなく旋回制動時にVWO 2 −V WI 2 >Kと判定され
たときVWO 2 −VWI 2 =Kとなるように旋回内側車輪の
制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外輪側とのスリ
ップ率の偏差がゼロになるように各車輪の制動力を制御
して旋回制動時の内輪側と外輪側とが同時にロックす
る。
【0018】上記の目的は、請求項5に記載の如く、車
両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、該車両の
各車輪の速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車両
の横方向の加速度を検出する横加速度検出手段と、前記
車両の制動状態を検出する制動検出手段と、前記車体速
度検出手段により検出された車体速度、前記車輪速度検
出手段により検出された旋回内側車輪速度、前記横加速
度検出手段により検出された横加速度に基づいてアンチ
スピンモーメントを発生させるための目標旋回外側車輪
速度を演算する目標旋回外側車輪速度演算手段と、旋回
外側車輪のスリップ率と旋回内側車輪のスリップ率との
偏差をゼロとするため、前記旋回外側車輪速度が前記目
標旋回外側車輪速度となるように外側車輪に制動力を付
与する制動力制御手段と、を備えることを特徴とする制
動力制御装置。
【0019】請求項5によれば、車体速度、旋回内側車
輪速度、横加速度に基づいてアンチスピンモーメントを
発生させるための目標旋回外側車輪速度を演算し、旋回
外側車輪速度が目標旋回外側車輪速度となるように外側
車輪に制動力を付与することにより、旋回非制動時に最
適なアンチスピンモーメントを発生させて走行安定性を
保つことができる。
【0020】上記の目的は、請求項6に記載の如く、旋
回外側車輪速度VWOを検出する旋回外側車輪速度検出手
段と、旋回内側車輪速度VWIを検出する旋回内側車輪速
度検出手段と、VWO 2 −VWI 2 >K(Kは所定値)であ
るか否かを判定する判定手段と、非制動状態を検出する
非制動状態検出手段と、非制動時にVWO 2 −VWI 2 >K
と判定されたとき、旋回外側車輪のスリップ率と旋回内
側車輪のスリップ率との偏差をゼロとすべくWO 2 −V
WI 2 =Kとなるように旋回外側車輪の制動力を付与する
制動力制御手段と、を備えることを特徴とする制動力制
御装置。
【0021】請求項6によれば、非制動時にVWO 2 −V
WI 2 >Kと判定されたときVWO 2 −VWI 2 =Kとなるよ
うに旋回外側車輪の制動力を付与することにより、横加
速度Gyを検出することなく旋回非制動時に最適なアン
チスピンモーメントを発生させて走行安定性を保つこと
ができる。
【0022】上記の目的は、請求項7に記載の如く、
求項2又は3記載の制動力制御装置において、 さらに、
前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度から推
定横加速度を演算する横加速度推定手段と、前記横加速
度検出手段により検出された横加速度と前記推定横加速
度とを比較することにより前記横加速度検出手段の異常
発生の有無を判定する異常発生判定手段とを有し、 前記
目標旋回内側車輪速度演算手段は、前記異常発生判定手
段により前記横加速度検出手段が異常であると判定され
場合には前記車輪速度検出手段により検出された旋回
外側車輪速度に基づいて旋回時の内側車輪の目標車輪速
度を演算を行い、また前記異常発生判定手段により前記
横加速度検出手段が正常であると判定された場合には前
記車体速度、前記横加速度、および、前記車輪速度検出
手段により検出された実際の旋回外輪の車輪速度に基づ
いて、旋回外輪のスリップ状態と旋回内輪のスリップ状
態とが同じになるように、旋回内輪の目標車輪速度を演
算を行うように設定されている、ことを特徴とする制動
力制御装置。
【0023】請求項7によれば、車輪速度から推定横加
速度を演算し、横加速度検出手段により検出された横加
速度と推定横加速度とを比較することにより横加速度検
出手段の異常発生の有無を判定する。そして、横加速度
検出手段が異常であると判定されたとき、車輪速度検出
手段により検出された旋回外側車輪速度に基づいて旋回
時の内側車輪の目標車輪速度を演算し、旋回内側車輪速
度が目標旋回内側車輪速度演算手段により演算された目
標車輪速度になるように旋回内側車輪の制動力を制御す
ることにより、横加速度検出手段が故障した場合でも旋
回制動時の走行安定性を保つことができる。
【0024】上記の目的は、請求項8に記載する如く、
車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と、該車両
の各車輪の速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車
両に作用する横加速度を検出する横加速度検出手段と、
前記車両が旋回制動状態であるか否かを判別する旋回制
動状態判別手段と、制動時、前記車体速度検出手段によ
り検出された車体速度、前記車輪速度検出手段により検
出された旋回前側外輪車輪速度、および、前記横加速度
検出手段により検出された横加速度に基づいて、旋回前
側外輪のスリップ状態と旋回前側内輪のスリップ状態と
が同じになるように、前記旋回前側内輪の目標車輪速度
を演算する目標旋回前側内輪速度演算手段と、制動時、
前記車輪速度検出手段により検出された旋回前側外輪車
輪速度に基づいて旋回後側外輪の目標車輪速度を演算す
る目標旋回後側外輪速度演算手段と、制動時、前記車輪
速度検出手段により検出された旋回前側外輪車輪速度に
基づいて旋回後側内輪の目標車輪速度を演算する目標旋
回後側内輪速度演算手段と、前記車輪速度検出手段によ
り検出された各車輪速度と前記各目標車輪速度とを比較
し、各車輪の車輪速度が前記目標車輪速度となるように
ブレーキ機構へ供給されるブレーキ圧を調整するブレー
キ圧調整手段と、該ブレーキ圧調整手段からの指令によ
り各車輪への前記ブレーキ圧を増圧、保持、減圧の何れ
かに切り換えるブレーキ圧切換手段と、旋回時、外輪が
走行する路面が内輪が走行する路面より低摩擦路(低μ
路)であることを検出するまたぎ路検出手段と、該また
ぎ路検出手段によりまたぎ路が検出されたとき、旋回後
側内輪及び旋回後側外輪へのブレーキ圧増圧、保持、減
圧指令を比較し、前記ブレーキ圧をより低圧側とする指
令を選択するブレーキ圧指令選択手段と、該ブレーキ圧
指令選択手段のより選択されたブレーキ圧指令に基づき
前記ブレーキ圧切換機構を切換動作させ、前記旋回後側
内輪及び旋回後側外輪へのブレーキ圧を制御する制動力
制御手段と、を備える制動力制御装置によっても達成さ
れる。
【0025】請求項8によれば、制動時、車体速度、旋
回前側外輪車輪速度、横加速度に基づいて左右輪が同時
にロックするように前側内輪の目標車輪速度を演算する
とともに、制動時、旋回前側外輪車輪速度に基づいて旋
回後側外輪の目標車輪速度を演算し、且つ、旋回前側外
輪車輪速度に基づいて旋回後側内輪及び旋回後側外輪の
目標主輪速度を演算する。そして、各車輪速度と各目標
車輪速度とを比較し、各車輪の車輪速度が目標車輪速度
となるようにブレーキ機構へ供給されるブレーキ圧を調
整して各車輪が同時にロックするように各車輪への制動
力を配分する。又、旋回時、外輪が走行する路面が内輪
が走行する路面より低摩擦路(低μ路)であることが検
出されたとき、旋回後側内輪及び旋回後側外輪へのブレ
ーキ圧増圧、保持、減圧指令を比較し、ブレーキ圧をよ
り低圧側とする指令を選択して旋回後側内輪及び旋回後
側外輪へのブレーキ圧を制御するため、外輪側が低μ路
の場合、後輪の旋回外側の車輪へのブレーキ圧が先に減
圧されると、車両の旋回を助長するモーメントが発生し
てオーバステアとなるが、このような場合、後輪が同一
車輪速度に制御されて旋回内輪と旋回外輪と制動力差に
よる旋回方向のモーメントの発生を防止する。
【0026】上記の目的は、また、請求項9に記載する
如く、上記請求項1記載の制動力制御装置において、前
記旋回状態判別手段は、旋回状態の判別に用いるしきい
値を、車体速度に応じて変更するしきい値変更手段を備
える制動力制御装置によっても達成される。
【0027】本発明において、前記しきい値変更手段
は、車体速度に応じて、旋回状態の判別に用いられるし
きい値を変更する。従って、車両が旋回状態であるか否
かは、車体速度に応じて異なる基準により判別される。
車体速度が高速である場合は、旋回が開始された後、速
やかに旋回内輪の制動力の制御が開始されることが望ま
しい。一方、車体速度が低速である場合は、不必要な制
動力制御を防止するために、比較的大きな旋回がなされ
た場合にのみ制動力制御が実行されることが望ましい。
上記の如く、旋回状態であるか否かが車速に応じて異な
る基準により判別される場合、高速走行時、および、低
速走行時の双方において、制動力の制御が適切なタイミ
ングで開始される。
【0028】上記の目的は、請求項10に記載する如
く、上記請求項1記載の制動力制御装置において、車両
が制動状態である場合に、後輪の目標車輪速度が、前輪
の目標車輪速度に比して小さくなるように、前後輪の目
標車輪速度を設定する第1の目標車輪速度設定手段を備
える制動力制御装置によっても達成される。
【0029】本発明において、前記第1の目標車輪速度
設定手段は、制動時における前後輪の目標車輪速度を、
後輪の目標車輪速度が、前輪の目標車輪速度に比して小
さくなるように設定する。かかる目標車輪速度が実現さ
れると、後輪のスリップ率が前輪のスリップ率に比して
大きくなり、後輪の制動能力が有効に活用される。
【0030】また、上記の目的は、請求項11に記載す
る如く、上記請求項10記載の制動力制御装置におい
て、前輪および後輪の少なくとも一方のスリップ率を検
出するスリップ率検出手段と、車両が制動状態である場
合に、後輪の目標車輪速度が、前輪の目標車輪速度に比
して大きくなるように、前後輪の目標車輪速度を設定す
る第2の目標車輪速度設定手段と、前記スリップ率検出
手段により検出されるスリップ率が所定値以下である場
合は前記第1の目標車輪速度設定手段により設定される
目標車輪速度を、前記スリップ率が所定値を超える場合
は前記第2の目標車輪速度設定手段により設定される目
標車輪速度を、それぞれ目標車輪速度として採用する目
標車輪速度切り換え手段と、を備える制動力制御装置に
よっても達成される。
【0031】本発明において、前記スリップ率検出手段
は、前輪および後輪の少なくとも一方のスリップ率を検
出する。制動時において、車輪のスリップ率が所定値を
超えると、車輪は、適正なグリップ状態を維持できずに
ロック状態に移行する。車両の制動時に、全ての車輪が
適正なグリップ状態を維持している間は、後輪に大きな
制動力を発生させることが望ましい。このため、前記目
標車輪速度切り換え手段は、かかる状況下では、第1の
目標車輪速度設定手段により設定された目標車輪速度
を、目標車輪速度として採用する。ところで、何れかの
車輪がロック状態に移行する可能性がある場合に、車両
挙動を安定に維持するためには、後輪に先立って前輪を
ロック状態に移行させることが望ましい。後輪に先立っ
て前輪をロック状態に移行させるためには、後輪の目標
車輪速度を前輪の目標車輪速度に比して大きくすること
が必要である。このため、前記目標車輪速度切り換え手
段は、前記スリップ率検出手段により検出されるスリッ
プ率が所定値を超える場合には、何れかの車輪がロック
状態に移行する可能性があると判断して、第2の目標車
輪速度設定手段により設定された目標車輪速度を、目標
車輪速度として採用する。
【0032】また、上記の目的は、請求項12に記載す
る如く、上記請求項1記載の制動力制御装置において、
車輪速度の不安定度を検出する車輪速度不安定度検出手
段と、車輪速度の不安定度が所定値を超える場合に、制
動力の制御を禁止する制動力制御禁止手段と、を備える
制動力制御装置によっても達成される。
【0033】本発明において、前記車輪速度不安定度検
出手段は、前記車輪速度検出手段により検出される車輪
速度の不安定度を検出する。上述の如く、制動力制御の
基礎とされる旋回内輪の目標車輪速度は、旋回外輪の車
輪速度等に基づいて演算される。従って、車輪速度が不
安定な状況下では、安定した制動力制御を実現すること
ができない。前記制動力制御禁止手段は、かかる場合
に、旋回内輪の制動力が不適切に制御されるのを防止す
べく、制動力の制御を禁止する。
【0034】上記の目的は、請求項13に記載する如
く、上記請求項1記載の制動力制御装置において、前記
旋回内輪の制動力が、所定時間継続して低下された場合
に、前記旋回内輪の制動力の制御を中止する第1の制動
力制御中止手段を備える制動力制御装置によっても達成
される。
【0035】本発明において、前記第1の制動力制御中
止手段は、旋回内輪の制動力の制御が開始された後、制
動力を下げる制御が所定時間継続して実行された場合
に、制動力制御を中止する。旋回内輪の制動力の制御
は、車両が旋回制動状態である場合、すなわち、旋回内
輪および旋回外輪の双方に制動力が要求されている場合
に実行される。従って、不当に長期間に渡って旋回内輪
の制動力を低下させる制御が実行された場合には、シス
テムに異常が生じていると判断できる。前記第1の制動
力制御中止手段は、かかる異常時に制動力の制御を中止
する。
【0036】上記の目的は、請求項14に記載する如
く、請求項1記載の制動力制御装置において、車両のス
テアリング特性を検出するステアリング特性検出手段
と、ステアリング特性がアンダーステアである場合に、
前記旋回内輪の制動力の制御を中止する第2の制動力制
御中止手段と、を備える制動力制御装置によっても達成
される。
【0037】本発明において、前記ステアリング特性検
出手段は、車両のステアリング特性を検出する。車両の
旋回時に、ステアリング操舵角に対して旋回の程度が過
剰である場合には、オーバーステア特性が検出され、一
方、ステアリング操舵角に対して旋回の程度が不足して
いれば、アンダーステア特性が検出される。アンダース
テア特性を是正するためには、車両に対して、より大き
な旋回モーメントを付与することが必要である。ところ
で、旋回内輪のスリップ状態と、旋回外輪のスリップ状
態とが同等であると、旋回内外輪にかかる荷重差に起因
して、旋回外輪側に、旋回内輪側に比して大きな制動力
が発生する。かかる制動力偏差は、車両に対して、旋回
を妨げる方向のモーメントとして作用する。従って、前
記制動力制御手段によって旋回内輪の制動力が制御され
ると、車両のアンダーステア特性が助長される事態を生
ずる。前記第2の制動力制御中止手段は、アンダーステ
ア特性が検出された際に、制動力の制御を中止する。制
動力の制御が中止されると、旋回内外輪の制動力偏差が
縮小され、すなわち、車両に作用している非旋回方向の
モーメントが縮小され、アンダーステア特性が是正され
る。
【0038】上記の目的は、請求項15に記載する如
く、上記請求項14記載の制動力制御装置において、前
記旋回内輪の制動力の制御が中止される場合に、旋回外
輪の制動力の増加が緩やかになるように、前記旋回外輪
の制動力を制御する旋回外輪制動力制御手段を備える制
動力制御装置によっても達成される。
【0039】本発明において、前記旋回外輪制動力制御
手段は、第2の制動力制御中止手段によって、前記旋回
内輪の制動力制御が中止される際に、前記旋回外輪の制
動力を制御する。第2の制動力制御中止手段は、旋回内
輪の制動力が制御されることにより、車両に作用する非
旋回方向のモーメントが大きくなるのを防止すべく制動
力制御を中止する。その後、車両のステアリング特性
は、旋回内輪の制動力が旋回外輪の制動力に近づくに連
れて、アンダーステア特性からニュートラル特性に近づ
く。本発明においては、旋回内輪の制動力制御が中止さ
れた後、前記旋回外輪制動力制御手段によって、旋回外
輪の制動力の上昇が抑制されるため、いち早く旋回内輪
の制動力が、旋回外輪の制動力に近づき、アンダーステ
ア特性が速やかに解消される。
【0040】上記の目的は、請求項16に記載する如
く、旋回外輪の車輪速度を検出する外輪車輪速度検出手
段と、旋回内輪の車輪速度を検出する内輪車輪速度検出
手段と、前記旋回外輪の車輪速度および前記旋回内輪の
車輪速度に基づいて、車両に作用する横加速度を推定す
る横加速度推定手段と、該横加速度推定手段により推定
された横加速度が、第1の設定値を超えているか否かを
判別する横加速度判別手段と、車両に作用する横加速度
が、前記第1の設定値に比して大きな第2の設定値であ
ると仮定して、前記旋回外輪の車輪速度に基づいて、旋
回外輪のスリップ状態と旋回内輪のスリップ状態とを同
等とするための旋回内輪の目標車輪速度を演算する目標
旋回内側車輪速度演算手段と、前記横加速度推定手段に
より推定された横加速度が、前記第1の設定値を超えて
いる場合に、旋回内輪の車輪速度が前記目標車輪速度に
なるように旋回内輪の制動力を制御する制動力制御手段
と、を備える制動力制御装置によっても達成される。
【0041】本発明において、前記横加速度推定手段
は、旋回外輪の車輪速度、および、旋回内輪の車輪速度
に基づいて、車両に作用している横加速度を推定する。
前記横加速度判別手段は、上記の如く推定される横加速
度の推定値が、第1の設定値を超えているか否かを判別
する。横加速度の推定値が第1の設定値を超えている場
合は、旋回内輪の車輪速度が目標車輪速度となるよう
に、前記制動力制御手段によって、旋回内輪の制動力が
制御される。本発明において、旋回内輪の目標車輪速度
は、前記目標旋回内側車輪速度演算手段によって演算さ
れる。旋回内輪の車輪速度が前記目標車輪速度に制御さ
れると、車両に対して前記第2の設定値と等しい加速度
が作用している状況下では、旋回内輪のスリップ状態
と、旋回外輪のスリップ状態とが等価となる。また、車
両に対して前記第2の設定値に比して小さな加速度、ま
たは、前記第2の設定値に比して大きな加速度が作用し
ている状況下では、旋回内輪と旋回外輪とが、両者のス
リップ状態が大きく異ならない程度に制御される。従っ
て、本発明においては、横加速度推定手段によって推定
される横加速度が第1の設定値を超えている場合、旋回
内輪のスリップ状態と、旋回外輪のスリップ状態とが大
きく異ならない制動状態が実現される。
【0042】また、上記の目的は、請求項17に記載す
る如く、請求項1記載の制動力制御装置において、前記
目標旋回内側車輪速度演算手段は、旋回内輪の目標車輪
速度VWI * を、前記旋回外輪の車輪速度VWO、車両のト
レッドd、前記横加速度Gy、および前記車体速度VB
を用いて、 VWI * =VWO−d・Gy/VB なる演算式に従って演算する制動力制御装置によっても
達成される。
【0043】本発明において、前記目標旋回内側車輪速
度演算手段は、VWI * =VWO−d・Gy/VB なる演算
式に従って、旋回内輪の目標車輪速度VWI * を演算す
る。本発明において用いられる演算式には、2乗演算、
ルート演算等の複雑な演算則が用いられていない。この
ため、その演算は、多量のメモリ容量を必要とすること
なく、複雑なプログラムを用いることなく、かつ、短時
間で実行することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】図1に本発明になる制動力制御装
置の第1実施例が適用されたアンチロック制動力制御シ
ステムを示す。同図中、1はブレーキペダル、2はバキ
ュームブースタ、3はブレーキペダル1の踏込力やバキ
ュームブースタ2の倍力作用に応じたブレーキ圧を発生
するマスタシリンダ(アクチュエータ)、4,5はブレ
ーキ液(作動油)を後述する還流系路に補充するリザー
バ、6〜9はマスタシリンダ3からのブレーキ圧を受け
て各車輪を制動するブレーキ機構のホイールシリンダで
ある。
【0045】ブレーキペダル1が踏み込まれてマスタシ
リンダ3より発生したブレーキ圧は、第1,第2ブレー
キ管路10,11を介して各ホイールシリンダ6〜9に
接続されている。12〜15は常開の電磁弁よりなる増
圧用液圧切換弁で、通常弁体12a〜15aが開弁位置
に付勢されており、マスタシリンダ3からのブレーキ圧
を各ホイールシリンダ6〜9に供給している。しかし、
増圧用液圧切換弁12〜15は、車輪のロック直前にソ
レノイド12b〜15bが励磁されて弁体12a〜15
aが閉弁位置に切り換わり、マスタシリンダ3からのブ
レーキ圧供給を止めるように動作する。
【0046】16〜19は常閉の電磁弁よりなる減圧用
液圧切換弁で、通常弁体16a〜19aが閉弁位置に付
勢されており、各ホイールシリンダ6〜9へのブレーキ
圧を保持している。しかし、減圧用液圧切換弁16〜1
9は、車輪のロック直前にソレノイド16b〜19bが
励磁されて弁体16a〜19aが開弁位置に切り換わ
り、各ホイールシリンダ6〜9へのブレーキ圧をリザー
バ4,5に逃がしてブレーキ圧を減圧するように動作す
る。
【0047】第1,第2ブレーキ管路10,11に連通
された供給用管路20〜23及び、一端が増圧用液圧切
換弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19に連通
され他端が各ホイールシリンダ6〜9に連通された供給
用管路24〜27は、各ホイールシリンダ6〜9毎の供
給系路28a〜28dを形成している。
【0048】又、一端が減圧用液圧切換弁16〜19に
連通し他端がリザーバ4,5に連通された還流用管路2
9〜32、及びリザーバ4,5から第1,第2ブレーキ
管路20,21に接続されるように延在する還流用管路
33,34は、還流系路35a,35bを形成してい
る。
【0049】上記増圧用液圧切換弁12〜15は、供給
側の管路20〜23に連通する流路に設けられた絞り3
6〜39と、絞り36〜39をバイパスするバイパス流
路40〜43と、バイパス流路40〜43を介して各ホ
イールシリンダ6〜9側のブレーキ液をマスタシリンダ
3側に戻すことを許容するとともにブレーキ液がマスタ
シリンダ3側から各ホイールシリンダ6〜9側へ流れる
ことを防止する逆止弁44〜47と、を有する。
【0050】又、減圧用液圧切換弁26〜29は、下流
の還流用管路29〜32に連通する流路に各ホイールシ
リンダ6〜9から還流されるブレーキ液量を所定量に絞
る絞り50〜53を有する。各還流用管路33,34に
は、リザーバ4,5のブレーキ液を吸引してマスタシリ
ンダ3側は還流させる吸引ポンプ54,55と、吸引ポ
ンプ54,55の上流側に配設された逆止弁56,57
と、吸引ポンプ54,55の下流側に配設された逆止弁
58,59と、が配設されている。
【0051】各吸引ポンプ54,55は、アンチロック
制動力制御が実行されている間は常時ポンプモータ(図
示せず)により駆動される。そして、吸引ポンプ54,
55はポンププランジャ(図示せず)が下動すると吸入
工程となり、ポンププランジャ(図示せず)が上動する
と吐出工程となる。
【0052】そして、吸入工程では、上記吸引ポンプ5
4,55の上流に配設され逆止弁56,57が開弁する
とともに、吸引ポンプ54,55の下流に配設され逆止
弁58,59が閉弁する。そして、吐出工程では、上記
吸引ポンプ54,55の上流に配設され逆止弁56,5
7が閉弁するとともに、吸引ポンプ54,55の下流に
配設され逆止弁58,59が開弁する。
【0053】このように、吸引ポンプ54,55のポン
ププランジャの動作方向に応じて吸引ポンプ54,55
の上流,下流に配設された各逆止弁56,57及び逆止
弁58,59が開閉することにより、ブレーキ液がマス
タシリンダ3へ還流される。上記構成になるアンチロッ
ク制動力制御システムを有するブレーキ装置では、ブレ
ーキペダル1が踏み込まれると、マスタシリンダ3によ
りブレーキ圧が増圧されて増圧モードになる。この増圧
モードでは、増圧用液圧切換弁12〜15が開弁状態に
保持されるとともに、減圧用液圧切換弁16〜19が閉
弁状態に保持される。そのため、増圧されたブレーキ圧
は、第1,第2ブレーキ管路10,11,供給用管路2
0〜23,供給用管路24〜27を介して各ホイールシ
リンダ6〜9に供給され、各車輪は制動される。
【0054】そして、例えば低μ路を走行しているとき
に車輪がロックする直前まで制動されると、アンチロッ
ク制動力制御システムは減圧モード又は保持モードに切
り換わる。この減圧モードでは、ロック直前の車輪に対
応する増圧用液圧切換弁12〜15のソレノイド12b
〜15bが励磁されて閉弁状態に切り換わるとともに、
減圧用液圧切換弁16〜19のソレノイド16b〜19
bが開弁状態に切り換わる。これにより、ホイールシリ
ンダ6〜9のブレーキ圧が還流用管路29〜32を介し
てリザーバ4,5に逃げるため、当該車輪への制動力が
解除されて車輪のロックが防止される。
【0055】又、保持モードでは、増圧用液圧切換弁1
2〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19が閉弁状態の
保持され、ホイールシリンダ6〜9のブレーキ圧が保持
される。このようなアンチロック制動動作中は、マスタ
シリンダ3がブレーキ液不足にならないようにするた
め、常に吸引ポンプ54,55が起動される。そのた
め、アンチロック制動動作中に減圧モードになって減圧
用液圧切換弁16〜19が開弁すると、ホイールシリン
ダ6〜9側からのブレーキ液が還流用管路29〜32へ
流出する。そして、還流用管路29〜32のブレーキ液
は、吸引ポンプ54,55の吸引動作により還流用管路
33,34に吸引される。
【0056】その後、吸引ポンプ54,55に吸引され
たブレーキ液は、逆止弁58,59を通過して第1,第
2ブレーキ管路10,11へ戻される。しかるに、アン
チロック制動動作中は、例えば各車輪の回転数が高くな
ると、減圧モードから増圧モード又は保持モードに切り
換わり減圧用液圧切換弁16〜19が閉弁するととも
に、増圧用液圧切換弁12〜15が開弁する。
【0057】このように減圧モードから増圧モード又は
保持モードに切り換わると、吸引ポンプ54,55の吸
引動作によりブレーキ液がマスタシリンダ3側に還流さ
れ続けるため、リザーバ4,5に充填されたブレーキ液
が還流用管路33,34に吸引される。
【0058】上記増圧用液圧切換弁12〜15及び、減
圧用液圧切換弁16〜19及び、吸引ポンプ54,55
は、アンチロック制動力制御回路60からの指令により
作動する。又、アンチロック制動力制御回路60には、
車両の走行速度を検出する車速センサ61と、車両の加
速度を検出する加速度センサ62と、各車輪の車輪速を
検出する車輪速センサ63〜66と、ブレーキペダル1
が踏み込まれたときオフからオンに切り換わるブレーキ
スイッチ67とが接続されている。
【0059】尚、車速センサ61を独立して設ける必要
はなく、車速センサ61を設ける代わりに車輪速センサ
63〜66から検出される各車輪の車輪速度から車体速
度を推定するよう構成しても良い。従って、アンチロッ
ク制動力制御回路60は、ブレーキスイッチ67がオン
になると、車速センサ61、加速度センサ62、車輪速
センサ63〜66から出力された各信号に基づいて上記
増圧用液圧切換弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16
〜19の切換制御を行い車両が走行中に各車輪がロック
しないように各車輪へのブレーキ圧を調整する。
【0060】ここで、旋回走行時はコーナリングの内側
と外側で各車輪に作用する荷重が変動する。一般に、横
加速度により旋回内側車輪への荷重が小さくなるととも
に、旋回外側車輪への荷重が大きくなる。そのため、旋
回制動時に各車輪に同一の制動力を付与すると、旋回外
側車輪より旋回内側車輪が先にロックして車両の走行状
態が不安定になることがある。
【0061】又、旋回外側車輪が走行する路面摩擦係数
(μa )が旋回内側車輪が走行する路面摩擦係数
(μb )より小さい(μa <μb )またぎ路である場
合、旋回制動時に各車輪に同一の制動力を付与すると、
旋回方向のモーメントが発生してオーバステアになり、
これにより走行状態が不安定になることがある。
【0062】アンチロック制動力制御回路60のROM
(図示せず)には、旋回制動時の各車輪が同一のスリッ
プ率となるように各車輪への制動力を制御する制動力制
御プログラムが記憶されている。そして、制動力の制御
モードは、増圧モード、保持モード、減圧モードの3パ
ターンに分類できる。
【0063】先ず、増圧モードの場合、増圧用液圧切換
弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19を制御せ
ず、マスタシリンダ3からのブレーキ圧が開弁状態の増
圧用液圧切換弁12〜15を介して直接ホイールシリン
ダ6〜9に供給される。又、保持モードの場合、増圧用
液圧切換弁12〜15のソレノイド12b〜15bが励
磁されて弁体12a〜15aが閉弁位置に切り換わる。
これにより、ホイールシリンダ6〜9へのブレーキ圧が
保持される。
【0064】又、減圧モードの場合、増圧用液圧切換弁
12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19を制御して
制動力を弱める。即ち、車輪がロックする直前に増圧用
液圧切換弁12〜15のソレノイド12b〜15bが励
磁されて弁体12a〜15aが閉弁位置に切り換わると
ともに、減圧用液圧切換弁16〜19のソレノイド16
b〜19bが励磁されて弁体16a〜19aが開弁位置
に切り換わり、各ホイールシリンダ6〜9へのブレーキ
圧をリザーバ4,5に逃がしてブレーキ圧を減圧する。
【0065】次に、図2を参照してアンチロック制動力
制御回路60が実行する制動力制御処理につき説明す
る。図2中、運転者がブレーキペダル1を踏み込み制動
操作した場合、ブレーキスイッチ67がオンに切り換わ
る。従って、ステップS1(以下「ステップ」を省略す
る)でブレーキスイッチ67がオンに切り換わると、S
2に進み、加速度センサ62により検出された横方向の
加速度Gyと、車輪速センサ63〜66により検出され
た各車輪の車輪速VWII =FL,FR,RL,RR)
と、上記車速センサ61により検出された車体速度VB
を読み込む。
【0066】尚、上記車体速度VB は、各車輪の車輪速
度VWIを用いて公知の通り演算しても良い。又、S1に
おいて、ブレーキスイッチ67がオフのとき、制動力制
御を行う必要がないので、以下の処理を行わずに一連の
制動力制御処理を終了する。
【0067】次のS3では、横方向の加速度Gyが正で
あるかどうかをチェックしており、横方向の加速度Gy
が正(Gy>0)であるときは、走行路が右方向にカー
ブしているものと判断してS4に進み、左側の車輪を外
輪側に設定する。しかし、横方向の加速度Gyが正(G
y>0)でないときは、S5に進み、横方向の加速度G
yが負(Gy<0)であるかどうかをチェックする。
【0068】S5において、横方向の加速度Gyが負
(Gy<0)であるときは、走行路が左方向にカーブし
ているものと判断してS6に進み、右側の車輪を外輪側
に設定する。しかし、S5において、横方向の加速度G
yが負でないときは、Gy=0であり、車両が直進して
いる。そのため、左右輪の制動力を個別に制御する必要
がないので、S7に進み、通常のアンチロック制動力制
御を行う。
【0069】次のS8では、目標旋回内側車輪速度VWI
*を次式(1)より演算する。 VWI*={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )}・VWO …(1) 但し、VB は車体速度,Gyは横加速度,VWOは旋回外
側車輪速度,dはトレッドである。従って、目標旋回内
側車輪速度VWI*は、車体速度VB ,横加速度Gy,旋
回外側車輪速度VWOに応じた最適値が演算される。
【0070】次のS9では、車輪速センサ63〜66に
より検出された旋回内側車輪速度V WIが(1)式により
求められた目標旋回内側車輪速度VWI*より小さいかど
うかをチェックする。このS9において、旋回内側車輪
速度VWIが目標旋回内側車輪速度VWI*より小さい場合
には、旋回内側の車輪速度VWIが遅いのでS10に進
み、内輪のブレーキ圧を減圧させる。即ち、増圧用液圧
切換弁12〜15のうち内輪側の切換弁を閉弁し、且つ
減圧用液圧切換弁16〜19のうち内輪側の切換弁を開
弁させる。
【0071】しかし、S9において、旋回内側車輪速度
WIが目標旋回内側車輪速度VWI*より小さくない場合
には、S11に進み、旋回内側車輪速度VWIが目標旋回
内側車輪速度VWI*より大きいかどうかをチェックす
る。従って、S11において、旋回内側車輪速度VWI
目標旋回内側車輪速度VWI*より大きいときは、旋回内
側の車輪速度VWIが速いのでS12に進み、内輪のブレ
ーキ圧を増圧させる。即ち、増圧用液圧切換弁12〜1
5のうち内輪側の切換弁を開弁し、且つ減圧用液圧切換
弁16〜19のうち内輪側の切換弁を閉弁させる。
【0072】又、S11において、旋回内側車輪速度V
WIが目標旋回内側車輪速度VWI*より大きくないとき
は、VWI=VWI*であるので、S13に進み、内輪のブ
レーキ圧を保持させる。即ち、増圧用液圧切換弁12〜
15のうち内輪側の切換弁を閉弁し、且つ減圧用液圧切
換弁16〜19のうち内輪側の切換弁も閉弁させる。
【0073】このようにして旋回内側車輪速度VWIが車
体速度VB ,横加速度Gy,旋回外側車輪速度VWOに応
じた目標旋回内側車輪速度VWI*と等しくなるように増
圧用液圧切換弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜
19が開閉制御されて内輪側へのブレーキ圧が増圧、保
持、減圧のいずれかに切り換えられ旋回内輪と旋回外輪
とが同じスリップ率となるように制動力が制御される。
【0074】従って、各車輪のスリップ率が同じになる
ようにブレーキ圧が制御されることにより、旋回制動時
に発生しやすいヨーモーメントを打ち消して旋回制動時
の走行安定性を高めることができるとともに、制動性能
をより高めることができ、制動距離を短縮することがで
きる。
【0075】ここで、上記(1)式の導出について説明
する。左側車輪が内輪、右側車輪が外輪とした場合、車
両走行時の車体速度VB 及び各車輪の車輪速は図3及び
図4に示すようになる。そして、前側内輪車輪速Vwfi
と後側内輪車輪速Vwri とを分けて考えた場合、次式の
ように表せる。
【0076】 前側内輪車輪速Vwfi =(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )・Vwf … (2) 後側内輪車輪速Vwri =(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )・Vwr … (3) 上記(2)(3)が成立するようにブレーキ圧を制御す
る。
【0077】ここで、横すべり角をβ、旋回ヨーレート
をSyとすると、 Sy=(VB /cosβ)・(1/R) =(VB 2 /Rcosβ)・(1/VB ) ={(VB /cosβ)2 /R}・cosβ・1/VB =Gy/VB … (4) 次に、車両の自転ヨーレートをSzとすると、 Sz=(VBfO −VBfI )/d =(VBrO −VBrI )/d … (5) ここで、横すべり角βがゼロで旋回ヨーレートSyが自
転ヨーレートSzと等しくすると(Sy=Sz)、 (VBfO −VBfI )/d=Gy/VB (VBrO −VBrI )/d=Gy/VB … (6) となる。又、 (VBfO +VBfI )/2=VB より、 VBfO =VB +d・Gy/2VB … (7) VBfI =VB −d・Gy/2VB … (8) 又、ここで、前側内外輪のスリップ率を等しくすると、 (VBfO cosδ−VwfO )/VBfO cosδ =(VBfI cosδ−VwfI )/VBfI … (9) となる。但し、δは前輪タイヤ角である。
【0078】 VwfI =(VBfI /VBfO )・VwfO … (10) この(10)式に上記(7)(8)式を代入すると、 前側内輪車輪速Vwfi =(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )・Vwf … (2) 後側内輪車輪速Vwri =(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )・Vwr … (3) となり、上記(2)(3)式が求まる。
【0079】次に、図5を参照してアンチロック制動力
制御回路60が実行する第2実施例の制動力制御処理に
つき説明する。尚、制動力制御装置の全体構成は、上記
第1実施例と同様な構成であるので、その説明は省略す
る。図5中、S21〜S27の処理は、前述した図2の
S1〜S7と同様なためその説明を省略する。尚、本実
施例では、S22において車体速度VB を読み込まな
い。
【0080】S28では、目標旋回内側車輪速度VWI
を次式(11)より演算する。 VWI*=VWI=(VWO 2 −2dGy)1/2 …(11) 但し、Gyは横加速度,VWOは旋回外側車輪速度であ
る。従って、目標旋回内側車輪速度VWI*は、横加速度
Gy,旋回外側車輪速度VWOに応じた最適値が演算され
る。
【0081】そして、S29〜S33の処理は、前述し
た図2のS9〜S13と同様なためその説明を省略す
る。このように、旋回内側車輪速度VWIが横加速度G
y,旋回外側車輪速度VWOに応じて求められた目標旋回
内側車輪速度VWI*と等しくなるように増圧用液圧切換
弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19が開閉制
御されて内輪側へのブレーキ圧が増圧、保持、減圧のい
ずれかに切り換えられ旋回内輪と旋回外輪とが同じスリ
ップ率となるように制動力が制御される。
【0082】従って、各車輪のスリップ率が同じになる
ようにブレーキ圧が制御されることにより、旋回制動時
の内輪側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになるよ
うに各車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外
輪側とを同時にロックさせることができる。よって、旋
回制動時に発生しやすいヨーモーメントを打ち消して旋
回制動時の走行安定性を高めることができるとともに、
制動性能をより高めることができ、制動距離を短縮する
ことができる。
【0083】ここで、上記(11)式の導出について説
明する。上記(11)式は次のように表せる。 VWO 2 −VWI 2 =2dGy …(12) そして、前輪の左右輪で考えた場合、前側内外輪車輪速
度差は次式のようになる。 VWO−VWI=(1−SfO)VBfO ・cosδ−(1−SfI)VBfI ・cosδ =(VBfO −VBfI )・cosδ−(SfO・VBfO −SfI・VBfI ) ・cosδ …(13) ここで、(13)式の右辺第2項の前側左右車輪のスリ
ップ量差(SfO・VBfO−SfI・VBfI )をゼロとする
制御を考えると、 VWO−VWI=(VBfO −VBfI )・cosδ …(14) となり、さらにcosδ≒1とし、且つ上記(6)式よ
り VWfO −VWfI =dGy/VB …(15) となる。ここで、VB =(VWfO +VWfI )/2とする
と、上記(12)式と同様な、 VWfO 2 −VWfI 2 =2dGy …(16) が求まる。上記と同様にして後輪側についても次式のよ
うになる。
【0084】 VWrO 2 −VWrI 2 =2dGy …(17) 次に、図6を参照してアンチロック制動力制御回路60
が実行する第3実施例の制動力制御処理につき説明す
る。尚、制動力制御装置の全体構成は、上記第1実施例
と同様な構成であるので、その説明は省略する。
【0085】図6中、S41でブレーキスイッチ67が
オンに切り換わると、S42に進み、車輪速センサ63
〜66により検出された各車輪の車輪速VWII =F
L,FR,RL,RR)を読み込む。尚、S41におい
て、ブレーキスイッチ67がオフのとき、制動力制御を
行う必要がないので、以下の処理を行わずに一連の制動
力制御処理を終了する。
【0086】次のS43では、左側車輪速VWLが右側
車輪速VWRより速いかどうかをチェックしており、左
側車輪速VWLが右側車輪速VWRより速い(VWL>
VWR)ときは、走行路が右方向にカーブしているもの
と判断してS44に進み、左側の車輪を外輪側に設定す
る。しかし、左側車輪速VWLが右側車輪速VWRより
速くないときは、S45に進み、左側車輪速VWLが右
側車輪速VWRより遅い(VWL<VWR)かどうかを
チェックする。
【0087】S45において、左側車輪速VWLが右側
車輪速VWRより遅い(VWL<VWR)ときは、走行
路が左方向にカーブしているものと判断してS46に進
み、右側の車輪を外輪側に設定する。しかし、S45に
おいて、左側車輪速VWLが右側車輪速VWRより遅く
ないときはVWL=VWRであり、車両が直進してい
る。そのため、左右輪の制動力を個別に制御する必要が
ないので、S47に進み、通常のアンチロック制動力制
御を行う。
【0088】次のS48では、内輪と外輪との車輪速差
が所定値Kより大きい値(VWO 2 −VWI 2 >K)かどう
かをチェックする。S48において、内輪と外輪との車
輪速差が所定値K以下(VWO 2 −VWI 2 ≦K)であると
きは、内輪と外輪との車輪速差が小さいので、内輪と外
輪との制動力を個別に制御する必要がなく、一連の制動
力制御処理を終了する。
【0089】しかし、S48において、内輪と外輪との
車輪速差が所定値Kより大きい値(VWO 2 −VWI 2
K)であるときは、S49に進む。次のS49では、目
標旋回内側車輪速度VWI*を次式(18)より演算す
る。 VWI*=(VWO 2 −K)1/2 …(18) 但し、VWOは旋回外側車輪速度,Kは車速により決まる
係数である。
【0090】そして、S50〜S54の処理は、前述し
た図2のS9〜S13と同様なためその説明を省略す
る。このように、旋回内側車輪速度VWIが旋回外側車輪
速度VWOに応じて求められた目標旋回内側車輪速度VWI
*と等しくなるように増圧用液圧切換弁12〜15及び
減圧用液圧切換弁16〜19が開閉制御されて内輪側へ
のブレーキ圧が増圧、保持、減圧のいずれかに切り換え
られ旋回内輪と旋回外輪とが同じスリップ率となるよう
に制動力が制御される。
【0091】従って、各車輪のスリップ率が同じになる
ようにブレーキ圧が制御されることにより、旋回制動時
の内輪側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになるよ
うに各車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外
輪側とを同時にロックさせることができる。よって、旋
回制動時に発生しやすいヨーモーメントを打ち消して旋
回制動時の走行安定性を高めることができるとともに、
制動性能をより高めることができ、制動距離を短縮する
ことができる。
【0092】しかも、本実施例では横加速度Gyに関係
なく目標旋回内側車輪速度VWI*が得られるので、加速
度センサ62が故障した場合のバックアップ制御として
も適用することができる。ここで、上記(18)式の導
出について説明する。
【0093】本実施例では、VWO 2 −VWI 2 =Kとなる
ように内輪側のブレーキ圧を減圧制御する。そのため、
前輪の左右輪で考えた場合、Vwfo 2 −Vwfi 2 =Kと
することは、 Vwfo −Vwfi =K/2VB となり、さらには、 (d・Gy/VB )−(SfO・VBfO −SfI・VBfI
=K/2VB と置き換えることができ、従って、スリップ量差は、次
式のように表せる。
【0094】 (d・Gy−K/2)/VB =SfO・VBfO −SfI・VBfI …(19) つまり、横加速度がGy>K/2dのとき外輪のスリッ
プ量を内輪のスリップ量よりも(d・Gy−K/2)/
B だけ大きくして内外輪が同時にロックするように制
御する。
【0095】又、後輪についても上記(19)式と同様
にして内輪側のブレーキ圧を制御する。次に、図7を参
照してアンチロック制動力制御回路60が実行する第4
実施例の制動力制御処理につき説明する。
【0096】図7中、S71でブレーキスイッチ67が
オフである非制動時は、S72に進む。又、S71にお
いて、ブレーキスイッチ67がオンである制動時は、S
67に進み、通常のアンチロック制動力制御を行う。次
のS62〜S67の処理は、前述した図2のS1〜S7
と同様なためその説明を省略する。
【0097】S68では、目標旋回外側車輪速度VWO
を次式(1)より演算する。 VWO*={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )}・VWI …(20) 但し、VB は車体速度,Gyは横加速度,VWIは旋回内
側車輪速度,dはトレッドである。従って、目標旋回内
側車輪速度VWI*は、車体速度VB ,横加速度Gy,旋
回内側車輪速度VWIに応じた最適値が演算される。
【0098】次のS69では、車輪速センサ63〜66
により検出された旋回外側車輪速度VWOが(20)式に
より求められた目標旋回外側車輪速度VWO*より小さい
かどうかをチェックする。このS69において、旋回外
側車輪速度VWOが目標旋回外側車輪速度VWO*より小さ
い場合には、旋回外側の車輪速度VWOが遅いのでS70
に進み、外輪のブレーキ圧を減圧させる。即ち、増圧用
液圧切換弁12〜15のうち外輪側の切換弁を閉弁し、
且つ減圧用液圧切換弁16〜19のうち外輪側の切換弁
を開弁させる。
【0099】しかし、S69において、旋回外側車輪速
度VWOが目標旋回外側車輪速度VWO*より小さくない場
合には、S71に進み、旋回外側車輪速度VWOが目標旋
回外側車輪速度VWO*より大きいかどうかをチェックす
る。従って、S71において、旋回外側車輪速度VWO
目標旋回外側車輪速度VWO*より大きいときは、旋回外
側の車輪速度VWOが速いのでS72に進み、外輪のブレ
ーキ圧を増圧させる。即ち、旋回非制動時であるのでポ
ンプ54,55の回転数を上昇させるとともに、増圧用
液圧切換弁12〜15のうち外輪側の切換弁を開弁し、
且つ減圧用液圧切換弁16〜19のうち外輪側の切換弁
を閉弁させる。これで、外輪のブレーキ圧が増圧されて
旋回外輪と旋回内輪とが同じスリップ率となるように制
動力が制御される。
【0100】又、S71において、旋回外側車輪速度V
WOが目標旋回外側車輪速度VWO*より大きくないとき
は、VWO=VWO*であるので、S73に進み、外輪のブ
レーキ圧を保持させる。即ち、増圧用液圧切換弁12〜
15のうち外輪側の切換弁を閉弁し、且つ減圧用液圧切
換弁16〜19のうち外輪側の切換弁も閉弁させる。
【0101】このように、旋回非制動時は、旋回外側車
輪速度VWOが車体速度VB ,横加速度Gy,旋回内側車
輪速度VWIに応じた目標旋回外側車輪速度VWO*と等し
くなるように増圧用液圧切換弁12〜15及び減圧用液
圧切換弁16〜19が開閉制御されて外輪側へのブレー
キ圧が増圧、保持、減圧のいずれかに切り換えられ旋回
外輪と旋回内輪とが同じスリップ率となるように制動力
が制御される。
【0102】即ち、上記のように旋回非制動時は、車体
速度VB ,横加速度Gy,旋回内側車輪速度VWIに基づ
いてアンチスピンモーメントを発生させるための目標旋
回外側車輪速度VWO*を演算し、旋回外側車輪速度VWO
が目標旋回外側車輪速度VWO*となるように外側車輪に
制動力を付与することにより、旋回非制動時に最適なア
ンチスピンモーメントを発生させて走行安定性を保つこ
とができる。
【0103】従って、旋回非制動時は、外輪側へのブレ
ーキ圧が増圧されて各車輪のスリップ率が同じになるよ
うにブレーキ圧が制御されることにより、旋回非制動時
のヨーモーメントを打ち消して旋回非制動時の走行安定
性を高めることができる。尚、上記(20)式の導出
は、前述した第1実施例の場合と同様に行えるので、こ
こではその説明を省略する。
【0104】次に、図8を参照してアンチロック制動力
制御回路60が実行する第5実施例の制動力制御処理に
つき説明する。図8中、S81〜S87の処理は、前述
した図7のS61〜S67と同様なためその説明を省略
する。
【0105】S88では、目標旋回外側車輪速度VWO
を次式(21)より演算する。 VWO*=(VWI 2 +2dGy)1/2 …(21) そして、S29〜S33の処理は、前述した図7のS6
9〜S73と同様なためその説明を省略する。
【0106】このように、旋回非制動時は、旋回外側車
輪速度VWOが横加速度Gy,旋回内側車輪速度VWIに応
じた目標旋回外側車輪速度VWO*と等しくなるように増
圧用液圧切換弁12〜15及び減圧用液圧切換弁16〜
19が開閉制御されて外輪側へのブレーキ圧が増圧、保
持、減圧のいずれかに切り換えられ旋回外輪と旋回内輪
とが同じスリップ率となるように制動力が制御される。
【0107】従って、旋回非制動時は、外輪側のブレー
キ圧が増圧されて各車輪のスリップ率が同じになるよう
にブレーキ圧が制御されることにより、旋回非制動時の
内輪側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになるよう
に各車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外輪
側とを同時にロックさせることができる。よって、旋回
非制動時のヨーモーメントを打ち消して旋回制動時の走
行安定性を高めることができる。
【0108】尚、上記(21)式の導出は、前述した第
2実施例の場合と同様に行えるので、ここではその説明
を省略する。次に、図9を参照してアンチロック制動力
制御回路60が実行する第6実施例の制動力制御処理に
つき説明する。
【0109】図9中、S101でブレーキスイッチ67
がオフである非制動時は、S102に進む。又、S10
1において、ブレーキスイッチ67がオンである制動時
は、S107に進み、通常のアンチロック制動力制御を
行う。次のS102〜S108の処理は、前述した図6
のS42〜S48と同様なためその説明を省略する。
【0110】次のS109では、目標旋回外側車輪速度
WO*を次式(22)より演算する。 VWO*=(VWI 2 −K)1/2 …(22) 但し、VWIは旋回内側車輪速度,Kは車速により決まる
係数である。
【0111】そして、S110〜S114の処理は、前
述した図8のS89〜S93と同様なためその説明を省
略する。このように、旋回非制動時は、旋回外側車輪速
度VWOが旋回内側車輪速度VWIに応じた目標旋回外側車
輪速度VWO*と等しくなるように増圧用液圧切換弁12
〜15及び減圧用液圧切換弁16〜19が開閉制御され
て外輪側へのブレーキ圧が増圧、保持、減圧のいずれか
に切り換えられ旋回外輪と旋回内輪とが同じスリップ率
となるように制動力が制御される。
【0112】従って、旋回非制動時は、外側の車輪への
ブレーキ圧を増圧して各車輪のスリップ率が同じになる
ようにブレーキ圧が制御されることにより、旋回非制動
時の内輪側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになる
ように各車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と
外輪側とを同時にロックさせることができる。よって、
旋回制動時に発生しやすいヨーモーメントを打ち消して
旋回制動時の走行安定性を高めることができるととも
に、制動性能をより高めることができ、制動距離を短縮
することができる。
【0113】しかも、本実施例では横加速度Gyに関係
なく目標旋回外側車輪速度VWO*が得られるので、加速
度センサ62が故障した場合のバックアップ制御として
も適用することができる。次に、図10を参照してアン
チロック制動力制御回路60が実行する第7実施例の制
動力制御処理につき説明する。
【0114】図10の処理は、非制動時に車速が所定以
上になったとき、あるいは所定時間毎に実行される。同
図中、S121では、加速度センサ62により検出され
た横方向の加速度Gyと、車輪速センサ63〜66によ
り検出された各車輪の車輪速VWII =FL,FR,R
L,RR)とを読み込む。
【0115】次のS122では、車輪速センサ63〜6
6の異常判定を行う。即ち、車輪速センサ63〜66に
より検出された各車輪の車輪速度のうち、一の車輪速度
が他の車輪速度に比較して異常に大きい値、あるいは異
常に小さい値であるときは、車輪速センサ63〜66に
異常があるものと判定する。その場合、各車輪ごとの制
動力制御が行えないので、S123に進み、旋回走行時
の制動力制御を中止するとともに、制御中止及び車輪速
センサ63〜66に異常があることを表示器(図示せ
ず)に表示する。
【0116】又、S122において、車輪速センサ63
〜66が正常であるときは、S124に進み、車輪速度
WIから理論上の推定横加速度Gy*を演算する。この
S124では、次式の演算を行う。 Gy*=(Vwo 2 −VWI 2 )/2d …(23) 次のS125では、加速度センサ62により検出された
横加速度Gy(計測値)と、上式により求められた推定
横加速度Gy*の許容範囲(±α)とを比較する。そし
て、S126において、Gy>Gy*+α、又はGy<
Gy*−αでないときは、加速度センサ62による計測
値が推定横加速度Gy*の許容範囲(±α)内に入って
いるので、S127に進み、加速度センサ62が正常で
あると判定する。
【0117】この場合、S128に進み、前述した図2
又は図5に示すフローチャートの処理を実行して旋回制
動時の内輪側のブレーキ圧を減圧するように制御して各
車輪が同一のスリップ率となるように制動力を制御す
る。しかし、S126において、Gy>Gy*+α、又
はGy<Gy*−αであるときは、加速度センサ62に
よる計測値が推定横加速度Gy*の許容範囲(±α)か
ら外れているため、S129に進み、加速度センサ62
に異常があるものと判定する。そして、加速度センサ6
2に異常があることを表示器(図示せず)に表示する。
【0118】続いて、S128に進み、前述した図6に
示すフローチャートの処理を実行する。即ち、加速度セ
ンサ62により検出された横加速度を使用せずに車輪速
度V WIに基づいて旋回制動時の内輪側のブレーキ圧を減
圧するように制御して各車輪が同一のスリップ率となる
ように制動力を制御する。
【0119】従って、加速度センサ62が正常に横加速
度を計測できるときは、車輪速度V WI及び横加速度Gy
に基づいて制動力制御が行われ、加速度センサ62の計
測値に異常がある場合には、車輪速度VWIに基づいた制
動力制御を行うことができる。そのため、車輪速センサ
63〜66又は加速度センサ62で異常があった場合に
は、これらの計測値を使用せずに制動力制御を行うよう
に制御則を切り換えることにより、車輪速センサ63〜
66又は加速度センサ62により検出された異常値に基
づいて制動力制御を行うことが防止され、且つ旋回走行
時の走行安定性を高められるとともに旋回制動時の制動
力制御の信頼性をより高めることができる。
【0120】ここで、上記(23)式の導出について説
明する。車両が速度VB で定常円旋回走行していると
き、横加速度Gyは車体速度VBとヨーレートγとの間
で下記の関係式が成立する。 Gy=VB ・γ … (24) 又、非制動時及び、極低速を除く一般の走行条件下で
は、次式が成立する。
【0121】 γ=(Vwo−VWI)/d … (25) さらに、 VB =(Vwo+VWI)/2 … (26) と近似できる。そして、上記(24)(25)(26)
より、 Gy=VB ・γ ={(Vwo+VWI)/2}{(Vwo−VWI)/d} =(Vwo 2 −VWI 2 )/2d このように、上記(23)式が得られる。
【0122】次に、図11乃至図13を参照してアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する第8実施例の制動
力制御処理につき説明する。この第8実施例では、車両
が旋回走行する路面が所謂またぎ路(旋回外側の車輪が
走行する路面が旋回内側より低μ路である路面)である
場合、後側内輪は高μ路であるので制動力配分制御を行
わず、後側外輪は低μ路であるので制動力配分制御を行
う。その場合、後側外輪が先に制動力配分制御が行われ
るため、後側左右輪の制動力差によりヨーレートが助長
されることになる。
【0123】又、上記のようなまたぎ路を走行している
場合、前側外輪を基準として他の車輪の制動力を制御し
ようとすると、前側外輪が低μ路を走行し、後側内輪が
高μ路を走行しているため、内輪と外輪が同一μ路を走
行する場合に比べて各車輪の制動力制御が難しい。
【0124】そこで、本実施例では、車両がまたぎ路を
走行しているかどうかを判定し、車両がまたぎ路を走行
している場合には、前側内輪を基準として他の車輪の制
動力を制御し、且つ制動力が低くなるようにブレーキ圧
を制御してヨーレートを抑制する。
【0125】図11中、S141〜S147は、前述し
た図2のS1〜S7と同様な処理であるので、ここでは
その説明を省略する。次の148では、目標前側内輪車
輪速度VWFI *を次式(27)より演算する。 VWFI *={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・Gy/2VB )} ・VWFO …(27) 但し、VB は車体速度,Gyは横加速度,VWFO は前側
外輪車輪速度,dはトレッドである。従って、目標前側
内輪車輪速度VWFI *は、車体速度VB ,横加速度G
y,前側外輪車輪速度VWFO に応じた最適値が演算され
る。
【0126】そして、S149では、目標後側外輪車輪
速VWRO *及び目標後側内輪車輪速VWRI *を演算す
る。この場合、目標後側外輪車輪速VWRO *は前側外輪
車輪速VWFO と同一となり、目標後側内輪車輪速VWRI
*は上記(27)式で求められた目標前側内輪車輪速度
WFI *と同一となる。
【0127】次のS150では、後側内輪車輪速VWRI
と目標後側内輪車輪速VWRI *との差ΔVを算出する。
そして、S151に進み、後側内輪車輪速VWRI と目標
後側内輪車輪速VWRI*との差ΔV(=VWRI −VWRI
*)が正であるかどうかをチェックする。このS151
では、後側内輪車輪速VWRI と目標後側内輪車輪速V
WRI *との差ΔVにより走行路面が所謂またぎ路である
かどうかを判定しており、またぎ路でないときは内輪側
と後輪側とが同一μであるので、通常の制動力制御を行
い、またぎ路であるときは各車輪へのブレーキ圧を低μ
路に応じたブレーキ圧に制御する。
【0128】従って、上記S151において、ΔV≦0
であるときは、内輪側の路面μと外輪側の路面μとが同
一又は内輪側が低μ路であると判断してS152に進
み、各車輪が目標車輪速になるように制動力制御を行
う。しかし、S151において、ΔV>0であるとき
は、S153に進み、目標後側外輪車輪速VWRO *が後
側外輪車輪速VWRO より大きいかどうかをチェックす
る。もし、S153において、VWRO *>VWRO である
ときはS154に進み、フラグF1=1、F2=0(減
圧モード)に設定する。
【0129】又、S153において、VWRO *≦VWRO
であるときはS155に進み、目標後側外輪車輪速V
WRO *が後側外輪車輪速VWRO より小さいかどうかをチ
ェックする。そして、S155でVWRO *<VWRO であ
るときはS156に進み、フラグF1=0、F2=0
(増圧モード)に設定する。
【0130】しかし、S155でVWRO *<VWRO でな
いときはS157に進み、フラグF1=0、F2=1
(保持モード)に設定する。このように、路面μに応じ
た後側外輪車輪速VWRO に基づいて後側外輪のフラグF
1,F2が設定される。次のS158では、上記S15
4,S156,S157で設定されたフラグF1,F2
のうちフラグF1=1かどうかをチェックする。そし
て、S158でフラグF1=1でないときは、S159
に進み、目標後側内輪車輪速VWRI *が後側内輪車輪速
WRI より大きいかどうかをチェックする。もし、S1
59において、VWRI *>VWRI であるときはS160
に進み、フラグF1=1(減圧モード)に設定する。
【0131】又、S159において、VWRI *>VWRI
でないときはS161に進み、フラグF2=1に設定さ
れているかどうかをチェックする。そして、S161に
おいて、フラグF2=1に設定されていないときは、S
162に進む。このS162では、目標後側内輪車輪速
WRI *が後側内輪車輪速VWRI より小さいかどうかを
チェックする。もし、S162において、VWRI *<V
WRI でないときはS163に進み、フラグF2=1(保
持モード)に設定する。このように、後側内輪車輪速V
WRI に応じて後側内輪のフラグ設定を行う。
【0132】そして、次のS164では、フラグF1,
F2のうちフラグF1=1かどうかをチェックする。そ
して、S164で後側内輪又は後側外輪の一方がフラグ
F1=1であるときは、S165に進み、左右後輪のブ
レーキ圧を減圧する。しかし、S164において、フラ
グF1=1でないときは、S166に進み、フラグF2
=1かどうかをチェックする。そして、S166で後側
内輪又は後側外輪の一方がフラグF2=1であるときは
S167に進み、左右後輪のブレーキ圧を保持する。
【0133】又、S166でフラグF2=1でないとき
はS168に進み、左右後輪のブレーキ圧を増圧する。
即ち、フラグF1=1でない場合で、且つフラグF2=
1でないときに左右後輪のブレーキ圧を増圧することに
なり、旋回制動時にヨーレートが抑制される。このよう
に、後輪が同一車輪速度に制御されて旋回内輪と旋回外
輪と制動力差による旋回方向のモーメントが抑制され
る。
【0134】次のS169では、前側内輪車輪速度V
WFI が上記S148で演算された目標前側内輪車輪速度
WFI *となるように例えば前述した図2に示すような
制動力制御を行う。従って、上記のように、旋回制動
時、車体速度VB 、旋回前側外輪車輪速度V WFO 、横加
速度Gyに基づいて左右輪が同時にロックするように前
側内輪の目標車輪速度VWFI *を演算し、さらに旋回制
動時、旋回前側外輪車輪速度VWFO に基づいて旋回後側
外輪の目標車輪速度VWRO *を演算し、且つ、旋回前側
外輪車輪速度VWFO に基づいて旋回後側内輪及び旋回後
側外輪の目標車輪速度VWRI *,VWRO *を演算する。
そして、各車輪速度と各目標車輪速度とを比較し、各車
輪の車輪速度が目標車輪速度となるように各車輪へ供給
されるブレーキ圧を調整して各車輪が同時にロックする
ように各車輪への制動力を配分する。
【0135】又、旋回時、外輪が走行する路面が内輪が
走行する路面より低摩擦路(低μ路)であることが検出
されたとき、旋回後側内輪及び旋回後側外輪へのブレー
キ圧増圧、保持、減圧指令を比較し、ブレーキ圧をより
低圧側とする指令を選択して旋回後側内輪及び旋回後側
外輪へのブレーキ圧を制御するため、外輪側が低μ路の
場合、後輪の旋回外側の車輪へのブレーキ圧が先に減圧
されると、車両の旋回を助長するモーメントが発生して
オーバステアとなるが、このような場合、後輪が同一車
輪速度に制御されて旋回内輪と旋回外輪と制動力差によ
る旋回方向のモーメントの発生を防止できる。
【0136】次に、図14及び図15を参照して、本発
明の第9実施例である制動力制御装置について説明す
る。本実施例の制動力制御装置は、上記図1に示すシス
テム構成を用いて実現することができる。上述した第1
乃至第8実施例は、車両に作用する横加速度Gyが、所
定のしきい値を超えているか否かに基づいて、制動力制
御を実行すべきか否かを判別することとしている。本実
施例の制動力制御装置は、かかる判別に用いるしきい値
が、車速センサ61で検出される車体速度に基づいて変
更される点に特徴を有している。
【0137】図14は、上記の機能を実現すべく、アン
チロック制動力制御回路60が記憶するマップの一例を
示す。図14に示すマップには、車体速度が所定値V0
以下の領域では、制御開始を判別するしきい値が第1し
きい値(本実施例では0.6G)に、また、車体速度が
所定値V0 を超える領域では、制御開始を判別するしき
い値が第2しきい値(本実施例では0.2G)に、それ
ぞれ設定されている。
【0138】車体速度が遅い領域では、車両が高い横加
速度Gyを伴う旋回状態に移行した後に、かかる状況下
で安定した車両挙動が得られるように制動力制御を開始
すれば十分である。また、かかる低車速領域で、僅かな
横加速度Gyに反応して制動力制御が実行されるとすれ
ば、不必要な制動力制御が頻繁に行われることになり煩
雑である。かかる観点からすれば、車体速度の低い領域
では、制御開始を判別するしきい値を、比較的高い値に
設定することが適切である。
【0139】一方、例えば、高速レーンチェンジ等、車
体速度が速く、一次的、かつ、急激な挙動変化を伴う操
作がなされた際に、制動力制御による効果を得るために
は、車両挙動が変化し始めた後、速やかに制動力制御を
開始することが必要とされる。このため、車体速度が高
い領域では、制御開始を判別するしきい値を、比較的低
い値に設定することが適切である。上記図14に示す第
1しきい値(0.6G)及び第2しきい値(0.3G)
は、かかる要求を満たすことを目的として設定された値
である。
【0140】図15は、制動力配分制御の開始条件の判
定に用いるしきい値を、車体速度に応じて切り換えるべ
くアンチロック制動力制御回路60が実行するルーチン
の一例のフローチャートを示す。図15に示すルーチン
が起動されると、先ずS180において、ブレーキスイ
ッチ67がオン状態であるか否かが判別される。ブレー
キスイッチ68がオン状態でない場合は、車両が制動状
態でないと判断して、何ら以後の処理を進めることなく
今回のルーチンが終了される。一方、ブレーキスイッチ
67がオン状態であると判別された場合は、次にS18
1の処理が実行される。
【0141】S181では、アンチロックブレーキシス
テム(以下、ABSと称す)としての作動が要求されて
いるか否かが判別される。その結果、ABSとしての作
動が要求されていると判別された場合は、S182にお
いて、かかる作動を実現するABS制御が実行された
後、今回のルーチンが終了される。一方、ABSとして
の作動が要求されていないと判別された場合は、次にS
183の処理が実行される。
【0142】S183では、車体速度に基づいて、制動
力配分制御の開始条件の判定に用いるしきい値Gy0
決定される。本ルーチンにおいて、しきい値Gy0 は、
図14に示すマップを、車速センサ61により検出され
た車体速度で検索することにより決定される。より具体
的には、車体速度がV0 以下である場合にはGy0
0.6Gに、また、車体速度がV0 を超えている場合に
はGy0 が0.2Gに決定される。
【0143】上記の処理が終了すると、次に、S184
において、しきい値Gy0 に比して、加速度センサ62
により検出される横加速度Gyの絶対値|Gy|が大き
いか否かが判別される。その結果、Gy0 <|Gy|が
不成立である場合は、車両に対して、制動力配分制御を
必要とするほどの横加速度Gyが作用していないと判断
されて今回のルーチンが終了される。
【0144】一方、Gy0 <|Gy|が成立すると判別
された場合は、制動力配分制御を実行する必要があると
判断され、S185において配分制御に必要な処理(具
体的には、上記図2に示すS2〜S13の処理、図5に
示すS22〜S33の処理、図6に示すS42〜S54
の処理、図7に示すS62〜S73の処理、図8に示す
S81〜S93の処理、図9に示すS102〜S114
の処理、又は、図11〜図13に示すS142〜S16
9の処理)が実行された後、今回のルーチンが終了され
る。
【0145】上述した制動力制御装置によれば、低速走
行時には、比較的大きな横加速度Gyが発生する状況下
で適正に制動力配分制御が実行され、また、高速走行時
には、優れた応答性の基に制動力配分制御が実行され
る。従って、本実施例の制動力制御装置によれば、車両
が旋回状態に移行した後、車体速度に応じた適切なタイ
ミングで制動力配分制御を開始させることができる。
尚、上述した実施例においては、アンチロック制動力制
御回路60が上記S183の処理を実行することによ
り、前記請求項9記載のしきい値変更手段が実現されて
いる。
【0146】次に、図16乃至図18を参照して、本発
明の第10実施例である制動力制御装置について説明す
る。本実施例の制動力制御装置は、上記図1に示すシス
テム構成を用いて実現することができる。本実施例の制
動力制御装置は、前輪の制動力と後輪の制動力とを適当
な配分比に制御することで、高い制動能力の確保を可能
ならしめている点に特徴を有している。
【0147】図16は、横軸に車両の前輪が発生する制
動力(以下、フロント制動力と称す)Ffを、また、縦
軸に車両の後輪が発生する制動力(以下、リヤ制動力と
称す)Frをそれぞれ表した制動力座標を示す。図16
中にで示す直線は、車輪と路面との摩擦係数μが1.
0である場合のフロントロック限界線を示す。車両の制
動操作中に、フロント制動力Ffと、リヤ制動力Frと
が、直線上の点と一致する状態となると、その時点で
前輪がロック状態に移行する。前輪のロックは、前輪に
かかる荷重が大きいほど生じ難い。また、前輪には、制
動力が大きいほど荷重移動により大きな荷重がかかる。
このため、図16に示す如くフロントロック限界線は
右上がりの直線となる。
【0148】図16中にで示す直線は、μ=1.0で
ある場合のリヤロック限界線を示す。車両の制動操作中
に、フロント制動力Ffと、リヤ制動力Frとが、直線
上の点と一致する状態となると、その時点で後輪がロ
ック状態に移行する。後輪のロックは、後輪にかかる荷
重が大きいほど生じ難い。後輪にかかる荷重は、制動力
が大きいほど、荷重移動により小さくなる。このため、
図16に示す如く、リヤロック限界線は右下がりの直
線となる。
【0149】図16中にで示す直線は、制動力理想配
分線を示す。制動操作中に、制動力理想配分線上の座標
値(Ff,Fr)に一致する制動力を、それぞれ前輪お
よび後輪に発揮させると、前輪の車輪速度VWfと後輪の
車輪速度VWrとを一致させることができる。制動力に伴
う荷重変化の影響で、制動力理想配分線は、図16に
示す如く曲線となる。
【0150】車両の制動能力は、フロント制動力Ffの
最大値と、リヤ制動力Frの最大値との和が大きいほど
優れていることになる。従って、車両において高い制動
能力を得るためには、制動操作中における(Ff,F
r)の軌跡がフロントロック限界線とリヤロック限界
線との交点Qを通るように、FfとFrとの配分比が
制御されることが望ましい。
【0151】一方、何れかの車輪がロック状態に移行す
る場合、前輪に先立って後輪がロック状態となる場合に
比して、後輪に先立って前輪がロック状態となる場合の
方が車両挙動は安定している。従って、かかる限界時の
安定性を高める意味では、制動操作中における(Ff,
Fr)の軌跡がフロントロック限界線を貫くように、
FfとFrとの配分比が制御されることが望ましい。
【0152】図16中にで示す折れ線は、プロポーシ
ョニングバルブ(以下、Pバルブと称す)を用いること
で実現し得る(Ff,Fr)の軌跡を示す。Pバルブ
は、後輪に配設されるホイルシリンダに通じる油圧経路
に組み込まれる減圧バルブである。Pバルブは、ブレー
キ油圧が所定圧に到達するまでは、前輪のホイルシリン
ダに供給されるブレーキ油圧を、そのまま後輪のホイル
シリンダに供給する。そして、ブレーキ油圧が所定圧を
超えると、Pバルブは、前輪のホイルシリンダに供給さ
れる油圧を所定の比率で減圧したブレーキ油圧を、後輪
のホイルシリンダに供給する。このため、Pバルブ特性
は、図16に示す如き折れ線となる。Pバルブの諸元
は、Pバルブ特性が、フロントロック限界線とリヤ
ロック限界線との交点Qの近傍で、フロントロック限
界線と交わるように設定されている。かかる設定を施
すことで、上述した2つの要求の両立が図られている。
【0153】しかし、Pバルブにより制御することがで
きるのは、あくまでの前輪のホイルシリンダに供給され
るブレーキ油圧と、後輪のホイルシリンダに供給される
ブレーキ油圧との比率である。ブレーキ油圧の比率が同
一であっても、積載状態が変動することにより、前輪と
後輪との荷重バランスが変動すれば、フロントロック限
界線およびリヤロック限界線と、Pバルブ特性と
の関係は変動する。このため、商用車等、積載状態によ
り前後輪の荷重バランスが大きく変化する車両いおいて
は、常にPバルブ特性を、Q点の近傍でフロントロッ
ク限界線と交わらせることが困難である。
【0154】従来より、Pバルブのかかる欠点を補うべ
く、商用車等においては、ロードセンシングプロポーシ
ョニングバルブ(以下、LSPVと称す)が用いられて
いる。LSPVは、車両の積載荷重に応じて、後輪のホ
イルシリンダに供給するブレーキ油圧の減衰比率を変更
する機能を備えるPバルブである。具体的には、積載荷
重が大きい場合にはブレーキ油圧の減衰比率を小さく、
また、積載荷重が小さい場合にはブレーキ油圧の減衰比
率を大きく変更する機能を備えている。LSPVによれ
ば、車両の積載状態によらず、Q点の近傍でフロントロ
ック限界線と交わるPバルブ特性を実現することが
できる。従って、LSPVによれば、Pバルブに比し
て、後輪の制動力を有効に発揮させることができる。
【0155】ところで、本実施例のシステムにおいて
は、制動力を制御することで各車輪の車輪速度を制御す
ることができる。従って、各車輪の制動力を制御するこ
とで、例えば、前輪の車輪速度VWfと後輪の車輪速度V
Wrとを同等に制御することもできる。制動操作中にかか
る制御が実行されると、(Ff,Fr)の軌跡は、常に
制動力理想配分線に一致することとなり、LSPVを
用いることなく、LSPVを用いた場合と同様の制動力
特性が実現される。本実施例の制動力制御装置は、各車
輪の制動力を制御することで、LSPV等を用いること
なく、前後輪に理想的な制動力配分比を付与する点に特
徴を有している。
【0156】図17は、本実施例の制御装置において実
現される制御特性を説明するための(Ff,Fr)座
標を示す。尚、同図において、上記図16中に示す線図
と同一の線図については、同一の符号を付してその説明
を省略する。上述の如く、制動操作中における車輪のロ
ックは、フロント制動力Ffと、リヤ制動力Frとが、
フロントロック限界線またはリヤロック限界線上の
点と一致する関係を満たす場合に生ずる。言い換えれ
ば、それらの関係が満たされるまでは、FfおよびFr
が如何なる過程を経て変化しても、車輪のロックが生ず
ることはない。
【0157】上述の如く、後輪のホイルシリンダに導く
ブレーキ油圧が、常に前輪のホイルシリンダに導かれる
ブレーキ油圧と同等であると、制動操作中に生ずる荷重
移動に起因して、後輪がロックし易い状態となる。しか
しながら、後輪がロック状態に移行しない領域では、後
輪のホイルシリンダに対して高いブレーキ油圧を供給す
ることが可能である。また、車両の制動能力を高めるた
めには、すなわち、単位ブレーキ踏力に対して大きな制
動力を得るためには、後輪のホイルシリンダに対して高
いブレーキ油圧を供給することが適切である。かかる観
点からすれば、後輪がロック状態に移行しない領域で
は、後輪のホイルシリンダに供給されるブレーキ油圧
が、前輪のホイルシリンダに供給されるブレーキ油圧に
比して、大きく減圧されていないことが望ましい。
【0158】そこで、本実施例においては、後輪の車輪
速度VWrと、前輪の車輪速度VWfとの間に、VWr=K・
Wf(K<1)なる関係が成立する制御曲線を設定
し、制御特性が制御曲線を大きく超えることがない
ように、各車輪の制動力を制御することとした。かかる
制御が実行されて、図17に示す制御特性が実現され
ると、後輪に対して、常に前輪のスリップ率以上のスリ
ップ率が付与されることになり、後輪の制動能力を有効
に活用することが可能となる。
【0159】図18は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する制御ルーチンの一
例のフローチャートを示す。図18に示すルーチンが起
動されると、先ずS190において、車輪速センサ63
〜66によって検出された各車輪の車輪速度が読み込ま
れる。
【0160】次に、S191において、加速度センサ6
2によって検出される横加速度Gyが読み込まれる。と
ころで、上記(12)式に示す如く、旋回内輪の車輪速
度V WI、旋回外輪の車輪速度VWO、および横加速度Gy
には、“VWO 2 −VWI 2 =2d・Gy”(d;車両のト
レッド)なる関係が成立する。かかる関係は、車輪のス
リップ率が大きくない場合、すなわち、車両が制動状態
でない場合には、高い精度の下に成立する。従って、横
加速度Gyは、必ずしも測定する必要はなく、非制動時
に検出されたVWO、およびVWI 2 を“Gy=(VWO 2
WI 2 )/2d”なる演算式に代入することにより推定
することも可能である。
【0161】上記の処理を終えたら、次に、S192に
おいて、ブレーキスイッチ67がオン状態であるか否か
が判別される。その結果、ブレーキスイッチ67がオン
状態ではないと判別された場合は、車両が制動状態では
ないと判断されて今回のルーチンが終了される。一方、
ブレーキスイッチ67がオン状態であると判別された場
合は、S193において、横加速度Gyの絶対値|Gy
|が所定のしきい値αに比して小さいか否かが判別され
る。
【0162】上記S193において、|Gy|<αが成
立すると判別された場合は、車両は直進状態であると判
断され、以後、S194以降の処理が実行される。S1
94では、左右前輪の車輪速度VWfr,Wfl を次式に代
入することで、左右後輪の目標車輪速度VWrr * ,
Wrl * が演算される。
【0163】 VWrr * =K・VWfr ・・・(28) VWrl * =K・VWfl ・・・(29) 上記(28)式、及び(29)式で用いられる定数K
は、1より小さな値であり、例えば、0.95〜0.9
9が用いられる。かかる演算によれば、左右前輪の車輪
速度VWfr,Wfl に比して、僅かに小さな車輪速度が左
右後輪の目標車輪速度VWrr * , Wrl * として演算さ
れることになる。
【0164】目標車輪速度VWrr * , Wrl * の演算が
終了したら、次に、S195において、左右後輪の車輪
速度VWrr,Wrl が、それぞれ目標車輪速度VWrr * ,
Wr l * より小さいか否かが判別される。その結果、V
Wrr <VWrr * 、及び、VWr l <VWrl * が共に不成立
である、すなわち、左右後輪の車輪速度VWrr,
Wrlが、共にそれらの目標車輪速度VWrr * , Wrl *
以上である、と判別された場合は、左右後輪の制動力を
減圧する必要はないと判断され、制動力配分制御が行わ
れることなく今回のルーチンが終了される。この場合、
後輪のホイルシリンダには、前輪のホイルシリンダと同
等のブレーキ油圧が導かれる。
【0165】一方、VWrr <VWrr * 、及び、VWrl
Wrl * の少なくとも一方が成立する場合、すなわち、
左右後輪の車輪速度VWrr,Wrl の少なくとも一方が、
それらの目標車輪速度VWrr * , Wrl * に比して小さ
いと判別された場合は、S196において制動力配分制
御が開始される。この場合、S197において、VWr r
=VWrr * 、及び、VWrl =VWrl * が共に成立するよ
うに、左右後輪の制動力が制御される。
【0166】上記の如く制動力配分制御が開始される
と、以後、後輪のホイルシリンダのブレーキ油圧は、前
輪のホイルシリンダのブレーキ油圧に比して低圧とな
る。車両が制動状態に移行した後、上述した制動力配分
制御が実行されると、荷重移動により後輪の車輪速度V
Wfr,Wfl が低下し易い状態となっているにも関わら
ず、後輪の車輪速度VWrr,Wrl が、適切に目標車輪速
度VWrr * , Wrl * 、すなわち、前輪の車輪速度V
Wfr,Wfl に比して僅かに小さな所定の車輪速度に維持
される。かかる処理によれば、直進状態で制動操作がな
された場合に、後輪の制動能力を有効に活用することが
できる。
【0167】次に、上記S193で|Gy|<αが不成
立であると判別された場合について説明する。かかる判
別がなされた場合は、車両が旋回状態であると判断さ
れ、次いでS198の処理が実行される。本実施例のシ
ステムに用いられる加速度センサ62は、車両が時計回
り方向に旋回している場合に正の出力を発生し、一方、
車両が反時計回り方向に旋回している場合に負の出力を
発生する。S198では、車両の旋回方向を特定すべ
く、加速度センサ62の出力に基づいて検出される横加
速度Gyの符号を判別する処理が実行される。
【0168】S198において、Gy≧αが成立すると
判別される場合は、車両が時計回り方向に旋回している
と判断され、先ずS199で、前後の左輪が旋回外輪と
決定される。次いで、S200において、前輪の旋回外
輪、すなわち、左前輪の車輪速度VWfr に基づいて、前
輪の旋回内輪、すなわち、右前輪の車輪速度VWfl が演
算される。
【0169】本実施例のシステムは、上述した第2実施
例のシステムに同様に、車両が旋回制動状態である場合
に、前輪の旋回内輪および旋回外輪のスリップ率が同等
となるように、前輪の制動力を制御する機能を備えてい
る。この際、前輪の旋回内輪の車輪速度は、上記(1
1)式により得られる目標車輪速度VWI * =√(VWO 2
−2d・Gy)に制御される。このため、上述したS2
00では、次式に従って右前輪の車輪速度VWfr が演算
される。
【0170】 VWfr =√(VWfl 2 −2d・Gy) ・・・(30) S200の演算が終了したら、以後、上述したS194
以降の処理が実行された後、今回のルーチンが終了され
る。この場合、後輪の旋回内輪となる右後輪の車輪速度
Wrr は、次式に示される目標車輪速度VWrr * に制御
される。
【0171】 VWrr * =K・√(VWfl 2 −2d・Gy) ・・・(31) 一方、上記S198において、Gy≧αが不成立である
と判別された場合は、車両が反時計回り方向に旋回して
いると判断される。この場合、先ずS201で、前後の
右輪が旋回外輪と決定される。次いで、S202におい
て、前輪の旋回外輪、すなわち、右前輪の車輪速度V
Wfl に基づいて、前輪の旋回内輪、すなわち、左前輪の
車輪速度VWfr が演算される。この際、左前輪の車輪速
度VWfr は、上記(11)式の関係を用いて、次式の如
く演算される。
【0172】 VWfl =√(VWfr 2 −2d・Gy) ・・・(32) S202の演算が終了したら、以後、上述したS194
以降の処理が実行された後、今回のルーチンが終了され
る。この場合、後輪の旋回内輪となる左後輪の車輪速度
Wrl は、次式に示される目標車輪速度VWrl * に制御
される。
【0173】 VWrl * =K・√(VWfr 2 −2d・Gy) ・・・(33) 上記の処理によれば、旋回中に制動操作がなされた場合
には、前輪の旋回外輪と旋回内輪とを同等のスリップ状
態に、また、後輪の旋回外輪と旋回内輪とを同等のスリ
ップ状態に、それぞれ制御することができると共に、後
輪に対して、前輪のスリップ率に比して僅かに大きなス
リップ率を付与することができる。かかる制動力配分が
なされた場合、車両の旋回挙動を安定に維持しつつ、後
輪の制動能力を有効に活用することができる。
【0174】上述の如く、本実施例のシステムによれ
ば、直進制動状態、および、旋回制動状態において、後
輪の制動能力を有効に活用することができる。従って、
本実施例のシステムによれば、単位ブレーキ踏力に対し
て、高い制動力を発生させることができ、車両において
高い制動能力を実現することができる。
【0175】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が、上記S194の処理を実行す
ることにより、上記請求項10記載の第1の目標車輪速
度設定手段が実現されている。次に、上記図18と共
に、図19及び図20を参照して、本発明の第11実施
例である制動力制御装置について説明する。本実施例の
制動力制御装置は、上述した第10実施例の制動力制御
装置に、改良を加えた実施例である。
【0176】上述の如く、制動操作により車輪がロック
状態に移行する限界領域では、後輪に先立って前輪をロ
ック状態に移行させた方が、前輪に先立って後輪がロッ
ク状態に移行する場合に比して車両挙動を安定に維持す
ることができる。これに対して、上記第10実施例の如
く、後輪の目標車輪速度VWrr * , Wrl * が、前輪の
車輪速度VWfr,Wfl に比して僅かに小さく設定されて
いると、前輪に先立って後輪がロック状態に移行する事
態を招く。この点、第10実施例の制動力制御装置は、
後輪の制動力を活用するうえでは有効であるものの、限
界領域での車両挙動を安定化させるという意味では、未
だ課題を有していることになる。
【0177】上記第10実施例の制動力制御装置が有す
る課題は、後輪がロック状態に移行する可能性のない領
域では、後輪の目標車輪速度VWrr * , Wrl * を、前
輪の車輪速度VWfr,Wfl に比して僅かに小さく設定
し、かつ、後輪がロック状態に移行するおそれのある領
域では、後輪の目標車輪速度VWrr * , Wrl * を、前
輪の車輪速度VWfr,Wfl に比して僅かに大きな値に切
り換えることにより解決することができる。本実施例の
制動力制御装置は、かかる目標車輪速度VWrr * ,
Wrl * の切り換えを行う点に特徴を有している。
【0178】図19は、本実施例の制御装置において実
現される制御特性を説明するための(Ff,Fr)座
標を示す。尚、同図において、上記図17中に示す線図
と同一の線図については、同一の符号を付してその説明
を省略する。図19中に示す曲線は、後輪の車輪速度
Wrと、前輪の車輪速度VWfの間にVWr=K2 ・VWf
(K2 >1)なる関係を成立させる(Ff,Fr)の軌
跡である。曲線は、制動力理想配分線の下方に描か
れる曲線であるため、フロントロック限界線と交わ
る。従って、後輪の車輪速度VWrと、前輪の車輪速度V
Wfとが、VWr=K2 ・VWf;(K2 >1)なる関係を満
たすように前後輪の制動力が制御されれば、車輪のロッ
クを、後輪に先立って前輪において発生させることがで
きる。
【0179】そこで、本実施例においては、図19中に
を付して示すように、車輪にロックが生ずる可能性の
ない領域では、先ず、前輪のホイルシリンダと後輪のホ
イルシリンダとに同等のブレーキ油圧を供給することに
より(Ff,Fr)を直線的に変化させ、次いで、後輪
の車輪速度VWrと、前輪の車輪速度VWfの間にVWr=K
1 ・VWf;(K1 <1)なる関係が成立するように(F
f,Fr)を曲線に沿って変化させ、更に、車輪にロ
ックが生ずる可能性のある領域では、後輪の車輪速度V
Wrと、前輪の車輪速度VWfの間にVWr=K2 ・VWf
(K2 >1)なる関係が成立するように(Ff,Fr)
を曲線に沿って変化させることとしている。
【0180】図20は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行するサブルーチンの一
例のフローチャートを示す。本実施例において、アンチ
ロック制動力制御回路60は、上記図18に示すルーチ
ン中、S192でブレーキスイッチがオン状態であるこ
とが判別されると、図20に示すサブルーチンを実行し
た後に、図18に示すS193以降の処理を進行させ
る。
【0181】図20に示すサブルーチンが起動される
と、先ずS210において、左右前輪のスリップ率の平
均値(以下、前輪スリップ率と称す)Sfが演算され
る。右前輪のスリップ率Sfr、及び左前輪のスリップ
率Sflは、車速センサ61により検出される車体速度
B 、および左右前輪の車輪速度VWfr,Wfl を用い
て、それぞれ次式の如く演算される。
【0182】 Sfr=(VB −VWfr )/VB ・・・(34) Sfl=(VB −VWfl )/VB ・・・(35) 更に、前輪スリップ率Sfは、これらSfrおよびSf
lを平均化することにより、次式の如く演算される。
【0183】 Sf=(Sfr+Sfl)/2 ・・・(36) 車輪のロックは、そのスリップ率が、タイヤの能力等に
よって決定される所定の限界スリップ率を超えることに
より生ずる。従って、前輪スリップ率Sfの値が十分に
小さい領域では、車輪がロック状態に移行する可能性は
ないと判断することができる。そして、前輪スリップ率
Sfが大きいほど、車輪がロック状態に移行する可能性
が大きいと判断することができる。
【0184】本ルーチンでは、上記S210において前
輪スリップ率Sfが演算された後、S211で、前輪ス
リップ率Sfが所定のしきい値S0 を超えているか否か
が判別される。その結果、Sf>S0 が不成立である場
合は、車輪がロック状態に移行する可能性がないと判断
され、S212で、KにK1 (<1)が代入された後、
今回のルーチンが終了される。一方、Sf>S0 が成立
すると判別された場合は、車輪がロック状態に移行する
可能性があると判断され、S213で、KにK 2 (>
1)が代入された後、今回のルーチンが終了される。
【0185】以後、上記の如く設定されたKを用いて、
上記図18に示すS193以降の処理が実行される。か
かる処理によれば、後輪がロック状態に以降する可能性
のない領域で、後輪の制動能力を有効に活用すると共
に、車輪のロックが生ずる場合には、必ず後輪に先立っ
て前輪にロックを発生させることができる。従って、本
実施例の制動力制御装置によれば、上記第10実施例が
有する課題を解決して、制動状態での限界領域付近で安
定した車両挙動を得ることができる。
【0186】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が、上記S210の処理を実行す
ることにより前記請求項11記載のスリップ率検出手段
が、上記S213で設定されたK=K2 を用いて上記S
194の処理を実行することにより前記請求項11記載
の第2の目標車輪速度設定手段が、また、上記S211
の処理を実行することにより前記請求項11記載の目標
車輪速度切り換え手段が、それぞれ実現される。
【0187】ところで、上述した第11実施例では、車
輪がロック状態に移行する可能性があるか否かを、前輪
スリップ率Sfに基づいて判別することとしているが、
本発明はこれに限定されるものではなく、後輪のスリッ
プ率に基づいて同様の判別を行うこととしてもよい。
【0188】次に、図21乃至図23を参照して、本発
明の第12実施例について説明する。本実施例の制動力
制御装置は、上記図1に示すシステム構成を用いて実現
することができる。上述した第1乃至第5実施例等で
は、旋回外輪の車輪速度VWOに基づいて旋回内輪の目標
車輪速度VWI * が演算されると共に、旋回内輪の車輪速
度VWIが目標車輪速度VWI * と一致するように制動力を
制御することで、旋回外輪と旋回内輪とを対象とする制
動力配分制御が実現されている。
【0189】車両が舗装された道路を走行している場合
等は、旋回外輪の車輪速度VWOが安定しているため、上
記の如く制動力配分制御を実行すれば、旋回内輪のスリ
ップ率と、旋回外輪のスリップ率とを精度良く整合させ
ることができる。しかしながら、例えば車両が悪路を走
行している場合等、車輪速度が高周波で、大きく変化す
る状況下では、旋回外輪の車輪速度VWOが変動すること
に起因して、旋回内輪の車輪速度VWIと、その目標車輪
速度VWI * との偏差が大きく変動する場合がある。
【0190】図21は、車両が悪路を走行している際に
演算される旋回内輪の目標車輪速度VWI * と、かかる状
況下で実測される旋回内輪の車輪速度VWIとの偏差ΔV
=V WI−VWI * の時間的な変動を示す。図21に示す如
く、偏差ΔVが、高周波で大幅に変化する状況下では、
制動力配分制御を実行することにより旋回内輪のスリッ
プ率と旋回外輪のスリップ率とを整合させることは困難
である。また、かかる状況下で制動力配分制御が続行さ
れると、制御上のハンチングが生じて、旋回内輪の制動
力が不適切に制御される事態が生じ得る。このため、か
かる状況下では、敢えて制動力配分制御を実行せずに、
旋回内輪に通常の制動力を発生させることが適切であ
る。
【0191】本実施例の制動力制御装置は、所定時間T
1 間に、ΔVが大幅に変動した回数を計数し、所定回数
を超えて大幅な変動が生じている場合には、車輪速度が
不安定であると判断して、制動力配分制御の実行を禁止
する機能を備えている点に特徴を有している。
【0192】図22は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する制御ルーチンの一
例のフローチャートを示す。尚、図22において、上記
図18に示すステップと同一のステップには、括弧書き
により同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
【0193】図22に示すルーチンが起動されると、先
ずS220において、各車輪の車輪速度が読み込まれ
る。次に、S221において、車両に作用している横加
速度Gyが読み込まれる。次いで、S222において、
ブレーキスイッチ67がオン状態であるか否かが判別さ
れる。
【0194】S222でブレーキスイッチ67がオン状
態であると判別された場合は、次いで、S223におい
て、旋回内外輪の判定が行われる。上述の如く、加速度
センサ62は、車両の旋回方向に応じて正負の異なる信
号を出力する。本ステップS223では、Gyの符号を
基に旋回内外輪が判定される。
【0195】S224では、旋回内輪の目標車輪速度V
WI * が演算される。本ステップ224では、上述した第
2実施例の場合と同様に、上記(11)式に、旋回外輪
の車輪速度VWO、及び、横加速度Gyを代入すること
で、旋回内輪の目標車輪速度V WI * が演算される。
【0196】次に、S225では、旋回内輪の車輪速度
WIと、その目標車輪速度VWI * との偏差ΔV=VWI
WI * が演算される。更に、S226では、過去T1
時間内に、ΔVが所定値K以下の状態から所定値Kを超
える状態に変化した回数が、N1 回以上であるか否かが
判別される。制動力配分制御の実行中は、ΔV=VWI
WI * が“0”に近づくように旋回内輪の制動力が制御
される。従って、目標車輪速度VWI * が頻繁に、かつ、
大幅に変動しない限りは、ΔVが大きく増減することは
ない。上述したしきい値K、及び、所定時間T1 は、安
定した目標車輪速度VWI * が得られている場合にはS2
26の条件が不成立となり、かつ、目標車輪速度VWI *
が不当に変動する場合にはS226の条件が成立するよ
うに、予め実験的に設定された値である。
【0197】このため、上記S226の条件が成立する
場合は、制動力配分制御を禁止すべきであると判断する
ことができる。この場合、S226に次いで、S227
において制動力配分制御が禁止された後、今回のルーチ
ンが終了される。一方、S226の条件が不成立である
場合は、制動力配分制御の実行を許容すべきであると判
断することができる。この場合、S228において制動
力配分制御の開始条件が成立しているか否か、すなわ
ち、ΔV<0が成立するか否かが判別される。
【0198】その結果、ΔV<0が不成立である、すな
わち、旋回内輪の車輪速度VWIがその目標車輪速度VWI
* に比して大きいと判別された場合は、未だ旋回内輪の
制動力を制御する必要なないと判断されて今回のルーチ
ンが終了される。一方、ΔV<0が成立する、すなわ
ち、旋回内輪の車輪速度VWIがその目標車輪速度VWI *
に比して小さいと判別された場合は、S229におい
て、制動力配分制御が開始される。
【0199】ところで、制動力配分制御は、車両が旋回
制動状態である場合に、旋回内輪側のホイルシリンダに
供給されるブレーキ油圧を、旋回外輪側に供給されるブ
レーキ油圧に比して低圧とすることにより実現される。
かかるブレーキ油圧偏差は、制動操作が開始された後、
旋回外輪側のホイルシリンダに連通するブレーキ経路を
増圧モードに維持すると共に、旋回内輪側のホイルシリ
ンダに連通するブレーキ経路を保持モード、増圧モー
ド、および減圧モードに切り換えることで実現される。
この際、旋回内輪に対応するブレーキ経路の制御は、旋
回内輪側のホイルシリンダのブレーキ圧を、旋回外輪側
のホイルシリンダのブレーキ圧に比して緩やかに昇圧さ
せるために実行される。かかる機能は、特別な場合を除
き、保持モード、および増圧モードを繰り返すことが実
現できる。すなわち、旋回内輪に対応するブレーキ経路
において減圧モードが実行されるのは、旋回内輪の車輪
速度VWIに対して大幅に大きな目標車輪速度VWI * が設
定された場合だけである。従って、制動力配分制御の実
行が開始された後、頻繁に減圧モードが実行されるとす
れば、目標車輪速度VWI * に大幅な変動が生じている、
すなわち、車輪速度に不当は変動が生じていると判断す
ることができる。
【0200】図23は、車輪速度が不安定な状況下で制
動力配分制御が開始された場合の動作状態を表すタイム
チャートを示す。図23(A)に示す如く、時刻t1
おいて制動力配分制御が開始された場合において、車輪
速度が不安定であると、その後、図23(B)に示す如
く、増圧モード、及び、保持モードと共に、減圧モード
が頻繁に実行される。この際、図23(C)に示す如
く、所定時間内に実行される減圧モードの回数を計数す
れば、その計数値を基に安定した車輪速度が得られてい
るか否かを判別することができる。
【0201】このため、本実施例では、上記S229で
制動力配分制御の実行が開始された後、S230におい
て、過去所定時間T2 の間に減圧モードが実行された回
数が所定回数N2 以上であるか否かが判別される。その
結果、T2 時間内に実行された減圧モードの回数がN2
回未満であると判別された場合は、車輪速度は正常に検
出されていると判断され、以後、S231で制動力配分
制御が継続された後、今回のルーチンが終了される。一
方、T2 時間内に実行された減圧モードの回数がN2
以上であると判別された場合は、適正な車輪速度が検出
されていないと判断され、以後、S232で以上判定が
なされ、S233で制動力配分制御が終了された後、今
回のルーチンが終了される。
【0202】上述の如く、本実施例の制動力制御装置に
よれば、車輪速度が不安定となる状況下では、制動力配
分制御の実行を確実に禁止することができる。従って、
本実施例の制動力制御装置によれば、悪路走行時等に、
旋回内輪の制動力が不当に制御される不都合を回避する
ことができる。
【0203】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が、S226、又はS230の処
理を実行することにより前記請求項12記載の車輪速度
不安定度検出手段が、また、上記S223の処理を実行
することにより前記請求項12記載の制動力制御禁止手
段が、それぞれ実現されている。
【0204】ところで、上述した実施例は、所定時間T
1 内に生じたΔVの変動の回数、及び、所定時間T2
に実行された減圧モードの回数に基づいて、車輪速度の
不安定度を検出することとしているが、これらは必ずし
も組み合わせて用いる必要はなく、何れか一方のみに基
づいて車輪速度の不安定度を検出することとしても良
い。
【0205】また、上述した実施例においては、ΔVの
変動幅が大きい場合に、車輪速度の不安定度が高いと判
断することとしているが、本発明はこれに限定されるも
のではなく、車輪速度の変動そのものに基づいて同様の
判断を行うこととしてもよい。更に、上述した実施例に
おいては、減圧モードが実行された回数に基づいて車輪
速度の不安定度を判断することとしているが、本発明は
これに限定されるものではなく、減圧モードが実行され
た積算時間に基づいてその判断を行うこととしてもよ
い。
【0206】次に、図24乃至図27を参照して、本発
明の第13実施例について説明する。本実施例の制動力
制御装置は、上記図1に示すアンチロック制動力制御回
路60に、ステアリングホイルの操舵角δを検出する操
舵角センサ、および、車両のヨーレートγを検出するヨ
ーレートセンサを接続することで実現することができ
る。
【0207】制動力配分制御によって旋回内輪のスリッ
プ率と旋回外輪のスリップ率とが同等に制御されると、
旋回内輪によって発生される制動力は、かかる制御が実
行されない場合に比して減少する。旋回内輪に生ずる制
動力は、車両に対して、車両を旋回方向に回転させる旋
回モーメントとして作用する。このため、旋回内輪が発
する制動力が大きいほど、車両のステアリング特性はオ
ーバーステア傾向となり、一方、旋回内輪が発する制動
力が小さいほど、車両のステアリング特性はアンダース
テア傾向となる。
【0208】従って、車両の旋回中にオーバーステア傾
向が表れている場合に、制動力配分制御が実行されれ
ば、そのオーバーステア傾向が相殺されて、ニュートラ
ルステアに近いステアリング特性を得ることができる。
一方、車両の旋回中にアンダーステア傾向が表れている
場合に、制動力配分制御が実行されると、アンダーステ
ア傾向が助長されて、車両がより一層旋回し難い状態と
なる。このため、旋回走行中にアンダーステア特性が表
れている場合には、制動力配分制御を実行しないことが
適切である。
【0209】旋回中における車両のステアリング特性
が、アンダーステア特性か否かは、後述の如く、実ヨー
レートγと理想ヨーレートγ* との大小関係、及び、実
横加速度Gyと理想横加速度Gy* との大小関係に基づ
いて判断することができる。ここで、理想ヨーレートγ
* は、車両がニュートラルステア特性を示す場合に得ら
れるヨーレートγであり、車体速度および操舵角δに基
づいて公知の手法により求めることができる。同様に、
理想横加速度Gy* は、車両がニュートラルステア特性
を示す場合に得られる横加速度Gyであり、車体速度お
よび操舵角δに基づいて公知の手法により求めることが
できる。
【0210】図24は、ヨーレートγと理想ヨーレート
γ* との大小関係、及び、実横加速度Gyと理想横加速
度Gy* との大小関係に基づいて、ステアリング特性が
アンダーステア特性か否かを判別する手法の一例を説明
するための図を示す。図24中に示す特性値C1 =γ・
(γ* −γ)は、理想ヨーレートγ* と実ヨーレートγ
との偏差に、実ヨーレートγを乗算して得られる特性値
である。本実施例において、ヨーレートセンサは、旋回
方向に対応して正負の異なる信号を出力する。同様に、
理想ヨーレートγ* には、旋回方向に対応して、すなわ
ち、操舵角δの向きに対応して異なる符号が付される。
これに対して、特性値C1 の符号は、車両の旋回方向に
より変化せず、理想ヨーレートγ* に対して実ヨーレー
トγが不足している場合には正と、また、理想ヨーレー
トγ* に対して実ヨーレートγが過剰である場合は負と
なる。
【0211】また、図24中に示す特性値C2 =Gy・
(Gy* −Gy)は、理想横加速度Gy* と実横加速度
Gyとの偏差に、実横加速度Gyを乗算して得られる特
性値である。本実施例において、加速度センサ62は、
旋回方向に対応して正負の異なる信号を出力する。同様
に、理想横加速度Gy* には、旋回方向に対応して、す
なわち、操舵角δの向きに対応して異なる符号が付され
る。これに対して、特性値C2 の符号は、車両の旋回方
向により変化せず、理想横加速度Gy* に対して実横加
速度Gyが不足している場合には正と、また、理想横加
速度Gy* に対して実横加速度Gyが過剰である場合は
負となる。
【0212】上述の如く、特性値C1 及びC2 の符号
は、それぞれ車両の旋回特性、及び、横方向のグリップ
状態を表している。図24中に示す領域1は、C1
0、且つC2 <0が成立する領域である。かかる条件
は、十分なコーナリグフォースが確保されつつ、車両が
オーバーステア傾向を示す場合に成立する。従って、領
域1は、図25に示す如く、車両がオーバーステア傾向
を示す領域と認識することができる。
【0213】図24中に示す領域2は、C1 <0、且つ
2 >0が成立する領域である。かかる条件は、コーナ
リングフォースが不足した状態で、車両がオーバーステ
ア傾向を示す場合に成立する。従って、領域2は、図2
5に示す如く、車両がスピン傾向を示す領域と認識する
ことができる。
【0214】図24中に示す領域3は、C1 >0、且つ
2 >0が成立する領域である。かかる条件は、コーナ
リングフォースが不足した状態で、車両がアンダーステ
ア傾向を示す場合に成立する。従って、領域3は、図2
5に示す如く、車両がアンダーステア、ドリフトアウト
傾向を示す領域と認識することができる。
【0215】更に、図24中に示す領域4は、C1
0、且つC2 >0が成立する領域である。かかる条件
は、十分なコーナリングフォースが確保されつつ、車両
がアンダーステア傾向を示す場合に成立する。従って、
領域4は、図25に示す如く、外乱等により車両が横方
向に移動した場合に形成される領域と認識することがで
きる。
【0216】このように、実ヨーレートγ、理想ヨーレ
ートγ* 、実横加速度Gy、および理想横加速度Gy*
を求めて、それらの大小関係を比較すれば、旋回時にお
ける車両の状態を精度良く検出することができる。本実
施例の制動力制御装置は、かかる手法により車両がアン
ダーステア傾向であるか否かを判別し、アンダーステア
傾向が表れている場合には、その傾向を助長する制動力
配分制御の実行を中止する点に特徴を有している。
【0217】図26は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する制御ルーチンの一
例のフローチャートを示す。図26に示すルーチンが起
動されると、先ずS240において、各車輪の車輪速
度、操舵角δ、横加速度Gy、及びヨーレートγが読み
込まれる。
【0218】次に、S241で、制動力配分制御が実行
されているか否かが判別される。制動力配分制御が実行
されていない場合は、以後の処理を進める利益がないた
め、速やかに今回のルーチンが終了される。一方、制動
力配分制御が実行されていると判別された場合は、S2
42において、上記の手法によりアンダーステア傾向が
表れているか否かが判別される。
【0219】その結果、アンダーステア傾向が表れてい
ないと判断された場合は、制動力配分制御を継続しても
弊害がないと判断され、その後今回のルーチンが終了さ
れる。一方、旋回挙動にアンダーステア傾向が表れてい
ると判別された場合は、S243において制動力配分制
御が終了される。制動力配分制御が終了されると、その
後、旋回内輪のホイルシリンダに供給されるブレーキ油
圧が上昇し、旋回内輪の発する制動力が増加する。この
ため、車両に対して作用する旋回モーメントが増加し、
アンダーステア傾向が抑制される。
【0220】このように、本実施例の制動力制御装置に
よれば、旋回走行中にアンダーステア傾向が生ずる場合
には、その傾向を助長する制動力配分制御の実行を中止
することができる。従って、本実施例の制動力制御装置
によれば、制動力配分制御が実行されることにより車両
の旋回特性が損なわれることがなく、優れた操縦性を実
現することができる。
【0221】ところで、制動力配分制御の実行中は、旋
回内輪側のホイルシリンダ内のブレーキ油圧が、旋回外
輪側のホイルシリンダ内のブレーキ油圧、すなわち、ブ
レーキ踏力に応じてマスタシリンダから供給されるマス
タシリンダ圧に比して低圧に抑制されている。従って、
制動力配分制御が中止された後、旋回内輪側のホイルシ
リンダをマスタシリンダに導通させると、旋回内輪側の
ブレーキ油圧に急激な上昇が生ずる。旋回中における車
両挙動を安定に維持するためには、かかるブレーキ油圧
の急上昇を抑制することが好ましい。
【0222】このため、本実施例においては、上記S2
43において制動力配分制御が終了された場合、その
後、S244において、所定時間T1 に渡り旋回内輪側
のホイルシリンダに連通する増圧用液圧切り換え弁がデ
ューティ制御された後、今回のルーチンが終了される。
【0223】図27は、本実施例の制動力制御装置によ
って実現される旋回内輪側のブレーキ油圧PWIの変化、
及び旋回外輪側のブレーキ油圧PWOの変化を示す。尚、
図27に示すブレーキ油圧PWI,PWOの変化は、時刻t
0 に制動操作が開始され、時刻t1 に制動力配分制御が
開始され、その後、時刻t2 に制動力配分制御が終了さ
れた場合に実現される。
【0224】時刻t0 〜時刻t1 の期間は、制動力配分
制御が実行されていないため、旋回内輪側のブレーキ油
圧PWIは、旋回外輪側のブレーキ油圧PWOと同様に昇圧
される。時刻t1 に制動力配分制御が開始されると、そ
の後、旋回外輪側のブレーキ油圧PWOがマスタシリンダ
圧PMCと同様に上昇するのに対して、旋回内輪側のブレ
ーキ油圧PWIは段階的な緩やかな上昇を示す。時刻t2
に制動力配分制御が終了されると、その後、増圧用液圧
切り換え弁のデューティ制御が開始されることにより、
旋回内輪側のブレーキ油圧PWIはマスタシリンダ圧PMC
に向けて緩やかに上昇する。
【0225】かかる処理によれば、制動力配分制御を終
了させることで車両のアンダーステア傾向を抑制するこ
とができると共に、その制御が終了される際に車両に生
ずる挙動変化を小さく抑制することができ、旋回制動時
において、常に車両挙動を安定に維持することが可能と
なる。
【0226】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が、上記S242の処理を実行す
ることにより前記請求項14記載のステアリング特性検
出手段が、また、上記S243の処理を実行することに
より前記請求項14記載の第2の制動力制御中止手段
が、それぞれ実現される。
【0227】次に、図28及び図29を参照して、本発
明の第14実施例について説明する。本実施例の制動力
制御装置は、上述した第13実施例のシステム構成と同
様の構成により、すなわち、上記図1に示すアンチロッ
ク制動力制御回路60に、ステアリングホイルの操舵角
δを検出する操舵角センサ、および、車両のヨーレート
γを検出するヨーレートセンサを接続することで実現す
ることができる。
【0228】本実施例の制動力制御装置は、上述した第
13実施例に比して、更に効率良くアンダーステア傾向
を抑制し得る点に特徴を有している。かかる効果は、ア
ンチロック制動力制御回路60が、上記図26に示すル
ーチンに代えて、図28に示すルーチンを実行すること
により実現される。尚、図28において、上記図26に
示すステップと同一の処理が実行されるステップには、
同一の符号を付してその説明を省略する。
【0229】図28に示すルーチンによれば、車両にア
ンダーステア傾向が表れて、S243で制動力配分制御
が終了された後、S250において、所定時間T1 にわ
たり、旋回内輪側のブレーキ油圧がデューティ制御され
ると共に、旋回外輪側のブレーキ油圧が保持された後
に、一連の処理が終了される。
【0230】図29は、かかる処理が実行された場合に
実現される旋回内輪側のブレーキ油圧PWIの変化、及び
旋回外輪側のブレーキ油圧PWOの変化を示す。尚、図2
9に示すブレーキ油圧PWI,PWOの変化は、時刻t0
制動操作が開始され、時刻t 1 に制動力配分制御が開始
され、その後、時刻t2 に制動力配分制御が終了された
場合に実現される。
【0231】旋回内輪側のブレーキ油圧PWI、および旋
回外輪側のブレーキ油圧PWOは、時刻t1 〜t2 の期間
中は、上述した第13実施例の場合と同様に昇圧され
る。時刻t2 に制動力配分制御が終了されると、その
後、旋回内輪側のブレーキ油圧P WIがデューティ増圧さ
れると共に、マスタシリンダ圧PMCが昇圧されているに
も関わらず、旋回外輪側のブレーキ油圧PWOは、時刻t
2 における油圧のまま保持される。
【0232】旋回外輪が発する制動力は、車両に対し
て、車両の旋回を妨げる方向のモーメントとして、すな
わち、アンダーステア傾向を助長する向きのモーメント
として作用する。従って、旋回外輪側のブレーキ油圧P
WOが、時刻t2 以降保持されると、所定時間T1 の間、
アンダーステア傾向を助長する向きのモーメントを成長
を抑えることができる。このため、本実施例の制動力制
御装置によれば、旋回内輪の制動力が増加されることと
相まって、制動力配分制御が終了された後、有効にアン
ダーステア傾向を抑制することができる。
【0233】次に、図30及び図31を参照して、本発
明の第15実施例について説明する。本実施例の制動力
制御装置は、上述した第13実施例及び第14実施例の
システム構成と同様の構成により実現することができ
る。本実施例の制動力制御装置は、上述した第14実施
例に比して、制動力制御が終了された後、通常制御に移
行する過程で優れた連続性を発揮し得る点に特徴を有し
ている。かかる機能は、アンチロック制動力制御回路6
0が、上記図28に示すルーチンに代えて、図30に示
すルーチンを実行することにより実現される。尚、図3
0において、上記図26に示すステップと同一のステッ
プには、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0234】図30に示すルーチンによれば、車両にア
ンダーステア傾向が表れて、S243で制動力配分制御
が終了された後、S251において、所定時間T1 にわ
たり、旋回内輪側のブレーキ油圧、及び、旋回外輪のブ
レーキ油圧がデューティ制御により昇圧された後、一連
の処理が終了される。
【0235】図31は、かかる処理が実行された場合に
実現される旋回内輪側のブレーキ油圧PWIの変化、及び
旋回外輪側のブレーキ油圧PWOの変化を示す。尚、図3
1に示すブレーキ油圧PWI,PWOの変化は、時刻t0
制動操作が開始され、時刻t 1 に制動力配分制御が開始
され、その後、時刻t2 に制動力配分制御が終了された
場合に実現される。
【0236】旋回内輪側のブレーキ油圧PWI、および旋
回外輪側のブレーキ油圧PWOは、時刻t1 〜t2 の期間
中は、上述した第14実施例の場合と同様に昇圧され
る。時刻t2 に制動力配分制御が終了されると、その
後、旋回内輪側のブレーキ油圧P WIがデューティ増圧さ
れると共に、旋回外輪側のブレーキ油圧PWOも、デュー
ティ増圧により緩やかに昇圧される。
【0237】制動力配分制御が終了された後、所定時間
1 が経過すると、ブレーキ経路が通常の状態に復帰さ
れ、旋回内輪側のホイルシリンダ、および、旋回外輪側
のホイルシリンダは、共にマスタシリンダと導通状態と
なる。かかる過渡期において優れた連続性を得るために
は、時刻T1 が経過する時点で、旋回内輪側のブレーキ
油圧、および、旋回外輪側のブレーキ油圧を、共にマス
タシリンダ圧PMCに近づけておくことが必要である。こ
れに対して、本実施例の如く、旋回内輪側のブレーキ油
圧、及び、旋回外輪側のブレーキ油圧を、共にデューテ
ィ増圧する構成によれば、制動力配分制御が終了された
後、有効にアンダーステア傾向を抑制しつつ、ブレーキ
経路の状態が切り替わる前後で優れた連続性を実現する
ことができる。従って、本実施例の制動力制御装置によ
れば、上記第14実施例に比して、制動力配分制御の終
了時における違和感を低減し得るという効果を得ること
ができる。
【0238】次に、図32乃至図34を参照して、本発
明の第16実施例について説明する。本実施例の制動力
制御装置は、上記図1に示すシステム構成を用いて実現
することができる。本実施例の制動力制御装置は、旋回
内輪のスリップ率と旋回外輪のスリップ率とを同等とす
るための制動力配分制御を実行する。かかる制動力配分
制御は、上述した第1乃至第5実施例と同様に、旋回外
輪の車輪速度VWOに基づいて旋回内輪の目標車輪速度V
WI * を演算し、かつ、旋回内輪の車輪速度VWIが、その
目標車輪速度VWI * に一致するように旋回内輪の制動力
を制御することにより実現される。
【0239】図32は、ブレーキ経路が正常である場合
の動作を説明するためのタイムチャートを示す。図32
(A)は、制動力配分制御の実行状態の変化を示す。同
図に示す如く、図32の例では、時刻t1 に制動力配分
制御が開始されている。図32(B)は、制動力配分制
御が開始された後、旋回内輪側のホイルシリンダに連通
するブレーキ経路で実現される制御モードの変化状態を
示す。ブレーキ経路が正常である場合、旋回外輪側のホ
イルシリンダには、制動力配分制御の実行中に適当なブ
レーキ油圧が導かれる。旋回内輪側のホイルシリンダに
連通するブレーキ経路では、旋回内輪側のブレーキ油圧
を、旋回外輪側のブレーキ圧に対応した適切な油圧とす
るために、図32(B)に示す如く、適当に増圧モー
ド、保持モード、および減圧モードが繰り返される。
【0240】図33は、本実施例のシステムに、旋回外
輪側のホイルシリンダのブレーキ油圧を昇圧できない失
陥が生じている場合の動作を説明するためのタイムチャ
ートを示す。図33(A)は、制動力配分制御の実行状
態の変化を示す。同図に示す如く、図33の例では、時
刻t1 に制動力配分制御が開始されている。
【0241】図33(B)は、制動力配分制御が開始さ
れた後、旋回内輪側のホイルシリンダに連通するブレー
キ経路で実現される制御モードの変化状態を示す。ブレ
ーキ経路に、旋回外輪側のブレーキ油圧を昇圧できない
失陥が生じている場合、制動力配分制御の実行中に旋回
外輪側のブレーキ油圧は増圧されない。このため、かか
る状況下では、制動操作が行われていても旋回外輪側の
車輪速度VWOは減速されない。旋回外輪側の車輪速度V
WOが減速されないとすれば、その車輪速度VWOを基に演
算される旋回内輪の目標車輪速度VWI * も減速されな
い。一方、旋回内輪側のホイルシリンダに連通するブレ
ーキ経路が正常であるとすれば、制動力配分制御の実行
中に旋回内輪側のホイルシリンダにはブレーキ油圧が導
かれる。この場合、旋回内輪側のホイルシリンダに連通
するブレーキ経路では、旋回内輪の車輪速度VWIを、そ
の目標車輪速度VWI * に一致させるべく、図33(B)
に示すように、時刻t1 の後継続的に減圧モードとされ
る。
【0242】上記の如く、旋回外輪側のホイルシリンダ
に連通するブレーキ経路が失陥している場合に制動力配
分制御が実行されると、旋回内輪側のホイルシリンダに
連通するブレーキ経路が正常であっても、旋回内輪側の
ブレーキ油圧を昇圧することができない場合がある。従
って、左右輪の一方のブレーキ装置に失陥が生じた際
に、他方のブレーキ装置を有効に機能させるためには、
かかる失陥の発生時には制動力配分制御を中止すること
が望ましい。
【0243】上述の如く、旋回外輪側のホイルシリンダ
に連通するブレーキ経路に、ブレーキ油圧を昇圧するこ
とができない失陥が生じている場合は、制動力配分制御
が開始された後、旋回内輪側のホイルシリンダに連通す
るブレーキ経路が継続的に減圧モードとされる。一方、
制動力配分制御が適正に実行されている場合は、上述の
如く、減圧モードが継続的に実行されることはない。こ
のため、本実施例のシステムにおいては、制動力配分制
御が開始された後、旋回内輪側のブレーキ経路で、減圧
モードが所定時間T1 だけ継続された場合、制動力配分
制御を中止することとした。
【0244】図34は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する制御ルーチンの一
例のフローチャートを示す。図34に示すルーチンが起
動されると、先ずS260において、制動力配分制御が
実行されているか否かが判別される。制動力配分制御の
実行中ではないと判別された場合は、以後の処理を進め
る実益がないため、速やかに今回のルーチンが終了され
る。一方、制動力配分制御の実行中であると判別された
場合は、次にS261の処理が実行される。
【0245】S261では、旋回内輪側のホイルシリン
ダに連通するブレーキ経路の制御モードの監視が行われ
る。本ステップS261において、旋回内輪側のホイル
シリンダに連通するブレーキ経路が、増圧モード、保持
モード、又は減圧モードの何れとされているかが検出さ
れる。
【0246】次に、S262では、減圧モードの継続時
間tが、所定時間T1 を超えているか否かが判別され
る。その結果、t>T1 が不成立である場合は、制動力
配分制御が正常に実行されていると判断され、S263
で制御を継続させる旨の決定がなされた後、今回のルー
チンが終了される。一方、上記S262で、t>T1
成立すると判別された場合は、制動力配分制御が正常に
実行されていないと判断され、S264でブレーキ経路
の異常判定がなされ、次いでS265で制動力配分制御
が終了された後、今回のルーチンが終了される。
【0247】上記の処理によれば、ブレーキ経路に失陥
が生じて、旋回外輪側のブレーキ油圧を昇圧することが
できない場合において、確実に、旋回内輪側のブレーキ
油圧を昇圧することができる。従って、本実施例の制動
力制御装置によれば、制動力配分制御を実行する機能
と、ブレーキ経路の失陥に対するフェールセーフとを擁
立させることができる。
【0248】ところで、図34に示すルーチンは、ブレ
ーキ経路の異常が判定された場合、S265の後即座に
終了されるが、S265の後に、上記図26中S244
と同様の処理、すなわち、旋回内輪側のブレーキ油圧を
デュティ増圧する制御を実行させることとしてもよい。
かかる処理を加えた場合、制動力配分制御が終了される
前後で車両に生ずる挙動変化を抑制することができ、良
好な操縦安定性を得ることができる。
【0249】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が、上記S262,S264,S
265の処理を実行することにより、前記した第1の制
動力制御中止手段が実現されている。次に、図35乃至
図38を参照して、本発明の第17実施例について説明
する。本実施例の制動力制御装置は、上記図1に示すシ
ステム構成から、加速度センサ62を除いた構成により
実現することができる。
【0250】図35中に一点鎖線で示す曲線は、旋回
外輪の車輪速度がVWOである場合に、旋回内輪のスリッ
プ率と旋回外輪のスリップ率とを同一とするための旋回
内輪の目標車輪速度VWI * を示す。かかる目標車輪速度
WI * は、上記(11)式に示す如く、VWI * =√(V
WO 2 −2d・Gy)と表すことができる。従って、図3
5に示す如く、その値はGyが増加するに連れて減少す
る。
【0251】図35中に実線で示す直線は、旋回外輪
の車輪速度がVWOである場合に、Gyが所定値K/2d
を超える領域で、旋回外輪に、旋回内輪に比して大きな
スリップ率を付与するための旋回内輪の目標車輪速度V
WI * を示す。かかる目標車輪速度VWI * は、上記(1
8)式に示す如く、VWI * =√(VWO 2 −K)と表すこ
とができる。従って、図35に示す如く、その値はGy
の値に関わらず一定である。
【0252】図35中に曲線で示す目標車輪速度VWI
* を用いる制動力配分制御では、横加速度Gyが目標車
輪速度VWI * の演算に用いられる。このため、かかる制
御を実行するためには、正確に横加速度Gyを検出する
必要がある。一方、図35中に直線で示す目標車輪速
度VWI * を用いる制動力配分制御では、横加速度Gyが
目標車輪速度VWI * の演算には用いられない。このた
め、上述した第3実施例の如く、かかる制御を実行する
制動力制御装置は、横加速度センサ62を用いることな
く実現することができる。
【0253】上述した第3実施例は、VWO 2 −VWI 2
Kが成立する領域で、旋回内輪の車輪速度を、VWI *
√(VWO 2 −K)に一致させるように、制動力配分制御
を実行する。旋回内輪のスリップ率と旋回外輪のスリッ
プ率とが同一であれば、VWO 2 −VWI 2 =2d・Gyな
る関係が成立する(上記(11)式参照)。従って、第
3実施例の制御開始条件“VWO 2 −VWI 2 >K”は、
“2d・Gy>K”、すなわち、“Gy>K/2d”で
近似することができる。従って、上述した第3実施例に
よれば、Gy>K/2dが成立する領域で、制動力配分
制御が実行されることになる。
【0254】ところで、車両に作用する横加速度Gyが
K/2dである場合は、目標車輪速度VWI * を、VWI *
=√(VWO 2 −2d・Gy)なる演算式に従って求めて
も、VWI * =√(VWO 2 −K)なる演算式に従って求め
ても、図35に示す如く同じ演算結果が得られる。この
点で、目標車輪速度VWI * をVWI * =√(VWO 2 −K)
なる演算式に従って求めることは、車両に作用する横加
速度Gyが常にK/2dであると仮定して、旋回内輪の
スリップ率と旋回外輪のスリップ率とを同一とするため
の目標車輪速度VWI * (図35中に曲線で示す
WI * )を演算しているのと同様である。
【0255】旋回走行中に、旋回内輪のグリップ能力
と、旋回外輪のグリップ能力とを有効に活用するために
は、両者のスリップ率を均一とすることが適切である。
かかる要求を満たす意味では、加速度センサ62を用い
て正確に横加速度Gyを検出し、旋回内輪の目標車輪速
度VWI * を、VWI * =√(VWO 2 −2d・Gy)なる演
算式に従って求めてることが好ましい。従って、上記第
3実施例の手法により制動力配分制御を実行する場合
は、制動力配分制御の実行中に、旋回内輪のスリップ率
と、旋回外輪のスリップ率との間に大きな偏差を生じさ
せないことが必要である。
【0256】上述の如く、図35中にで示す曲線は、
旋回内輪のスリップ率と旋回外輪のスリップ率とを同一
とするための旋回内輪の目標車輪速度VWI * である。従
って、制動時における旋回内輪の車輪速度VWIが、かか
る目標車輪速度VWI * に比して高速であるとすれば、旋
回内輪のスリップ率が、旋回外輪のスリップ率に比して
少量に抑制されていることになる。つまり、上記第3実
施例によって制動力配分制御が実行される領域(Gy>
K/2dが成立する領域)では、常に、旋回内輪のスリ
ップ率が、旋回外輪のスリップ率に比して少量となるこ
とになる。
【0257】図36中に一点鎖線で示す直線は、VWI
* =√(VWO 2 −2d・Gy)なる演算式により算出さ
れた目標車輪速度VWI * を基に制動力配分制御が実行さ
れた場合に、旋回内輪側のホイルシリンダで実現される
減圧制御量を模式的に表した直線を示す。以下、この直
線を理想減圧制御線と、また、その直線上の各点の減
圧制御量座標値を理想減圧制御量と称す。
【0258】図36中に実線で示す直線は、VWI *
√(VWO 2 −K)なる演算式により算出された目標車輪
速度VWI * を基に制動力配分制御が実行された場合に、
旋回内輪側のホイルシリンダで実現される減圧制御量を
模式的に表した直線を示す。以下、この直線を近似減圧
制御線と、また、その直線上の各点の減圧制御量座標
値を近似減圧制御量と称す。
【0259】上述の如く、VWI * =√(VWO 2 −K)に
より求めた目標車輪速度VWI * を用いて制動力配分制御
が実行された場合、Gy>K/2dの領域では、旋回内
輪のスリップ率が旋回外輪のスリップ率に比して少量と
される。かかる状況は、VWI * =√(VWO 2 −2d・G
y)により求めた目標車輪速度VWI * を用いて制動力配
分制御が実行された場合に比して、旋回内輪が高速で回
転することにより、すなわち、旋回内輪のホイルシリン
ダに多量の減圧制御量が付与されることにより実現され
る。このため、理想減圧制御線と、近似減圧制御線
との間には、図36に示す如く、Gy>K/2dの領域
で、理想減圧制御線が、近似減圧制御線の下方に位
置する関係が成立する。
【0260】上記第3実施例の如く、VWI * =√(VWO
2 −K)により求めた目標車輪速度VWI * を用いて制動
力配分制御を実行する場合において、旋回内輪のスリッ
プ率と、旋回外輪のスリップ率との間に不当に大きな偏
差を生じさせないためには、Gy>K・2dが成立する
領域において、Gyに対する近似減圧制御量と、理想減
圧制御量とが大きく離間していないことが好ましい。か
かる要求を満たすためには、K/2dを大きな値とする
ことが適切である。
【0261】しかしながら、上記第3実施例において
は、Gy>K/2dが成立する領域が制動力配分制御の
実行領域として設定されている。従って、K/2dを大
きな値とすると、制動力配分制御を優れた応答性の下に
開始することができなくなる。このように、上述した第
3実施例の制動力制御装置は、加速度センサ62を用い
ることなくシステムを実現し得るという利益は有してい
るものの、優れた応答性を確保しつつ、有効な制動力配
分制御を行うことが困難であるという課題を有するもの
であった。
【0262】本実施例の制動力制御装置は、図37中に
実線で示す減圧制御線を実現することにより、上記第
3実施例の装置が備える課題を解決する点に特徴を有し
ている。すなわち、本実施例においては、横加速度Gy
が所定値K1 を超える領域で、制動力配分制御が実行さ
れる。所定値K1 は、上記図36に示すK/2dに比し
て小さい定数である。従って、本実施例の装置によれ
ば、上述した第3実施例に比して優れた応答性の下に制
動力配分制御を開始させることができる。また、本実施
例においては、目標車輪速度VWI * がVWI * =√(VWO
2 −2d・K2 )なる演算式により演算される。定数K
2 は、上記36に示すK/2dと同等の値である。従っ
て、本実施例の装置によれば、理想減圧制御量と減圧制
御量との偏差を、上述した第3実施例における理想減圧
制御量と近似減圧制御量との偏差と同等に抑制すること
ができる。このため、本実施例の構成によれば、加速度
センサ62を用いることなく、優れた応答性を確保しつ
つ、有効な制動力配分制御を実現し得る制動力制御装置
を構成することができる。
【0263】図38は、上記の機能を実現すべくアンチ
ロック制動力制御回路60が実行する制御ルーチンの一
例のフローチャートを示す。図38のルーチンが起動さ
れると、先ずS270において、各車輪の車輪速度が読
み込まれる。次に、S271では、横加速度Gyの推定
が行われる。上述の如く、横加速度Gyは、旋回外輪の
車輪速度VWOと旋回内輪の車輪速度VWIl とを用いて、
Gy=(VWO 2 −VWI 2 )/2dと表すことができる
(上記(12)式、及びS191参照)。本ステップで
は、上記関係式に、左右前輪の車輪速度VWfr,Wfl
代入することで横加速度Gyが演算される。
【0264】尚、本実施例においては、車両が時計回り
方向に旋回している場合にGyの符号が正、車両が反時
計回り方向に旋回している場合にGyの符号が負となる
ように、旋回外輪側の車輪速度VWOに左前輪の車輪速度
Wfl が、旋回内輪側の車輪速度VWIに右前輪の車輪速
度VWfr 2 が、それぞれ代入される。このようにして推
定された横加速度Gyの値は、車両が非減速状態であ
り、左右前輪のスリップ率が同等である場合等において
は、精度良く実際の横加速度Gyと一致する。
【0265】横加速度Gyの推定が終了したら、次にS
272においてブレーキスイッチ67がオン状態である
か否かが判別される。その結果、ブレーキスイッチ67
がオン状態ではないと判別された場合は、速やかに今回
のルーチンが終了される。一方、ブレーキスイッチ67
がオン状態であると判別された場合は、次にS273の
処理が実行される。
【0266】S273では、横加速度Gyの推定値の符
号に基づいて、旋回内輪および旋回外輪が特定される。
本実施例においては、Gy>0が成立する場合は、左前
輪が旋回外輪に、また、Gy<0が成立する場合は、右
前輪が旋回外輪に、それぞれ決定される。
【0267】次に、S274では、横加速度Gyの絶対
値|Gy|が、所定値K1 に比して大きいか否か、すな
わち、車両に対して制動力配分制御を開始すべき横加速
度Gyが作用しているか否かが判別される。その結果、
|Gy|>K1 が不成立であると判別される場合は、制
動力配分制御を開始する必要がないと判断され、その
後、速やかに今回のルーチンが終了される。一方、|G
y|>K1 が成立すると判別される場合は、S275に
おいて、VWI * =√(VWO 2 −2d・K2 );(K2
1 )なる演算式に従って目標車輪速度VWI * が演算さ
れる。
【0268】目標車輪速度VWI * が演算されたら、次
に、S276において、旋回内輪の車輪速度VWIが、目
標車輪速度VWI * に比して小さいか否かが判別される。
その結果、VWI<VWI * が不成立である場合は、旋回内
輪側のブレーキ油圧を減圧する必要はないと判断され、
その後今回のルーチンが終了される。一方、VWI<VWI
* が成立すると判別される場合は、旋回内輪側のブレー
キ油圧を減圧する必要があると判断され、S277で制
動力配分制御が開始され。以後、S278において、旋
回内輪の車輪速度VWIが、その目標車輪速度VWI * と一
致するように、旋回内輪側の制動力が制御された後、今
回のルーチンが終了される。
【0269】上記の処理によれば、車両が旋回制動状態
に移行した後、優れた応答性の下に制動力配分制御を開
始させることができると共に、車両に対して大きな横加
速度Gyが作用した場合においても、旋回内輪のスリッ
プ率と、旋回外輪のスリップ率との間に大きな偏差を生
じさせることなく、適正な制動力配分比を維持すること
ができる。このように、本実施例の制動力制御装置によ
れば、加速度センサ62を用いていないにも関わらず、
有効な制動力配分制御を実行することができる。
【0270】ところで、本実施例の制動力制御装置にお
いて実現される減圧制御量は、図37に示す如く、K1
<Gy≦K2 の領域では、理想減圧制御量に比して小さ
な値に抑制される。この場合、旋回内輪には、旋回外輪
のスリップ率に比して大きなスリップ率が付与され、旋
回内輪のグリップ能力と旋回外輪のグリップ能力とが均
衡しない状態が形成される。しかしながら、K1 <Gy
≦K2 が成立する低横加速度旋回時には、車輪のグリッ
プ能力には十分に余裕があるため、かかるスリップ率の
不均衡が問題となることはない。
【0271】また、本実施例の制動力制御装置において
実現される減圧制御量は、図37に示す如く、K2 <G
yの領域では、理想減圧制御量に比して大きな値とな
る。この場合、上述の如く、旋回外輪に、旋回内輪のス
リップ率に比して大きなスリップ率が付与されて、旋回
内輪のグリップ能力と旋回外輪のグリップ能力とが均衡
しない状態が形成される。しかしながら、かかるスリッ
プ率の不均衡は、車両に作用する非旋回モーメントを増
大させるうえで有効である。K2 <Gyが成立する高横
加速度旋回時に、安定した旋回挙動を得るためには、車
両にアンダーステア特性を付与することが好ましい。こ
の点、高横加速度旋回時に非旋回モーメントを発生させ
易い本実施例の制動力制御装置は、高横加速度旋回時
に、安定した車両挙動を得る上で優れた効果を有してい
ることになる。
【0272】尚、上記の実施例においては、アンチロッ
ク制動力制御回路60が上記S270の処理を実行する
ことにより前記請求項16記載の外輪車輪速度検出手
段、及び内輪車輪速度検出手段が、上記S271の処理
を実行することにより前記請求項16記載の横加速度推
定手段が、上記S274の処理を実行することにより前
記請求項16記載の横加速度判別手段が、上記S275
の処理を実行することにより前記請求項16記載の目標
旋回内側車輪速度演算手段が、また、上記S277及び
S278の処理を実行することにより前記請求項16記
載の制動力制御手段が、それぞれ実現されている。ま
た、上記の実施例においては、所定値K1 が前記請求項
16記載の第1の設定値に、所定値K2 が上記請求項1
6記載の第2の設定値に、それぞれ相当している。
【0273】次に、図39を参照して、本発明の第18
実施例について説明する。本実施例の制動力制御装置
は、上記図1に示すシステム構成を用いて実現すること
ができる。上述した各実施例では、旋回内輪の目標車輪
速度VWI * を、VWI * =√(V WO 2 −2d・Gy)、又
は、VWI * =√(VWO 2 −K)等の演算式により求める
こととしている(図5、図6、図18、図22、図38
等参照)。
【0274】一般に車載用電子制御ユニットに用いられ
るコンピュータでは整数型の演算が行われる。例えば、
さほど精度の要求されないデータは1バイトデータ(0
0〜FF)として、比較的高い精度の要求されるデータ
は2バイトデータ(0000〜FFFF)として、整数
型の演算により処理される。
【0275】上述した目標車輪速度VWI * の演算式中に
は、旋回外輪の車輪速度VWOの二乗項が含まれている。
目標車輪速度VWI * を演算するにあたり、旋回外輪の車
輪速度VWOには高い精度が要求されるため、VWOは2バ
イトデータとする必要がある。このため、その二乗項
“VWO 2 ”は、4バイトデータ(00000000〜F
FFFFFFF)となる。4バイトデータを処理する場
合、全てのデータが2バイト以下のデータである場合に
比して、多大なメモリ容量が必要とされると共に、長い
演算時間が必要となる。このため、車載用コンピュータ
での処理を想定した場合、演算式中に二乗項が含まれて
いないことが望ましい。
【0276】更に、上述した目標車輪速度VWI * の演算
式中には、ルートの演算が含まれている。車載用コンピ
ュータでルートの演算を行うためには、四則演算を組み
合わせた多段階の演算を行うことが必要である。このた
め、ルート演算を含む演算を実行するためには、四則演
算のみを行えば足りる場合に比して多大なメモリ容量が
必要となり、また、長い演算時間が必要となることに加
え、長い制御プログラムが必要となる。このため、車載
用コンピュータでの処理を想定した場合、実行すべき演
算式は四則演算のみで構成されていることが望ましい。
【0277】本実施例の制動力制御装置は、かかる観点
より、目標車輪速度VWI * を、二乗項を含まず、かつ、
四則演算のみで構成される演算式により近似的に求める
点に特徴を有している。以下、本実施例において用いら
れる近似手法について説明する。
【0278】上記(11)式に示す目標車輪速度VWI *
=√(VWO 2 −2d・Gy)の関係は、次式の如く変形
することができる。 VWO 2 −VWI *2=2d・Gy ・・・(37) 左辺を因数分解することにより、上記(37)式は次式
の如く変形することができる。
【0279】 (VWO−VWI * )・(VWO+VWI * )=2d・Gy ・・・(38) ところで、車速センサ61により検出される車体速度V
B は、旋回外輪の車輪速度VWOと旋回内輪の車輪速度V
WIとの平均値と近似することができる。また、制動力配
分制御の実行中は、旋回内輪の車輪速度VWIは、精度良
くその目標車輪速度VWI * に一致していると考えられ
る。従って、上記(38)式中、(VWO+VWI * )は、
(VWO+VWI)=2・VB と近似することができる。か
かる近似手法によれば、上記(38)は次式の如く表す
ことができる。
【0280】 VWO−VWI * =d・Gy/VB ・・・(39) 従って、目標車輪速度VWI * は、二乗項を含まず、か
つ、四則演算のみで構成された演算式により、次式の如
く表すことができる。 VWI * =VWO−d・Gy/VB ・・・(40) 上記の手法には、旋回内輪の車輪速度VWIと、その目標
車輪速度VWI * とが同一であるとする近似手法が含まれ
ている。従って、例えば、車輪速度VWIが変化する過程
等では、両者間に偏差が生じて、近似精度が悪化する事
態が想定される。しかしながら、目標車輪速度VWI *
演算は、アンチロック制動力制御回路60により数msec
毎に実行される。かかる短時間では、車輪速度VWI、目
標車輪速度VWI * に大きな変化は生じないため、上記の
近似手法により演算された目標車輪速度VWI * に、実用
上問題となる誤差が重畳されることはない。このため、
本実施例の制動力制御装置によれば、実質的な弊害を伴
うことなく、メモリの小容量化、処理の高速化を実現す
ることができる。
【0281】上記の機能は、アンチロック制動力制御回
路60が、図39に示すルーチンを実行することにより
実現される。尚、図39において、上記図5中に示すス
テップと同一のステップには、括弧書きにより同一の符
号を付して、その説明を省略又は簡略する。
【0282】図39に示すルーチンが起動されると、S
280で車輪速センサ63〜66の出力信号、及び、加
速度センサ62の出力信号が読み込まれる。次にS28
1で車速センサ62より、車体速度VB が読み込まれ
る。次いで、S282でGy>0が成立するか否かが判
別される。その結果、Gy>0が成立する場合はS28
3で左輪が外輪とされ、一方、Gy>0が不成立である
場合はS284で右輪が外輪とされる。
【0283】上記の処理が終了したら、次に、S285
において、上記(40)式を用いて目標車輪速度VWI *
=VWO−d・Gy/VB が演算される。本ステップS2
85の演算は、二乗項を含まず、単純な四則演算のみで
構成された演算式により行われる。
【0284】目標車輪速度VWI * が演算されたら、次
に、S286においてVWI * >VWIが成立するか否かが
判別される。その結果、VWI * >VWIが成立する場合
は、S287で旋回内輪のブレーキ油圧を減圧するため
の処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。
一方、S286でVWI * >VWIが不成立であると判別さ
れた場合は、S288においてVWI * <VWIが成立する
か否かが判別される。その結果、VWI * <VWIが成立す
る場合はS289で旋回内輪のブレーキ油圧を増圧する
ための処理が実行された後、今回のルーチンが終了され
る。更に、S288でVWI * <VWIが不成立であると判
別された場合は、S290において旋回内輪のブレーキ
油圧を保持するための処理が実行された後、今回のルー
チンが終了される。
【0285】ところで、上述したルーチンにおいては、
車体速度VB を車速センサ61を用いて検出することと
しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、車両の制動力制御装置の分野では、車速セン
サ61を用いることなく、車輪速センサ63〜66の検
出値に基づいて精度良く車体速度を推定する手法が公知
である。アンチロック制動力制御回路60が、かかる公
知手法を用いて推定車体速度VSOを算出する場合に
は、上記(40)式中に示す車体速度VB に代えて、か
かる推定車体速度VSOを用いて制動力配分制御を実行
することとしても良い。
【0286】尚、上述した実施例においては、アンチロ
ック制動力制御回路60が、上記S285の処理を実行
することにより、前記請求項17記載の目標旋回内側車
輪速度演算手段が実現されている。
【0287】
【発明の効果】上述の如く、上記請求項1によれば、車
体速度、旋回外側車輪速度、横加速度に基づいて左右輪
が同時にロックするように旋回時の内側車輪の目標車輪
速度を演算し、この演算により得られた目標車輪速度に
なるように旋回内側車輪の制動力を制御することによ
り、車体速度及び横加速度に応じた旋回内側車輪の目標
車輪速度を演算し、この目標車輪速度となるように旋回
内側車輪の制動力を制御する。従って、各車輪のスリッ
プ率が同じになるようにブレーキ圧が制御され旋回制動
時の走行安定性を高めるとともに制動性能をより高めら
れる制動距離を短縮することができる。
【0288】又、請求項2によれば、目標旋回内側車輪
速度をVWI,車体速度をVB ,横加速度をGy,旋回外
側車輪速度をVWOとした場合、次式により VWI={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・G
y/2VB )}・VWO 目標旋回内側車輪速度VWIを演算することにより、車両
の自転のヨーレートと公転のヨーレートとが一致するよ
うにして旋回制動時の内輪側と外輪側とが同時にロック
するように各車輪の制動力を制御する。
【0289】又、請求項3によれば、次式により VWI=(VWO 2 −2dGy)1/2 目標旋回内側車輪速度VWIを演算して旋回制動時の内輪
側と外輪側とのスリップ率の偏差がゼロになるように各
車輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外輪側と
が同時にロックする。
【0290】又、請求項4によれば、横加速度Gyを検
出することなく旋回制動時にVWO 2−VWI 2 >Kと判定
されたときVWO 2 −VWI 2 =Kとなるように旋回内側車
輪の制動力を制御して旋回制動時の内輪側と外輪側との
スリップ率の偏差がゼロになるように各車輪の制動力を
制御して旋回制動時の内輪側と外輪側とが同時にロック
する。
【0291】又、請求項5によれば、車体速度、旋回内
側車輪速度、横加速度に基づいてアンチスピンモーメン
トを発生させるための目標旋回外側車輪速度を演算し、
旋回外側車輪速度が目標旋回外側車輪速度となるように
外側車輪に制動力を付与することにより、旋回非制動時
に最適なアンチスピンモーメントを発生させて走行安定
性を保つことができる。
【0292】又、請求項6によれば、旋回非制動時にV
WO 2 −VWI 2 >Kと判定されたときVWO 2 −VWI 2 =K
となるように旋回外側車輪の制動力を付与することによ
り、横加速度Gyを検出することなく旋回非制動時に最
適なアンチスピンモーメントを発生させて走行安定性を
保つことができる。
【0293】又、請求項7によれば、車輪速度から推定
横加速度を演算し、横加速度検出手段により検出された
横加速度と推定横加速度とを比較することにより横加速
度検出手段の異常発生の有無を判定する。そして、横加
速度検出手段が異常であると判定されたとき、車輪速度
検出手段により検出された旋回外側車輪速度に基づいて
旋回時の内側車輪の目標車輪速度を演算し、旋回内側車
輪速度が目標旋回内側車輪速度演算手段により演算され
た目標車輪速度になるように旋回内側車輪の制動力を制
御することにより、横加速度検出手段が故障した場合で
も旋回制動時の走行安定性を保つことができる。
【0294】又、請求項8によれば、旋回制動時、車体
速度、旋回前側外輪車輪速度、横加速度に基づいて左右
輪が同時にロックするように前側内輪の目標車輪速度を
演算して、旋回制動時、旋回前側外輪車輪速度に基づい
て旋回後側外輪の目標車輪速度を演算し、且つ、旋回前
側外輪車輪速度に基づいて旋回後側内輪及び旋回後側外
輪の目標車輪速度を演算する。そして、各車輪速度と各
目標車輪速度とを比較し、各車輪の車輪速度が目標車輪
速度となるようにブレーキ機構へ供給されるブレーキ圧
を調整して各車輪が同時にロックするように各車輪への
制動力を配分する。又、旋回時、外輪が走行する路面が
内輪が走行する路面より低摩擦路(低μ路)であること
が検出されたとき、旋回後側内輪及び旋回後側外輪への
ブレーキ圧増圧、保持、減圧指令を比較し、ブレーキ圧
をより低圧側とする指令を選択して旋回後側内輪及び旋
回後側外輪へのブレーキ圧を制御するため、外輪側が低
μ路の場合、後輪の旋回外側の車輪へのブレーキ圧が先
に減圧されると、車両の旋回を助長するモーメントが発
生してオーバステアとなるが、このような場合、後輪が
同一車輪速度に制御されて旋回内輪と旋回外輪と制動力
差による旋回方向のモーメントの発生を防止することが
できる。
【0295】請求項9記載の発明によれば、旋回状態の
判別に用いられるしきい値を車速に応じて変更すること
により、車両が旋回を開始した後、車速に応じて異なる
タイミングで旋回内輪の制動力制御を開始させることが
できる。従って、本発明に係る制動力制御装置によれ
ば、低横加速度を伴う旋回走行がなされた際に不必要に
制動力制御が実行されるのを防止しつつ、高速レーンチ
ェンジ等がなされた際に、優れた応答性の基に所望の制
動力制御を実行することができる。
【0296】請求項10記載の発明によれば、制動時に
おける後輪の目標車輪速度を、前輪の目標車輪速度に比
して小さくすることにより、後輪の制動能力を有効に活
用することができる。従って、本発明に係る制動力制御
装置によれば、後輪のロックを防止するために、常に後
輪の目標車輪速度が前輪の目標車輪速度に比して高く設
定される装置に比して、大きな制動力を発生させること
ができる。
【0297】請求項11記載の発明によれば、全ての車
輪が適正なグリップ状態を維持できる状況下では、後輪
の目標車輪速度が前輪の目標車輪速度に比して大きく設
定される。従って、かかる状況下では、後輪の制動能力
が有効に活用され、車両において高い制動能力を実現す
ることができる。また、何れかの車輪がロック状態に移
行する可能性があると判断される状況下では、後輪の目
標車輪速度が前輪の目標車輪速度に比して大きくされ
る。このため、車輪のロックは、常に、後輪に先立って
前輪側で発生する。従って、本発明に係る制動力制御装
置によれば、高い制動能力の確保と、限界付近での車両
挙動の安定化とを、両立させることができる。
【0298】請求項12記載の発明によれば、旋回内輪
の目標車輪速度の演算の基礎となる車輪速度が不安定で
ある場合には、制動力の制御を禁止することができる。
従って、本発明に係る制動力制御装置によれば、悪路走
行中等において、旋回内輪の制動力が不適切に制御され
る不都合を回避することができる。
【0299】請求項13記載の発明によれば、旋回内輪
の制動力を低下させるための制御の継続時間に基づい
て、システムに異常が生じていると判断される場合に、
制動力の制御を中止することができる。従って、本発明
に係る制動力制御装置によれば、システムの異常時に、
旋回内輪の制動力が不適切に制御される不都合を回避す
ることができる。
【0300】請求項14記載の発明によれば、車両にお
いてアンダステア特性が検出された場合には、そのアン
ダステア特性を助長する制動力の制御が中止される。従
って、本発明に係る制動力制御装置によれば、旋回内輪
の制動力が制御されることにより、アンダーステア特性
が助長されるという不都合を回避することができる。
【0301】請求項15記載の発明によれば、車両にお
いてアンダーステア特性が検出された場合に、旋回内輪
の制動力制御を中止して、その制動力を上昇させること
ができると共に、旋回外輪の制動力を制御して、その制
動力の更なる上昇を抑制することができる。従って、本
発明に係る制動力制御装置によれば、旋回内輪の制動力
と、旋回外輪の制動力との偏差を速やかに減少させるこ
とにより、車両のアンダーステア特性を、速やかに、か
つ、確実に抑制することができる。
【0302】請求項16記載の発明によれば、第1の設
定値を、制動力制御の実行判定に用いるしきい値とする
ことで、制動力制御の実行領域を自由に設定することが
可能とされている。また、第1の設定値に比して大きな
第2の設定値を、車両に作用する横加速度と仮定して旋
回内輪の目標車輪速度を演算することにより、広い領域
に渡って、旋回内輪のスリップ状態と、旋回外輪のスリ
ップ状態とが大きく異ならない制動状態を実現すること
が可能とされている。このように、本発明に係る制動力
制御装置によれば、正確な横加速度を検出する機構を設
けることなく、自由な領域で、旋回内輪のスリップ率と
旋回外輪のスリップ率とを整合させるための制御を実行
することができる。
【0303】請求項17記載の発明によれば、旋回内輪
の目標車輪速度VWI * を、2乗演算、ルート演算等の複
雑な演算則を用いることなく、4則演算のみで求めるこ
とができる。このため、本発明に係る制動力制御装置に
よれば、少量のメモリ容量で、簡単なプログラムを用い
て、かつ、短時間で旋回内輪の目標車輪速度VWI * を求
めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる制動力制御装置の一実施例の概略
構成図である。
【図2】本発明の第1実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図3】車両の旋回走行時に作用する車体の速度関係を
示す図である。
【図4】車両の旋回走行時に作用する各車輪毎の車輪速
度を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図6】本発明の第3実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図7】本発明の第4実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図8】本発明の第5実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図9】本発明の第6実施例のアンチロック制動力制御
回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロー
チャートである。
【図10】本発明の第7実施例のアンチロック制動力制
御回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロ
ーチャートである。
【図11】本発明の第8実施例のアンチロック制動力制
御回路が実行する制動力制御処理を説明するためのフロ
ーチャートである。
【図12】図11の処理に続いて実行される制動力制御
処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】図12の処理に続いて実行される制動力制御
処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】本実施例の第9実施例において用いられるマ
ップの一例である。
【図15】本実施例の第9実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図16】プロポーショニングバルブを用いることで実
現される制動力配分特性を説明するための図である。
【図17】本発明の第10実施例により実現される制動
力配分特性を説明するための図である。
【図18】本実施例の第10実施例において実行される
制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図19】本発明の第11実施例により実現される制動
力配分特性を説明するための図である。
【図20】本発明の第11実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図21】目標車輪速度VWI * と車輪速度VWIとの偏差
ΔVに、車輪速度が不安定である状況下で生ずる変動の
様子を表す図である。
【図22】本発明の第12実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図23】本発明の第12実施例の動作を説明するため
のタイムチャートである。
【図24】本発明の第13実施例においてステアリング
特性を検出する手法を説明するための特性値座標であ
る。
【図25】図24に示す特性値座標内の各領域と車両状
態との対応を示す図である。
【図26】本発明の第13実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図27】本発明の第13実施例によって実現される旋
回内外輪のブレーキ油圧の変動状態を示す図である。
【図28】本発明の第14実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図29】本発明の第14実施例によって実現される旋
回内外輪のブレーキ油圧の変動状態を示す図である。
【図30】本発明の第15実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図31】本発明の第15実施例によって実現される旋
回内外輪のブレーキ油圧の変動状態を示す図である。
【図32】本発明の第16実施例の動作(ブレーキ経路
が正常である場合の動作)を説明するためのタイムチャ
ートである。
【図33】本発明の第16実施例の動作(ブレーキ経路
に失陥が生じている場合の動作)を説明するためのタイ
ムチャートである。
【図34】本発明の第16実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図35】横加速度Gyに基づいて演算される目標車輪
速度VWI * と横加速度Gyとの関係、および、横加速
度Gyを用いずに演算される目標車輪速度VWI * と横加
速度Gyとの関係を示す図である。
【図36】理想減圧制御量と横加速度Gyとの関係、
および、近似減圧制御量と横加速度Gyとの関係を示
す図である。
【図37】本発明の第17実施例において実現される減
圧制御量と横加速度Gyとの関係を表す図である。
【図38】本発明の第17実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図39】本発明の第18実施例において実行される制
御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル 3 マスタシリンダ 4,5 リザーバ 6〜9 ホイールシリンダ 10 第1ブレーキ管路 11 第2ブレーキ管路 12〜15 増圧用液圧切換弁 16〜19 減圧用液圧切換弁 20〜27 供給用管路 28a〜28d 供給系路 29〜34 還流用管路 54,55 吸引ポンプ 60 アンチロック制動力制御回路 61 車速センサ 62 加速度センサ 63〜66 車輪速センサ 67 ブレーキスイッチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原 雅宏 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 千葉 正 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−100766(JP,A) 特開 昭62−125944(JP,A) 特開 平2−171373(JP,A) 特開 平1−215657(JP,A) 特開 平4−135923(JP,A) 特開 平1−208255(JP,A) 特開 昭61−291261(JP,A) 特開 平2−70937(JP,A) 特開 平4−133825(JP,A) 特開 平6−239216(JP,A) 特開 昭62−227845(JP,A) 特開 昭59−38160(JP,A) 特開 平2−283555(JP,A) 特開 平7−329757(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58 B60T 8/24

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の車体速度を検出する車体速度検出
    手段と、 該車両の各車輪の速度を検出する車輪速度検出手段と、 前記車両に作用する横加速度を検出する横加速度検出手
    段と、 前記車両が旋回状態であるか否かを判別する旋回状態判
    別手段と、 前記車両が制動状態であるか否かを判別する制動状態判
    別手段と、 前記車両が旋回制動状態であると判別された場合に、前
    記車体速度、前記横加速度、および、前記車輪速度検出
    手段により検出された実際の旋回外輪の車輪速度に基づ
    いて、旋回外輪のスリップ状態と旋回内輪のスリップ状
    態とが同じになるように、旋回内輪の目標車輪速度を演
    算する目標旋回内側車輪速度演算手段と、 旋回内輪の車輪速度が前記目標車輪速度になるように旋
    回内輪の制動力を制御する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記目標旋回内側車輪速度演算手段は、目標旋回内側車
    輪速度をVWI,車体速度をVB ,横加速度をGy,旋回
    外側車輪速度をVWOとした場合、次式により VWI={(VB −d・Gy/2VB )/(VB +d・G
    y/2VB )}・VWO 目標旋回内側車輪速度VWIを演算することを特徴とする
    制動力制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記目標旋回内側車輪速度演算手段は、次式により VWI=(VWO 2 −2dGy)1/2 目標旋回内側車輪速度VWIを演算することを特徴とする
    制動力制御装置。
  4. 【請求項4】 旋回外側車輪速度VWOを検出する旋回外
    側車輪速度検出手段と、 旋回内側車輪速度VWIを検出する旋回内側車輪速度検出
    手段と、 VWO 2 −VWI 2 >K(Kは所定値)であるか否かを判定
    する判定手段と、 非制動状態を検出する非制動状態検出手段と、 旋回制動時にVWO 2 −VWI 2 >Kと判定されたとき、旋
    回外側車輪のスリップ率と旋回内側車輪のスリップ率と
    の偏差をゼロとすべくWO 2 −VWI 2 =Kとなるように
    旋回内側車輪の制動力を制御する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  5. 【請求項5】 車両の車体速度を検出する車体速度検出
    手段と、 該車両の各車輪の速度を検出する車輪速度検出手段と、 前記車両の横方向の加速度を検出する横加速度検出手段
    と、 前記車両の制動状態を検出する制動検出手段と、 前記車体速度検出手段により検出された車体速度、前記
    車輪速度検出手段により検出された旋回内側車輪速度、
    前記横加速度検出手段により検出された横加速度に基づ
    いてアンチスピンモーメントを発生させるための目標旋
    回外側車輪速度を演算する目標旋回外側車輪速度演算手
    段と、旋回外側車輪のスリップ率と旋回内側車輪のスリップ率
    との偏差をゼロとするため、 前記旋回外側車輪速度が前
    記目標旋回外側車輪速度となるように外側車輪に制動力
    を付与する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  6. 【請求項6】 旋回外側車輪速度VWOを検出する旋回外
    側車輪速度検出手段と、 旋回内側車輪速度VWIを検出する旋回内側車輪速度検出
    手段と、 VWO 2 −VWI 2 >K(Kは所定値)であるか否かを判定
    する判定手段と、 非制動状態を検出する非制動状態検出手段と、 非制動時にVWO 2 −VWI 2 >Kと判定されたとき、旋回
    外側車輪のスリップ率と旋回内側車輪のスリップ率との
    偏差をゼロとすべくWO 2 −VWI 2 =Kとなるように旋
    回外側車輪の制動力を付与する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項2又は3記載の制動力制御装置に
    おいて、 さらに、 前記車輪速度検出手段により検出された車輪速
    度から推定横加速度を演算する横加速度推定手段と、 前記横加速度検出手段により検出された横加速度と前記
    推定横加速度とを比較することにより前記横加速度検出
    手段の異常発生の有無を判定する異常発生判定手段と
    有し、 前記目標旋回内側車輪速度演算手段は、前記 異常発生判
    定手段により前記横加速度検出手段が異常であると判定
    された場合には前記車輪速度検出手段により検出された
    旋回外側車輪速度に基づいて旋回時の内側車輪の目標車
    輪速度を演算を行い、また前記異常発生判定手段により
    前記横加速度検出手段が正常であると判定された場合に
    は前記車体速度、前記横加速度、および、前記車輪速度
    検出手段により検出された実際の旋回外輪の車輪速度に
    基づいて、旋回外輪のスリップ状態と旋回内輪のスリッ
    プ状態とが同じになるように、旋回内輪の目標車輪速度
    を演算を行うように設定されている、 ことを特徴とする制動力制御装置。
  8. 【請求項8】 車両の車体速度を検出する車体速度検出
    手段と、 該車両の各車輪の速度を検出する車輪速度検出手段と、 前記車両に作用する横加速度を検出する横加速度検出手
    段と、 前記車両が旋回制動状態であるか否かを判別する旋回制
    動状態判別手段と、 制動時、前記車体速度検出手段により検出された車体速
    度、前記車輪速度検出手段により検出された旋回前側外
    輪車輪速度、および、前記横加速度検出手段により検出
    された横加速度に基づいて、旋回前側外輪のスリップ状
    態と旋回前側内輪のスリップ状態とが同じになるよう
    に、前記旋回前側内輪の目標車輪速度を演算する目標旋
    回前側内輪速度演算手段と、 制動時、前記車輪速度検出手段により検出された旋回前
    側外輪車輪速度に基づいて旋回後側外輪の目標車輪速度
    を演算する目標旋回後側外輪速度演算手段と、 制動時、前記車輪速度検出手段により検出された旋回前
    側外輪車輪速度に基づいて旋回後側内輪の目標車輪速度
    を演算する目標旋回後側内輪速度演算手段と、 前記車輪速度検出手段により検出された各車輪速度と前
    記各目標車輪速度とを比較し、各車輪の車輪速度が前記
    目標車輪速度となるようにブレーキ機構へ供給されるブ
    レーキ圧を調整するブレーキ圧調整手段と、 該ブレーキ圧調整手段からの指令により各車輪への前記
    ブレーキ圧を増圧、保持、減圧の何れかに切り換えるブ
    レーキ圧切換手段と、 旋回時、外輪が走行する路面が内輪が走行する路面より
    低摩擦路(低μ路)であることを検出するまたぎ路検出
    手段と、 該またぎ路検出手段によりまたぎ路が検出されたとき、
    旋回後側内輪及び旋回後側外輪へのブレーキ圧増圧、保
    持、減圧指令を比較し、前記ブレーキ圧をより低圧側と
    する指令を選択するブレーキ圧指令選択手段と、 該ブレーキ圧指令選択手段のより選択されたブレーキ圧
    指令に基づき前記ブレーキ圧切換機構を切換動作させ、
    前記旋回後側内輪及び旋回後側外輪へのブレーキ圧を制
    御する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記旋回状態判別手段は、旋回状態の判別に用いるしき
    い値を、車体速度に応じて変更するしきい値変更手段を
    備えることを特徴とする制動力制御装置。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 車両が制動状態である場合に、後輪の目標車輪速度が、
    前輪の目標車輪速度に比して小さくなるように、前後輪
    の目標車輪速度を設定する第1の目標車輪速度設定手段
    を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の制動力制御装置にお
    いて、 前輪および後輪の少なくとも一方のスリップ率を検出す
    るスリップ率検出手段と、 車両が制動状態である場合に、後輪の目標車輪速度が、
    前輪の目標車輪速度に比して大きくなるように、前後輪
    の目標車輪速度を設定する第2の目標車輪速度設定手段
    と、 前記スリップ率検出手段により検出されるスリップ率が
    所定値以下である場合は前記第1の目標車輪速度設定手
    段により設定される目標車輪速度を、前記スリップ率が
    所定値を超える場合は前記第2の目標車輪速度設定手段
    により設定される目標車輪速度を、それぞれ目標車輪速
    度として採用する目標車輪速度切り換え手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  12. 【請求項12】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 車輪速度の不安定度を検出する車輪速度不安定度検出手
    段と、 車輪速度の不安定度が所定値を超える場合に、制動力の
    制御を禁止する制動力制御禁止手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  13. 【請求項13】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記旋回内輪の制動力が、所定時間継続して低下された
    場合に、前記旋回内輪の制動力の制御を中止する第1の
    制動力制御中止手段を備えることを特徴とする制動力制
    御装置。
  14. 【請求項14】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 車両のステアリング特性を検出するステアリング特性検
    出手段と、 ステアリング特性がアンダーステアである場合に、前記
    旋回内輪の制動力の制御を中止する第2の制動力制御中
    止手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の制動力制御装置にお
    いて、 前記旋回内輪の制動力の制御が中止される場合に、旋回
    外輪の制動力の増加が緩やかになるように、前記旋回外
    輪の制動力を制御する旋回外輪制動力制御手段を備える
    ことを特徴とする制動力制御装置。
  16. 【請求項16】 旋回外輪の車輪速度を検出する外輪車
    輪速度検出手段と、 旋回内輪の車輪速度を検出する内輪車輪速度検出手段
    と、 前記旋回外輪の車輪速度および前記旋回内輪の車輪速度
    に基づいて、車両に作用する横加速度を推定する横加速
    度推定手段と、 該横加速度推定手段により推定された横加速度が、第1
    の設定値を超えているか否かを判別する横加速度判別手
    段と、 車両に作用する横加速度が、前記第1の設定値に比して
    大きな第2の設定値であると仮定して、前記旋回外輪の
    車輪速度に基づいて、旋回外輪のスリップ状態と旋回内
    輪のスリップ状態とを同等とするための旋回内輪の目標
    車輪速度を演算する目標旋回内側車輪速度演算手段と、 前記横加速度推定手段により推定された横加速度が、前
    記第1の設定値を超えている場合に、旋回内輪の車輪速
    度が前記目標車輪速度になるように旋回内輪の制動力を
    制御する制動力制御手段と、 を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  17. 【請求項17】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記目標旋回内側車輪速度演算手段は、旋回内輪の目標
    車輪速度VWI * を、前記旋回外輪の車輪速度VWO、車両
    のトレッドd、前記横加速度Gy、および前記車体速度
    B を用いて、 VWI * =VWO−d・Gy/VB なる演算式に従って演算することを特徴とする制動力制
    御装置。
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