JP2711970B2 - 陽極酸化処理後の色調が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウム合金展伸材およびその製造方法 - Google Patents

陽極酸化処理後の色調が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウム合金展伸材およびその製造方法

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JP2711970B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、陽極酸化処理を施し
て使用される用途のアルミニウム合金展伸材、特に無光
沢の暗灰色〜黒色の色調であることが要求されかつ高強
度が要求される用途のアルミニウム合金展伸材およびそ
の製造方法に関するものであり、例えばペリクルフレー
ムやIC模様印刷枠などの半導体装置製造装置の部品、
あるいは光学機器や光通信機器の部品、その他電気計測
器筐体などに使用されるアルミニウム合金展伸材および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体製造装置の部品や光学機器あるい
は光通信機器等のアルミニウム合金部品としては、黒色
で光に対し無反射であることが要求されることが多く、
また機械加工により精密部品とするところから、高強度
であること、具体的には最低でも250N/mm2 以上の
耐力を有することが要求されることが多い。その代表的
な例としては、IC基板の回路焼付けの際の担体である
ペリクルフレームがある。
【0003】従来、前述のようなペリクルフレームとし
ては、Al−Zn−Mg系合金であるJIS 7075
合金からなる圧延板もしくは押出材のT6処理材を加工
した後、表面を機械的もしくは化学的に粗面化して無光
沢とし、その後に染料を用いて黒色に染色したものを用
いるのが通常であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】IC基板の回路焼付け
においては、最近ではIC回路の高密度化に伴ない、可
視光線と比較して分解能の優れたエキシマレーザ等の紫
外線を焼付けに用いることが多くなっている。しかしな
がらこの場合に前述のような染色によって黒色としたペ
リクルフレームを用いた場合、紫外線によってペリクル
フレームの色調が早期に脱色されてしまい、ペリクルフ
レームとして使用できなくなってしまう問題がある。
【0005】そこでペリクルフレームの材料としては、
紫外線によっても容易には脱色せず、しかも機械的強度
も高い、無反射・黒色のアルミニウム合金材料の開発が
強く望まれている。またこの場合、主として経済的な観
点から、安価な硫酸浴による陽極酸化処理のままで黒色
を呈するアルミニウム合金材料の開発が望まれている。
【0006】 このほか、ペリクルフレームに限らず、
種々の光を扱う分野においては、光のハレーションを防
ぐために黒色でかつ無光沢であってしかも精密な寸法精
度を要求される部品が求められることが多く、そこで高
強度でしかも黒色、無光沢であり、なおかつ高エネルギ
ー状態でも経時変化による黒色が退色しないような材料
が望まれているが、従来のアルミニウム合金材料ではこ
れらの要求を同時かつ充分に満足する材料は少なかった
のが実情である。
【0007】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、陽極酸化処理のままで暗灰色〜黒色の無光沢
の色調を呈し、かつ耐力250N/mm2 以上の高強度を
有するアルミニウム合金展伸材を提供することを目的と
するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は前述の課
題を解決するべく、種々実験・検討を重ねた結果、アル
ミニウム合金中のMn系析出物の種類とサイズ、分布密
度が陽極酸化皮膜の無光沢黒色化に関係し、特にAl
Mn系金属間化合物析出物の所定のサイズのものを高密
度で析出させることが陽極酸化皮膜の無光沢黒色化に重
要であることを見出し、また陽極酸化皮膜の無光沢黒
化のために適切な合金成分組成を見出し、さらには陽極
酸化皮膜の無光沢黒色化と高強度化を図るために最適な
プロセス条件を見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
【0010】 具体的には、請求項1の発明のアルミニ
ウム合金展伸材は、Mn1.0〜2.5%、Mg2.1
6〜4.0%、Zn5.5%を越え9.5%以下を含有
し、さらに不純物としてのCuが0.3%未満、Siが
0.2%未満、Feが0.3%未満に規制され、残部が
Alおよび上記以外の不可避的不純物よりなり、しかも
金属間化合物析出物のうちAlMn系の折出物とし
て、0.01μm〜3μmの範囲内のサイズのものが1
×10個/mm以上の密度で分散していることを特
徴とする、耐力が250N/mm以上でかつ陽極酸化
処理後の色調が無光沢の暗灰色〜黒色となる展伸材であ
る。
【0011】 さらに請求項2〜請求項7の発明は、前
述のような成分組成を有するとともに、金属間化合物析
出物のうちAlMn系の析出物として、0.01μm
〜3μmの範囲内のサイズのものが1×10個/mm
以上の密度で分散しており、耐力が250N/mm
以上でかつ陽極酸化処理後の色調が無光沢の暗灰色〜黒
色となるアルミニウム合金展伸材を製造する方法につい
てのものであり、そのうち請求項2の方法は、Mn1.
0〜2.5%、Mg2.16〜4.0%、Zn5.5%
を越え9.5%以下を含有し、さらに不純物としてのC
uが0.3%未満、Siが0.2%未満、Feが0.3
%未満に規制され、残部がAlおよび上記以外の不可避
的不純物よりなるアルミニウム合金を鋳造し、さらに展
伸加工を行なって展伸材とするにあたり、鋳造後のいず
れかの段階で400〜550℃の範囲内の温度に0.5
〜24時間加熱する析出処理を行ない、さらに展伸加工
後の材料に対し、前記析出処理の後もしくは析出処理と
兼ねて、400〜550℃の範囲内の温度に加熱して2
0℃/min以上の冷却速度で冷却する溶体化処理−焼
入れを行なうことを特徴とするものである。
【0012】 また請求項3の発明の方法は、請求項2
に記載の方法において、前記展伸加工として、熱間加工
を行ない、また前記析出処理を熱間加工に先立つ鋳塊加
熱として行ない、さらに前記溶体化処理−焼入れを、熱
間加工後に直ちに20℃/min以上の冷却速度で冷却
するか、または熱間加工後に改めて400〜550℃に
加熱して20℃/min以上の冷却速度で冷却して行な
うことを特徴とするものである。
【0013】 さらに請求項4の発明の方法は、請求項
3に記載の方法において、前記熱間加工として、熱間圧
延を行なうことを特徴とするものである。
【0014】 そしてまた請求項5の発明の方法は、請
求項3に記載の方法において、前記熱間加工として、熱
間押出を行なうことを特徴とするものである。
【0015】 また請求項6の発明の方法は、請求項2
に記載の方法において、前記展伸加工として、熱間圧延
および冷間圧延を行ない、また前記析出処理を、熱間圧
延に先立つ鋳塊加熱として行ない、さらに前記溶体化処
理−焼入れを、冷間圧延後の冷延板に対して行なうこと
を特徴とするものである。
【0016】 さらにまた請求項7の発明の方法は、請
求項2から請求項6のいずれかの請求項に記載の方法に
おいて、前記溶体化処理−焼入れの後、80〜200℃
の範囲内の温度で1〜48時間加熱する高温時効処理を
施すことを特徴とするものである。
【0017】
【作用】本発明者等は、前述のようにアルミニウム合金
中におけるMn系析出物、特にAlMn系析出物の種
類とサイズ、分布密度が陽極酸化処理後の色調の無光沢
色化に大きな影響を与えることを見出した。
【0018】すなわちアルミニウム合金におけるMn系
析出物としては、一般に次のa〜gに示すようなものが
存在する。 a:Al6 Mn b:Al6 MnのAlの一部がFeに置き換わった形式
のAl6 (MnFe) c:Al6 MnのAlの一部がSiに置き換わった形式
の(AlSi)6 Mn d:Al6 MnのAlの一部がSiに置き換わるととも
に、Mnの一部がFeに置き換わった形式の(AlS
i)6 (MnFe) e:a〜dのいずれかにCu,Cr,Ti等が微量固溶
したもの f:αAlMn(Fe)Si g:fにCu,Cr,Ti等が微量固溶したもの
【0019】 これらのMn系析出物a〜gのうち、a
〜eのものをAlMn系析出物と総称することができ
る。そしてこのようなAlMn系析出物のうち、0.
01μm以上3μm以下のサイズのものが1×10
/mm以上の分布密度で分散していることが、陽極酸
化処理後の色調の無光沢黒色化に必要である。すなわ
ち、AlMn系析出物は、硫酸浴等の陽極酸化処理時
に酸化されずに金属化合物粒子として陽極酸化皮膜中に
そのまま残留し、そのため外部からの陽極酸化皮膜中へ
の入射光がその金属間化合物粒子によって散乱され、皮
膜全体として無光沢の暗灰色〜黒色を呈することにな
る。これに対し前記fのαAlMn(Fe)Siやそれ
にCu,Cr,Ti等が固溶したgの析出物は、硫酸浴
中の陽極酸化処理時に酸化されて、陽極酸化皮膜の色調
が黄色化し、黒色化に対して効果がない。したがってこ
の発明ではAlMn系析出物を規定している。
【0020】 ここで、AlMn系析出物によって無
光沢の充分な黒色を呈するためには、所定の範囲内のサ
イズの析出物が高密度で分散していることが重要であ
る。AlMn系析出物であってもそのサイズが0.0
1μm未満では粒子が小さ過ぎて陽極酸化皮膜の黒色化
に寄与せず、ピンク〜黄色味が強くなる。一方Al
n系析出物でも3μmを越える粗大なものばかりでは、
実際上析出物の分布密度が少なくなり、陽極酸化処理後
の色調が薄くなってしまう。また0.01〜3μmの範
囲内のサイズのAlMn系析出物の分布密度が1×1
個/mm未満では、そのサイズのAlMn系析
出物の分布がまばら過ぎて、陽極酸化皮膜が充分に黒色
化されない。なおこの発明では、要は無光沢黒色化に寄
与する0.01〜3μmの範囲内のサイズのAlMn
系析出物が1×10個/mm以上の分散密度で分散
していれば無光沢の暗灰色〜黒色を呈することができる
から、その条件を満足していれば、AlMn系以外の
種類の析出物が析出していることや、0.01〜3μm
を外れるサイズの析出物が分散していることは特に支障
とならない。
【0021】但し、Al6 Mn系析出物であっても、F
eやSiが固溶して前記b〜dのような形となれば、硫
酸浴中の陽極酸化処理時に析出物が酸化あるいは溶解し
やすくなって充分な黒色が得難くなる。特にAl6 Mn
系析出物中のFe,Si量が多くなれば、確実かつ安定
して黒色を得ることが困難となる。そこでこの発明で
は、合金全体の成分組成として、単にMn量を規定する
のみならず、Fe量、Si量も規制しているのである。
また合金中のCu量が増せば、Al−Mn系析出物がC
2 Mn3 Al20系析出物に変化し、黒色化が充分では
なくなるから、合金のCu量も規制している。
【0022】 以下この発明における合金成分の限定理
由について説明する。以下の各合金元素は、前述のよう
に陽極酸化処理後の無光沢黒色化に有効となるように析
出物の析出状態を制御すると同時に、自然時効(常温時
効)もしくは人工時効(高温時効)によって耐力が25
0N/mm以上の高強度が得られるように定めてい
る。
【0023】Mn: MnはAl−Mn系の金属間化合物を生成する元素であ
り、この発明では特にAlMn系析出物を析出させて
陽極酸化処理後の色調を無光沢黒色化するために重要な
元素である。すなわち、既に述べたようにこの発明で
は、所定の範囲内のサイズのAlMn系析出物を所定
の密度で析出させることによって、陽極酸化処理のまま
で無光沢黒色化させることが可能であることを見出しな
されたものである。Mn量が1.0%未満ではAl
n系析出物の析出量が少なく、陽極酸化皮膜の充分な黒
色化が達成されない。一方Mn量が2.5%を越えれ
ば、陽極酸化皮膜の黒色化は可能であるが、DC鋳造時
に粗大な金属間化合物の初晶を生成するため好ましくな
い。したがってMn量は1.0〜2.5%の範囲内とし
た。
【0024】Mg: MgはMnの析出を促進する元素であって、この発明の
場合陽極酸化皮膜の無光沢黒色化に寄与するAlMn
系析出物を所定のサイズ、密度で析出させるために不可
欠な元素である。特にDC鋳造法の如く、薄板連続鋳造
法(連続鋳造圧延法)と比較して鋳造時の冷却速度が小
さい鋳造法を適用した場合、鋳造時のMnの強制固溶量
が少ないため、適切な量のMgが存在しなければ、Al
Mn系析出物のサイズと密度が無光沢でかつ暗灰色〜
黒色の陽極酸化皮膜を得るに適した状態とならない。ま
たMgは、Znと共存してMgZnを生成する元素で
あり、したがってこの発明の場合、溶体化処理−焼入れ
後の時効による強度向上に寄与する。Mg量が2.16
%未満では充分な強度が得られないとともに、陽極酸化
皮膜の充分な黒色化が達成されず、一方4.0%を越え
れば、陽極酸化皮膜の黒色化は可能であるが、鋳造性、
熱間圧延性が悪化する。したがってMg量は2.16
4.0%の範囲内とした。
【0025】Zn: Znは前述のようにMgと共存して強度向上に寄与す
る。またZnはMnの析出を促進する作用はあるが、M
nの析出物の種類に本質的な影響は与えないから、無光
沢・無彩色の黒色の色調に悪影響を及ぼすことなく、強
度向上に寄与することになる。Znが5.5%以下では
Zn添加による強度向上の効果が充分に得られず、一方
Znが9.5%を越えれば鋳造が困難となるとともに、
熱間変形抵抗も増大して熱間圧延が困難となる。したが
ってZn量は5.5%を越え9.5%以下の範囲内とし
た。
【0026】Cu:CuはZn,Mgと共存して高強度
化に有効な元素であり、一般に7000番系合金におけ
る強度向上元素として添加されることが多い元素である
が、この発明の場合には、Cuは有害元素としてその含
有量が規定される。すなわちCu量が増加すれば、Al
−Mn系析出物がCu2 Mn3 Al20系析出物に変化し
てしまい、Al6 Mn系析出物が少なくなって陽極酸化
皮膜の黒色化を妨げる。特にCuが0.3%以上となれ
ば陽極酸化皮膜の充分な黒色化が達成できなくなるか
ら、Cuは0.3%未満に制限する必要がある。
【0027】Fe:FeはAl6 Mn中に、Mnと一部
置き換わる形でAl6 (MnFe)として共存する。こ
のAl6 (MnFe)は、Fe量が増加するに従って次
第に陽極酸化処理時に酸化されやすくなり、陽極酸化皮
膜が黒色化しにくくなる。全Al6Mn系析出物中のF
e量が20%未満であれば陽極酸化皮膜の黒色は維持さ
れるが、20%を越えれば陽極酸化皮膜の黒色化が不充
分となる。したがって合金中のFe量も可及的に少いこ
とが望ましく、Fe量が0.3%以上となれば陽極酸化
皮膜の黒色化が不充分なるから、Feは0.3%未満に
制限することとする。
【0028】Si:SiはAl6 Mn中に、Alと一部
置き換わる形で(AlSi)6 Mnとして存在する。こ
の(AlSi)6 Mnも、Si量が増加するに従って陽
極酸化処理時に酸化しやすくなって、陽極酸化皮膜が黒
色化しにくくなる。またSiはαAlMn(Fe)Si
を生成するが、このαAlMn(Fe)Siは陽極酸化
皮膜の黒色化に寄与しない。したがってSi量も可及的
に少ないことが望ましく、Siが0.2%以上となれば
黄色味が強くなって陽極酸化皮膜の黒色化が達成できる
なくなるから、Siは0.2%未満に制限することとし
た。
【0029】 以上の各元素のほかは、基本的にはAl
および不可避的不純物とすれば良いが、通常のアルミニ
ウム合金に含有されることが多いCr,Zr,V,Ni
はいずれも陽極酸化皮膜の無光沢黒色化に本質的な影響
を与えず、そこでCr,Zr,Vはそれぞれ0.3%ま
で、Niは1%までは含有されていても良い。Cr,Z
r,Vが0.3%を越えれば、またNiが1%を越えれ
ば粗大金属間化合物が生成されて好ましくなくなる。ま
た一般のAl合金においては、鋳塊結晶組織を微細化し
て圧延板のキメ、ストリークスを防止するため、少量の
Tiを単独で、また微量のBと組合せて添加することが
あるが、この発明のアルミニウム合金展伸材においても
0.15%以下のTiを単独でまたは100ppm以下
のBと組合せて添加することは許容される。Tiが0.
15%を越えればTiAl粗大金属間化合物が生成さ
れて不適当となり、またBが100ppmを越えればB
の添加効果が飽和するとともに、粗大TiB粒子によ
る線状欠陥が発生して不適当となる。さらに、Mgを添
加した場合、鋳造時に溶湯が酸化しやすくなるが、その
場合の溶湯酸化防止のためにBeを添加することが一般
に行なわれており、この発明のアルミニウム合金展伸材
においても微量のBeの添加は他の性能に悪影響を及ぼ
すことはなく、したがって微量のBeを添加しても良
い。この場合のBe添加量は500ppm以下が一般的
である。
【0030】 以上の各元素の作用をまとめれば、M
n,Mg,Znはいずれもこの発明において必須の合金
成分であり、そのうちMnは陽極酸化皮膜の無光沢黒
化に寄与し、Mgは陽極酸化皮膜の無光沢黒色化を助長
すると同時に、強度向上に寄与し、さらにZnは陽極酸
化皮膜の無光沢黒色化を損なうことなく強度向上に寄与
する。一方Cu,Fe,Siはいずれもこの発明では有
害な元素であって、いずれも陽極酸化皮膜の黒色化を妨
げるから、それぞれの含有量を少量に規制しているので
ある。
【0031】次にこの発明の製造方法、すなわち請求項
2〜請求項7に記載されたアルミニウム合金展伸材の製
造方法について説明する。
【0032】 この製造方法としては、基本的には、鋳
造後のいずれかの段階で400〜550℃の範囲内の温
度に加熱する析出処理を行なうことが、陽極酸化皮膜
無光沢黒色化のために必要であり、また400〜550
℃の範囲内の温度に加熱して20℃/min以上の冷却
速度で冷却する溶体化処理−焼入れを行なうことが高強
度を得るために必須である。溶体化処理−焼入れは、析
出処理よりも後の段階において行なうのが一般的である
が、場合によっては溶体化処理−焼入れの加熱(溶体
化)を、析出処理の加熱と兼ねて行なうこともできる。
これらについてさらに具体的に説明する。
【0033】先ず前述のような成分組成の合金を常法に
従って鋳造する。鋳造法としてはDC鋳造法(半連続鋳
造法)が一般的であるが、薄板連続鋳造法(連続鋳造圧
延法)を適用しても良い。DC鋳造により得られ鋳塊に
対しては、一般には均質化のための鋳塊加熱を行ない、
またこの均質化のための鋳塊加熱と兼ねて、もしくはそ
れとは別に熱間加工のための予備加熱を行ない、その後
熱間加工として、熱間圧延または熱間押出等を行なうの
が通常である。そして熱間圧延の場合、その熱延上りの
板厚のままで製品板とするか、または熱間圧延後に冷間
圧延を施して所定の板厚とする。一方薄板連続鋳造法を
適用した場合には、鋳造板に対して必要に応じて均質化
処理を行なってから冷間圧延を施して所定の板厚とする
のが通常である。そしてこの発明の方法の場合、鋳造後
のこれらのいずれかの段階で、鋳造時に固溶されたMn
を、既に述べたようなAl6 Mn系金属間化合物として
析出させるための加熱処理(析出処理)を行なう必要が
ある。この析出処理は、一般には鋳造後の鋳塊もしくは
連続鋳造板の段階で行なうのが通常であるが、熱間圧延
や熱間押出後の段階で行なっても良く、また冷間圧延を
施す場合には冷間圧延の中途もしくは後の段階で析出処
理を行なうことも可能である。
【0034】そしてまたこの析出処理は、析出の目的の
みで独立して行なっても良いが、通常は他の熱処理と兼
ねて行なうことが経済的に有利である。すなわち、鋳造
後の均質化もしくは熱間加工のための予備加熱と兼ね
て、鋳塊加熱あるいは鋳造板加熱として析出処理を施す
ことができ、また熱間加工と冷間加工との間、あるいは
冷間加工の中途で中間焼鈍を行なう場合にはその中間焼
鈍と兼ねて析出処理を行なうことができ、さらに冷間加
工の後に最終焼鈍を施す場合には、その最終焼鈍と兼ね
て析出処理を行なうことも可能である。
【0035】ここで、析出処理は、400〜550℃の
範囲内の温度で0.5〜24時間加熱の条件で行なう必
要がある。すなわち、温度が400℃未満では、Al6
Mn系析出物の析出が少なく、陽極酸化皮膜が充分に黒
色化されず、赤味を帯びた色になってしまう。一方55
0℃を越えれば、一旦析出したAl6 Mn系析出物の再
固溶が生じて析出量が不足するとともに、共晶融解のお
それがある。また時間が0.5時間未満ではAl6 Mn
系析出物の析出が不充分であり、一方24時間を越えて
も析出は飽和し、経済的に無駄となるだけである。
【0036】一方溶体化処理−焼入れ工程は、時効硬化
に寄与するMg,Znを高温で固溶させ、かつ急冷して
過飽和固溶体とし、これによりその後の自然時効(室温
時効)もしくは人工時効(高温時効)により高強度が得
られるようにするための工程である。この溶体化処理−
焼入れは、通常は展伸加工後の材料に対して行なえば良
く、したがって熱間圧延や熱間押出等の熱間加工上りの
ままの板厚、形状寸法で製品とする場合には、熱間加工
後に行なえば良く、また熱間圧延後に冷間圧延を行なう
場合には、その冷間圧延後に行なえば良い。但し、熱間
加工上りのままの板厚、形状寸法で製品とする場合、熱
間加工の後に一旦冷却してから溶体化処理温度に加熱、
焼入れしても良いが、改めて加熱することなく熱間加工
の温度(保有熱)を利用してそのまま溶体化処理を行な
い、その後焼入れても良い(いわゆるT5処理材とする
場合に相当する)。さらに、展伸加工後の状態で前述の
析出処理を行なう場合(すなわち展伸加工終了までの間
に前述の析出処理の条件を満たす熱処理が行なわれてい
ない場合)には、展伸加工後の析出処理と兼ねて溶体化
処理−焼入れのための加熱(溶体化)を行なうこともで
きる。
【0037】以上のような溶体化処理−焼入れの条件
は、溶体化のための加熱温度を400〜550℃とし、
焼入れのための冷却速度は20℃/min 以上とする必要
がある。温度が400℃未満ではMgやZnの固溶が不
充分で、その後の時効により充分に強度が上がらない。
一方550℃を越えれば共晶融解が生じるだけであり、
また押出材の場合、表面に粗大再結晶粒が生じて陽極酸
化処理後の表面に模様が生じるおそれがある。焼入れの
冷却速度が20℃/min 未満では、焼入れが不充分でそ
の後の時効によって充分な強度が得られない。なおこの
溶体化処理−焼入れは、圧延板材の場合は、切り板をバ
ッチ式の溶体化加熱炉で溶体化処理して急冷するバッチ
方式を適用しても良く、あるいはコイルを連続的に巻戻
しながら炉中を通板させる連続溶体化焼入れ炉もしくは
連続焼鈍炉を用いても良い。また押出材の場合はバッチ
式の溶体化加熱炉を用いるのが通常である。そして溶体
化処理のための400〜550℃での保持時間は特に限
定しないが、バッチ式の溶体化炉を用いる場合、5分以
上とすることが好ましく、また連続炉を用いる場合は、
30秒以上の保持とするのが一般的である。
【0038】以上のようにして展伸加工を施した材料に
対し溶体化処理−焼入れを行なった後には、圧延板の切
り板の場合、必要に応じて単板レベラー、ストレッチ等
により歪矯正をするのが通常であり、また圧延板コイル
の場合も、必要に応じてレベリングや切断後のストレッ
チ等により歪矯正を行なうのが通常であり、さらに押出
材の場合も必要に応じてストレッチ等による歪矯正を行
なっても良い。なお圧延材コイルの場合、より一層の強
度向上を図りたい場合には、溶体化処理−焼入れ後に、
さらに冷間圧延を行なうことも許容されるが、この場合
も最終冷間圧延後に歪矯正を行なうことが多い。
【0039】以上のようにして得られた圧延材もしくは
押出材は、T4処理材として、そのまま自然時効(室温
時効)させることによってもかなりの高強度を得ること
ができるが、さらに強度を高めたい場合には、人工時効
(高温時効)処理を施してT6処理材もしくはT5処理
材(押出材について溶体化を熱間加工と兼ねた場合)と
する。人工時効の条件は、80〜200℃の範囲内の温
度で1〜48時間加熱とすれば良い。人工時効の加熱温
度が80℃未満では充分な強度が得られず、一方200
℃を越えれば過時効によって逆に強度が低下してしま
う。また加熱時間が1時間未満でも充分な強度が得れ
ず、48時間を越えても経済的に無駄となるだけであ
る。ここで人工時効処理は、前記の条件範囲内であれ
ば、2段時効、3段時効等の多段時効によって行なって
も良い。
【0040】なお前述のように鋳造後のいずれかの段階
で400〜550℃×0.5〜24時間の析出処理を行
なった後には、陽極酸化処理の後の色調に影響を与えな
いために、前記析出処理温度条件範囲の上限を越えるよ
うな高温での加熱を行なわないことが望まれ、特に実際
に適用された析出処理の温度を越えるような高温での加
熱を避けることが望ましい。例えば、一般には析出処理
は鋳塊に対する均質化処理や熱間加工前予備加熱と兼ね
て行なうことが多いが、それよりも後の工程において必
要に応じて行なう中間焼鈍、あるいは溶体化処理など
は、析出処理の温度と同等かまたはそれ以下の温度で行
なうことが望ましい。
【0041】以上のようにして、鋳塊加熱段階等におい
て400〜550℃×0.5〜24時間の析出処理を行
ない、さらに400〜550℃の範囲内の温度で溶体化
して20℃/min 以上の冷却速度で焼入れる溶体化処理
−焼入れを行なって得られた圧延材もしくは押出材は、
適切な粒径のAl6 Mn系化合物の析出物が適切な分布
密度で分散しているため、陽極酸化処理後の色調とし
て、暗灰色〜黒色で無光沢の色調を得ることができ、ま
た自然時効あるいはさらに人工時効処理を施すことによ
って耐力250N/mm2 以上の高強度を得ることができ
る。
【0042】 なお以上のような圧延材もしくは押出材
に対して陽極酸化処理を施すための具体的方法は特に限
定されるものではないが、この発明の場合は経済性の高
い硫酸電解浴を用いた陽極酸化処理によって暗灰色〜黒
色で無光沢の色調を安定して確実に得ることができるか
ら、硫酸電解浴によることが望ましい。その代表的な例
を次に記す。
【0043】陽極酸化処理にあたっては、予め表面の汚
れおよび表面の欠陥を除去しておくため、脱脂およびエ
ッチングを行なうのが一般的である。エッチングは、苛
性ソーダ系のアルカリエッチングを行なうのが通常であ
る。そして陽極酸化処理自体は、H2 SO4 濃度が10
〜25 vol%の硫酸浴を用い、浴温度10〜30℃、電
流密度1.5A/dm2 以上2.5A/dm2 未満で行な
い、膜厚10〜30μmの陽極酸化皮膜を生成させる。
【0044】ここで、硫酸浴のH2 SO4 濃度が10 v
ol%未満では生成される陽極酸化皮膜の多孔度が減少し
て浴電圧が高くなる。一方H2 SO4 濃度が25 vol%
を越えれば、表面が荒れて陽極酸化皮膜が柔かくなる。
また浴温度が10℃未満では所要の膜厚を得るために長
時間の処理を要して不経済となり、一方30℃を越えれ
ば陽極酸化処理後の耐食性が低下してしまう。さらに電
流密度は、2.5A/dm2 以上では処理に多大な電力を
要し、実用的でなく、一方1.5A/dm2 未満では、陽
極酸化処理後の色調が薄くなって灰色が得られなくな
る。また生成される陽極酸化皮膜の膜厚が10μm未満
では充分な耐食性が得られず、一方30μmを越えるま
で厚くすることは経済的でない。
【0045】 以上のような硫酸浴による陽極酸化処理
によって、暗灰色〜黒色で無光沢の色調を安定して得る
ことができる。なおここで陽極酸化処理後の色調につい
ては、ハンターの色差式(JIS Z8730参照)に
よる明度指数Lとクロマティクネス指数a,bの値によ
って評価することができる。すなわち、明度指数のL値
は高いほど白く、一方クロマティクネス指数は着色度に
ついてのものであってそのa値は高いほど赤味が強く、
b値は高いほど黄味が強いことをあらわす。そしてこの
発明で目的とする無彩色の灰色の色調とは、L値、a
値、b値が、 L<45、 −2<a<+2、 −2<b<+2 を満たす色調と定義することができる。
【0046】
【実施例】
[実施例1]表1に示す合金番号1〜5の溶湯を常法に
したがって溶製し、半連続鋳造法(DC鋳造法)によっ
て450mm×1200mm×4000mmのスラブを鋳造し
た。得られた各スラブについて面削後、表2の製造番号
1〜6に示すように480℃×8時間もしくは350℃
×2時間の条件で鋳塊加熱を行ない、同じく表2中に示
す温度で熱間圧延を開始して板厚4mmの熱延板とした。
なおここで、鋳塊加熱の480℃×8時間の条件は、こ
の発明で規定する析出処理の条件範囲を満たしており、
したがって析出処理を兼ねていることになる。一方同じ
く鋳塊加熱の350℃×2時間の条件は、この発明で規
定する析出処理条件を満たしていない。次いでバッチ式
溶体化処理炉により溶体化処理−焼入れを行なった。溶
体化処理の条件は表2中に示すように480℃×10分
保持もしくは380℃×10分保持とし、焼入れは水冷
により約100℃/sec の冷却速度とした。その後レベ
リングを行なってから切断し、さらにストレッチにより
平坦化した。続いて室温に1週間放置した後、120℃
×20時間の人工時効処理を施した。
【0047】その後、各板について10%NaOH水溶
液でエッチングし、水洗後硝酸でデスマット処理を行な
った。次いでH2 SO4 濃度15 vol%の硫酸浴を用い
て、浴温20℃、電流密度1.5A/dm2 で陽極酸化処
理を行ない、それぞれ膜厚25μmの陽極酸化皮膜を生
成させた。
【0048】各板の陽極酸化皮膜の表面色調について、
スガ試験機製カラーメーターSM−3−MCHを用いて
調べた。色調は、ハンターの色差式による明度指数Lお
よびクロマティクネス指数a,bを用いて評価した。そ
の結果を表3に示す。また各板の強度(引張り強さおよ
び耐力)を調べたのでその結果も表3中に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】 表3に示すように、合金成分組成、製造
プロセス条件ともにこの発明で規定する範囲内にある製
造番号1,2により得られた圧延板は、陽極酸化処理後
の色調のL値、a値、b値が前述の範囲内にあり、また
光沢も極めて少なく、充分な無光沢黒色の色調が得られ
たことが判る。これに対し合金成分組成、製造プロセス
条件のいずれかがこの発明で規定する範囲を外れた製造
番号3〜6により得られた圧延板は、陽極酸化処理後の
色調のL値、a値、b値のいずれか1つ以上が前述の範
囲を外れ、充分な黒色が得られなかったことが判る。
【0053】ここで、前述のようにして得られた人工時
効処理後の圧延板について、析出物を調べた。すなわち
電子顕微鏡によって得られた写真を画像解析処理装置に
より処理し、平均析出物サイズ、平均析出物密度を調べ
るとともに、析出物の化学分析を行なった。その結果
を、陽極酸化処理後の色調に関連させて以下に述べる。
【0054】合金番号1もしくは合金番号2の発明合金
を用いた製造番号1〜3による圧延材は、いずれも析出
物の大部分がAl6 Mn系析出物からなることが判明し
た。そのうち、特に発明プロセスである製造番号1,2
により得られた圧延板では、0.05〜1.2μmの範
囲内のサイズの析出物の分布密度が1×105 〜1×1
6 個/mm2 であることが判明した。したがってこれら
の場合には、陽極酸化処理後の色調として充分な黒色が
得られた。一方比較プロセスである製造番号3により得
られた圧延板では、析出物はそのサイズがほとんど0.
01μm未満であった。これは、製造番号3では鋳塊加
熱温度が350℃と低く、そのためAl6 Mn系の析出
が充分に行なわれなかったためであり、この場合には陽
極酸化処理後の色調が充分に黒色とならなかった。また
比較合金である合金番号3の合金を用いた場合(製造番
号4)には製造プロセス自体はこの発明で規定する条件
を満たしているが、Mn量が過少であるためAl6 Mn
系の析出量が少なく、0.01〜3μmの範囲内のAl
6 Mn系析出物の密度が1×104 個/mm2 未満であ
り、この場合も陽極酸化処理後に充分な黒色が得られな
かった。さらに比較合金である合金番号4の合金を用い
た場合(製造番号5)には、Cu量が多いため、Al−
Mn系金属間化合物析出物のほとんどがCu2 Mn3
20系となって、Al6 Mn系析出物の分布密度が1×
104 個/mm2 未満となり、この場合は陽極酸化処理後
の色調が充分な黒色でないばかりでなく、黄色味の強い
ものとなってしまった。そしてまた従来の7075合金
からなる合金番号5の合金を用いた場合(製造番号6)
には、Al6 Mn系析出物はほとんど認められず、この
場合も陽極酸化処理後に黒色の色調が得られなかった。
【0055】一方強度の面からは、合金成分組成、製造
プロセス条件ともにこの発明の範囲を満たした製造番号
1,2による圧延材の場合は、いずれも耐力で250N
/mm2 を充分に越える高強度を示した。これに対し発明
合金である合金番号1の合金を用いてはいるが、溶体化
処理の加熱温度が380℃と低温であった製造番号3に
より得られた圧延材では、耐力250N/mm2 を越えて
はいるが、この発明による場合と比較して低強度しか得
られなかった。さらに製造番号4による圧延材の場合
は、強度に寄与するMg量が過少の比較合金(合金番号
3)を用いているため、耐力250N/mm2 未満の低強
度しか得られなかった。そのほか、製造番号5,6によ
り得られた圧延材は、高強度は得られたものの、既に述
べたように陽極酸化処理後の色調として充分な黒色の色
調が得られなかった。
【0056】以上から、この発明の成分組成条件、製造
プロセス条件を満たす場合には、陽極酸化処理後の色調
として充分な黒色の色調が得られると同時に250N/
mm2を確実に越える高強度材が得られることが判る。そ
して合金成分組成条件、製造プロセス条件のいずれかが
外れた場合には、陽極酸化処理後の色調と強度のうち少
なくとも一方が要求特性を満たさないのである。
【0057】さらに陽極酸化処理後の色調の退色性につ
いて調べたのでその結果を記す。すなわち、前述の製造
番号1により得られた硫酸浴による陽極酸化処理後の板
(本発明材)と、製造番号6により得られた硫酸浴によ
る陽極酸化処理後の板(従来材;7075合金)に対し
染料を用いて黒色に染色した板とについて、JISD
0205(1988)に基いて、サンシャインウェザー
メータにより1ケ月曝露(カーボンアーク灯、63℃、
デューサイクル)し、色調の変化を調べた。その曝露前
後の表面のL値を調べた結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】表4に示すように、従来材の場合は、染色
により得られた黒色の色調が、1ケ月間の曝露によって
退色してしまったのに対し、本発明材では1ケ月間の曝
露でも退色が認められなかった。これは、本発明材では
陽極酸化皮膜自体の発色であるため、紫外線による変
化、退色が生じないことに起因する。
【0060】[実施例2]表1に示した合金番号1、合
金番号2の合金について、熱間圧延までは実施例1と同
様の工程条件を適用し、4mmの板厚の熱延板を得た。各
熱延板に対し、さらに冷間圧延を施して板厚2mmの冷延
板とした。その後、連続溶体化処理炉を用いて480℃
×3分の溶体化処理を行ない、水スプレーにより約10
00℃/sec の冷却速度で冷却し、さらにレベラーにて
矯正した。その後1週間室温に放置してから120℃×
24hrの人工時効処理を施した。
【0061】人工時効処理後の圧延板について、実施例
1と同様に陽極酸化処理を施し、陽極酸化処理後の色調
を調べるとともに、強度を調べた。その結果を表5に示
す。
【0062】
【表5】
【0063】また人工時効処理後の各圧延板について、
実施例1と同様に析出物の析出状態を調べたところ、
0.05〜1.2μmのサイズのAl6 Mn系析出物が
1×105 〜1×106 個/mm2 の密度で分散している
ことが確認された。
【0064】したがってこの実施例から、熱間圧延後に
冷間圧延を行なった場合にも、陽極酸化処理後の色調が
黒色でかつ耐力250N/mm2 を越える高強度の圧延材
が得られることが明らかである。
【0065】[実施例3]表6に示す成分組成の合金を
常法に従って溶製し、DC鋳造法により直径8インチの
ビレットに鋳造した。得られたビレットに対し550℃
×10時間の均質化加熱を施した後切出し、400℃で
熱間押出しを行なって断面寸法3mm×50mmの押出板材
とした。押出直後は、強制空冷により冷却速度5℃/mi
n で冷却した。ここで、ビレットに対する550℃×1
0時間の均質化加熱は、この発明で規定する析出処理を
兼ねたものであり、また熱間押出しおよびそれに続く冷
却は、溶体化処理−焼入れを兼ねたものである。前述の
ように熱間押出しされた板材に対し、さらに120℃×
24時間の人工時効処理を施した。
【0066】実施例1と同様に陽極酸化処理を施してそ
の色調を調べるとともに、強度を調べた。その結果を表
7に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】表7から明らかなように、押出材の場合も
この発明で規定する合金成分組成条件、製造プロセス条
件を満たすことによって、陽極酸化処理後の色調が黒色
でかつ耐力が250N/mm2 以上の高強度を有する材料
を得ることができた。なお析出物に関しても、既に述べ
た条件を満たしていることが確認された。
【0070】
【発明の効果】前述の実施例からも明らかなように、こ
の発明によれば、陽極酸化処理のままで安定して確実に
暗灰色〜黒色で無光沢の色調を有すると同時に耐力25
0N/mm以上の高い強度を有するアルミニウム合金
展伸材を得ることができる。そしてこの発明のアルミニ
ウム合金展伸材では、前述のように陽極酸化処理のまま
で陽極酸化皮膜自体の色調として無光沢の暗灰色〜黒色
を呈するため、紫外線等による退色のおそれがなく、ま
た高強度を有するため精密加工部品にも適しており、し
たがってペリクルフレームをはじめとする半導体装置の
部品や各種光学機械器具等に使用して有益なものであ
る。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn1.0〜2.5%(重量%、以下同
    じ)、、Mg2.16〜4.0%、Zn5.5%を越え
    9.5%以下を含有し、さらに不純物としてのCuが
    0.3%未満、Siが0.2%未満、Feが0.3%未
    満に規制され、残部がAlおよび上記以外の不可避的不
    純物よりなり、しかも金属間化合物析出物のうちAl
    Mn系の析出物として、0.01μm〜3μmの範囲内
    のサイズのものが1×10個/mm以上の密度で分
    散していることを特徴とする、耐力が250N/mm
    以上であってかつ陽極酸化処理後の色調が無光沢の暗灰
    色〜黒色である高強度アルミニウム合金展伸材。
  2. 【請求項2】 Mn1.0〜2.5%、Mg2.16〜
    4.0%、Zn5.5%を越え9.5%以下を含有し、
    さらに不純物としてのCuが0.3%未満、Siが0.
    2%未満、Feが0.3%未満に規制され、残部がAl
    および上記以外の不可避的不純物よりなるアルミニウム
    合金を鋳造し、さらに展伸加工を行なって展伸材とする
    にあたり、 鋳造後のいずれかの段階で400〜550℃の範囲内の
    温度に0.5〜24時間加熱する析出処理を行ない、さ
    らに展伸加工後の材料に対し、前記析出処理の後もしく
    は析出処理と兼ねて、400〜550℃の範囲内の温度
    に加熱して20℃/min以上の冷却速度で冷却する溶
    体化処理−焼入れを行なうことを特徴とする、耐力が2
    50N/mm以上であってかつ陽極酸化処理後の色調
    が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウム合金
    展伸材の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の方法において、前記展
    伸加工として、熱間加工を行ない、また前記析出処理を
    熱間加工に先立つ鋳塊加熱として行ない、さらに前記溶
    体化処理−焼入れを、熱間加工後に直ちに20℃/mi
    n以上の冷却速度で冷却するか、または熱間加工後に改
    めて400〜550℃に加熱して20℃/min以上の
    冷却速度で冷却して行なうことを特徴とする、耐力が2
    50N/mm以上であってかつ陽極酸化処理後の色調
    が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウム合金
    展伸材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の方法において、前記熱
    間加工として、熱間圧延を行なうことを特徴とする、耐
    力が250N/mm以上であってかつ陽極酸化処理後
    の色調が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウ
    ム合金展伸材の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の方法において、前記熱
    間加工として、熱間押出を行なうことを特徴とする、耐
    力が250N/mm以上であってかつ陽極酸化処理後
    の色調が無光沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウ
    ム合金展伸材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載の方法において、前記展
    伸加工として、熱間圧延および冷間圧延を行ない、また
    前記析出処理を、熱間圧延に先立つ鋳塊加熱として行な
    い、さらに前記溶体化処理−焼入れを、冷間圧延後の冷
    延板に対して行なうことを特徴とする、耐力が250N
    /mm以上であってかつ陽極酸化処理後の色調が無光
    沢の暗灰色〜黒色である高強度アルミニウム合金展伸材
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項2から請求項6のいずれかの請求
    項に記載の方法において、 前記溶体化処理−焼入れの後、80〜200℃の範囲内
    の温度で1〜48時間加熱する高温時効処理を施すこと
    を特徴とする、耐力が250N/mm以上であってか
    つ陽極酸化処理後の色調が無光沢の暗灰色〜黒色である
    高強度アルミニウム合金展伸材の製造方法。
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