JP2638910B2 - ４サイクルエンジンのカムシャフトベアリング支持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 （産業上の利用分野） この発明は、オーバーヘッドカム型になる４サイクル
エンジンのカムシャフトベアリング支持装置に関する。

（従来の技術） オーバーヘッドカム型の４サイクルエンジンの動弁機
構は、シリンダヘッド上面に装置され、ヘッドカバーで
被覆されるのが普通である。動弁機構を駆動させるカム
シャフトは、シリンダヘッドに形成した下半軸受孔と軸
受ハウジングに形成した上半軸受孔を合わせた軸受孔
に、直接またはベアリングを介して軸架される。

ベアリングがニードルベアリングの場合はベアリング
をカムシャフトに圧入して固定するのが普通であるが、
カムとカムとの間にジャーナル部があるものでは、分割
型が用いられ、圧入による固定手段が採用できない。

このように分割型ベアリングが用いられた場合あるい
はメタルベアリングの場合には、ベアリングの位置決め
（廻り止め）、あるいは抜け止めを施す必要がある。位
置決めにはサークリップやピンが用いられる。シリンダ
ヘッド側にこのようなベアリングの位置決め装置を設け
ると、下半軸受孔にサークリップ溝やピン穴を形成する
ことになるが、ジャーナル部付近にはロッカーアームや
ロッカーアームシャフトが配置されているため、スペー
ス上加工困難性が伴い、シリンダヘッドの大型化につな
がり易い。

特に、ベアリングを用いないで直接カムシャフトを軸
支するようにしたシリンダヘッドでは、下半軸受孔に油
潤滑用の大きな油溜りが付随しているので、エンジン高
性能化のためシリンダヘッドを追加工することによりベ
アリングを介装する場合には、位置決め装置を配置する
余裕のないことが多いという問題があった。

（発明が解決しようとする課題） 上記のように、ベアリングを介してカムシャフトを軸
支する４サイクルエンジンでは、ベアリング位置決め装
置をシリンダヘッドに設置しにくいという問題があっ
た。

この発明は上述した事情を考慮したものであり、シリ
ンダヘッドを加工することなくベアリング位置決めがで
き、ベアリングを用いない既存のシリンダヘッドを改造
してベアリングを介装し易くする４サイクルエンジンの
カムシャフトベアリング支持装置を提供することを目的
とする。

〔発明の構成〕

（課題を解決するための手段） この発明に係る４サイクルエンジンのカムシャフトベ
アリング支持装置は、上述した課題を解決するために、
シリンダヘッド上面に形成した下半軸受孔と軸受ハウジ
ングに形成した上半軸受孔を合わせて、カムシャフトの
ベアリングを挟持すると共に、上記ベアリングは分割型
ベアリングで構成し、上記ベアリングにはシリンダヘッ
ド側に油孔を形成してシリンダヘッドにベアリングを連
通するオイル通路を構成し、前記軸受ハウジングに分割
型ベアリングの位置決めを行なう係止部材を設け、前記
ベアリングの割り面、係止部材の設置位置および油孔位
置がベアリングの周方向にほぼ等間隔にバランス配置さ
せたものである。

（作用） この４サイクルエンジンのカムシャフトベアリング支
持装置は、シリンダヘッドの下半軸受孔にベアリングの
位置決め用の加工が必要なく、下半軸受孔部分のシリン
ダヘッドのレイアウトを簡素化し、製造加工が容易にな
る。

ベアリングを用いない既存のシリンダヘッドの下半軸
受孔を拡大してベアリングを介装することが無理なく可
能になり、エンジンの高性能化が容易である。

また、軸受ハウジングは形状が小さいのでベアリング
位置決め装置の加工、追加工が容易であり、形状変更が
必要であっても型費などのコストアップを最小限に止め
ることができる。

（実施例） 以下この発明の実施例を示す図に就いて説明する。

シリンダヘッド１の上面には、両側にカムシャフトの
下半軸受孔２が配置され、その周囲にバルブステム支持
孔３、軸受ハウジング締着用ねじ穴４などが配置され
る。さらにはスパークプラグ挿着孔５、スタッドボルト
挿通孔６、カムチェーン室７などが形成され、ヘッドカ
バーとの合わせ面8,9などと共に極めて複雑で混んだ形
状になっている。

下半軸受孔２の上には軸受ハウジング10が締着ボルト
11で固定され、軸受ハウジング10の上半軸受孔12と合わ
せて軸受孔が形成される。カムシャフト13はこの軸受孔
にベアリング14を介して回転自在に軸支される。ベアリ
ング14は上下分割型ベアリングで構成される。

シリンダヘッド１の下半軸受孔２、軸受ハウジング10
の上半軸受孔12はもともとベアリングなしでカムシャフ
トを軸支するように設定されたもので、各軸受孔2,12の
内径を拡大してベアリング14を介装させ得るようになっ
ている。したがって下半軸受孔２には大きな油溜り15が
残っている。

下半軸受孔２の下方にはロッカーアーム支軸16が軸架
される。ロッカーアーム支軸16の内孔17はオイル通路と
して利用され、上記油溜り15はこのオイル通路から潤滑
油を供給され、経常的にベアリング14下部の油孔18を通
って、ベアリング14内面に潤滑油を供給する。

次に軸受ハウジング10の上半軸受孔12とベアリング14
上部の相対位置にそれぞれ盲穴19,20が開設され、係止
ピン21が係止部材として抱持されている。これによりベ
アリング14が位置決め固定され、カムシャフト13の動作
が安定し、油溜り15と油孔18の連通が安定する。

ベアリング14は分割型のニードルベアリングでもよ
い。さらに係止ピンの代りにサークリップでスラスト方
向の位置決めをすることができる。この場合、軸受ハウ
ジング10に装着された係止部材である係止ピン21あるい
はサークリップで分割型ベアリング14の上半ベアリング
外周側を係止して位置決めしているので、分割型ベアリ
ング14のボールやニードルに影響を与えないで係止部材
の配置ができ、ベアリング14がコンパクトにまとまる。

また、分割型ベアリング14の割り面、係止ピン（係止
部材）21の設置位置、および油孔18がベアリング14の周
方向に略等間隔（中心角度90度）バランス配置されるた
めに、ベアリング14の剛性バランスが良く、ベアリング
14の耐久性、耐変形性上有利となる。

こうしてベアリング14は軸受ハウジング10側で位置決
めされ、加工が容易であり、シリンダヘッド１側には位
置決め用孔の加工を要しないので、大きな油溜りの存在
には無関係で、かつこの部分の構造を簡素化し、シリン
ダヘッドの大型化を防ぐ効果がある。

〔発明の効果〕

以上の通りこの発明に係る４サイクルエンジンのカム
シャフトベアリング支持装置は、シリンダヘッド上面に
形成した下半軸受孔と軸受ハウジングに形成した上半軸
受孔を合わせて、カムシャフトのベアリングを挟持する
と共に上記ベアリングは分割型ベアリングで構成し、上
記ベアリングにはシリンダヘッド側に油孔を形成してシ
リンダヘッドにベアリングに連通するオイル通路を構成
し、前記軸受ハウジングに分割型ベアリングの位置決め
を行なう係止部材を設け、前記ベアリングの割り面、係
止部材の設置位置および油孔位置がベアリングの周方向
にほぼ等間隔にバランス配置させたもので、シリンダヘ
ッドにベアリング位置決め用の孔加工をすることなくカ
ムシャフトに介装したベアリングの位置決めができると
共にベアリングを用いない既存のシリンダヘッドにベア
リングを装備し、エンジンの高性能化をし易くすること
ができる。

また、分割型ベアリングの位置決め固定を軸受ハウジ
ング側に装着した係止部材で行なうことができるので、
ベアリングがコンパクトに設計できる一方、ベアリング
の割り面、係止部材の設置位置および油孔をベアリング
の周方向にほぼ等間隔にバランス良く配置できるのでベ
アリングの剛性バランスが良く、ベアリングの耐久性、
耐変形性に優れ、信頼性の高いカムシャフトベアリング
支持装置を提供できる等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の実施例を示すカムシャフトベアリン
グ支持装置の縦断側面図、第２図は第１図のカムシャフ
トベアリング支持装置の縦断正面図、第３図はシリンダ
ヘッドの平面図である。 １……シリンダヘッド、２……下半軸受孔、10……軸受
ハウジング、12……上半軸受孔、13……カムシャフト、
14……ベアリング、15……油溜り、21……係止ピン。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッド上面に形成した下半軸受孔
   と軸受ハウジングに形成した上半軸受孔を合わせて、カ
   ムシャフトのベアリングを挟持すると共に、上記ベアリ
   ングは分割型ベアリングで構成し、上記ベアリングには
   シリンダヘッド側に油孔を形成してシリンダヘッドにベ
   アリングに連通するオイル通路を構成し、前記軸受ハウ
   ジングに分割型ベアリングの位置決めを行なう係止部材
   を設け、前記ベアリングの割り面、係止部材の設置位置
   および油孔位置がベアリングの周方向にほぼ等間隔にバ
   ランス配置させたことを特徴とする４サイクルエンジン
   のカムシャフトベアリング支持装置。