[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、末端に前記式(1)で表されるオキシラン環含有基(例えば、グリシジル(オキシアルキレン)オキシ基)を有している。
前記式(1)において、R1で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基などが例示できる。アルキレン基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(例えば、直鎖状C2−3アルキレン基)、さらに好ましくはエチレン基である。
R2は水素原子又はメチル基を示し、通常、水素原子である。
係数nは1〜30の整数から選択でき、例えば、1〜15(例えば、1〜10)、好ましくは1〜7(例えば、1〜5)程度の整数であってもよく、1〜4(例えば、1〜3)、特に1又は2の整数(特に1)であってもよい。なお、係数nが1以上(例えば、2以上)である化合物を含む組成物は安定性が向上するようである。
すなわち、本発明では、ボロン系カチオン重合開始剤と組み合わせるエポキシ樹脂として、アルコール性ヒドロキシル基(アルキレンオキサイド付加体のヒドロキシアルキル基)にエピハロヒドリン又はハロメチルオキシランが反応したエポキシ樹脂を用いる。理由は明確ではないが、ビスフェノールAなどのフェノール性ヒドロキシル基にエピハロヒドリン又はハロメチルオキシランが反応したエポキシ樹脂は、ボロン系カチオン重合開始剤と組み合わせると、安定性が著しく低下する。また、(ポリ)アルキレンオキシ基を有していても、(ポリ)オキシアルキレン鎖を介して、両末端に位置するベンゼン環(例えば、ビスフェノールA骨格などのベンゼン環)のヒドロキシル基にエピハロヒドリン又はハロメチルオキシランが反応したエポキシ樹脂も、ボロン系カチオン重合開始剤と組み合わせると、安定性が著しく低下する。
本発明で用いるエポキシ樹脂には、例えば、活性水素原子を有する官能基が芳香環に結合した化合物(例えば、ジ又はトリヒドロキシアレーン化合物、ジ又はトリカルボキシアレーン化合物、モノ又はジアミノアレーン化合物など)のアルキレンオキサイド付加体のエポキシ樹脂(エピハロヒドリン又はハロメチルオキシランとの付加体又は付加重合体)が含まれる。具体的には、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが含まれる。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなどのC1−10アルキレンビスフェノール、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンなど)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテル;ビアレーンジオール(4,4’−ビフェニルジオールなど)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテル;縮合環式アレーンジオール(2,6−ナフタレンジオールなど)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテル;ノボラック型フェノール樹脂(フェノールノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテルなどが例示できる。グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、芳香族又は脂環族ジカルボン酸(フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸など)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテルなどが例示でき、グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、芳香族又は脂環族アミン(ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、メタキシリレンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサンなど)のアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテルなどが例示できる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのC2−6アルキレンオキサイドなどが例示できる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、ヒドロキシル基に対して、1〜30モル程度であってもよい。これらのエポキシ樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、上記エポキシ樹脂は、反応性希釈剤と異なり、粘度が比較的高く、複数のアレーン環と、式(1)で表される複数のオキシラン環含有基とを有する場合が多い。上記エポキシ樹脂の粘度は、温度25℃において、700mPa・s以上、特に1000mPa・s以上又は固体である場合が多い。
好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂(特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂)である。エポキシ樹脂は、エポキシ化合物の多量体、例えば、2量体、3量体、4量体、5量体などの2乃至10量体などであってもよい。このようなエポキシ樹脂は、例えば、下記式(1A)で表すことができる。
[式中、Aは下記式(A)
(環Zはアレーン環を示し、R1a、R1bはそれぞれ独立してアルキレン基を示し、n1、n2はそれぞれ1〜30の整数を示し、R3は置換基を示し、pは0又は1以上の整数を示し、R4は、直接結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又は下記式(B)
(R5は置換基、kは0又は1以上の整数を示す)で表される)、rは0又は1以上の整数を示し、R2は前記に同じ]。
R4で表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、ブタン−2,2−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキレン基などが例示できる。シクロアルキレン基としては、シクロヘキシリデン基(シクロヘキサン−1,1−ジイル基)などのC3−10シクロアルキレン基などが例示でき、アリーレン基として、フェニレン基などのC6−10アリーレン基などが例示できる。
好ましいR4は、直接結合、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基[特にイソプロピリデン基(=C(CH3)2)]、及び式(B)において、置換基を有していてもよいフルオレン−9,9−ジイル基である。すなわち、好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、及び9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂である。
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、通常、フルオレンの9,9−位に置換したアリール基には、(ポリ)アルキレンオキシ基を介して、グリシジルエーテル基が置換したエポキシ化合物又はその多量体(2量体〜10量体など)が挙げられる。このようなエポキシ樹脂は、例えば、下記式(1a)で表される化合物又はその多量体であってもよい。
(式中、qは1以上の整数を示し、環Z、R1a及びR1b、R2、R3、R5、k、n1及びn2、pは前記に同じ)。
上記式(A)及び(1a)において、環Zで表されるアレーン環としては、ベンゼン環などの単環式炭化水素環及び縮合多環式芳香族炭化水素環[縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環、インデン環などのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]、環集合アレーン環[ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環などのビC6−12アレーン環、好ましくはビC6−10アレーン環、特にビフェニル環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニル環などのテルC6−12アレーン環など)など]が例示できる。特に、C6−10アレーン環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、ビC6−10アレーン環(ビフェニル環など)が好ましい。2つの環Z(例えば、式(1a)においてフルオレンの9−位に置換する2つの環Z)は同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環が好ましい。
なお、式(A)においてR4が、直接結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基(特にアルキレン基)であるとき、環Zはベンゼン環である場合が多い。
なお、式(1a)においてフルオレンの9−位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、環Zがナフタレン環である場合、例えば、フルオレンの9−位に対して、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの関係で置換していてもよい。また、環Zが環集合アレーン環、例えば、ビフェニル環である場合、ビフェニル環の3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよい。
R1a及びR1bで表されるアルキレン基は、R1で表されるアルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(例えば、直鎖状C2−3アルキレン基))と同様である。R1a及びR1bで表されるアルキレン基の種類は同一又は異なっていてもよい。
係数n1及びn2は、それぞれ前記係数nと同様に1〜30の整数から選択でき、例えば、1〜15(例えば、1〜10)、好ましくは1〜7(例えば、1〜5)程度の整数であってもよく、1〜4(例えば、1〜3)、特に1又は2の整数(特に1)であってもよい。また、n1+n2の平均値は、2〜30(例えば、2〜20)程度の範囲から選択でき、例えば、2〜17(例えば、2〜15)、好ましくは2〜12(例えば、2〜10)程度であってもよく、2〜6(例えば、2〜4)、特に2〜3(例えば、2)程度であってもよい。なお、n1+n2の平均値が3以上(例えば、4以上)である化合物を用いると、所定の重合開始剤を含む組成物の安定性がさらに向上するようである。n1及びn2がそれぞれ2以上であるとき、オキシアルキレン鎖のアルキレン基(R1a及びR1b)の種類は同一又は異なっていてもよい。
なお、前記係数n1及びn2(アルキレンオキシ基の繰り返し数)が大きくなると、エポキシ樹脂の硬化性が低下することが予想される。このような予想に反して、本発明では、前記係数n(n1及びn2)(アルキレンオキシ基の繰り返し数)が大きくても、高い硬化性を達成できる。しかも、少量の硬化剤(カチオン系重合開始剤)でも高い硬化性を示す。
係数qはそれぞれ1以上の整数であり、通常、1〜3、好ましくは1又は2、特に1である。
R3で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオなど)、アシル基(アセチル基などのC1−6アルキル−カルボニル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、置換アミノ基(ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。前記炭化水素基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ナフチル基、ビフェニル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)が例示できる。炭化水素基は、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)である場合が多い。
好ましい置換基R3は、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基(特に、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)など)であり、アルキル基(特に、メチル基)、アリール基(フェニル基など)である場合が多い。なお、基R3がアリール基であるとき、基R3は、それぞれ、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。
係数pは、環Zに応じて、0又は1以上の整数、例えば、0〜8(例えば、0〜6)、好ましくは0〜5(例えば、0〜4)、さらに好ましくは0〜2(例えば、0〜1)、特に0であってもよい。なお、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基R3の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、2つの環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、例えば、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環であり、R3がメチル基又はフェニル基であってもよい。
R5で表される置換基としては、炭化水素基(前記R3と同様の炭化水素基、特にメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などが例示できる。好ましい置換基R5は、メチル基などのC1−4アルキル基である。
係数kは0〜4、好ましくは0〜1、特に0である。なお、式(1a)においてフルオレンを構成する2つのベンゼン環において、係数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。なお、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環において置換基R5の種類は同一又は異なっていてもよい。また、kが複数(2以上)である場合、置換基R5の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R5の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位であってもよい。
また、前記エポキシ樹脂は、単量体(例えば、式(1a)で表される化合物の単量体)と、前記多量体との混合物又は組成物であってもよい。多量体の割合は、単量体及び多量体の総量100重量部に対して、例えば、0〜25重量部、好ましくは0〜15重量部(例えば、0.1〜10重量部)、さらに好ましくは0〜5重量部(例えば、0.2〜3重量部)程度であってもよい。
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、200〜1500g/eq(例えば、250〜1000g/eq)、好ましくは250〜800g/eq(例えば、270〜700g/eq)、さらに好ましくは300〜600g/eq(例えば、350〜500g/eq)程度であってもよい。
なお、オキシアルキレン基(グリシジルオキシアルコキシ基など)を有する置換基は、式(1A)(1a)において、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の3−位及び/又は4−位に置換している場合が多く、式(1a)において、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位である場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対して、1,5−位、2,6−位などの関係で置換している場合が多い。また、式(1a)において、フルオレンの9−位に対してビフェニル環の3−位又は4−位が結合していてもよく、ビフェニル環の3−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、オキシアルキレン基(グリシジルオキシ基など)を有する置換基は、2−,6−,3’−,4’−,5’−位、好ましくは2−,6−,4’−位(特に、2−位,6−位)に置換していてもよい。
前記式(1a)において代表的な化合物は、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン、9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ直鎖状又は分岐鎖状アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルコキシC6−12アリール)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルコキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレンなどが挙げられる。
より具体的には、式(1a)で表される代表的な化合物として、以下の化合物(又はエポキシ樹脂)が例示できる。
(a)9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類:例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−6アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシC2−6アルコキシフェニル)フルオレン}(前記式(1a)において、環Zがベンゼン環、R1a及びR1bが直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基(特に、C2−4アルキレン基)、R3が水素原子又はアルキル基、n1及びn2が1である化合物)など;
(b)9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシC2−6アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1a)において、環Zがベンゼン環、R1a及びR1bが直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基(特に、C2−4アルキレン基)、R3がベンゼン環、n1及びn2が1である化合物)など;
(c)9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類:例えば、前記の化合物(a)(b)に対応し、環Zがナフタレン環である化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−6アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(1a)において、環Zがナフタレン環、R1a及びR1bが直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基(特に、C2−4アルキレン基)、p=0、n1及びn2が1である化合物)など;
(d)これらの化合物(a)〜(c)に対応し、n1及びn2が2以上である化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジC2−6アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1a)又は化合物(a)〜(c)において、n1及びn2が2〜10である化合物)など。
式(1a)で表される具体的な化合物としては、例えば、環Zがベンゼン環、k=0、q=1、R2が水素原子である化合物を下記表1に例示でき、環Zがナフタレン環、k=0、p=0、q=1、R2が水素原子である化合物を表2に例示できる。なお、表1及び表2中、「置換位置」は、環Zに対するオキシアルキレン基(グリシジルオキシアルコキシ基など)を有する置換基の置換位置を示す。
前記式(1A)において、R4が式(B)で表されるフルオレン−9,9−ジイル基である化合物(例えば、式(1a)で表されるエポキシ化合物又はその多量体)は、屈折率が高く、しかも耐熱性が高い。そのため、前記式(1A)において、R4がアルキレン基であるエポキシ樹脂(代表的には、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂)に比べて、適用範囲を拡げることができる。
前記式(1a)で表されるエポキシ化合物又はその多量体は、慣用の方法、例えば、特許文献1〜3などに記載の方法に準じて、式(1a)に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類と、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなど、特にエピクロロヒドリン)とを反応させることにより製造できる。また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類は、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類と、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)を付加させて生成してもよく、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)及び/又はハロアルカノール(2−クロロエタノール、3−ブロモプロパノールなどのハロC2−6アルカノールなど)と反応させて生成させてもよい。
[他のエポキシ樹脂]
前記式(1)で表されるオキシラン環含有基を有するエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、式(1)で表されるオキシラン環含有基を有するエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)は、必要により、他のエポキシ樹脂と組み合わせてエポキシ樹脂成分として使用してもよい。他のエポキシ樹脂としては、式(1)で表されるオキシラン環含有基において、nが0である(すなわち、アルキレンオキサイドが付加していない)エポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンなど)]、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂成分全体に対する前記式(1)で表されるオキシラン環含有基を有するエポキシ樹脂の割合は、例えば、50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜95重量%程度であってもよい。
[硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤としてのカチオン重合開始剤(熱重合開始剤)と組み合わせ、熱硬化性樹脂組成物を形成している。すなわち、本発明者らは、カチオン重合開始剤(オニウム塩)のカウンターアニオン種により、エポキシ樹脂の安定性(保存又は貯蔵安定性)が大きく左右されることを見いだした。より具体的には、ボロン系(又はホウ素系)アニオンを含むオニウム塩を用いると、エポキシ樹脂(フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂など)の貯蔵安定性が顕著に向上するだけでなく、少量であってもエポキシ樹脂の硬化性(反応性)を大きく向上でき、低温で硬化可能である。より具体的には、アンチモン系アニオンを含むオニウム塩を用いると、代表的なビスフェノールA型エポキシ樹脂では、反応性が低く高温での硬化が必要となる。一方、ボロン系(又はホウ素系)アニオンを含むオニウム塩を混合すると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が直ちに反応して硬化するため、エポキシ樹脂組成物は低温(冷蔵庫中など)で保管する必要がある。
これに対して、エポキシ樹脂(フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂など)とボロン系(又はホウ素系)アニオンを含むオニウム塩とを組み合わせると、保存安定性(又は所蔵安定性)が高く、しかもオニウム塩の使用量が少量であっても硬化速度が大きく、低温で硬化可能である。例えば、エポキシ樹脂とボロン系(又はホウ素系)アニオンを含むオニウム塩とを混合しても、組成物は2週間経過しても増粘がなく、貯蔵安定性が極めて高く、しかも低温硬化可能である。特に、オキシアルキレン基(R1O)[又は(R1aO)/(R1bO)]の繰り返し数が多く、反応性が低下していると考えられるエポキシ樹脂(フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂など)であっても、上記のように、高い保存安定性と高い硬化性とを両立できる。
なお、エポキシ樹脂組成物の硬化性は、示差走査熱量計(DSC)による発熱ピーク温度で評価でき、発熱ピーク温度が低いほど、低温で硬化すると判断できる。
カチオン重合開始剤は、ボロン系(又はホウ素系)アニオンを含むオニウム塩であればよく、カチオンの種類は特に制限されず、例えば、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンなどであってもよい。このようなオニウム塩は、例えば、下記式(2)、(3)又は(4)で表されるボロン系カチオン重合開始剤を含んでいてもよい。
(式中、R11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R12はアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示し、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ホルミル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基を示し、R14は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R15及びR16はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Xはフッ素原子、ペンタフルオロフェニル基を示す)
R11で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基(メチル基又はエチル基)である。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキル基などが例示できる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキニル基などが例示できる。好ましいアルキニル基は、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキニル基であってもよい。
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基が例示できる。アリール基の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が例示できる。置換基は、アリール基の適所、例えば、フェニル基の2−位、4−位、3−位、ナフチル基の5−位、6−位などに置換していてもよい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基などが例示できる。アラルキル基の置換基としては、R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が例示できる。置換基は、アラルキル基のアレーン環の適所、例えば、フェニル基の4−位、3−位などに置換していてもよい。
R12で表されるアルキル基としては、前記R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が例示できる。置換基を有していてもよいアリール基としては、前記R11と同様の置換基を有していてもよいアリール基が例示できる。R12はアルキル基である場合が多い。
R13で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、前記R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、特にC1−4アルキル基)が例示できる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基が例示できる。好ましいアルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基、特にC1−2アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基)である。
アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル−カルボニル基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基などのC6−12アリール−カルボニル基などが例示できる。アリールカルボニル基は、置換基、例えば、前記R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)を有していてもよく、C1−4アルキルC6−12アリール−カルボニル基(例えば、トルオイル基などのC1−3アルキル−ベンゾイルオキシ基)などを形成してもよい。
R13は、水素原子、アルキル基、ホルミル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基(アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、アルキルベンゾイルオキシ基など)である場合が多い。
R14で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子であってもよい。アルキル基としては、前記R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が例示できる。R14は、通常、水素原子、ハロゲン原子(塩素原子など)又はC1−3アルキル基である場合が多い。
R15及びR16で表されるハロゲン原子としては、R13と同様のハロゲン原子が例示できる。アルキル基としては、前記R11と同様のアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特にC1−3アルキル基)が例示できる。なお、R15及びR16のうち一方の置換基が直鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基などのC1−3アルキル基)であり、他方の置換基が分岐鎖状アルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基などの分岐鎖状C3−4アルキル基)であってもよい。R15及びR16はそれぞれ独立して水素原子又はC1−4アルキル基である場合が多い。
Xはフッ素原子、ペンタフルオロフェニル基を示し、テトラフルオロボラート(BF4)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(B(C6F5)4)を形成している。
式(2)で表されるオニウム塩は、例えば、下記式(2a)で表されるオニウム塩(ボロン系カチオン重合開始剤)であってもよい。
(式中、R11は、C1−4アルキル基、C1−4アルキル基で置換されていてもよいC6−12アリール基、C1−4アルキル基で置換されていてもよいC6−12アリール−C1−4アルキル基(C1−4アルキル基で置換されていてもよいベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基など)、C2−6アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基など)を示し、R12はC1−4アルキル基、C1−4アルキル基で置換されていてもよいC6−12アリール基を示し、R13aは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキル−カルボニル基(アセチル基など)、置換基を有していてもよいC6−12アリール−カルボニル基(ベンゾイル基、C1−4アルキル−ベンゾイル基)を示し、R14は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキル基を示す)
さらに、式(2)で表されるオニウム塩は、例えば、下記式(2b)で表されるオニウム塩(ボロン系カチオン重合開始剤)であってもよい。
(式中、R11は水素原子又はC1−4アルキル基、R12はC1−4アルキル基、R13aは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキル−カルボニル基を示す)
式(2)で表される代表的なオニウム塩としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを「B(C6F5)4」として表記すると、例えば、R11がアラルキル基、R12がアルキル基、R13がヒドロキシル基である化合物、例えば、4−ヒドロキシフェニル(ベンジル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル(2−メチルベンジル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル(ジメチル)スルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル(1−ナフチルメチル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル(2−ナフチルメチル)メチルスルホニウム B(C6F5)4など;R11がアルキニル基、R12がアルキル基、R13がヒドロキシル基である化合物、例えば、4−ヒドロキシフェニルプロパルギルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル−2−ブチニルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル−2−ブチニルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ヒドロキシフェニル−2−ブチニルメチルスルホニウム B(C6F5)4など;R11がアラルキル基、R12がアルキル基、R13がアシルオキシ基である化合物、例えば、4−アセチルオキシフェニル(ベンジル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(2−メチルベンジル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(4−メチルベンジル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル−3−メチルフェニルベンジルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(ジメチル)スルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(1−ナフチルメチル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(2−ナフチルメチル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−ベンゾイルオキシフェニル(ジメチル)スルホニウム B(C6F5)4、ベンジル−4−(4−トルオイルオキシ)フェニルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−(4−トルオイルオキシ)フェニルメチル(1−ナフチルメチル)スルホニウム B(C6F5)4、(2−メチルベンジル)−4−(4−トルオイルオキシ)フェニルメチルスルホニウム B(C6F5)4;R11がアリール基、R12がアルキル基、R13がアシルオキシ基である化合物、例えば、4−アセチルオキシフェニル(フェニル)メチルスルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(4−トリル)メチルスルホニウム B(C6F5)4など;R11がアリール基、R12がアリール基、R13がアシルオキシ基である化合物、例えば、4−アセチルオキシフェニル(ジフェニル)スルホニウム B(C6F5)4、4−アセチルオキシフェニル(ビス(4,4’−ジメチル)フェニル)スルホニウム B(C6F5)4など;R11が置換基を有していてもよいアリール基、R12がアルキル基、R13がアルキル基である化合物、例えば、ジフェニルメチルスルホニウム B(C6F5)4、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルメチルスルホニウム B(C6F5)4などが例示できる。
式(3)で表されるオニウム塩としては、例えば、ジフェニルスルホニウム B(C6F5)4、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルスルホニウム B(C6F5)4などの4−分岐鎖状C3−6アルキル−4’−C1−4アルキルジフェニルスルホニウム B(C6F5)4などが例示できる。
式(4)で表されるオニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム B(C6F5)4、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウム B(C6F5)4などの4−分岐鎖状C3−6アルキル−4’−C1−4アルキルジフェニルヨードニウム B(C6F5)4などが例示できる。
これらの化合物は、公知の方法(例えば、WO 2012/042796号、特開2014−62057号公報などに準ずる方法)で調製してもよく、市販品を用いてもよい。例えば、前記オニウム塩は、東京化成工業(株)から入手してもよく、ローディア社(又はソルベイ社)から製品名「ロードシル2074」として入手でき、ADEKA(株)から製品名「アデカオプトマーSP−300」として入手でき、三新化学(株)から「サンエイドSI−B2A」「サンエイドSI−B3A」「サンエイドSI−B3」「サンエイドSI−B4」「サンエイドSI−B5」などとして入手できる。
本発明では、このようなカチオン重合開始剤(潜在性硬化剤)とエポキシ樹脂(フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂など)とを組み合わせて混合することにより、保存安定性が高く、しかも硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を調製する。
カチオン重合開始剤(オニウム塩)の使用量は、エポキシ樹脂の特性を損なわない範囲で選択でき、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部(好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜2.5重量部)程度であってもよい。また、本発明では、カチオン重合開始剤の使用量が少量であっても高い硬化性(低温硬化性)を示す。そのため、カチオン重合開始剤の割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜1重量部(例えば、0.02〜0.8重量部)、好ましくは0.03〜0.7重量部(例えば、0.04〜0.5重量部)、さらに好ましくは0.05〜0.3重量部(例えば、0.07〜0.2重量部)程度であってもよい。
なお、カチオン重合開始剤(オニウム塩)と異なり、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などの硬化剤は、エポキシ樹脂に対して比較的多量、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、15〜50重量部程度の割合で使用されている。そのため、硬化物の特性に硬化剤の特性が反映し、エポキシ樹脂本来の特性を発現できない場合がある。これに対して、本発明では、少量のカチオン系重合開始剤でエポキシ樹脂を硬化できるため、硬化物の特性の低下を抑制でき、エポキシ樹脂本来の特性を発現できる。
エポキシ樹脂組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、低粘度のエポキシ化合物、例えば、単官能性エポキシ基含有化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、これらの化合物に対応するアルキレンオキサイド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイドなどのアルケンオキサイド類など、多官能性エポキシ化合物[例えば、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどのアルカンジオールジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロアルケンオキサイド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)など]などが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応性希釈剤の割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
なお、必要により、エポキシ樹脂組成物(硬化性組成物)は、他の硬化剤、例えば、アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤を含んでいてもよく、光カチオン重合開始剤を含んでいてもよい。
さらに、硬化性組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;(ジ)アルキレングリコールエーテル類、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類など;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、γブチロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量(添加量)は、例えば、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、硬化促進剤、充填剤、補強剤(粒状又は繊維状補強剤)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
[硬化性組成物が硬化した硬化物]
本発明は、前記エポキシ樹脂組成物が硬化した硬化物も包含する。本発明では、前記のように、酸無水物系硬化剤などの硬化剤と異なり、少量のカチオン系重合開始剤でエポキシ樹脂を硬化できるため、硬化物の特性の低下を抑制でき、エポキシ樹脂本来の特性を発現できる。特に、保存安定性(貯蔵安定性)が高く、ポットライフが長いとともに、Bステージ(半硬化、セミキュア)を保持できるため、取扱性が高く、注型、封止、積層、コンポジット(複合材料)などの成形加工などにおいて作業性を大きく改善できる。また、カチオン系重合開始剤の種類によっては低温で硬化させることもできる。
エポキシ樹脂組成物は、用途に応じて、慣用の方法、例えば、所定の形態に成形又は加工し(例えば、所定の金型を用いて成形し)、加熱硬化させることにより硬化物を生成できる。例えば、エポキシ樹脂組成物を、必要により加熱などにより流動化させて、所定の金型に注型して加熱硬化させ、注型絶縁体を製造してもよく、エポキシ樹脂と基材(紙、ガラス布、合成繊維布など)とでプリプレグを調製し、銅箔などと積層して加熱硬化させることにより積層板を製造してもよく、エポキシ樹脂をマトリックスとし、ガラス繊維、炭素繊維などの補強剤を含むプリプレグを調製し、所定の形状に成形して加熱硬化させることにより繊維強化複合材料(FRP)を製造してもよい。また、エポキシ樹脂組成物を接着部位又は封止部位に適用して、加熱硬化させてもよく、エポキシ樹脂組成物を基材にコーティングし、加熱硬化させてもよい。
エポキシ樹脂組成物は、例えば、50〜250℃、好ましくは70〜220℃、さらに好ましくは80〜200℃(例えば、90〜170℃)程度で加熱することにより硬化でき、比較的低温(例えば、50〜170℃、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃程度)で硬化させることもできる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例では、以下のエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)及び硬化剤(又はカチオン重合開始剤)を用いた。
(A)エポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)
(A1)9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂
特開2015−157936号公報の比較合成例1に準じて、上記エポキシ樹脂を調製した。すなわち、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(「BPEF」という)にエチレンオキサイドが平均10モル付加した化合物(「BPEF−10EO」という)0.57mol、エピクロロヒドリン6.27mol及びトリメチルアンモニウムブロミド(TMAB)4.0g(0.026mol)を三口フラスコに収容し、系内をアルゴン置換し、50℃まで昇温させ、前記成分を溶解させた後、水酸化ナトリウム320.0g(8.0mol)を1時間かけて添加し、再びアルゴン置換し、80℃で9時間反応させる以外、上記文献の比較合成例1と同様にして、9,9−ビス(4−(2−グリジシルオキシ(ポリ)エトキシ)フェニル)フルオレン骨格を有するジグリジシルエーテル(エポキシ化合物)(「BPEF−10EOG」という)を得た。得られたエポキシ化合物の固形分濃度は99.5重量%、粘度(25℃)は6,040mPa・s、エポキシ当量は467g/eqであった。また、温度25℃において、波長589nmでの屈折率は1.57であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は368℃であった。
(A2)9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(「BPEF」という)にエチレンオキサイドが平均5モル付加した化合物を使用する以外は、(A1)と同様にしてジグリジシルエーテル(エポキシ化合物)(「BPEF−5EOG」という)を得た。得られたエポキシ化合物の固形分濃度は99.2重量%、粘度(25℃)は25,800mPa・s、エポキシ当量は370g/eqであった。また、温度25℃において、波長589nmでの屈折率は1.58であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は384℃であった。
(A3)9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(「BNF」という)にプロピレンオキサイドが平均15モル付加した化合物を使用する以外は、(A1)と同様にして、ジグリジシルエーテル(エポキシ化合物)(「BNF−15POG」という)を得た。得られたエポキシ化合物の粘度(25℃)は1,254mPa・s、エポキシ当量は407g/eqであった。
(A4)エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日本理化(株)製「リカレジンBEO−60E」,EO平均付加モル数6モル、粘度(25℃)800〜1,600mPa・s、エポキシ当量345〜385g/eq)。なお、温度25℃において、波長589nmでの屈折率は1.53であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は346℃であった。
(A5)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:三菱化学(株)製「JER828」
(A6)エチレンオキサイド(EO)変性フェノールエポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンEXA−4822」。このエポキシ樹脂(A6)は、DIC(株)の「製品情報」によると、粘度(25℃)3,650万Pa・s、エポキシ当量385g/eqであり、ポリエーテル鎖ではなく、末端に位置するビスフェノール骨格のベンゼン環に対してグリシジル基が結合している。なお、上記エポキシ樹脂(A6)は、上記のように、温度25℃で高粘度(固体状)であるため、γ−ブチロラクトンの50重量%溶液として使用した。
(A7)9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF−G)
特開2012−102228号公報の合成例3に準じて、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)(大阪ガスケミカル(株)製)とエピクロロヒドリンとを反応させ、室温で液状のエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂は、粘度(150℃)55mPa・s、エポキシ当量278g/eq、温度25℃において、波長589nmでの屈折率1.62であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は390℃であった。
(A8)9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPF−G)
特開2012−102228号公報の合成例2に準じて、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)(大阪ガスケミカル(株)製)とエピクロロヒドリンとを反応させ、白色粉末のエポキシ樹脂を得た。
このエポキシ樹脂は、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンに対するエチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数0モル、粘度(150℃)285mPa・s、エポキシ当量250g/eqであった。なお、温度25℃において、波長589nmでの屈折率は1.64であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は354℃であった。
(A9)9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNF−G)
特開2012−102228号公報の合成例1に準じて、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNF)(大阪ガスケミカル(株)製)とエピクロロヒドリンとを反応させ、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン)を白色粉末の形態で得た。
このエポキシ樹脂は、BNFに対するEOの平均付加モル数0モル、粘度(180℃)3200mPa・s、エポキシ当量300g/eqであった。なお、温度25℃において、波長589nmでの屈折率は1.70であり、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置において、5%の重量減少温度は400℃であった。
(B)硬化剤(カチオン重合開始剤)
(B1)B(C6F5)4をアニオンとして含むボロン系カチオン重合開始剤(三新化学(株)製「サンエイドSI−B2A」):4−アセチルオキシフェニル(2−メチルベンジル)メチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(B(C6F5)4)
(B2)SbF6をアニオンとして含むアンチモン系カチオン重合開始剤(三新化学(株)製「SI−100L」):ベンジルメチルp−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモナート(SbF6)
(B3)SbF6をアニオンとして含むアンチモン系カチオン重合開始剤(三新化学(株)製「SI−60L」):1−ナフチルメチルメチルp−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモナート(SbF6)
実施例及び比較例
前記エポキシ樹脂と硬化剤(重合開始剤)とを表3に示す割合で、室温で混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、室温で固体であるエポキシ樹脂(A6)〜(A9)室温で固体であるエポキシ樹脂(A6)(A8)(A9)並びに室温で半固体状で極めて粘稠なエポキシ樹脂(A7)については、予め50重量%のγ−ブチロラクトン(GBL)溶液を調製し、硬化剤を添加してエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物の発熱ピーク温度を測定するとともに、粘度を経時的に測定した。なお、発熱ピーク温度は、DSC測定装置[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC 6220」]を用い、温度30〜250℃、昇温速度10℃/分で測定した。また、粘度は、JIS K7117−2に準じて、TV−22形粘度計[コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE−22L」]を用い、粘度に応じてオプションロータの種類(01:1゜34’×R24、07:3゜×R7.7)と回転数(1〜20rpm)を選択し、温度25℃で測定した。
結果を表3及び表4に示す。
なお、貯蔵安定性の評価基準は、以下の通りである。
「○」:硬化剤(カチオン重合開始剤)を添加した組成物が7日後でも殆ど増粘しなかった
「△」:硬化剤(カチオン重合開始剤)を添加した組成物が2〜4日後では殆ど増粘しなかったが、7日後で増粘した
「×」:硬化剤(カチオン重合開始剤)を添加した組成物が直ちに反応して1日目でゲル化し、7日後には固化した
なお、実施例1〜4及び比較例1〜10の組成物は、温度15〜20℃で保存し、実施例5及び比較例11〜18の組成物は、温度20〜30℃で保存した。
表3及び表4から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A5)及び9,9−ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂(A8)(A9)、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有していても、末端のフェノール性ヒドロキシル基がグリシジルエーテル化されたエポキシ樹脂(A6)にボロン系カチオン重合開始剤(B1)を添加すると、組成物(比較例5、8、13及び16)では直ちに反応が開始し、1日目でゲル化し、7日後には固化した。
一方、アルキレンオキサイド付加体のエポキシ樹脂(A1)(A4)(A7)であっても、アンチモン系カチオン重合開始剤(B2)(B3)を添加したエポキシ樹脂組成物(比較例1〜4、11〜12)は、いずれも発熱ピーク温度が高いか、若しくは発熱ピークが検出されず、硬化性が低いことが判明した。なお、発熱ピーク温度が10℃程度も異なると、硬化性が大きく異なると認識されている。
さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A5)にアンチモン系カチオン重合開始剤(B2)(B3)を添加したエポキシ樹脂組成物(比較例6〜7)は、複数の発熱ピーク温度を示した。また、末端のフェノール性ヒドロキシル基がグリシジルエーテル化されたエポキシ樹脂(A6)にアンチモン系カチオン重合開始剤(B2)(B3)を添加したエポキシ樹脂組成物(比較例9〜10)は、いずれもゲル化し、固化した。さらに、9,9−ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂(A8)(A9)にアンチモン系カチオン重合開始剤(B2)(B3)を添加したエポキシ樹脂組成物(比較例14〜15、17〜18)は、ゲル化し、固化するか、若しくは発熱ピークが検出されず、硬化性が低いことが判明した。なお、複数の発熱ピーク温度を有する組成物は、低い発熱ピーク温度で加熱しても未だ完全に硬化しないため、高い発熱ピーク温度で加熱する必要がある。そのため、複数の発熱ピーク温度を有する組成物は硬化操作が煩雑である。
これに対して、アルキレンオキサイド付加体のエポキシ樹脂(A1)(A2)(A3)(A4)(A7)にボロン系カチオン重合開始剤(B1)を添加すると、組成物は保存安定性が高く、1週間後でも殆ど増粘しないか(実施例1〜4)、若しくは高い温度条件で保存しても増粘の程度が小さく、3日間は増粘せずに使用可能であった(実施例5)。しかも、カチオン重合開始剤(B1)の添加量が少なくても、発熱ピーク温度が低く、高い硬化性(低温硬化性)を示した。さらに、単一の発熱ピーク温度を示した。特に、9,9−ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂(A1)(A2)(A3)(A7)は、アルキレンオキサイド付加体でありながら、高い屈折率と高い耐熱性を備えていた。