JP2011028801A - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、記録速度を向上させる。
【解決手段】本発明は、光情報記録媒体100の記録層101は、100[℃]以上の加熱により記録光としての記録光ビームL2cの波長に対する光吸収量を増大させる(すなわち熱吸収変化量が大きい)特性を有している。光情報記録媒体100は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成する。
【選択図】図8
【解決手段】本発明は、光情報記録媒体100の記録層101は、100[℃]以上の加熱により記録光としての記録光ビームL2cの波長に対する光吸収量を増大させる(すなわち熱吸収変化量が大きい)特性を有している。光情報記録媒体100は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成する。
【選択図】図8
Description
本発明は光情報記録媒体に関し、例えば光ビームを用いて情報が記録され、また当該光ビームを用いて当該情報が再生される光情報記録媒体に適用して好適なものである。
従来、光情報記録媒体としては、円盤状の光情報記録媒体が広く普及しており、一般にCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu−ray Disc(登録商標、以下BDと呼ぶ)等が用いられている。
一方、かかる光情報記録媒体に対応した光情報記録再生装置では、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いはコンピュータ用の各種データ等のような種々の情報を当該光情報記録媒体に記録するようになされている。特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により情報量が増大し、また1枚の光情報記録媒体に記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、当該光情報記録媒体のさらなる大容量化が求められている。
そこで、光情報記録媒体を大容量化する手法の一つとして、2系統の光ビームを干渉させてなる微小なホログラムを記録マークとし、光情報記録媒体の厚さ方向に複数重ねるように形成することにより、1層の記録層内に複数層に相当する情報を記録するようになされた光情報記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで特許文献1に記載の光情報記録媒体は、2系統の光ビームを必要とするため、光学系が複雑になるという欠点を有している。一方光情報記録媒体として、照射された1系統の光ビームによって発生する熱により当該光ビームの焦点近傍に空洞(気泡)を形成し、この空洞を記録マークとすることにより1層の記録層内に複数層に相当する情報を記録する光情報記録媒体も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の光情報記録媒体は、高いピークパワーを持つパルスレーザを必要とし、ドライブとしての実用化には困難が伴う。また、単純に連続発信レーザを使用した場合は、多層化のため高透過率を必要とする点と、焦点近傍における高吸収率が望まれる点が相反してしまうことから、焦点近傍の吸収率を大きく増大させることができず、記録マークを形成するために長時間照射しなければならなかった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、記録速度を向上させ得る光情報記録媒体を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明の光情報記録媒体においては、情報の記録時に集光される記録光を波長に応じて吸収して焦点近傍の温度を上昇させることにより記録マークを形成し、120[℃]以上の加熱により記録光の波長に対する光吸収量を増大させ、当該記録層の厚さ0.25[mm]当たりの光吸収量が加熱により6.0[%]以上増大する記録層を設けるようにした。
これにより光情報記録媒体は、記録光の照射に応じて焦点近傍付近の光吸収量を増大させることができるため、記録光を効率良く吸収して迅速に焦点近傍の温度を上昇させることができ、短時間で記録マークを形成することができる。
さらに本発明の光情報記録媒体においては、情報の記録時に集光される記録光を波長に応じて吸収して焦点近傍の温度を上昇させることにより記録マークを形成すると共に、酸を発生させる酸発生剤と、一般式(5)に示すフルオレン骨格を有する化合物とを含む記録層を設けるようにした。
これにより光情報記録媒体は、記録光の照射に応じて焦点近傍付近の光吸収量を増大させることができるため、記録光を効率良く吸収して迅速に焦点近傍の温度を上昇させることができ、短時間で記録マークを形成することができる。
本発明によれば、記録光の照射に応じて焦点近傍付近の光吸収量を増大させることができるため、記録光を効率良く吸収して迅速に焦点近傍の温度を上昇させることができ、短時間で記録マークを形成することができ、かくして記録速度を向上させ得る光情報記録媒体を実現できる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、説明は以下の順序で行う。
<実施の形態> 加熱による光吸収量の変化
<他の実施の形態>
<実施の形態> 加熱による光吸収量の変化
<他の実施の形態>
<実施の形態>
[1.光情報記録媒体の構成]
図1(A)〜(C)に示すように、光情報記録媒体100は、基板102及び103の間に記録層101を形成することにより、全体として情報を記録するメディアとして機能するようになされている。光情報記録媒体100の形状に特に制限はなく、図1のように矩形板状に形成することはもちろん、BD(Blu-ray Disc、登録商標)やDVD(Digital Versatile Disc)などの一般的な光ディスクのように直径120[mm]の円盤状に形成し、中央部分にチャッキング用の孔を形成することも可能である。
[1.光情報記録媒体の構成]
図1(A)〜(C)に示すように、光情報記録媒体100は、基板102及び103の間に記録層101を形成することにより、全体として情報を記録するメディアとして機能するようになされている。光情報記録媒体100の形状に特に制限はなく、図1のように矩形板状に形成することはもちろん、BD(Blu-ray Disc、登録商標)やDVD(Digital Versatile Disc)などの一般的な光ディスクのように直径120[mm]の円盤状に形成し、中央部分にチャッキング用の孔を形成することも可能である。
基板102及び103はガラス基板でなり、光を高い割合で透過させるようになされている。また基板102及び103は、X方向の長さdx及びY方向の長さdyがそれぞれ約50[mm]程度、厚さt2及びt3が約0.05〜1.2[mm]でなる正方形板状又は長方形板状に構成されている。
この基板102及び103の外側表面(記録層101と接触しない面)には、波長が405〜406[nm]でなる光ビームに対して無反射となるような4層無機層(Nb2O2/SiO2/Nb2O5/SiO2)などのAR(AntiReflection coating)処理を施している。
なお基板102及び103としては、ガラス板に限られず、例えばアクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂など種々の光学材料を用いることができる。基板102及び103の厚さt2及びt3は、上記に限定されるものではなく、0.05[mm]〜1.2[mm]の範囲から適宜選択することができる。また、基板102及び103の外側表面にAR処理を必ずしも施さなくても良い。
そして基板103の上部に例えば重合によってフォトポリマーを形成する未硬化状態の液状材料M1(詳しくは後述する)が展開された後、当該液状材料M1上に基板102が載置され、図1における記録層101に相当する部分が未硬化状態の液状材料M1でなる光情報記録媒体100(以下、これを未硬化光情報記録媒体100aと呼ぶ)が形成される。
このように未硬化光情報記録媒体100aは、硬化前のフォトポリマーである液状材料M1を透明な基板102及び103により挟んでおり、全体として薄い板状に構成されている。
液状材料M1の一部或いは大部分を構成する光重合型、光架橋型の樹脂材料(以下、こららを光硬化型樹脂と呼ぶ)は、例えばラジカル重合型のモノマー類とラジカル発生型の光重合開始剤、又はカチオン重合型のモノマー類とカチオン発生型の光重合開始剤若しくはこれらの混合物により構成されている。
すなわち液状材料M1は、その内部にモノマー又はオリゴマー、もしくはその両方(以下、これをモノマー類と呼ぶ)が均一に分散している。この液状材料M1は、光が照射されると、照射箇所においてモノマー類が重合する(すなわち光重合する)ことによりフォトポリマーとなり、これに伴い屈折率及び反射率が変化するといった性質を有している。また液状材料M1は、光の照射によりフォトポリマー同士の間に「橋架け」を行い分子量が増加する、いわゆる光架橋が生じることにより、さらに屈折率及び反射率が変化する場合もある。
このモノマー類としては、公知のモノマー類を使用することができる。例えば、ラジカル重合型のモノマー類として、主にアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミドの誘導体やスチレンやビニルナフタレンの誘導体等、ラジカル重合反応に用いられるモノマーがある。また、ウレタン構造物にアクリルモノマーを持つ化合物についても適用することができる。また上述したモノマーとして、水素原子の代わりにハロゲン原子に置き換わった誘導体を用いるようにしても良い。
具体的に、ラジカル重合型のモノマー類としては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、アクリル酸エステル、フルオレンアクリレート、ウレタンアクリレート、オクチルフルオレン、ベンジルアクリレートなど公知の化合物を使用することができる。なおこれらの化合物は、単官能であっても多官能であっても良い。
またカチオン重合型のモノマー類としてはエポキシ基やビニル基などの官能基を含有していれば良く、例えば、エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、フルオレンエポキシ、グリシジルアクリレート、ビニルエーテル、オキセタンなど公知の化合物を使用することができる。
ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−オンオン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドオンなど公知の化合物を使用することができる。
カチオン発生型の光重合開始剤としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリ−p−トリスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、クミルトリルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、クミルトリルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素など公知の化合物を使用することができる。
因みにカチオン重合型のモノマー類及びカチオン発生型の光重合開始剤を使用することにより、液状材料M1の硬化収縮率をラジカル重合型のモノマー類及びラジカル発生型の光重合開始剤を使用した場合と比して低減することができる。また光重合型、光架橋型の樹脂材料としてアニオン型のモノマー類及びアニオン型の光重合開始剤を組み合わせて使用することも可能である。
この光重合開始剤としては、気化温度が140℃〜400℃(140℃以上、400℃以下を意味する、以下、同様の意味で「〜」を用いる)でなるものが使用されることが好ましい。
すなわち気化温度が低い光重合開始剤を使用した場合には、記録光ビームL2cの照射によって焦点Fb付近に存在する光重合開始剤残渣が気化温度程度もしくはそれ以上上昇することにより、光重合開始剤残渣が気化して記録マークRMを形成することができるためである。
また記録光ビームL2cによって発生する熱により光重合開始剤残渣を気化させており、実際に気化温度の比較的低い重合開始剤の方が気化温度の高い重合開始剤よりも記録時間が短い傾向にあるため、光重合開始剤の気化温度が低ければ低いほど記録マークRMを容易に形成できるとも考えられる。
しかし一般的な光重合開始剤では、気化温度よりも約60℃低い約90℃から徐々に吸熱反応が始まることが確認されている。このことは光重合開始剤を含有する光情報記録媒体100を約90℃の温度下で長時間放置した場合に、光重合開始剤残渣が徐々に揮発してしまい、記録マークRMを形成したいときに光重合開始剤残渣が残留しておらず、記録光ビームL2cを照射しても記録マークRMを形成できなくなる可能性を示唆している。
一般的に、光情報記録再生装置5のような電子機器は、80℃程度の温度下で使用されることが想定されている。従って光情報記録媒体100としての温度安定性を確保するためには、気化温度が80℃+60℃=140℃以上の光重合開始剤を用いることが好ましい。また、140℃より5℃程度高い気化温度(すなわち145℃)を有する光重合開始剤を用いることにより、温度安定性をさらに向上させることができると考えられる。
以上のことから、液状材料M1に配合される光重合開始剤の気化温度は、140℃〜400℃であることが好ましく、さらに145℃〜300℃であることが特に好ましい。
なお光重合開始剤の配合量は、光重合反応を十分に進行させると共に、重合開始剤残渣が過剰に存在することによる記録層101の弾性率低下などの弊害を防止するため、モノマー類100重量部に対して0.8重量部〜40.0重量部であることが好ましく、さらに2.5重量部〜20.0重量部であることが特に好ましい。
またこの光重合型モノマー類、光架橋型モノマー類及び光重合開始剤、このうち特に光重合開始剤は、その材料が適切に選定されることにより、光重合を生じやすい波長を所望の波長に調整することも可能である。なお液状材料M1は、意図しない光によって反応が開始するのを防止するための重合禁止剤や、重合反応を促進させる重合促進剤などの各種添加剤を適量含有しても良い。
そして未硬化光情報記録媒体100aは図2に示す初期化装置1において、液状材料M1が初期化光源2から照射される初期化光L1により初期化され、記録マークを記録する記録層101として機能するようになされている。
具体的に初期化装置1は、初期化光源2から例えば波長365[nm]の初期化光L1(例えば300[mW/cm2]、DC(Direct Current)出力)を出射させ、当該初期化光L1をテーブル3上に載置された板状の光情報記録媒体100に対して照射させるようになされている。この初期化光L1の波長及び光パワーは、液状材料M1に使用される光重合開始剤の種類や記録層101の厚みt1などに応じて最適となるように適宜選択される。
因みに初期化光源2としては、高圧水銀灯、高圧メタハラ灯、固体レーザ、キセノン灯や半導体レーザ等の高い光パワーを照射し得る光源が用いられる。
また初期化光源2は、図示しない駆動部を有しており、X方向(図中の右方向)及びY方向(図の手前方向)に自在に移動し、未硬化光情報記録媒体100aに対して適切な位置から初期化光L1を一様に照射し得、未硬化光情報記録媒体100a全体に均一に初期化光L1を照射するようになされている。
このとき液状材料M1は、当該液状材料M1内における光重合開始剤からラジカルやカチオンなどを発生させることによりモノマー類の光重合反応又は光架橋反応、もしくはその両方(以下、これらをまとめて光反応と呼ぶ)を開始させると共に、モノマー類の光重合架橋反応を連鎖的に進行させる。この結果モノマー類が重合してフォトポリマーとなることにより硬化し、記録層101となる。
なおこの液状材料M1では、全体的にほぼ均一に光反応が生じるため、硬化後の記録層101における屈折率はほぼ一様となる。すなわち初期化後の光情報記録媒体100では、いずれの箇所に光を照射しても戻り光の光量が一様となるため、情報が一切記録されていない状態となる。
また記録層101として、熱により重合する熱重合型又は熱により架橋する熱架橋型の樹脂材料(以下、これを熱硬化型樹脂と呼ぶ)を用いることもできる。この場合硬化前の熱硬化型樹脂である液状材料M1としては、例えばその内部にモノマー類及び硬化剤、又は熱硬化開始剤が均一に分散している。この液状材料M1は、高温下又は常温下においてモノマー類が重合又は架橋(以下、これを熱硬化と呼ぶ)することによりポリマーとなり、これに伴い屈折率及び反射率が変化するといった性質を有している。
実際上、液状材料M1は、例えばポリマーを生成する熱硬化型のモノマー類と硬化剤に対し、上述した光重合開始剤が所定量添加されることにより構成される。因みに熱硬化型のモノマー類及び硬化剤としては、光重合開始剤が気化しないよう、常温硬化若しくは比較的低温で硬化する材料を使用することが好ましい。また、光重合開始剤の添加前に熱硬化樹脂を加熱して予め硬化させておくことも可能である。
なお、熱硬化型樹脂に使用されるモノマー類としては、公知のモノマー類を使用することができる。前述しているアクリル酸、アクリル酸エステルなどの他に、例えば、フェノール樹脂やメラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの材料として使用されるような種々のモノマー類を使用することができる。
また熱硬化型樹脂に使用される硬化剤としては、公知の硬化剤を使用することができる。例えば、アミン類、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリスルフィド樹脂、イソシアネートなど、種々の硬化剤を使用することができ、反応温度やモノマー類の特性に応じて適宜選択される。なお硬化反応を促進する硬化補助剤など種々の添加物を添加するようにしても良い。
熱重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤を使用することができる。例えば、アゾ系開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビス2、4ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩や、過酸化物系開始剤である過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、2、4−ジクロル過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなど、種々の熱重合開始剤を使用することができる。
さらに記録層101として、熱可塑性の樹脂材料を用いることができる。この場合、基板103上に展開される液状樹脂M1は、例えば所定の希釈溶剤で希釈されたポリマーに対し、上述した光重合開始剤などの気化材料が所定量添加されることにより構成される。
なお、熱可塑性の樹脂材料としては、公知の樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene Copolymer)樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ノルボルネン樹脂など、種々の樹脂を使用することができる。
また希釈溶剤は、水、アルコール類、ケトン類、芳香族系溶剤、ハロゲン系溶剤などの各種溶剤若しくはこれらの混合物を用いることができる。なお熱可塑性の樹脂の物理特性を変化させる可塑剤など種々の添加物を添加するようにしても良い。
なお記録層101は、0.05[mm]以上、1.0[mm]以下でなることが好ましい。因みに光を通過する基板102と記録層101とを加算した厚さは、1.0[mm]以下でなることが好ましい。厚さが1.0[mm]を超えると、光情報記録媒体100の表面が傾いた時に当該光情報記録媒体100内で生じる記録光ビームL2cの非点収差が大きくなるからである。
[2.本発明における記録マークの記録及び再生原理]
液状材料M1として光硬化型の樹脂材料を用いた場合は、光重合開始剤がスタータとなり後は連鎖的に光反応が進行するため、理論上、非常に少量の光重合開始剤のみが消費される。しかしながら液状材料M1の光反応を迅速にかつ十分に進行させるため、一般的に、実際に消費される光重合開始剤と比して過剰な量の光重合開始剤が配合される。
液状材料M1として光硬化型の樹脂材料を用いた場合は、光重合開始剤がスタータとなり後は連鎖的に光反応が進行するため、理論上、非常に少量の光重合開始剤のみが消費される。しかしながら液状材料M1の光反応を迅速にかつ十分に進行させるため、一般的に、実際に消費される光重合開始剤と比して過剰な量の光重合開始剤が配合される。
すなわち図3に示すように、初期化後の光情報記録媒体100における記録層101では、モノマー類が重合して生成したポリマーP内に形成された空間Aに、消費されなかった光重合開始剤(以下、これを光重合開始剤残渣と呼ぶ)Lが散在した状態にある。さらに記録層101には、硬化処理において残留した未反応のモノマー類が散在することも考えられる。又液状材料として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などを使用した場合、光重合開始剤が消費されないため、同様に記録層101において光重合開始剤残渣Lが散在することになる。
本発明における光情報記録媒体100では、液状材料M1において、140℃〜400℃(140℃以上、400℃以下を意味する、以下、同様の意味で「〜」を用いる)に沸騰又は分解などにより気化する気化温度を有する光重合開始剤、残留溶剤又はモノマー類などの気化材料を配合することにより、初期化後の記録層101に140℃〜400℃に気化温度を有する気化材料を散在させておく。
図4に示すように記録層101に対物レンズOLを介して所定の記録用の光ビームL2(以下、これを記録光ビームL2cと呼ぶ)が照射されると、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍の温度が局所的に上昇し、例えば140℃以上の高温になる。
このとき記録光ビームL2cは、焦点Fb近傍の記録層101に含まれる気化材料を気化させ、その体積を増大させることにより、焦点Fbに気泡を形成する。このとき気化した光重合開始剤残渣は、そのまま記録層101の内部を透過し、又は記録光ビームL2cが照射されなくなることにより冷却され、体積の小さな液体に戻る。このため記録層101では、気泡により形成された空洞のみが焦点Fb近傍に残ることになる。なお記録層101のような樹脂は、通常一定の速度で空気を透過させることから、いずれ空洞内は空気によって満たされると考えられる。
すなわち光情報記録媒体100では、記録光ビームL2cを照射して記録層101が含有する気化材料を気化させることにより、図4(A)に示すように、焦点Fbに気泡によって形成された空洞でなる記録マークRMを形成することができる。
一般的に記録層101に使用されるフォトポリマーの屈折率n101が1.5程度であり、空気の屈折率nAIRが1.0である。このため、記録層101は、当該記録マークRMに対して読出光ビームL2dが照射されると、図4(B)に示すように、当該記録マークRMの界面における屈折率の差異により、読出光ビームL2dを反射して比較的光量の大きい戻り光ビームL3を生成する。
一方記録層101は、記録マークRMが記録されていない所定の目標位置に対して読出用の光ビームL2(以下、これを読出光ビームL2dと呼ぶ)が照射されると、図4(C)に示すように、目標位置近傍が一様の屈折率n101でなることにより、読出光ビームL2dを反射させることはない。
すなわち光情報記録媒体100では、記録層101の目標位置に読出光ビームL2dを照射し、光情報記録媒体100によって反射される戻り光ビームL3の光量を検出する。これにより、光情報記録媒体100は、記録層101における記録マークRMの有無を検出することができ、記録層101に記録された情報を再生し得るようになされている。
[3.記録層の光吸収特性]
光情報記録媒体100における記録層101は、100[℃]以上で所定時間(例えば1分間以上)に亘って加熱されることにより光吸収特性が変化するようになされている。すなわち記録層101は、加熱後の記録光ビームL2cの波長における光吸収量が加熱前の光吸収量と比較して増大するようになされている。
光情報記録媒体100における記録層101は、100[℃]以上で所定時間(例えば1分間以上)に亘って加熱されることにより光吸収特性が変化するようになされている。すなわち記録層101は、加熱後の記録光ビームL2cの波長における光吸収量が加熱前の光吸収量と比較して増大するようになされている。
この加熱前後による光吸収量の変化(以下、これを熱吸収変化量と呼ぶ)は、例えば記録層101の厚さt1が0.25[mm]である光情報記録媒体100に対して120[℃]で2分間の加熱を行った場合、6.0[%]以上であることが好ましく、さらに好ましくは12.0%以上である。
なおこの光吸収変化量は、記録層101の厚さt1に応じて変化する。以下に、透過率Tを表す一般的な物理公式を示している。(1)式において、kは吸光係数、dは厚さ(すなわち記録層の厚さt1)、λは照射光の波長を表している。(1)式において、透過率が20[%]とならT=0.2となる。
光吸収変化量は光吸収量、すなわち1−Tの変化量を示すものである。ここで厚さt1が変化した場合であっても、光吸収量における吸光係数k、照射光の波長λは変化しないため、光吸収変化量は厚さt1に応じてのみ変化することになる。
以下に、照射前の光吸収量を1−T1、照射後の光吸収量を1−T2、照射前の光吸収量における吸光係数をk1、照射後の光吸収量における吸収係数をk2としたときの光吸収変化量ΔAbを表している。
従って厚さtが0.25[mm]以外の厚さである場合には、照射前の光吸収量における吸光係数k1を算出すると共に、照射後の光吸収量から吸収係数k2を算出する。そして(2)式におけるdの値を0.25[mm]にすることより、0.25[mm]当たりの光吸収変化量を算出することができる。
これにより記録層101は、記録光ビームL2cの照射に応じて焦点Fb周辺が加熱されることにより、当該焦点Fb周辺の光吸収量を向上させて発熱量を増大させることができる。このため、記録像101は、焦点Fb周辺の温度を迅速に上昇させて気泡でなる記録マークRMを短時間で形成し得るようになされている。
具体的に記録層101は、硬化前の液状材料M1として配合される材料の選択により、加熱によって記録光ビームL2dの波長における熱吸収変化量が変化する材料を含んでいる。熱吸収変化量が変化する材料としては、好ましくは酸を発生させる酸発生剤と、酸及び加熱によって変性し、記録光ビームL2cに対する光吸収量が増加する特性を有する化合物(以下、これを酸変性化合物と呼ぶ)とが組み合わせられることが好ましい。
すなわち記録層101は、液状材料M1が酸変性化合物及び酸発生剤を含有することにより、記録層101の内部に酸変性化合物と酸発生剤を散在させることになる。
記録層101は、集光されてなる記録光ビームL2cが照射されると、焦点Fb周辺では、記録光ビームL2cによって発生される熱によって加熱される。このとき焦点Fbには、酸発生剤によって発生された酸が存在することになる。
この結果記録層101は、酸変性化合物を変性させ、当該酸変性化合物における記録光ビームL2cに対する光吸収量を向上させることができる。そして酸変性化合物が効果的に記録光ビームL2cを吸収して熱を発生することにより、記録層101に散在する気化材料が迅速に気化し、記録層101に空洞でなる記録マークRMが形成されるまでの記録時間を短縮し得るようになされている。
酸発生剤としては、プロトンを発生させるプロトン酸や電子を受容するルイス酸のいずれを用いても良い。具体的には、酸発生剤として、H2SO4やHClなどのいわゆる強酸の化合物や、RB(C6F5)4、RSbF6、RPF6、及びRBF4(ただしRは一般式)など、酸強度の大きい酸、若しくは酸強度の大きい酸を発生する化合物などが使用されることが好ましい。これにより酸発生剤は、一段と短時間で酸変性化合物を変性させることができ、迅速に記録光ビームL2cを吸収して熱を発生し得るからである。因みにこれらの酸発生剤は、酸が分離した状態で存在しても良く、分離していない状態で存在していても良い。この酸発生剤として、ルイス酸を発生させるルイス酸化合物が使用されるようにしても良い。
また酸発生剤として、記録光ビームL2cの波長でなる光又は熱に応じて酸を発生させるカチオン型重合開始剤が使用されることが好ましい。記録光ビームLc2の照射に応じてカチオンを発生させ得る一方、当該記録光ビームLc2が照射されないときには酸として作用せず、酸による記録層101の劣化を防止し得るからである。
この酸発生剤としては、発生させる酸の酸強度の大きいものが使用されることが特に好ましい。
以下に、一般的な酸の酸強度を大きい順に示している。なお「>>」は、酸強度に大きな差があることを表している。
HB(C6F5)4>HSbF6>>HPF6>HBF4>CF3SO3H>H2SO4
すなわち酸発生剤としては、酸強度のより高い化合物を用いることが好ましく、アニオン種として例えば一般式(2)、〜(5)に示すように、B(C6F5)4 −、SbF6 −を発生させる化合物を使用することが特に好ましい。さらに、毒性の高いアンチモンを含まないことから、B(C6F5)4 −を発生させる化合物(例えば一般式(2))を使用することが特に好ましい。あるいは、一般式(3)のルイス酸化合物を含有しても良い。
記録層101は、酸強度に応じて適量の酸発生剤を含有することができる。酸発生剤は、液状材料M1中において、モノマー類100重量部に対して0.7[%]以上、より好ましくは1.0[%]さらに好ましくは10.0[%]以上配合されることが好ましい。短時間で酸変性化合物を変性させ、記録時間を短縮し得るからである。酸発生剤は、気化材料又は光重合開始剤、若しくはその両方として添加することも可能である。
なお液状材料M1としてカチオン型重合開始剤を使用した場合には、モノマー類としてカチオン重合型のモノマー類を使用しても良いが、必ずしもカチオン重合型のモノマー類を使用する必要はない。
また酸変性化合物としては、酸発生剤及び熱に応じて迅速に変性する化合物が使用されることが好ましく、さらには初期化により重合するモノマー類の全部又は一部として含有するようにしても良い。この場合、初期化後に重合してなるポリマー又は重合せずに残留したモノマー類若しくはその両方が酸変性化合物となる。
酸変性化合物として、例えば一般式(1)に示したフルオレン骨格を有する化合物が好適に使用される。
このフルオレン骨格を有する化合物の一例を一般式(6)及び(7)に示す。
フルオレン骨格を有する化合物としては、例えば一般式(6)に記載のEO(Ethylene Oxide)変性されたフェニルフルオレン化合物のように、官能基としてアクリル基を有する化合物を酸変性化合物として用いることにより、当該酸変性化合物を光反応によって重合するモノマー類の一部又は全部として使用することも可能である。この酸変性化合物としては、アクリル基以外にも、エポキシ基やエステル基など種々の官能基を有していても良い。
また例えば一般式(7)に記載の化合物のように官能基を有さない化合物を酸変性化合物として用いることにより、当該酸変性化合物をモノマー類に添加して使用することが可能である。また当該化合物が固体である場合には、当該化合物を熱可塑性樹脂と同様にして使用することも可能である。
因みに酸変性化合物としては、熱吸収変化量が大きい特性を有すると共に、記録光ビームL2cの波長でなる光が所定の強度以上で照射されることにより、照射前と比較して光吸収量を増大させる特性を有する化合物が用いられても良い。これにより熱エネルギーに加え、光エネルギーにも反応して記録層101総体としての光吸収量を増大させることができ、光と熱との相乗効果により記録時間を一段と短縮できるからである。
また記録層101は、液状材料M1に上述した酸変性化合物の変性による光吸収量の増大を促進させる増感剤を含有するようにしても良い。
増感剤としては、加熱による光吸収量の増大を促進する、すなわち熱吸収変化量を増大させる化合物であれば良く、その構造に制限はない。増感剤は、記録光ビームL2cの照射に応じて発生する熱に対して特徴的に作用し、酸発生剤からの酸の発生を促進する効果を有することが特に好ましい。環境温度に対する安定性と、記録速度の向上のためである。
例えば増感剤として、一般式(8)に示すカルバゾール骨格を有するカルバゾール又はカルバゾール誘導体が好適に用いられる。
このカルバゾール誘導体としては、例えば一般式(9)〜一般式(12)に示す化合物が好適に用いられる。
このように、光情報記録媒体100では、液状材料M1に使用する材料の選択により、加熱によって記録層101の記録光ビームL2cに対する光吸収量が向上するように当該記録層101を構成する。
これにより記録層101は、記録光ビームL2cの照射に応じて、焦点Fb周辺の光吸収量が増加し、焦点Fb周辺の温度を迅速に上昇させて気泡でなる記録マークRMを短時間で形成し得るようになされている。
[4.実施例]
[4−1.実施例1]
[4−1−1.サンプルの作製]
以下の条件により、光情報記録媒体100としてのサンプルS1〜S4を作製した。また比較用サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR1〜R4も併せて作製した。
[4−1.実施例1]
[4−1−1.サンプルの作製]
以下の条件により、光情報記録媒体100としてのサンプルS1〜S4を作製した。また比較用サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR1〜R4も併せて作製した。
なお本実施例1において使用した4種類の光重合開始剤(以下に示す)をそれぞれ光重合開始剤A、B、D及びEと表す。また酸発生剤として光重合開始剤の他にルイス酸化合物Cを使用した。なお各重合開始剤及びルイス酸化合物は、市販されているものを使用している。この重合開始剤及びルイス酸化合物は、市販品のため下記に示す化合物の他に各種助剤が含有されている場合もある。
光重合開始剤A:クミルトリルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(一般式(2))
光重合開始剤B:トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(一般式(4))
ルイス酸化合物C:トリ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(一般式(3))
光重合開始剤D:t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(一般式(13))
光重合開始剤E:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(一般式(14)、以下に示す)
光重合開始剤B:トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(一般式(4))
ルイス酸化合物C:トリ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(一般式(3))
光重合開始剤D:t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(一般式(13))
光重合開始剤E:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(一般式(14)、以下に示す)
モノマー類100重量部に対し、光重合開始剤を加え、暗室化において混合脱泡することにより液状材料M1を調整した。
以下に、サンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4に使用した液状材料M1におけるモノマー類及び光重合開始剤の配合量の一覧を示す。なお光重合開始剤A、B及びDは酸を発生するカチオン型重合開始剤であり、酸発生剤として配合されている。ルイス酸化合物Cも同様に酸発生剤として配合されている。
なおアクリル酸エステルは、以下に示すp−クミルフェノールエチレンオキシド付加アクリル酸エステル(一般式(15))であり、フルオレン2官能アクリレートは、ジフェニルフルオレンEO変性ジアクリレート(一般式(6))である。
そして液状材料M1を基板103上に展開し、基板102及び103の間に挟み込んで未硬化光情報記録媒体100aを作製した。この未硬化光情報記録媒体100aに対し、高圧水銀灯でなる第1初期化光源1により初期化光L1(波長365[nm]においてパワー密度42[mW/cm2])を60[sec]照射することにより、光情報記録媒体100としてのサンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4を作製した。このサンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4における記録層101の厚さt1はいずれも0.25[mm]であった。なお記録層101の厚さt1は、レーザを走査させる変位計(キーエンス社、LT9000シリーズのLT9030Mヘッド)を用い、記録層101全体としての平均値として測定した。
[4−1−2.熱吸収変化量の測定]
次に、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4について、熱吸収変化量の測定を行った。
次に、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4について、熱吸収変化量の測定を行った。
まず光情報記録媒体100の光吸収量を分光光度計により測定した。具体的には、まず光情報記録媒体100を分光光度計(日本分光株式会社製、V560)の光出射方向から5度傾けて設置し、当該光情報記録媒体100に対して測定光を照射すると共に、当該光情報記録媒体100に対する測定光の反射率及び透過率を波長ごとに測定した。
そして測定光の照射量を100[%]とし、光情報記録媒体100の当該測定光に対する反射率及び透過率を100[%]から減算することにより加熱していない光情報記録媒体100の光吸収量(以下、これを加熱前光吸収量と呼ぶ)を算出した。
次に、光情報記録媒体100の加熱を行った。具体的には、常温(20〜50[℃])でなる加熱プレート上に光情報記録媒体100を載置し、10[℃/min]で120[℃]まで昇温させた。そして加熱プレートを120[℃]で2分間に亘って保持することにより光情報記録媒体100を加熱した後、当該光情報記録媒体100を室温(23[℃])まで冷却させた。なお以下、加熱された光情報記録媒体100を加熱後光情報記録媒体100Hと呼び、加熱していない光情報記録媒体100と区別する。
この加熱後光情報記録媒体100Hの光吸収量を光情報記録媒体100と同様にして測定し、加熱後光吸収量を測定した。そして405[nm]における加熱後光吸収量から405[nm]における加熱前光吸収量を減算することにより、405[nm]における熱吸収変化量を算出した。以下に、各光情報記録媒体100(サンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4)についての405[nm]における熱吸収変化量の一覧を示している。
表2から分かるように、サンプルS1〜S4では、熱吸収変化量がいずれも12.0[%]以上の高い値を示した。一方比較サンプルR1〜R4では、熱吸収変化量がいずれも5.7[%]以下の低い値を示した。
また図5に、サンプルS2〜S4及び比較サンプルR2について、波長が330[nm]〜800[nm]でなる光に対する熱吸収変化量を示している。図からわかるように、サンプルS2〜S4では、350[nm]〜650[nm]の広範囲の波長でなる光に対し、熱吸収変化量が比較的高い値を示していることが確認された。
[4−1−3.気化温度の測定]
次に、サンプルS1〜S4及び比較例R1〜R4で使用した光重合開始剤及びルイス酸化合物の気化温度を、TG/DTA(示唆熱・熱重量同時測定)によって測定した。測定条件を以下に示す。
次に、サンプルS1〜S4及び比較例R1〜R4で使用した光重合開始剤及びルイス酸化合物の気化温度を、TG/DTA(示唆熱・熱重量同時測定)によって測定した。測定条件を以下に示す。
雰囲気 :N2(窒素雰囲気下)
昇温速度:20[℃/min]
測定温度:40℃〜600℃
使用装置:TG/DTA300(セイコーインスツルメンツ株式会社製)
昇温速度:20[℃/min]
測定温度:40℃〜600℃
使用装置:TG/DTA300(セイコーインスツルメンツ株式会社製)
図6に、サンプルS1〜S4及び比較用サンプルR1〜R4で使用された光重合開始剤Eについての測定結果を示している。吸熱・発熱反応を示すDTG曲線(実線で示す)によれば、90[℃]付近から僅かに発熱反応が生じ始め、120℃付近から発熱反応が激しくなっている。
また重量変化を示すTG曲線(破線で示す)によれば、120[℃]付近から急激に重量減少が生じ、約147℃で測定対象物である光重合開始剤Eの殆ど全てが気化している。この最も激しく重量減少が生じた147℃を光重合開始剤Eの気化温度とした。
図7に、サンプルS1及びS2並びに比較用サンプルR1で使用された光重合開始剤Aについての測定結果を示している。DTA曲線によれば、130[℃]付近から融解と思われる吸熱反応が生じ、さらに230[℃]付近から分解と思われる発熱反応を生じている。
またTG曲線(破線で示す)によれば、230[℃]付近から急激に重量減少が生じ、約290℃で測定対象物である光重合開始剤Aの殆ど全てが気化している。この最も激しく重量減少が生じた290℃を光重合開始剤Aの気化温度とした。
なお図示しないが、他の光重合開始剤B及びD、ルイス酸化合物Cについても同様に気化温度を測定した。因みに例えば図8に示すように、測定対象物が複数の気化温度を有する場合には、最も低温において激しく重量減少が生じた温度(図7では289℃)を測定対象物の気化温度としている。
このように測定された光重合開始剤の気化温度の一覧を以下に示す。
表からわかるように、光重合開始剤A、B、D及びE、並びにルイス酸化合物Cは、いずれも140[℃]〜400[℃]の範囲内に気化温度を有することが確認された。
[4−1−4.記録マークの形成及び読出]
[4−1−4−1.光情報記録再生装置の構成]
図9において光情報記録再生装置5は、全体として光情報記録媒体100における記録層101に対して光を照射することにより、記録層101において想定される複数の記録マーク層(以下、これを仮想記録マーク層と呼ぶ)に情報を記録し、また当該情報を再生するようになされている。
[4−1−4−1.光情報記録再生装置の構成]
図9において光情報記録再生装置5は、全体として光情報記録媒体100における記録層101に対して光を照射することにより、記録層101において想定される複数の記録マーク層(以下、これを仮想記録マーク層と呼ぶ)に情報を記録し、また当該情報を再生するようになされている。
光情報記録再生装置5は、CPU(Central Processing Unit)構成でなる制御部6により全体を統括制御するようになされており、図示しないROM(Read Only Memory)から基本プログラムや情報記録プログラム、情報再生プログラム等の各種プログラムを読み出し、これらを図示しないRAM(Random Access Memory)に展開することにより、情報記録処理や情報再生処理等の各種処理を実行するようになされている。
制御部6は、光ピックアップ7を制御することにより、当該光ピックアップ7から光情報記録媒体100に対して光を照射させ、また当該光情報記録媒体100から戻ってきた光を受光するようになされている。
光ピックアップ7は、制御部6の制御に基づき、レーザダイオードでなる記録再生光源10から例えば波長405〜406[nm]の光ビームL2をDC出力で出射させ、当該光ビームL2をコリメータレンズ11により発散光から平行光に変換した上でビームスプリッタ12に入射させるようになされている。
因みに記録再生光源10は、制御部6の制御に従い、光ビームL2の光量を調整し得るようになされている。
ビームスプリッタ12は、反射透過面12Sにより光ビームL2の一部を透過させ、対物レンズ13へ入射させる。対物レンズ13は、光ビームL2を集光することにより、光情報記録媒体100内の任意の箇所に合焦させるようになされている。
また対物レンズ13は、光情報記録媒体100から戻り光ビームL3が戻ってきた場合、当該戻り光ビームL3を平行光に変換し、ビームスプリッタ12へ入射させる。このときビームスプリッタ12は、戻り光ビームL3の一部を反射透過面12Sにより反射し、集光レンズ14へ入射させる。
集光レンズ14は、戻り光ビームL3を集光して受光素子15に照射する。これに応じて受光素子15は、戻り光ビームL3の光量を検出し、当該光量に応じた検出信号を生成して制御部6へ送出する。これにより制御部6は、検出信号を基に戻り光ビームL3の検出状態を認識し得るようになされている。
ところで光ピックアップ7は、図示しない駆動部が設けられており、制御部6の制御により、X方向、Y方向及びZ方向の3軸方向に自在に移動し得るようになされている。実際上、制御部6は、当該光ピックアップ7の位置を制御することにより、光ビームL2の焦点位置を所望の位置に合わせ得るようになされている。
このように光情報記録再生装置5は、光情報記録媒体100内の任意の箇所に対して光ビームL2を集光し、また当該光情報記録媒体100から戻ってくる戻り光ビームL3を検出し得るようになされている。
[4−1−4−2.記録速度の測定]
具体的に光情報記録再生装置5は、記録層101の表面から深さ25〜200[μm]となる位置を目標位置とし、記録再生光源10から波長405〜406[nm]、光パワー55[mW]のレーザ光でなる記録光ビームL2cを射出し、これをNA(Numerical Aperture)=0.3の対物レンズ13により集光し、目標位置に対して照射した。
具体的に光情報記録再生装置5は、記録層101の表面から深さ25〜200[μm]となる位置を目標位置とし、記録再生光源10から波長405〜406[nm]、光パワー55[mW]のレーザ光でなる記録光ビームL2cを射出し、これをNA(Numerical Aperture)=0.3の対物レンズ13により集光し、目標位置に対して照射した。
光情報記録再生装置5は、光情報記録媒体100から情報を読み出す際、図10(B)に示すように、記録再生光源10(図9)からの読出光ビームL2dを記録層101内に集光する。この場合、光情報記録再生装置5は、光ピックアップ7(図9)のX方向、Y方向及びZ方向の位置を制御することにより、読出光ビームL2d(図10(B))を記録層101内の目標位置に合焦させる。
このとき光情報記録再生装置5は、記録再生光源10から記録光ビームL2cと同波長でなり光パワーが200[μW]又は1.0[mW]でなる読出光ビームL2dを出射し、対物レンズ13により記録層101内の記録マークRMが形成されているべき目標位置に集光させる。
このとき読出光ビームL2dは、記録マークRMにより反射され、戻り光ビームL3となる。光情報記録再生装置5は、対物レンズ13及びビームスプリッタ12等を介して当該戻り光ビームL3をCCD(Charge Coupled Device)でなる受光素子15により検出した。
まず光情報記録再生装置5は、サンプルS1における目標位置に対し、波長が405[nm]でなる光パワー55[mW]の記録光ビームL2cを開口数NAが0.3の対物レンズ13を介して照射した。このとき光情報記録再生装置5は、最短で記録可能な記録時間を測定するため、記録光ビームL2cを1[msec]から1[msec]刻みで増大させて照射した。
そして光情報記録再生装置5は、記録光ビームL2cと同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー1.0[mW]の読出光ビームL2dを照射した。
このとき受光素子15は、記録光ビームL2cを9[msec]照射した位置から十分に検出可能な光量でなる戻り光ビームL3を検出することができた。以下、このときの光量を基準光量とし、サンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4に対する記録時間を測定した。
このとき受光素子15は、記録光ビームL2cを9[msec]照射した位置から十分に検出可能な光量でなる戻り光ビームL3を検出することができた。以下、このときの光量を基準光量とし、サンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4に対する記録時間を測定した。
なおサンプルS2に対しては、1[msec]刻みで記録光ビームL2cを照射した場合に2[msec]で戻り光ビームL3を検出できたため、1.0[msec]から0.1[msec]刻みで記録光ビームL2cを照射し、記録時間を測定した。以下に、サンプルS1〜S4及び比較サンプルR1〜R4の記録時間を示している。
表からわかるように、熱吸収変化量が12.0[%]以上と高い値を示すサンプルS1〜S4では、記録時間がいずれも10[msec]未満の小さい値を示した。これに対して熱吸収変化量が5.7[%]未満と小さい値を示す比較サンプルR1〜R4では、記録時間がいずれも11[msec]以上の大きい値を示した。
比較用サンプルR1では、記録時間が11[msec]と僅かに10[msec]を超えていることから、記録時間を10[msec]以下に抑制するには、熱吸収変化量が6.0[%]以上、さらには12[%]以上でなるように記録層101を構成することが好ましいといえる。
また表1に示したように、B(C6F5)4 −、SbF6 −を発生させる光重合開始剤A〜Cを酸発生剤として用いたサンプルS1〜S4では記録時間が9[msec]以下と小さい値を示した。また酸発生剤として酸強度の比較的低いPF6 −を発生させる光重合開始剤Dを用いた比較サンプルR2では記録時間が30[msec]以上と大きい値を示した。このことから酸発生剤が発生する酸の酸強度は大きい方が好ましいことがわかる。
さらにサンプルS1と比較サンプルR1とでは、酸発生剤として同じ光重合開始剤Aを用いているものの、サンプルS1ではモノマー類100重量部に対して光重合開始剤Aを1.0重量部配合したのに対し、比較サンプルR1ではモノマー類100重量部に対して光重合開始剤Aを0.6重量部配合した。
比較サンプルR1では、サンプルS1と比較して記録時間が11[msec]と大きい値を示していることから、酸発生剤はモノマー類100重量部に対して1.0重量部以上配合されることが好ましいといえる。
[4−2.実施例2]
[4−2−1.サンプルの作製]
実施例1と同様にして、光情報記録媒体100としてのサンプルS11〜S13及びを作製した。また比較用サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR21〜R14も併せて作製した。
[4−2−1.サンプルの作製]
実施例1と同様にして、光情報記録媒体100としてのサンプルS11〜S13及びを作製した。また比較用サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR21〜R14も併せて作製した。
なお本実施例2では、実施例1において使用した光重合開始剤A、D及びEの他に、1種類の光重合開始剤(以下に示す)を使用しており、これを光重合開始剤Fと表す。
重合開始剤F:t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン(一般式(5))
また、フルオレン2官能エポキシは、一般式(1)に示したフルオレン骨格及び官能基として2つのエポキシ基を有するモノマー類(大阪ガス化学株式会社製、EX1020)である。
以下に、サンプルS11〜S13及び比較サンプルR11〜R14に使用した液状材料M1におけるモノマー類及び光重合開始剤の配合量の一覧を示す。なおサンプルS1及び比較サンプルR3は、実施例1と同一の処方である。
[4−2−2.光吸収変化量の測定]
本実施例では、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14について、記録光ビームL2cと同一波長でなる405[nm]の照射光を照射する前と照射した後における光情報記録媒体100の光吸収量の変化(以下、これを光吸収変化量と呼ぶ)を測定した。
本実施例では、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14について、記録光ビームL2cと同一波長でなる405[nm]の照射光を照射する前と照射した後における光情報記録媒体100の光吸収量の変化(以下、これを光吸収変化量と呼ぶ)を測定した。
まず光情報記録媒体100の光吸収量を実施例1と同様に分光光度計により測定し、照射光の照射前の光情報記録媒体100の光吸収量(以下、これを照射前光吸収量と呼ぶ)を算出した。
次に、光情報記録媒体100に対して照射光を照射した。具体的には、半導体レーザから出射された波長405[nm]でなる照射光をアナモプリズムによって整形し、アイリスで出力が高い部分のみを抽出した。さらに抽出した照射光をコリメータレンズで平行光に変換し、当該照射光を光情報記録媒体100に対して垂直に600秒間に亘って照射した。光情報記録媒体100に照射されたときの照射光の直径はφ2.3[mm]であり、照射光の光強度は55[mW]であり、照射光の照射エネルギーは800[mJ/cm2]であった。
なお以下、照射光の照射された光情報記録媒体100を照射後光情報記録媒体100Bと呼び、照射光の照射されていない光情報記録媒体100と区別する。
この照射後光情報記録媒体100Bの光吸収量を光情報記録媒体100と同様にして測定し、照射後光吸収量を測定した。そして405[nm]における照射後吸収量から405[nm]における照射前光吸収量を減算することにより、405[nm]における光吸収変化量を算出した。以下に、各光情報記録媒体100(サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14)についての405[nm]における光吸収変化量の一覧を示している。
表から分かるように、サンプルS1及びS11〜S13では、光吸収変化量がいずれも2.0[%]以上の高い値を示した。一方比較サンプルR3及びR11〜R14では、光吸収変化量がいずれも0.31[%]以下の低い値を示した。
また図11に、サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14について、波長が330[nm]〜800[nm]でなる光に対する光吸収変化量を示している。図からわかるように、サンプルS1及びS11〜S13では、350[nm]〜650[nm]の広範囲の波長でなる光に対し、光吸収変化量が比較的高い値を示していることが確認された。
また実施例2で使用した光重合開始剤の気化温度を実施例1と同様にして測定した。以下に、気化温度の一覧を示す。
[4−2−3.記録速度の測定]
サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14について、実施例1と同様にして記録時間を測定した。以下に、サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14についての記録時間を示している。
サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14について、実施例1と同様にして記録時間を測定した。以下に、サンプルS1及びS11〜S13、並びに比較サンプルR3及びR11〜R14についての記録時間を示している。
表からわかるように、光吸収変化量が2.1[%]以上と高い値を示すサンプルS1及びS11〜S13では、記録時間がいずれも10[msec]以下の小さい値を示した。これに対して光吸収変化量が0.31[%]以下と小さい値を示す比較サンプルR3及びR11〜R14では、記録時間がいずれも11[msec]以上の大きい値を示した。比較用サンプルR11では、記録時間が11[msec]と僅かに10[msec]を超えていることから、記録時間を10[msec]以下に抑制するには、光吸収変化量が0.4[%]以上、さらには2.1[%]以上でなるように記録層101を構成することが好ましいといえる。
また表1に示したように、酸発生剤として光重合開始剤A、D及びFのいずれを用いたサンプルS1及びS11〜S14であってもでは記録時間が10[msec]以下と小さい値を示した。
さらにサンプルS1と比較サンプルR11とでは、酸発生剤として同じ光重合開始剤Aを用いているものの、サンプルS1ではモノマー類100重量部に対して光重合開始剤Aを1.0重量部配合したのに対し、比較サンプルS1ではモノマー類100重量部に対して光重合開始剤Aを0.6重量部配合した。
比較サンプルR1では、サンプルS1と比較して記録時間が11[msec]と大きい値を示していることから、酸発生剤はモノマー類100重量部に対して0.7重量部以上、さらに好ましくは1.0重量部以上配合されることが好ましいといえる。
またフルオレン骨格を有するフルオレン2官能アクリレート(サンプルS12及びS13)及びフルオレン2官能エポキシ(サンプルS11)のいずれを用いた場合においても記録時間を短縮し得ることがわかった。このことから記録層101の初期化光L1による初期化の際にはカチオン重合及びラジカル重合のいずれをも使用できることがわかった。換言するとモノマー類の重合方法が記録時間に影響することはなく、硬化樹脂の重合方法を自由に選択し得る。
さらにサンプルS11では、酸を発生する光重合開始剤Aと酸によって重合を開始するフルオレン2官能エポキシとを組み合わせることにより、酸を発生させる酸発生剤をモノマー類の光反応を開始する光重合開始剤としても機能させ得ることがわかった。因みにサンプルS1、S12及びS13では、モノマー類の重合方式により、光重合開始剤Eが光重合開始剤として作用し、光重合開始剤A及びDは単に酸発生剤として機能しているものと考えられる。
またフルオレン骨格を有する化合物として官能基を有さないオクチルフルオレン(一般式(7))を用いたサンプルS14でも、記録時間を短縮し得ることがわかった。このことから、フォトポリマー材料に対し光反応に関与しないオクチルフルオレンを添加するだけでも記録時間を短縮する効果が得られることが確認された。
さらにこのサンプルS14では、記録時間が0.26[msec]と他のサンプルS1及びS11〜S13(記録時間2.1〜9.0[msec])と比較して大幅に記録時間を短縮することができた。これはオクチルフルオレンの構造に由来する効果であると考えられる。また、サンプルS14の光吸収変化量は7.5%と、他のサンプルS1及びS11〜S13の2.1[%]〜3.8[%]と比較して大きいことから、光吸収変化量が大きいと記録時間を一段と短縮し得ることがわかる。
またサンプルS1は、実施例1における加熱吸収変化量が17.5%と大きい値を示しただけでなく、実施例2における光吸収変化量も2.5%と大きい値を示し、光と熱の両方に反応して記録光ビームL2cに対する吸収量を変化させることがわかった。このサンプルS1では、記録光ビームL2cによる光と熱の両方に応じて迅速に酸変性化合物を変性させ、迅速に記録マークRMを形成することができると考えられる。実際上、記録時間は5.0[msec]と他のサンプルと比較して相対的に小さい値を示している。
[4−3.まとめ]
以上のことから記録層101は、酸発生剤としてカチオン活性の高い光重合開始剤A、B又はルイス酸化合物Cのいずれかと、酸変性化合物としてフルオレン2官能アクリレートを含有することにより、熱吸収変化量を大きくすることができ、記録時間を短縮することができることがわかった。
以上のことから記録層101は、酸発生剤としてカチオン活性の高い光重合開始剤A、B又はルイス酸化合物Cのいずれかと、酸変性化合物としてフルオレン2官能アクリレートを含有することにより、熱吸収変化量を大きくすることができ、記録時間を短縮することができることがわかった。
また熱吸収変化量及び光吸収変化量の両方を大きくすることにより、光と熱の相乗効果により記録時間を短縮することが期待される。
さらにオクチルフルオレンのように、光反応によって重合することのない化合物を酸変性化合物として添加することによっても、光吸収変化量を大きくし、記録時間をたんしゅくできることが確認された。このことから、酸発生剤及び酸変性化合物の選定により、光反応によって重合することのない化合物を酸変性化合物として添加することによっても、同様にして熱吸収変化量を大きくし、記録時間を短縮できることができると推測される。
すなわちオクチルフルオレンを添加したサンプルS14では、熱吸収変化量の測定を行っていないものの、酸発生剤としてサンプルS1と同じ光重合開始剤Aを使用していることから、光と熱との相乗効果によって記録時間が短縮されている可能性が高い。
また酸によっては重合を開始しないモノマー類を選択することにより、酸を発生する光重合開始剤A〜Dを初期化の際の光反応に殆ど寄与しないで単なる酸発生剤として機能させることができる。一方、酸によって重合を開始するモノマー類を選択することにより、酸を発生する光重合開始剤Aを酸発生剤だけでなく初期化の際の光反応に寄与する光重合開始剤としても機能させ得ることが確認された。
[5.増感剤による記録速度の向上]
さらに本願出願人は、記録層101に増感剤を含有させることにより、記録速度を著しく向上させ得ることを確認した。
さらに本願出願人は、記録層101に増感剤を含有させることにより、記録速度を著しく向上させ得ることを確認した。
[5−1.実施例3]
以下の条件により、光情報記録媒体100としてのサンプルS31〜S34を作製した。また比較サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR31も併せて作製した。
以下の条件により、光情報記録媒体100としてのサンプルS31〜S34を作製した。また比較サンプルとして、光情報記録媒体100としての比較サンプルR31も併せて作製した。
なお本実施例3では、増感剤として、4種類の増感剤H、I、J及びKを使用し、サンプルS31、S32、S33及びS34をそれぞれ作製した。また比較として増感剤を添加しない以外は同一の処方でなる比較サンプルR31を作製し、同様に実験を行った。なお実験に使用された各光重合開始剤、増感剤及びモノマー類は、市販されているものを使用している。これらの化合物は、市販品のため当該化合物の他に各種助剤が含有されている場合もある。
増感剤H:フェニルカルバゾール(一般式(9))
増感剤I:ビニルカルバゾール(一般式(10))
増感剤J:エチルカルバゾール(一般式(11))
増感剤K:メチルカルバゾール(一般式(12))
増感剤I:ビニルカルバゾール(一般式(10))
増感剤J:エチルカルバゾール(一般式(11))
増感剤K:メチルカルバゾール(一般式(12))
モノマー類100重量部に対し、光重合開始剤、増感剤などの各種材料を加え、暗室下において混合脱泡することにより液状材料M1を調整した。
以下に、サンプルS31〜S34及び比較サンプルR31に使用した液状材料M1における光重合開始剤、増感剤及びモノマー類の配合量の一覧を示す。実施例3では、酸発生剤及び気化材料として光重合開始剤Aを使用し、酸変性化合物としてフルオレン2官能アクリレートを使用した。
すなわちサンプルS31〜S33における液状材料M1は、比較サンプルR31に対し、増感剤H〜Kを添加したものである。
なおフルオレン2官能アクリレートは、ジフェニルフルオレンEO変性ジアクリレート(一般式(6))である。光重合開始剤Aは、クミルトリルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(一般式(2))である。光重合開始剤Eは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(一般式(14))である。
そして液状材料M1を基板103上に展開し、基板102及び103の間に挟み込んで未硬化光情報記録媒体100aを作製した。この未硬化光情報記録媒体100aに対し、高圧水銀灯でなる第1初期化光源1(波長365[nm]においてパワー密度42[mW/cm2]を60[sec]照射することにより、光情報記録媒体100としてのサンプルS31〜S34及び比較サンプルR31を作製した。このサンプルS31〜S34及び比較サンプルR31における記録層101の厚さt1はいずれも0.25[mm]であった。
[5−2.熱吸収変化量の測定]
本実施例では、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS31〜S33及び比較サンプルR31〜R34について、実施例1と同様にして加熱前と加熱後における光情報記録媒体100の熱吸収変化量を測定した。
本実施例では、上述した光情報記録媒体100としてのサンプルS31〜S33及び比較サンプルR31〜R34について、実施例1と同様にして加熱前と加熱後における光情報記録媒体100の熱吸収変化量を測定した。
まず実施例1と同様にして光情報記録媒体100の光吸収量を分光光度計により測定し、加熱前の光情報記録媒体100の加熱前光吸収量を算出した。
次に、実施例1と同様にして光情報記録媒体100を加熱し、加熱後光情報記録媒体100Hを作製した。本実施例では、常温(25[℃])でなる加熱プレート上に光情報記録媒体100を載置し、10[℃/min]で120[℃]まで上昇させ、120[℃]で5分間保持した。
この加熱後光情報記録媒体100Hの光吸収量を光情報記録媒体100と同様にして測定し、加熱後光吸収量を測定した。そして405[nm]における加熱後光吸収量から405[nm]における加熱前光吸収量を減算することにより、405[nm]における光吸収変化量を算出した。以下に、各光情報記録媒体100(サンプルS31〜S34、並びに比較サンプルR31)についての405[nm]における熱吸収変化量の一覧を示している。
表から分かるように増感剤H〜Kを含有するサンプルS31〜S34では、増感剤H〜Kを含有しない比較サンプルR31と比較して、熱吸収変化量がいずれも10.1[%]、36.2[%]、6.1[%]、8.6[%]それぞれ増大した。すなわち、増感剤H〜Kを添加することにより、熱吸収変化量の大幅な増大が確認された。
また図12に、サンプルS31〜S34、及び比較サンプルR31について、波長が330[nm]〜800[nm]でなる光に対する光吸収変化量を示している。図からわかるように、サンプルS31〜S33では、350[nm]〜650[nm]の広範囲の波長でなる光に対し、熱吸収変化量が比較的高い値を示していることが確認された。
また、例えばサンプルS32は、400[nm]付近に熱吸収変化量のピークを有し、長波長側にいくにつれて熱吸収変化量が徐々に低下している。これに対して、サンプルS34は、430[nm]になだらかなピークを有する他、650[nm]付近に大きく明確なピークを有している。このように、熱吸収変化量のピークは、添加される増感剤の種類によって変化することが確認された。
[5−3.記録速度の測定]
光情報記録再生装置5は、記録層101の表面から深さ25〜200[μm]となる位置を目標位置とし、記録再生光源10から波長405〜406[nm]、光パワー55[mW]のレーザ光でなる記録光ビームL2cを出射し、これを開口数NA=0.5の対物レンズ13により集光し、実施例1と同様にして目標位置に対して照射した。
光情報記録再生装置5は、記録層101の表面から深さ25〜200[μm]となる位置を目標位置とし、記録再生光源10から波長405〜406[nm]、光パワー55[mW]のレーザ光でなる記録光ビームL2cを出射し、これを開口数NA=0.5の対物レンズ13により集光し、実施例1と同様にして目標位置に対して照射した。
まず光情報記録再生装置5は、サンプルS31における目標位置に対し、波長が405[nm]でなる光パワー55[mW]の記録光ビームL2cを開口数NAが0.5の対物レンズ13を介して照射した。このとき光情報記録再生装置5は、最短で記録可能な記録時間を測定するため、記録光ビームL2cを0.5[msec]から0.05[msec]刻みで増大させて照射した。
そして光情報記録再生装置5は、記録光ビームL2cと同一波長、同一の開口数NAでなる対物レンズ13を介して光パワー1.0[mW]の読出光ビームL2dを照射した。
このとき受光素子15は、記録光ビームL2cを1.3[msec]照射した位置から十分に検出可能な光量でなる戻り光ビームL3を検出することができた。以下、このときの光量を基準光量とし、サンプルS31〜S34及び比較サンプルR31に対する記録時間を測定した。
このとき受光素子15は、記録光ビームL2cを1.3[msec]照射した位置から十分に検出可能な光量でなる戻り光ビームL3を検出することができた。以下、このときの光量を基準光量とし、サンプルS31〜S34及び比較サンプルR31に対する記録時間を測定した。
表からわかるように、増感剤H〜Kを含有するサンプルS31〜S34では、記録時間がいずれも1.5[msec]未満の小さい値を示した。これに対して増感剤を含有しない比較サンプルR31では、記録時間が1.5[msec]以上となる1.85[msec]であり、増感剤H〜Kを含有するサンプルS31〜34と比較して大きい値を示した。
このように、増感剤として一般式(9)〜(12)のカルバゾール誘導体を用いることにより、熱吸収変化量が大幅に増大し、記録時間を一段と短縮し得ることが確認された。
[5−4.まとめ]
実施例3より、記録層101では、熱吸収量変化量を上昇させる増感剤を含有することにより、記録速度を一段と短縮できることが確認された。
実施例3より、記録層101では、熱吸収量変化量を上昇させる増感剤を含有することにより、記録速度を一段と短縮できることが確認された。
この増感剤としては、一般式(9)〜(12)に示したような、カルバゾール骨格を有する化合物が効果的であった。
また、増感剤H〜Kの添加により、熱吸収変化量のピークを示すピーク波長が変動することが確認された。すなわち、記録層101では、記録光ビームL2cとして使用する波長に応じて増感剤を選択することにより、記録時間を一段と短縮し得る。
[6.動作及び効果]
以上の構成において、光情報記録媒体100の記録層101は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成する。記録層101は、100[℃]以上の加熱により記録光としての記録光ビームL2cの波長に対する光吸収量を増大させる(すなわち熱吸収変化量が大きい)特性を有している。
以上の構成において、光情報記録媒体100の記録層101は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成する。記録層101は、100[℃]以上の加熱により記録光としての記録光ビームL2cの波長に対する光吸収量を増大させる(すなわち熱吸収変化量が大きい)特性を有している。
これにより記録層101は、記録光ビームL2cが照射されたことにより焦点近傍Fbの温度が上昇することに応じて、当該記録光ビームL2cの光吸収量を増大させることができ、効果的に記録光ビームL2cを吸収して焦点Fb近傍の温度を迅速に上昇させ、記録マークRMを短時間で形成することができる。
また記録層101は、集光された記録光ビームL2cのような強度の大きな光に反応して瞬時に光吸収量を増大させることができる一方、記録光ビームL2cが照射されていない部分(すなわち記録マークRMが形成されていない部分)については光吸収量が小さいままであり、記録層101としての透過率を高いまま維持することができる。すなわち記録層101は、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍では光吸収量を増大させて迅速に記録マークRMを形成し得るものの、焦点Fb近傍以外では記録光ビームL2cを高透過率で透過させることが可能となる。
また記録層101は、当該記録層101の厚さ0.25[mm]当たりの光吸収量が加熱により6.0[%]以上、より好ましくは12.0[%]以上増大することにより、記録光ビームL2cのエネルギーを効果的に熱に変換して記録マークRMを形成するまでの記録時間を一段と短縮することができる。
さらに記録層101は、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有する光重合開始剤A、B又はE、若しくはルイス酸化合物C少なくともいずれか1種類を含有しており、情報の記録時に記録光ビームL2cが集光されると、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍の温度を上昇させて重合開始剤A〜Cを気化させることにより気泡でなる記録マークRMを形成する。これにより記録層101は、酸によって変性されてなる酸変性化合物によって効率良く記録光ビームL2cの光エネルギーを吸収して温度を上昇させ、光重合開始剤A、B又はE、若しくはルイス酸化合物Cを迅速に気化させて記録マークRMを形成することができる。
また記録層101は、120[℃]以上の加熱により記録光ビームL2cの波長に対する光吸収量を増大させる材料として、酸変性化合物と酸発生剤とを含有するようにした。
これにより記録層101は、情報が記録される際、記録光ビームL2cの照射による熱エネルギーと酸との相乗効果により焦点Fb近傍の光吸収量を増大させることができ、効率良く記録光ビームL2cを吸収して速やかに焦点Fb近傍の温度を上昇させ、記録マークRMを迅速に形成することができる。
さらに記録層101は、少なくともモノマー又はオリゴマーとしてのモノマー類と、気化材料としての光重合開始剤Eとが混合されてなる液状材料M1を光重合によって硬化させた樹脂でなる。液状材料M1は、光重合開始剤をモノマー類に対して過剰量配合し、硬化後の記録層101に光重合開始剤を残留させてなる。
これにより記録層101は、焦点Fb近傍の温度が上昇するのに伴って過剰量配合された光重合開始剤が気化することにより、記録マークRMを形成することができる。
記録層101は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより、酸を発生させる酸発生剤と、酸及び加熱によって変性されることにより記録光ビームL2cに対する光吸収量を増大する酸変性化合物とを含む。
これにより記録層101は、光吸収量の増大した酸変性化合物によって効率良く記録光ビームL2cを吸収し、迅速に焦点Fb近傍の温度を上昇させて短時間で記録マークRMを形成することができる。
記録層101は、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有するカチオン発生型の光重合開始剤又はルイス酸化合物と、当該カチオン発生型の光重合開始剤又はルイス酸化合物が発生する酸に応じて変性する酸変性化合物を含有する。記録層101は、情報の記録時に記録光ビームL2cが集光されると、記録光ビームL2cの焦点Fb近傍の温度を上昇させて光重合開始剤を気化させることにより空洞でなる記録マークRMを形成する。
これにより記録層101は、酸変性化合物の記録光ビームL2cに対する光吸収量を増大させ、より多くの記録光ビームL2cを吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることができ、記録マークRMが形成されるまでの記録時間を短縮することができる。
記録層101は、情報の記録時に集光される記録光ビームL2cを波長に応じて吸収して焦点Fb近傍の温度を上昇させることにより記録マークRMを形成すると共に、酸を発生させる酸発生剤と、一般式(1)に示すフルオレン骨格を有する化合物とを含む。
これにより記録層101は、記録ビームL2cが照射されたときに発生される酸によって一般式(1)に示すフルオレン骨格を有する化合物を変性させ、その光吸収量を増大させることにより短時間で記録マークRMを形成することができる。
記録層101は、酸変性剤による光吸収量を上昇させる増感剤を含有する。この増感剤は、一般式(8)に示すカルバゾール骨格を有する
これにより、記録層101は、記録光ビームL2cの照射時に熱吸収変化量を増大させて記録速度を一段と向上させることができる。
記録層101は、一般式(9)〜(12)に示される化合物を増感剤H〜Kとして含有する。
これにより、記録層101は、実際に記録速度が向上することが確認された。
以上の構成によれば、光情報記録媒体100の記録層101は、100[℃]以上の加熱に応じて光吸収量が増大する特性を有する。これにより記録層101は、情報記録処理の際、記録光ビームL2cの照射に応じて当該記録光ビームL2cに対する光吸収量を増大させることができ、迅速に焦点Fb近傍の温度を上昇させて短時間で記録マークRMを形成することができ、かくして記録速度を向上させ得る光情報記録媒体を実現することができる。
[7.他の実施の形態]
なお上述の実施の形態においては、記録層101が気泡(すなわち空洞)でなる記録マークRMを形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、記録光ビームL2cに応じた化学変化により焦点Fb近傍の屈折率が変化されてなる記録マークを形成するようにしても良い。要は、記録マークによって読出光ビームL2dを反射して検出可能な光量の戻り光ビームL3を発生させればよい。
なお上述の実施の形態においては、記録層101が気泡(すなわち空洞)でなる記録マークRMを形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、記録光ビームL2cに応じた化学変化により焦点Fb近傍の屈折率が変化されてなる記録マークを形成するようにしても良い。要は、記録マークによって読出光ビームL2dを反射して検出可能な光量の戻り光ビームL3を発生させればよい。
また上述の実施の形態においては、記録マークRMに対して読出光ビームL2dを照射し、当該記録マークRMによって反射されてなる戻り光ビームL3によって記録マークRMの有無を検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば読出光ビームL2dを透過させた透過光ビームを受光し、読出光ビームL2dの光量の増減を検出することにより記録マークRMの有無を検出するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、液状材料M1がモノマー類と光重合開始剤とから構成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、液状材料M1の構成材料としては、熱硬化性のモノマーやこれを硬化させるための硬化剤、バインダポリマーやオリゴマー、光重合を行うための開始剤、さらには必要に応じて増感色素などを加える等しても良く、要は硬化後の記録層101に光重合開始剤が含有されていれば良い。
なお、必要に応じて添加されるバインダ成分としては、エチレングリコール、グリセリンとその誘導体や多価のアルコール類、フタル酸エステルとその誘導体やナフタレンジカルボン酸エステルとその誘導体、リン酸エステルとその誘導体、脂肪酸ジエステルとその誘導体のような、可塑剤として用いることが可能な化合物が挙げられる。このとき用いられる光重合開始剤としては、情報の記録後に、後処理により適宜分解される化合物が望ましい。また増感色素としては、シアニン系、クマリン系、キノリン系色素などが挙げられる。
さらに上述の実施の形態においては、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有する光重合開始剤又はルイス酸化合物を記録層101に含有させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、140℃以上かつ400℃以下の気化温度を有するような化合物を気化材料として記録層101に含有させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、405[nm]における熱吸収変化量及び光吸収変化量を測定する際、分光光度計によって350[nm]から800[nm]までの各波長における光吸収量を測定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば光強度が0.3[μW/cm2]でなる405[nm]の光を照射して光吸収量を測定するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、記録層が含有する光重合開始剤及び硬化樹脂が記録光ビームL2cを吸収して発熱するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光重合開始剤又は硬化樹脂のいずれかが記録光ビームL2cを吸収して発熱するようにしても良い。また、記録層が含有する硬化樹脂や必要に応じて添加される添加剤などの光重合開始剤以外の化合物が記録光ビームL2cに応じて化学反応(例えば光又は熱に応じた化合・分解反応など)を生じて発熱することにより、焦点Fb近傍の温度を上昇させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、記録層101が光硬化型樹脂の硬化したフォトポリマーでなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば熱硬化型樹脂でなる記録層に対し、気化することにより気泡を形成する光重合開始剤残渣に相当する気化材料が含有されており、この記録層が初期化光L1によって化学変化を生じた場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
さらに上述した実施の形態においては、初期化処理(図2)において平行光でなる初期化光L1を光情報記録媒体100に照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば拡散光や収束光でなる初期化光L1を光情報記録媒体100に照射するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、カルバゾール骨格を有する化合物を増感剤として添加するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、熱吸収変化量を増大させる効果のある全ての化合物を用いることができる。特に、複数のベンゼン環を有し、ベンゼン環の間に極性基を有する構造でなる化合物が好適に用いられる。立体障害などが生じにくく、効果的に酸発生剤に作用し得るからである。
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の初期化処理を行うための初期化光L1、当該光情報記録媒体100に情報を記録するための記録光ビームL2c、及び当該光情報記録媒体100から情報を再生するための読出光ビームL2dの波長を統一するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長を統一する一方で初期化光L1の波長を両者と異なるようにし、或いは初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長を互いに異なるようにしても良い。
この場合、初期化光L1としては、記録層101を構成する光重合光硬化型樹脂における光化学反応の感度に適した波長であり、記録光ビームL2cとしては、物質の熱伝導により温度を上昇させるような波長又は吸収されやすいような波長であり、読出光ビームL2dとしては、最も高い解像度が得られるような波長であることが望ましい。このとき、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの波長等に応じて対物レンズ13(図8)のNA等についても適宜調整すれば良く、さらには情報の記録時と再生時とで記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dにそれぞれ最適化された2つの対物レンズを切り換えて用いるようにしても良い。
また、記録層101を構成するフォトポリマーに関しては、初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dのそれぞれの波長との組み合わせにおいて最も良好な特性が得られるよう、その成分等を適宜調整すれば良い。
さらに上述の実施の形態においては、記録再生光源2から出射される記録光ビームL22c並びに読出光ビームL2dの波長を波長405〜406[nm]とする以外にも、他の波長とするようにしても良く、要は記録層101内における目標位置の近傍に気泡による記録マークRMを適切に形成できれば良い。なお図5に示したように、サンプルS2、3及び4では405[nm]だけでなく、350[nm]〜600[nm]付近に対する熱吸収変化量が増大していることから、記録光ビームL2cの波長を350[nm]〜600[nm]の範囲で選択することにより上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の基板102側の面から初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dをそれぞれ照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば初期化光L1を基板103側の面から照射するようにする等、各光又は光ビームをそれぞれいずれの面、もしくは両面から照射するようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、光情報記録媒体100をテーブル4に固定し、光ピックアップ7をX方向、Y方向及びZ方向に変位させることにより、記録層101内における任意の位置を目標位置として記録マークRMを形成し得るようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば光情報記録媒体100をCDやDVD等のような光情報記録媒体として構成し、当該光情報記録媒体を回転駆動すると共に光ピックアップ7をX方向及びZ方向に変位させて情報の記録及び再生を行うようにしても良い。この場合、例えば基板102と記録層101との境界面などに溝状やピットによるトラックを形成してトラッキング制御やフォーカス制御等を行えば良い。
さらに上述した実施の形態においては、光情報記録媒体100の記録層101を一辺約50[mm]、厚さt1を約0.05〜1.0[mm]の円盤状に形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、他の任意の寸法とするようにし、或いは様々な寸法でなる正方形板状又は長方形板状、直方体状等、種々の形状としても良い。この場合、Z方向の厚さt1に関しては、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2dの透過率等を考慮した上で定めることが望ましい。
これに応じて基板102及び103の形状については、正方形板状又は長方形板状に限らず、記録層101に合わせた種々の形状であれば良い。また当該基板102及び103の材料については、ガラスに限らず、例えばポリカーボネイト等でも良く、要は初期化光L1、記録光ビームL2c及び読出光ビームL2d並びに戻り光ビームL3をある程度高い透過率で透過させれば良い。また、戻り光ビームL3の代わりに、読出光ビームL2dの透過光を受光する受光素子を配置して記録マークRMの有無に応じた読出光ビームL2dの光変調を検出することにより、当該読出光ビームL2dの光変調を基に情報を再生するようにしても良い。記録層101単体で所望の強度が得られる場合等に、光情報記録媒体100から当該基板102及び103を省略しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、記録層としての記録層101によって光情報記録媒体としての光情報記録媒体100を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる記録層によって光情報記録媒体を構成するようにしても良い。
本発明は、例えば映像コンテンツや音声コンテンツ等のような大容量の情報を光情報記録媒体等の記録媒体に記録し又は再生する光情報記録再生装置等でも利用できる。
2……初期化光源、5……情報記録再生装置、6……制御部、7……光ピックアップ、13……対物レンズ、15……受光素子、100……光情報記録媒体、100a……未硬化光情報記録媒体、101……記録層、102、103……基板、t1、t2、t3……厚さ、L1……初期化光、L2c……記録光ビーム、L2d……読出光ビーム、L3……戻り光ビーム、M1……液状材料。
Claims (6)
- 情報の記録時に集光される記録光を波長に応じて吸収して焦点近傍の温度を上昇させることにより記録マークを形成し、120[℃]以上の加熱により上記記録光の波長に対する光吸収量を増大させ、当該記録層の厚さ0.25[mm]当たりの上記光吸収量が上記加熱により6.0[%]以上増大する記録層
を有する光情報記録媒体。 - 上記記録層は、
当該記録層の厚さ0.25[mm]当たりの上記光吸収量が上記加熱により12.0[%]以上増大する
請求項1に記載の光情報記録媒体。 - 上記酸変性剤による上記光吸収量の増大率を上昇させる増感剤を含有する
請求項1に記載の光情報記録媒体。
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