JP2016074828A - 親水撥油剤、表面被覆材、塗布膜、樹脂組成物、油水分離濾材及び多孔質体 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた親水撥油性を有する新規な親水撥油剤を提供する。【解決手段】分子中に撥油性賦与基と親水性賦与基とを含む、ペルフルオロアルキル基含有化合物である親水撥油剤を選択する。【選択図】なし
Description
本発明は、親水撥油剤、表面被覆材、塗布膜、樹脂組成物、油水分離濾材及び多孔質体に関する。
一般的に防汚技術としては、汚れを付着しにくくするための撥油性と、付着した汚れを水洗で容易に落とせる親水性を基材に付与することが望ましい。基材表面に親水性を付与する技術としては、酸化チタンなどを固定化し、光触媒の作用による超親水化によって付着した汚れを洗い落とす方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、光触媒膜を用いる場合、汚れが落ちやすいという機能は得られるものの、汚れの付着を防ぐ特性が十分ではないという課題があった。特に、光触媒機能の発現に必要な光が十分に得られない環境では、十分な防汚性が得られない場合があった。
一方、基材表面に撥油性を付与する技術としては、主にフッ素系の化合物が用いられる。フッ素系の化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、ペルフルオロアルキル基を分子中に有する化合物を表面加工剤として用いる方法が知られているが、これらのフッ素系化合物は、撥水性が高く、一般的な疎水性のコーティング膜と同様に、表面に付着した油汚れの拭き取りや水洗浄による除去が困難であるという課題があった。特に、水がかかる環境で使用する場合には、逆に油汚れが付着しやすくなるという問題があった。
フッ素樹脂の表面を親水化するため、外面にプラズマ表面処理や火炎処理、オゾン処理などを施したフッ素樹脂が提案されているが(特許文献2)、特殊な処理が必要であり、得られる親水性も十分とは言いがたく、親水性を付与すると撥油性の機能が得られず、また、フッ素樹脂は基材表面への塗工や加工が難しいという課題があった。
以上のことから、基板等の処理対象物に十分な防汚機能を付与するためには、優れた親水性と撥油性を同時に発現する親水撥油剤が望まれていた。優れた親水撥油剤は、防汚機能の他にも、濡れ性の向上に伴う水の速乾性や、防曇性、油水分離性など、広範な用途において有用であるが、特に油水分離性用途において有用である。
しかしながら、従来の化合物には、優れた親水性と撥油性を同時に発現する化合物は存在せず、十分な防汚機能や油水分離機能を付与することが難しいのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、優れた親水撥油性を有する新規な親水撥油剤を提供すること、及び、この親水撥油剤を含む表面被覆材、塗布膜、樹脂組成物、油水分離濾材、多孔質体を提供することを課題とする。
ところで、フッ素化合物を表面加工剤として用いた場合、処理された表面は撥水撥油性を示すのが通常であり、フッ素構造の炭素数が多くなるほど撥水性は大きくなるのが一般的である。しかしながら、本願の発明者らが鋭意検討した結果、特定のペルフルオロアルキル基含有化合物に、親水性付与基を付加した化合物において、親水撥油性という従来のフッ素化合物では実現できなかった特異な特性を有し、特にフッ素構造の炭素数が多い化合物において、優れた親水性と撥油性とを同時に発現することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 下記式(1)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物である、親水撥油剤。
[1] 下記式(1)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物である、親水撥油剤。
Rf−X ・・・(1)
上記式(1)中、Rfは、炭素数6〜16であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
[2] 下記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物である、親水撥油剤。
Rf−R−X ・・・(2)
Rf−R−X ・・・(2)
上記式(2)中、Rfは、炭素数6〜16であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
また、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
[3] 前記Rが、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含む、前項2に記載の親水撥油剤。
[4] 上記式(1)及び上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選ばれる2以上のペルフルオロアルキル基含有化合物を含む、前項1乃至3のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[5] 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に「−CO2M1」又は「−SO3M1」、「−OSO2M1」、「−OP(OH)O2M1」、「−OPO3M1 2」又は「=O2PO2M1」(M1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+;R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有するアニオン型の親水性賦与基である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[6] 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に「−N+R5R6R7・Cl−」、「−N+R5R6R7・Br−」、「−N+R5R6R7・I−」、「−N+R5R6R7・CH3SO3 −」、「−N+R5R6R7・NO3 −」、「(−N+R5R6R7)2CO3 2−」又は「(−N+R5R6R7)2SO4 2−」(R5〜R7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有するカチオン型の親水性賦与基である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[7] 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nCO2 −」、スルホベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nSO3 −」又はアミンオキシド型の「−N+R8R9O−」(nは1〜5の整数、R8、R9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する両性型の親水性賦与基である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[6] 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に「−N+R5R6R7・Cl−」、「−N+R5R6R7・Br−」、「−N+R5R6R7・I−」、「−N+R5R6R7・CH3SO3 −」、「−N+R5R6R7・NO3 −」、「(−N+R5R6R7)2CO3 2−」又は「(−N+R5R6R7)2SO4 2−」(R5〜R7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有するカチオン型の親水性賦与基である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[7] 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nCO2 −」、スルホベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nSO3 −」又はアミンオキシド型の「−N+R8R9O−」(nは1〜5の整数、R8、R9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する両性型の親水性賦与基である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
[8] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤と溶媒とを含み、
前記親水撥油剤と前記溶媒との質量組成比が、0.2対99.8〜50対50の範囲である、表面被覆材。
[9] 前記溶媒が、水、アルコール又は水とアルコールとの混合物である、前項8に記載の表面被覆材。
[10] さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、前項8又は9に記載の表面被覆材。
[11] 前記結合剤が樹脂である、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[12] 前記結合剤が水溶性樹脂である、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[13] 前記結合剤が水ガラスである、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
前記親水撥油剤と前記溶媒との質量組成比が、0.2対99.8〜50対50の範囲である、表面被覆材。
[9] 前記溶媒が、水、アルコール又は水とアルコールとの混合物である、前項8に記載の表面被覆材。
[10] さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、前項8又は9に記載の表面被覆材。
[11] 前記結合剤が樹脂である、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[12] 前記結合剤が水溶性樹脂である、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[13] 前記結合剤が水ガラスである、前項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[14] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤を含む、塗布膜。
[15] さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、前項14に記載の塗布膜。
[15] さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、前項14に記載の塗布膜。
[16] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤と、樹脂とを含み、
前記親水撥油剤と前記樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、樹脂組成物。
前記親水撥油剤と前記樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、樹脂組成物。
[17] 前項14又は15に記載の塗布膜又は前項16に記載の樹脂組成物を含む、油水分離濾材。
[18] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤を含む、多孔質体。
[19] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤が樹脂で結合されている、多孔質体。
[20] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤がガラス質で結合されている、多孔質体。
[19] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤が樹脂で結合されている、多孔質体。
[20] 前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤がガラス質で結合されている、多孔質体。
本発明の親水撥油剤は、ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基と、を分子中に含む構造であるため、優れた親水撥油性を有する材料であり、多種多様な用途に適用可能性を有する。特に、油水分離用途に好適な材料である。
以下、本発明を適用した一実施形態である親水撥油剤について、それを含む表面被覆材、塗布膜、樹脂組成物、油水分離濾材及び多孔質体とともに詳細に説明する。
<親水撥油剤>
先ず、本発明を適用した一実施形態である親水撥油剤の構成について説明する。
本実施形態の親水撥油剤は、具体的には、下記式(1)又は下記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物、もしくは上記式(1)及び上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選ばれる2以上のペルフルオロアルキル基含有化合物を含む混合物である。
先ず、本発明を適用した一実施形態である親水撥油剤の構成について説明する。
本実施形態の親水撥油剤は、具体的には、下記式(1)又は下記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物、もしくは上記式(1)及び上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選ばれる2以上のペルフルオロアルキル基含有化合物を含む混合物である。
Rf−X ・・・(1)
Rf−R−X ・・・(2)
上記式(1)又は上記式(2)中、Rfは、炭素数6〜16のペルフルオロアルキル基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
ここで、上記式(1)又は上記式(2)中、Rf、すなわち、炭素数6〜16のペルフルオロアルキル基が、撥油性賦与基を構成する。
本実施形態の親水撥油剤では、上記撥油性賦与基であるRf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が6〜16個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が6未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
本実施形態の親水撥油剤では、上記撥油性賦与基であるRf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が6〜16個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が6未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
また、上記式(1)又は上記式(2)中、Rfは、炭素数6〜16の不飽和ペルフルオロアルキル基であってもよい。上記式(1)又は上記式(2)中のRfが不飽和ペルフルオロアルキル基の構造の具体例としては、例えば、下記式(3)〜(6)の構造が挙げられる。
ここで、上記式(2)中、Rは、分子鎖中において撥油性賦与基と親水性賦与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、直鎖状又は分岐状の、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
具体的には、例えば、連結基Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であってもよいし、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。
また、連結基Rは、分子鎖中に、二元共重合体又は三元共重合体以上のポリマーを有していてもよい。
ここで、上記式(2)において、連結基Rの分子鎖中に三元共重合体を有する場合の一例について、下記一般式(7)に示す。
上記一般式(7)中、R10は、水素原子又はメチル基である。また、o,p,qは、それぞれ独立した1以上の整数である。X1、X2は、互いに異なる親水性賦与基である。さらに、R11は、共重合体の主鎖と撥油性賦与基とを繋ぐ2価の有機基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含む。更にまた、共重合体の主鎖と親水性賦与基とを繋ぐ2価の有機基である、R12、R13があってもよいし、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
なお、連結基Rは、親水撥油剤に賦与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、水や有機溶媒への溶解性を調整したい場合、親水撥油剤を含む表面被覆材(コーティング剤)と基板との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、親水撥油剤と樹脂成分又は塗料成分との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基板や樹脂成分又は塗料成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
また、上記式(1)又は上記式(2)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
以下、親水性賦与基Xを場合分けして、本実施形態の親水撥油剤の構造を説明する。
以下、親水性賦与基Xを場合分けして、本実施形態の親水撥油剤の構造を説明する。
(アニオン型)
親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO2M1」又は「−SO3M1」、「−OSO2M1」、「−OP(OH)O2M1」、「−OPO3M1 2」又は「=O2PO2M1」(M1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+;R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO2M1」又は「−SO3M1」、「−OSO2M1」、「−OP(OH)O2M1」、「−OPO3M1 2」又は「=O2PO2M1」(M1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+;R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩(R1R2R3R4N+)としては、R1〜R4が水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。より具体的には、R1R2R3R4が全て同じ化合物としては、例えば、(CH3)4N+、(C2H5)4N+、(C3H7)4N+、(C4H9)4N+、(C5H11)4N+、(C6H13)4N+、(C7H15)4N+、(C8H17)4N+、(C9H19)4N+、(C10H21)4N+等が挙げられる。また、R1R2R3が全てメチル基の場合としては、例えば、R4が(C2H5)、(C6H13)、(C8H17)、(C9H19)、(C10H21)、(C12H25)、(C14H29)、(C16H33)、(C18H37)等の化合物が挙げられる。さらに、R1R2が全てメチル基の場合としては、例えば、R3R4が全て(C8H17)、(C10H21)、(C12H25)、(C14H29)、(C16H33)、(C18H37)等の化合物が挙げられる。更にまた、R1がメチル基の場合としては、例えば、R2R3R4が全て(C4H9)、(C8H17)等の化合物が挙げられる。
ところで、油水分離濾材など、水と接触させて使用するような用途においては、水に対する耐久性や親水撥油効果の持続性を有することが望まれる。上記観点から、本実施形態の親水撥油剤は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記M1が、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
ここで、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤の構造の具体例(但し、対イオンであるM1の構造を除く)としては、例えば、下記式(8)〜(60)の構造が挙げられる。
(カチオン型)
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N+R5R6R7・Cl−」、「−N+R5R6R7・Br−」、「−N+R5R6R7・I−」、「−N+R5R6R7・CH3SO3 −」、「−N+R5R6R7・NO3 −」、「(−N+R5R6R7)2CO3 2−」又は「(−N+R5R6R7)2SO4 2−」(R5〜R7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N+R5R6R7・Cl−」、「−N+R5R6R7・Br−」、「−N+R5R6R7・I−」、「−N+R5R6R7・CH3SO3 −」、「−N+R5R6R7・NO3 −」、「(−N+R5R6R7)2CO3 2−」又は「(−N+R5R6R7)2SO4 2−」(R5〜R7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
ここで、親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(61)〜(98)の構造が挙げられる。
(両性型)
親水性賦与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nCO2 −」、スルホベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nSO3 −」又はアミンオキシド型の「−N+R8R9O−」(nは1〜5の整数、R8、R9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
親水性賦与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nCO2 −」、スルホベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nSO3 −」又はアミンオキシド型の「−N+R8R9O−」(nは1〜5の整数、R8、R9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
ここで、親水性賦与基Xが両性型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(99)〜(129)の構造が挙げられる。
なお、上述した本実施形態の親水撥油剤の構造の具体例は一例であって、本発明の技術範囲は上記具体例に限定されるものではない。すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基と、を分子中に少なくともそれぞれ1以上有していればよい。
また、上述した本実施形態の親水撥油剤は夫々単独で親水撥油性を充分発揮するが、実用環境は、酸、アルカリ、油等を含み千差万別であり、実用的な耐久性を加味した場合、親水撥油剤を適宜組み合わせて、実際環境に対する耐久性を高めることが、望ましい。
なお、本発明の親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態の親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる撥油性賦与基を2以上有していてもよい。さらに、分子中に撥油性賦与基を2以上有する場合、分子鎖の末端に設けられていてもよいし、分子鎖中に設けられていてもよい。
また、本実施形態の親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる親水性賦与基を2以上有していてもよい。
すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、下記一般式(130)〜(132)で示される二鎖型のペルフルオロアルキル基含有化合物であってもよい。
上記一般式(130)〜(132)中、Rf1、Rf2は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数4〜11のペルフルオロアルキル基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
また、n,mは、それぞれ同一または互いに異なる1〜20の整数である。
また、M1、M2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+(R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)のいずれかである。
また、n,mは、それぞれ同一または互いに異なる1〜20の整数である。
また、M1、M2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+(R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)のいずれかである。
ここで、上記一般式(130)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(133)〜(135)の構造が挙げられる。
また、上記一般式(131)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(136)〜(138)の構造が挙げられる。
また、上記一般式(132)で示される親水撥油剤の構造の具体例としては、例えば、下記式(139)〜(142)の構造が挙げられる。
また、本実施形態の親水撥油剤は、連結基中に同一又は異なる結合を2以上有していてもよい。さらに、連結基がポリマー型である場合、ユニットの繰り返し数や結合順序は特に限定されない。
次に、上記式(1)又は上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物の、親水撥油性の評価方法について説明する。ここで、親水撥油性の評価は、具体的には、フィルター浸透試験によって行うことができる。
フィルター浸透試験は、先ず、上記式(1)又は上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物をメタノールに溶解させて2.0質量%メタノール溶液とし、当該溶液中に市販のPTFE製メンブレンフィルター(ADVANTEC T100A−:孔径1μm、空隙率79%、厚さ75μm)を浸漬し、室温乾燥して得られたフィルターに対して、水及びn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下する。滴下後、目視判定により、水が5分以内にフィルターに浸透し、かつn−ヘキサデカンが30分経過後もフィルターに浸透しない場合に、ペルフルオロアルキル基含有化合物が親水撥油性を有する(すなわち、ペルフルオロアルキル基含有化合物が、親水撥油剤である)という。なお、未処理のPTFE製メンブレンフィルターは、水が30分経過後もフィルターに浸透せず、かつn−ヘキサデカンが5分以内にフィルターに浸透した(すなわち、撥水親油性である)。
なお、フィルター浸透試験において、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いて行う。
滴下容量:40〜45μL/滴(水)
滴下容量:20〜25μL/滴(n−ヘキサデカン)
滴下高さ:PTFE製メンブレンフィルターの表面から5cm
滴下冶具:ポリスポイト
滴下容量:40〜45μL/滴(水)
滴下容量:20〜25μL/滴(n−ヘキサデカン)
滴下高さ:PTFE製メンブレンフィルターの表面から5cm
滴下冶具:ポリスポイト
また、上記式(1)又は上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物の、親水撥油性の評価には、接触角の測定結果を用いてもよい。
接触角測定は、先ず、上記式(1)又は上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物をメタノールに溶解させて、2.0質量%メタノール溶液とした。予め1N水酸化カリウム水溶液に室温で2時間浸漬させ、その後純水洗浄、アセトン洗浄を行って、乾燥させたソーダガラス板を、前記メタノール溶液中に浸漬(ディップコート)し、室温乾燥によりメタノールを除去して当該ガラス板上に塗布膜を形成する。次いで、この塗布膜の上に、水及びn−ヘキサデカンを滴下し、塗布膜と液滴との接触角をそれぞれ測定する。
なお、接触角測定において、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いて行う。
滴下容量:2μL/滴(水)
滴下容量:2μL/滴(n−ヘキサデカン)
滴下容量:2μL/滴(水)
滴下容量:2μL/滴(n−ヘキサデカン)
<親水撥油剤の製造方法>
次に、本実施形態の親水撥油剤の製造方法について説明する。
本実施形態の親水撥油剤は、一般的に入手可能なペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として製造することができる。
次に、本実施形態の親水撥油剤の製造方法について説明する。
本実施形態の親水撥油剤は、一般的に入手可能なペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として製造することができる。
なお、本実施形態の親水撥油剤の製造方法は、上記式(1)及び上記式(2)中に示すXの種類により異なる製造方法となる。以下に、場合分けして説明する。
(アニオン型の場合)
先ず、上記式(1)に示すペルフルオロアルキル基含有化合物を製造する場合について説明する。
ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物を原料とする場合は、水溶液化したM(OH)m(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、ペルフルオロアルキル基を有するスルホン酸ハロゲン化物を原料とする場合は、水溶液化したM(OH)m(MはLi,Na,K,R1R2R3R4N+,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するハロゲン化物が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)mで所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
先ず、上記式(1)に示すペルフルオロアルキル基含有化合物を製造する場合について説明する。
ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物を原料とする場合は、水溶液化したM(OH)m(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、ペルフルオロアルキル基を有するスルホン酸ハロゲン化物を原料とする場合は、水溶液化したM(OH)m(MはLi,Na,K,R1R2R3R4N+,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するハロゲン化物が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)mで所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
次に、上記式(2)に示すペルフルオロアルキル基含有化合物を製造する場合について説明する。
具体的には、例えば、撥油性賦与基(ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
具体的には、例えば、撥油性賦与基(ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性賦与基(ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、エステル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、ヒドロキシフェニル有機酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、エステル結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性賦与基(ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、エーテル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で還元して、ペルフルオロアルキル基を持つアルコールを生成する。次いで、t-ブトキシカリウム等でカリウムアルコラートにしてから、ハロゲン化有機酸の金属塩と反応させることにより、エーテル結合を持つカルボン酸のアルカリ金属塩が得られる。
(カチオン型の場合)
具体的には、例えば、原料のうち、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CH3I)や臭化メチル(CH3Br)、ジメチル硫酸((CH3)2SO4)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
具体的には、例えば、原料のうち、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CH3I)や臭化メチル(CH3Br)、ジメチル硫酸((CH3)2SO4)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
また、例えば、原料のうち、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとをエーテル結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CH3I)や臭化メチル(CH3Br)、ジメチル硫酸((CH3)2SO4)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
(両性型の場合)
具体的には、例えば、カルボキシベタインタイプの場合、先ず、原料のうち、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
具体的には、例えば、カルボキシベタインタイプの場合、先ず、原料のうち、ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
また、例えば、スルホベタインタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、1,3−プロパンスルトン等に代表される環状スルホン酸エステル化合物と反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
また、例えば、アミンオキシドタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、過酸化水素と反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有するペルフルオロアルキル基含有化合物が得られる。
<表面被覆材>
上述した本実施形態の親水撥油剤を、水または有機溶媒に含有させることによって、親水撥油剤の表面被覆材を形成することができる。ここで、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、IPA、テトラヒドロフラン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、DMSO、DMF、アセトン、フッ素系溶剤などが挙げられる。特に、乾燥が容易で使用しやすく、また環境影響等の観点から、水やメタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合物が好ましい。
上述した本実施形態の親水撥油剤を、水または有機溶媒に含有させることによって、親水撥油剤の表面被覆材を形成することができる。ここで、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、IPA、テトラヒドロフラン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、DMSO、DMF、アセトン、フッ素系溶剤などが挙げられる。特に、乾燥が容易で使用しやすく、また環境影響等の観点から、水やメタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合物が好ましい。
ここで、表面被覆材において、親水撥油剤と水または有機溶媒との質量組成比は、0.2対99.8から50対50が好ましく、より好ましくは1対99から20対80である。表面被覆材中の親水撥油剤の質量組成比が0.2未満であると、処理した際に基材全体が充分親水撥油化できない恐れがあるために好ましくない。一方、表面被覆材中の親水撥油剤の質量組成比が50を超えると、表面被覆材の溶液分散安定性が損なわれ易いために好ましくない。塗布性や生成物の耐久性を加味すると、1対99から20対80が好ましい。
また、表面被覆材には、基材への密着性を高める他に、親水撥油剤を包み込んで、親水撥油剤自体の環境に接触する面積を低減する機能を有し、特性の持続性耐久性を向上させるために、さらに任意成分として結合剤を添加することが好ましい。
結合剤としては、具体的には、例えば、樹脂や無機ガラスが挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等があり、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
さらに、親水撥油性の特性を最大限に発揮させるためには、結合剤として親水性ポリマーを用いることが好ましい。また、親水性ポリマーとしては、ヒドロキシル基を含有しているものが好ましい。
親水性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロースなどの多糖およびその誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーは、架橋剤により架橋してもよい。このような架橋により、塗膜(被膜)の耐久性が向上する。
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、紫外線架橋型化合物、脱離基含有化合物、カルボン酸化合物、ウレア化合物などが挙げられる。
無機ガラスとしては、具体的には、例えば、化学式[R14Si(OR15)3]で示されるトリアルコキシシラン、化学式[Si(OR16)4](R14〜R16はそれぞれ独立した炭素数1〜6までのアルキル基)で示されるテトラアルコキシシラン等のシラン化合物や、水ガラス等が挙げられる。これらの中でも、水ガラスは、耐久性の向上効果が高いために好ましい。
表面被覆材において、親水撥油剤と結合剤との質量組成比は、10対90から99.9対0.1の範囲であることが好ましい。親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、親水撥油性が充分得られないために好ましくない。
表面被覆材を形成するための混合方法としては、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、インペラー式攪拌機、超音波分散機、マグネチックスターラーなど、親水撥油剤が水または有機溶媒中に分散又は溶解できる方法であれば特に限定されるものではない。
なお、表面被覆材は、親水撥油剤と溶媒、結合剤の他に、顔料や導電付与剤、レベリング剤等の親水撥油以外の機能を付与するために、添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
<塗布膜>
上述した表面被覆材を用いて基材を被覆することにより、塗布膜を形成することができる。この塗布膜において、親水撥油剤のみからなる場合と、結合剤を含む場合とがある。結合剤を含む場合は、親水撥油剤と結合剤との質量組成比は、10対90から99.9対0.1の範囲であることが好ましい。ここで、親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、十分な親水撥油性が得られないために好ましくない。基材との密着性や塗布膜の耐久性を加味すると、10対90から90対10が特に好ましい。
上述した表面被覆材を用いて基材を被覆することにより、塗布膜を形成することができる。この塗布膜において、親水撥油剤のみからなる場合と、結合剤を含む場合とがある。結合剤を含む場合は、親水撥油剤と結合剤との質量組成比は、10対90から99.9対0.1の範囲であることが好ましい。ここで、親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、十分な親水撥油性が得られないために好ましくない。基材との密着性や塗布膜の耐久性を加味すると、10対90から90対10が特に好ましい。
塗布膜の形成方法としては、具体的には、例えば、基材の表面に上述した表面被覆材を塗布し、溶剤を除去するために乾燥処理することにより、基材の表面に塗布膜を形成することができる。
基材としては、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの構造体、積層体等を用いることができる。
塗布工程において、基材の表面への塗布方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、表面被覆材中に基材を浸漬する浸漬法、スプレー、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法などが挙げられる。
形成工程において、塗膜の乾燥処理の条件としては、表面被覆材に含まれる溶媒の種類や含有量などによっても異なるが、例えば、常温で1〜24時間の乾燥や、基材に影響を与えない程度での加熱による乾燥が挙げられる。
<樹脂組成物>
上述した本実施形態の親水撥油剤は、各種樹脂に親水撥油性の機能を付与するための添加剤として用いることができる。
上述した本実施形態の親水撥油剤は、各種樹脂に親水撥油性の機能を付与するための添加剤として用いることができる。
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂としては、親水撥油剤が分散あるいは溶解できる樹脂であれば特に限定されるものではない。このような樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
さらに、親水撥油性の特性を最大限に発揮させるためには、樹脂として、親水性ポリマーを用いることが好ましい。親水性ポリマーとしては、ヒドロキシル基を含有しているものが好ましい。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロースなどの多糖およびその誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、親水性ポリマーは、架橋剤により架橋してもよい。このような架橋により、塗膜(被膜)の耐久性が向上する。
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、紫外線架橋型化合物、脱離基含有化合物、カルボン酸化合物、ウレア化合物等が挙げられる。
樹脂組成物は、親水撥油剤と樹脂とのほかに、流動性改善剤、界面活性剤、難燃剤、導電付与剤、防カビ剤等の親水撥油以外の機能を付与するために添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
樹脂組成物の形成方法としては、樹脂の種類にあわせて適切に選択された親水撥油剤が分散又は溶解できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂への親水撥油剤の混合方法としては、押し出し法やロール法による練り込み等により混合する方法がある。
樹脂組成物は、さらに成形された樹脂成型品に加工できる。具体的には、例えば、フィルム、シート、糸、筐体などの射出成形品等が挙げられる。
樹脂組成物において、親水撥油剤と樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲であることが好ましい。親水撥油剤の質量組成比が10未満であると、親水撥油機能を十分に発揮することができないために好ましくない。一方、親水撥油剤の質量組成比が99.9を超えると、樹脂物性を損ない、成形性を維持することが難しいために好ましくない。
上述した塗布膜及び樹脂組成物の用途としては、水等の速乾性が期待される部材、防汚効果が期待される部材、防曇効果、油除去性が期待される部材等への応用が挙げられる。
水等の速乾性が期待される、より具体的な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、看板、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、熱交換器用放熱フィン、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム等が挙げられる。
防汚効果が期待される、より具体的な用途としては、建材では、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、看板、交通標識、防音壁、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇等が挙げられる。また、光学部材では、タッチパネルのカバーガラスやカバーシート、アイコンシートや画面保護フィルム、光ディスク等が挙げられる。特に食堂や台所用品等の油汚染に対する除去性については、秀逸な特性を有する。さらに、これらの物品の表面に貼付させるためのフィルム等が挙げられる。雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
防曇効果が期待される、より具体的な用途としては、自動車用及び建材用のガラス、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、道路鏡のような鏡、メガネレンズ、光学レンズ、写真機レンズ及びこれらの物品の表面に貼付させるためのフィルム等が挙げられる。
<油水分離濾材>
上述した表面被覆材で処理した、ろ紙や不織布、カートリッジフィルター、無機物や有機物の多孔質体や多孔質膜等に、水と油との混合液を流した場合、水はフィルター等を通過するのに対して油は通過できないために、重力のみで油と水とが分離可能な親水撥油性の分離膜やフィルター等(これらを、「分離濾材」と総称する)として用いることができる。この分離膜及びフィルターは、例えば、石油採掘や流出油の回収の際に、水と油とを分離する油水分離膜や油水分離フィルター(すなわち、「油水分離濾材」)として使用することが可能である。
上述した表面被覆材で処理した、ろ紙や不織布、カートリッジフィルター、無機物や有機物の多孔質体や多孔質膜等に、水と油との混合液を流した場合、水はフィルター等を通過するのに対して油は通過できないために、重力のみで油と水とが分離可能な親水撥油性の分離膜やフィルター等(これらを、「分離濾材」と総称する)として用いることができる。この分離膜及びフィルターは、例えば、石油採掘や流出油の回収の際に、水と油とを分離する油水分離膜や油水分離フィルター(すなわち、「油水分離濾材」)として使用することが可能である。
また、上述した油水分離濾材は、親水撥油性が付与されているため、油で汚染された有機分子や土泥類が付着し難く、優れた耐ファウリング性が得られる。また、逆圧洗浄等の物理処理によって付着した汚れが除去され易く、易洗浄性にも優れる。
<多孔質体>
本実施形態の親水撥油剤は、多孔質体の態様で使用すると、より優れた油水分離性能が得られるために、好ましい。
本実施形態の親水撥油剤は、多孔質体の態様で使用すると、より優れた油水分離性能が得られるために、好ましい。
多孔質体を得る方法としては、一般に知られている手法が適用可能である。具体的には、例えば、親水撥油剤の溶解液または分散液を、スプレードライ法で乾燥する手法が挙げられる。これによって得られる粒子は、多孔質体の形成とともに粒子径の制御が可能であり、そのまま濾過材として適用することができることから、特に好ましい。
また、多孔質粒子を製造する際に、樹脂やガラス質などの結合剤を親水撥油剤の溶解液または分散液に加えることにより、多孔質粒子を結合させることで、多孔質体の物理的強度を高めることや、水への溶解性を制御して低減することが可能である。
樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を、ガラス質としては、上述のシラン化合物や水ガラスを使用することができる、また、親水撥油剤に対する結合剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、粒子を結合可能な範囲で適宜添加すればよい。典型的には、親水撥油剤と結合剤との質量組成比を10対90から99.9対0.1の範囲で使用するのが好ましい。
また、本発明の親水撥油剤を他の多孔質体に担持することも可能である。担持させる多孔質体としては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、タルクやモンモリロナイト等の粘土鉱物が使用できる。担持の方法としては、親水撥油剤の溶解液または分散液に、担持させる多孔質体を添加し、乾燥により溶媒を除去する手法などが適用可能である。担持する割合としては、親水撥油剤と担持する多孔質体との質量組成比を1対99から50対50の範囲から選択するのが、親水撥油性の特性面で好ましい。
得られた多孔質粒子は、ろ紙や不織布、カートリッジフィルター等の基材の表面に固着処理することによって、より優れた油水分離性能が得られるため、さらに好ましい。また、基材への固着には、上述した樹脂やガラス質を用いることが可能である。
以上説明したように、本実施形態の親水撥油剤は、分子中にペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基とを含む化合物であり、優れた親水撥油性を有する材料であるため、多種多様な用途に適用可能性を有する。
また、本実施形態の親水撥油剤は、ペルフルオロアルキル基を持つカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料とするため、各種誘導体の合成を容易に行うことができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
<表面被覆材の作製>
(実施例1)
カプリル酸クロライドの電解フッ素化反応により合成した、粗ペルフルオロオクタン酸フルオリドを加水分解し、蒸留精製してペルフルオロオクタン酸を得た。次に、ペルフルオロオクタン酸を水酸化カルシウムで中和してペルフルオロオクタン酸カルシウムを得た。得られたペルフルオロオクタン酸カルシウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、実施例1の表面被覆材とした。
(実施例1)
カプリル酸クロライドの電解フッ素化反応により合成した、粗ペルフルオロオクタン酸フルオリドを加水分解し、蒸留精製してペルフルオロオクタン酸を得た。次に、ペルフルオロオクタン酸を水酸化カルシウムで中和してペルフルオロオクタン酸カルシウムを得た。得られたペルフルオロオクタン酸カルシウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、実施例1の表面被覆材とした。
(比較例1)
市販のペルフルオロヘプタン酸カルシウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、比較例1の表面被覆材とした。
市販のペルフルオロヘプタン酸カルシウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、比較例1の表面被覆材とした。
(比較例2)
市販のペルフルオロブタンスルホン酸カリウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、比較例2の表面被覆材とした。
市販のペルフルオロブタンスルホン酸カリウム2質量%に、溶媒としてメタノール98質量%を加えて溶解させた溶液を、比較例2の表面被覆材とした。
<フィルター浸透試験による評価>
実施例及び比較例の表面被覆材によって得られる塗布膜について、フィルター浸透試験を行った。
具体的には、先ず、実施例1及び比較例1〜2の表面被覆材に、市販のPTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC T100A−:孔径1μm、空隙率79%、厚さ75μm)をディップし、フィルターに溶液を十分に含浸させたのち、引き揚げて自然乾燥によりメタノールを除去した。
実施例及び比較例の表面被覆材によって得られる塗布膜について、フィルター浸透試験を行った。
具体的には、先ず、実施例1及び比較例1〜2の表面被覆材に、市販のPTFEメンブレンフィルター(ADVANTEC T100A−:孔径1μm、空隙率79%、厚さ75μm)をディップし、フィルターに溶液を十分に含浸させたのち、引き揚げて自然乾燥によりメタノールを除去した。
次に、作製した試験用のPTFEメンブレンフィルターに、水とn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下し、その浸透性を下記定義に基づき目視判定して、親水撥油性を評価した。結果を下記表1に示す。
なお、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いた。
滴下容量:(40〜45)μL/滴(水)
滴下容量:(20〜25)μL/滴(n−ヘキサデカン)
滴下高さ:フィルターの表面から5cm
滴下冶具:ポリスポイト
なお、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いた。
滴下容量:(40〜45)μL/滴(水)
滴下容量:(20〜25)μL/滴(n−ヘキサデカン)
滴下高さ:フィルターの表面から5cm
滴下冶具:ポリスポイト
また、下記表2のフィルター浸透試験において、評価結果の定義は以下の通りである。
直ちに浸透:PTFEメンブレンフィルターに液滴を滴下後、30秒以内に浸透するもの
徐々に浸透:液滴を滴下後、30秒超過〜5分以内に浸透するもの
浸透しない:液滴を滴下後、30分間浸透しないもの
直ちに浸透:PTFEメンブレンフィルターに液滴を滴下後、30秒以内に浸透するもの
徐々に浸透:液滴を滴下後、30秒超過〜5分以内に浸透するもの
浸透しない:液滴を滴下後、30分間浸透しないもの
表1に示すように、実施例1におけるフィルター浸透試験の結果、水の浸透結果が「直ちに浸透」であり、n−ヘキサデカンの浸透結果が「浸透しない」であることから、親水撥油性であることが確認された。
これに対して、比較例1〜2におけるフィルター浸透試験の結果、水の浸透結果が「浸透しない」であり、n−ヘキサデカンの浸透結果が「徐々に浸透」であることから、撥水親油性であることが確認された。
本発明の親水撥油剤、その分散液及び溶解液は、親水撥油性を賦与することができるため、防汚機能を有する塗膜や油水分離濾材などへの適用が可能である。
Claims (20)
- 下記式(1)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物である、親水撥油剤。
Rf−X ・・・(1)
上記式(1)中、Rfは、炭素数6〜16であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。 - 下記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物である、親水撥油剤。
Rf−R−X ・・・(2)
上記式(2)中、Rfは、炭素数6〜16であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。
また、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基である。
また、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。 - 前記Rが、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含む、請求項2に記載の親水撥油剤。
- 上記式(1)及び上記式(2)で示されるペルフルオロアルキル基含有化合物からなる群から選ばれる2以上のペルフルオロアルキル基含有化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
- 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に「−CO2M1」又は「−SO3M1」、「−OSO2M1」、「−OP(OH)O2M1」、「−OPO3M1 2」又は「=O2PO2M1」(M1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R1R2R3R4N+;R1〜R4は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有するアニオン型の親水性賦与基である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
- 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に「−N+R5R6R7・Cl−」、「−N+R5R6R7・Br−」、「−N+R5R6R7・I−」、「−N+R5R6R7・CH3SO3 −」、「−N+R5R6R7・NO3 −」、「(−N+R5R6R7)2CO3 2−」又は「(−N+R5R6R7)2SO4 2−」(R5〜R7は水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有するカチオン型の親水性賦与基である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
- 上記式(1)又は上記式(2)中のXは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nCO2 −」、スルホベタイン型の「−N+R8R9(CH2)nSO3 −」又はアミンオキシド型の「−N+R8R9O−」(nは1〜5の整数、R8、R9は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する両性型の親水性賦与基である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤と溶媒とを含み、
前記親水撥油剤と前記溶媒との質量組成比が、0.2対99.8〜50対50の範囲である、表面被覆材。 - 前記溶媒が、水、アルコール又は水とアルコールとの混合物である、請求項8に記載の表面被覆材。
- さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、請求項8又は9に記載の表面被覆材。 - 前記結合剤が樹脂である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
- 前記結合剤が水溶性樹脂である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
- 前記結合剤が水ガラスである、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の表面被覆材。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤を含む、塗布膜。
- さらに、結合剤を含み、
前記親水撥油剤と前記結合剤との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、請求項14に記載の塗布膜。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤と、樹脂とを含み、
前記親水撥油剤と前記樹脂との質量組成比が、10対90〜99.9対0.1の範囲である、樹脂組成物。 - 請求項14又は15に記載の塗布膜又は請求項16に記載の樹脂組成物を含む、油水分離濾材。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤を含む、多孔質体。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤が樹脂で結合されている、多孔質体。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油剤がガラス質で結合されている、多孔質体。
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