以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、「上流」「下流」の語は、出射する荷電粒子線の上流(加速器側)、下流(患者側)をそれぞれ意味している。
図1に示すように、荷電粒子線治療装置100は、放射線療法によるがん治療等に利用される装置であり、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器11と、荷電粒子線を被照射体へ照射する照射ノズル12と、加速器11から出射された荷電粒子線を照射ノズル12へ輸送するビーム輸送ライン13と、ビーム輸送ライン13に設けられ、荷電粒子線のエネルギーを低下させて荷電粒子線の飛程を調整するデグレーダ18と、照射ノズル12及びビーム輸送ライン13に設けられた複数の電磁石25と、を備えている。本実施形態では、加速器11としてサイクロトロンを採用するが、これに限定されず、荷電粒子線を発生させるその他の発生源、例えば、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、ライナック等であってもよい。
荷電粒子線治療装置100では、治療台22上の患者Pの腫瘍(被照射体)に対して加速器11から出射された荷電粒子線の照射が行われる。荷電粒子線は電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線等がある。本実施形態に係る荷電粒子線治療装置100は、いわゆるスキャニング法により荷電粒子線の照射を行うものであり、被照射体を深さ方向に仮想的に分割(スライス)し、スライス平面(層)毎に、層上の照射範囲に対して、荷電粒子線の照射を行う。
なお、スキャニング法による照射方式として、例えばスポット式スキャニング照射、及び、ラスター式スキャニング照射がある。スポット式スキャニング照射は、照射範囲である、一のスポットへの照射が完了すると、一度ビーム(荷電粒子線)照射を止め、次のスポットへの照射準備が整った後に次のスポットへの照射を行う方式である。これに対し、ラスター式スキャニング照射は、同一層の照射範囲については、照射を途中で止めることなく、連続的にビーム照射を行う方式である。このように、ラスター式スキャニング照射は、同一層の照射範囲については連続的にビーム照射が行われるものであるため、スポット式スキャニング照射と異なり、照射範囲は複数のスポットから構成されるものではない。
照射ノズル12は、治療台22の周りを360度回転可能な回転ガントリ23の内側に取り付けられており、回転ガントリ23によって任意の回転位置に移動可能とされている。照射ノズル12には、収束電磁石19、ビームダクト28が含まれている。
ビーム輸送ライン13は、荷電粒子線が通るビームダクト14を有している。ビームダクト14の内部は真空状態に維持されており、輸送中の荷電粒子線を構成する荷電粒子が空気等により散乱することを抑制している。
また、ビーム輸送ライン13は、加速器11から出射された所定のエネルギー幅を有する荷電粒子線から所定のエネルギー幅よりも狭いエネルギー幅の荷電粒子線を選択的に取り出すESS(Energy Selection System)15と、ESS15によって選択されたエネルギー幅を有する荷電粒子線を、エネルギーが維持された状態で輸送するBTS(Beam Transport System)16と、BTS16から回転ガントリ23に向けて荷電粒子線を輸送するGTS(Gantry Transport System)17と、を有している。
デグレーダ18は、通過する荷電粒子線のエネルギーを低下させて当該荷電粒子線の飛程を調整する。患者Pの体表から被照射体である腫瘍までの深さは患者Pごとに異なるため、荷電粒子線を患者Pに照射する際には、荷電粒子線の到達深さである飛程を調整する必要がある。デグレーダ18は、加速器11から一定のエネルギーで出射された荷電粒子線のエネルギーを調整することにより、患者P体内の所定の深さにある被照射体に荷電粒子線が適切に到達するように調整する。このようなデグレーダ18による荷電粒子線のエネルギー調整は、被照射体をスライスした層毎に行われる。
電磁石25は、ビーム輸送ライン13に複数設けられるものであり、磁場によってビーム輸送ライン13で荷電粒子線を輸送することができるように、当該荷電粒子線の調整を行うものである。電磁石25として、輸送中の荷電粒子線のビーム径を収束させる収束電磁石19、荷電粒子線を走査する走査電磁石21、及び本実施形態に係る超伝導電磁石1によって構成され荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20(詳細は後述)が採用される。なお、以下では収束電磁石19、偏向電磁石20、及び走査電磁石21を区別せずに電磁石25と記載する場合がある。また、電磁石25は、少なくともビーム輸送ライン13のうちデグレーダ18よりも下流側に複数設けられる。ただし、本実施形態では、電磁石25は、デグレーダ18よりも上流側にも設けられる。ここでは、電磁石25として収束電磁石19が、デグレーダ18によるエネルギー調整前の荷電粒子線のビーム径を収束させるために、デグレーダ18の上流側にも設けられている。電磁石25の総数は、ビーム輸送ライン13の長さ等により柔軟に変更が可能であり、例えば、10〜40程度の数とされる。
走査電磁石21は、荷電粒子線の進行方向と交差する面においてX方向へ荷電粒子線を走査するX方向走査電磁石と、荷電粒子線の進行方向と交差する面においてX方向と交差するY方向へ荷電粒子線を走査するY方向走査電磁石と、を有している。また、走査電磁石21により走査された荷電粒子線はX方向及び/又はY方向へ偏向されるため、走査電磁石21よりも下流側のビームダクト14は、その径が下流側ほど拡大されている。
デグレーダ18及び電磁石25のビーム輸送ライン13中における位置は特に限定されない。本実施形態では、ESS15には、デグレーダ18、収束電磁石19、及び偏向電磁石20が設けられており、BTS16には収束電磁石19が設けられており、GTS17には収束電磁石19、偏向電磁石20、及び走査電磁石21が設けられている。しかし、走査電磁石21等の位置が図1とは異なる位置であってもよく、例えば走査電磁石21が照射ノズル12の収束電磁石19とビームダクト28との間に配置されていてもよい。なお、デグレーダ18は、上述したように加速器11と回転ガントリ23との間であるESS15に設けられており、より詳細には、ESS15のうち回転ガントリ23よりも加速器11側(上流側)に設けられている。
続いて、本実施形態に係る超伝導電磁石1によって構成される偏向電磁石20について詳細に説明する。
図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る超伝導電磁石1によって構成され、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20について説明する。偏向電磁石20は、起磁力を大きくするために超伝導電磁石1によって構成されている。偏向電磁石20は、図2に示すように、環状をなす一対の主コイル2,2と、主コイル2の内周側に配置される一対の磁極3,3と、一対の磁極3,3の間に配置され、環状をなす一対の補正コイル4,4と、一対の補正コイル4,4の間に、偏向電磁石20を通過するように設けられるビームダクト14と、を備えている。また、偏向電磁石20は、主コイル2を支持すると共に補正コイル4を支持する支持部5を備えている(図4及び図5参照)。補正コイル4は、補正コイル4の軸線C4が、主コイル2の軸線C3と略平行となる向きに配置されている。なお、主コイル2及び補正コイル4の平面形状は特に限定されず、例えば半円形状等でもよいため、軸線C3,C4は、あくまで図2に示す断面に限っての中心線を示している。図2では、主コイル2の軸線C3と、補正コイル4の軸線C4とが重なるように描かれている。主コイル2と補正コイル4とは、同一の低温容器(不図示)内に配置されている。また、主コイル2と補正コイル4とは、磁極3とビーム輸送ライン13との間を通して、機械的及び熱的に接続されている。一対の磁極3,3は、主コイル2の軸線C3方向に離間して対向する平面である対向面3a,3aをそれぞれ有している。また、一対の磁極3,3は、主コイル2を囲うように形成されたヨーク6と一体に形成されている。偏向電磁石20では、一対の磁極の対向面3a,3a間のギャップの距離を長くすることで、後述する扁平な補正コイル4をギャップ内に配置している。
主コイル2は、超伝導コイルによって形成されており、特に、高速励消磁に適した高温超電導コイルによって形成されている。高温超電導コイルは、臨界温度が高いため、高速励消磁に伴う発熱に対しても超伝導状態を維持し易いことから高速励消磁に適している。主コイル2は、電磁石電源(不図示)により給電されると、周囲に磁場を発生する。主コイルによって発生した磁場は、例えば矢印A1に示すように、ヨーク6から一方の磁極3を経由して補正コイル4の内周側及びビームダクト14を通過し、更に他方の磁極3を経由してヨーク6に戻る磁気回路を形成する。
補正コイル4は、扁平な断面形状をなしている。すなわち、補正コイル4は、図2に示すように、電流の流れる方向に垂直な断面4aにおいて、補正コイル4の軸線C4方向の幅が、補正コイル4の軸線C4方向に直交する方向の幅よりも狭くなるように形成されている。一方の補正コイル4は、ビームダクト14と一方の磁極3との間に設けられている。また、他方の補正コイル4は、ビームダクト14と他方の磁極3との間に設けられている。補正コイル4,4は、主コイル2,2の内周側に配置されている。本実施形態では、補正コイル4,4は、磁極3,3の対向面3a,3aと対向する位置(すなわち、軸線C3(又は軸線C4)に沿った方向から見たときに、補正コイル4の少なくとも一部が対向面3aと重なるような位置)に配置されている。ただし、補正コイル4,4は、主コイル2,2による磁束密度の補正を行うことができる限り、位置及び大きさは特に限定されない。また、補正コイル4は、主コイル2と同様に超伝導コイルによって形成されており、特に、高速励消磁に適した高温超電導コイルによって形成されている。補正コイル4は、主コイル2に給電する電磁石電源(不図示)とは別の電磁石電源(不図示)により給電され、周囲に磁場を発生する。主コイル2と補正コイル4とに給電する電磁石電源が異なるため、主コイル2による磁束密度の大きさが変化した場合であっても、補正コイル4による磁束密度の大きさを調整することで、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性を維持することができる。
補正コイル4によって発生した磁場は、例えば矢印A2に示すように、補正コイル4の周囲に磁気回路を形成する。補正コイル4による磁束密度は、図3に示すように、主コイル2によって発生した磁束密度に足し合わされて、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の分布を補正する。図3では、主コイル2によって発生した磁束密度B1を実線で示し、補正コイル4によって発生した磁束密度B2を破線で示し、磁束密度B2によって補正された磁束密度B3を二点鎖線で示している。図3に示すように、四角で囲った範囲における主コイル2による磁束密度B1の不均一さの幅N1に対して、四角で囲った範囲における補正コイル4による磁束密度B2による補正後の磁束密度B3の不均一さの幅N2が小さくなっている。すなわち、ビームダクト14における磁束密度が補正されて均一性が向上している。なお、本実施形態では、補正コイル4の軸線C4方向が、主コイル2の軸線C3方向と略平行であり、主コイル2及び補正コイル4には、電流が逆回りとなるように給電されている。これにより、主コイル2による磁束密度のうち、磁極3の磁気飽和によって特に大きくなる主コイル2の軸線C3付近の磁束密度を打ち消すように、補正コイル4は軸線C4付近の狭い範囲での磁束密度が大きくなるような磁場を発生する。
支持部5は、図4及び図5に示すように、主コイル2及び補正コイル4の長手方向に沿って幅の広い板状部材5aと、板状部材5aに立設して主コイル2及び補正コイル4を外側から支えるように支持する断面L字形状のコイル保持部材5bと、から構成される。板状部材5aは、主コイル2の内周側の領域を短手方向に跨ぐと共に、補正コイル4の内周側の領域を短手方向に跨ぐように設けられている。コイル保持部材5bは、主コイル2の対向する位置を両側から保持すると共に、補正コイル4の対向する位置を両側から保持するように設けられている。
ここで、図6及び図7を参照しながら、比較例に係る偏向電磁石30A,30Bについて説明する。比較例に係る偏向電磁石30Aは超伝導電磁石ではない通常の電磁石によって構成されているものとする。偏向電磁石30Aは、環状をなす一対の主コイル32,32と、主コイル32の内周側に配置される一対の磁極33,33と、一対の磁極33,33の間に、偏向電磁石30Aを通過するように設けられるビームダクト14と、を備えている。一対の磁極33,33は強磁性体からなり、主コイル32を囲うように形成されたヨーク36と一体に形成されている。
偏向電磁石30Aは、例えば荷電粒子線治療装置の回転ガントリに適用されるビーム輸送ラインに適用される。荷電粒子線治療装置のビーム輸送ラインにおいて、走査電磁石の下流側では、走査された荷電粒子線を通過させるためにビームダクトが大型化する。ここで、荷電粒子線を精度良く偏向させるためには、大型化したビームダクト内においても磁束密度を均一化する必要があり、このために偏向電磁石の大型化が必要である。
偏向電磁石30Aによって荷電粒子線を偏向する場合、荷電粒子線の偏向中心C1から軌道中心C2までの距離と、偏向電磁石30A内のビームダクト14内における磁束密度の大きさとは、反比例の関係にあることが知られている。比較例に係る偏向電磁石において、電磁石を小さくするためには、荷電粒子線の偏向中心C1から軌道中心C2までの距離R1を小さくする必要があり、このためにはビームダクト14内における磁束密度を大きくすればよい。そこで、図7に示すように、比較例に係る偏向電磁石30Bは、超伝導電磁石によって構成することで、ビームダクト14における磁束密度を大きくすることを可能とし、これにより荷電粒子線の偏向中心C1から軌道中心C2までの距離R2をR1よりも小さくしている。
しかしながら、比較例に係る偏向電磁石30Bでは、超伝導電磁石によって構成されているため起磁力が大きく、主コイル32の内周側に配置される磁極33が磁気飽和を起こす場合がある。このとき、偏向電磁石30内のビームダクト14内における磁束密度は、主コイル32の軸線C3付近で特に大きくなって均一性が低下するという課題があった。なお、図6及び図7では、荷電粒子線の軌道中心C2と、主コイル32の軸線C3とが重なるように描かれている。これに対し、例えば磁極3,3の対向面に凹凸形状を設けることで磁束密度の均一化を図ることも考えられるが、この方法では特定の大きさの磁束密度に対する効果しか得られない。このような方法では、荷電粒子線のエネルギーが変わることに伴って磁束密度を変化させた場合などに、磁束密度の均一性を維持できず、広範囲の磁束密度に対して均一性を維持することができないという問題がある。
一方、本実施形態に係る超伝導電磁石1を採用した偏向電磁石20では、一対の補正コイル4,4が、環状の主コイル2,2の内周側の一対の磁極3,3の間に配置されている。これにより、主コイル2,2による磁束密度が、補正コイル4,4による磁束密度によって補正され、磁極3,3間のビームダクト14における磁束密度の均一性を向上することができる。すなわち、各磁極3,3の対向面3a,3aをそれぞれ平面とすることで広い範囲の磁束密度の変化に対応可能とした状態で、磁極3,3間の磁束密度の均一性の向上を図ることができる。
また、超伝導電磁石1によって構成され、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20では、少なくとも一対の補正コイル4を備えている。これにより、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性をより向上することができる。
また、超伝導電磁石1によって構成され、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20では、補正コイル4は、電流の流れる方向に垂直な断面4aにおいて、補正コイル4の軸線C4方向の幅が、補正コイル4の軸線C4方向に直交する方向の幅よりも狭い。これにより、補正コイル4によって発生する磁束密度を狭い領域に集中させることができるため、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性を効率よく向上することができる。
また、超伝導電磁石1によって構成され、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20では、主コイル2を支持すると共に補正コイル4を支持する支持部5を更に備えている。これにより、支持部5は、補正コイル4を支持すると共に主コイル2を補強することができるため、主コイル2を外側に向かって拡張するように働く拡張力に対し、主コイル2の変形を抑制できる。
また、荷電粒子線治療装置100は、上述した、超伝導電磁石1によって構成され、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20を有する。これにより、主コイル2によって発生する磁束密度が、補正コイル4によって発生する磁束密度によって補正され、荷電粒子線治療装置100の偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性を向上することができる。
また、荷電粒子線治療装置100では、荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20と、荷電粒子線を走査する走査電磁石21と、を備え、走査電磁石21よりも荷電粒子線の下流側に設けられた偏向電磁石20として、上述した超伝導電磁石1を用いている。これにより、走査電磁石21の下流側に設けられる偏向電磁石20として超伝導電磁石1を使用した場合であっても、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性を向上することができる。
本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、超伝導電磁石1を、荷電粒子線治療装置100の回転ガントリ23に配置された偏向電磁石20に適用している。しかし、偏向電磁石20に限らず、収束電磁石19又は走査電磁石21等の他の電磁石に適用してもよい。また、荷電粒子線治療装置100に限らず、例えばサイクロトロン等のビーム輸送ラインを有する装置に適用してもよい。
また、上記実施形態では、超伝導電磁石1は主コイル2及び補正コイル4をそれぞれ一対ずつ備えている。しかし、主コイル2又は補正コイル4を一つだけ備えていてもよく、また主コイル2又は補正コイル4をより多く備えていてもよい。主コイル2又は補正コイル4を一つだけ備えることとすれば、超伝導電磁石1をより小型化することができる。一方、主コイル2又は補正コイル4を一対よりも多く備えることとすれば、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性をより向上することができる。
また、上記実施形態では、主コイル2によって発生した磁束密度が特に大きい領域を打ち消すように、主コイル2及び補正コイル4において電流が逆回りとなるように給電されている。しかし、主コイル2によって発生した磁束密度が特に小さい領域を補うように、主コイル2及び補正コイル4において電流が同じ方向に流れるように給電してもよい。この場合でも、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性を向上することができる。
また、上記実施形態では、支持部5は、主コイル2及び補正コイル4の長手方向に沿って幅の広い板状部材5aを含んで構成されているが、このような形状に制限されるものではない。すなわち、支持部5は、主コイル2及び補正コイル4の長手方向に沿った幅が狭い棒状の部材を含んで構成されていてもよい。図4及び図5に示す例では、補正コイル4の内周側の領域が支持部5で塞がれるような構成となっていたが、支持部5が補正コイル4の内周側の領域を塞がないように構成されていてもよい。この場合でも、支持部5は、補正コイル4を支持すると共に主コイル2を補強することができるため、主コイル2を外側に向かって拡張するように働く拡張力に対し、主コイル2の変形を抑制できる。
また、主コイル2又は補正コイル4を形成する高温超電導コイルは、テープ線材からなるパンケーキコイルとしてもよい。この場合、高温超電導コイルに捻じれが生じることに起因する性能劣化を抑制できる。
また、補正コイル4に給電する電磁石電源として、複数の電磁石電源を備えていてもよい。或いは、補正コイル4の巻密度を不均一としてもよい。いずれの場合も、補正コイル4内の電流密度分布を一様でなくすることができるため、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性をより向上することができる。
また、ビーム輸送ライン13に磁束密度を計測する素子を配置し、補正コイル4に給電する電磁石電源は、計測された磁束密度に基づいて、補正コイル4に給電する電流値をフィードバック制御してもよい。この場合、適切な大きさの磁束密度を補正コイル4によって発生できるため、偏向電磁石20内のビームダクト14内における磁束密度の均一性をより向上することができる。