JP2013222002A - 電子写真用トナー - Google Patents

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憲廣 福利
Osamu Yamashita
修 山下
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宏記 久保
Hiroto Hayashi
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Abstract

【課題】低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れる電子写真用トナー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーであって、コア部が、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が、アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)であり、前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たす、電子写真用トナー。
X−Y>30モル部 (1)
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
印刷装置の高速化、省エネルギー化に伴い、低温定着性に優れたトナーが要求されている。しかしながら、低温定着性を改良するために、トナーの軟化点やガラス転移点を低くすると、耐熱保存性が低下する。このように、トナーの低温定着性及び耐熱保存性は相反するものである。
これら低温定着性及び耐熱保存性を両立させるために、トナーの構造を、コア部と当該コア部を被覆するシェル部とを有したコアシェル構造にすることが提案されている。
コアシェル構造のトナーを得るためには、コア部とシェル部とが完全に混ざり合うことなく保持され、かつ両者が良好に接着する程度に、コア部とシェル部の相溶性を制御する必要がある。この相溶性を制御する技術として、コア部を構成するポリエステルの原料アルコール成分とは異なるアルコールを、シェル部を構成するポリエステルの原料アルコール成分として用いることが行われている。
例えば、特許文献1には、コア部の原料アルコール成分として疎水性であるビスフェノールAを用い、シェル部の原料アルコール成分として親水性である脂肪族ジオールを用いる技術が開示されている。反対に、特許文献2には、コア部の原料アルコール成分として親水性である脂肪族ジオールを用い、シェル部の原料アルコール成分として疎水性であるビスフェノールAを用いる技術が開示されている。
特開2011−197192号公報 特開2010−066651号公報
近年の印刷装置の高速化、省エネルギー化に伴い、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に関する要求がより厳しくなっているため、特許文献1,2のようにコア部及びシェル部において、種類の異なる原料アルコール成分を用いる技術では、相溶性が高くコア部とシェル部の混じり合いを制御することが不充分であり、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性を向上させるためには新たな技術の開発が求められている。
本発明の課題は、上記問題を解決し、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れる電子写真用トナー及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、コアシェル構造のトナーにおいて、コア部及びシェル部のいずれの非晶質ポリエステルにおいても原料カルボン酸成分としてアルケニルコハク酸を用いると共に、コア部とシェル部のアルケニルコハク酸の含有量差を所定値よりも大きくすることにより、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れる電子写真用トナーが得られることを見出した。
即ち、本発明は、下記[1]及び[2]に関する。
[1]コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーであって、コア部が、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が、アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)であり、前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たす、電子写真用トナー。
X−Y>30モル部 (1)
[2]下記工程1〜4を有する、電子写真用トナーの製造方法。
工程1:アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液を凝集させて、樹脂粒子Iの水系分散液を得る工程
工程2:アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液を得る工程
工程3:前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たすように工程1で得られた樹脂粒子Iの水系分散液と工程2で得られた非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液とを混合し凝集させて、樹脂粒子IIの水系分散液を得る工程
X−Y>30モル部 (1)
工程4:工程3で得られた樹脂粒子IIを合一させる工程
本発明の電子写真用トナーは、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れている。
本発明の電子写真用トナーは、コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーであって、コア部が、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が、アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)であり、前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たすものである。
X−Y>30モル部 (1)
本発明の電子写真用トナーは、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れている。その理由は次のとおりであると考えられる。
すなわち、本発明の写真用トナーは、コア部の非晶質樹脂(A)及びシェル部の非晶質樹脂(B)が共にアルケニルコハク酸を含んでおり、かつ、これらアルケニルコハク酸の含有量差(X−Y)が30モル部超と大きい。これにより、非晶質樹脂(A)と非晶質樹脂(B)との相溶性が適度に低下して、コア部とシェル部とが良好に接着すると共に過剰に相溶することが抑制されて良好なコアシェル構造が形成され、コア部の非晶質樹脂(A)及びシェル部の非晶質樹脂(B)が後述する各々の機能を十分に発現できるものと考えられる。
コア部の非晶質樹脂(A)は、多量のアルケニルコハク酸(Xモル部)を含んでいるため、アルケニルコハク酸を含有しない場合に比べて、軟化点が同じであっても、ガラス転移点をより低くすることができ、その結果、トナーの低温定着性が向上するものと考えられる。
また、シェル部の非晶質樹脂(B)は、疎水性であるアルケニルコハク酸を含むことにより、かつその含有量がコア部の非晶質樹脂(A)と比べて著しく少量であることから、非晶質樹脂(B)の疎水性を向上しつつガラス転移点の低下を防止又は抑制することができ、これにより耐熱保存性及び高温多湿下における帯電安定性が向上するものと考えられる。
[結着樹脂]
本発明に用いられるトナー用結着樹脂はコアシェル粒子からなり、コア部が非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が非晶質樹脂(B)である。コア部は、トナーの低温定着性の観点から、更に結晶性ポリエステルを含んでいてもよい。
<コア部>
コア部は、非晶質樹脂(A)を含むものである。
(非晶質樹脂(A))
非晶質樹脂(A)は、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる。
〔カルボン酸成分〕
非晶質樹脂(A)の原料モノマーであるカルボン酸成分は、アルケニルコハク酸(a1)を含む。なお、本発明のアルケニルコハク酸(a1)には、アルケニルコハク酸の無水物も含まれる。
《アルケニルコハク酸(a1)》
アルケニルコハク酸(a1)におけるアルケニル基の炭素数は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、好ましくは9〜18であり、より好ましくは9〜14であり、更に好ましくは10〜12である。
また、それらのアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、分岐鎖であることが好ましい。
更に、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、アルケニルコハク酸(a1)は、好ましくは2種類以上からなるものが好ましい。ここでいう「種類」は、アルケニル基に由来するものであり、アルケニル基の炭素数の鎖長が異なるものや構造異性体は、異なる種類のアルケニルコハク酸として扱う。
したがって、アルケニルコハク酸(a1)は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、好ましくは炭素数9〜18、より好ましくは9〜14、更に好ましくは10〜12の分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸の2種以上からなるものが好ましい。炭素数の異なる、分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸(a1)を併用することにより、得られる樹脂は、示差走査熱量分析(DSC)におけるガラス転移点付近の吸熱ピークがブロードとなり、トナー用結着樹脂として、非常に広範囲な定着温度領域を有するものとなる。
分岐鎖を有する炭素数9〜18のアルケニル基としては、具体的には、イソドデセニル基等が挙げられる。
トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、アルケニルコハク酸(a1)は、アルキレン基を有する化合物(アルキレン化合物)と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも1種とから得られるものであることが好ましい。
アルキレン化合物としては、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、炭素数が9〜18、好ましくは9〜14、より好ましくは10〜12のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ノルマルブチレン等から得られるもの、例えばこれらのトリマー、テトラマー等が好ましく用いられる。アルキレン化合物の合成に使用される好適な原料としては、構造異性体数を増やす観点から、分子量の小さいプロピレンが好ましい。また、アルキレン化合物は、アルケニルコハク酸を用いて得られる縮重合系樹脂が、トナー用結着樹脂として、非常に広範囲な定着温度領域を有する観点から、ガスクロマトグラフィー質量分析において、後述の測定条件で、炭素数9〜18、好ましくは9〜14のアルキレン化合物に相当するピークを2以上有することが好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましく、30以上がより更に好ましく、また、80以下が好ましく、60以下がより好ましい。
非晶質樹脂(A)におけるアルコール成分100モル部に対する、アルケニルコハク酸(a1)のモル量Xは、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、30モル部を超えるのが好ましく、31〜75モル部がより好ましく、33〜70モル部が更に好ましく、35〜65モル部がより更に好ましく、35〜60モル部がより更に好ましい。
非晶質樹脂(A)におけるアルケニルコハク酸(a1)の含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、カルボン酸成分中、20〜80モル%が好ましく、30〜75モル%がより好ましく、35〜65モル%が更に好ましく、35〜60モル%がより更に好ましい。
後述するシェル部の非晶質樹脂(B)におけるアルコール成分(b2)100モル部に対する、シェル部のアルケニルコハク酸(b1)のモル量をYとすると、〔X−Y〕は下記式(1)を満たす。
X−Y>30モル部 (1)
〔X−Y〕が30モル部以下であると、コア部とシェル部の相溶性が高くなってコアシェル構造を十分に維持することができず、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性が低下する。この観点から、〔X−Y〕は、好ましくは30モル部よりも大きく70モル部以下であり、より好ましくは30モル部よりも大きく65モル部以下であり、更に好ましくは30モル部よりも大きく60モル部以下である。
《アルケニルコハク酸(a1)の製造方法》
アルケニルコハク酸(a1)は、任意の製造方法により得ることができるが、例えば、アルキレン化合物と、マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物から選ばれる少なくとも1種とを混合し、加熱することで、エン反応を利用することにより得られる(特開昭48−23405号公報、特開昭48−23404号公報、米国特許第3,374,285号明細書等を参照)。
マレイン酸、フマル酸及びそれらの酸無水物のなかでは、反応性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。
アルキレン化合物の合成に使用される好適な触媒としては、液体リン酸、固体リン酸、タングステン、三フッ化ホウ素錯体等が挙げられる。なお、構造異性体の数の制御容易性の観点から、ランダム重合した後に、蒸留により調整する方法が好ましい。
《アルケニルコハク酸(a1)以外のカルボン酸成分》
カルボン酸成分には、アルケニルコハク酸(a1)以外に、アルキルコハク酸、その他のジカルボン酸化合物、及び3価以上の多価カルボン酸化合物の1種又は2種以上が含有されていてもよい。
アルキルコハク酸のアルキル基の炭素数及び分岐の有無は、アルケニルコハク酸(a1)のアルケニル基と同様であり、イソドデシル基が好ましい。
その他のジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中では、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸化合物がより好ましい。具体的には、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。本発明において、上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
カルボン酸成分は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。カルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、同様の観点から、好ましくは20〜70モル%、より好ましくは25〜70モル%、更に好ましくは30〜65モル%であり、より更に好ましくは30〜60モル%である。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
その他のカルボン酸化合物として、未精製ロジン、精製ロジン、及び、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等も挙げられる。
本発明において、カルボン酸成分は、樹脂の分子量を上げ、トナーの耐熱保存性の観点から、3価以上の多価カルボン酸化合物、好ましくはトリメリット酸化合物、より好ましくは無水トリメリット酸を含有していることが好ましい。3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、0.1〜30モル%が好ましく、1〜25モル%がより好ましく、2〜20モル%が更に好ましい。
〔アルコール成分(a2)〕
非晶質樹脂(A)の原料モノマーであるアルコール成分(a2)には特に制限はなく、脂肪族アルコール及び芳香族アルコールのいずれであってもよいが、上記アルケニルコハク酸(a1)と共に用いることによってトナーの低温定着性を向上させる観点から、脂肪族ジオールを含有することが好ましく、炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有することがより好ましい。
炭素数2〜6の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中では、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、及びエチレングリコールが好ましい。
炭素数2〜6の脂肪族ジオールを用いる場合には、炭素数2〜6の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、アルコール成分(a2)中、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、炭素数7以上の脂肪族ジオールや、グリセリン等の3価以上のアルコールの他、下記(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
Figure 2013222002
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4が更に好ましい。)
前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
前記のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、上記脂肪族ジオールを用いない場合にあっては、トナーの耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、アルコール成分中、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
〔アルコール成分(a2)とカルボン酸成分とのモル比〕
アルコール成分(a2)に対するカルボン酸成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性を向上させる観点から、好ましくは0.7〜1.2であり、より好ましくは0.8〜1.1であり、更に好ましくは0.95〜1.1である。
(結晶性ポリエステル)
本発明のトナーは、結晶性ポリエステルを含んでいなくてもよいが、本発明の効果を阻害しない程度に結晶性ポリエステルを含んでもよく、これによりトナーの低温定着性が向上する。
結晶性ポリエステルのアルコール成分の種類は、前記非晶質樹脂(A)のアルコール成分と同様であり、樹脂の結晶性向上の観点及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。結晶性ポリエステルのカルボン酸成分の種類は、前記非晶質樹脂(A)のカルボン酸成分と同様であり、トナーの低温定着性を向上させる観点から、フマル酸がより好ましい。
本発明において、結晶性ポリエステルとは、後述する実施例に記載の測定方法における、軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))が0.6〜1.3、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは1.0〜1.2である樹脂をいう。
また非晶質樹脂とは、軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))が1.3より大きいか、0.6未満の樹脂をいい、好ましくは1.3より大きく4以下、更に好ましくは1.5〜3である。
〔結晶性ポリエステルの物性〕
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの数平均分子量は、特に制限されるものではないが、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性の観点から、1,000〜6,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましく、2,000〜4,000が更に好ましい。
また、本発明に用いられる結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性の観点から、3,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000が更に好ましく、7,000〜10,000がより更に好ましい。
なお、本発明において、結晶性ポリエステルの数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもクロロホルム可溶分を測定した値をいう。
また、本発明に用いられる結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、60〜160℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、100〜120℃が更に好ましく、110〜120℃がより更に好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルの融点はトナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは60〜150℃、より好ましくは80〜130℃、更に好ましくは100〜120℃、より更に好ましくは105〜115℃である。
結晶性ポリエステルの酸価は、水系分散液中における結晶性ポリエステルの分散を良好なものとする観点、トナーの低温定着性及び帯電安定性の観点から、から、1〜40mgKOH/gが好ましく、10〜35mgKOH/gがより好ましく、20〜30mgKOH/gが更に好ましい。
なお、数平均分子量、軟化点、融点及び酸価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
(変性非晶質樹脂)
本発明に用いられる非晶質樹脂(A)は、変性非晶質樹脂を含んでいてもよい。
変性非晶質樹脂としては、例えば、樹脂がウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分を含む2種以上の樹脂を有するハイブリッド樹脂等が挙げられる。
〔離型剤〕
離型剤は、コアシェル粒子のコア部に含有してもよい。
離型剤を用いる場合、コア部における非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂に対する離型剤の重量比[離型剤/非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂]は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、0.1/100〜10/100が好ましく、0.5/100〜5/1000がより好ましく、1/100〜3/100が更に好ましい。
コアシェル粒子における非晶質樹脂[(A)+(B)]に対する離型剤の重量比[離型剤/非晶質樹脂[(A)+(B)]]は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、0.1/100〜10/100が好ましく、0.5/100〜5/1000がより好ましく、1/100〜2/100が更に好ましい。
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、及びステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、及びホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、パラフィンワックスが好ましい。これらの離型剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
離型剤は、分散性及び樹脂粒子との凝集性の観点から、水系媒体中に分散させた離型剤粒子分散液として使用することが好ましい。
<シェル部>
シェル部は、非晶質樹脂(B)からなる。
(非晶質樹脂(B))
非晶質樹脂(B)は、アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる。
〔カルボン酸成分〕
非晶質樹脂(B)の原料モノマーであるカルボン酸成分は、アルケニルコハク酸(b1)を含む。なお、アルケニルコハク酸(b1)には、アルケニルコハク酸の無水物も含まれる。
《アルケニルコハク酸(b1)》
アルケニルコハク酸(b1)の種類は、前述のコア部のアルケニルコハク酸(a1)と同様である。
非晶質樹脂(B)におけるアルコール成分(b2)100モル部に対する、アルケニルコハク酸(b1)のモル量Yは、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、1〜20モル部が好ましく、1〜15モル部がより好ましく、1〜10モル部が更に好ましく、2〜8モル部がより更に好ましい。
非晶質樹脂(B)におけるカルボン酸成分100モル部に対する、アルケニルコハク酸(b1)のモル量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、1〜25モル部が好ましく、1〜20モル部がより好ましく、1〜15モル部が更に好ましく、2〜12モル部がより更に好ましく、3〜10モル部がより更に好ましい。
なお、非晶質樹脂(A)におけるアルケニルコハク酸(a1)のモル量Xと、非晶質樹脂(B)におけるアルケニルコハク酸(b1)のモル量Yとの差〔X−Y〕は、前述のとおりである。
《アルケニルコハク酸(b1)の製造方法》
アルケニルコハク酸(b1)の製造方法は、前述のアルケニルコハク酸(a1)の製造方法と同様である。
《アルケニルコハク酸(b1)以外のカルボン酸成分》
非晶質樹脂(B)における、アルケニルコハク酸(b1)以外のカルボン酸成分の種類は、非晶質樹脂(A)の場合と同様である。
カルボン酸成分は、トナーの耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。カルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、同様の観点から、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは60〜85モル%、更に好ましくは65〜85モル%であり、より更に好ましくは70〜85モル%である。
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
その他のカルボン酸化合物として、未精製ロジン、精製ロジン及びフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等も挙げられる。
本発明において、カルボン酸成分は、トナーの耐熱保存性、及び帯電安定性を向上させる観点から、3価以上の多価カルボン酸化合物、好ましくはトリメリット酸化合物、より好ましくは無水トリメリット酸を含有していることが好ましい。3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、同様の観点から、カルボン酸成分中、5〜40モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、10〜25モル%が更に好ましい。
〔アルコール成分(b2)〕
非晶質樹脂(B)におけるアルコール成分(b2)としては、前述した非晶質樹脂(A)におけるアルコール成分(a2)と同様のものを用いることができ、トナーの低温定着性の観点から、炭素数2〜6の脂肪族ジオールが好ましい。特に、本発明では、カルボン酸成分として疎水性であるアルケニルコハク酸を用いているため、アルコール成分(b2)として親水性の脂肪族ジオールを用いた場合においても、非晶質樹脂(B)を疎水性にして高温高湿下における帯電安定性が良好なものとなる。
炭素数2〜6の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、アルコール成分中、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、炭素数7以上の脂肪族ジオールや、グリセリン等の3価以上のアルコールの他、前記(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
前記のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、上記炭素数2〜6の脂肪族ジオールを用いない場合にあっては、トナーの耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、アルコール成分(b2)中、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
〔アルコール成分(b2)とカルボン酸成分とのモル比〕
アルコール成分(b2)に対するカルボン酸成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を向上させる観点から、好ましくは0.7〜1.2であり、より好ましくは0.8〜1.1であり、更に好ましくは0.8〜1である。
<非晶質樹脂(A)及び(B)の物性>
非晶質樹脂(A)及び(B)の数平均分子量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、それぞれ独立に、1,000〜6,000が好ましく、2,000〜5,000がより好ましく、2,200〜4,000がより好ましい。また、非晶質樹脂(A)及び(B)の重量平均分子量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、それぞれ独立に、好ましくは7,000〜500,000、より好ましくは8,000〜100,000、更に好ましくは9,000〜50,000である。なお、非晶質樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、いずれもテトラヒドロフラン可溶分を測定した値をいう。
非晶質樹脂(A)の軟化点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜125℃であり、更に好ましくは90〜125℃である。
また、非晶質樹脂(B)の軟化点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは80〜140℃、より好ましくは90〜135℃であり、更に好ましくは100〜130℃である。
又、本発明に用いられる非晶質樹脂(A)及び非晶質樹脂(B)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、シェル部の非晶質樹脂(B)の軟化点がコア部の非晶質樹脂(A)の軟化点より高いことが好ましく、より好ましくは0.1℃以上、更に好ましくは0.5℃以上、より更に好ましくは5℃以上高いことが好ましく、上限は30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましい。よって、非晶質樹脂(B)の軟化点から非晶質樹脂(A)の軟化点を引いた値は、好ましくは、0.1〜30℃であり、より好ましくは0.5〜20℃であり、更に好ましくは5〜10℃である。
非晶質樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは30〜60℃、より好ましくは35〜50℃、更に好ましくは35〜45℃である。
また、非晶質樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは45〜75℃、より好ましくは50〜70℃、更に好ましくは55〜65℃である。
非晶質樹脂(A)及び非晶質樹脂(B)の酸価は、水系分散液中における非晶質樹脂の分散を良好なものとする観点から、10〜40mgKOH/gが好ましく、15〜30mgKOH/gがより好ましく、15〜28mgKOH/gが更に好ましい。
なお、数平均分子量、軟化点、Tg及び酸価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
<ポリエステル系樹脂の製造方法>
ポリエステル系樹脂の製造方法には特に制限はなく、公知の方法によって製造することができるが、ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応により得られる。該縮重合反応はエステル化触媒の存在下で行うことが好ましく、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、エステル化触媒とピロガロール化合物の共存在下で行うことがより好ましい。
ここで、ポリエステル系樹脂とは、前述の非晶質樹脂(A)、結晶性ポリエステル、変性非晶質樹脂、非晶質樹脂(B)等が挙げられる。
<エステル化触媒>
上記縮重合に好適に用いられるエステル化触媒としては、チタン化合物及びSn−C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
チタン化合物としては、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−O結合を有する錫(II)化合物、Sn−X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく挙げられ、Sn−O結合を有する錫(II)化合物がより好ましく、中でも、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、ジオクチル酸錫(II)塩が更に好ましい。
上記エステル化触媒の存在量は、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.6重量部がより好ましい。
<ピロガロール化合物>
ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、没食子酸が好ましい。
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、反応性の観点から、縮重合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分との総量100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部が更に好ましい。ここで、ピロガロール化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール化合物の全配合量を意味する。
ピロガロール化合物とエステル化触媒との重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、反応性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.02〜0.3がより好ましく、0.03〜0.2が更に好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、前記エステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中にて、120〜250℃の温度で行うことができ、140〜240℃が好ましい。
また、例えば樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
<トナー用結着樹脂>
本発明に用いられるトナー用結着樹脂はコアシェル粒子からなる。
非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂100重量部に対する非晶質樹脂(B)の重量比は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、10〜120重量部が好ましく、20〜100重量部がより好ましく、20〜70重量部が更に好ましく、30〜60重量部がより更に好ましい。
また、非晶質樹脂(A)100重量部に対する非晶質樹脂(B)の重量比は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、10〜120重量部が好ましく、20〜100重量部がより好ましく、20〜70重量部が更に好ましく、30〜60重量部がより更に好ましい。
コア部に結晶性ポリエステルを用いる場合の重量比は下記のとおりである。
コア部における非晶質樹脂(A)に対する結晶性ポリエステルの重量比[結晶性ポリエステル/非晶質樹脂(A)]は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、5/95〜40/60が好ましく、8/92〜30/70がより好ましく、10/90〜20/80が更に好ましい。
コアシェル粒子における非晶質樹脂[(A)+(B)]に対する結晶性ポリエステルの重量比[結晶性ポリエステル/非晶質樹脂[(A)+(B)]]は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の観点から、40/60以下が好ましく、30/70以下がより好ましく、20/80以下が更に好ましい。
[電子写真用トナー]
上記結着樹脂を含有する本発明の電子写真用トナーは、本発明の効果を損なわない範囲で、前記結着樹脂とは異なる公知のトナー用結着樹脂、例えば、ポリエステル、スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂をコア部又はシェル部に含有していてもよい。
本発明の電子写真用トナーにおいて、前記本発明のトナー用結着樹脂の含有量は、トナーの低温定着性及び帯電安定性の観点から、全結着樹脂中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましく、実質的に100重量%であることがより更に好ましい。
[電子写真用トナーの製造方法]
本発明の電子写真用トナーは、下記工程1〜工程4を有する製造方法により製造することができる。
工程1:アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液を凝集させて、樹脂粒子Iの水系分散液を得る工程
工程2:アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液を得る工程
工程3:前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たすように工程1で得られた樹脂粒子Iの水系分散液と工程2で得られた非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液とを混合し凝集させて、樹脂粒子IIの水系分散液を得る工程
X−Y>30モル部 (1)
工程4:工程3で得られた樹脂粒子IIを合一させる工程
上記方法により、コア部が非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が非晶質樹脂(B)を含む、コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーを製造することができる。
<工程1>
工程1は、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含む水樹脂系分散液に、必要に応じて離型剤の水系分散液及び/又は結晶性ポリエステルの水系分散液を混合した後、凝集させて、樹脂粒子Iの水系分散液を得る工程である。
本明細書中、「水系」とは、有機溶剤等の溶剤を含有していてもよいが、水を好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、より更に好ましくは99重量%以上含有するものをいう。また、以下、単に「樹脂」と記載する場合には、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の両方を指す。
(非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液の調製)
〔有機溶剤を用いた調製〕
非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液は、非晶質樹脂(A)、有機溶剤及び水、更に必要に応じて中和剤や界面活性剤を混合し、撹拌した後、蒸留等によって有機溶剤を除去することにより好適に得られる。好ましくは、非晶質樹脂(A)、及び必要に応じて界面活性剤を有機溶剤に溶解した後、水、更に必要に応じて中和剤を混合する。なお、混合物を撹拌する際には、アンカー翼等の任意の混合撹拌装置を用いることができる。
有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びジエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチルが挙げられる。これらの中では、結着樹脂の分散性の観点から、メチルエチルケトン、酢酸エチル、2−ブタノンが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられ、入手容易性、作業性の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系及びせっけん系(例えばアルキルエーテルカルボン酸塩等)等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型及び第4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリエチレングルコールモノステアレート及びポリエチレングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を使用する場合、その使用量は、結着樹脂の分散性の観点から、非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂と混合する有機溶剤量は、結着樹脂の溶解性の観点から、非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましく、150〜500重量部がより好ましい。非晶質樹脂(A)を含む総結着樹脂と混合する水の使用量は、結着樹脂の分散性の観点から、有機溶剤100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましく、150〜500重量部がより好ましい。
非晶質樹脂(A)と有機溶剤と混合する際の温度は、結着樹脂の溶解性の観点から、30〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
非晶質樹脂(A)の水系分散液の固形分濃度は、結着樹脂の分散性の観点から、適宜水を加えることにより、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは7〜15重量%に調整する。
〔体積中位粒径〕
水系分散液中における非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂粒子の体積中位粒径は、この後に行われる凝集工程において、均一に凝集させる観点から、50〜1,000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、50〜400nmが更に好ましく、100〜350nmがより更に好ましい。体積中位粒径は、後述するレーザー回折型粒径測定機等により測定できる。
(結晶性ポリエステルを含む樹脂水系分散液の調製)
結晶性ポリエステルを含む樹脂水系分散液も、非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液と同様にして製造することができ、好ましい範囲も同じである。
(樹脂粒子Iの水系分散液の調製(凝集工程))
次に、必要に応じて非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液と離型剤の水系分散液及び/又は結晶性ポリエステルを含む樹脂水系分散液とを混合した後、凝集させて、樹脂粒子Iの水系分散液を得る。
なお、上記の非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液に、更に例えば着色剤、荷電制御剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、及び老化防止剤等の添加剤を添加してから凝集させてもよい。該添加剤は、水系分散液としてから使用することもできる。
更に凝集工程においては、凝集を効果的に行うために凝集剤を添加することができる。
〔離型剤〕
離型剤の添加量は、コア形成用樹脂粒子である、非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂の総量100重量部に対して、樹脂中への分散性の観点から、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、0.5〜5重量部が更に好ましく、1〜3重量部がより更に好ましい。コア部における離型剤及び非晶質樹脂(A)の重量比は前述のとおりである。
〔着色剤〕
着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー(銅フタロシアニン)、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、及びチアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤を添加する場合、その添加量は、画像品質向上の観点から、コア形成用樹脂粒子である、非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、5〜10重量部が更に好ましい。
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、及びサリチル酸金属錯体等が挙げられ、トナーの帯電安定性の観点及び入手容易性等の観点から、サリチル酸金属錯体が好ましい。各種荷電制御剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。荷電制御剤を添加する場合、その添加量は、画像品質向上の観点から、コア形成用樹脂粒子である、非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.3〜7重量部がより好ましく、0.8〜3重量部が更に好ましい。
〔結晶性ポリエステル〕
結晶性ポリエステルを用いる場合における、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂(A)との混合重量比は、前述のトナー用結着樹脂に関する記載中に示した重量比の通りである。
〔凝集剤〕
凝集剤としては、有機系では、4級アンモニウム塩のカチオン性界面活性剤、及びポリエチレンイミン等が用いられ、無機系では、無機金属塩、無機アンモニウム塩及び2価以上の金属錯体等が用いられる。
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、及び硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、及び多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、トナーの耐環境特性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、60重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下が更に好ましい。
凝集剤は、均一な凝集を起こさせるために、水系媒体に溶解させて添加することが好ましく、凝集剤の添加時及び添加終了後は十分撹拌することが好ましい。
〔系内の諸条件〕
当該凝集工程において、系内の固形分濃度は、均一な凝集を起こさせるために、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%が更に好ましい。
凝集工程における系内のpHは、混合液の分散安定性と、樹脂粒子の凝集性とを両立させる観点から、2〜10が好ましく、2〜9がより好ましく、3〜8が更に好ましい。
同様の観点から、凝集工程における系内の温度は、「コア部の結着樹脂の軟化点−75℃」(軟化点より75℃低い温度、以下同様)以上、且つコア部の結着樹脂の軟化点以下であることが好ましい。本発明では、コア部の結着樹脂として非晶質樹脂(A)を用いるので、非晶質樹脂(A)の軟化点であり、非晶質樹脂(A)と結晶性ポリエステルや非晶質樹脂(A)以外の非晶質樹脂とを用いた場合は、非晶質樹脂(A)と結晶性ポリエステルや非晶質樹脂(A)以外の非晶質樹脂の軟化点を加重平均した温度を、「コア部の結着樹脂の軟化点」とする。また、マスターバッチを使用する場合は、それに用いた樹脂をも含めて加重平均した温度を、混合樹脂の軟化点とする。
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、樹脂粒子を調製する際に非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂粒子やその他の樹脂粒子と混合し、凝集工程に供してもよい。樹脂粒子を調製する際に非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂と添加剤とを溶融混錬することが好ましい。
溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが並行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。したがって、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、従来用いられている二軸押出機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
〔分散処理〕
非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂の水系分散液と、必要に応じて用いられる結晶性ポリエステル、或いは非晶質樹脂(A)以外の非晶質樹脂を含む樹脂水系分散液及び各種添加剤の水系分散液との混合物を、均一に分散させる観点から、好ましくはコアの結着樹脂の軟化点未満の温度、より好ましくは「該コアの結着樹脂の軟化点−30℃」以下の温度で分散処理を行う。具体的には、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下であり、また、媒体の流動性及び樹脂の水系分散液の製造エネルギーの観点から、分散処理は0℃より高い温度で行なうことが好ましく、10℃以上で行うことがより好ましい。
これらの観点から、好ましくは0〜70℃、より好ましくは10〜65℃程度の温度で撹拌して分散処理する等の通常の方法により、均一な樹脂分散液を調製することができる。
分散処理の方法としては、ウルトラディスパー(浅田鉄工株式会社製、商品名)、エバラマイルダー(株式会社荏原製作所製、商品名)、及びTKホモミクサー(プライミクス株式会社製、商品名)等の高速撹拌混合装置;高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ製、商品名)、ミニラボ8.3H型(Rannie社製、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー;マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)、及びナノマイザー(ナノマイザー株式会社製、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
〔樹脂粒子Iの体積中位粒径〕
工程1で得られる樹脂粒子Iの体積中位粒径は、続く工程3で均一に合一させ、トナー粒子を製造する観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。
<工程2>
工程2は、非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液を得る工程である。水系分散液を得る方法及び好ましい物性については、前記工程1と同じである。
<工程3>
工程3は、前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たすように工程1で非晶質樹脂(A)を含む結着樹脂の水系分散液等を凝集して得られた樹脂粒子Iの水系分散液と工程2で得られた非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液とを混合し凝集させて、樹脂粒子IIの水系分散液を得る工程である。
X−Y>30モル部 (1)
工程3においては、混合する非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液の体積中位粒径は、均一なコアシェル粒子を製造する観点から、50〜1,000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、50〜400nmが更に好ましく、100〜350nmがより更に好ましい。
工程1で得られた樹脂粒子Iの100重量部に対して、混合する非晶質樹脂(B)は、好ましくは5〜200重量部が好ましく、より好ましくは10〜100重量部、更に好ましくは25〜60重量部である。
工程1で得られた樹脂粒子I中の非晶質樹脂(A)と非晶質樹脂(B)との重量比は、前述の非晶質樹脂(A)及び非晶質樹脂(B)の重量比のとおりである。
工程3で得られる樹脂粒子IIの平均粒径は、続く工程4で均一に合一させ、トナー粒子を製造する観点から、体積中位粒径で1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。凝集条件は、前述の工程1と同じである。
<工程4>
工程4は、前記工程3で得られた凝集粒子Bの水系分散液に必要に応じて凝集停止剤を加えた後、合一工程に付すことにより、水系分散液中の凝集粒子Bを合一させて、合一粒子の水系分散液を得る工程である。
工程4では、前記工程3で得られた凝集粒子を、加熱することにより合一させることができる。
工程4における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御及び粒子の融着性の観点から、「結着樹脂の軟化点−55℃」以上、「該軟化点+10℃」以下が好ましく、「該軟化点−50℃」以上、「該軟化点+10℃」以下がより好ましく、「該軟化点−45℃」以上、「該軟化点+10℃」以下が更に好ましい。具体的には、同様の観点から、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃に維持することが好ましい。また、撹拌速度は、凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。ここでの結着樹脂の軟化点は、非晶質樹脂(A)の軟化点と非晶質樹脂(B)の軟化点を加重平均した温度を「結着樹脂の軟化点」とし、結晶性ポリエステルや非晶質樹脂(A)及び非晶質樹脂(B)以外の非晶質樹脂を用いた場合は、非晶質樹脂(A)の軟化点、非晶質樹脂(B)の軟化点及びこれら以外の樹脂の軟化点を加重平均した温度を「結着樹脂の軟化点」とする。
なお、凝集停止剤を用いる場合、凝集停止剤として界面活性剤を用いることが好ましく、入手容易性及び操作性の観点から、アニオン性界面活性剤を用いることがより好ましい。アニオン性界面活性剤のうち、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが更に好ましい。
結晶性ポリエステルを用いる場合には、合一・冷却後、トナーの低温定着性及び保存安定性を両立させる観点から、更に、「結晶性ポリエステルの融点−10℃」〜「結晶性ポリエステルの融点−30℃」で且つ、40℃〜「合一温度−10℃」の温度に昇温してもよい。
[電子写真用トナー]
前記工程4により得られた合一粒子を、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、本発明の電子写真用トナー(単にトナーと称することがある)を得ることができる。
洗浄工程では、トナーとして十分な帯電特性及び信頼性を確保する目的から、トナー表面の金属イオンを除去するため、酸を用いてもよい。また、添加した非イオン性界面活性剤も洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。トナーの乾燥後の水分含量は、帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、更には1.0重量%以下に調整することが好ましい。
更に流動性を向上する等の目的のために外添剤を添加しても良い。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、及びカーボンブラック等の無機微粒子;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びシリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できる。
外添剤の個数平均粒子径は、トナーの流動性の観点から、好ましくは4〜200nm、より好ましくは8〜30nmである。外添剤の個数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて求められる。
外添剤を添加する場合、その添加量は、トナーの流動性、帯電度の環境安定性及び加重保存安定性の観点から、外添剤による処理前のトナー100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましく、0.2〜0.8重量部が更に好ましい。
(電子写真用トナーの物性)
本発明の電子写真用トナーの体積中位粒径は、トナーの高画質化及び生産性の観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが更に好ましい。
また、トナーの軟化点は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の観点から、80〜160℃が好ましく、80〜150℃がより好ましく、90〜140℃が更に好ましい。
本発明の電子写真用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
樹脂等の各物性値については次の方法により測定した。
<樹脂の軟化点>
フローテスター(株式会社島津製作所製、商品名:「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
<樹脂の吸熱の最大ピーク温度、融点>
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とし、最大ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば結晶性ポリエステルの融点とした。
<非晶質樹脂のガラス転移温度>
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
<樹脂の酸価>
樹脂の酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
<樹脂粒子、着色剤微粒子、離型剤微粒子及び荷電制御剤微粒子の体積中位粒径(D50)>
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、商品名:「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
製造例1
(アルキレン化合物Aの製造)
プロピレンテトラマー(新日本石油株式会社製、商品名:「ライトテトラマー」)を用いて、183〜208℃の加熱条件で分留してアルキレン化合物Aを得た。得られたアルキレン化合物Aは、後述するガスクロマトグラフィー質量分析において、40個のピークを有していた。アルキレン化合物の分布は、C918:0.5重量%、C1020:4重量%、C1122:20重量%、C1224:66重量%、C1326:9重量%、C1428:0.5重量%であった。
〔アルキレン化合物Aの質量分析ガスクロマトグラフィーによる分析〕
質量分析ガスクロマトグラフ(GC/MS)にCIイオンソースと下記分析カラムを取り付け、立ち上げを行った。なお、CI反応ガス(メタン)を流し、MS部の真空排気作業から24時間経過後にチューニングを行った。
(1)GC
ガスクロマトグラフ:
Agilent社製、商品名:「HP6890N」
分析カラム:
HP社製、Ultra 1(商品名、カラム長50m、内径0.2mm、膜厚0.33μm)
GCオーブン昇温条件:
初期温度 100℃(0分)
第1段階昇温速度 1℃/分(150℃まで)
第2段階昇温速度 10℃/分(300℃まで)
最終温度 300℃(10分)
サンプル注入量: 1μL
注入口条件:
注入モード スプリット法
スプリット比 50:1
注入口温度 300℃
キャリアガス:
ガス ヘリウム
流量 1ml/分(定流量モード)
(2)検出器
質量分析器: Agilent社製、商品名:「5973N MSD」
イオン化法: 化学イオン化法
反応ガス: イソブタン
温度設定:
四重極 150℃
イオン源 250℃
検出条件: スキャン
スキャン範囲 : m/z 75〜300
検出器ON時間: 5分
キャリブレーション(質量校正及び感度調整):
反応ガス メタン
キャリブラント PFDTD(ペルフルオロ−5,8−ジメチル−3,6,9−トリオキシドデカン)
チューニング法 オートチューニング
(3)試料調製
プロピレンテトラマーを、5重量%の濃度でイソプロピルアルコールに溶解させて調製した。
(データ処理法)
炭素数が9〜14の範囲にある各炭素数のアルケン成分について、それぞれ分子イオンに該当する質量数によるマスクロマトグラムを抽出し、S/N(シグナル/ノイズ比)>3の条件下で、表2〜5に示した成分毎の積分条件に従い積分を実行した。表1に示す検出結果から、特定アルキル鎖長成分の割合を以下の式により計算した。
Figure 2013222002
Figure 2013222002
(4)積分条件
成分:C918
Figure 2013222002
成分:C1020
Figure 2013222002
成分:C1122、C1224及びC1326
Figure 2013222002
成分:C1428
Figure 2013222002
本発明において、炭素数9〜14に相当するアルキレン化合物とは、ガスクロマトグラフィー質量分析において、分子イオンに対応するピークのことをいう。
製造例2
(アルケニル無水コハク酸Aの製造)
1Lの日東高圧株式会社製オートクレーブにアルキレン化合物A 542.4g、無水マレイン酸157.2g、抗酸化剤チェレックス−O(SC有機化学株式会社製、Triisooctyl phosphite)0.4g、重合禁止剤としてブチルハイドロキノン0.1gを仕込み、加圧窒素置換(0.2MPaG)を3回繰り返した。60℃で撹拌開始後、230℃まで1時間かけて昇温して6時間反応を行った。反応温度到達時の圧力は、0.3MPaGであった。反応終了後、80℃まで冷却し、常圧(101.3kPa)に戻して1Lの4つ口フラスコに移しかえた。180℃まで撹拌しながら昇温し、1.3kPaにて残存アルキレン化合物を1時間で留去した。ひきつづき、室温(25℃)まで冷却後、常圧(101.3kPa)に戻して目的物のアルケニル無水コハク酸A 406.1gを得た。酸価より求めたアルケニル無水コハク酸Aの平均分子量は268であった。
製造例3〜8
(非晶質樹脂A1〜A3、A7、及び非晶質樹脂B1、B2の製造)
表6及び表7に示す無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、ジオクチル酸錫(II)塩及び没食子酸を、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/時間で昇温し、その後230℃で10時間縮重合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。さらに無水トリメリット酸を210℃で反応させ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶質樹脂A1〜A3、A7及び非晶質樹脂B1、B2を得た。
製造例9
(樹脂c1(結晶性ポリエステル)の製造)
表6に示すポリエステルの原料モノマー及び重合禁止剤としてターシャルブチルカテコールを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、140℃で5時間かけて反応させた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、表6に示すエステル化触媒を加えて、更に200℃にて2時間反応を行った。更に8kPaにて2時間反応を行い、樹脂c1(結晶性ポリエステル)を得た。
製造例10〜15
(非晶質樹脂A4〜A6、及び非晶質樹脂B3〜B5の製造)
表6及び表7に示す無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、ジオクチル酸錫(II)塩及び没食子酸を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で10時間縮重合反応させ、さらに230℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。さらに無水トリメリット酸を210℃で反応させ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶質樹脂A4〜A6、及び非晶質樹脂B3〜B5を得た。
Figure 2013222002
Figure 2013222002
製造例16〜28
(樹脂粒子分散液の調製)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、上記製造例3〜15で製造した非晶質樹脂A1〜A7、結晶性ポリエステルc1及び非晶質樹脂B1〜B5それぞれについて200gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた各溶液に、水酸化ナトリウム4gを添加して中和し、続いてイオン交換水2000gを添加した後、250r/分の撹拌速度で、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去し、自己分散型の水系樹脂粒子分散液(樹脂含有量:9.6重量%(固形分換算))を得た。得られた樹脂粒子分散体中に分散する樹脂粒子の体積中位粒径はいずれも約0.3μmであった。
製造例29
(着色剤分散液の調製)
銅フタロシアニン(大日精化工業株式会社製、型番:「ECB−301」)50g、ノニオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、25℃にてホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤分散液を得た。体積中位粒径は120nmであった。
製造例30
(離型剤分散液の調製)
パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、商品名:「HNP0190」、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:「サニゾールB50」)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤分散液を得た。離型剤の体積中位粒径は550nmであった。
製造例31
(荷電制御剤分散液の調製)
荷電制御剤(オリエント化学工業株式会社製、サリチル酸系化合物、商品名:「ボントロンE−84」)50g、ノニオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:「エマルゲン150」)5g及びイオン交換水200gを混合し、25℃にてガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤分散液を得た。荷電制御剤の体積中位粒径は500nmであった。
実施例1〜10及び比較例1〜4
(コアシェル樹脂粒子の分散液及びトナーの製造)
表8に示す組合せのコア樹脂分散液500g、着色剤分散液20g、離型剤分散液5g、荷電制御剤分散液4g、及びカチオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:「サニゾールB50」)1.5gを、丸型のステンレス製フラスコ中でホモジナイザーを用いて混合し、分散させた後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら48℃まで加熱した。更に48℃で1時間保持して、凝集粒子を形成した。このときの凝集粒子の体積中位平均粒径は5.1μmであった。その後、表8に示すシェル樹脂分散液を150g(実施例1〜6、8〜10及び比較例1〜4)又は300g(実施例7)加え、撹拌して分散させることにより、カプセル化したコアシェル粒子である凝集粒子を得た。
コアシェル凝集粒子が形成された凝集粒子分散液に、アニオン性界面活性剤(花王株式会社製、商品名:「ペレックスSS−L」)3gを添加した後、前記ステンレス製フラスコに還流管を装着し、撹拌を継続しながら、0.1℃/分の速度で75℃まで加熱し、2時間保持して、凝集粒子を合一し、融合させた。その後、冷却し、融合粒子をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより着色樹脂微粒子粉末を得た。得られた着色樹脂微粒子粉末の体積中位粒径(D50)はいずれも5.0μmであった。
着色樹脂微粒子100重量部に対し、外添剤(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、商品名:「アエロジル R−972」、個数平均粒子径:16nm)0.5重量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製、現在の日本コークス工業株式会社製)で3600r/分(周速31.7m/s)、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー粒子(体積中位粒径D50=5.0μm)からなるトナーを得た。
[評価]
(低温定着性)
複写機(シャープ株式会社製、商品名:「AR−505」)にトナーを実装し、評価用定着紙に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着の画像を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。得られた未定着画像を有する用紙を複写機(シャープ株式会社製、商品名:「AR−505」)に装填し、更に2度定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像の印刷を行い、層厚1.5mg/cm2の未定着画像(3層)を得た。
得られた3層未定着画像を前記複写機の定着機をオフラインで、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、300mm/秒で用紙に定着させた。なお、評価用定着紙には、定着標準紙(シャープ株式会社製、商品名:「CopyBond SF−70NA」、75g/m2)を使用した。
500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、定着機をとおして定着された画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計(マクベス社製、商品名:「RD−915」)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に80%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れる。結果を表8に示す。
比較例1〜4は、コア部の非晶質樹脂(A)のアルケニル無水コハク酸とシェル部の非晶質樹脂(B)のアルケニル無水コハク酸との含有量比〔X−Y〕(モル部)が30モル部以下であるため、コア部とシェル部との相溶性が高くなり、低温定着性が悪い。
これに対して実施例1〜10は、含有量比〔X−Y〕(モル部)が30モル部よりも大きいため、コア部とシェル部との相溶性が適度に低くなり、低温定着性に優れている。
(耐熱保存性)
トナー10gを50ml容のポリカップに入れて、55℃60%RHの環境下で24時間保持した。その後、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。下式から算出される値(α)が大きいほど流動性に優れ、耐熱保存性に優れる。
α=100−(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10×100
表8に示すとおり、実施例1〜10は、耐熱保存性に優れている。
(高温高湿下での帯電安定性)
温度32℃、相対湿度85%の高温高湿条件下にて、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製、平均粒子径90μm)19.4gとを50ml容のポリビンに入れ、ボールミルを用いて250r/分で混合し、以下の方法により、トナーの帯電量をQ/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後における帯電量と混合時間600秒後における帯電量の比率(混合時間60秒後における帯電量/混合時間600秒後の帯電量)を計算し、帯電安定性を評価した。数値が大きいほど高温高湿下での帯電安定性に優れる。結果を表8に示す。
実施例1〜10は、シェル部の非晶質樹脂(B)が疎水性のアルケニル無水コハク酸を含んでいるため、帯電安定性に優れている。
一方、比較例1は、シェル部の非晶質樹脂(B)が疎水性のアルケニル無水コハク酸を含んでいないため、帯電安定性に劣る。また、比較例2〜4は、シェル部の非晶質樹脂(B)が疎水性のアルケニル無水コハク酸を含んでいるが、含有量比〔X−Y〕(モル部)が30モル部以下であるため、コア部とシェル部との相溶性が高くなり、帯電安定性が悪い。
Figure 2013222002
本発明のトナーは、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性に優れるという特性を有するため、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に用いられる電子写真用トナーとして好適に使用できる。

Claims (6)

  1. コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーであって、
    コア部が、アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含み、シェル部が、アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)であり、
    前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たす、電子写真用トナー。
    X−Y>30モル部 (1)
  2. 前記非晶質樹脂(B)におけるアルコール成分(b2)100モル部に対する、アルケニルコハク酸(b1)のモル量が1〜20モル部である、請求項1に記載の電子写真用トナー。
  3. 前記アルコール成分(a2)及び前記アルコール成分(b2)の少なくとも一方が、炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含む、請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
  4. 前記アルコール成分(b2)が、炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含む、請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
  5. 前記非晶質樹脂(B)の軟化点が前記非晶質樹脂の軟化点(A)の軟化点より0.1℃以上30℃以下高い、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
  6. 下記工程1〜4を有する、コアシェル粒子を結着樹脂として含む電子写真用トナーの製造方法。
    工程1:アルケニルコハク酸(a1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(a2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(A)を含む樹脂水系分散液を凝集させて、樹脂粒子Iの水系分散液を得る工程
    工程2:アルケニルコハク酸(b1)を含むカルボン酸成分とアルコール成分(b2)とを縮重合させて得られる非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液を得る工程
    工程3:前記アルコール成分(a2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(a1)のモル部をXとし、前記アルコール成分(b2)100モル部に対する前記アルケニルコハク酸成分(b1)のモル部をYとすると、下記式(1)を満たすように工程1で得られた樹脂粒子Iの水系分散液と工程2で得られた非晶質樹脂(B)を含む樹脂水系分散液とを混合し凝集させて、樹脂粒子IIの水系分散液を得る工程
    X−Y>30モル部 (1)
    工程4:工程3で得られた樹脂粒子IIを合一させる工程
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