JP2012006354A - 耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートとそれを用いた成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリスチレン系樹脂を含み密度が0.50〜0.05g/cm3であるポリスチレン系樹脂発泡層と、ポリスチレン系樹脂及び耐熱性を高めるポリフェニレンエーテル系樹脂を含み密度が0.5〜0.05g/cm3である耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との積層構造を有し、全体の密度が0.35〜0.05g/cm3で、かつ総厚みが0.5〜3.0mmであることを特徴とする耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート、並びに、該発泡積層シートを、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層が内面側となるように熱成形して製造された成形品を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、優れた耐熱性を有するとともに脆性、成形性、外観の点で良好であり、かつ経済性にも優れた耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート、及び、それを用いた食品用容器等の成形品を提供することを課題とする。
また、本発明の成形品は、前記耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートを、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層が内面側となるように熱成形して形成されたことを特徴とするものである。
<耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート>
本実施形態の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート(以下、単に発泡積層シートともいう)は、ポリスチレン系樹脂を含み密度が0.50〜0.05g/cm3であるポリスチレン系樹脂発泡層と、ポリスチレン系樹脂及び耐熱性を高めるポリフェニレンエーテル系樹脂を含み密度が0.50〜0.05g/cm3である耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との積層構造を有するものである。該積層構造としては、
・耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層の2層構造の他、
・耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の3層構造が挙げられる。
また、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートは、全体の密度が0.35〜0.05g/cm3で、かつ総厚みが0.5〜3.0mmである。
即ち、全体の密度が0.35g/cm3を超えると、発泡シート製の容器の重要な特性の一つである断熱性が不十分になり、また、樹脂量が一定であれば密度が高くなるほど全体の厚みが薄くなるため、強度も低下する。そのため、強度をアップすべく樹脂量を増やす必要が生じ、コストアップにつながる。一方、全体の密度が0.05g/cm3未満であると、発泡積層シートが軟らかすぎて、強度が不足する。
なお、全体の密度は、これらの事実を併せ考慮すると、0.30〜0.07g/cm3であることが好ましく、0.25〜0.08g/cm3であることがより好ましい。
これらの事実を併せ考慮すると、発泡積層シートの総厚みは、0.6〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.3mm程度であることがより好ましい。
一方、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の占める割合が総質量の80質量%以下であることにより、コストメリットにより優れるという利点がある。なお、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の占める割合は、上記耐熱性、脆性等の総合的な観点から、30〜70質量%であることがより好ましい。
該ポリスチレン系樹脂としては、汎用のポリスチレン系樹脂が挙げられ、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン系モノマー1種の単独重合体、又はこれらスチレン系モノマー複数種の共重合体が挙げられる。また、スチレン−ブタジエン共重合体等が例示される。なかでも、ポリスチレン樹脂(スチレン単独重合体)などが好ましい。
また、該ポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン系モノマーと、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル等との共重合体(スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、次の一般式(1)で表される分子構造を有する。
例示すれば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が本実施形態において用いられ得る。
また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
また、一般的には、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させると材料コストの観点において好ましいとはいえない。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
この消臭成分としては、ゼオライト系やリン酸ジルコニウム系の無機物粒子が挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルム層を積層した場合の具体的な層構成としては、例えば、
・熱可塑性樹脂フィルム層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層の3層構造、
・熱可塑性樹脂フィルム層/ポリスチレン系樹脂発泡層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の3層構造、
・熱可塑性樹脂フィルム層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層/熱可塑性樹脂フィルム層の4層構造、
・熱可塑性樹脂フィルム層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の4層構造、
・熱可塑性樹脂フィルム層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/ポリスチレン系樹脂発泡層/耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層/熱可塑性樹脂フィルム層の5層構造
等が挙げられる。
フィルム層の厚みが10μm以上であることにより、容器に成形したときにフィルム層に穴明きが発生することが抑制され得るという利点がある。
一方、フィルム層の厚みが500μm以下であることにより、積層時に、特にポリスチレン系樹脂発泡層に焼けや剥離が生じることが抑制され得るという利点がある。また、以下に述べるようにフィルム層を、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層および/またはポリスチレン系樹脂発泡層とともに、共押出法によって積層、形成することも考えられるところ、厚みが上記の範囲内であることにより、フィルム層は、共押出法では発泡層と積層させて形成しやすいものとなることから、共押出法を採用することは、製造コストの点でも好ましい。
なお、接着剤による接着法や熱融着法を採用した場合は、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層、ポリスチレン系樹脂発泡層、熱可塑性樹脂フィルム層の各境界面が明確に認識できるが、共押出法を用いた場合は、層の境界面が不明確になる場合がある。
揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、へキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、揮発性の発泡剤としては、水も挙げられる。揮発性の発泡剤は、これらを混合したものであってもよい。
発泡に必要な添加剤としては、例えば、気泡調節剤等が挙げられる。該気泡調節剤としては、具体的にはタルク、シリカ等の無機粉未、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調節剤が多すぎると、気泡膜が熱に弱くなり、押出積層時に気泡膜が破れ、その結果気泡が大きくなる可能性がある。このような気泡の増大を防ぐためには、発泡剤として窒素、炭酸ガスを用いることが好ましい。
本発明の成形品の一実施形態について説明する。
本実施形態の成形品は、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートを、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層が内面側となるように熱成形して形成されたものである。
・成形品の作製
耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層側が容器内面側となるように発泡積層シートを熱成形して、長辺190mm、短辺140mm、深さ30mmの角トレー型の成形品を得た。
・耐油試験
角トレー型の成形品に、125〜150℃の所定温度に加熱したサラダオイルを、トレー深さの約70%まで注ぎ、30秒後にサラダオイルを除いて表面状態を目視にてチェックした。
そして、表面状態がオイル注入前とほとんど変わらなければ耐油性良好(OK)とし、変化があればその状態を記録した。
・熱変形試験
トレーに約50℃の温水を100cc入れ、ガラス板をのせて蓋をした状態で、電子レンジ(500w)を用いて3分間加熱した際の、トレー上縁部の変形状態をチェックし、下記の3段階で評価した。
変形小:トレー上縁部(リップ部)において、相対向する短辺のそれぞれの中心間を
測定した寸法変化が±8mm未満(元の寸法は190mm)であり、
使用可と判断される。
変形中:寸法変化が±8〜18mmの範囲内であり、使用限度と判断される。
変形大:寸法変化が±18mm以上であり、使用不可と判断される。
・落球試験
実施例、比較例のシートより長さ150mm、幅50mmの試験片を、その長さ方向がシートの押出方向と平行方向になり、且つ幅方向が直行方向になるように、各5枚ずつ切り取り、スパン100mmにてクランプし、質量80gの鉄球を試験片の中央に落下させた際に、割れが発生する高さを調べた。そして、試験片が3枚以上割れなかった高さをそれぞれの方向での落球試験値とし、その平均値をシート全体の落球試験値とした。なお、積層シートの場合には、その表裏両側(耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層側を表側とする)について、上記の試験を行った。
耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層用の樹脂である、ポリスチレン樹脂(商品名「XC−515」 DIC社製)70質量部と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とポリスチレン系樹脂(PS)との混合物(商品名「ノリルEFN4230」 サビック社製 PPE/PS=70/30)30質量部とを混合した混合樹脂100質量部に対し、気泡調整剤(タルク練り込みマスターバッチ 商品名「DSM1401A」 東洋スチレン社製)1.0質量部を添加し、スクリュー径90mmと115mmのタンデム押出機のうち、スクリュー径90mm押出機のホッパー上にセットしたバッチ式連続混合装置に投入して均一に混和した後、ホッパーより押出機へ供給した。
押出機のシリンダー温度は、最高設定温度を280℃とし、発泡剤として混合ブタン約3.7質量部を加えた後、120kg/hの割合で合流金型に供給した。
押出機のシリンダー温度は、最高設定温度を240℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.2質量部を加えた後、80kg/hの割合で合流金型に供給した。
実施例1と同様にして調製した耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層用の樹脂を、実施例1と同様にしてバッチ式連続混合装置に投入して均一に混和した後、ホッパーより押出機へ供給した。
押出機のシリンダー温度は最高設定温度を280℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.4質量部を加えた後、110kg/hの割合で合流金型に供給した。
押出機のシリンダー温度は最高設定温度を300℃とし、発泡剤として混合ブタン約3.5質量部を加えた後、90kg/hの割合で合流金型に供給した。
実施例1と同様の配合で、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の質量がより少なくなるように、それぞれの発泡層の押出量や押出条件を変えて耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートを製造した。上記耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートのうち、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の厚みは0.50mm、密度は0.070g/cm3、坪量は35g/m2であり、また、ポリスチレン系樹脂発泡層の厚みは1.40mm、密度は0.118g/cm3、坪量は165g/m2であった。また、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートの総厚みは1.90mmであり、全体の密度は0.105g/cm3であり、坪量は200g/m2であった。
実施例1と同様にして調製した耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層用の樹脂を、実施例1と同様にしてバッチ式連続混合装置に投入して均一に混和した後、ホッパーより押出機へ供給した。
実施例1と同様にして調製したポリスチレン系樹脂発泡層用の樹脂を、実施例1と同様にして押出発泡させて、厚み1.90mm、密度0.105g/cm3、坪量200g/m2の、単層の、ポリスチレン樹脂発泡シートを得た。
上記各実施例、比較例のシートの物性を表1に示す。
以下に、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂とを含有させた組成物で形成した発泡シートと、ポリスチレン系樹脂で形成した発泡シートとにおいて割れ難さを評価した事例を示す。
スチレン系樹脂(DIC社製GPPS[スチレンホモポリマー]商品名「XC−515」)70質量%、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製 商品名「ノリルEFN4230」 PPE/PS=70/30)30質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、消臭成分として東亜合成社製のリン酸ジルコニウム系消臭剤(商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部含有する樹脂組成物を押出し発泡して、厚み2.0mm、目付け180g/m2の発泡シートを作製した。
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの共重合体を押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてGPPSのみを押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
上記シートから6.5±0.5mgのサンプルを採取し、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定を実施した(使用装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」)。
その結果、シート1のサンプルにおいては、JIS K7121 9.3(1)に記載の「中間点ガラス転移温度(Tmg)」が120℃付近に観察され、シート2のサンプルでは、106℃に観察された。
上記シート1〜3から、100×100mmのテストピースを採取して、該テストピースに対して、ASTM D3763に基づくダイナタップ衝撃試験を実施した(使用装置:General Research Corp.社製、ダイナタップ衝撃試験装置、型名「GRC8250」)。
その結果、シート2のテストピースについては、最大点変位3.2mm、最大荷重29Nという結果となり、シート3のテストピースについては、最大点変位4.0mm、最大荷重36Nという結果となった。
一方でシート1のテストピースについては、最大点変位4.4mm、最大荷重42Nという結果となった。
このことからもシート1は、PPE系樹脂が含有されることによって変位と荷重が大きな割れ難い状態となっていることがわかる。
Claims (6)
- ポリスチレン系樹脂を含み密度が0.50〜0.05g/cm3であるポリスチレン系樹脂発泡層と、ポリスチレン系樹脂及び耐熱性を高めるポリフェニレンエーテル系樹脂を含み密度が0.50〜0.05g/cm3である耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層との積層構造を有し、全体の密度が0.35〜0.05g/cm3で、かつ総厚みが0.5〜3.0mmであり、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10〜50質量部のポリフェニレンエーテル系樹脂が前記耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層に含まれていることを特徴とする耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
- 耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の占める割合が、総質量の20〜80質量%であることを特徴とする請求項1記載の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
- 耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層の密度(A)とポリスチレン系樹脂発泡層の密度(B)との比(A/B)が0.5〜2.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
- 耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層とポリスチレン系樹脂発泡層とを、共押出法により、積層しつつ押出発泡成形して製造してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
- さらに熱可塑性樹脂フィルム層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱ポリスチレン系樹脂発泡積層シートを、耐熱ポリスチレン系樹脂発泡層が内面側となるように熱成形して形成されたことを特徴とする成形品。
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